深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第72話 日常・その3

「新たな4名の仲間の着任に乾杯。」

 

「「「「「カンパーイ!!」」」」」

 

 夕食は時雨たちの歓迎会となった。艦娘だけでなく、憲兵隊、ガルム隊、ガルーダ隊、第1特機中隊、各艦の乗組員たちで参加できる者も参加している。人数は少ないがね。強制参加は好かんからね。官舎でゆっくりと過ごすのも個人の自由だ。

 

 料理に関しては、今回もバイキング形式だ。酒も出している。まぁ、みんな控えめに呑んでいるがね。俺はビールをチョビチョビ呑んでいる。時雨たちは・・・ジュースにしたようだ。柱島泊地に所属している艦娘たちが()わる()わる時雨たちに挨拶をしている。各部隊の隊長たちも様子を見て挨拶に行こうとしているようだ。

 

 2時間ほどで歓迎会を一旦締めると、そこからは無礼講となる。艦娘以外は皆が官舎に帰る。俺も霞、間宮、伊良湖、鳳翔にあとを頼み、執務室へと戻る。席に着き、端末を立ち上げる。メールの受信歴を確認すると、統合幕僚監部から“おおすみ”の件で召喚状が届いていた。

 

「ま、そうなるか。ふむ、使送便で召喚状が届いてからの出頭ね。“了解しました”っと。送信。さて、誰が秘書艦の日になるかね。ガルム隊にも明日には知らせておこう。」

 

 時雨たちの召喚建造の成功についても報告書を作成し終えていたので、端末と執務室の明かりを落として私室へと向かう。

 

 部屋に着いてからは風呂に入る前に私用のPCでネット動画を流しながら軽く筋トレをする。風呂に入り寝間着に着替えると扉がノックされた。時計を見ると2200を過ぎていた。誰だろうかと思い扉を開けると金剛がいた。

 

「・・・テートクゥ。今日は秘書艦だったのに全然一緒にいられなかったデス。わがままを言いますが、少しだけ付き合ってもらえないカナ?」

 

 モジモジとしながら潤んだ瞳で見上げてくる金剛を追い返してしまうのも可哀想だと思い、

 

「あまり片付いていないがそれでいいなら、どうぞ。ソファにでも座っておいてくれ。」

 

 と言って部屋に入れた。んで、気がついた。今、俺は生まれて初めて家族以外の女性を自分の部屋へと招き入れてしまった。あ、ミクは除くぞ。まぁ、変に意識しないでおこう。

 

「酒はさっき呑んでいただろうから、サイダーでいいか?」

 

「いいデスヨー。」

 

 冷蔵庫からサイダーとチーズを取り、食品入れからスナック菓子をとる。そして、床に座ろうとすると金剛がソファの隣をポンポンと叩くのでそちらに腰掛ける。

 

「こんなもんでいいか?」

 

「ハイ!!」

 

「そんじゃ、初秘書艦お疲れさま。」

 

「アリガトウゴザイマース!!テートクも模擬戦を2連続お疲れさまデース!!」

 

 お互いの労働のねぎらいを口にしてサイダーで乾杯をする。その後は、お互いに他愛のない話しをする。肩を並べて戦ったからか、それとも本当に俺のことが好きだからなのか、時間が経つたびに金剛が迫ってくる。喪男には辛いので新しい話題を振る。

 

「そういえば、統合幕僚監部から召喚状が来る予定なんだ。その時、一緒に新宿に行くか?終わったら東京観光でもして帰ろう。」

 

「え、本当デスカ!?」

 

「嘘は言わんよ。デートの約束をしていただろう?有休をそこに合わせてとろう。1泊2日なら充分だろう。行きと帰りはガルム隊に頼めばいいさ。飛行訓練になる。ま、公私混同ぎみだがね。」

 

「でも、霞准将や熊野は良かったんデスカ?お2人のほうが先約だったはずデス。」

 

「もちろん、霞や熊野とも出かけるとも。今度の土日にでも誘おうと思っていたさ。」

 

「なら、早く声をかけた方がいいデース。女子の準備には時間がかかりますからネ。もしかすると、今度の土日は断られるかも知れまセーン。」

 

「ふむ、そうか。そうだな。明日にでも予定を確認しよう。助言をありがとう、金剛。」

 

 そう言って、頭を撫でる。すると金剛は俺にもたれかかってきて、

 

「テートクは、ワタシ達の気持ちについて知っていると霞准将から聞きました。・・・キスをしてくれませんか?」

 

 と言ってきた。は?キス?接吻?いやいや、俺なんかがファーストキスを奪っちゃいかんだろ。金剛は目をつぶってこちらに上半身をのりだしてきている。あー、うん、わかった。するしかないか。

 

 俺は意を決してキスをした。金剛の瑞々しい唇にではなく、前髪をかき上げて額にだが。そっと口づけをしてすぐに離れる。

 

「すまん、金剛。俺にはこれが精一杯だ!!」

 

 すると、金剛は笑顔で、

 

「エヘヘ、いいデース。今はこれで。」

 

 と抱き着きながら優しく言ってくれた。あー、優しい()だ。しかし、この抱き着き癖はどうにかならんかな。

 

「金剛、統合幕僚監部では抱き着かないようにな。」

 

「大丈夫デース。時と場所をわきまえますカラ。」

 

「もうすぐで2400だ。部屋に戻れ。巡回中の憲兵に誰何(すいか)されたら俺の仕事を手伝っていたとでも言えばいい。」

 

「わかりました。では、Goodnight。」

 

「ああ、お休み。良い夢を。」

 

 金剛を見送り、片付けをしてベッドに入る。模擬戦で疲れていのかすぐに眠りに落ちた。

 

 起床ラッパの1時間前0500に起きる。いつも通り、ジャージに着替えグラウンドに出る。霞、満潮、金剛といつものメンバーに今日から鈴谷と熊野が加わる。そしてなぜか今日の秘書艦の深雪がいる。もちろん、運動着姿で。

 

「深雪、秘書艦だからといって俺の自主トレには付き合わなくていいんだぞ?」

 

 俺は準備運動をしながら言う。深雪も準備運動をしながら言う。

 

「だって、折角の秘書艦だよ?好きな人と長く居られるんだから好機(チャンス)はモノにしないとね。深雪さまは霞准将のように長く一緒にいなかったし、金剛さん達のように大人な体型じゃないからね。一緒にいる時間を長くして深雪さまの良いところをアピールしようってわけ。」

 

「なるほど。まぁ、今でも充分にアピールできているけどな。俺なんかと一緒にいるために早起きしてくれたわけだし、自分の想いを伝えてくれたしな。」

 

 そう俺が答えると、霞から指摘が来る。

 

「“なんか”っていうのはいただけないわね。あんたはしっかりと実績を上げているでしょうに。それに、時雨さん達4人を除く、あんたに好意を持っている私達30人が馬鹿にされているようでムカつくわ。」

 

「それは、すまなかった。謙遜しすぎも身を滅ぼすか・・・。」

 

「まぁ、日本人の美徳ではあるわね。いきすぎなければだけど。っと、準備運動終わり。ねぇ、深雪さんはこの後のトレーニングも付き合うの?」

 

 霞が深雪に尋ねる。深雪は「もちろん!!」と元気よく答える。そんな深雪に霞が、

 

「いい、司令官の、あいつのペースについていこうとは考えないで。あいつは文字通り化け物並みの身体能力を持っているから潰れちゃうわ。」

 

 と脅す。俺の自主トレを見たことのある4人、満潮と金剛、鈴谷はウンウンと頷き、熊野は少し困った顔をする。その様子をみて深雪は、

 

「わかったよ。深雪のペースでやらせてもらう。ごめんな司令官。」

 

「謝ることはない。陸上は俺のフィールドだからな仕方ないさ。それじゃあ、みんな始めようか。」

 

 そうして、いつものルーティンを行う。深雪はしっかりと自分のペースで出来ているようだが、俺が2回周回遅れにして抜かしたら「えぇ・・・。」と言って絶句していた。その後の腕立て伏せなどの筋トレも信じられないモノを見る目だった。まぁ、仕方ないな。

 

 朝食を摂ったあとは執務室で霞と深雪を交えて今日の予定を確認する。“しらね”は既に哨戒任務のために出港している。四国沖を通り四国をグルっと周るような航路だ。60ノットで大体8時間程度の航程になる。もちろん接敵が無ければだが。

 

 その“しらね”に艦載艦娘艦隊として、扶桑を旗艦に青葉、龍田、時雨、赤城、加賀の6名が随伴している。もちろん魔改造されたSH-60K改も1機搭載されている。さらにその露払いとしてガルーダ隊が哨戒飛行を開始している。

 

 そして、残った“くらま”と“おおすみ”はそれぞれ、近海で訓練を行い、艦娘達もヘリボーン艦隊に選出されていない者は自主訓練や休息をとるなど思い思いのことをしている。そして、ヘリボーン艦隊を輸送するCH-47JA改“チヌーク改”を有するガルム隊はローテーションでスクランブル待機をしている。

 

 んで、俺が今日は基本的にデスクワーク。秘書艦の深雪と秘書艦補佐の霞も俺と同じということになる。3人で端末を使いそれぞれ書類を作成したり、筆記で処理をしていたりすると、ドタドタと廊下をかけてくる音が聞こえた。強化された俺の聴覚からしばらくして霞も気づいたようで手を止め顔をあげる。深雪はまだ気づいてないようだ。

 

 足音が扉の近くになると深雪も気づき、

 

「なんだ、騒がしいな。」

 

 とぼやく。それと同時に扉がバンっと開かれた。俺はその人物に注意をする。

 

「ノックぐらいしろ、曙。」

 

 曙が第7駆逐隊の漣、朧、潮を伴ってやってきた。まぁ、3人は少し遅れての入室だったが。

 

「クソ提督、なんで時雨少佐が出撃で、同日配属の朧達は泊地待機なのよ!!」

 

「別に深い意味があるわけではないさ。新兵の教育には熟練兵のサポートが多くできたほうが良いと思ったからだ。次回の哨戒任務には朧を、その次は漣を、その次は潮を、と考えてはいるがね。それで、今回、時雨が一番だったのは強化した艤装に早く馴染んだように見えたからだ。もちろん、指揮官目線として。」

 

「それじゃあ、朧達は強化した艤装にまだ慣れきってないというの!?」

 

「落ち着け、曙。俺は“馴染んでいる”とは言ったが“慣れている”とは言ってないぞ。習熟度でいえば、4人とも同じだ。ただ、俺は妖精さん達と話しができるからな。時雨の艤装の妖精さんが「イケる。」と言ったし、先程も言った通り馴染んでいるように見えたから今回出撃させた。わかったか?」

 

「・・・っ!?わかったわよ!!」

 

 そう言って曙は執務室を出て行く。それを潮と漣が追いかける。朧だけが残り聞いてくる。

 

「提督、朧達の艤装の妖精さんは何も言わなかったんですか?」

 

「いや、3人とも「イケる」と答えてくれたよ。すまんな。馴染んでいるかどうかは俺の勘だから。」

 

「いえ、いいんです。出撃をさせてくれるなら。それと曙がすみませんでした。失礼します。」

 

 一礼をして退室する。まだ、午前中でこれかと思いフゥとため息をつくと、深雪が笑顔で、

 

「やっぱり司令官って優しいな。みんなのことを考えてくれているんだから。司令官の指揮下で戦えることが深雪さまは誇らしいぞ。」

 

 と言ってくれた。元気出た。




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