深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第73話 対潜戦闘

 昼飯を霞、深雪、吹雪、白雪と一緒に摂り、午後の業務に手を付ける。昼飯のあとでしかも天気も良く、暖房もほどよく効いているのでなんだか心地がいいな。フワフワとした感触を味わいながら書類に目を通しサインをしていくと、無線電話が鳴る。表示は“ガルーダ4”からのものだ。外部音声にしてから受話器を取る。

 

「『湊大将だ。』」

 

『こちらガルーダ4。北進中の駆逐級の“はぐれ”を1隻見つけました。本隊はガルーダ3が捜索中です。沈めますか?』

 

「『少し待て。』どうしたほうがいいかね?」

 

 霞と深雪に尋ねる。

 

「私としては、今後のためにも捕獲をして研究にまわす方がよいと思うわ。」

 

「ん~、深海棲艦だろ?沈めちゃえばいいじゃん。深雪なら沈めるけどなぁ。」

 

 2人とも正反対の意見を出してくれた。確かに捕獲して研究が進めば対深海棲艦用の武器の開発もできるだろう。しかし、逃げ出すなどしてしまったら、駆逐艦といえども暴れられたら警察の力では無理となり、軍を投入しての市街戦となるだろう。悩むがこんなチャンスはなかなか無い。捕獲することにしよう。

 

「よし、霞の案を採用して捕獲する。『ガルーダ4、そのまま接敵を続けろ。“しらね”より艦娘艦隊を出撃させ、捕獲する。』」

 

『ガルーダ4、了解。』

 

 ガルーダ4との通信を切り、“しらね”につなげる。

 

「『柱島泊地、湊大将だ。』」

 

『閣下、牧原です。』

 

「『ガルーダ4から通報があっただろうが、はぐれの駆逐艦が近くにいる。扶桑少佐たちを出撃させ、捕獲してほしい。』」

 

『了解しました。捕獲後は武装を封印して“しらね”にて柱島まで曳航でよろしいでしょうか?』

 

「『頼む。』」

 

『了解しました。状況を開始します。』

 

 あとは無事に捕獲できたと報告が来れば万々歳だな。扶桑がしきしているから大丈夫だろうけど。そして、敵の本隊はどこだ?ガルーダの眼からは逃れられないと思うが。

 

「敵の本隊が見つかってないのが不思議だね。」

 

 深雪が言う。同意しながら不自然な点に気づく。

 

「そうだな。ちょっと待てよ、『ガルーダ4、“はぐれ”は損傷しているか?』」

 

『いえ、どこも損傷していません。カメラでも確認しました。・・・おかしいですね。損傷していないのに速力が低い。10ノット出ていません。』

 

「罠かもしれんな。『ガルーダ4、すまんが高度を下げて海面下を確認してくれ。』」

 

『了解。』

 

 一旦、ガルーダ4との通信を切り“しらね”につなぐ。

 

「『牧原大佐、湊だ。艦娘艦隊は出撃したか?』」

 

『いえ、まだです。』

 

「『では、そのまま待機だ。』」

 

『了解しました。』

 

 これで、よしと。あとは隣室の指令室に移動しよう。あちらのほうが機材が揃っている。

 

「霞、深雪、指令室に移動するぞ。」

 

 2人を連れて指令室に入る。指令室の機材は24時間常に電源が入っており、中央のディスプレイには現在任務を遂行中の“しらね”やガルーダをはじめ、各鎮守府の艦隊の状況も映し出されている。これは、ミク達が造ってくれたからできているのであって、通常の指令室ではこんなに情報は表示されない。

 

 指令室に入って2分も経たずにガルーダ4から通信が入る。

 

『各種赤外線装置に引っかかりました。潜水艦です。5隻います。』

 

「やはりいたか。『ガルーダ4、その目標を追尾可能か?』」

 

『可能です。』

 

「『“しらね”より艦娘艦隊を対潜装備で出撃させる。上空援護を。』」

 

『了解。』

 

 そして、“しらね”にも敵の罠だったことを伝え、捕獲命令を取り消し扶桑たちを対潜装備で出撃させるように命令を下す。扶桑とガルーダ4は直接、やり取りをするように伝えるのも忘れない。

 

「いやー、よくわかったね。司令官。」

 

「深雪の一言のおかげだな。“敵の本隊が見つかってない”という。」

 

「あー、あれかぁ。特に意味も無く言ってみたんだけどな。でも、こうして役に立ったようならなによりさ。」

 

「おう、扶桑たちを奇襲から守れた。」

 

 そう言いながら、深雪の頭を撫でる。霞がジト目で見てきたのですぐにやめたが。

 

「さて、“しらね”からは無事に扶桑たちが出撃したな。」

 

 ディスプレイには“しらね”から離艦し、目標へと向かう6個の輝点が現れる。そのまま、最大戦速で目標へと向かう。目標の上空でガルーダ4が周回機動をしている。

 

「あら、もう発艦したのね。」

 

 霞の言う通り扶桑、赤城、加賀が艦載機を発艦させているのが扶桑のヘッドカメラで確認できる。そして小さな輝点がディスプレイに増える。扶桑は瑞雲、赤城と加賀は烈風と爆雷搭載の彗星、流星で構成された戦爆連合のようだ。

 

 ちなみに、重巡以上の大型艦艇にも近接戦闘パッケージには数は少ないが爆雷も装備されている。なので扶桑、青葉、赤城、加賀も数は少ないが爆雷の投下ができる。聴音機のみでアクティブ・ソナーが無いので命中精度はお察しだが。ふむ、そこらへんの改造もミクと相談してもいいかもしれない。

 

 次第に瑞雲と戦爆連合に速度によって差が出始める。戦爆連合の第一波攻撃でどれだけ敵潜を沈められるかが勝負だな。

 

『こちら、ガルーダ4。駆逐級が対空戦闘態勢に入りました。』

 

「『よし、ガルーダ4、ASM-2で確実に仕留めろ。』」

 

『了解。』

 

 ディスプレイ上でガルーダ4からASM-2が発射されたことが表示される。駆逐級までの距離と予想命中時間が表示され、数字を刻み始める。そして、ASM-2を示す輝点が駆逐級に重なると時間差で駆逐級の輝点が消える。

 

『命中を確認。敵艦の爆沈を視認。警戒監視に戻ります。』

 

「『よくやった、ガルーダ4。』さて、扶桑たちは今ここだ。そして、赤城と加賀の戦爆連合がここ。少し離れて扶桑の瑞雲隊がここ。ガルーダ4から送られてくるデータによれば敵潜には動きはない。深度も変えて無いようだ。」

 

「ふん、甘く見られたものね。」

 

「どうかな。深雪はどう思う?」

 

 深雪に尋ねる。

 

「う~ん、深雪としては駆逐級が沈められたのに敵潜が戦域を離脱しないのに違和感を覚えるかな。だって、駆逐級は釣りで言う餌だったわけだから、それを失ったら普通は引き上げるよね。」

 

「確かにそうだな。なら、奴らの目的はなんだ?」

 

「隠密行動に長ける潜水艦が危険を冒して近海まで来たのなら情報収集じゃないかしら?」

 

「霞、そう思う根拠は?」

 

「えーっと、こんなことを言うと自惚れているみたいで嫌なんだけど、私達の泊地が稼働し始めてから西日本での深海棲艦の撃沈数が上がっているじゃない。もし、私が深海棲艦のお偉方ならその理由を知りたいと思うの。それで、実際に駆逐級を囮にして隠密性に優れた潜水艦で相手の探知能力と処理能力のデータを得ようとするんじゃないかしら。」

 

「と、なるとだ、敵潜の配置を確認しよう。先程沈んだ駆逐級の前に1隻、すぐ後方に2隻そして、100mほど開けて最後尾に2隻。定石で云えばこの最後尾の2隻が情報収集担当艦だろう。」

 

 そう言うと、霞も深雪も頷いて同意の意思を示してくれた。

 

「なら優先順位は決まったな。『扶桑、赤城、加賀、最後尾の敵潜から沈めろ。情報収集艦の可能性が高い。』」

 

『了解しました。赤城少佐、加賀少佐も大丈夫です。』

 

「『よし、頼んだぞ。』『ガルーダ4、敵潜の監視を続行。1隻たりとも逃すな。』」

 

『了解。』

 

 ガルーダ4が高度を下げて5,000mで敵潜を中心に周回機動を行う。そして、敵潜は相も変わらず7ノット程度で北進を続けている。そして、赤城と加賀の戦爆連合による空襲が始まる。

 

 ガルーダ4から送られてくるカメラ映像では海面にいくつもの大きな水柱が上がるのが確認できる。その中の1つの赤外線カメラが敵潜の爆沈を捉えた。冷めた青色表示の海水が瞬時に赤色に変わる。

 

「よし、まずは1隻。」

 

 航空機用爆雷は彗星三三型はあと2発、流星はあと5発残っている。40機の瑞雲もまだ投下していないから各機1発ずつだ。残りの4隻を仕留めるには十分だろう。僚艦が撃沈されようやく発見されていることに気づいたのか、残りの4隻は散開し始めた。そのうちの2隻が扶桑たちのほうへと変針する。

 

「『扶桑、敵潜が2隻そちらに向かっている。魚雷に注意。』」

 

『ありがとうございます。提督。時雨少佐、龍田少佐が前方で敵潜への警戒をしていますので、大きな問題はないかと。』

 

「『まぁ、油断はするな。窮鼠は猫を噛むぞ。』」

 

『了解しました。』

 

 ディスプレイとガルーダ4からのカメラ映像には瑞雲隊も合流し2隻目へと爆雷を投下している様子が映し出されている。数十個の水柱の中に爆炎が混ざる。これで2隻目も沈んだ。3隻目は残った爆雷を全て投下され、一瞬で海の藻屑となった。

 

 扶桑たちのほうへ向かった2隻は魚雷を放ってから転進した。しかし、60ノットで航行している扶桑たちは難なく避けて、龍田と時雨が敵潜へと接近し、敵潜を中心に円運動しながら爆雷を投下する。1隻は爆沈したようで、海面が盛り上がり爆炎が上がる。もう1隻はたまらずに浮上をする。

 

「『扶桑、沈めるな!!捕獲できるなら捕獲してくれ。』」

 

『了解しました、提督。龍田少佐、時雨少佐、敵潜の捕獲できそうかしら?』

 

『大丈夫よ、扶桑少佐。時雨少佐、敵潜が潜航しないように機銃で外殻に損傷を与えましょうね。』

 

 無線から機銃の発射音と悲鳴のような叫び声が聞こえる。深海棲艦のモノか?龍田のヘッドカメラの映像を拡大表示するとどうやらそのようだ。頭を抱えてうずくまっているように見える。指令室のデータベースと照合すると不明と出てきた。確かにカ級でヨ級でもないようだ。新型か?

 

『・・・、ウゥ、ヤ、ヤメテ・・・。投降スルカラ・・・。』

 

「しゃべった!?」

 

「しゃべったわね。」

 

「しゃべったな。」

 

 霞と深雪もしっかりと聞いたようだ。攻撃をしていた龍田と時雨も戸惑っているようで、

 

『・・・提督、私の耳、爆雷でおかしくなっちゃったのかしら。目の前の深海棲艦が話したように聞こえたわ。』

 

『僕も聞こえたよ。深海棲艦は話さないんだっけ?』

 

「『俺と霞准将、深雪少佐も聞いた。深海棲艦の個体が我々、人間の言葉を話すとは聞いたことが無い。まぁ、深海棲艦が現れて1年半しか経っていないからな。例外もいるんだろう。捕獲できそうか?』」

 

『ええ、大丈夫よ。投降するって言っていたから。近接戦闘パッケージの“捕縛ワイヤー”を使うわ。時雨少佐、手伝って。』

 

『うん、わかったよ。』

 

 龍田のカメラからの映像では頭に艤装?を載せた深海棲艦が四肢の自由を奪われ捕縛されていく。あ、胸デッカイな。ていうか髪で隠れてわからなかったけど何も付けて無い!?すぐに映像を旗艦の扶桑のカメラに切り替える。

 

「見たでしょ?大きかったわね。」

 

 霞が腕組みしながら聞いてくる。その横で深雪は笑いをこらえている。

 

「・・・見た。大きかったっ!?」

 

 言い切る前に霞のドロップキックを脇腹に喰らった。艤装を付けて無いとはいえ、生身でも鍛えている艦娘の蹴りだ。なかなかに重い。脇腹をさすりながら、

 

「良い蹴りだったぞ霞。そして、深雪、真似をしようとしない。だから、その屈伸をやめなさい。」

 

 「ちぇ~。」と深雪は不満を漏らしたがやめてくれた。霞もドロップキックが命中してスッキリしたようだ。

 

「さて、あんた、この後どうするのよ?」

 

「とりあえずはウチで面倒を見る。俺の知る限りでは生きて意思疎通のできる深海棲艦の捕獲は初めてだからな。中央の出方を見たい。」

 

「お人好しね。」

 

「深雪はそんな司令官が好きだけどな。」

 

 そう言いながら深雪が抱き着いてくる。霞に目をやると、諦め顔をしながら頷いたので、深雪をワシャワシャしてやった。猫とじゃれている気持ちになるな。そんなことをしながら扶桑のカメラ映像を見ると、青葉が曳航して龍田、時雨、赤城、加賀が近接戦闘パッケージのM6Hハンドガンとコンバットナイフを深海棲艦につきつけている。扶桑は全周囲警戒か。

 

 “しらね”が帰港したら箝口令を泊地全体に敷こう。牧原大佐にも“しらね”乗員の箝口令を徹底するように命令を出しておこう。さて、どうしたもんかね。新型深海棲艦さんよ。




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