深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
扶桑たちが捕獲した潜水艦の新型深海棲艦は“しらね”に乗艦させ、格納庫で手足に拘束を施す。その際に格納庫で待機していた整備要員は移動させる。手足を拘束した深海棲艦はそのまま、応急処置用の展開式ストレッチャーに載せられその肢体が見えないように毛布を被せる。そして、扶桑たちは二人一組で見張りを開始する。
それらの行動を扶桑のヘッドカメラ映像で確認しながら、その都度、艦長の牧原大佐や扶桑に指令室から指示を出し続けた。深雪は途中で飲み物を持ってきてくれたり、提出までの期限が短い未決裁の書類を持ってきてくれたりした。おかげで、俺は指令室で書類仕事の続きができた。
まぁ、“しらね”に搭載した時点で、指揮を霞に委任してもよかったんだが相手は新型だからな。何かあった時には俺が責任を取るべきだと思ったんだよ。現在、上空哨戒はガルーダ5と6が行なっている。
“しらね”はその後、接敵も無く無事に瀬戸内海に入った。ここまでくれば、もう庭みたいなもんだ。何かってもミョルニルアーマーで現場まで行ける。さて、“しらね”が戻ってくる前に警備体制を整えないとな。憲兵隊はもちろん動かすが、深海棲艦が暴れた際に取り押さえるには艦娘か艦娘並みの力が必要となる。
ということで憲兵中隊の坂本大尉と第1特機中隊の中条大尉を指令室に呼び出す。
「何か問題でも起きましたか?」
坂本大尉が聞いてくる。
「ただいまの時刻をもって泊地内に箝口令を敷く。憲兵中隊は厳戒態勢をとってほしい。」
「了解しました!!」
「そして、内容だが、新型の深海棲艦の捕獲に成功した。潜水艦だ。今は、“しらね”にて拘束中だ。」
そう言うと、2人が息を呑む。
「閣下、私共、憲兵隊は捕虜の移送も行いますが、生きた深海棲艦の移送は前例がありません。」
「だろうな。というわけで中条大尉、第1特機中隊の出番だ。」
中条大尉が姿勢を正す。
「現在、扶桑少佐率いる艦娘艦隊の監視下で拘束中だ。“しらね”が接岸したら、すぐに深海棲艦の監視を引き継いでほしい。可能か?」
「はい、可能です。2個小隊の2交代で監視にあたります。」
「よろしい。ああ、今回はRGM-79SPではなくRGM-96X“ジェスタ”を使用しろ。工廠で受領後に任務にあたれ。中条大尉は退室してよろしい。」
「了解しました。失礼しました。」
敬礼に答礼をし、中条大尉を見送る。扶桑たちが深海棲艦の捕獲に成功したと聞いてすぐにミクに連絡し、資材を目一杯使用していいからフルスペックのジェスタを12機用意させたんだよ。この短時間でよくやってくれたと思う。そして、憲兵中隊用にも装備を準備している。
「坂本大尉、憲兵中隊も工廠にて装備を受領したまえ。
「了解しました。受領後は第1特機中隊の支援にまわればよろしいでしょうか?」
「そうだ。通常業務との
「了解しました。失礼しました。」
強化された聴覚で坂本大尉が十分に離れたことを確認すると、深く息を吐きながら椅子に座り込む。深雪が温かいお茶を渡してくれる。
「ありがとう、深雪。どうしてこう、次から次へと厄介事が起こるかねぇ。退官したい・・・。」
「おっ、それはもちろん深雪達を嫁に貰って退官するんだよな?」
「あのねぇ、深雪。この国は一夫一妻制だから無理だよ。」
「内縁の妻でもいいよ?」
「そういう話しじゃないんだよなぁ・・・。」
指令室のディスプレイに映し出される映像と輝点を眺めながら答える。
「深雪さん、既成事実を作ってしまえばこのクズ司令官は落とせるわよ。」
「既成事実?」
霞が深雪に小声でなんか言っている。クソッ、俺の聴力でギリギリ聞き取れない声量で話してやがる。でも、その話しを聞いている深雪の顔が段々赤くなって、俺の下半身と自分の下腹部を交互に見ている。あっ!!まさか、既成事実っていそう言うことか!?
霞が深雪から離れると、
「ねぇ、しれぇかぁん。深雪とつきあいを深めようよ。」
とろんとした眼差しと口調で深雪が近づいてくる。
「おい!!霞、何を吹き込んだ!?」
「別に?“雄しべ”と“雌しべ”の話しをしただけよ。」
「やっぱりか!!それは、いかん!!おい、深雪、流されるな。しっかりと意識を
俺は、深雪の両肩を掴み揺さぶる。そうすると、深雪は目を閉じて唇を差し出してくる。そうじゃないんだよなぁ。どうすっかね、これは。金剛と同じ対応をしてみるか。すぐに深雪の前髪をかき上げて額に口づけをする。これでどうだ!?
数秒後、何をされたか理解した深雪は更に顔を真っ赤にして聞いてくる。
「ししししし司令官、今のは!?」
「あー、その、なんだ、深雪たちの気持ちに応えるのは今はこれが精一杯だと思ってくれ。伊達に28年間も喪男をしていたわけじゃないんだよ。相応の心の準備やら法の壁やらがあるからな。」
「・・・わかった、ありがと。」
そう言って、深雪は壁際まで下がりエヘヘと笑っていた。俺は霞に向き直り言う。
「頼むから変なことを吹き込まんでくれ。」
「別に変な事じゃないでしょう?あんたのことを時雨さん、漣さん、朧さん、潮さん以外の皆が好きだというのは前に教えたじゃない。」
「それはそうだが・・・。」
「でも、なんか手慣れた感じだったわね。さっきの接吻。」
「へっ!?いや、あー、あれだ、漫画とかでよくあるシーンじゃないか。」
「ふーん、私はてっきり金剛さんにしたことで慣れたのかと思ったわ。」
「っ!?」
「あ、金剛さんを責めないでね。ただ、あんなに幸せオーラを出していると気づくわよ・・・。」
「あー、うん、そうだな。そうだ。金剛はそういう
「というわけで、初期艦娘の私にもして頂戴な。」
「・・・本当に俺でいいのか?」
「あんたがいいのよ。」
「わかった。」
そうして、霞の額に口づけをする。はぁ、指令室で何をやっているんだろうね、俺は。霞は凄く満足したような顔をしている。
「っと、そうだ、森原中佐にも教えていた方がいいよな?」
「この泊地でしばらく匿うんでしょ?なら、味方は1人でも多いにこしたことはないわ。ただ、森原中佐は深海棲艦への恨みがねぇ・・・。」
「そこは、俺が何とかする。」
「そ、ならいいんじゃないかしら。」
というわけで森原中佐と秘書艦の電少佐を呼び出す。
「すまんな。中佐。」
「いえ、電少佐たちの訓練中でしたので問題ありません。」
「そうか。では、本題に入ろう。扶桑少佐たちの艦娘艦隊が新型深海棲艦を捕獲した。潜水艦だ。」
「本当ですか!?」
「本当だ。こちらの攻撃で多少傷ついてはいるが意思疎通が図れる。つまり、我々の言葉を話せる。なぁ、中佐。今、この話しを聞いてどう思った。」
「沈めてやりたいと思いました。」
「それだけかね?」
「いえ、意思疎通が図れるとのことでしたので、話してみたいと思いました。」
「ふむ、理由は聞かないでおこう。中佐、君が彼女に危害を加えないと約束するならば、話せるように調整しよう。どうかね?」
「是非ともお願いします。」
「ああ、わかった。話しはそれだけだ。訓練中に呼び出してすまなかった。ああ、そうだ。ジョンソン上級曹長に
「はい。」
「“ODST用戦闘服を憲兵中隊に装備させている。勘違いしないように。”以上だ。退室してよろしい。」
「はっ。」
指令室を退室する森原中佐を見送る。その数分後、扉をノックされた。ふむ、誰も呼んでないが先程聞こえた足音からして坂本大尉と中条大尉か。
「憲兵中隊、坂本大尉です。入室許可を願います。」
「第1特機中隊、中条大尉です。同じく入室許可を願います。」
大当たりだ。
「どうぞ。」
と俺は言い、深雪が扉を開く。そこにはジェスタ艤装を装着しミョルニルアーマーを着込んだ俺並みのデカさとなった中条大尉とブーツとヘルメット分だけ身長が高くなった坂本大尉の姿があった。
「「失礼します。」」
同時にそう言って指令室に入ってくる。入ると同時に2人ともヘルメットを取り敬礼をする。俺はラフに答礼し聞く。
「どうだ、中条大尉、慣れそうかね?」
「出力が上がっているのでジム・スナイパーⅡと同じように感じます。総推進力は下がっていますが、全備重量も下がっているので今まで通りのように対応可能かと。」
「それはなによりだ。坂本大尉はどうかね?」
「はい、閣下。この多機能ヘルメットのおかげで隊員間の連携が向上できるかと思います。着用した感じも悪くなく武装も今まで通りのモノが使用できるので、問題はありません。」
「よろしい。では、“しらね”が到着するまでは待機していてくれ。」
「「了解。」」
俺は、ディスプレイに映る輝点と映像を見る。さぁ、もうすぐ会えるな新型深海棲艦。こちとら知りたいことが山ほどあるんだ。洗いざらい吐いてもらうぞ。
読んでくださりありがとうございます。