深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第76話 新型深海棲艦・その3

 新型深海棲艦を手術した翌日、俺は幕僚監部からTV会議をするという連絡を始業前に受け、今は執務室で端末のカメラ機能を起動させて幕僚監部の面々に対して報告を行っている。1つは“おおすみ”の大改装について、もう1つは捕獲した新型深海棲艦についてだ。

 

 “おおすみ”については、仕方ねぇなという空気の中、流れで認められた。まぁ、今の日本に艦載機なんてウチの“メイヴ”6機しかねえもんな。そんだけで空母なんて言われたら軽空母持っている国が泣くぞ。

 

 んで、新型深海棲艦について、まずは呼称をということで潜水艦“ソ級”というモノが付けられた。ウチで捕獲した個体は公的にソ級1号という呼称で呼ぶように言われた。それと、しばらくウチで面倒を見て報告書を上げるようにも言われた。俺個人のみかと思ったが、日常生活で接触のあった者は全てらしい。1行でもマル秘報告書として扱うとのことだった。

 

 それと、箝口令はソ級の体力回復を待って解除してよいとのことだった。幕僚監部も隠し通せるとは思っておらず、近いうちに世間に公表だけはするとのことだった。ま、ここは政治も絡んでいるんだろう。メンドイから俺はパスだが。

 

 そんな感じで、俺の召喚の件についてだがそれは取り消しとなり金剛との約束をどうするかなぁと思っていたら、旭日大綬章の授与の日程が決まったので受け取りに来いとのことだった。イラナイと言ったが聞き入れてもらえなかった。仕方ないね。

 

 ま、金剛との約束を破らずに済みそうだ。

 

 さて、今日の秘書艦は愛宕なんだが、秘書艦補佐の霞の俺に対する視線が昨日よりもかなりキツイんだが何かしたか?ふむ、始業前はいつものルーティンをこなして朝食を愛宕を加えたいつものメンバーと摂り、TV会議に臨んだ。ん~、わからん。ここは変に小細工せずに直球で聞くべきか。

 

「なぁ、霞、俺はなんかしたか?いつもより視線がキツめなんだが。」

 

「昨日の自分の行動を思い出しなさい。」

 

「昨日の行動ね。手術の後は、ソ級の艤装を取り外したりしてそれをカメラで撮って、執務室で他の動画と合わせて確認していたぐらいだろう?」

 

「つまり、あんたは敵とはいえ、女性の裸体を眺めていたわけでしょ?」

 

「ちょっと待ってくれ。あれは、仕事で仕方なくだ。わかるだろう?」

 

「わかるけど・・・。ああ、もう!!やっぱりこの感情は慣れないわね。」

 

「何の感情だ?」

 

 俺が問うと、愛宕が答えを言ってくれた。

 

「提督~、それは“恋心”あるいは“乙女心”ですよ~。」

 

「なるほど。ふむ、業務に支障があるほどなら休むか?精神面の不調は放っておくといかんからな。」

 

 そう言うと、霞は顔を真っ赤にし涙目になって俯いた。

 

「提督~、それではダメですよ。ホント鈍感なんですから。」

 

 愛宕からダメ出しを喰らう。

 

「え?あーっと、霞、一仕事終わったから甘味でも間宮の所に行ってもらってこよう。んで、景色のいいところで少しゆっくりしようじゃないか。・・・嫌か?愛宕はしばらく1人で大丈夫か?」

 

 そう言うと、霞は「わかったわ。」と言い、愛宕は満面の笑みで空中に丸を描いてくれた。よかった。霞にライディングウェアを着て寮の前で待っているように言うとキョトンとしていたが意味が分かったようで、ほんの少し笑顔を見せてくれた。俺は間宮と伊良湖の所に行き温かい茶と切り分けられた羊羹、最中(もなか)を貰い、自室に戻り、着替えてVTRに跨り、艦娘寮へと向かう。

 

 寮の入口に着くと、すぐに霞が出てきた。意味をはき違えずヘルメットも持ってきていた。

 

「んじゃ、ちょっくらプチツーリングといこう。霞、跨れるか?」

 

「少し怖いわ。」

 

「まぁ、鈴谷もそんなこと言っていたな。大丈夫だ。すぐ慣れるさ。取り敢えず、手は俺の腰に回すか、肩を掴むといい。その方が安心だろう?」

 

「なら、腰に。」

 

「よしきた。」

 

 霞の手が腰にしっかりと回されたことを確認してVTRを発進させる。目指すは柱島の北端の岬。そこで江田島のほうを見ながらゆっくりしようと思う。目的地まで走っていると、インカム越しに霞が話しかけてくる。

 

「ごめんなさいね、さっきはあんな態度をとって。ホントに自分でもよくわからなかったの。」

 

「まぁ、俺も悪いところはあったしな。それに霞が最初期の艦娘だとしてもこの世に生を授かってから約1年半ぐらいだろう?仕方ないさ。それに霞はまだ抑えられている方だと思うぞ。人間なんて刃傷沙汰になることもあるからなぁ。」

 

「ああ、確かに。新聞やTVで時々ニュースになるわね。」

 

「そうそう。いつの世も最終的に人間が一番怖いのさ。昔から鬼も悪魔も化け物も人間の姿をしているしな。」

 

「フフ、確かにそうかもね。それに鬼はあんたの専売特許じゃない。ねぇ“鬼神さん”?」

 

「う~む、恥ずかしいな。」

 

 そんな他愛ない会話をしながらだと、目的地までもすぐに着いてしまう。タンデムシートから降りる霞に手をかして、2人で岬の平らな場所にレジャーシートを広げ、間宮と伊良湖の甘味を温かいお茶と共に楽しむ。

 

「そういえば、改めて、旭日大綬章おめでとう。」

 

「まだ貰っていないけど、ありがとう。」

 

「しかし、つい数か月前はあの江田島で提督課程を受けていたなんて信じられないわね。」

 

「ホントに。しかも短期講習ときたもんだからびっくりしたよ。」

 

 そんな感じで思い出話をしていると30分も経っていた。霞に「そろそろ戻ろう」と声をかけると、ぐいと首元を引っ張られ、キスをしてきた。

 

「えーっと、今のはキスということでいいのか?事故では無く。」

 

「ええ、そうよ。ふむ、羊羹と最中のおかげか甘いファーストキスになったわね。」

 

「平然とした口調で言っているけど、顔が真っ赤だぞ。」

 

「あんたもおんなじもんよ。」

 

「そらあね。で、理由は?」

 

「あんたの最初は初期艦娘の私がもらうわ。もちろん、みんなにも承諾を得ているわ。」

 

「え?いつの間にそんなもんが決まったの?驚きなんですが。」

 

「いいから、とっとと帰るわよ。」

 

 そう言って、霞は道具を持ってVTRのもとへと向かう。俺も荷物を持ち後を追う。

 

 執務室に戻り、霞の言ったことの真偽を愛宕に確かめると本当だったらしい。そして愛宕からは、笑顔で、

 

「フフ、提督、次は私、愛宕にしてくれます?」

 

 と誘ってきたが「また、今度な。」と言って断った。すると、愛宕は笑みを深めて、

 

「しっかり者の提督で私は嬉しいわ~。でも、いつでも待っていますからね♪」

 

 と言われた。確定事項なんだ・・・。んー、金剛との東京行きも少し怖くなってきたな。貞操の危機かもしれん。

 

 昼食後はソ級の見舞いに行く。ODST用戦闘服を着込んだ憲兵に誰何され、建物の中に入り、入院区画でもジェスタ艤装を着込んだ第1特機中隊員に誰何され病室に入る。もちろん、入室の際にはノックをして返事を受けてから入る。一応女性だからな。

 

 患者用の病衣を着ているせいか肌の白さが余計際立つな。それに点滴の輸血パックの血液の赤色も。

 

「よお、調子はどうだ?痛み止めが効いているだろ?」

 

「ウン、昨日ノ麻酔無シノ手術ヨリカハ大分マシ。」

 

「そうか、艤装は昨日、お前が気絶している間に外して工廠で厳重保管してある。取り戻そうなんて馬鹿な真似は考えるなよ?」

 

「ワカッテイル。アンナ痛イ思イハ二度トシタクナイ。」

 

「それはなにより。ところで今日は見舞い以外に報告があってな。お前さんと同型は“ソ級”と呼称するようになった。そしてお前は“ソ級1号”として公的には呼称される。しかし、俺としては(いささ)か固い呼び名だと思っている。なので、この泊地にいる間は別の、そうだな愛称とでもいうべきか、それで呼ぼうと思っている。どうだ?」

 

「名前ヲクレルノ?ナラ貰ウ。」

 

「希望はあるか?」

 

「ナイ。イヤ、ワカラナイ。ドノヨウニ名ヲ付ケテイイノカ。」

 

「だろうな。泊地の人員に公募のような感じで愛称を決めるがいいか?」

 

「是非モ無シ。任セル。」

 

 どっかの戦国武将みたいな返事をしやがって。

 

「飯はどうだ?内臓に損傷はなかったから俺達が食うものと一緒のモノを出したんだが。」

 

 そう言うと、前のめりになり、

 

「トテモ美味カッタ。降伏シテ良カッタト思ッタ。」

 

「そ、そうか。まあ、この泊地にいる間は飯の心配はしなくていい。さて、今日は此処までにしよう。明日、また来る。」

 

「ワカッタ。」




読んでくださりありがとうございます。

みなさん、よいお年を。
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