深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第82話 横須賀へ

 ソファに座っても未だに抱き着いている金剛を武蔵が何とも言えない表情で見ていた。

 

「武蔵、どうかしたか?」

 

「ん、いや、そのだな・・・。随分と距離が近いと思ってな。」

 

「ああ、それか。すぐに知ることになるだろうが、泊地に在籍していて俺の配下にいる艦娘は、みんな俺に好意を持っていてくれてね。何かと距離が近いのさ。武蔵は別に無理して俺の事を好きにならんでいいからな。」

 

「ん、わかった。ちなみに所属の艦娘は何人いるのか聞いてもいいか?」

 

「金剛に聞かなかったのか。駆逐艦が13名、軽巡が4名、重巡が3名、航空巡洋艦が2名、空母・軽空母艦娘が7名、戦艦が1名、航空戦艦が1名、あとは後方支援要員として明石、間宮、伊良湖がいる。戦艦は武蔵も加入したから2名になるな。それと初期艦娘は駆逐艦の霞だ。階級は准将だ。柱島泊地の事実上の副司令だな。あとは全員が少佐だ。」

 

「了解した。艦娘の人権についてなどは金剛少佐に教えてもらった。」

 

「そうか。金剛もしっかりと仕事をしていたんだな。偉いぞ。」

 

 そう言って、金剛の頭をワシャワシャと撫でる。

 

「もう!!褒めてくれるのは嬉しいケド、髪形が崩れちゃうネ。」

 

「すまん、すまん。まあ、公の場以外ではこういった感じだ。慣れてくれ、武蔵。」

 

「ああ、承知した。」

 

 武蔵が頷く。しかし、ホントに目のやり場に困る格好だったな。今は制服だからいいけど。その後は、レ級も交えて雑談をしながら報告書を書いていく。

 内線が鳴る

 

「『湊だ。』」

 

『閣下、横須賀に入港します。』

 

「『わかった。すぐに上がる。第1特機中隊もジェスタ艤装で最上甲板に並ぶように通達を。』」

 

『了解しました。』

 

 受話器を置いて、武蔵とレ級に向かって言う。

 

「君らのお披露目は、また後日となる。しばらくはこの部屋でゆっくりしていてくれ。今回は金剛のみが艤装をまとって整列だ。」

 

 金剛と共に艤装を身に付けるために格納庫へと一旦下りる。俺はミョルニルアーマーを。金剛は戦艦艤装と近接戦闘パッケージを身に付けて、舷側エレベーターで最上甲板へと上がる。戦艦艤装は幅があるからな。艦内では移動ができんよ。

 

 エレベーターが上がりきると、なるほど、この光景は素晴らしいな。メイヴが6機全て露天係留状態にされており、一番目立つところに第1特機中隊が並んでいる。金剛はそのまま第1特機中隊の横に並び、俺は艦橋へと上がる。艦橋内へと入ると操舵している出原中佐以外が敬礼してくるのでラフに返礼する。

 

「固くならんでいいよ。いつも通りにやろうじゃないか。しかし、艦橋からの景色は壮観だな。」

 

 ホントにデザインと大きさだけなら完全に空母だもんな。6機のメイヴが係留されているのを見ると更にそう思う。これでもまだ一応はおおすみ型輸送艦1番艦“おおすみ”であって艦種変更もされていないからなぁ。

 

 埠頭が近づいてくると大勢の軍人や艦娘が“おおすみ”を見上げていた。タグボートを使わずに接岸する。すぐに舫い綱で艦を係留する。それが終わると最上甲板で整列していた皆がそれぞれの部署に戻る。

 

「出原中佐、明日と明後日はそれぞれ半舷休息にしよう。柱島泊地へは明々後日(しあさって)に帰投する。見学希望者は軍の関係者なら許可しよう。はあ、疲れたよ。」

 

「了解しました。お疲れ様です。」

 

「ちと早いが、俺と第1特機中隊、ガルーダ隊は休息に入る。深海棲艦が出現したら、緊急出撃するのですぐに電話をよこしてくれ。」

 

 そのまま艦橋をあとにして、整備室まで下りる。エレベーターで下りてきた金剛と合流する。

 

「なかなかよい感じだったネー。」

 

「まぁな。」

 

 お互いに装備を外しながら雑談をする。明るく話してくれる金剛は本当に良い艦娘()だ。俺に対して好意を抱いているという点以外はだが。確かに俺は海軍大将で地位も金も得ることができたが、霞やみんなの助けがあってからこそだと思う。それに、一度は死んだ身だ。ミクの力を疑うわけではないがどこかでそれが崩れてしまうのではないかという恐怖もある。そんな考えが顔に出てしまったのか、金剛が心配そうにのぞき込んできた。

 

「テートク、顔色が悪いヨ。大丈夫デスカ?」

 

「ん、ああ、大丈夫。」

 

 と言った瞬間、金剛の両手が伸びてきて、俺の顔をそのたわわな胸に抱き込んだ。ビックリしたが、金剛の体温と聞こえる心音で体に変に入っていた力が抜けていくのを感じる。金剛は俺の頭を撫でながら、

 

「テートクは、1人で溜めこむことがありマス。たまにはこうやってリラックスするのも大事ダヨ?」

 

 と言う。ああ、ダメになりそう。金剛に溺れてしまいそうになる。俺は金剛の背を軽くポンポンと叩き、

 

「大丈夫になったよ。ありがとう。」

 

 と言って、金剛の胸から顔を離す。そして、整備室の入口へと視線を向けて言う。

 

「武蔵、レ級。見ているのはわかっているから入って来なさい。」

 

 少し頬を赤く染めた武蔵となんか妙にキラキラした顔をしているレ級が入ってくる。

 

「・・・提督はいつもこういうことをして英気を養っているのか?」

 

「んなわけないだろ。たまたまだよ。」

 

「金剛ノオッパイニ顔ヲ埋メテミタイ!!提督ノ強サハオッパイニアルンダナ!!」

 

「却下だ。」

 

「私もテートク以外にはしてあげないヨ!!」

 

 金剛、その言い方だといつでもしてくれるように聞こえるからやめなさいとは言えなかった。艦内電話がかかってきたからだ。

 

「『湊だ。』」

 

『出原中佐です。閣下、横須賀鎮守府の長野司令長官が本艦を見学したいとの事ですが、閣下もお会いになりますか?』

 

「『ああ、長野さんか。うし、俺が案内するよ。今はどこにいる?』」

 

『最上甲板でメイヴを見ておられます。』

 

「『すぐに上がる。』仕事ができたから俺はいくが、金剛、武蔵とレ級を艦娘居住区画から出さないようにしといてくれ。横須賀の軍関係者が見学にくるからな。」

 

「了解デース。武蔵、レ級、行きますヨー。」

 

 金剛が2人を引き連れて出て行くのを確認すると、俺はすぐに最上甲板に上がり長野大将を探す。あ、いた。ガルーダ1に装備されているミサイルについて整備員から説明を受けているみたいだ。

 

「長野さん、お待たせしました。」

 

「おお、湊君、すまないね海戦が終わったばかりだというのに。」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。吹雪少佐も先ほどぶりだな。」

 

「はい、閣下。」

 

「そんなに固くならんでもいいぞ。身内だけの内覧会みたいなもんだから。」

 

 そう言うと、少し笑顔を見せてくれた。よしよし。

 

「長野さん、コックピットに座ってみます?」

 

「いいのかね?」

 

「大丈夫ですよ。フライトオフィサのほうには小官が座りますので。」

 

 そんなやり取りをしていると整備員がタラップを用意してくれた。長野大将は上着を脱いで、吹雪少佐に渡す。俺も上着を脱ぎ整備員に持ってもらう。長野大将がコックピットに座り、俺も後席に座る。電源は艦と繋いであるのでエンジンを始動せずに戦闘システムだけを立ち上げていく。

 

「おお、これは凄いな。人が動いているのがわかるのか。このモニターはレーダーではないのだろう?」

 

「ええ、流石に甲板上に人がいる状態でFCS関係のレーダーは立ち上げていません。そちらはフローズンアイ(凍った目)という空間受動レーダーです。大気を押しのけるモノ全てを探知します。」

 

「ステルス機もかね。」

 

「勿論です。」

 

「それは凄い。」

 

 その後も翼を広げたり、主翼を前進翼から後退翼へ可変させたり、コックピットブロックを飛行状態の位置に動かしたりとした。降りてきた長野大将は大変満足してくれたようでその後の“おおすみ”の見学時も上機嫌だった。

 

 艦を後にするときに長野大将は俺に耳打ちしてきた。

 

「今回の海戦、敵は全てレ級だったと聞いている。私の耳にも入っているのだから各鎮守府の司令長官も知っていると思ってほしい。その上でだ。これまでの活躍と今回の戦果を加味すると君には大将以上の地位になってもらわんといけなくなるかもしれん。」

 

「というと?」

 

「元帥号の復活だよ。」




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