深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
「元帥ねぇ・・・。」
昼に長野さんから言われたことを思い出しながら端末に入力する手を止めて休憩をする。
「そんなもんいらねぇって言っても無視されるんだろうな。」
「ゲンスイッテ美味イノ?」
「美味くねぇし、まず食べ物じゃねぇよ。」
「ナァンダ。」
「差し出がましいようですが、私の意見を言っても?」
「ん、言ってみろ、02。」
「元帥とは元帥号のことですよね。今、日本には何人の元帥がいらっしゃるのですか?」
「0だな。」
「となると、湊閣下が初の元帥号保持者となる可能性があるわけですよね。でしたら、是非とも元帥号を受け取られるべきかと。発言力や権威が違いますので。それに、我々の身もさらに安全になりますから。」
「率直だな。まぁ、確かにデメリットよりもメリットのほうがデカい。」
言いつつもため息をつきながら背もたれにもたれかかる。確かに02が言う通り発言力や権威は今よりも増すだろう。それも統合幕僚長を凌ぐほどに。そうなってしまってはシビリアンコントロールの概念から軍が外れてしまわないだろうか。それが心配でもある。
「まあ、まだ噂話の段階だ。本気にするには早いな。」
そう言って、伸びをしてから端末への入力を再開する。柱島に戻るまではとりあえず考えないようにしておくか。
明けて翌日、今日と明日は半舷休息としているので艦内の人員が少ない。俺は先日、金剛と共に東京を観光したので念のため待機中だ。本当は武蔵を外に連れ出したかったのだが、まだ世間に公表前ということで統幕から鎮守府及び泊地敷地内以外の外出は制限されてしまった。まあ本人があまり気にしていないからいいけどな。
そんな金剛と武蔵、それにレ級は今日も俺の執務室にいる。
「ここよりも、居住区画のほうが色々あるだろうに。」
「いやいや、提督よ、私達は別に暇で此処に来た理由は元帥号についてだ。02から聞いたぞ。」
「あ、マジか。そういえば口止めしてなかったな。よし、今から元帥号のことについては世間に発表されるまで他の人員の前では話さないこと。」
そう言うと3人と1尾?が頷く。
「よし。んで武蔵、元帥号について何か意見でもあるのか?」
「いや、昨晩、提督単独での戦果を見せてもらったのだが、化け物かと思ってな。艦隊指揮もそつなくこなしているようであるし。そのような人物が元帥号について悩んでいるだなんて可愛いじゃないか。」
「からかわんでくれ。俺はミクのおかげでここまでこれたんだ。」
「ふむ、ミクというのは妖精さんのことだな。今、机の上で首を横に振っている彼女ではないのか?」
「ん?おう!?なんだ、ミクいたのか。」
「妖精は神出鬼没なんですよー。あ、夜の営みの邪魔とかはしないので安心してくださいー。」
「いや、そこは相手がいないから別にいいんだが。」
「いるじゃないですかー。艦娘の皆さんがー。」
「うっ、まあ、いいじゃないか。うん。ところで何で首を横に振っていたんだ。」
「話しを強引に逸らしましたねー。首を振っていたのは、確かに最初の手助けは私がしましたが、その後の活躍は海斗さんご自身のお力だからですよー。私はサポートしかしていませんしねー。」
「そのサポートでかなり助かっているんだがね。」
「ありがとうございますー。それで、元帥号ですけど貰っておいてもよいかと私は思いますよー。」
「ふむ、ミクはそう思うのか。」
そんな感じでミクと話しこんでいると武蔵が言う。
「なあ、提督。ミクさんと何を話しているかは知らんが、私達を置いてきぼりにしないでほしいのだがね。」
「む、すまん。まぁ、なんだ、ミクは元帥号について貰っておくべきだと思っているようなんだ。」
「それは、私達も同意見だ。」
「そうですネ。私も武蔵と同じですヨ。」
「とりあえず、この問題は上から提案があった時に考えよう。」
「なんだ、もう少し話し合うかと思っていたんだがな。」
「俺はもういっぱいいっぱいだよ。なんか他に聞きたいことあるか?」
「提督の初陣を聞きたいな。」
「私も聞きたいデース。」
初陣ねぇ・・・。第1次首都圏防衛海戦のことでいいのかね?深海棲艦とやりあったのはそれが初めてだからな。
「あれだよな。実戦で深海棲艦との初めての戦闘ということでいいのか?」
「ああ。」
「ハイ!!」
2人ともそれでいいみたいだ。レ級はソファにうつ伏せになっているから聞いているのかどうかもわからんな。
「第1次首都圏防衛海戦と後に呼ばれることになった防衛線が初陣だ。当時は大尉でDE-229“あぶくま”の砲雷科員として参戦した。正直震えたよ。未知の敵相手に戦闘をするのは。アメリカの第7艦隊のDDGが戦闘不能になっていくなか専守防衛を掲げる軍、当時の自衛隊はミサイルや艦砲の射程内なのに撃つことはできなかった。しかし、DE-231“おおよど”に駆逐級からの砲撃が命中してやっと攻撃を開始することができた。しかし、遅すぎた。“おおよど”は集中砲火を浴びて沈んでしまった。多数の乗員と共に。そして、俺は“あぶくま”のC.I.Cで8発の対艦ミサイルを撃ち尽くした後は、76mm砲による艦砲射撃の目標選定を行なっていた。しかし、レーダーでは深海棲艦はほとんどが同じ大きさでしか映らないからな。艦橋に上がって双眼鏡を使いながら目視で目標を探しては撃ち込んでいたよ。あの時の海戦では虎の子のDDGはほとんど被害が無く、DEやDDが沈んだ。森原中佐の弟さんが乗艦していたDD-124“みねゆき”もその時に沈んだ。戦艦級の砲撃が直撃して、艦体が真っ二つに折れて爆沈した。航空隊や空軍の援護、第7艦隊の生き残りの援護もあって何とか首都圏に敵の砲弾が落ちてくることは防げたが、多くの戦死者を出した。これが俺の初陣だ。その海戦の後に、始まりの艦娘と呼ばれる電、漣、吹雪、叢雲、大淀、明石、間宮、伊良湖が現れた。こんな感じでいいか?」
「うむ、充分だ。その時にはまだ先日見た甲冑は身に付けていなかったんだな?」
武蔵の問いに首肯し、言う。
「甲冑では無くてミョルニルアーマーな。あれを身に付けるようになったのは、第2次首都防衛海戦の時に1回死んで、ミクに
「そうなのか。しかし、1回死ぬということは、私達艦娘に近いモノを感じるな。艦娘のほとんどは戦没するなりして一度は艦としての生を終えた存在なのだろう?」
「そういう学者先生もいるってだけだ。真相はわからんよ。」
「ちなみにどのように戦死したのか聞いてもいいかい?」
「ああ、いいぞ。今は俺の指揮下で活躍している霞を爆撃から守ろうとして、投下された爆弾に手を伸ばしたんだ。んで、指先が爆弾の信管に触れた瞬間、勿論爆発して半身を吹き飛ばされた。丁度この辺りからぐらいだな。そんで、海に沈んでいく俺をミクが
吹き飛んで千切れた部分を手で示す。
「その時に恐怖などは無かったのか?」
「恐怖・・・ねぇ。沈みかけている“あぶくま”から救命艇を指揮して脱出する時の方がよっぽど怖かったな。置いてきてしまった部下はいないかずっと考えていたよ。霞を
「そうか。ありがとう。相棒、話してくれて。」
「いんや、他にも聞きたいことがあったらいつでも聞いてくれていいぞ。仲間だからな。」
そう言って、笑って武蔵に言うと、
「そ、そうだな。」
と言ってそっぽを向かれてしまった。なんかやらかしたか?金剛がジト目で見てくるし、ミクは頷いているし、02はやれやれといったふうに首を振っている。思い当たる節が無いんだかなぁ。
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