深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

84 / 101
第84話 泊地へ帰還

 横須賀で計3日半過ごし、柱島泊地へと戻ってきた。道中では深海棲艦の襲撃も無く平和なものだった。まぁ、哨戒に出たガルーダが偵察艦隊を見つけて4個艦隊ほど沈めたがな。

 

 柱島泊地の岸壁に接岸するとすぐに霞を呼んだ。定時通信で話していたから状況の把握は出来ているはずだ。

 

「きたわよ。」

 

「早くて助かるよ。」

 

「まぁ、初期艦としては当然よ。で、貴方が武蔵少佐かしら?ああ、口調はいつも通りでいいわ。」

 

「了解した。確かに私が武蔵だ。貴方が霞准将か?」

 

「そうよ。ま、公の場以外では階級抜きで呼んでくれて構わないわ。みんなそうしているし。」

 

「そうか。ならばそのようにさせてもらおう。」

 

「で、あんたが捕縛されたレ級ね。」

 

 そう言って、霞はレ級のほうへ視線を向ける。

 

「ソウダゾ。」

 

「あとであんたと同じような境遇の潜水艦ソ級に会せるからね。攻撃したらこいつがキレるわよ。」

 

 言いながら俺を指差す。俺は、曖昧な作り笑いをしながら、

 

「命まではとらんよ?」

 

 と言う。するとレ級は青白い顔を一層青くして首を縦に勢いよく振る。そこまで怖いのか、俺・・・。

 

「では、金剛さん、武蔵さんの案内をお願い。私はこのレ級と司令官と一緒にソ級のところへ行くわ。」

 

「了解デース。さ、武蔵、泊地を案内してあげるネー。」

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

 金剛と武蔵はそのままタラップを下りていく。

 

「さて、レ級。アンタはこのポンチョを羽織りなさい。尻尾が隠れるようにね。尻尾も動くんじゃないわよ。」

 

「ウン、ワカッタ。」

 

「承知しました。」

 

「それじゃあ、司令官、行きましょ。」

 

 霞の先導のもとレ級と共に“おおすみ”を降りる。

 

「ソ級1号は医務室から移したわ。今は艦娘寮にいるの。」

 

「問題はなかったか?」

 

「特に問題はなかったわね。彼女からの敵意が無いからかしら。」

 

 そんな感じで俺が泊地を留守にしていた間の通信では話せないような事を話してくれる。通信では傍受の恐れがあるからな。俺はそれに相槌を打ちながら歩く。レ級は・・・キョロキョロしているな。まあ、気持ちはわからんでもない。

 

「オオ~!!」

 

 ガルーダがアレスティング・ワイヤーを使用した着陸装置で次々に着陸するのを見てレ級01は歓声をあげている。

 

「アレ、強イノカ?」

 

「お前たちの艦載機を蹂躙した兵装があっただろ?あれを搭載できる戦闘機だ。」

 

「ア、アレカ・・・。怖カッタゾ。」

 

「俺も味方じゃ無けりゃあ恐怖を覚えるよ。」

 

「デモ、ドコカラ撃タレタカ、ワカラナカッタナァ。」

 

「そりゃあ、24,000m上空をマッハ1.7以上で飛行している戦闘機から発射される誘導弾なんだ。そうそう発見は出来んだろう。」

 

「ハァ、凄イナァ・・・。」

 

 そんな感じで雑談をしていると、

 

「着いたわよ。」

 

 という霞の言葉で背筋がピシッとなる。ODST用戦闘服を着込んだ憲兵たちがやって来る。彼女らは俺と霞に対して敬礼をし、視線をレ級01へと移す。

 

「霞准将がおっしゃられた深海棲艦はこちらの方でしょうか?」

 

「そうよ。後は湊大将の指示に従って頂戴。」

 

「了解しました。」

 

 俺に話しが振られたのでまずはねぎらいの言葉をかける。

 

「まずは、警備ご苦労。ソ級1号のこともあり、緊張を強いているだろうが今後も頼りにしている。それで、ここにいるのが今回、降伏したレ級01だ。尻尾がついているがそちらも知能と理性がある。そちらは02と呼称している。」

 

「了解しました。ここからは小官達が引き継ぎます。レ級01、02こちらへ。」

 

 憲兵の半数がMA5Dアサルトライフルを突きつけながら、レ級を艦娘寮へと入っていく。

 

「あとは任せるわ。司令官、執務室に行きましょう。」

 

 霞に手をとられてそれに従う。

 

 執務室につき自分の椅子に座ると長ーく息を吐く。

 

「随分とお疲れのようね。」

 

 クスッと笑いながら霞がお茶を出してくれる。「ありがとう。」と礼を言いながら、霞を手招きする。

 

「どうしたの?」

 

「いや、東京に折角行って時間もあったからな。これを買ってみたんだ。気に入らなければ売ってもいいから。」

 

 そう言って、長方形の箱を渡す。

 

「開けても?」

 

「もちろん。」

 

 霞が蓋を開ける。中には駆逐艦霞の進水月である11月の誕生石、トパーズとシトリンが散りばめられた錨型のネックレスが入っている。東京に行く日が決まってから有名宝石店に頼んで作ってもらったものだ。

 

「どうだろうか?ペンダントなら作戦行動中も身に付けていられると思ってね。」

 

「嬉しいわ。ありがとう、司令官。」

 

 霞はそう言って、蓋を閉めて自分の机の上にそっと置いた。

 

「つけないのか?」

 

「ん。今はね。また、着けたら見せてあげるから。」

 

 そんなもんなんだろうか。女性にアクセサリーのプレゼントをしたことがないからわからないな。

 

「そうか。楽しみにしとくよ。話しを仕事の内容にするけど、ソ級とレ級の愛称を泊地内で明日から公募しようと思うんだがどうだろうか?」

 

「いいんじゃないかしら。確か、張り紙の原案を送ってきていたわよね。印刷をしたのだけど、どこにしまったかしら?」

 

 霞が机の中を探している間に執務室の扉がノックされ「金剛デース。」と聞こえたので入室を許可する。金剛と武蔵が入ってくる。

 

「必要な場所を武蔵に案内しました。それと、武蔵の艤装は工廠に運び込んで機関等の改装作業に入ったネー。」

 

「おう、ありがとな。金剛。」

 

「あ、あったわ!!あら、ごめんなさいね。大きな声を出して。」

 

「いや、気にするな。丁度いい、金剛、武蔵、そこに座ってくれ。霞、すまんが2人分の茶を頼む。茶菓子は俺が準備するから。」

 

 そう言って、少し私物棚をゴソゴソする。あ、あった。んー、みんな、これ好きかなぁ。地元でも苦手だと言う人が結構いたんだよなぁ。ちなみに俺は好きだ。

 

「はい、金剛さん、武蔵さん、お茶をどうぞ。」

 

 霞が2人にお茶を出したので俺も茶菓子を皿にのせて出す。

 

「“かるかん饅頭”と“かすたどん”だ。“かるかん饅頭”は知っているかもしれんが、“かすたどん”はカスタードクリームをスポンジで包んだ蒸し菓子だ。」

 

「ほう、美味そうじゃないか。それでは“かすたどん”からいただこう。」

 

 口調とは裏腹に上品に“かすたどん”を口に運ぶ武蔵。しばらく無言でいたが食べきると、俺を見て、

 

「もっとないのか!?」

 

 と催促してきた。いや、あるにはあるが・・・。霞と金剛も“かすたどん”を食べ終わり、武蔵と似た様な眼差(まなざ)しを送ってくる。

 

「わかったから。そんな目で見んでくれ。他のみんなには内緒な。」

 

 そう言うと3人そろって頷いた。素直なことで。




読んでくださりありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。