深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第89話 叱責と反省

 深海棲艦水上艦隊群と潜水艦群を殲滅した仮称“第二次レイテ沖海戦”が終了してから2時間。出撃していた艦娘艦隊と特機を全て収容し終えた“おおすみ”は、“こんごう”指揮下の輸送船団に合流するべく前進していた。

 

 その“おおすみ”の執務室で俺は武蔵と向き合っている。

 

「なぜ、お前だけが呼び出されたのかわかっているか?」

 

「わからんな。(いくさ)には勝ったのだ。そして、私はそれを指揮していた1人だ。賛辞を受けることはあっても・・・。」

 

「あんな自分中心の指揮があるか!!」

 

 思わず大声を出してしまった。一緒に武蔵に言い聞かせてもらうために来てもらっていた金剛も驚いた顔をしている。

 

「次席艦である愛宕からの進言も無視して、自己の能力だけを頼りに戦闘していて何が指揮だ!!よく指揮官だと言えたものだな!!旧帝国海軍最強の不沈戦艦であることに(おご)ったか!?」

 

「なっ!?わ、私はただ被害を少なくしようと・・・。」

 

「ああ、被害は少なかった。被害はな。しかし、お前は・・・。いや、違うな。俺が悪い。数回とはいえ哨戒任務で実戦を随伴艦で経験した武蔵を今回の遠征艦隊に選んだのも、旗艦として任を与えたのも俺だ。大声を出してすまなかったな、武蔵。しかし、これだけは忘れないでくれ。仲間を頼ってくれ。自分1人で背負(しょ)い込むな。下がってよろしい。」

 

 そう言うと、武蔵は口を開きかけ閉じ、敬礼をして執務室を出ていく。

 

「武蔵のメンタルが心配デス。追いかけます。」

 

 金剛も退室し、俺1人となった。全体重を椅子にあずけて天を仰ぐ。まあ、正確には天井だが。武蔵が参戦した哨戒任務では彼女以外の艦娘が指揮をとっていた。それを見て、学べていたと思ったのだが。一度も旗艦を経験させなかったのが悪かったな。それに俺の戦闘映像を資料として見せたのも影響を与えたんだろう。あれはスタンドプレーが多いからな。

 

 今回の第1艦隊の被害について艦娘達は全くと言っていいほど無かった。が、しかし、翔鶴と瑞鶴の艦載機の損傷度合いが著しかった。それもそのはず、武蔵に並ぶほどの遠距離攻撃ができるのが空母艦娘の2人だけだったからだ。だから、2人にしわ寄せがいってしまった。

 

 そのせいだろう。帰還時の翔鶴と瑞鶴の疲労にまみれた顔は見ていて辛かった。どこも損傷していなかったがすぐに入渠と休養を命じた。空母艦娘は搭載している艦載機を自分の手足のように扱うため相当に脳を酷使する。であるから、通常はいくつかの飛行隊にわけてその長機を操ることで負担を減らす。

 

 しかし、今回の武蔵の戦闘指揮は複数の目標への同時攻撃であったため、全ての、70を超える艦載機を1機ずつ操らなければならない羽目になった。勿論、訓練して慣れれば疲労も減るが、まだ1年も経っていない。通常なら新兵同然の扱いをしてもおかしくない状態だった。

 

 まあ、救いは羽佐間中尉率いる特機第1小隊が長距離狙撃にて的確に援護してくれたこと。また、ガルーダ3フライトオフィサの鈴木少尉が、特機に的確に目標を割り振ったおかげで翔鶴と瑞鶴は過負荷による心神喪失状態に陥らなかったことか。

 

 任務中で無ければ酒でも呑んでそのまま意識を失うように眠りたいものだ。そんなことを考えながら執務室内に備え付けられた冷蔵庫からドクターペッパーを取り出して飲む。少しスッキリした。

 

 さて、報告書を作成しないといけないが、俺の叱責を受けた武蔵が戦闘詳報をしっかりと書き上げられるかは疑問だな。次席艦だった愛宕に頼むか?いや、悪手だな。武蔵へ精神的にダメージを与えかねん。俺は金剛の携帯端末を呼び出す。

 

『ヘイ、テートク。』

 

「『金剛、すまんが武蔵の様子はどうだ?』」

 

『んー、大丈夫デスヨー。』

 

「『そうか。・・・話せるか?』」

 

『今、代わりますネ。』

 

 そう言って、受話器からは金剛と武蔵のやり取りが聞こえる。しばらく無言で待つ。

 

『・・・武蔵だ。その・・・、確かに私は自分の能力に驕っていたのかもしれない。しかし、しかいしだ、私は仲間が傷つく姿は見たくなかった。先の大戦のように・・・!!だから、この世に人の形で生を受けた私は皆を守らなければならないと思った。』

 

「『・・・ああ、その気持ちはよくわかる。しかし、俺達は残念ながら兵士だ。そして、俺は将官で元帥。お前は佐官だ。指揮する立場の者となる。感情が作戦に影響を与えるのは人として当然であろうと思う。お前自身のその思いも間違っていない。だが、俺達は、故国は、いや、全世界は深海棲艦との戦闘状態にある。そして、我々は常に劣勢だ。我々とは人間と艦娘のことだ。俺は、一度は死んだ身だが、ミクのおかげでこうしていられる。ミク達、妖精さんへのお返しという意味を込めて、俺はこの戦争が終わるまでは死ねない。死ぬのはこの戦争が終わってからだと思っている。武蔵、お前も死に急ぐな。いいな。』」

 

 失い、復活した半身を眺めながら言う。

 

『・・・わかった。そうだな、しばらくは愛宕少佐の次席艦にしてもらえないだろうか?もう一度、指揮について実戦で学びなおしたい。』

 

「『いいだろう。皆でよく話し合うといい。まずは金剛に言ってみることだ。』」

 

『そうだな。そうしよう。・・・次は失望させんよ。』

 

「『ああ。期待しているよ。』」

 

 端末の通話終了ボタンを押して、すぐに内線をかける。相手は3コールで出た。早いな。

 

『特機第1小隊、赤間一等曹長であります。湊元帥閣下。』

 

「『帰還したばかりですまんな。羽佐間中尉はいるかね?』」

 

『少々お待ちください。』

 

 保留音が流れるなか、机上の端末で今回の特機第1小隊が挙げた戦果を確認する。凄まじいの一言だ。ロング・レンジ・ビーム・ライフルによる長距離狙撃にて仕留めている。反撃を許さず、一切の被弾無しでだ。レ級がおらずジム・スナイパーⅡ艤装を着込んでいるとはいえ、3人の人間が挙げた戦果としては上々のモノだろう。敵潜水艦群を駆逐した第3小隊は言うに及ばずだが。

 

『お待たせしました。羽佐間です。』

 

「『疲れているところにすまんな。今回の水上戦を貴官はどう思ったかを聞きたくてな。』」

 

『今回の水上戦について、ですか・・・。こんなことを言うと、通常装備の部隊員から睨まれそうですが楽でしたね。』

 

「『ほう?』」

 

『まず、敵艦載機がガルーダのマイクロミサイルポッドで8割以上が墜とされ、艦娘艦隊の艦載機によって一掃され制空権を完全に確保されていました。そして、ミサイルポッドが敵旗艦を沈めたことにより敵の指揮系統が麻痺し、統制された艦隊運動をしなくなり連携も(つたな)いモノとなりました。そして、艦娘艦隊からの砲撃と空襲ですね。あれを敵は警戒し、我々から意識を逸らす艦隊が多くいました。』

 

「『武蔵少佐の超長距離砲撃か・・・。』」

 

『ええ、命中しなくとも敵は脅威と認識したようですね。』

 

「『フムン。参考になる。ありがとう。ところで、諸君の挙げた戦果だが臨時の賞与がいいかね?それとも勲章?』」

 

『・・・小官は強欲でして、両方戴きたいのですが?』

 

「『ハハハ。だろうと思った。第3小隊の橋島少尉も同じ答えだったよ。彼らには帰還中に聞いていてね。』」

 

『おや、そうだったのですか。少尉からは何も話しは・・・。ああ、いや、ありましたな。閣下から良いお話しがあるだろうと。なるほど。このことでしたか。』

 

「『統合幕僚監部のお偉いさん方には嫌とは言わせんよ。というか、もう既に進達してある。』」

 

『よろしいので?』

 

「『俺は国民的英雄で元帥第1号だ。無碍(むげ)には出来んさ。それにこのくらいはしてもらわんと、困る。この任務のために諸君らを選抜したのだから。』」

 

『では、閣下にお任せします。』

 

「『ああ。では、ゆっくり休んでくれ。』」

 

 同じようなやり取りをガルーダ隊とも行い、臨時の賞与と勲章の進達をした。“おおすみ”の乗員達には特別賞与が事前に決まっている。そして、柱島泊地で留守を預かってくれている皆にも特別休暇を与えることを決定している。残念ながら賞与は出ないので、頑張って哨戒任務で敵を狩り、手当で補って欲しいものだ。まあ、哨戒任務をするほどの近海に深海棲艦が接近するのはあまりよろしいことではないのだけど。

 

 船団は既にフィリピン沖を抜けて、シンガポール海峡を目指している。海峡はシンガポール軍が接した沿岸砲台とミサイルの射程内になっているので俺達の出番は少ないはず。そうあってほしい。その後はマラッカ海峡を抜け、アンダマン海、インド洋、アラビア海、最終目的地のペルシャ湾を目指す。行程を考えるだけでゲンナリしそうだ。

 

 ああ、そうそう。昨夜、G-SAVIOUR(Gセイバー)を見ていたらミクが、出てくるMSについて聞いてきたので好きな機体を答えたら、笑顔で部屋を出ていったんだよな。今日は戦闘があったから気付かなかったが、新型のMS艤装を作っているんじゃないだろうな?あれの舞台U.C.223だぞ。まさかな。




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