深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
中須少将指揮下の輸送船団の護衛艦隊と潜水艦隊が前線に急行していることを、戦闘中の金剛たちにも伝える。まあ、驚いていたな。気持ちはわかる。羽佐間中尉なんてあからさまな舌打ちをしたぞ。んで、八島中佐もため息をついていた。
「『まあ、そういうわけで前線で活躍中の諸君、巻き込まれないように注意してくれ。』」
『『『了解。』』』
とても呆れた調子の返答ではあるが、一応は了解してくれた。大型モニターには微速から後進をかけ始めた“おおすみ”の横を“こんごう”以下護衛艦隊と潜水艦隊が抜けていくのが輝点で表示されている。すると、C.I.C要員の1人が慌てた様子で口を開く。
「データリンクにてハープーンの全弾発射を“こんごう”が指示!!潜水艦隊にもです!!」
「馬鹿が!!」
思わずドンッと体を支えるための手すりを叩いてしまった。スパルタンとして強化された肉体の打撃に手すりは耐え切れず、凹の字状にへこんでしまった。しかし、まだ往路の途上で虎の子のハープーンを補給艦がいるとはいえ、全弾発射など馬鹿げている。俺は、上位者権限で中止命令を出そうとしたが遅かった。
「ハープーン発射されました。全弾の目標をマーキングします。」
止められなかったか。データリンクでハープーンの目標の詳細が大型モニターに表示される。ああ、クソ。なんで全部が戦艦級なんだ。1撃で仕留めきれないのは分かっているはずだろうに。金剛たち艦娘艦隊の援護にもなりやしない。せめて目標が巡洋艦級以下であれば・・・。俺の考えていることを察したのであろう、出原中佐が進言してくる。
「閣下、あれでは、損害は与えることは出来ても沈めることはできません。本艦に搭載されている多目的ミサイルにて追撃を加えてはいかがでしょう?」
「良い案ではある。しかし、見てみろ、中佐。中須少将たちはハープーンを撃ち終わっても前進を続けている。恐らくは主砲よる攻撃を加えるつもりだろう。そこにこちらが攻撃して撃沈してみろ、戦闘詳報に無いことばかり書かれるぞ。」
「しかし、127mmでは、軽巡級以上は厳しいかと。」
「それでも、やるつもりなんだろうな。『金剛少佐、護衛艦隊が対水上砲戦を行うようだ。巻き込まれないように注意しろ。それと、手負いだろうが戦艦級は真っ先に沈めろ。』」
『へっ!?127mmで対水上砲戦!?り、了解デス。近接戦闘中の夕張小隊と合流して、砲戦のみで戦闘を継続シマス。目標の優先度も了解デス。』
「『頼んだ。』・・・中佐、被害はどれほど出ると思う?」
出原中佐は腕を組み、暫し考え込み、口を開く。
「金剛少佐率いる艦娘艦隊が戦艦級を減らせば、小破が2、3隻程度で済むかと。ガルーダ1のECMにて敵はレーダー射撃を行えませんから、直撃弾さえもらわなければ至近弾か、接近しすぎての小口径砲や機銃による攻撃による被害となるでしょう。」
「だから、小破止まりと?」
「はい。」
「そうだな。そうであってほしいものだ。しかし、何か一手あれば・・・!?」
そう歯噛みしていると、
「ありますよー。」
そう言って、ミクがフヨフヨとやってきた。俺は驚いてミクのほうに目をやると、
「中須少将でしたっけ?彼にそんなに不快感を与えずに援護する方法が。」
「なんだい。それは?」
「格納庫の整備室へ来てくださいー。先に行って待っていますねー。」
出原中佐は妖精さんが見えないが、今の会話は俺とミクが
「ミクさんは何と?」
「護衛艦隊を手助けする方法があるらしい。格納庫へ来いと言われた。」
「わかりました。『総員に告ぐ。これより、湊元帥閣下は特殊作戦に就く。決して口外しないように。』」
「感謝するよ。中佐。」
これで、俺は公然と見える透明人間となったわけだ。早足で格納庫のミョルニルアーマーが置いてある整備室へと向かう。中に入るとミョルニルアーマーの隣にMS艤装が置いてあり、ミクが他の妖精さんへ指示を出し、最終チェックをしていた。
「Jセイバー?」
「はいー。フライトユニットを装備したハイマニューバ・モードですよー。これはどこにもお披露目されていませんから、特機の予備人員が文句も付けにくいかとー。実際、この艤装以外にも製造中ですが、艦内では早々できるものでもないのでー。これを含めて2機が実働可能ですー。」
「なるほど、では、俺が使い終わった後は特機へまわすのか?」
「いえー。このJセイバーは海斗さん用にチューンナップをしていますので、実質、海斗さん専用機ですねー。残念ながらカラーリングは他のと一緒ですけど、ミョルニルアーマーみたいに専用色にしたらバレちゃいますからねー。」
「ああ、カラーリングは別にいい。どの程度、強化した?」
「出力、推力、共に倍ですねー。反応速度は3倍です。あ、武装は通常のビーム・ライフルとビーム・サーベル、ビーム・シールドになりますのでー。」
「まあ、体を慣らしながら前線に向かおう。」
「では、準備が出来ましたので、どうぞー。」
ミクにそう言われてJセイバー艤装を着込んでいく。通常のMS艤装には無い神経接続もあるようだ。これが反応速度3倍の大元だろうな。そう思いながら頭部ユニットを被ると、ゴーグル・アイ越しの映像が映し出される。顔を上下左右に振ってみるが、特に問題なく映し出されているようだ。
整備室をミク達の敬礼で見送られながら出て、エレベーターへ向かいながらC.I.Cに通信を繋ぎ、出原中佐を呼び出す。
「『中佐、今、MS艤装を着込んだ。新型になる。舷側エレベーターで最上甲板へ移動中だ。
『・・・よし、確認できました。』
「『常に俺に情報を流すように、通信は繋いだままで頼む。』」
『了解しました。』
デッキクルーの誘導に従い、カタパルトへ向かう。そして、両足をカタパルトへ固定する。ジェット・ブラスト・ディフレクターが持ち上がるのを確認し、推力を最大まで上げる。間もなく、カタパルトオフィサーの合図と共に打ち出される。300km/hを超える速度から更に加速する。
高度100mで800km/hを少し超えたあたりで速度が伸びなくなった。ここが限界か。HUDに映るレーダーに従い、護衛艦隊が展開している海域へと向かう。ちなみに、ガルーダ1フライトオフィサ迫中尉いわく、「全艦が回避行動をとっており、援護が入らないと逃げ切れないだろう。」とのことだ。まったく。
っと、見えてきたな。お、元気にオート・メラーラの127mm速射砲が火を噴いているが、駆逐級に損害を与え、沈めることは出来ても軽巡級以上は難しいようだ。戦艦級なら特に。俺はその戦艦級にビーム・ライフルを向けて発射する。真っ直ぐに伸びたビームは空気を斬り裂き戦艦級の頭を吹き飛ばした。そのまま沈み始める。
この初撃で敵艦は俺に気付いたようで対空砲火展開する。ビーム・シールドで防ぎながら重巡級、-恐らくはリ級-にシールドごと体当たりをして、吹き飛ばす。こちらに主砲を構えた軽巡へ級をビーム・ライフルで撃ち抜き沈める。すると、通信が入る。
『そこのMS艤装!!何者だ!?官姓名を名乗れ!!』
中須少将からだった。感謝の言葉も無しかよ。救いようがないねぇ。俺は、そのまま出原中佐に対処を任せる。
『中須少将閣下。そちらのMS艤装は新型で特機の予備人員が運用しています。ただし、緊急出撃だったため、頭部ユニット内のマイクの調整不良により通信は受信することしかできません。そちらの状況はガルーダ1によって把握しています。彼が敵を引きつけている間に後退を。』
『・・・・わかった。進言を聞き入れよう。』
よし、護衛艦隊を引かせるのは目的達成だな。潜水艦隊も後退するだろう。しかし、出原中佐の声には抑えきれない怒りが含まれていたな。中須少将もそれに呑まれたようだ。
護衛艦隊の近くに展開した深海棲艦を片づけ、金剛たち艦娘艦隊と合流する。見慣れないMS艤装に警戒しているようだ。通信マイクを切り、外部スピーカーのみ起動した状態にして声をかける。
「俺だよ。金剛。」
「!?テートク、何でMS艤装を?」
「護衛艦隊の後退の手助けを俺がしたと思わせないようにさ。金剛たちもここにいるのは特機隊の予備人員だと思って行動してほしい。これは命令だ。」
「了解デース。んん、それじゃあ、頭も撫でてもらえないデスネー。」
「それは“おおすみ”に戻ってからだな。さ、残敵を掃討するぞ。武蔵も調子がよさそうで良かったよ。」
「うむ、金剛少佐は私の利点をよく活かして指令をしてくれるから、楽に戦闘が出来ている。」
「なら、よかった。夕張達は近接戦闘をしていたようだが、大丈夫か?」
「大丈夫ですよー。敵さん、
「そうか、そうか。」
そんな呑気に話しながらも、全員が発砲をやめない。時折、砲弾やビームが命中していない敵が水上から消えるが、恐らく水中型ガンダムのアンカーで海中に引きずり込まれているんだろうな。知らない人間が見たら一種の恐怖映像だな。
俺が戦闘に加わって27分後には深海棲艦は完全に掃討された。さて、護衛艦隊の被害はいかほどかねぇ。戦死者が出ていれば水葬か、どこかの港に一旦寄るか?
読んでくださりありがとうございます。