深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第98話 帰艦

 オマーン近海に展開していた黒い艤装の深海棲艦艦隊群を特機とガルーダ、“おおすみ”と共に殲滅し、特機とガルーダには“おおすみ改”での補給を、“おおすみ”には金剛達が戦闘している輸送船団を狙っている深海棲艦艦隊群の殲滅を命じた。まぁ、MS艤装の特機とメイヴを有しているガルーダが金剛達に合流すればあっという間に片付くだろう。

 

「ふぅ。」

 

 体を一通りほぐしてから港湾棲姫の前の地面に座る。椅子?んなもん特注じゃねえとミョルニルアーマーの重量に耐えられずにゴミになるだけだな。

 

「吸ってもいいか?」

 

「煙草カシラ?私ノ遠イ記憶ニモ吸ッテイタ人ガイタワ。気ニセズニドウゾ。」

 

「有り難い。(たかぶ)った神経を抑えるための吸入薬を兼ねているんだ。」

 

 そう言いながらヘルメットを取り、イヤホンとマイクがついたヘッドセットを付ける。これで通信は問題なく行える。それから精神安定剤入りの煙草を取り出して吸い始める。短期間で色々とありすぎた。

 

 様々な思いを含んだ紫煙が霧散していく。港湾棲姫は無言だった。もちろん、ここまで俺を連れてきた連中も。何かを感じ取ってくれたのかねぇ。有り難い配慮だ。これで、深海棲艦とはいえ人目がなかったら泣いていたかな?わからんねぇ。ただ、心の中を空っぽにするように吸っていたらすぐに1本目を吸い終わった。携帯灰皿に吸殻をしまい2本目に手を出そうか迷っていると意外な提案が港湾棲姫の口から飛び出した。

 

「紅茶ハオ好キカシラ?」

 

「嫌いではないが、あるのか?」

 

「エエ。戦利品ヨ。2人分オ願イネ。」

 

 側付きの頭の艤装が無いが、体格などから恐らく空母ヲ級だろう。彼女が一礼し場を離れる。俺は横目でそれを確認しつつ話しを続ける。

 

「ああ、なるほどねぇ。でも、これからはそれができなくなるぞ。」

 

「海ガアレバナンデモデキルワ。深海ノ資源ヲ売ッテモイイシ、漁業モイイワネ。」

 

「ああ、確かに。俺達、人間と艦娘だけでは手が足りないな。特に深海は。」

 

「深海ハ元々、私達ノ棲ミ処ヨ。任セテホシイワネ。」

 

「餅は餅屋ってわけか。」

 

「ソウイウコトヨ。」

 

「ん?何で(ことわざ)がわかるんだ。艦娘と一緒で魂が覚えているのか?」

 

「簡単ニ言ウトソウネ。デモ、私ハコノ通リ、陸上用ノ艤装ガ主武装ダカラ、ソノ、軍人ヤ船乗リダケデハ無クテ色ンナ人ノ想イガ混ザッテイルノ。ソウ感ジルコトガアルワ。」

 

「!?民間人の魂の想いか。それも悲しみや憎しみ、怒りといった。」

 

「ソウヨ。ア、飲ミ物ガ来タワ。ドウゾ召シ上ガッテ。オ茶請ケハ無イケド。」

 

「ああ、いただくよ。」

 

 俺は、港湾棲姫と紅茶を持ってきてくれたヲ級に礼を言い、カップを口に運ぶ。良い茶葉を使っているんだろうな。淹れ方も良いはずだ。香りが良い。後味もサッパリとしてエグミや苦みが残らない。

 

 改めて、紅茶の礼を言う。

 

「美味かった。ありがとう。さて、これからのことだが・・・。っと通信が入った。少し待ってくれ。」

 

 港湾棲姫は微笑みながら頷く。紅茶の味を褒めたのが良かったのか?

 

「『こちらシエラ01。』」

 

『金剛デース。出原中佐は特機、ガルーダ、ワタシ達の収容作業指揮と周辺警戒で忙しいので、ワタシが簡易報告を行イマース。輸送船団を襲うつもりだった深海棲艦艦隊群は殲滅シマシタ。大きな被害は小破が数名デス。それ以外はかすり傷程度デシタ。特機とガルーダは被弾無し。輸送船団は結局、深海棲艦の射程には入れませんでしたので、こちらも被害はありまセーン。ただ、宮口准将が誘導弾攻撃を命令したようですが、ワタシ達が接近戦を行なっていたため、“こんごう”艦長の佐伯大佐が同士討ちの可能性があるとのことで、艦長権限で却下したようデース。他の“きりしま”、“ちょうかい”、“みょうこう”、“たかなみ”、“まきなみ”、“そうりゅう”、“うんりゅう”、“はくりゅう”の全艦も艦長によって却下されてイマース。また帰艦後に報告書を提出シマース。通信終わりデース。』

 

「『よくやった。投稿した者達を連れて合流する。少々遅れる。通信終わり。』しかし、宮口には困ったものだ。働き者の無能ほど足を引っ張り、損害を出す奴はいない。」

 

 思わず、そんな言葉が口から出てしまった。俺はすぐに笑顔を作り、港湾棲姫達を見回す。

 

「諸君、おめでとう。オマーン周辺の黒い艤装の深海棲艦艦隊群は完全に殲滅された。次の戦力投入があるまでに、本隊に合流する。航行に支障のある者はいるか?」

 

「・・・、イエ、皆ハ大丈夫ナヨウネ。」

 

「それでは、さっさと出発しよう。オマーン陸軍にスールを奪取してもらわんといかんからな。」ヘルメットを装着しながら言う。

 

 俺と港湾棲姫を先頭にスールから出港する。殿(しんがり)は港湾棲姫の所まで案内してくれたネ級上位体だ。スールから距離をとってからオマーン軍の統合作戦司令部に通信を入れる。

 

「『こちら日本海軍、元帥大将の湊だ。聞こえているか?』」

 

『こちらオマーン統合作戦司令部です。感度良好。』

 

「『スールから敵性勢力の一掃を完了した。投降した者たちを連れて帰艦中。作戦は成功した。』」

 

 一瞬だけ沈黙が通信を支配した。そして、次の瞬間には歓声と歓喜の声、感謝の言葉の嵐が爆発した。

 

「『あー、喜んでもらえているのは嬉しい。感謝の言葉も受け取ろう。しかしだ、貴官らの作戦はまだ終わっていないだろう?歩兵部隊と装甲戦力をスールの市街地へ入れて内外に奪取をアピールしなければならんだろう。』」

 

『ええ、そうです。今、待機中の陸軍部隊に指令を出しました。本当にありがとうございます。あなた方は英雄です。』

 

「『そういうのはガラじゃないな。本国では私の事は鬼神と呼ばれている。まぁ、悪魔(デーモン)の上位種で要は恐ろしい神ということだな。つまりヒトでは無い。だから、私は英雄じゃないのさ。』」

 

『では、勇敢なる悪魔(デーモン)に最大限の感謝を贈らせていただきます。』

 

「『受け取ろう。今後の事は大使館と頼む。以上。通信終わり。』」

 

 これで、まぁ一仕事終わりか。もう一仕事は姫さん達をどうするかだな。

 

「港湾棲姫。貴女には“おおすみ”のなかで過ごしていただきたい。監視付きだが行動の制限はかけない。危険区域は除くが。」

 

「他ノ子ハ?」

 

「彼女たちには交代で“おおすみ”にて休んでもらう。元々が輸送艦でそれをさらに改造して巨体化したからな。それで、艦外の者には“おおすみ”を中心として輪形陣で航行してもらう。」

 

「肉ノ盾トシテ使ウツモリカシラ?」

 

「んなわけないだろう。単縦陣や複縦陣では艦列が伸びすぎる。輪形陣なら“おおすみ”搭載の兵装で(まも)りきれる。それに距離が均一だから休めはしないが艦内へ収容しやすい。艦載機の哨戒網内でもある。」

 

「アア、確カニ。ゴメンナサイネ。」

 

「勘違いしても仕方がないさ。気にしなさんな。・・・前方、高度3,000フィート(約900m)。速度1,400kmオーバー。2機。味方だ。撃つなよ。」

 

「ワカッタ。」

 

 なんと、ガルーダ1、2が出迎え兼制空権確保のために補給後すぐに発艦してくれていた。事後報告だったので、思わずため息をついてしまった。いや、誰も悪くはないんだが、八島中佐達、パイロット達には休んでほしかったというのが本音だ。空中戦、しかも格闘戦(ドッグファイト)で高G機動を連発していたからなぁ。あれ、絶対に10G越していただろうな。

 

 そんなことを考えていると黒い2つの点はすぐに大きくなり、そして戦闘機の姿がよくわかるようになる。メイヴ特有の可変前進翼と可変尾翼、そしてコックピット。パイロットの姿を捉えたと思った次の瞬間にはアフターバーナーを焚いて上昇した。空中哨戒を行うのだろう。安心度が一気に上がるな。主翼にはマイクロミサイルポッドを4基積んでいた。敵性深海棲艦艦隊が現れても一網打尽だろう。

 

 足の遅い補給兼輸送艦に合わせていたら夜中になった。輸送船団も止まらずに、いや止まることができずに前へと進んでいるから陽があるうちには“おおすみ”には合流ができなかった。

 

 合流して、投降した港湾棲姫を“おおすみ”艦内に収容することができたのは、次の日の日の出共にとなった。まぁ、これで本当に今回のオマーンでの作戦行動は終了となったわけだ。疲れた。




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