セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

104 / 154
グッバイ2年4組

 

 

キンジとネモを無人島から帰した後、キンジは大検とかいう、高校を卒業していなくとも大学受験をすることができる資格を得るための試験を受けて合格していた。前にそれを祝して、俺と武藤、不知火で集まってキンジの合格祝いを開いてやったことがある。

 

んで、その時俺はその場のノリで「今後、キンジが就職するまでにキンジが食うに困ったら時々は飯を一食奢ってやる」みたいな約束をしていた。

 

"時々"の定義が曖昧だし就職するまでとは言ったがクビになったらまたこの約束は復活するのかとか、まぁ武偵のする約束としては穴だらけも良いところなのだが、俺としては別に武偵として約束したわけじゃないし、キンジもそんなにそれを悪用するような奴でもないだろうから、お互いそんな細かいことは気に止めてはいなかった。

 

実際、これまでキンジからその手の連絡がきたことは無かったから俺もそもそも忘れていた話だったのだ。

 

だが林檎の家に家庭訪問をした次の日、キンジからメールが届いた。曰く、結構ピンチらしく夕飯を食わせてほしいとのこと。俺はそれで前にしたあの約束を思い出して二つ返事で了解し、巣鴨の方へ向かったのだった。

 

「で、なんで……えと、エンディミラ?がいるんだ?」

 

と、今日はキンジと飯を食うって話をしたらエンディミラもなんか着いてくるって言い出したのでまぁ別にいいかと2人で巣鴨駅まで来たのだが、美人でスタイルの良いエンディミラを見たキンジは抑え気味ではあったけど嫌そうな顔をしていた。

 

「何だかんだでこっちで暮らしてる。んで、今は俺と一緒に学校の先生をやってる」

 

「ふぅん。まぁいいや、今日はありがとな」

 

「気にすんな。約束だしな」

 

どうせならそこら辺のラーメン屋とかじゃなくてもうちょい色々食える所にしたかったので俺は駅の周りを見渡す。

 

「ところでマスター」

 

「んー?」

 

「遠山と交わした約束とは今日の話ですか?」

 

「あぁ。前にな、キンジとは"キンジが食うに困ったら時々何か食わせてやる"みたいな約束しててな。んで、どうやらキンジは食うに困ったらしい」

 

「なるほど、つまり遠山にはカネが無いと」

 

「言ってやるな」

 

俺達の会話を聞いてキンジは居心地悪そうに目線を逸らしていた。まぁファミレスでいいかと俺は駅前のビルに入っているファミレスを目指して歩き出し、エンディミラにはあまりキンジの懐のことは言ってやるなと釘を刺しておく。

 

そして俺達は狭くて乗り心地の悪いエレベーターで階を上がり、ファミレスへと入った。

 

そこで店員に禁煙席に案内してもらって席に着いた俺達は、各々メニューを手に取ってそれを開いた。

 

奢られる立場だからなのか自ら進んで下座に着いたキンジは1人で、俺はエンディミラと2人で1つのメニューと睨めっこ。すると直ぐに店員がお冷を持ってきてくれた。

 

相も変わらずエンディミラは俺との距離が近い。ちょっと俺が腕を動かしたらエンディミラの柔らかそうな胸に肘が当たりそうだ。多分わざと、狙ってこの距離なんだろうな。俺が下手に「惚れさせてみろ」なんて言ったから。やり方が器用なんだか不器用なんだかよく分からんな。

 

てかこの子、最近はリサのシャンプーをよく使ってるんだよね。なのに香る香りはリサとも違うんだから不思議だ。この距離だと呼吸するだけで良い匂いが鼻をくすぐるからむず痒い。

 

そうしてメニューを決めた俺達──エンディミラは相変わらず野菜ばっかりだけど──はチャイムで店員を呼び出し、注文を伝える。

 

それを承った店員が厨房へと伝えに消えると、キンジが1つ溜息。

 

「どしたん?」

 

「いや……まぁお前になら話してもいいか。……えとな、最近ヤミ金から借金しちまってな。どうしたもんかなと」

 

そういや昨日もヤミ金とは顔合わせたな。何、最近のトレンドはヤミ金?嫌な世の中だねぇ。

 

「へぇ。幾ら?」

 

「利子抜きで50万」

 

50万か……。しかも利子抜きって言ったな。ただ、ヤミ金の利子なんて法律で決められている利息なんてぶっちぎっているだろうから実際にはもっとだろうな。

 

「そういや俺ぁ昨日ヤミ金の取り立てやったぞ。キラキラローンの吉良って奴と」

 

「───はぁ!?」

 

と、今更守る秘密でもないので昨日の話をポツリとしてやると何故かキンジの反応が大きい。身体半分コチラに乗り出してきていた。

 

「んー?どしたの?」

 

「いや……実は俺が金借りたとこもそこなんだよ」

 

「そんな偶然あるんだ……」

 

しかしキンジに金貸すとかほぼ返ってこないだろうに。アイツ、実は結構アホなのかもな。明磊家から金借りてたのに林檎の顔知らなかったみたいだし、そこら辺の調査能力は無いんだろうな。

 

「あぁ、じゃあ丁度いいか」

 

と、俺は前々から考えていて、リサとも話していたある事を思い出した。キンジにも関わることでもあるかなってことで、どうやってキンジから了解を取ろうかって算段がついていなかったのだけれど、これは丁度良いタイミングかもな。

 

「何だ?金なら無いぞ」

 

「知りに知ってるよんなこと。誰がお前に金を無心するかよ。……じゃなくてさ、お前に仕事の依頼だ。受けてくれたら報酬としてその借金全部俺が返す」

 

ヤミ金の借金は時間の経過でどんどん膨らんでいく。毎月コツコツ……なんてやってたら凄まじい勢いで利息が跳ね上がってしまうから1発で返してしまうのが1番良いのだが……そもそもそんなこと出来んからヤミ金に頼っているわけで。ただまぁキンジの背負った負債くらいは俺ならどうにかできるので、どうにかするのだ。

 

「……内容による」

 

だがキンジ的にはまとまった額の報酬が貰える仕事とあり、逆に警戒している。ま、武偵高中退のEランク探偵科武偵への50万円以上の依頼なんて言われたら確かに身構えるか。

 

「俺ぁ武偵高を卒業したらそっからの進路は特に決めてなくてな」

 

就活って柄じゃないし……というか武偵高卒業した瞬間にまた武装検事から狙われそうなんだよな。

 

「ま、ユエとシアもそんな感じだし、アイツらもそこらの武偵企業に就職って感じじゃないじゃん?」

 

「俺は詳しくは知らんが」

 

「けどさ、武偵免許は持っておきたいんだよね。俺達としては」

 

「まぁ、それは分かる……」

 

「だからさ、俺が興した会社に、お前が興した会社を合併させて武偵業務もできる会社にしたいんだよ」

 

別に自分で作っても良いのだが、どうせなら既に知名度が多少はある遠山武偵事務所(TBJ)を吸収した方が後が楽だしな。

 

「むぅ……」

 

「で、お前への依頼ってのはそれをするってのを認めてほしいって話だ。もちろん今やってる事業も、雇ってる人もそのまま継続してもらって構わん」

 

「残念だけど、今俺はあの会社の人間じゃないんだよ。だから決定権は俺には無い」

 

んなことは知ってるんだけどな。だから話の本題はそこじゃあない。

 

「知ってるよ。けどそういう話があるってことを通すことはできるだろ?……ま、言っちまえば義理立てだよ。お前が興した会社を貰おうってんだから、例え今は書類上なんの関係も無くても、話をせんのは不義理だろう?」

 

「じゃあ予告だけでいいんじゃないのか?」

 

「今あそこは中空知がやってんだろ?……アイツならもしかしたらキンジの反応を聞いてからって言い出すんじゃないかなって言う話になってさ」

 

ちなみにそれを言い出したのはリサだ。相変わらずよく気の利く子だよ。まぁ確かに俺も言われてみればそうかもなと思ったけど、言われなきゃ思い至りもしなかったわけだからな。

 

「だからお前から、こういう話がきているってこと、それからお前はそれでもいいと思っていることを伝えてほしい」

 

「……本当に、武偵まんも今雇っている奴らも継続雇用するんだよな?」

 

「あぁ。人件費の水準も下げる気は無い」

 

俺達のメリットは武偵免許の継続と、知り合いが多いということで融通が効くこと。後、これはリサとジャンヌに調べてもらったがあそこは経営状況も良好。重りになることはないだろうって話だ。

 

メヌエットも、TBJの業務内容的にはイギリスとは敵対しないだろうから俺んところに吸収するのは問題無いと言っていた。ていうか、それを含めても社長をやるって話の了解は得ていたのだ。

 

「分かった。そういう話があるってことは中空知には伝えておく。けど、実際どうなるかは中空知達と話してくれ」

 

「分かってるよ。……それに、もしお前にとって不本意な結果になるのはこっちも嫌だから話し合いの場にはお前もいていい。……一応俺も行くから男1人にはしないよ」

 

「お前にしては至れり尽くせりだな」

 

「あんだよ、人が折角気ぃ遣ってやってんのに」

 

と、その頃になると俺達と注文した料理が続々と届き始めた。俺達はテーブルに並べられた皿を見て、まずは会話よりも自分達の腹の虫を諌めることに集中するのであった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「マスター、宜しいでしょうか?」

 

と、キンジに飯を食わせ、店の前で直ぐに解散した俺達だったが、エンディミラは何やら気になることがあるようだ。

 

ちなみに、TBJを俺達が買収するって話はキンジも一応の納得は見せてくれた。ただ念の為話し合いの場には同席するとのこと。キラキラローンへの支払いに関しては後でメールで連絡すると言っていた。

 

「んー?」

 

「遠山はカネに困っていた。林檎の父親や濠尾もカネの問題を抱えていた。林檎の父親にくっ付いていた女は彼にカネが無いと見るや直ぐに姿を消しました。……私には分からなくなったのです。……カネとは、一体何なのでしょうか?例えどんなにそれで苦しめられていてもヒトはカネを神のように崇拝し、それが絶対的な価値であると信じています。それが私には理解できないのです」

 

そしてエンディミラは辺りを見渡した。金によって建てられたビルや駅、金のために働く人々。それらを見て、エンディミラは心の底に拭いきれない嫌悪感を抱えているように、俺からは見えた。

 

「何……ねぇ。……少なくとも神じゃねぇな。もし本当に金が神様だったら俺んとこにある筈がねぇ」

 

俺は尽く神様という存在と相性が悪い。神の依り代(神代)なんて苗字を持って産まれた割に神を喰らう者(ゴッドイーター)をやったりトータスじゃ自称神様のエヒトを魂の一滴も残すことなく燃やし尽くしてみたり。こっちに帰ってきても結局は緋緋神とも戦闘になってたし。もし金が神様なら俺とは縁遠い存在のはずだ。

 

「では、ヒトにとってカネとは何なのですか?」

 

その碧い瞳は俺が何か綺麗事で誤魔化すことを許さないというような強い意志が込められているように見えた。だから俺も……自分が思う言葉をぶつける。

 

「ヒトにとって……って言われると俺もよく分かんねぇよ……。でも俺にとって、っていう話なら言える……それでいいか?」

 

「はい。それでも聞きたいです」

 

と、エンディミラは頷く。俺は歩きながらふと見つけた小さな公園に足を向け、そこのベンチに腰を下ろした。エンディミラも俺の隣に座り、ふわりと柔らかな香りが漂った。

 

「……俺にとっちゃ金は道具でしかないよ。ただ、金はどうやら色んな物に代えられるらしいからな。俺や、俺ん家族達が幸せに暮らすためには持てるだけは持っておきたいとは思ってる」

 

「道具、ですか……」

 

「お前にとっちゃ悪魔みたいに見えてるのかもしれねぇし、それを求めて止まない人間も悪魔の手先か何かに見えてるのかもしれない。けど所詮道具は道具だ。使う奴が悪ければ確かに悪くなるし良い奴が使えば良くもなる。……悪いな、こんな浅い考えしかできなくて」

 

金が何なのか、俺はよく考えたこともなかった。金は金。ただそれだけだったから。でもまだやって数日だけど普通の学校で先生なんてものをやり、金の概念の無い世界から来た奴とこうやって話してみて気付いた。

 

きっと、それだけでは駄目なのだ。自分が使っているこれが何なのか、俺はきっともっと知らなければならないのだろう。俺は俺がよく知りもしない物に自分達の人生を預けていることになってしまうから。

 

「いえ。……ではマスターは、どのようにカネを使うのですか?」

 

それは、物を手に入れるため、みたいな話じゃない。もっと、俺が手に入れた金をどのように使いたいのかという話なのだ。言わば俺の目標、みたいな。

 

「守るため、かな」

 

「守る、ため……」

 

エンディミラが俺の言葉を反芻する。

 

「あぁ、守るため。金より大事なもの……リサ達や、今の生活を守るため。あぁあと、もっと幸せになるためだな」

 

「もっと、ですか?」

 

「あぁ。ま、もう目星は付いてるんだけどな。今住んでいる家を出て、もっと大きな家を建てる。んで、今度こそレミアとミュウと、ジャンヌも一緒に住めるようにするんだ」

 

そして、その生活を維持するために金を使う。今はそのための準備期間なのだ。

 

「家族と住む。そんな当たり前のこともカネが無いと出来ないのですね」

 

「ま、俺の家族は特殊だからな」

 

現状、法的にはただ他人が同居しているに過ぎないが、実情は一夫多妻なのだから、ちょっとウチは例外だと思うよ。

 

「エルフの森ではマスターのような状況はそれほど特殊ではないのですが、ヒトは違うようですね」

 

……俺の状況が特殊じゃないのはエルフ側が人間とは違いすぎるのではないでしょうか?

 

「どゆこと……?」

 

「エルフの森にはメスしかいません。その中で最も知恵を付けたメスがオスになり、多くのメスを囲うのです。ただ、まだ私の周りにはそのような者は現れていませんでしたが」

 

スゲェなエルフ。そんな変化するのか。エルフは、優れた雄が多くの雌と交わることで優秀な遺伝子を残していけるように進化したんだな。しかしなるほど、それでエンディミラは俺達の生活を見ても何も不思議な顔はしなかったんだな。だいたい他の奴らが俺達のことを見ると、やっかむかおかしなものを見るような目で見るんだけどな。

 

「なるほどな。……人間はどちらかと言うとそういうのは不潔だって認識だからなぁ。まぁそれでも俺達は俺達の気持ちを曲げる気はないよ」

 

周りが何と言おうと俺は皆を愛しているし皆も俺を愛してくれている。そうであるなら俺はあの生活を守り、そしてより住みやすい世界を求めていくだけだ。

 

「……最後に、聞かせてください」

 

すると、エンディミラが鋭さを伴った目で俺を見やる。

 

「んー?」

 

「マスターは、他の誰かを不幸にしても奥方様達を幸せに出来ますか?」

 

「それは……」

 

出来ないと、俺に言えるだろうか。実際、俺はそれをやっている。幾つもの異世界を巡る中で俺は罪のない人間をも手に掛けて、そして世界を巡っていた。そしてその果てに俺はようやく帰ってきたのだ。だからこの質問に出来ないと答えることは嘘になる。俺は、エンディミラにはそんな嘘は吐きたくなかった。だから……

 

「……出来るか出来ないかで言えば、出来るよ。俺ぁやれる。物理的な話だけじゃなくて、精神的にも。積極的にやりたくはないけどね」

 

だから俺は話した。俺とリサが最初に異世界に飛ばされた後、その世界からどうやって出たのか。異世界からの脱出の仕方。そして俺が帰ってくるまでにどんなことをしてきたのかを、覚えている限りでエンディミラには言葉にして伝えた。

 

そしてエンディミラはそれをただ黙って聞いていた。そして俺が話終えると……

 

「……マスターは、もう嫌だとは思わなかったのですか?例え別の世界を生きていたヒトであっても、同族を殺し続けることに嫌悪感は覚えなかったのですか?」

 

「進んで人を殺したいとは思わないよ。あの時も、今も。けどそうしなけりゃ帰れなかったからな。だから……」

 

「戻らない、という選択肢はなかったのですか?その場にはリサもいたのでしょう?マスターにはこの世界で何かやらなければならないことがあったのですか?」

 

「無いよ、使命とかそんなものは無い。けど1番最初に飛んだ世界で、リサはこっちに帰りたいと言った。なら俺ぁどんな障害も叩き潰してこの世界に帰るだけだ」

 

リサが願うなら俺はどんな障害でも、何を壊しても、絶対にその願いを叶えてやりたい。そのために俺の手が血で汚れようとも地獄に落ちることになっても。それでも俺は生きている限り、俺の力をリサのために振るうと、そう決めているのだ。

 

「けど誤解すんな。リサだって人死には嫌だし俺が誰かを殺すのを見たいわけでもない。むしろリサはずっと後悔してたよ……自分が帰りたいと言ったから……ってな。だからってわけじゃないけど……リサを悪く思わないでくれ。リサは正常で、ぶっ壊れてんのは俺なんだから」

 

望んでもいないのにいきなり異世界に飛ばされて、自分の世界に帰りたいと願うのは普通のことだろう。だから、リサの願いはごくありふれたものだ。

 

「……幻滅しただろ?」

 

自分の大切な人の願いを叶えるためだからといって、自分の手を血で汚すことを躊躇わない人間なんて本来こんなに沢山の女の子から好意を寄せられていいはずがないんだ。だからエンディミラが俺の元から去ると言うのなら俺はそれを止めない。テテティとレテティも、ミュウは寂しがるだろうけどきっとコイツと居た方が幸せなはずだから、一緒にコイツの故郷の世界か、Nのネモの元へと帰してやるつもりだ。

 

「いいえ、マスター。本当にマスターが悪魔のような人間であるのなら、リサ達が今もマスターのことを好いているとは思えません。ミュウが生みの親ではないマスターをパパと慕うわけがありません。今日、2年4組の生徒は笑顔で授業を受けていました。それはマスターが作ったものです。……マスターは、壊れてなんかいません」

 

エンディミラが俺を見据える。蒼く煌めく瞳の輝きが俺を射抜くように捕らえる。俺はその美しい瞳から目が離せなくなる。俺の中にその蒼さが染み込んでくる。

 

「きっと、マスターに命を絶たれた者や、その家族はマスターを恨んでいるでしょう。けれど、目を見れば、私には分かります。マスターは全て承知で、全部自分で背負うつもりでこれまでそうしてきた。そして、それを私にも話してくれた」

 

だから、とエンディミラは言葉を続ける。

 

「私が抱いたこの気持ちは、きっと間違っていなかったと、今そう確信しました」

 

リサ達は俺の中の黒く澱んだそれを包んでくれた。これを抱えていることを赦し、受け入れてくれた。一緒に同じものを抱えてくれた。香織の父親は俺が為したのは破壊だけではないと、俺の鬱屈を伸ばしてくれた。エンディミラは……エンディミラは、俺の中で黒くて濁り、赤黒く固まったそれが纏わり付くこれを明るく照らし、溶かしていくようだった。

 

頬に冷やりとした──常に俺の身体を守っている熱変動無効のスキルで、本当なら分からないはずのその肌の温度が何故だか脳みそに伝わってきた気がした──感触。

 

それはエンディミラの手のひらが俺の左の頬に触れた感触だったらしい。俺はその手のひらを自分のそれで包む。

 

「エンディミラ……」

 

「マスター……」

 

エンディミラがその蒼い瞳を閉じ、ゆっくりと俺に寄る。

 

「……ありがとな、エンディミラ。……冷えたろ」

 

俺は頬に添えられたエンディミラの右手を左手でそっと外し、自分が着ていたジャケットを脱いでエンディミラに肩に掛けてやる。すると、エンディミラは降ろしていた瞼を上げて、何やら抗議の眼差しを向けてくる。ただそれでも俺のジャケットを突っ返して来ない辺り、やはり秋の夜は冷えたらしい。

 

「女は身体冷やすもんじゃないよ。俺ぁ寒くないから、着てろ」

 

と、話は終わりだとばかりに俺が立ち上がればエンディミラもふぅと1つ息を吐いて俺の横に並び立つ。そして俺が歩き出すのに合わせて俺の腕を取り、自分の豊満な胸の中へと仕舞い込む。

 

腕に押し当てられる柔らかさと体温、俺の指に絡むエンディミラの細いそれが俺の心臓の鼓動を急かす。だが俺はそれを拒むことなく受け入れて駅への道をただ黙って歩いて行った。

 

 

 

───────────────

 

 

 

エンディミラとテテティ、レテティは手先も随分と器用なようで、3人がナイフで木材を削って作り出した妙にリアルな竜や妖精のフィギュアを2年4組の奴らに配って行ったTRPGの授業は随分と好評だった。もちろん会話は全部英語でやれというルールもあるのだが、それでも皆が自分の意見を伝えようと必死に頑張って、そして笑い合う姿は、俺が赴任してきた初日の、大人を一切信用出来なくなっていた彼らからは想像もつかない。

 

だが、楽しい時間はいつか終わりを迎えるものなのだ。俺とエンディミラは4時限目が終わった後の昼休み、中川と共に校内放送で職員室へと呼び出されていた。

 

伝えられた要件を簡単に言えばクビ。2年4組の新しい先生が見つかったこと、初日の暴言がPTAで随分と問題になっており、俺達は1ヶ月と職を務められずにこの学校を去る必要が出てきた。

 

ちなみに中川は副担任をやるそうだ。……大変だな、猿田として武装検事の補佐官もやらなきゃいけないのに副担任とか。

 

「今までご迷惑をお掛けしました。すみませんでした。そして……ありがとうございました」

 

ただ、この嫌味ったらしい御分院もPTAとは丁々発止……とはいかなくとも随分と頭を下げてくれていたらしい。俺達のため、なのか2年4組の子達の為なのかは知らないけど、それでも彼にはお礼を言う必要があった。

 

そして、人と人との出会いがいつも思いがけない形で訪れるように人と人の別れも唐突にやってくる。俺達と2年4組の生徒達との別れは今日のLHR(ロングホームルーム)で行うことになった。

 

「中川先生、4組の奴らを宜しくお願いします」

 

と、俺は中川(猿田)にもそう言って、頭を下げた。ここでは彼は先生で、俺もあと数時間はそうだから。

 

 

 

───────────────

 

 

 

俺とエンディミラは今日をもって辞めることになったと、ロングホームルームで皆に伝えれば、生徒達は強いショックを受けた顔をしていた。小島なんかは泣いてるし。

 

「辞めるなよー!」

 

とか

 

「ここにいてよ!」

 

とか、最初は帰れコールの嵐だったくせに今となっちゃ全く逆のことを言っている。まったく、ここまで好かれちゃ別れが惜しくなるね。けどよ、先生と生徒なんてのはいつか別れる時が来るんだ。ただ俺達にとっては普通のそれよりも早いってだけさ。

 

「俺が最初に言ったこと覚えてるか?……良い子になれ、良い大人になれとは言わねぇ、けどよ───」

 

「───悪い子にはなるな、でしょ?」

 

と、俺の言葉を生徒の1人が攫っていく。そうだ、悪い子にだけはなるな。悪い子はいつか悪い大人に利用されて捨てられる。そしてもし捨てられなかったとしたらそいつは悪い大人になってまた悪い子を使い捨てるんだ。だから、そんな奴にだけはなるんじゃない。

 

「……ちゃんと覚えてんならそれでいい。悪い子がもし捨てられなかったとしたら、悪い大人になって今度はそいつが悪い子を使い捨てるんだからな。お前ら、そんな奴にだけはなるなよ?」

 

と、俺が敢えて凄むように言ってやると今度は濠尾が挑発的な目と不敵な笑みを浮かべて───

 

「じゃあもし俺が悪い子や悪い大人になったら先生はどうすんだ?」

 

なんて言うのだから───

 

「安心しろ、俺ぁお前らを見捨てたりはしない。だからそん時ゃ俺が責任持つよ。責任持ってお前を豚箱にぶち込んでやる」

 

俺はそう返してやった。すると濠尾は照れたように顔を少し赤くしながらはにかんで「んな迷惑かけねーよ」と突っ返してくるのであった。

 

「あぁ、約束だ。……じゃあな」

 

俺はそれだけ残して教壇を降りた。きっともう教師としてここに上がることは俺の人生では無いだろう。コイツらが俺の最後の生徒だ。

 

そして1度は鍵まで掛けられたスライドドアをくぐる。その背中に「先生!」「神代先生!」「エンディミラ先生!」と、彼らの呼び声を受けて。

 

横を見ればエンディミラはもう泣いてるし。俺も、それを見たら貰い泣きしそうになったなっちまったよ。そして、廊下に出たところで───

 

「……明磊」

 

髪に結った赤いリボンはそのままに上目黒中学の制服を着た明磊林檎が立っていた。そう、俺達の──2年4組の──最後の生徒だ。

 

「お父さんは、どうしてる?」

 

気配感知でここにいるのは分かっていたから驚きはなかった。ただ、ここに来るのは彼女にとってとても勇気のいることだっただろう。

 

俺が目線を合わせるために少し屈んでそう聞くと

 

「就活に行ったよ。……それより、辞めるのかよ。あたしも廊下で聞いたぞ」

 

林檎がぷくりと頬を膨らませて文句を言ってくる。

 

「あぁ。クビだってさ。それより明磊、よく来たな。最後でもお前の姿ここで見れて嬉しいよ」

 

これは俺の本心だ。この子がここにいるということこそが先生として俺が何かを1つ成し遂げられたという印でもあり、何より明磊林檎が……前を向けなかった1人の子供が前を向けているということが、俺には嬉しい。

 

「っ……またそういうことを……」

 

すると林檎はまるで名前のような真っ赤な色に頬を染めて何やら呟く。

 

「んー?」

 

「───あんたが……神代先生がいるから来たんだよ!なのに……なのに辞めんのかよ!詐欺ヤロウ!!」

 

頬を真っ赤(林檎色)に染めた明磊が拳を下に突き出して怒鳴る。……確かに怒られても文句は言えないなぁ。けど……

 

「悪りぃ、しょうがなかったんだ」

 

だから俺はそうやって返してやることしかできない。けどそんな俺を見て林檎は思いやってくれるような優しい表情になり……

 

「じゃあ……いいよ。……最後の日だけでもさ、先生の生徒として学校にいられて良かった」

 

そう、言ってくれた。ありがとな。そうやって言えるお前はきっと立派な大人になれるよ。

 

「けどお前、俺が辞めても明日も来るのか?」

 

この様子ならきっと大丈夫なのだろうが、一応そう聞いてやると───

 

「林檎!」

 

「林檎ちゃーん!!」

 

と、教室から俺達を追いかけてきたらしい生徒達が俺とエンディミラ、それから林檎も取り囲む。林檎の元には人が集まる。この子は前の先生を随分な方法で追い出したらしいが、それでもクラスでは人気のある子だったみたいだからな。皆の顔を見れば林檎との再会を心から喜んでいるのも分かる。ん、もうこのクラスは大丈夫そうだな。

 

そして林檎はクラスの輪から顔を出し、俺のさっきの質問に対して───

 

「明日も来るよ」

 

と、花の咲くような笑顔でそう返してくるのであった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

素晴らしい秋晴れの日曜日。俺達は家族全員にエンディミラとテテティ、レテティを加えた大所帯でお台場海浜公園へとピクニックに来ていた。キンジや中空知達との話し合いは来週の日曜日にやることになっていた。この間にリサ達が提案する条件の詳細を詰めていくらしい。

 

ただエンディミラだけは用事があるとのことで出掛けている。まぁアイツもこっちの生活には慣れてきているから問題は無いだろう。直ぐにこっちに合流するとも言っていたし、遅ければ羅針盤で位置も探れる。

 

俺はレジャーシートに腰を下ろしたリサのフトモモに頭を乗せながらミュウとテテティ、レテティがキャッキャと遊んでいるのを眺めていた。レミアやシアも近くにいるし、ユエやティオ、ジャンヌもそれを遠目に眺めているから特に何も問題は無い

 

時折俺に絡んで背中に乗ってきたりリサとエンディミラで作ったらしいお弁当やおにぎりをペロリと食べたり、忙しなくしていた。すると、サァっと音を立てて過ぎていった秋風に乗ってきたかのようにエンディミラが現れた。何やら自分の給料──俺達は学校側の都合で辞めることになったから、1ヶ月分の給料は貰っていたのだ。それが今回の仕事の報酬だと蘭豹が言っていた──で買い物をしてきたのか、真新しいトランクケースを抱えていた。

 

「ここは平和な森ですね。歩いているヒトが、誰も何も警戒していない」

 

「森じゃなくて公園だけどな。……てか、それ何?」

 

と、ミュウとテテティ、レテティに絡まれていた俺が3人を抱えながら上体を起こしてトランクを指す。

 

「私の得意な武器です」

 

「武器?……そのサイズだと分解収納した自動小銃(アサルトライフル)か?」

 

だが1ヶ月分の給料でアサルトライフルなんて買えただろうか。そんな俺の質問にエンディミラは申し訳なさそうな顔をしつつ

 

「ディー氏族ではこの武器を敬い、精霊の許可無しには使わず、何者にもみだりに見せず、その名も呼ばないのです。この国のこれは形こそ少し違いましたが、確かにそれでした」

 

という答えを返してきた。身内の武器くらいは知っておきたかったけどどうやら宗教上の理由で言えないらしい。それならまぁこっちも深掘りすることもないか。

 

「ふぅん」

 

と、俺が何の気なしに頷き、それを聞いて「はい」と頷いたエンデイミラは恭しくトランクを脇に置きつつロングスカートの膝裏に手を通しつつ俺の隣に座る。後ろではテテティとレテティが楓の木に登ろうとしているのをリサに止められていた。そしてエンディミラの纏っている赤いストールが風に靡いて俺の頬を撫でる。エンディミラはそれを手で押さえるとそのまま俺にしなだれかかろうとして───

 

「……ここは私」

 

後ろからニュッと現れたユエに押し返されていた。

 

「……エンディミラに天人の肩はまだ早い」

 

と、俺とエンディミラの間に小さな身体を割り込ませたユエが俺に寄り掛かる。そのまま腕を絡ませてきたユエを俺が黙って受け入れていると、エンディミラは何やら不服そうな顔をして───

 

「……では私はこちらに」

 

と、胡座をかいて座っていた俺の脚の間にエンディミラは自分の身体を収め、そのまま寄り掛かってくる。

 

「おっと……」

 

空いた右手でエンディミラを支えてやればコイツはコイツで満足そうに俺の胸板に身体を擦り寄せてくる。俺の身体に触れるエンディミラの肢体の柔らかさと鼻を擽る香りに、俺の意識はエンディミラに集中していく。……ていうか、甘え方が完全にウチの家族と一緒だ。エンディミラめ、見て学んで俺がどうされるのが好きなのか研究しやがったな。けどやっぱり恥ずかしいのか耳まで真っ赤になっていて、小さく「うーうー」と唸っている。そういう声も出すのね、エンディミラさんは……。

 

「……むむっ」

 

と、ユエはユエでそれを見て何やら対抗意識を燃やしているし、シアはいつの間にか俺の右腕に自分の腕と身体を絡ませていて俺は完全に身動きが取れなくなっている。

 

女の子の身体の柔らかさに包まれて俺が一種の天国を味わっていると、ふと浜辺で遊んでいるミュウとテテティ、レテティが目に入る。

 

そして、テテティに感じた僅かで一瞬の違和感の後、急に立ちくらみでも起こしたかのように、テテティがフラリフラリと足元が覚束なくなった。

 

そして、ミュウとレテティがその様子に疑問符を浮かべたところでテテティはこっちに両手をゆっくりと伸ばしてきた。そして虚ろで夢遊病のような、まるで魂魄魔法か闇属性魔法で操られたかのように夢現の雰囲気で、指が動き始めた。これは、手話か。

 

「……森の賢女よ、お前は、私のモノだ」

 

言語理解により俺はその手話が何を言っているのかを直ぐ様理解した。そしてそれはエンディミラも同じようで……

 

「まさか……」

 

と、顔に驚きの表情を浮かべている。まるで、もう会うことはないと思っていた仇敵を見つけたかのような、そんな驚きの表情だった。

 

「……ヒュドラ?」

 

俺が思い至ったのはアニエス学院に巣食っていた怪物。だがあれは操るアスキュレピョスがいなければ思考する頭もない蠢くだけの生物だった筈だが……。

 

けれどもテテティの顔で驚いたような表情を作ったそいつは「よく知っているな」という手話を出してきた。そして、それはそれでおかしい。アスキュレピョスが操っているのなら「その通りだ」だの「よく分かったな」だとか、まぁアイツがそんなことを言う性格とも思えんが、嫌味ったらしく「久しぶりだな」とかいう反応を示すはずだ。てことはコイツはアスキュレピョスが操るヒュドラではない……別の奴がヒュドラを操っているのか。

 

「かわいい教え子の命が惜しければ、来い」

 

と、テテティに手話でそう言わせた瞬間、テテティは糸の切れた操り人形のように急に座り込み、波打ち際に倒れ込む。

 

その身体をレテティとミュウ、レミアが慌てて助け起こしてやると、目を覚ましてキョトンと周りを見渡しているのはもう完全にいつものテテティだった。

 

ヒュドラは水を伝って移動するからな。もう海の中へ逃げた頃だろう。追おうと思えば追えるが、今はそれどころじゃあない。教え子……まさかライカってこたぁないだろうし、そうなると上目黒中の2年4組の奴らの誰か、ないしは全員……。

 

だがまずはテテティだと俺とエンディミラが駆け出した瞬間、今度はビィーという小さなモーター音が俺の耳に届く。俺が空を見上げると飛来してきたのはドローン……ただ、RQ-1(プレデター)RQ-4(グローバルホーク)のような大型の無人機じゃあない。小型のラジコンヘリ、それも遠見の固有魔法で見れば何やら吊るして運んでいる物は布のようだが銃火器や爆弾と言った高い殺傷能力を持つ武装ではなさそうだ。だがこのタイミングで出てきたって時点でろくなもんじゃねえだろうと俺はシグで即座にそれを銃撃。

 

弾丸を受けたドローンは空中で横転するような体勢になり吊るしていたそれを落とした。

 

何かと見ればそれはカチューシャとリボン。

 

───小島芹奈と明磊林檎が身に着けていた物だ……!!

 

そして墜落したドローンにはメモ用紙も貼り付けてあったらしく、エンディミラがそれを拾って俺に渡してくる。そこには何やら住所が書かれていて、俺が携帯で検索するとそこはジオ品川……ジオフロントの底に近い治安の悪い工業地帯だ。

 

あの2人はそこに捕まってるのかと、俺が念の為羅針盤で2人の位置を捜索。すると、何故か2人はジオ品川からは遠い街中……ただし2人バラバラの位置で違う位置に向かって移動しているようだった。

 

「はぁ……?」

 

俺がその意味の分からなさに首を傾げているとエンディミラが

 

「マスター、私を"森の賢女"と呼ぶ者に心当たりがあります。でも、あの女がまだ生きていて……その上まさかこの町まで追ってくるなんて……!」

 

と、悔しげに、そして顔には過去のトラウマを蘇らせたような苦い顔をしている。あの女……しかも死んだはずだとエンディミラが考えていたってことは、竜の魔女・ラスプーチナのことなのだろうか。

 

「ラスプーチナか?」

 

「はい……。でも本当に……」

 

俺の問い掛けにエンディミラは信じられない様子ではあるが、これを肯定した。

 

「さぁな。だがどうにもこの件色々おかしな点がある。まず、小島も明磊も書かれた住所に居なければそこに運ばれている気配も無ぇ……。けど念には念を、だ」

 

と、俺はユエとシアを呼び、越境鍵を取り出した。

 

「ユエ、シア。……頼む」

 

「……んっ」

 

「はいですぅ」

 

俺のその一言だけでユエもシアも俺の願いを察してくれた。そして俺は扉を開き、周りの奴らの死角からユエに明磊の、シアに小島の顔をそれぞれ見せて「アイツらだ」と示す。そして2人をそれぞれ送り出した。

 

「ティオ、ジャンヌ、そっちは任せた」

 

俺達を呼び出そうとしたってことはそれなりの実力があり、かつ俺のことをある程度は把握しているってことだ。戦闘能力の無いリサやミュウ達にはティオ達に任せよう。

 

「エンディミラ、俺達はジオ品川の方へ行くぞ」

 

「はい、マスター」

 

本当に竜の魔女・ラスプーチナって奴なのかはたまた別の奴か、もしくは両方なのかは知らねぇが、エンディミラとも縁がありそうならエンディミラはこっちだ。幸い、ユエとシアが小島と明磊に付いていてくれるからジオ品川へは極端に急ぐ必要も無い。俺は小島と明磊のアクセサリーを手に取って武偵高の車輌科へと向かった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。