セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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レクテイア・オルグ

 

 

ヒノトが高らかに叫ぶのはこの世界に対する敵対の意思。けれど、俺にとってはコイツの決意表明もどうだって構わない。ルシフェリアに実は婚約者がいて、ソイツがこの目の前の小学5年生の女子生徒であっても、それは別に構わないのだ。

 

だから俺が気にすることはただ1つ───

 

「……ルシフェリア、残り少ない命の時間ってのはどういうことだよ」

 

ただ、ルシフェリアの寿命が残り少ないと言っていたあの一言だけなのだ。

 

「……あなた様は?」

 

そこで、ようやくヒノトが俺を見た。それまでは俺のことなんて存在しないかのような態度だったが、ようやくこっちに意識を向けた。

 

「天人……神代天人。……もう一度聞くぜ、ルシフェリアの命が残り少ないってのはどーゆーことだ?」

 

別に、ルシフェリアに絆されたってんじゃあない。俺はそんなにチョロくない……と信じたい。ただ、それでもルシフェリアはユエのメイドで、それはつまり家族とは言えないまでもウチの一員ってことなのだ。そいつの命が残り少ないなんて言われたら、家長として黙っていられるわけがない。

 

「ルシフェリア様は───」

 

「よい。それについては我から話そう」

 

ヒノトの言葉をルシフェリアが遮る。ヒノトも、ルシフェリアに逆らう気は無いようで直ぐに押し黙り、むしろルシフェリアの言葉をワクワクして待つかのような表情を浮かべていた。

 

「ルシフェリアは1万日と生きるものはいないのじゃ。それ以上は、美しさが損なわれるからの。ルシフェリアは常に美しく在らねばならんのじゃ」

 

1万日……20……いや、30年は生きないということか。確か今ルシフェリアは18歳程度の筈だから、あと10年生きるか生きないかっていうことか。そして、理由は種としての寿命。もっとも、コイツが望むのなら、その美しさを保ったまま長生きさせることも、俺達にとっては不可能ではない。ていうか、どうせ遅かれ早かれ俺の家族……ミュウとテテティ、レテティ以外の全員はきっと()()をするだろう。あの中の誰かが欠けることは、例え理由が老衰であっても俺には耐えられないから。

 

「……そうか」

 

寿命ということであればそれほど解決に難しい問題ではない。ユエには使徒創造の権能と変成魔法を応用した人の寿命の無限化が可能なのだ。そして俺達はきっとそれを使う。いや、使ってほしいと思う。寿命だからとか、生き物なのだからいつかは死ぬとか、そんな理不尽を受け入れたくないという幼い反骨心。けれどそれを実現する方法があるのなら、俺はそれを使いたいと思う。

 

「えぇ、ですからルシフェリア様の残り少ない命を無駄に消費するわけにはいかないのです。……世界を渡って幾百年。私めはこの時を待ち焦がれておりました。ルシフェリア様の───神のお力があればこの世界への侵掠も叶いましょう!」

 

俺の───武偵の目の前でこの世界への侵掠の意志をこんなに大仰に示すとは中々に良い度胸をしているな。もっとも、この世界……というか日本は信仰や思考の自由は認められている。いくらこいつが世界征服だのなんだのと叫んだところで、それを実行に移さないのなら俺にはヒノトを止める権利は無いのだ。

 

「婚約しておったのか、()()()()ルシフェリアが」

 

「どれかの……?」

 

と、キンジと遠山かなでがキョトンとした顔をしている。そういや、キンジはルシフェリアのことはほとんど知らないんだったな。

 

「……ルシフェリアの一族は種族の名前がそのまま個人の名前になるんだと。だから今のは自分以外の他のルシフェリア族の誰かがヒノトと婚約していたって意味だよ」

 

多分ね。と、小声で2人には伝えておく。

 

「もしや……共感が無いのでございますか?ルシフェリア様」

 

「すまんのぉ。レクテイアにいれば記憶を探れたかもしれぬが。今は感じられておらぬのじゃ」

 

キョウカン……共感か?記憶を探るって……ルシフェリア達は、お互いの記憶を共有できるのだろうか。そう言えば神の使徒も1人の記憶を全員で共有できるみたいだったな。それと似たような力がルシフェリア族には備わっているのだろう。

 

……という俺の見立ては合っていたらしく、キョトン顔のキンジに遠山かなでが詳しく説明してくれていた。どうやら血の共感(シンパシア・ファミリア)と呼ぶらしいその力は、遠山かなでも使えて、それでキンジの位置がおおよそ探れるのだとか。しかも、その能力が強くなると自分と他の奴との境界が曖昧になって()()()()()()()にすら違和感を覚えるらしい。なるほど、だからルシフェリアの一族は種族名と個人名が同じなんだな。

 

しかし、レクテイアとこの地球を隔てて閉まっているからか、今のルシフェリアにはその力が使えないらしい。そのためヒノトの言っていることが本当かどうか確かめようがなく、ヒノトとの婚約の約束を果たすことに少し懐疑的なようだ。

 

挙句、前にルシフェリアが言っていた『ルシフェリアを食べるとルシフェリアになれる』という言説を流布したのはどうやらこのヒノトの一族という話だ。とはいえ、ヒノトはこれを否定。むしろ自分達は熱心なルシフェリアのファンだと力説。それはそれは強くそう強調しているのだが、目の輝きからして嘘ではなさそう。なんでもヒノトの一族は代々ルシフェリアを推しているんだとか。これまた凄まじい奴らもいたもんだ。ま、確かにこのルシフェリアは見栄えだけは良いし力も───俺が氷焔之皇で封じているとは言え、それがなければトータスにあるオルクス大迷宮の深層でも戦えそうな強さがある。ヒノトの力がどれほどなのかは知らないけど、ルシフェリアには熱心なファンがいるっていうのはそれほど違和感のある話じゃあないな。ただ───

 

「ルシフェリア、あんまりヒノトに懐柔されんなよ?そいつはこの世界を侵掠してやろうっていう反社会的な思想の持ち主なんだぜ?」

 

一応は法の守護者でもある武偵の立場からチクリと言わせてもらう。何せナヴィガトリアじゃ随分と偉い扱いだったみたいだが、俺達に捕らえられてからこっち、ろくに褒められていなかったルシフェリアがヒノトに持ち上げられて急に態度が和らいだからな。さっきまで腕組みして婚約の話にも否定的だったのに、だ。

 

「……これはこれは神代天人様。ルシフェリア様と出会えた歓喜の余りとは言え、先程は法の守護者様の御前にて妄言が過ぎました。あれは……何卒小鳥のさえずりと一笑に付してくださいませ」

 

と、ヒノトは───まぁ正直言葉だけの謝罪っていう雰囲気は拭えないけど、一応謝罪の姿勢と「さっきとあれはテンション上がって調子に乗っちゃっただけですよ、私は危ない者ではありませんよ」のアピール。俺のことをどれほど知っているのかは不明だが、取り敢えずルシフェリアと繋がっている俺との対立は避けた格好だ。

 

「ふむ……主様は妬いてくれるのか?我を敬愛する者を目撃して───」

 

「───いや全然」

 

「なんでじゃ!?」

 

仮に俺がルシフェリアに恋愛感情を抱いていたとしても、俺は別に嫉妬しないと思う。婚姻は止めただろうけど、ヒノトのこれは恋愛感情と言うより、どちらかと言えばファン心理に近いように思えるからな。俺がリサ達に抱く好きとは全く……とまでは言わないけど少し違う類の感情だろうからな。

 

「───ともかく、在野のレクテイア人とこの世界で会えたのは喜ばしいことじゃ。迷信の件はさておき、シエラノシア族は南レクテンドを皇女として治めたこともある。意識の高い智将の一族じゃ。戦に敗れて国を失い、散り散りに流浪していたと聞いてはいたが……この世界にも流れ着いておったのじゃな」

 

と、ルシフェリアは何故だかジト目で俺を見ながらヒノトをそのデカい胸の中に抱き留めつつそんなことを言っている。ヒノトはヒノトでそれに大興奮しながらも自分がどこで何をしていたのかをある程度語ってくれた。どうやらヒノトはこちらの山形に流れ着いてから何度も出生届を出して戸籍を更新。今は10歳の女の子という設定らしい。

 

「……苦労したんじゃな。しかしヒノトよ、悪いがそなたの侵掠に手を貸してやることはできん。何せ我の魔は、今は主様に封印されておるからの」

 

前にネモが言っていた、仮にルシフェリアが平和主義だったとしても、その力を悪用しようとする輩に利用されないように気を付けなければならない。それはきっと今この時のことを言っていたのだろう。だが大丈夫だ。ルシフェリアの魔は俺の氷焔之皇によって封じられている。これがある限りヒノトはルシフェリアの魔を利用することは出来ないのだ。

 

「お前、そんなことも出来たのか」

 

「あたぼーよ」

 

と、後ろから小声で訊ねてきたキンジにはそう返しておく。ついでにヒノトにも、だから絶対侵掠なんて出来ないよと釘を指しておく。ま、一応さっきもヒノトは俺とは対立しないように振る舞っていたが、念のためな。

 

「でも!」

 

ピョコっとヒノトが小さな翼を跳ね上げさせて俺を見る。

 

「私めがルシフェリア様を尊ぶ心は花嫁になれずとも変わりません!何卒今後も接触をさせて下さいませ!何しろルシフェリア様はレクテイアの一大スター、アイドル、天地を輝きで包む神の中の神なのです。ルシフェリア様と同じ大気を呼吸しているだけで光栄……生きているだけで幸せなのです……」

 

と、恍惚とした表情でルシフェリアへの愛を語るヒノト。まぁ、別にルシフェリアとヒノトが会うくらいは構わないだろう。家にはエンディミラとテテティ、レテティっていうレクテイア出身の奴らもいるが、アイツらはルシフェリアに対しては畏れ多いって感じで、ここまで真っ直ぐな敬愛を表現してくる奴は家にはいないし。

 

さっきとは違う意味でちょっと危ない雰囲気も感じるけれど、ルシフェリアに何かあれば俺の氷焔之皇を通じて直ぐに分かるし、それほど心配しなくてもいいだろう。

 

「おう、それは別にいいぞ」

 

それに、ヒノトとエンディミラ達が仲良くなれるならそれはそれで嬉しいことだ。ま、当面の間は俺の見てる前で、かつルシフェリアとだけ接触させて様子見って感じだけどな。さっきルシフェリアが言っていたけど、ヒノトの一族も向こうじゃそれなりに立場のあった一族らしいし。レクテンドって地名は確かエンディミラも言っていたよな。もしかしたらエンディミラもヒノトのことは知っているかもしれないな。

 

「良いのか?」

 

だが、俺の返答が余程驚きだったのか、ルシフェリアはその大きな瞳が零れ落ちそうになるくらいに瞼を見開いて俺を見ている。

 

「良いよ、当たり前だろ。……あぁけど、ファンサービスは程々にしてやれよ、今の()()だって、ヒノト興奮でぶっ倒れそうになってんだから」

 

ルシフェリアの胸に抱かれてヒノトはガッスンガッスン体育館の屋根を踏み抜いているしテンション上がり過ぎで鼻血は出そうだし、大変な有様なのだ。挙句にルシフェリアは持ち上げられると弱いから結構何でも応えちゃいそうだからな。美人と美少女が抱き合って興奮した美少女が鼻血吹いてぶっ倒れるとか普通に絵面がヤバい。それでまた警察なんて呼ばれたら、せっかく今日アイツらの追求を躱せたってのにその苦労が水の泡だぜ。

 

「ふふっ……主様は優しいのぉ」

 

と、俺のそんな心配を他所にルシフェリアが優しげに微笑む。そして、一応俺の声は届いていたらしいヒノトも、ルシフェリアの胸から名残惜しそうに顔を離して口を開いた。

 

「でしたら、ちょうど良いお話があります。本日ルシフェリア様への謁見を急いだのもこれが理由なのですが……本日、()()()()()()()での寄り合い(オルグ)があるのです。私めはそこの日本支部の支部長をしておりまして。そこでルシフェリア様を紹介すればみんな喜びましょう!」

 

なんと、レクテイア出身の奴らには集会があるのか。ていうか、そんなにもレクテイアの奴らはこの世界に根付いているのか。しかも日本支部ってことは世界中にそんな寄り合い(オルグ)がある可能性も考えられるぞ。

 

「な、何だそのレクテイア組合って……。労働組合みたいなもんなのか……?」

 

「それとも、生協や農協のようなものでしょうか……?」

 

と、キンジと遠山かなでが目をパチクリさせている。だが、俺には何となく分かる。それはきっと、()()()がその孤独感や傷を舐め合うような互助組織なのだろう。そして、キンジ達の様子を見てヒノトが説明してくれたが、非公認ではあるらしいが、やはりレクテイア人の情報交換や親睦の場らしい。

 

「行くか?」

 

で、ルシフェリアはルシフェリアでヒノトの話を聞きながらそれに行きたそうな顔をしていた。俺としても特に行かせない理由はないし、何よりこれはこの世界のレクテイア人と深く接点を持つ良い機会だ。俺の知り合いのレクテイア人はルシフェリアと後はエンディミラ達だが……どちらもNにいた奴らで、この世界とはあまり馴染みがないのだ。だがネモの作り出そうとする、そして俺の理想とする世界ではレクテイア人達も俺達と同じように暮らせる世界なのだ。

 

そんな世界を作るためには、まず今レクテイアに(ゆかり)のある奴らがこの世界でどんな風に暮らしていて、どんな問題を抱えているのかを知らなくちゃならないだろう。だから俺は、ルシフェリアをそこへやると同時に、自分もゲストとしてその寄り合いに出席するつもりだ。

 

「良いのか?」

 

「まぁな。……あぁけど、俺も同行させてもらうよ」

 

いいか?とヒノトに問えば

 

「いえ、出来ればルシフェリア様だけでお越し下さい。レクテイアの血を引いていない方、並びに男性は参加をお断りさせてもらっています」

 

と、ヒノトにピシャリと言われてしまう。嫌われた……と言うよりはレクテイアには女しかおらず男がいないから、そいつらの組合の会合に男を入れるのは有り得ない、ということなのだろう。とは言え俺も入れてもらわなきゃ困るわけで……。

 

「ぶっちゃけな、ルシフェリアはとある重大事件の参考人ってことで俺達が超法規的に拘束してるんだよ。だから監視無しにあまり好き勝手外に出してあげられないのよ」

 

そもそも不法入国だし。と、俺が言い返せばヒノトは困り顔。つまり、まだ交渉の余地はあるわけだな。

 

「そんなわけで、俺としちゃあ出来ればルシフェリアにはその寄り合いにも出してやりたいんだけど、目ぇ離すのは無しだ。お前と会うのも勿論俺の監視下でってことになるぜ。だから俺が行けないならこの話は無しだ」

 

俺はヒノトにそう返す。すると、ヒノトは渋々と言った体ではあるが、組合のことを内密にする条件で俺の参加を認めてくれた。よしよし、流石はレクテイアの上位神でアイドルのルシフェリア様だ。コイツを出汁に使ったら簡単にヒノトも折れたな。

 

「ま、待て天人。俺も行くぞ」

 

すると、キンジもレクテイア組合が気になったのか参加を申し出た。だが───

 

「いや、これ以上男増やしてもヒノトが大変だろうから男は俺1人だ。大丈夫だよ、ルシフェリアは勝手にどっか行っちゃう奴じゃないからさ」

 

ヒノトが大変ってのは、男を入れる説明の手間って言うより普通に男が2人も寄り合いに出席するのが嫌そうって方だけどな。なんかもう既に露骨に嫌そうな顔してるし。

 

「むっ……」

 

で、そんなヒノトと俺の様子を見て、これ以上何か言っても自分の参加は認められないと悟ったのか、キンジはそれ以上何も言ってくることはなかった。そこでヒノトは今夜の会場の場所が書かれたメモを俺に握らせた。そこでこの体育館の上で行われた異世界交流会、その序章はお開きとなるのだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

今夜のレクテイア組合の寄り合いは港区の芝でやるそうだ。開催まで少し時間が空いてしまった俺はルシフェリアを連れて一旦家に戻った。

 

「───っていうわけでさ、ネモにも着いてきてほしいんだ」

 

ヒノトにはネモの──名前は出ていないが──参加はレクテイア人と深く交流のある人物を同行させるということで示唆してあった。俺の知っているレクテイア人はエンディミラ達くらいで、こっちで長いこと人間社会で暮らしている奴らについてはほとんど知らないからな。余計な地雷を踏みたくはないからレクテイア人と付き合いのあるネモを連れて行きたかったのだ。

 

「ふむ……それならエンディミラで良かったのではないか?」

 

と、自分よりエンディミラを推している風に言う割に、どこか嬉しそうなネモは俺と目を合わさずにそう言った。

 

「ま、地雷を踏まないってだけならな。けど、世界を変えるってこたぁ組合の奴らも自分の出生を世に晒すってことだ。でも、それには絶対に何がしかの壁があるだろ?俺ぁそーゆーのを考えんのは苦手だからさ、両方を知ってるネモにも見て、教えてもらいたいんだよ」

 

俺とネモはこの世界を変える……モリアーティとは違った形でサード・エンゲージを起こすつもりでいる。けれどそこには越えなくちゃならない壁がいくつもあるだろう。それが何なのか、そしてそれはどのようにすれば越えられるのか。俺はそういうのを考えるのは苦手だからな。ネモにもこの世界に紛れているレクテイア人と交流してもらって、これからの方針の参考にしてもらいたいのだ。

 

「なるほど、確かにノーチラスでは()()して船を降り、人間社会で暮らしているレクテイア人もいる。彼女達のその後をより詳しく考えられる機会かもしれないな」

 

「それに……表向きエンディミラは1回レクテイアに帰ったことになってる。……可能性があるかは知らねぇけどさ、前に政府とNにパイプのある人間を見たことがある。ヒノトも見た目より長生きらしいからな。もしかしたらそっからエンディミラ達のことが伝わっちまうかもしれねぇ」

 

別に、エンディミラがこっちに戻ってきていること自体はそれほど大きな問題ではないだろう。雪花も還ってきたことだし、日本政府やそこに紛れているNやレクテイアの翼賛者(シンパ)に所在を把握されることそのものは構わない。

 

だから問題は、それを()()()()()()()()()()()なのだ。そもそもこっちの魔術だなんだと言った普通の方法では、時間の跳躍っていう極大のリスクがあるのだ。

 

レクテイアに帰ったはずのエンディミラがまた何食わぬ顔をしてこの世界で生活しているということは、それこそ時空を超えた移動手段がなければならず、それはNにすら無いものだ。

 

すなわち、俺という存在と、俺の持つ導越の羅針盤と越境鍵。概念魔法を付与された2つのアーティファクトの存在に限りなく近付かれる可能性がある。

 

どうせいつかは知られることとは言え、今この段階で知られることは避けたい。敵対されるにしろ、取り入ろうとしてくるにしろ、まだ国や政府……政治家達とやり合ってやれる程こちらの計画は進んじゃあいないのだから。

 

「分かった。せっかく天人が私を頼ってくれたのだ。力になろう」

 

今度は何故かユエに向かってドヤ顔のネモ。ただまぁ、手伝ってくれるというのは有り難い話なので

 

「おう、ありがとな」

 

俺はネモに素直にお礼を言った。するとネモはこちらに振り向いてフニャリとした笑顔を向けてくるのであった。

 

──ピリリリリ!ピリリリリ!──

 

と、そこで俺の携帯に着信があった。携帯の画面に表示された発信元はアリアの携帯だ。俺はちょっと面倒な予感を感じつつも、出なければ出ないで後でもっと面倒になるんだろうなぁという諦めから、その電話に出る。すると───

 

「キンジから聞いたわよ!アンタ、レクテイア人の集会に出るんですって!?どこでやるのよ!あたしも行くわ!!」

 

案の定アリアが面倒臭いことを言い出した。これ携帯の電源ブチ切って行っても後が煩そうだなぁ。仕方ない、幸いアリアは女子だから追加で連れて行ってもヒノトを言いくるめるのは多少楽だろう。

 

「……港区の芝だよ。細かい住所はメールする。……けど、基本男子禁制で、俺だって結構無理矢理押し通したんだ。キンジは入れねぇぞ」

 

と、俺は渋々行き先を白状。だがヒノトのあの様子だと男のキンジまで追加で入れるのは難しいだろう。それこそアーティファクトでも使っちまえばできないことじゃないが、そういうアーティファクトの存在はアリアにはバレていない筈だし、言わなきゃ求められないだろう───

 

「ふん、あんたのことだから潜入に使える魔法の道具もあるんでしょ?それ貸しなさいよ」

 

なんで分かってんねん……。いや、発言的には証拠を握っているわけじゃなくて、勘で言ってるんだろうけど、こうなったアリアはしつこいんだよな。そんなもんは無いと言ったところで現地でキンジがアリアに引っ張られてて、俺がアーティファクトを取り出す他なくなる、なんて未来が想像できるよ。

 

「……はい」

 

で、俺は電話越しなのに項垂れつつそう返し、アリアの返事を聞くことなく携帯の通話を切るのであった。

 

「……大丈夫か?」

 

「ご主人様、如何されました?」

 

俺のその様子に、ネモとリサが心配そうに寄ってきた。ユエ達はもうこの先の展開が読めているのか、ただただ眺めているだけだ。今日の料理当番はレミアだからかミュウはシアと一緒に台所に立ってお手伝い……というか料理のお勉強をしている。まだ火や包丁は目の届く範囲でしか使わせてやれないが、実はもうミュウは大人の目さえあれば俺よりもお料理が上手だったりする。

 

「あぁ……大丈夫だよ。ちょっとアーティファクトまで出させられて嫌だなぁってだけ」

 

「ご主人様、そのレクテイアの集いにはリサも行って宜しいでしょうか?」

 

と、潜入(出入り)調査の割に珍しく積極的なリサ。基本的に俺はこの手の任務にリサを連れて行ったことがないし、連れて行ってくれなんて言われたこともなかったから意外だな。

 

「んー?……まぁ、リサなら女子だし入るのは俺より文句も出ないだろうけど、またどうして」

 

「オランダにいた頃、小さい時に獣人(ライカン)の集いに出たことがあります。そのような場所での作法ならリサも助言ができるかと」

 

と、リサは何故かネモを見やりながらそう言った。言ってることは間違ってないんだろうけど、何でネモを見てるの?

 

「そうだな、私も幼い頃に魔女のミサに連れて行かれたことがあるし、私からもそういう助言はできるだろう」

 

と、ネモはネモで何故だかリサをしっかりと見返しながら「自分も同じことはできるぞ」といった雰囲気を出している。なんていうかこう、リサとネモで何がしかを競っているような感じだな。

 

しかも、それを見ていたユエとティオ、ジャンヌにエンディミラまでもが大きな溜め息。ルシフェリアはニマニマと意地の悪そうな笑みを浮かべているし、どうやら俺以外の全員がこの場のこの雰囲気の理由について察しがついているみたいだ。

 

「分かったよ、リサも来てくれ」

 

とは言えリサがこう言うのは珍しいので俺は2つ返事で着いてきてもらうことにする。すると何故かネモが少しムッとした雰囲気を、一瞬だけ出して、リサはリサでちょっと勝ち誇った顔をこれまた刹那の間だけして……そして直ぐに

 

「ありがとうございます、ご主人様」

 

と、咲き誇るような笑顔を見せてくれるのであった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

東京タワーの麓、色んな寺が集まっているここは、名刹が多く時代劇の中にでもいるかのような気持ちに───はならないな……。リサもネモもルシフェリアも和風って感じじゃないし。

 

んで、結局俺はキンジだけでなくアリアにまで存在解像度低下のアーティファクトを渡す羽目になった。しかもアリアは何故か大きなトレーラーを自分で運転して来たのだった。

 

「じゃあこれ首に掛けといてくれ。……一応効果は説明しとく。そりゃあ使ってる奴の"存在の解像度"を限りなく下げるもんだ。効果が働いている間はレーダーにも映らねぇけど、光学的に消えてるわけじゃねぇ。ただそいつの行動の()()()()()()()に目がいかなくなるってもんだ」

 

と、俺はキンジにアーティファクトを手渡しながらそれの効果を説明してやる。とは言え、光学的に消えるわけじゃないってんで、頭にはてなマークを浮かべているけどな。

 

「そうだな……。例えばキンジが渋谷のスクランブル交差点のド真ん中でブレイクダンスを踊ってても誰も気にしなくなる。一応そこに誰かがいることは把握されるから、チョイと避けてはくれるだろうけどな」

 

「それって、潜入に向いているのか?」

 

「んー?まぁ、確かにそこにいた痕跡そのものは消せねぇけどな。ただ、誰からも意識されない。男とか女とか、そんな部分にも誰も目がいかなくなる。知らねぇ場所での潜入調査なら結構役に立つぜ」

 

実際、竜の世界でも使ったこれはそれなり以上に効果を発揮した。これのおかげでクヴァイレンの補給艦へ楽々侵入できたわけだからな。

 

「一応、これを付けてる奴ら同士と、俺ぁアーティファクトとは別の理由で存在を把握できる。キンジはそれで俺達の後ろから静かに着いてくりゃ、まぁ取り敢えず中には入れんだろ」

 

「それ、あたしにも貸しなさいよ。どうせ何個もあるんでしょ?」

 

アリア様はよくお分かりで。確かにこれは幾つも用意してある。そもそもがハウリアにでも寄越そうと思っていたアーティファクトだしな。

 

「……はいはい」

 

どうせ拒んでも出せ出せ煩いのが分かっているので俺は大人しく宝物庫からもう1つ同じアーティファクトを差し出す。

 

「そういや、この道具、何て言うんだ?」

 

と、まだアーティファクトを首に掛けていないキンジがそれを指差しながら俺にそんなことを聞いてくる。別に名前なんてどうでもいいでしょうに。

 

「いや、名前とか無いよ。別に要らないし」

 

潜入調査に使える気配遮断のアーティファクトは今はそれしか無いからな。特に区別の必要が無いのだ。だから例に及ばすこのアーティファクトにも固有名詞は存在しない。

 

「じゃあいつも何て呼んでるのよ?」

 

「気配遮断のアーティファクト」

 

それ以外あります?という俺の心は顔に出てたらしい。キンジもアリアも俺の顔を見て、そして大きく溜め息。

 

「じゃあいいわ、勝手に呼ぶから」

 

「おう」

 

それでキンジとの間で齟齬が起きないなら俺はそれで構わない。そして、俺達はようやく紅鶴寺(こうかくじ)と書かれた門を潜る。しかし寺なのに鳥居まであったな。神仏習合ここに極まれりってやつか?ま、日本人なんてキリストの誕生祝いをやった次の週には夜に寺の鐘を聞いて、その次の朝には神社に詣るんだからそんなもんなのかもな。

 

と、俺がどうでも良いことを考えながらやたらとボロいこの寺の奥へと歩いて行くと、参道の向こうからかぽかぽとぽっくり下駄の足音を響かせながらヒノトがやってきた。赤い帯に白い和装。鶴の紋が入った提灯を片手に暗がりから出てきた。

 

「ようこそルシフェリア様……それから皆様も。……聞いていたより1()()多いようですが?」

 

と、俺をジロリと睨みながらそう言うヒノト。どうやらあまり歓迎されていないな。

 

キンジ達はまだ鳥居を潜っていない。あれはそこに誰かいることは多少なりともバレてしまうから、まだアイツらは後方で待機しているのだ。

 

「悪いな。でもこっちのリサも、レクテイア絡みの事件(ヤマ)に絡んでてな。それでレクテイアとレクテイア人に関して見識を深めるためにも今日の集まりを見学させてもらうよ」

 

「はぁ……見識を……。構いませんが、それならガッカリすると思いますよ?」

 

「そうなのか?」

 

「何か誤解があるようですが、私共は至って普通ですので」

 

そう言ってヒノトは回れ右をした。別に、俺としてはコイツらが普通であってもなくても構わないのだ。と言うか、普通なら普通であることを知りたい。それくらい、俺達はレクテイアとレクテイア人のことを知らなさ過ぎるからだ。

 

そして、参道の奥へと進んでいくヒノトに着いて行くと、途中から野太い声のお経が聞こえてきた。人の気配は無いから、これは録音されたものだろう。

 

「これは……?」

 

と、俺がヒノトの背中に聞くと

 

「人払いです。寄り合いを一般人が見てSNSなどに写真などを載せてしまうと困りますからね」

 

なるほどな、確かにこんな不気味な雰囲気のボロ寺に入って、しかも途中からはお経が聞こえてきたんじゃあ進みたがる奴もいないか。

 

そうして本堂に入ると下駄箱があり、俺達はそこで靴を脱いで外履きを仕舞った。しかし外の見栄えとは違って中は随分とマトモだな。畳の匂いもさわやかで板張りの床も清潔。奥には電気も点っている。

 

しかも寄り合いの会場は洋間らしく、正座が出来ないと心配するネモはふぅと一息吐いていた。

 

そしてヒノトが開いた襖の奥には、100人はいるであろうレクテイア人やレクテイアにルーツを持つ女達がワイワイガヤガヤと食事や歓談を楽しんでいた。年齢は子供から大人まで様々。ただ、誰も彼も見た目はほとんど霊長の人類と変わりなく、時々遠目からではくせっ毛と区別が付かないようなケモ耳を持った奴がいたり、風も無いのに髪の毛が靡いている奴がいたり。そんな程度だ。

 

会話の内容も、婚活がどうのとかそんな感じ。至って普通だ。ただ、職業もてんでバラバラなのだが、中には公務員や市議会議員の秘書、警官や自衛官になっている奴もいる。それくらいレクテイア出身の奴らがこの世界に溶け込んでいるということなのだろう。

 

ちなみにルシフェリアは入室早々にここの奴らに囲われて褒めちぎられている。あっちはあっちで放っておこう。ここに来た目的の半分は、ルシフェリアとここの奴らの交流だからな。

 

そんな風にある程度長い時間、俺とリサ、ネモはこの寄り合いを見学したり、リサやネモは時折レクテイアの奴らと会話したりして過ごしていた。キンジとアリアも俺達の入室に合わせてスルりと潜り込んで来ていたが、何をするでもなく……いや、さして意識されないことを良いことにこっそり食べ物を食っていたな。今日の寄り合いは地方ごとにテーブルが分けられてる立食パーティーのようなものだったのだが、千葉県組だけは欠席だったのだ。だからキンジとアリアはそこから食べ物を失敬していた。

 

男の俺に積極的に話しかけてくる奴はいなかったが、遠巻きにチラチラと見てくる奴はいたな。すると、ヒノトがフラリと俺の傍に寄ってきた。

 

「……どうでしたか?今日は耳や尾を出す者も多いようですが、至って普通でしょう?」

 

「そうだな」

 

「流石は神代天人様ですね。全く驚いていないご様子」

 

「いや、驚いてるぜ?……思ってたより、レクテイアと地球は近かったんだな」

 

別に耳や尻尾程度じゃ驚きはしない。こちらとらリムルの世界やトータスでこの程度は見慣れているからな。だから俺が驚いたのはむしろ逆に、()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことの方だ。

 

「えぇ、そうなのです。むしろ、自分の出生にピンときていない者も多いくらいです」

 

それと、とヒノトは続ける。どうやらルシフェリアがお疲れのようだから休ませたいとのこと。見れば、今はリサとバザーを見ている。そして、何やら2人とも笑顔で何かを購入した。ルシフェリアが直ぐにポケットに仕舞ったから何を買ったのかはよく見えなかったが、リサも普通に笑っているから危険なものじゃあないのだろう。大きさも、それほど大きくはないみたいだな。

 

すると、今度はあちこちで平等を賛美するグループワークが行われ始めた。そして、それをする気持ちは、俺にも少しは分かる。

 

「奇妙に思えるか?」

 

すると、ネモが俺の横に来て「私達は生きていてもいい……私達は生きていてもいい……」と呼び掛けあっている四国分会を見ながらそう聞いてきた。

 

「いいや、俺にも分かるよ。俺ぁ親からそう言われてきただけだけどな……」

 

俺の両親には聖痕の力は発現しなかったが、それでも代々話だけは受け継がれてきたのだろう。俺には力を人前で使うなと強く言っていたが、その代わりに慰めてもくれたものだ。俺達のような聖痕持ちは力を持っているからこそ疎まれ、社会から隔絶される。だけどそれは仕方のないことで、隠して、普通の人と同じように生きている限り、持っているだけなら罪ではないのだと、俺達も生きていて良いのだと。そう語ってくれていた。

 

そんな両親を俺は……俺の力で殺してしまったのだけれど……。

 

「天人……?」

 

「ご主人様……」

 

ネモが俺の左手に握る。小さな手だ。こんな小さな手で、超能力者やレクテイアの奴らが差別されない世の中を作ろうと言うのだ。

 

リサが俺の右半身に寄り添う。リサの祖先……数代前のアヴェ・デュ・アンクは過去に人前で耳や尻尾を晒してしまい、耳や尻尾を切られ、石を投げつけられて森の中へと追いやられたのだ。だからリサにも彼女達の痛みが分かる。

 

俺も、最後はキンジが馬鹿やったから日本に戻れたけど、あのままキンジがローマ武偵高に留まれていたら、その間ずっと日本には帰れなかっただろう。それどころか、ずっと海外に追いやられたままだったかもしれない。

 

俺には幸いにも力があった。人並外れた腕力があって、それで居場所を無理矢理ぶん取ってきた。暴力の世界でも俺の力は疎まれたこともあったけど、認めてくれる奴も少しはいた。

 

けれどレクテイアの奴らにはそれがない。自分のルーツさえ曖昧で、けれど人と違うからとそれを隠して生きている。それは辛いだろう。俺だってあそこでシャーロックに拾われなければ野垂れ死んでいた。そもそも、アイツらが来なくても俺は自分の手に余る力をどうしようもなくて、もっと最悪の道に転がり落ちていたかもしれないのだ。

 

イ・ウーや異世界の旅の中ではリサを守れた。トータスじゃあユエ達と出逢え、愛し合うことができた。世界も救えたのだろう。ならこれからは?今まではユエ達も自分の正体を隠しこの世界をて生きている。シアやティオ、レミアにミュウ、エンディミラとテテティレテティに至ってはアーティファクトで自分の身体的特徴すら誤魔化しているのだ。トータスじゃそんなことをする必要なんかなかったのに、こっちに来て、俺といるためにそんな不便や理不尽を強いられている。

 

彼女達は自分のルーツに誇りすら持っている。兎人族であること、竜人族であること、海人族であること、エルフであること……それらは彼女達にとっては大事なアイデンティティなのだ。

 

それを、社会の目がどうのとか、そんな理由で押し込められている。それはここにいる彼女達も同じだろう。ヒノトの言葉じゃ、ユエ達ほど自分のルーツに誇りを感じてはいないだろうが、それでも大事な自分自身の1つではある筈だ。

 

でなければこの寄り合いに出て、あぁやってお互いを励まし会う必要はないからな。

 

「私は……こういう者達のためにも立ち上がったのだ。人類が歴史上で繰り返してきた……超常への差別を無くすために。異能であろうと異形であろうと……平凡な者と同じ社会で、ありのままに生きていけるように───」

 

そしてネモが熱く呟いた。その瞳には純粋な正義感が浮かんでいた。ネモのこの瞳を見ると、俺の胸には怒りが沸き立つ。ネモのこんな純粋な願いを……想いを利用してモリアーティは自分が望む混沌(カオス)の世界を作り出そうというのだ。きっとその世界にはネモの望んだ光景も一部はあるのだろう。けれどレクテイア人を大量にこちらに移して、強引に混沌の世界を生み出すなんてきっと、起きるのは争いだけだ───

 

「あっ……」

 

そう、争いだ。俺は今、取り留めもない思考の中からモリアーティの目的が浮かんだのだ。きっと、モリアーティは混沌と争いの世界を作り出そうとしているのだ。ネモは言っていた。レクテイアでは世界を滅ぼせる者を神と呼ぶ。そしてその位の上下はそれをどれだけ効率よく行えるのかで決まると。

 

そして、人類の核兵器全てを思い通りに扱える奴は中の下。それほど高くはないように思えるが、確実に人類は人類を……ひいてはレクテイアの神をも滅ぼせる。熱核攻撃が全ての殲滅には非効率だからそれほどランクが高くないだけで、通じないわけじゃあない。

 

だから局所的な戦闘に限って言えば……人類の兵器とレクテイアの神の力はほぼどっこいと考えていい。

 

そして、レクテイアには好戦的な神もいるようだ。しかし逆に、ルシフェリアのように人類に味方する奴もいる。

 

「天人……どうした?」

 

ふと、思考の坩堝に陥っていた俺に、ネモが心配そうな声を掛けた。その声で俺は思考が現実に戻ってきた。ネモの瞳には先程の燃えるような正義感ではなく、ただ急に押し黙った俺を心配する色だけが浮かんでいた。

 

「ご主人様、大丈夫ですか?」

 

リサの身体の柔らかさが俺の感覚も現実へと引き戻してくれる。俺は2人にうんとだけ頷く。さっきの俺の思考はいつかネモに話すべきだ。けれどそれは今じゃあない。まだ、今はまだ俺の中でも纏まりきっていないからだ。だからもう少し言葉を纏めたら、ネモともう一度話そう。それで今度こそ、本当にネモと同志になるんだ。

 

 

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