「おう、終わったよ」
と、俺とユエは遠藤を回収しつつ天樹の天頂に戻ってきた。氷の壁にも特に反応が無かったから分かってはいたが、どうやら妖魔の襲撃はなかったようで、天之河達も落ち着いた雰囲気で俺達を迎えた。
「さてさて……アンタ、この大剣と天之河の聖剣のこと、色々知ってるみたいだけど……話せるか?」
天之河の聖剣はともかく俺のこれについては是非とも話してもらいたいものだ。なんか剣のくせにやたらとペカペカ光るし。いや、天之河の聖剣も光るんだけど、それはそれ。
俺に覗き込まれたアウラロッドは天之河の聖剣と俺の黄金の大剣を見比べて、ふぅと一息入れつつ口を開く。それは、俺の今後しばらくの行動指針を固めるのに充分以上の情報だった。
───曰く、俺と天之河の剣はそれぞれ聖樹とトータスの大樹の地下に眠る鉱石とそれらの根が融合した物質で構成されているらしい。天之河の聖剣を俺がメンテナンスしてやった時に、他の奴らのアーティファクトと違ってブラックボックスが多くてあまり触れられなかった理由はどうやらこれが原因と思われる。
そして、これらの剣はそれだけでも世界によるマーキングのようなもので、聖樹やそれに類するもの──遠藤が総称として世界樹の枝葉と名付けた。大元の素子を生み出すやつが世界樹──が世界の危機に瀕した際に無差別に異世界人を召喚しようとすれば全てこれを持つ者に繋がる。そして、これらの聖剣は基本的に勇者の資格がある人間……つまりは大勢のために自己及び大切な誰かを犠牲にできる者──具体的には天之河みたいな奴──に渡されるものらしい。そして、俺のこの大剣も聖剣になるんだとか。
だが1つ解せないことがある。俺とティオは1度世界によって召喚されたことがある。しかも世界樹で繋がっている世界に、だ。しかしそれに対してアウラロッドの答えは───
「もしや1度、世界樹で繋がっている世界を救ったことがおありですか?」
───というものだった。
どうやら俺達はその時に世界にマーキングされているらしい。しかも、アウラロッドは聖痕についても少しだけ知っていた。聖痕は全ての根源の世界───素子を生み出す世界よりも更に深くにある世界と繋がっていて、それはとりもなおさず俺は聖剣なんて介さなくても世界樹のある全ての世界と繋がっているということで、俺はそれにより呼ばれた可能性がある……ということだった。ちなみにティオは半分巻き込まれ、らしい。
そして、ルトリアの世界にシアが呼ばれたのは、きっとルトリアが勇者の存在を拒んでいたからだろう。あの時のアイツは人類を滅ぼす気概で満ち溢れていたし。そこでシアが選ばれたのは……きっと本人の資質だろうなぁ。あの子、結局あっちの人間を見捨てられなかったし。
で、挙句に俺の手元にある聖剣。聖樹からはまるでお礼かのように渡されたのだが、これはもう立派な
「……つまり世界樹の枝葉を全部へし折れば解決?」
「えっ!?」
しかしここで俺の命運に待ったをかけたのが我らがユエ様。何かもう黄金の魔力光が溢れ出ているし既に大人モードだ。完全に9つの世界にある世界樹の枝葉をぶち折る気満々である。
「……別の世界の問題に……他の誰かでも良い戦いに天人を巻き込むような奴らは……私が全部潰す」
ランダムに呼ばれてしまったのでもなく、俺達の世界での戦いでもない。しかも本来は天之河という当代の勇者がいるにも関わらず、俺を呼んで世界の救済を成すための戦いに巻き込むというのなら、そんな存在は消え去ってしまえ。どうせ仲の良い知り合いのいる世界には影響は無いし。ということらしい。
「……天人の力に目を付けてそれを利用する奴らなんか私が……ううん、私達が全部叩き潰す」
私"達"……きっとシアやティオのことだろう。下手したらルシフェリアやカーバンクル、アガレスまで出張ってくるかもしれない。確かにそれだけの奴らが集まれば各世界の世界樹の枝葉を全部へし折るくらいは可能だろう。トータスの大樹は、そもそもあの世界が落ち着いているから放っておかれるだろうが、この世界の天樹と機械仕掛けの世界にあった聖樹は確実に折られる。ユエはやると言ったらやるだろうし、他の奴らの性格を考えればユエを止めるとも思えない。
「……神代、ユエさんにスゲェ愛されてるな……」
「愛が重くて心地良い……全部委ねそう」
遠藤とは小声でそう言い合うけど、そんな悠長に眺めてばかりもいられない。このままだとユエ達に巻き込まれて天之河が叩き潰されるだろうから、それは流石に避けたいな……。
「まぁまぁユエさんや、落ち着きなって」
このままだとユエは天之河ごとアウラロッドをぶっ潰してこの天樹も折り、俺の聖剣もぶっ壊しかねない。というか多分そうするつもりだ。聖剣は別にどうでもいいけど、天之河まで殺されちゃ居た堪れないので俺はユエを後ろから抱きしめてやる。そうすれば噴き出していた黄金の魔力光はふっとその噴出を収めてくれる。だがまだアウラロッドを睨んだままで、殺気も消えていない。おかげで天之河も聖剣の柄に手をかけているしアウラロッドも顔に緊張の色が浮かんでいる。
「そうだな……アウラロッド、アンタが貸してくれた天樹の小枝。あれをもう1本くれるか?」
「えっ……えと、それは……何故……?」
俺の提案に、臨戦態勢を取っていたアウラロッドが拍子抜けしたように聞き返してきた。
「んー?それを育てて世界樹の枝葉をもう1本作るんだよ。んで、小さいけど世界をもう1つ作る」
具体的には俺の悪魔軍団達の住処だ。俺達の宝物庫を繋げておけばアイツらの住環境も整うし俺達の戦力も落とすことなくいられる。地獄と比べてきっと優しい景観になるけど別にいいよね。どうせ生体ゴーレムに取り憑いてるんだし。
「……んっ、でもそれだけじゃ足りない。……世界樹の枝葉を復活させる時に女神の権能で全部の世界樹の枝葉に対する干渉用の道具を作って、それを天人に渡して」
「はっ!?いや……ちょっとそれは……」
ユエの要求……それは世界樹の枝葉に対する白紙委任状を作って渡せというものだ。普通に考えて、いくら何でもそんな要求を飲めるわけがない。
「……そうすれば9つの世界にある枝葉の復活も手伝ってあげる。けど……」
そこでユエは言葉を止め、そして天樹の頭上に超巨大な重力場──壊劫──を生み出した。それはもう清々しいまでの脅しだった。言うことを聞かなければお前らごと大事なものをぶっ壊すっていうな。アウラロッドの不死性も天樹あってのもの、それごと叩き潰されたらアウラロッドも命の保証は無い。
別に俺は小枝さえ分けてくれればそれで良いのだけど、ユエ的には枝葉への干渉権こそ本命らしい。まぁ、いつまたお呼び出しされるのか分からないのだ。それに対する切り札を持っておきたいということなのだろう。
「……脅迫には屈しません。そもそも、世界樹の枝葉の復活には勇者様と
何故か天之河との2人きりを強調してきたアウラロッド。微妙に締まらない言葉とは裏腹に、彼女の発する雰囲気はこれまでのどこかオドオドしていて自信無さげな残念女神のそれではなく、後光でも見えてきそうなくらいに強い信念と力を持った女神様のそれだった。
「別に、俺としちゃあ何でもいいんだけどさ。ただ……それでもし俺が枝葉に召喚されたら……後でユエ達ゃマジでその世界にある枝葉をへし折りに行くと思うぞ……」
そしてそれを止める術を俺は持たない。ていうか、多分俺の知らない間に行われると思う。俺達の宝物庫は繋がっているから、ユエ達の側からも羅針盤と越境鍵は取り出せてしまうのだ。それこそ寝ている間にやられたらどうしようもない。
「ユエも、別に世界樹の枝葉を壊したいワケでも悪巧みしてるワケでもないんだよ。ただ俺がこれ以上戦いに巻き込まれるのが嫌だから、枝葉には俺を呼ぶなって言いたいだけなんだ。小枝の話もな、俺ぁただ部下に住み良い秘密基地をくれてやりたいだけなんだよ」
このままだと話が平行線で、最悪ここで戦闘になってしまいそうな空気だったので俺はユエをギュッと抱きしめながらアウラロッドに語りかける。脅したいわけじゃないし、枝葉への干渉権で何か企んでいるわけでもない。必要なのは俺達への不干渉の確約。ユエの願いはただそこにあるのだと伝える。ユエはきっと俺のためを想ってこそ言葉が荒くなってしまっただけなのだ。その気持ちは嬉しい。だからこそ、俺が責任を持ってこの場を執り成す必要がある。
「……ちなみにだけど、ユエは1人で世界を越えられるし、それを俺ぁ止められないし、ユエなら1人でさっきの妖魔共全員叩き潰せるし、何なら似たような戦力があと4,5人いて、そいつら全員ユエと一緒に暴れると思う」
アウラロッドも俺の言葉で女神様のご威光を収めてはくれたが、それでも顔は渋っていた。なので俺は1つ爆弾を投げてみる。もっとも、どれも誇張無しに真実なので本当にどうしようもないのだけれど。
しかも天之河の溜め息がそれを補強する。それでアウラロッドは悟ったのだろう。きっとユエとその仲間達はこの勇者様の何倍も強いのだと。
実際は数倍どころでは済まない戦闘力を秘めているのだが……。
「本当に、悪いことには使わないと誓えますか?」
「うん。力があるから戦え、なんていうの……もういい加減終わりにしたいんだよね。俺達の願いはただそれだけだよ」
アウラロッドには俺達の正直な気持ちを伝える。俺達はもう戦いの渦から出たいだけなのだと、力を求められて戦いに駆り出される日々に終わりを告げたいのだと。
きっと、俺はそれから抜け出せないと思う。俺達の地球とレクテイアの間にある溝、地球の……武偵という存在がいなきゃいけないほどの治安。それ以外にも大なり小なり俺達はまだ火種をいくらでも抱えている。それに、そんな世界だからこそ俺は大事な奴らを守るために力を手放せない。
それでも戦いは少なくなれば良いと思うしそうあってほしい。そして、ユエ達にもそんな血と硝煙の臭いから離れた生活をしてほしい。……って言うのは、きっとユエ達が俺に思っていることなのだろうな。
「……分かりました。世界救済のお礼として、貴方達の望むものを差し上げましょう」
「……んっ」
「おう」
まぁだいぶ嫌々って感じだけども、取り敢えず言質はいただけた。ユエもこれで溜飲が降りたのだろう。いつもの小柄な体躯に戻り、放っていた威圧感を収めてくれた。
───────────────
「へぇ……そうなんだぁ……」
それはそれはドス黒い気配を発している女の子が1人。この砂漠の国の元王女様であるモアナだった。あと、コイツのお付きのリーリンって言う奴も天之河に気があるらしいが、こっちはこっちでモアナからも天之河を奪う気満々らしくて案外余裕の表情。
取り敢えず俺とユエ、遠藤は天之河とアウラロッドを置いて砂漠の国へと帰ってきたのだ。
当の本人達はこれからアウラロッドがあの世界を離れて世界樹の枝葉を復活させる旅に出る準備を整えていたのだ。天之河はその護衛。まだ時々妖魔が襲ってくるからな。
で、俺達は暇潰しに天之河が異世界でアウラロッドを籠絡したことや実は天之河の聖剣ウーア・アルトには化身の魂が残されており、それをアウラロッドに具現化してもらったらこれがまた随分な美人が出てきたとか、機械仕掛けの国でナンパしてたとか、それはそれは楽しいお話をモアナ達と交わしていたのだった。
あと実は遠藤が向かった小天樹ではヤンキーな感じの鬼共がいて、そこの頭領はめっちゃ背の高い美人な鬼で、何か知らんが遠藤がそいつのことを落としていたことも判明。て言うか、遠藤にはこっそり録画用のクモを付けていて、そいつのもたらした映像記録でそれが判明したのだった。
そういうドタバタをモアナ達に報告したらモアナさん完全に闇堕ちしてしまった雰囲気だ。でも面白いから放っておこう。
「それで、天人さんももう枝葉復活に動くんですか?」
機械仕掛けの世界でシア達には一旦戻ってもらって、あっちで起きたことを報告してもらっていたのだが随分な寄り道をしてしまった。おかげでユエと遠藤に妖魔のいる世界で知れた諸々を説明してもらう羽目になったのだ。
「えぇっと……地球の王樹、地獄の魔樹、トータスの大樹にここの恵樹、ルトリアの星霊界の星樹、ティオと行った天竜界と竜樹、機工界のは聖樹でアウラロッドのとこが妖精界で天樹でエヒトが潰したのが厄災界で怨樹。素子の世界が真界アストラルで世界樹、ねぇ……」
メモ書きを見ながら俺はそれぞれの世界と樹の名前を列挙していく。ちなみに元々そう呼ばれていた大樹と聖樹、天樹以外は全て遠藤の発案である。しかしこうやって名前を付けると区別が楽でいいな。
「もう完全に無いもんはアウラロッドの管轄。俺ぁ弱ってる枝葉……トータスのとかの担当なわけだけど……」
なので目下俺の担当は恵樹と大樹である。竜樹……というかルトリアはわりと元気だから後回しだろうし、聖樹ももう元気モリモリ。何なら元気過ぎて俺に聖剣くれたくらいだ。あとは怨樹と竜樹があるかどうかだな。王樹と魔樹はもう無いし。
「取り敢えず小天樹の復活が最優先。それから無くなっちまった枝葉と弱ってる枝葉を同時進行って感じだなぁ」
復活の方法は簡単だ。聖樹にそうしたように俺が変質者で枝葉と一部同化し聖痕から溢れ出る力を注ぎ込む。アウラロッドに聞けばそれが可能ならそれで復活するって言っていたし、実際聖樹はそれで元気100倍になったからそれでいこうと思う。
「だからま、直ぐに長旅とかはしないよ。て言うか、1番大切な俺達ん世界のことも考えなきゃいけねぇし」
あと早くトータスに戻ってリサ達にもこの話をしなければならない……面倒臭いなぁ。天之河が戻ってきたら全部説明してもらおう。どうせトータスの大樹にも干渉するんだ。そうなればリリアーナ達にも知っておいてもらわなけりゃいけないしな。
「もう……勝手にいなくならないでくださいよ?」
スルりとシアが俺に撓垂れ掛かる。俺はシアの柔らかい髪の毛を梳いてやりながら「大丈夫だよ」と囁く。するとティオも逆から俺に寄りかかってくるので両手が忙しい。
「……あ」
すると、何となくの気配がしたと思えば長いテーブルの上から光が現れる。俺は基本的にこれを外から見たことはなかったけど、こんな感じなんだな。
そして、その光の膜から天之河とアウラロッドが現れた。天之河には羅針盤と越境鍵を貸しておいたのだ。必要なパワーは天樹からアウラロッド経由で天之河に供給できるし。
「───光輝!」
「モアナ!」
すると、モアナが勢いよく天之河に飛びつく。天之河が帰ってきて喜色満面の笑顔を浮かべて──一瞬だけアウラロッドに鬼のような形相を浮かべたけど──感極まったように抱きつきにいったモアナ。しかし───
「祈願する!邪なる者を吹き散らせ!───逆巻く風!!」
「きゃあっ!?」
リーリンさん、まさかの元女王様を風の魔法──みたいなこの世界独特の技──でぶっ飛ばした。勢いよくテーブルの向こう側に落ちていったモアナだが、この世界の女王は戦う女。それなり以上に頑丈なようで、直ぐに起き上がってリーリンに文句をぶつけようとした……のだが
「お帰りなさい、光輝さん」
と、既にリーリンは天之河の腕を取って自分の胸の中に抱き込んでいる。早い、あまりに手が早い。
しかし、自分がその立場に置かれるのはゴメンだけど他人の修羅場を見るのは大変に面白いな。しばらく遠藤と一緒に煽っていよう。
と、俺は遠藤と2人、突然勇者に訪れた修羅場をヒューヒュー外野から煽り散らかしたのだった。
───────────────
「それで、シャーロックからの宿題は終わったのか?」
天之河とモアナ、アウラロッドを連れてトータスへと戻った俺達。ただ、砂漠の世界での戦いだけならともかく、そこから更に2度も世界を渡った俺達は帰還者の集いの二次会をやる気にもなれず、そもそも何日も置いてけぼりを食らった彼らもそんな雰囲気にはならず、取り敢えずその場の全員に事情を説明してお開きとなったのだ。
その後俺達は一旦自分らの世界に帰った。そこで俺はネモからこうして宿題の進み具合を確かめられているというわけだ。
「カーバンクルの合流、アーティファクトの強化、地獄の悪魔達を乗せた生体アーティファクト軍団、それとアガレス。……ま、たかが潜水艦2隻を相手にするだけなら過剰戦力だよ」
もっとも、モリアーティ達の厄介なところはノアとナヴィガトリアによる戦闘力ではなく奴らの持つ聖痕の力に寄るところが大きい。聖痕にそれ以外の力で正面から勝つのは非常に厳しい。その力や持っている奴次第ではあるが、例えばあの粒子の聖痕を持つ男に勝とうと思ったらそれこそリムルでも呼びたくなる。
そんなような奴らを相手にどれほどの戦力を集めれば良いのかは正直言っててよく分からない。トータスで作った銃火器の類は電磁加速式から重力魔法や縮地も組み込んだ多重加速式にしているし、弾頭だってこれまでは魔力の衝撃変換による炸裂弾だけだったものに、神代魔法を加えて破壊力は破格の一言……の筈だ。太陽光収束兵器も向こうで使った時と比べれば格段に火力は増しているし、砲戦に向けてISのようなアーティファクトだって用意している。
それに、新たに仲間になったカーバンクルやアガレス。カーバンクルはレクテイアの女神でルシフェリアと同格。向こうにもレクテイア人がいることを考えても、こちらも破格の戦力だろう。
アガレスだって、流石は地獄の悪魔の中でも上位に位置する存在だ。アイツの扱う空間魔法は俺の名付けと腕の吸収によってあの時の戦闘と比べてもまた1つ抜きん出た火力と応用力を得るに至っている。
それにもう1つ。聖樹から押し付……もとい、渡された聖剣。星精力を熱量に変換してビームのように叩きつけるだけでなく俺の持っていた固有魔法や元素魔法を解析し、それらとはまた違った形で出力もできるあの大剣。
そのパワーは太陽光収束兵器の一撃に勝るとも劣らない。ただの人間相手に使うにはあまりに過剰な威力。1振りで地形さえ変えかねないこれも、聖痕や潜水艦隊と戦うには役に立ってくれるかもしれない。
「なるほど。私もその全てを見たわけではないが、天人がそう言うのならきっとそれなりのものなんだろう」
「手札と、仲間も増えた。後は……戦うだけだ」
モリアーティの作り出そうとする戦争と混沌……そしてそれを経て生み出される新たなる世界。そんな手段で作られる世界を俺達は許してはおけない。
ならどうするのか?きっと、俺達は戦うしかない。どちらの理想が優れているとか正しいとか、そういう問題ではない。ただ欲望と誇りのぶつかり合いなのだ。
だから俺達の間には戦う以外なくて、地球とレクテイアの戦いを収めたいのならここで俺達が戦って勝つしかない。この戦いを、世界の間の最後の戦いにしたいのなら……。
「信じている───」
ネモが俺の右手の上に自分の小さなそれを重ねる。俺はその手を取って握手するようにネモと手を繋いだ。
「あぁ。俺は……俺達は勝つ。モリアーティに。こっちを侵掠しようっていうレクテイアに。この世界が進もうとする未来に。……俺達が勝ち取るんだ、未来も、理想も」
俺はネモに……己に誓う。この先の戦いに勝つと。理想と未来を手に入れると。