セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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魔王

 

 

「俺の名はゲルド──豚頭魔王・ゲルドと呼ぶがいい!!」

 

先程までの混濁とした様子からうって変わって流暢な喋り方になったゲルド。

それを見た周りのオーク共も「父王よ」「我らが父王よ」と跪く。

魔王種と魔王の違いはよく分からんが、コイツがさらに規格外の力を得たのは間違いなさそうだ。

 

「シオン!!」

 

「承知しています!!」

 

すると、紅丸の声に紫苑が答え、2人ともリムルを守るような立ち位置をとる。

そして紫苑が一直線にゲルドへ駆け、その手に握られた大太刀をゲルドへ向けて振り下ろす。が、それを片手で構えた肉切り包丁のような斧で受け止めるゲルド。そしてそれを振り抜き、紫苑を投げ飛ばす。

 

紫苑は空中で身を捻り着地する。それに追撃を入れようと斧を振りかぶるゲルドの背後から白老が太刀を一閃、ゲルドの首を切り飛ばした。

 

なのだが、ゲルドは首がない状態にも関わらず白へ刃を振り下ろす。それを白老は寸でのところで躱すが、その間にゲルドは首を拾い上げ、元の位置に戻すと、それだけで離れていた首がくっ付いてしまった。

 

さて次はと品定めをするゲルドに無数の糸が絡みつく。蒼影の技だ。

 

「繰糸妖縛陣」

 

そしてその糸がドーム状の繭を作り、ゲルドを閉じ込める。そこへ紅丸の追撃。

 

「黒獄炎!」

 

漆黒の炎が繭を包む。

さらにその炎が晴れた瞬間、ランガが間髪入れずに黒い稲妻を叩き込む。

鬼人たちとランガの連続攻撃。これに耐えうる奴はそうはいないはずだか……。

 

──リムルの半笑いが聴こえる。

 

ランガが魔素切れで影に戻る中、ゲルドは深手を負いながらもその場に立っていた。しかも、回復するためなのか自分の腕を喰らっていた。

さらに、その魔王の元へ一体のオークが跪く。

ゲルドはそのオークの首を切り飛ばし、肉を喰らう。なるほど、そうやって回復するのか……。

 

「まだ足りぬ!!もっとだ、もっと喰わせろ!!」

 

先程のダメージから完全回復を果たすゲルド。

なら、これでどうだ……!!

 

俺はゲルドの足元へ魔法陣を展開。そこから氷の槍生み出しゲルドの腹を貫き空中へ浮かせる。さらに「水氷大魔槍」で首を刎ね、腹を貫いていた氷を崩す。地に落ちるゲルドの身体は、それでもなお立ち上がり、首を拾おうとする。

だが俺はその首目掛けてもう一度「水氷大魔槍」を放ち、その頭を潰す。

頭を失い、胃袋を潰されてこれで自慢の回復もままなるまいと考えていたのだが──。

 

「マジかよ……」

 

潰されたのなら生やせば良い、ということなのか、切り飛ばされた傷口から首が生えてきた。さらに腹の傷もいつの間にやらほとんど塞がり、手近にいたオークをまた喰らって回復。おそらく全身氷漬けにしてもあの腐食性の妖気ででてくるのだろう。さてあと残りの俺のカードで効果のありそうなものと言えば……。

 

「いや、俺がいく」

 

だがここでリムルが前に出る。そう、残すは「捕食者」での吸収。だが懸念は向こうの持つ「飢餓者」のスキル。こちらも「捕食者」と同系統の能力な上、奴には腐食の力もある。さてどうするのかと思うが、まずは普通にゲルドと切り結ぶ。それを数度繰り返し距離を取ると急にリムルの雰囲気が変わる。ゲルミュッドを喰った際に獲得したと思われる「死者之行進演舞」をゲルドが放つ。舞い上がる土煙が晴れると、ゲルドの腕が宙を舞う。その傷口には黒い炎が燻っていた。

 

 

「──了。「大賢者」へ主導権の一任を確認。自動戦闘モードへ移行します」

 

 

 

────────────

 

 

 

その瞬間からリムルの動きに無駄がなくなった。これまでは戦闘時も訓練の時も、そりゃあ元々素人なんだから仕方ないのだけど、剣を振るのも体捌きもまだまだ動きに無駄が多く隙だらけの戦いをしていた。

それが、何か妙なことを口走ったかと思えばこの変わりようだ。

さらにゲルドと切り結んだリムルだが、その刀にも黒炎を纏わせゲルドの持つ刃をその熱で溶かそうとする。それを見たゲルドは力任せにリムルを振り払う。空中へ放り出されたリムルへ向けてゲルドは「混沌喰」なる技名を叫び、実体化したオーラにてリムルを喰らいにかかる。だが、ゲルドの腕が再生していなかった。おそらく燻っている黒炎が再生を阻んでいるのだろうが、あれは瞬間的な大火力なんぞより繊細な魔素の制御が求められるはずだ。魔素の細かな制御がまだ出来ていないリムルにあんな芸当が可能なのだろうか。

幾つもの顎が襲いかかる「混沌喰」を身を切って躱すリムル。ゲルドはさらに着地際を狙って「死者之行進演舞」で追撃を掛けるはそれもリムルは躱す。普段のリムルならおそらく躱せずに「捕食者」で誤魔化すであろうコンボを今は無駄なく躱していく。

しかし砂埃が晴れるとリムルはゲルドの右腕に捕えられていた。どうやら炎ごと喰らって再生させたようだ。

 

「悪食が……」

 

紅丸の呟く声が聞こえる。

だが、リムルはその握力に抵抗する素振りを見せない。何か考えがあって、あえて捕まったのだろう。

 

「残念だったな。貴様はここで喰われる。「飢餓者」で腐食させたものはそのまま我らの糧になるのだ」

 

リムルの身体が溶けだす。……いや、あれは──

 

「……否。──「炎化爆獄陣」」

 

ゲルドの足元から現れた魔法陣から炎が吹き出し、リムル共々獄炎に包まれる。

なるほど、部分的に人の擬態を解いてスライムの粘性でゲルドを捕え、自身の耐性を頼みに相手を炎で焼き尽くす作戦か。腹と頭を同時に潰しても再生するだけの再生能力のある相手なら、細胞の一片たりとも残さずに灰にするというわけか。

 

 

──確認しました。豚頭魔王ゲルドは「炎熱攻撃耐性」を獲得しました──

 

 

が、ここで無常にも響く世界の言葉。これでゲルドには炎はもう効かない。別の手段を講ずる必要が出てきた。

リムルも世界の言葉を受けて別の作戦に変えるつもりか、「炎化爆獄陣」を解く。

陽炎の向こうから現れたリムルは先程ゲルドを捕らえていた時よりも更にドロドロに溶けていた。

 

「言ってなかったっけ?俺はスライムなんだよ」

 

ゲルドの側頭部を回り込むようにリムルが頭を模した形状で話しかける。

遂に「捕食者」と「飢餓者」の喰い合い合戦だ。

お互い、溶かし溶かされ喰らい喰らわれる。その泥沼の戦いは───

 

 

 

────────────

 

 

 

その場に集ったのはリムルに俺、戦闘に参加した鬼人組にリザードマン首領と親衛隊長にその副長。ガビルは反逆罪でどっかに連れてかれていったらしい。後はそのガビルに連れてこられていたゴブリン数名にオークから代表が10名、そしてトレイニー。

オーク軍とその他ジュラの森連合の戦いはリムルがゲルドを喰らったことで俺たちの勝利と相成ったわけだが、そこへトレイニーが現れ、戦後処理ということで代表者を集めての話し合いをやることに。そして、その議長はトレイニーの権限でリムルに押し付けられた。ま、勝った俺たちの代表はリムルなわけだし、別におかしくはないんだけどな。

そして、皆が集まったところでリムルが話し出す。まずリムルはオークを罪に問う気が無いこと、武装蜂起に至った理由が飢饉であり、彼らに賠償の蓄えが無いこと、裏で糸を引いていたゲルミュッドなる魔人の存在を話す。

そしてなにより、そんな建前よりも自分がゲルドを喰った際にその罪も全て自分が喰らったのだから文句は俺に言え、とのことだった。

そしてそれが魔王ゲルドとの約束でもあるのだとか。

そしてそこに紅丸が前へ出る。

 

「魔物に共通する唯一普遍のルールがある。──弱肉強食──戦うとなった時点で覚悟は出来ていたはずだ」

 

なるほど、弱肉強食ね。分かりやすくて助かるよ。

結局、この一言でリザードマンもオーク側も双方納得。全ては勝者たるリムルが決める流れに。

 

「まぁお前がそう言うならそれでいいんだけどよ。実際問題どうするつもりだ?オーク共はほっときゃ全員飢え死にするみたいだが、まさかまだ14万近くいるオーク全員をあの町に受け入れるってのか?さすがにキャパオーバーだぜ」

 

「あぁ、それなんだけどな。……夢物語と思うかもしれないが、俺はこの森に住む各種族間で大同盟を結べたらと思う。……オーク達にはまずは各地に散ってもらってそこで労働力を提供してもらいたい」

 

「なるほど、そこで我らは衣食住を提供するという訳ですな?」

 

と、これはリザードマン首領、さすがに物分りが良い。

 

「そうだ。そこら辺の技術支援は俺たちの町の職人に頼む。もちろんウチらだって人手不足だからな。オークの労働力には期待してるぞ。で、技術を身につけたらそのうちに自分らの街を作ればいい。いつかは各地に散った仲間とも一緒に住めるようになるだろう」

 

なるほどね、それが敗戦者への処罰というわけか。これなら変に罪悪感を持たせることもなく皆殺しにもせずに生かせるということか。俺には無い発想だよ。本当に。

 

「最終的には多種族共生国家とか出来たら面白いんだけどな」

 

「わ、我らがその同名に参加しても宜しいのでしょうか……?」

 

既に感涙しかけている様子でオークが質問する。

 

「ちゃんと働けよ?サボるのは許さないからな」

 

「も、もちろん!もちろんです!!」

 

と、その一言でオーク共は恭順の姿勢。

リザードマン達も異存は無いようでこれまた恭順の姿勢。鬼人達も同じ姿勢をとるが、リムルは何が何やらという風だ。まったく、何となく流れで分かるだろうに。

 

「宜しいでしょうか。森の管理者として樹妖精たるわたくしトレイニーが宣言致します。リムル=テンペスト様を新たなジュラの大森林の盟主として認め、その名の元に"ジュラの森大同盟"の成立をここに宣言致します」

 

冷や汗の止まらないリムルを差し置いて森の大同盟はここに結ばれた。

後にこの同盟が大きく世界を揺るがしていくのだが、俺達はまだその重要性に気付いていなかった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「落とすか?」

 

「待て待て待て。それはいくらなんでも気が早すぎる」

 

リムル曰く「地獄のような」名付けを受けてオークからハイオークへ進化した元オーク一族の割振りを終え、彼らの労働力のおかげで街もだいぶ発展してきた。遂に上下水道を完備し建て替えたリムル邸には温泉すら整備する充実ぶり。そんな建設ラッシュな3か月を過ごしていた俺たちに蒼影から空に500程の空を飛ぶ武装集団が街に向かっているという報告があったので誰かと迎えに行ったら、確かに羽の生えた馬に乗った奴らが沢山いた。なので俺はぶつかり合う前に全部撃墜してやろうかと思ったのだが、それはリムルに止められた。

こちらに向かって下降してきた奴らを遅れてやってきたカイジンが双眼鏡で覗くと、どうやら奴らに心当たりのある様子。

カイジン曰くドワーフ族の国には王様直属の極秘部隊が存在するらしい。そしてそいつらの名は───

 

 

──天翔騎士団──

 

 

 

そして降り立つ羽の生えた馬とそれに乗るいかにもな騎士様達。

そして、そのうちの一人の姿をカイジンが認めた瞬間、カイジンは膝を付く。

 

「……お久しぶりでございます。ガゼル王よ」

 

 

 

────────────

 

 

 

ガゼル王、リムルから聞いた話じゃ力が強いだけじゃなく公正公明な人格者であるらしいが、確かに見てくれだけでも強そうなのは伝わるな。

が、どうにも戦闘マニアの気もあるみたいで、何やかんやでリムルと一戦交えることになり、何やかんやでリムルが邪悪ではないと判断したらしく、話し合いをしたいと申し入れてきた。ていうか、剣を交えればそいつの本性が分かるって、今日日少年漫画でも中々聞かなくなった台詞だと思うんだが。

 

 

で、結局その夜。

ガゼル王や天翔騎士団の皆様も交えた宴会の折、ガゼル王から正式に国交の申入れ。

国家の危機に際しての相互協力と相互技術の提供の確約、この2つが条件とのことだがリムルはこれを即決で受け入れた。まぁこの街を大きくしていくなら当然とも言える判断だろうな。だがここで問題が起こる。

 

「で、お主らの国の名前は何と言うのだ?」

 

「「「あ……」」」

 

この場においておおよそ「国」というものを把握している奴らの声が重なる。そう名前、名前だ。

名前とは自己と他者を区別する単純にして明快な記号であり、その存在を決定づける大事なものなのだ。なのだが───

 

なんとこのゴブリンの町、上下水道まで完備しているという時点で下手な中世のヨーロッパ諸国より発展していると言っても過言ではない(やっぱり過言かもしれない。貨幣経済成り立ってないし)のにも関わらず国名というものが存在していなかったのだ。いや、俺も完全に失念していた。

 

というか、俺の認識だとここは魔物が寄り集まって出来た集落、それが無駄に発展してるだけ程度の認識だったのだ。それに、周りからの認識も「スライムが治めてるゴブリン村」程度のものであったし俺たちの側もそんなんで充分だった。

 

そして国が国足り得る条件、「国民、主権、領土」の3つの問題がある。国民はいる、主権もまぁあると言って差し支えない。……が、領土。これが微妙だ。何せ俺らは今ジュラの大森林全土で同盟を結んでいる。だがトレントやリザードマンらは各々の支配領域があり、彼らは(トレントとかいう奴らのことはよく知らないが)各々である種国としても成り立っているのだ。だからといって彼らは俺らとは無関係ですよ、と言う訳にもいかないことは、この前の戦後処理会議で固まってしまっている。何せあそこにいた魔物全員がリムルに傅いたのだ。そしてリムルもあの場で「多種族共生国家」を目指したいと言ってしまっている。つまり俺たちの町はどこまでが領土なのかが非常に曖昧なのだ。限度はジュラの大森林とされる部分だろうが、じゃあその最大限度まででいいの?という問題がある。その上、果たしてこの森のゴブリン達は全員ここに合流しているのだろうか。だがそんなものは誰も調査していない。

 

まぁこれまで不便はなかったし何より他の国との交流というのもほぼ無かったみたいなのだから当然と言えば当然なのかもしれないが……。

 

「……いや、まだ国という段階でもなかったからな。俺はジュラの森の盟主だけど国主というわけでもなかったし……」

 

「リムル様を王と認めぬ者がいるならこのシオンが───」

 

「待て待て待て」

 

あまりに短絡的かつ暴力的過ぎる紫苑を抑え込む。

 

「けど実際、国民と主権はともかく、領土はどうするんだ?トレント族とかリザードマン達は自分たちの支配領域ってもんがあるんだろ?それに、この森の全てのゴブリンが俺らの元にいるのかっていう調査だって誰もしてないし。俺たちを国とするにはあんまりにも曖昧な部分が多すぎるぞ」

 

あの宣誓、森の管理者というドライアドのトレイニーが行った為に妙な強制力がありそうだが、果たしてそれを全て鵜呑みにして良いのだろうか。

 

「ふむ。タカトと言ったか。お前は若い人間の割に知識と考えがあるのだな」

 

「「国民・主権・領土」なんてさすがに義務教育の範囲だろ」

 

まぁ俺はその義務教育すらまともに受けちゃいないし高校も偏差値低すぎる上にまだ卒業出来てないけどな。……いや、これ以上は悲しくなるから止めよう。

 

「……細かい話は分からんが、国の主を決めるってならそれはリムル様で決まりだと思うぜ?強者に従うのは魔物の本能だが、少なくとも俺達はそれだけで配下になったわけじゃないしな」

 

と、紅丸も会話に加わる。

 

「おい、あんまり俺を持ち上げるんじゃない。ここには森の管理──」

 

「いいと思います。リムル陛下」

 

何やら反論しかけたリムルに割ってはいる形でトレイニーがお茶をすすりながら現れる。この人、前々から思ってたけどかなりマイペースだよな……。

 

「それに、この森のゴブリン達はほとんどがリムル陛下の元へ集っております。そうでないのはゴロツキ崩れの追い剥ぎゴブリン共程度。気にする程ではございません」

 

と、俺の疑問にも答える。

 

「さらに言うなら、リザードマンの一族もトレント族もジュラの大森林が一つの国となり、それをリムル様が治めるのであれば文句は無いでしょう」

 

「だとよ」

 

「うむ。ここの王はお前以外おらんようだな」

 

諦めろ、とリムルの肩を叩くガゼル王。

ま、そもそもここはリムル、お前が興した町なんだぜ。トップはお前で決まりだろうよ。

 

「では明日の朝までに国名を考えておけ。そして今夜は酒に付き合え」

 

「考える時間くれないのかよ!!」

 

結局この宴会は明け方まで続いた。

予測出来ていた事態ではあったので、リムルに耳打ちして、俺とリサで幾つか国名の候補を打ち出すことになった。

 

 

 

────────────

 

 

 

「ではこれより、ドワルゴンとジュラ・テンペスト連邦国における協定の証として、両国の代表による調印式を行います」

 

結局、俺たちの国名は「ジュラ・テンペスト連邦国」となった。ジュラの大森林を治めるリムル=テンペストからジュラ・テンペスト、リザードマンら自分たちの支配領域を持つ魔物もいるので連邦国。ジュラ・テンペストの部分は色々意見が出たが連邦国はリサの一言で決まった。曰く「支配領域を持つ種族も加わるのならドイツ等の様に「連邦国」が良いのでは?」と。

流石リサだよ。俺なんかより頭も回るし知識もある。ジュラ・テンペストは俺とリサがやいのやいのと盛り上がっている所に紅丸や紫苑らも加わってあーでもないこーでもないと意見を交わしあったが何だかんだで収まりの良いものになったと思う。ちなみにリムルや俺らがいる辺りは中央都市「リムル」となった。これを聞いた時リムルはあまりの小っ恥ずかしさから止めてくれと嘆願したが忠誠心の無駄に高い鬼人組やホブゴブリン、そして面白がった俺らに押し切られてしまった。

 

ちなみにこれは後で聞いた話だが、ドワーフの国ドワルゴンでは俺たちの街の区分は「災禍級」、つまり、基本的に3段階しかない評価とは言え最上級に危険なクラス分けをされていたらしい上に、ドワルゴンとの協定を蹴っていたら討伐対象にされていただろうとのこと。どうやら、多種族の魔物が街を作るなんてのは前代未聞らしい。

 

また、この「災禍級」というクラス、魔王もここに入るらしい。そして、規格外のクラスとして「天災級」というものもあるらしい。そんな区分に入れられる奴はほぼおらず、それこそリムルの中に封印されているらしい「暴風竜ヴェルドラ」や極一部の魔王が該当するらしい。コイツらは怒らせると世界の崩壊すら覚悟しなければならないんだとか。しかし、よく勇者なんて奴はそんなヴェルドラを封印できたもんだよな。それも、リムルが捕食するまでは封印され続けていたらしいし、その封印だっていまだに大賢者が解析中で出てこれないクラスの堅牢にも程があるときた。

リムルの探しているシズさんの仇とかいう魔王が「天災級」じゃなければいいんだけどな。

 

 

 

───────────────

 

 

 

何だあれは……。

空から感じる強大な気配。とんでもない魔素を持った何かがこちらへ凄まじいスピードで近付いてくる。

 

「ご主人様……」

 

リサもその気配を感じとったのか不安げにこちらを見つめてくる。そんな顔するなって。大丈夫だよ、何とかする。

 

「街の外れの方だな……。行ってくる」

 

「どうかご無事で……」

 

「大丈夫だよ」

 

それでも不安そうなリサを抱き寄せ、頭を撫でてやる。すると、リサも安心したような顔になる。

 

「じゃあ行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃいませ。ご主人様」

 

リサの声を背に俺は駆け出す。

森へ入ると前方ではリムルもスライムの身体をぽよぽよさせながらダッシュで俺と同じ方向へ向かっているのを見つける。

 

「リムル!」

 

「天人か!……お前も───」

 

「そりゃあな!!」

 

ったく、何なんだあれは。規格外にも程がある。前にやってきたガゼル王御一行なんかより余程デカい気配だ。

走りながら会話をしていると、森が一瞬開く場所へ出る。そこで俺達は急停止。すると、空を飛んでいたそれもこちらへ向かって急降下してくる。

 

 

ッドオォォォォォン───

 

 

地面を抉り、大量の土煙を巻き上げながら俺らの目の前に着陸した大物。

そしてその煙が晴れるとそこに居たのは───

 

「初めまして」

 

堂々と胸を張り

 

「ワタシは魔王ミリム・ナーヴァだぞ」

 

水着みたいな服を着たピンクツインテールの

 

「お前らがこの街で1番強そうだったからか会いに来てやったのだ」

 

ちんまい女の子だった

 

 

 

────────────

 

 

 

魔王、魔王と言ったかこの子。

だが確かに魔王と名乗るだけの力はあるのやもしれない。何せ俺がこの世界に来てこの子が最も力を感じる存在だ。豚頭魔王ゲルドなんぞ敵じゃないし、アイツが赤ん坊に思えるくらいにはこの「魔王」ミリム・ナーヴァの力は抜きん出ている。

そして俺の経験が警告している。ちんまい系ツインテール女子は総じて自分が小さく見られるとデンジャラス。多分この子もその例に漏れないだろうと。

 

「初めまして、リムルと申します」

 

「あぁ……、タカト・カミシロです」

 

リムルもミリム・ナーヴァの実力の程は感じ取れているのだろう。初めて見る畏まりっぷりだ。

 

「何故私たちが1番強いと思ったのでしょうか」

 

ぷにぷにとミリム・ナーヴァにつつかれ、冷や汗をかきながらもリムルは続ける。それに対しミリム・ナーヴァはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに立ち上がって胸を張る。

 

「ふふん。それで妖気を隠したつもりか?この「竜眼」にかかれば相手の隠している魔素量何ぞお見通しなのだ。ワタシの前では弱者のフリなぞ出来ぬと思うがいい」

 

わはは、とリムルを抱え上げて高笑いをするミリム・ナーヴァ。だがそれも長くは続かず、リムルを降ろすとこちらを見やる。

 

「だがタカトと言ったか。お前はそれなりに上手く隠しているようだな。だが「隠しているという事実」は見て取れるぞ。どうだ?見せてみないか?」

 

げっ……バレてるよ。確かに聖痕の力はそれを開いていないとそうそう観測できるものではないが、なるほどな。ミリム・ナーヴァであれば少なくとも「蓋をしている」ということは見て取れるというわけか。

 

「あぁ……」

 

俺が言葉を繋ごうとしていると───

 

「それに、リムルとやらはこの姿が本性なのか?ゲルミュッドの残した水晶では銀髪の人型をしていたが」

 

ミリム・ナーヴァは今度はリムルの姿に興味を移したようだ。こーゆーところは子供っぽいんだけどな。

 

「……この姿のことですかね」

 

ポヨンと、リムルが人の形をとる。ゲルドを喰ったことにより前よりも髪と背が伸びたその姿。ミリム・ナーヴァもやはりそこに気付いたらしい。が、「さては」という言い回しからしてゲルミュッドが死んだ後からは見れていないらしいな。とは言え、そこはさして重要ではなかったらしい。

そして、リムルが本当の目的を問いただそうとしたが本当の本当に、ただ挨拶に来ただけとのこと。……マジで嵐みたいな奴だな。

 

だがここで俺は大きなミスを犯していた。魔王に気を取られていて背後の気配に気付けなかったのだ。そして俺の背中から飛び出したのは紫苑。

その紫苑は問答無用でミリムに大太刀を叩き付ける。ただそれは片手で受け止められていた。

俺がおいおい……と思ったのも束の間、ランガがリムルを掻っ攫って逃走。さらに鬼人組が合流し蒼影の糸でミリムを拘束、紅丸が黒炎で追撃。けれど、オークロードにも打撃を与えたそのコンボを受けてなおミリムは無傷。

 

笑いながら他の魔王ならあるいは倒せたかもなどと嘯く余裕すらある。そしてミリムのカウンター、と言ってもただ覇気とでも言うのだろうか。突如巻き起こした暴風で辺り一面を吹き飛ばした。

 

「っ!?」

 

俺は思わず強化の聖痕を開きその理不尽な暴力を耐え忍ぶ。

数秒の暴虐の後、土煙が晴れると周囲一帯は破壊の限りを尽くされクレーターのようになっていた。

そしてこちらを見るなりニヤリとほくそ笑むミリム。

 

「ようやく見せたな」

 

どうやら聖痕を開いたことはミリムアイとやらで見透かされてしまったようだ。

 

「これが狙いか……」

 

「どうかな?だがお前とは遊びたくなったぞ」

 

激突は避けられない。そう悟った俺は強化の聖痕を全開にして構える。それを見たミリムは「おぉ!」と嬉しそうな声を上げ、そのまま一息に俺の前へ───

 

「──っ!?」

 

放たれた拳を背後へ逸らしミリムの脚を刈り取る為に蹴り抜く。これをミリムはさらに前へ出ることで躱し、こちらに振り向く。相対した状態からお互いに踏み込み拳を振るう───と見せかけて俺は反転、ミリムの振るう腕を右手で掴み左の肘をミリムの胸部へ叩き込む。そのまま連続して脚を刈り取りミリムを地面へ叩き付ける。そして背中から落ちたミリムを踏み付けで追撃するが、それはミリムに抑えられ、そのままミリムに空中へ投げ飛ばされる。空で体制を整えた瞬間にはミリムが飛び上がり俺の目前まで迫っていた。振るわれた拳を腕でガードするも、その衝撃で地上まで叩き落とされる。着地した俺の頭上へミリムは踵落としを仕掛ける。それも両腕で頭を守り耐えるが地面はその重さに耐えきれずさらに砕ける。

 

完全に地盤が崩落する前にミリムの脚を跳ね飛ばし俺もミリムの眼前へ。そしてボレーシュートのようにミリムの側頭部を蹴り抜く。これはミリムに防がれるが構わず振り抜いてミリムを地上に叩き落す。

 

土煙の向こう側からミリムが飛んでる。

それに合わせて俺も拳を振りかぶる。

 

激突する拳と拳。

 

その衝撃の余波が空気を震わせる。

 

「このワタシとここまで張り合えるのか!!」

 

「張り合う?俺の方が当ててるぜ」

 

「わはは!それもそうだ、な!!」

 

お互いにお互いの拳を振り払う。そこからはさっきまでの強打合戦とはうって変わってゼロ距離でのインファイト。

だがミリムは特大の魔素を、俺はこれまでに修得してきた体術を活かして、結局は先程とほぼ変わらない威力の殴打をぶつけ合う。

そして吐息すら触れ合いそうなこの距離だ。どうしたってお互いの攻撃が偶発的に掠める。

ミリムの拳に込められた魔素がほぼアラガミと化した俺の頬の薄皮を引き裂けばミリムは俺の拳圧で腕から血を流す。打つ躱す逸らす打つ打つ打つ躱す打つ逸らす打つ、ただひたすらアトランダムにそれらを繰り返していく。

それが続いていくうちにミリムの頬が上がっていることに気付く。

 

「ふふっ、わはははは」

 

ミリムは笑いながら距離を開ける。

 

「面白い。面白いぞ。このワタシとここまで打ち合える奴がいたなんてな」

 

あーあ、何となく気付いてはいたけども、コイツも理子と近いタイプの戦闘狂か……。

紫苑も比較的その気があるし、俺の近くの女の子はそんなんばっかりなのねぇ。

 

「ふふん。……だが、お前はどうしてそんなにつまらなさそうなのだ?」

 

「……」

 

「返事はなし、か」

 

「……」

 

それにも俺は特に返す言葉は無い。戦っている最中にベラベラと喋る趣味も無いし、そんな余裕のある相手でもない。

 

「ふふふ……。お前はまだ戦いの楽しさを知らないのだな。勿体ない」

 

そう言い残してミリムが空へ飛び立つ。そして空中でその両手にこれまでとは比べ物にならないくらいの濃密でとんでもない量の魔素を込める。……不味いな、あれは決め技の類だぞ。

 

「見せてやろう。これが、魔王ミリム・ナーヴァの力だ!!」

 

そこから放たれたのはただ単純な死の宣告。

理不尽と破壊と死だけが満ちた力の権化。

それが一目散に俺目がけて殺到する。

 

 

 

──竜星拡散爆──

 

 

 

────────────

 

 

 

リムルはただその戦いから逃れることしかできなかった。もはやその目では2人の戦いの趨勢なぞ追えず、魔力感知も役に立たない。何せ察知したそばから別の所へ行ってしまうのだ。いくらリムルと「大賢者」と言えどその戦いを完全に観測することは不可能だった。

その中でリムルが出来たのはミリムの暴虐によって重傷を負った紫苑と蒼影、紅丸に回復薬を与えて怪我を癒しつつミリムと天人の戦いによる余波の暴力から逃れることだけだった。

 

「何なんだあれは……」

 

「大賢者」でも測定不能な2人の戦い。

1度ぶつかり合うだけで大地は砕け、空気は破裂する。

確かに聞いていた。神代天人という人間が持つ「聖痕」という力について。彼は自身のそれについて、特に自身の身体能力の強化に特化した力であるという説明もしていたし、「変質者」のスキルでその力と魔素とを統合させて絶大な魔素量を誇っていることも聞き及んではいた。だがそれがここまでの破壊をもたらすものなのか。

 

彼はこうも言っていた。自分とリサは様々な世界を巡っていて、ここに来る前の世界で「アラガミ」なる存在の力を取り込んでいたと。確かにその力は人間のそれを遥かに超える身体能力を獲得するに至るのだろう。だが、それでも、リムルにとってこの光景は信じられないものだった。

 

「……有り得ないだろ」

 

「これが、タカトの本気……」

 

「オーク共との戦いでも凄まじい魔素量だと思いましたが、まさか魔王とやりあえるなんて……」

 

リムルの呟きに鬼人達も続く。

だがどんなにリムル達が信じられなくとも、現実に戦いは進んでいく。

 

そして遂に決着の時が近付く。

 

ミリムが空へと上がり、その掌にありったけの魔素を込めてゆく。それはリムルの持つ全ての魔素をかき集めても到底届くものではなく、鬼人達全員のそれを加えても尚届かない遥かなる頂。この世界の頂点に君臨する魔王たるミリム・ナーヴァの全力全開。それは地上にいるもの達にとっては「死」以外の何物でもない。

 

そしてそれは放たれた。

リムルと近い世界から来た友人に向かって。

「死」が、明確な形と力を持って襲い掛かる。

 

「竜星拡散爆!!」

 

その瞬間、世界から音が掻き消えた───

 

 

1発でも上位魔人程度なら即死に至らしめる程の破壊と理不尽を内包したそれが無数に拡がり、そしてたった一人の人間の元へと殺到する。

その余波だけで世界が悲鳴を上げる。吹き飛ぶ音と莫大な光に上塗りされる色彩。

地上にあった何もかもが蹂躙された世界において、唯一破壊を免れたその空で佇むのはたった一人だけ。魔王ミリム・ナーヴァ以外に有り得ない。その筈だった。

 

 

リムルの世界に色と音が帰ってきた。

 

 

──その瞬間、リムル達の目の前の空間が切り裂かれた──

 

 

遅れて音がやってくる。それと共に引き裂かれた空気が元に戻ろうとする。

物理法則による世界の悲鳴をやり過ごし、空を見上げる。

 

「え……?」

 

先程までミリム・ナーヴァが君臨していた空にいたのは、その背に6枚の翼を背負った神代天人だった。

 

 

 

────────────

 

 

 

「───銀の腕!!」

 

目前に迫る死を孕んだ流星に対して俺が放つのは俺の中に眠る白い焔の力。

この世界に来て初めて誰かの前で開く「白焔」の聖痕。その力は聖痕の焼却と吸収。実際、炎を噴き出してはいるがこの力は聖痕などの超常的な力に対してのみ効果があり、ただの物理現象に対しては炎圧で押し潰す程度の効果しか持たない。本気で圧縮すれば人間程度なら斬り裂いたり貫いたりもできるが、その程度。逆に、その性質を使って推進力代わりに使ったりもするから、案外使い道はあったりするのだが。

 

粒子の聖痕を持つ男との戦いの末にようやく俺のコントロール下に置けるようになったこの力。顕現させれば俺の右腕がその聖痕を扱うに相応しい形質に変質する。

 

どうやらこの聖痕の持つ聖痕の力の焼却と吸収はこの世界に蔓延している魔素に対しても有効だというのは実験の結果判明している。

そして目の前には特大の魔素。これに対して俺が持つカードの内、あの圧倒的な破壊の前に対抗できるのは恐らくこの力だけだ。

そして俺は右腕を掲げる。銀の腕となったその腕、その手の甲に「竜星拡散爆」なるミリムの大技が取り込まれていく。刹那の前までそこにあった圧倒的な死の気配が霧散していく。そしてその力を銀の腕の中に取り込んだ俺の身体にさらなる変質が訪れる。

 

「───銀の腕・煌星」

 

一定以上のエネルギーを吸収すると現れる銀の腕の真の姿。

両の腕が銀の腕となり、右肩にあったパイプのような翼は背中のリングと白焔の翼をへと変わり、腰にはスラスターが現れる。

凄まじい魔素量。流石は魔王と言ったところか。未だかつてこの形態を呼び起こした時に一撃で翼6枚を顕現させられた攻撃を放った者はいなかった。粒子の聖痕を持つ男ですら、だ。それがいくら全力とは言え1発で煌星の全開の出力を発揮させるのだから凄まじいの一言だ。

けどなミリム、こうなったらもうお前に勝ち目は無いぜ。本当はお前は肉弾戦で俺と決着を着けるべきだったんだ。魔素やらのぶつけ合いなら"これ"のある俺に対して勝ち目は無いぞ。

 

空に佇むミリムに対し、俺は煌星の出力で一旦さらに上空へ、そこから急降下してミリムの胸部へ拳を叩き込み吹き飛ばす。

 

音より早くミリムの小柄な身体が吹き飛び、まだ「竜星拡散爆」の巻き起こした土煙の中に俺がいると思いこんでいるリムル達の視界の端をかっ飛んでいった。

 

「どうする?」

 

地上に降り立ち、俺の引き起こした破壊の後を辿ってミリムの方へ足を進める。

その終着点にはミリムが横たわっている。魔力感知で感じる魔素からすると死んではいないようだが。というか、今ので平気なこいつの身体はまさしく魔王。恐らくゲルミュッド等の上位魔人程度の存在であれば原型すら留めること無く肉片となるはずの一撃を受けてなお息をしているのだから。

 

「ふふっ、ふはははははは!わはははははは!!」

 

大きな笑い声を上げ、魔王ミリムはなお立ち上がる。内臓にもダメージがあったのか、口から血を吐き捨ててでもまだ戦う力は残っているらしい。

 

「いいぞ!最高だ!!このワタシにここまでのことができるなんて!!」

 

それなりにダメージはあるだろうにかなりハイになっているミリム。これまでその圧倒的な力で敵無しだったのであろうミリムは随分と溜まっていたようだな。そしてミリムに変化が起こる。額から紅色の角のようなものが生えてきた。なるほど、まだ本気は出しちゃいなかったというわけか。だが、いくら本気を出そうがこれ以上はもう───

 

「2人とも待て!!」

 

だが俺たちの間に割って入るように黒い稲妻が落ち、リムルが割り込んでくる。

 

「……なんなのだ?お前は確かに強者だがワタシには───」

 

「───いいや、勝てるさ」

 

「ほう?」

 

リムルが、ミリムに?

いや、リムルの魔素量は角の生える前のミリムの10分の1以下だ。たとえ「捕食者」でも喰らえないレベルの実力差がある。

 

「だがそれが通じなかった時、これだけ楽しい戦いを邪魔した罰だ。お前はワタシの部下にでもなってもらうぞ?」

 

へぇ、殺さないなんてお優しいねぇ。そこはまた意外な一面だな。

 

「分かった」

 

リムルは何やら覚悟を決めた様子。そしてミリムへ向かって駆け出す。

 

「では喰らえ」

 

そして角を引っ込めたミリムの顔面へ右手を突き出す。

そして掌底をミリムの顔面へ放ち、微動だにしないミリムから数歩の距離をとる。

 

「……」

 

「───な、な、なんなのだこれは!?今までこんな美味しい物は食べたことがないのだ!!」

 

「どうした魔王ミリムよ。"これ"の正体が気になるか?」

 

くっくっく、とリムルが余裕綽々といった体で取り出したのは何やらドロりとした液体のようなものを体内で形が崩れないように固めた物っぽい。

 

「俺の勝ちだと認めるならコレをくれてやってもいいんだがな」

 

と、わざとらしくその美味しいらしいそれを食べるリムル。それをミリムは恨めしそうに見つめ、この戦いの勝敗とどっちが重いか葛藤しているようだ。いや、食べ物にカッ攫われる俺の全力とは一体……。

なおも食べ続け、無くなりそうだとわざとらしーい振りでミリムを煽っていくリムル。その手口は詐欺師のそれだぞ……。

 

「ま、待て!!提案がある!今回は引き分け、こっちの奴との戦いはまた決着を着けるとして、お前らとの戦いは引き分け、引き分けでどうだ!?」

 

「ほほう?」

 

「勿論それだけではないぞ。今後ワタシからお前たちに手出しはしないと誓おうではないか」

 

俺との決着はどこいったどこへ。

 

「あ、でもコイツとはまた戦うが、それはお前達を巻き込まないということも誓おう」

 

ミリムは俺を指さしそれも付け足す。ちなみにそれ、俺との再戦も同時に誓うことになるので俺はまた戦うことになりますね。

 

「ま、いいだろ。ところでお前らも回復薬いるか?」

 

「あぁ」

 

俺も殺気の消えたミリムに危険はもう無さそうだと思い、銀の腕を閉じる。

 

「おぉ!そんなものもあるのか」

 

と、こちらは回復薬に興味津々のミリム。

2人して回復薬を頭からぶっかけられ、即座にそれまでの死闘の傷を癒す。

 

「じゃ、街に戻るか」

 

 

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