セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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魔王降臨

 

紫苑が死んだ。それを知ったのは魔国連邦に戻ってからだった。

連れ出されたリサを救出し、あの場にいた奴らを皆殺しにして戻ってきた俺が聞かされたのはそんな最悪な知らせ。

 

だがまだ可能性はあるらしい。死者蘇生、そんな今だどこの世界でも見たことの無い御伽噺がこの世界にはあるのだとか。

 

──魔王──

 

ミリムが言っていた。魔王になると変な因果が付き纏うと。だがリムルが魔王になれば紫苑や、他の死んだ奴らも蘇る可能性があるらしい。

 

そして、リムルが魔王になれさえすれば、紫苑が再び蘇る条件は揃っていた。あとはなるだけ。

 

そして───

 

「俺は魔王になる」

 

リムルはそう宣言した。

 

 

 

───────────────

 

 

 

惨劇の日から数日後、魔国連邦の幹部連中に加え、俺とリサもその会議に参加していた。

そこでリムルは告げたのだ、魔王になると。

 

今回の事件の引き金を引いたのは魔王の1柱たるクレイマンという男らしい。狙いは魔国連邦とファルムス王国が戦争になること。ただし理由までは不明。これは、クレイマンの傀儡にされていたミュウランとかいう魔女から聞いた話だ。彼女はクレイマンに生殺与奪を握られていたがこの話をする際にリムルが手を打ち、今では自由の身だ。

 

そして、彼女ら聞いた話、そして、ここによく出入りしている冒険者の1人エレンから聞いた魔王の御伽噺。

リムルは自らが魔王になることで紫苑達の命を繋げるつもりなのだ。

 

「……その前に1つ言っておくことがある」

 

「天人?」

 

「今回この国を襲ったのは人間で、今も奴らはここを滅ぼそうと向かってきてる。で、俺とリサは見ての通り人間なわけだが……俺はお前らが人間を嫌いだと言うのならリサと共にここを出て行く」

 

「それは……」

 

「お前達には感謝しているよ。人間である俺達を誰とも分け隔てなく接してくれた。だから、お前らの敵になる気は無い。ただ出て行くだけだ。……結論は、お前らで決めてくれて構わない」

 

魔国連邦という拠点が無くなるのは痛いが、今の俺には冒険者の身分もある。ドワルゴンでもどこでも、居着くだけなら可能だろうし、そこからまた世界を渡る手段を探せばいい。

 

「……天人がそれを言うのなら俺も皆には言わなくちゃいけないことがあるんだ───」

 

そしてリムルは話し始めた。自分が元人間であること、死んで、この世界にスライムとして転生したのだということ。人間を襲うなというここのルールの真意を。それから、俺との関係も。

 

と言っても、俺とリムルの関係なんて、ただ俺が異世界人で、リムルの元いた世界と近い発展の仕方をしていたから同郷に近い関係性だったというだけなのだが。

 

そして、それを聞いた魔物連中の答えは───

 

「それでも、です。私達の主はリムル様以外におられません」

 

絶対的な服従だった。そして、この惨劇を招いたのはリムルに甘えすぎていた自分達の過失でもあると。リムル1人で抱えるものではないのだと、この場にいた全員がそう言った。

 

そして俺に対しても───

 

「天人さんもリサさんも同じ釜の飯を食った仲間っす。アイツらとは違うって断言できるっす。それはヨウムさん達も同じっす」

 

「俺もゴブタに同意します。カバル殿や天人殿達は信頼できる友だと思ってます」

 

と、皆、俺達のことを信じてくれているみたいだった。結局、コイツらにとって憎いのはあのファルムスの奴らであり、人間そのものではないということだ。

 

だが問題は残っている。

 

いくら人間の全員が魔物にとって悪い奴とは限らないにしても、またいつか、今回のように戦わなければならない時が来るだろう。その時、この国はどういう対応をするのか、ということだ。そして、それに対してリムルは1つの結論を出した。

 

「俺達の在り方はまだ人間達にはあまり知られていない。だから、今の段階で人間達と手を結ぶのは時期尚早だ」

 

そうだ、俺達が奴らに喧嘩を売られたのは、俺達がまだその程度の認識だからだ。そして、もし俺がコイツらに受け入れられた時はどうするか、それはもうリムルと話し合ってあった。

 

「俺達は人間からしたら、ちょっと怖いから消えてもらおう、っていう程度にしか認識されていない」

 

過ぎた力は排斥される。そんなの、俺が1番分かってなきゃいけなかったんだ。

何せ、そうやって俺達聖痕持ちは表でも裏でも世界の鼻つまみ者だったんだから。

なのに俺はこの国を発展させる手伝いをしていた。半端に力を誇示すれば世の中がどういう反応をするのか、俺が1番よく知っていたはずなのに。

 

「……そして、俺達みたいに半端に力を見せたら人間はそれに恐怖して、俺達を潰そうとする。それが今回の発端だ。だから───」

 

「魔王の力で箔を付ける、ってことか?」

 

と、さすが戦いに関しては勘の鋭い紅丸が続いた。

 

「そうだ。だが、俺はリムル1人じゃ足りないと思ってる。……実際のところがどうあれ、新たな魔王が支配する魔物の国なんて、西方聖教会の風当たりが強くなるだけだ」

 

「それだと、どうするんだ?」

 

「……これは俺が皆に受け入れられたら、ってことでリムルと話してたんだけどな」

 

 

──俺も魔王になる──

 

 

「それはっ───!?」

 

紅丸の顔が驚愕に染まる。だが、俺は自分のこの考えを改める気は無い。

 

「魔王が2人もいる国なら他の奴らも手出しはしてこないはずだ。喧嘩を売る気にもならないくらい圧倒的な力を見せつける。まずはそうやってこの世界での地位を築こうってことだ」

 

「人間ってのは、魔王になれるもんなのかい?」

 

「リムルのスキルに聞いたら、俺は条件を満たしてるらしいからな。後は生贄があればなれるだろうって話だ」

 

魔王になるためには、スキルや魔素量等の条件があるらしい。そして俺には聖痕がある。スキルの方はともかく、この聖痕による魔素量が俺を魔王たらしめるのだとか。そして生贄に必要なのは人間の命約1万。これはリムルもほぼ同条件であり、報告によれば向こうの軍隊の数は約3万。

俺達2人が魔王になるには十分な数だった。

 

「まずは連合軍は叩き潰す。そして、他の人間達とは鏡のように接したい。友好的な者とは手を取り合い、悪意ある接触をしてくる奴には相応の報いを」

 

2人の魔王がいれば誰も戦う気は起こさないだろう。それでも俺達が人間とも手を取り合う姿を見せることが出来れば、例え時間は掛かっても、それなりに友好的な関係を築けるだろうということだ。

 

まぁ、利害関係としての友好であっても平和には変わりない。そんなもの、俺達の世界でも同じことだからな。

 

「……甘い考えだ。けど、旦那らしくていいと思うぜ」

 

と、カイジンはニヤリと笑う。

 

「それなら、さしあたってはこっちに攻めてきている連合軍への布陣ですね……」

 

「いや、連合軍の相手は俺達に任せてほしい」

 

「え?」

 

「俺と天人が魔王になるために必要なのプロセスなんだ」

 

「安心しろ、俺もいるし、ただの人間になんぞ遅れはとらねぇ」

 

「……タカトはいいのか?」

 

「何が?」

 

「人間と、自分と同じ種族と戦うってことだろ?」

 

「……人を殺すのは何も初めてのことじゃあない。俺はこの世界に来る前にも何人も人を殺してる。……今更何も変わらねぇよ」

 

1度に万もの人間を殺すことは初めてだが、俺は自分の都合で人を殺し過ぎている。そんな奴が、今更人殺しに忌避感なんて覚えていいはずがないのだ。

それに、ここでファルムスを潰すだけじゃまたどっか他の国がここを攻めてくるかもしれない。そうしたらまたリサが戦いに巻き込まれる。

今度は拉致なんてせずに、魔物の国にいたのだからと即座に殺されるかもしれないのだ。そんな可能性を、俺が誰かを殺すだけで下げられるのであれば、俺がそれを避ける道理は無いのだ。

 

「分かった。頼んだぞ」

 

「任せろ」

 

紅丸の言葉に俺はただ頷く。そのまま会議は具体的な連合軍への対策に移っていった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

リムルと共に連合軍の真上に立つ。目下のところ、俺達の存在に奴らが気付いている雰囲気は無い。まぁ、あろうがなかろうが関係無い。全滅させる前に贄は足りるだろうが、コイツらはリサを傷付ける可能性が1%でもあるのだから、その存在の1%足りとも存在させてはならないのだ。

 

「行くか」

 

「あぁ」

 

リムルは無数の水のレンズを、俺は刃翼と赤雷球を呼び出す。この世界の行軍では、不意の魔法攻撃による備えとして常に魔素の侵入を防ぐ結界が張られているらしい。だがリムルが今から行う攻撃は、物理法則が根本にある攻撃だから効果は無い。俺の銀の腕はまだ見せる必要も無い。人間だけならまだしも、この先クレイマンやら他の魔王とも戦う可能性があるのだから、必要の無いうちは俺の攻撃手段は隠しておいた方が良いだろう。

 

そして───

 

「死ね!神の怒りに焼き貫かれて!!神之怒(メギド)!!」

 

リムルが魔法を解き放つ。それは水のレンズに太陽光を収束させ、束ねた熱量で目標を焼き貫くというものだ。これなら結界なんて関係ない。そして俺も、赤雷球を行軍中の奴らの頭上に落とす。

 

オラクル細胞の雷に貫かれて数百の騎士がまとめて叩き伏せられた。

俺は重力操作を解き、その屍の上に降り立つと、再び赤雷でまだ微かに息のあった騎士達を完全に果てさせる。

 

……リムルの方は順調そうだな。俺も、手早く終わらせないと。

 

別に、結界の中だからと言って魔法が使えないわけではない。結界の力より大きな魔素をぶつけて壊してしまえば良いのだ。そして、俺にはそれを可能にするだけの魔素が───聖痕がある。

 

地面に降り立ち、周りの騎士達を刃翼で真っ二つにしながら俺は空に魔法陣を発生させていく。それが空を覆う頃、ようやくコイツらはそれに気付く。それまでに、豪奢な鎧を着込んだ騎士や皮の防具を纏った奴らは数百人単位で上半身と下半身、もしくは身体と首が泣き別れしていた。

 

『見つけた。もう好きにしていいぞ』

 

と、リムルから解放の許可が降りる。そして、時を同じくして魔法陣が空を覆い尽くし、俺はそれを解き放つ。

 

───落ちろ

 

ただそれだけを念じ、空から氷の魔槍を降らせる。それは結界の外から加えられた俺の魔素だけでなく、重力加速度も得たことで超音速で飛翔する。そんな魔素の塊を受ければ結界なんて簡単に砕け散る。そしてそれは、この戦場において俺とリムル以外の存在を許さないこととほぼ同義なのだ。

結界の守りを失えば、そいつらにはウェイバーコーンを発生させながら落下してくる氷の魔槍を防ぐ手だてなど無く、ただ蹂躙させるのみ。

 

一応リムルとは狙うのは半分半分にしようと約束しているから、俺の狙いは行軍中の奴らの真ん中から右手側だけ。俺の左手側の奴らはリムル担当なのだ。

 

上から力技で結界を破壊した俺は、更に地面にも魔法陣を展開。そのまま下から氷の槍を射出し、上下2方向から連合軍を撃ち貫いた。

舞い上がった砂煙がこちらまで飛んでくる。その中に紛れて刃も向かってくるが、そんなもの、ディアウス・ピターの刃翼の前では発泡スチロールと変わらなく脆い。俺の周りの奴らには赤雷と刃翼、遠い奴には氷の魔法を叩き付け、俺は視界に映る騎士達を蹂躙し尽くしていく。そして───

 

 

『告。進化条件(タネノハツガ)に必要な人間の魂を確認しました。……規定条件が満たされました。これより、魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されます』

 

 

世界の声が聞こえる。そして、それと同時に抗えない程の強烈な眠気。だが血と臓物の臭いに塗れたこの戦場跡で眠りたくは無い。眠剤でも盛られたのかと思う程に抗い難い眠気に抵抗しながら俺は血塗れの草原を離脱する。そして、落ちてくる瞼を抑えていた体力も尽き果て、森の中、俺は1本の木に背中を預けた。それと同時に瞳が閉じられる。意識が闇に沈んでいく。

 

 

 

人間だったはずの俺の身体はいつの間にやらアラガミになり、そして今度は魔王へと変貌を遂げようとしていた───

 

 

 

───────────────

 

 

 

「……終わったのか?」

 

目が覚めと、俺はまだ森の中にいた。世界の声が聞こえると同時に訪れた抗い難い睡魔に、最後の抵抗と戦場跡から少し離れた森の中へと移動したところまでは覚えている。

 

どうやら俺は無事に魔王へとなれたらしい、らしい、がだ。見た目的には特に変化は無い。だが体内を駆け巡る魔素の量はこれまでの比ではない。

 

正直比べようがないくらいに魔素量が増えたように感じられる。だがそれだけだ。俺にはリムルの大賢者みたいな便利スキルが無いから自分の持っているスキルを確認するのが難しいのだ。今までは世界の声が獲得を教えてくれていたからどうにかなったが、流石に意識の無い間に獲得したものまではよく分からん。

 

「……まずは帰ろう」

 

取り敢えず魔国連邦に戻ろう。それからリムルの大賢者にでも聞いてみよう。アレなら、俺よりも俺の持つスキルを把握しているからな。

 

脚に力を込めて立ち上がる。魔国連邦へ向かう足取りは、寝起きの割には軽やかだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

結論から言えば、紫苑他、あの襲撃で命を落としたはずの者達は全員息を吹き返した。

で、魔国連邦に戻った俺はリムルの大賢者を呼び出して俺の今の状態を分析してもらおうと思ったのだが、大賢者はリムルの魔王化の折に消失。今は智慧之王(ラファエル)と名前を変えているらしい。まぁ同じことができるっぽいのでそれでいいやと解析を頼んだ。すると───

 

「告。個体名:神代天人は究極能力(アルティメットスキル)相当の能力(スキル)氷焔之皇(ルフス・クラウディウス)及び能力・魔王覇気を獲得しています」

 

という回答が返ってきた。しかし、"相当"という言葉に俺は引っ掛狩りを覚えた。

どうやら、この世界のスキルというのはだいたいが既に用意されたもので、それを何やかんやで習得するという法則らしい。……マジでゲームみたいだなと思う。

 

だが、ラファエルさん曰く、俺の習得した能力、氷焔之皇は本来この世界には存在しない能力らしい。

恐らく、それは俺の聖痕が原因だろう。この世界に来る奴で多分俺だけが、この世界に無い法則の力を持ち込んでしまったのだ。

どうやら俺の聖痕とここに来て取り込んだ氷の元素魔法を元に生み出された究極能力らしいな。

 

そして、その効果は───

 

「解。氷焔之皇の効果は魔素による攻撃や究極能力を含むあらゆる能力(スキル)や耐性の凍結、燃焼及び魔素への変換です。他者の能力を封印し、燃焼させることで己の魔素へと変換できます。また、任意の対象にこの加護を与えることが可能です。加えて、付随する技能として100万倍の思考加速、熱変動無効を獲得しています」

 

とのことらしい。どうやら攻撃力は微塵も無いが、防御能力だけならこれ以上無いほどの性能を誇るだろう。で、この能力は常時展開型の能力らしく、基本的に俺と、加護を与えた奴らに飛んできたスキルや魔法を全て自動で凍結、燃焼させられるらしい。そしてその魔素は全て俺の中へと取り込まれる。やってることはほぼ銀の腕と変わらない。だが銀の腕は精神への攻撃も含めて現れた現象にのみ作用させられるが、これは先制で相手の所持する能力をも凍り付かせることができる。

 

しかも防御機能だけなら俺だけではなく他の誰かにもの恩恵を与えられるというのだから流石は魔王の持つ究極能力と言ったところか。

 

「しかし、何でまたそんな極端な守りの力が俺に……」

 

俺の力はその全てが攻撃的で暴力的だ。多分根っからそういう性分なのだろうと思って諦めていたのだが……。

 

「解。これまでの戦闘経験及び根底に眠る願望と意思が表出したものと推測できます』

 

願望、か。俺の願いはリサを守ること。次点で一緒に元の世界へ帰ること。だがまぁ、俺が魔王になろうと思ったのはリサを守るためだ。魔王の威光でもって俺達に手出ししようとする奴がいなくなればそれで良かったのだ。だから魔王化に際して発現した能力が守りの能力なのだろう。それも、離れていてもその力が発揮されるのだからまさしく、だな。

 

大体のところは掴めた俺は、自分の中に眠るスキルを意識する。そうして見つけたそれを発動。……確かに、何となく何かに覆われている気がするな。

 

「後は……」

 

それを今度はリサにも与えてみる。フッと、確かにスキルが起動した感覚があった。

 

「……どうだ、リサ」

 

ここまで黙ってやり取りを聞いていたリサは自分の身体を見渡し───

 

「はい、確かにご主人様を感じます」

 

なるほど、成功のようだ。聞いた分だと加護を与えられる対象は1人とも限らなさそうだ。

全員はここにはいないが、俺はリムルの元へと集っていた幹部連中へ同じ力を使う。だが───

 

「……あれ?」

 

何となくだが、スキルが発動した気がしない。いや、ここにいるカイジンには効いているっぽいんだが、他の魔物───要はリムルに名付けられた魔物達には一切加護が働いていない気がする。

 

『告。既に別の者からの祝福を受けている者及び個体名:タカト・カミシロが守りたいと想う相手以外には氷焔之皇の加護は適用されません。この場においては、個体名:リムル・テンペストが名付けた者がそれに該当します』

 

「なるほどね……。まぁ、コイツらは別に俺が守ってやらなくてもどうにかなりそうだからいいか……」

 

カイジンに与えられた理由は多分この国の人間だからだろう。俺の立場からして、この国の奴らは俺が守るべき対象になる。その上でリムルから名付けをされていない奴はこの場ではカイジンしかいない。

まぁ、カイジンも戦闘要員ではないからそんなにこの加護必要か?と問われれば多分要らないだろうが、無いよりはマシの保険だと思えばいいか。

 

自分の得た力を何となく把握しつつ俺は席を立つ。

 

「どっか行くのか?」

 

「他の能力の具合を確かめてくる」

 

『告。体内の魔素量が1000倍以上に増大したことと氷焔之皇及び魔王覇気獲得以外に能力には変化がありません。ただし、真なる魔王に覚醒しても肉体的に変化が訪れていないのことの方が異常です』

 

と、ラファエルが告げた。

 

「そりゃあ俺の身体に原因があるな。俺の身体は人間の細胞以外に、別の世界の法則で成り立った細胞が多く含まれてるんだよ。だからまぁ、俺の身体は最初から人間ともかけ離れてたってことだ」

 

『了。大賢者をして解析の及ばない部分のあったことへの解答を得られました』

 

と、ラファエルが告げたその時、リムルがいきなり分身を生み出した。そして───

 

「あ?」

 

それは上背が2メートルはある美丈夫へと姿を変えた。リムルの人間形態の時の面を、男に寄せたらこんな感じだろうか。そしてその謎の物体は───

 

「究極の力を手に入れたぞ!逆らうものは皆殺しだぁ!」

 

などと宣った。なので取り敢えず氷焔之皇の効果も試したかったことだしそいつのスキルを丸ごと凍結してみた。

 

「むぅっ!?」

 

「お、効いたみたいだな」

 

1回ぶつけてみて分かったが、この究極能力は能力だけでなくそれに付随する耐性も何もかもを凍結によって封印できるみたいだ。不意打ちによる攻撃も効かないし向かい合えば相手の能力を即座に全滅させられる。魔王に相応しい能力だな、これ。

 

「で、リムルさんや、コイツ何なの?」

 

と、出現した瞬間に無力化されて項垂れている美丈夫を指差し問い掛ける。すると、魔王化して何故か物理的に輝いているリムルが告げたのは、とんでもない事実だった。

 

「あぁ、コイツがあのヴェルドラだよ、"暴風竜"ヴェルドラ。悪い奴じゃないから許してやってくれ」

 

まぁ、リムルがそう言うならと俺は氷焔之皇の封印を解く。自分のスキルが解凍されたのを感じたのか、ヴェルドラとやらはスクっと立ち上がり、俺を睨む。

 

「貴様が神代天人だな」

 

「あぁ」

 

「なるほど、確かに我が究極能力"究明之王(ファウスト)"でもその力の深淵は見通せなんだ」

 

そりゃそうだ。聖痕の力はこの世界の魔素やら何やらの力の根本であり最も原初の力だ。聖痕に比べたら、他の全ての力は新参もいいところなのだから。

 

「そうけ。ま、仲良くやろうや」

 

と、俺が手を差し出すと、向こうも手を差し出し返してくるのでお互いに握手を交わす。それを見たリムルも納得したのか1つ頷くと「じゃあちょっとみんな集めなきゃな」と能力の解析も終わったらしく外へ出た。

 

しかし外にいた連中全員、ヴェルドラの復活を感じ取っていたらしく、緊張に震えるか平伏しているかの2択だった……。

 

 

 

───────────────

 

 

 

その後、魔国連邦と関係の深いいくつかの国とリモートで会談を行なった。

結果、そいつらは皆、魔王2人が戦力として君臨する魔国連邦に手出しとかありえない。何ならヴェルドラすら控えている以上本当にありえない、ということで決着。更にドワーフ王国と魔導王朝サリオンは魔国連邦と正式に国交を結ぶと明言した。で、それに乗せられてブルムンドもそれに続くと、そう上層部を説得してやるとフューズはキレ散らかしていた。

 

まぁ、聞いている限りの難しい話は俺にはよく分からなかったが、リサがこっそり思念伝達で噛み砕いた内容を教えてくれていたのでそんな理解。

 

で、そんな話し合いもだいたい終わり、後は皆国元で纏めようとなった時、いきなりこの部屋に侵入者が。

 

ババーン!!と飛び込んできたのはちっこい成りして実際は魔王のラミリス。それが飛び込んできたと思ったら───

 

「話は聞かせてもらったわ!!この国(テンペスト)は滅亡する!!」

 

正直、厄介事の匂いしかしない……。が、そんな騒がしい奴もディアブロとか言う、リムルが召喚して名付けた悪魔に捕らえられては逃れようもない。まぁ、それでも五月蝿いことには変わりないのだけれど。

 

しかし、復活したヴェルドラを見て即気絶。ようやく静かになった会議室で、最後の纏めを行った俺達は三々五々解散の流れとなっていった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「もう一度言うわ、この国は滅亡する!!」

 

な、なんだってー、とリムルが棒読みで返した。そらそうだ、いきなりやって来て滅亡するとか、意味分からん。これがミリムとかなら「あぁ、今から喧嘩かな?」とも思うが、これがラミリスだと大した説得力が無い。

 

しかし、悪戯でこんなことを言いに来るような奴でもないので一応話は聞いてやる。どうやら、魔王を僭称する俺とリムルが魔王カリオンを殺害。それに対する報復を話し合うために魔王達の宴(ワルプルギス)なるものが発動されたらしい。

 

で、問題はこれを発案したのが魔王クレイマン、賛同者は魔王フレイと魔王ミリム。

 

で、ワルプルギスって何?と思ったら自由気ままな魔王達に対して唯一に近いくらいに強制力のある魔王全員集合の会議らしい。

 

で、この議題的に、場合によっちゃ俺達2人は残りの魔王全員を相手取らなきゃいけない可能性もあるのだとか。

 

まぁけど、それ自体には問題はあるまい。俺も議題の1つだと言うのなら乗り込んで全員ぶっ飛ばせばいいのだ。だが、ミリムが賛同しているのいうのが気になるな……。どうにも───

 

「……きな臭いな」

 

リムルも同じ考えのようだ。俺の究極能力があれば魔王そのものは問題無い。ミリムが人質にされるのだとしても、それすらも全部凍結させてしまえばこちらのものだ。

 

「ラミリス、その何とかって会議、俺達も参加できるんだよな?」

 

「そうだな、天人が行くなら戦力的には問題無いし、俺も行くぞ」

 

「えぇ!?まぁ、魔王になったって言うんなら大丈夫なんじゃない?」

 

俺達を殺そうっていう会議に出て大丈夫もあるかよとは思うが、本人不在の裁判なんぞお巫山戯もいいとこだ。ラミリスであれば魔王達に連絡が取れるということでそこら辺の都合を付けるのは全部任せる。

会議には2,3人までの配下を連れて行くことが許されているらしい。だが、それすらも実力の無いものを連れて行くことは許されないらしい。……面倒なことだ。リムルはヴェルドラと紫苑、それから影の中のランガを、ラミリスはリムルに貰った人形のベレッタを連れて行くらしい。

そんな配下のいない俺は当然1人で乗り込む。まぁ、配下を連れて来なかったりそもそもいない魔王もいるにはいるらしいからそれ自体は問題ないとのこと。

 

魔王クレイマン……オークロードの黒幕の疑惑もあるし、ここいらで1つ白黒ハッキリさせるのも良いのかもしれないな……。

 

 

 

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