セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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オルクス大迷宮その深層へ

 

次の日、俺達はオルクス大迷宮の入口までやってきた。どうにもオルクス大迷宮は冒険者達の稼ぎ口にされているせいか入口は夏祭りでもやってるのかと思う程に露店等も出ていて非常に人気(ひとけ)が多く、ステータスプレートを用いた出入りの管理までなされている様子。

 

どうやら戦争中であるために、余計な人死を出さないための工夫なんだとか。

 

しかし、露店等も開かれていた外の華やかさとは打って変わって、足を踏み入れた迷宮の内部は薄暗く、外の喧騒からも切り離されていた。

 

ただ、緑光石というらしい光る鉱石が迷宮の壁や地面には大量に埋まっているらしく、それらが洞窟内を照らしているために、薄暗くはあるものの真っ暗で懐中電灯必須なんてことにはならないだけありがたかった。

 

そして皆が練習した陣形を組みながらでこぼことした狭い道を進んでいくと、俺は前方からいくつかの殺気を感じた。それをメルド団長も感じたのか、全員の足を一旦止めて、向こうに見える赤い光を指差した。

 

「あれはラットマンという魔物だ。素早さはあるが強い魔物じゃあない。まずは光輝達からだ。落ち着いていけ」

 

メルド団長が何ともないような雰囲気で指示を出す。前方には妖しく光る赤い目。本来なら人間の恐怖心を煽るようなそれ。だがここに揃ったのは規格外の才能を与えられた転移者達。ハイリヒの外とは一線を画す強さの魔物が住んでおり、しかも階段を降りる毎に強くなる大迷宮。とは言え所詮は第1階層の魔物だ。そんな雑兵は相手にもならず、まず最初に戦闘を任された天之河達に軽く粉砕されていった。魔物が散らす血飛沫にも皆それなりに慣れてきたようで、目の前で幾つもの命が散ったのだが、それに動揺する奴はいなかった。

 

それから俺達は持ち前の頭抜けたステータスを存分に振りかざして階層を降っていった。

その間は俺も時折他のパーティーのフォローという形で戦闘には参加したが、俺自身はクラスの面子をさらに小分けしたそれぞれのパーティーメンバーには入っていない。

 

何故か?基本的に仲の良い連中が集まって組まれたパーティーに、余所者の俺の居場所なんて無かったからだ。それに加え、メルド団長からは直々に単独での戦闘を許可されてもいる。ステータスプレートに記された技能が錬成しかないわりに、この中の誰よりも高いステータスと、訓練で示した戦闘技術。それを活かしつつ他の連中の訓練も行うとなると、俺はこの立ち位置の方が適役だということになったのだ。他の奴らが平和な国で生きていて、俺も多少違う所から来たとは言えやはり平和な国で生きていたはずなのに何故そこまで持っている技術に差があるのか聞かれもしたが、そこは"家庭の事情でより実戦的な訓練をさせられていた"で通してある。そう言えば周りは勝手に「警察か自衛官が目標だったのかな?」と勘違いしてくれた。ま、あながち間違ってもないけどな。武偵は治安維持も仕事の1つだし。

 

そして遂に訪れた本日のゴール地点こと第20階層。今日は21階層へ繋がる階段を見つけて終了という話だった。だがそうは異世界の問屋が卸さない。

 

このフロアに入って最初に現れた魔物が思いの外キモくてそれに白崎がビビり、天之河が何を勘違いしたのかそれにブチ切れて「天翔閃」なる光属性の魔法を叩きつけ、そしてその明らかな過剰火力によって天井の一部が崩壊してしまったのだ。

 

そして崩れたそこから顔を見せたのは───

 

「綺麗……」

 

白崎が思わずといった風に呟く。

グランツ鉱石という、ダイヤモンドよりも美しく輝く鉱石だった。その飛び抜けた美しさから、理想の婚約指輪とかにも選ばれるほどらしい。そして、白崎は仲の良い八重樫と「あんな宝石で出来た指輪とか欲しいよね」みたいな女子女子した会話を交わしていた。すると───

 

「───なら俺が取ってきてやるよ!」

 

と言って飛び出したのは檜山とかいう男子生徒。どうにも彼はグランツ鉱石を見て綺麗だと呟いた白崎に気があるらしく、良い格好を見せたかったようだ。それ故に、この大迷宮に潜る時、最初に警告されていた未発見のトラップのことも忘れ、まだ確認の取れていないそこへ馬鹿正直に飛び込んでいった。

 

「───っ!?トラップです!!」

 

「っ!?」

 

そして案の定大迷宮のトラップが発動。

大迷宮内のトラップを探査、発見する道具を使ったメルド団長の部下である騎士団員の男が慌てて声を上げるが時すでに遅し。

 

俺たちの足元には明らかに罠だと分かる魔法陣が現れた。視界が光に塗り潰されると同時に訪れる一瞬の浮遊感。まるでこの世界に飛ばされてきた時の再現だ。

 

「───ってぇ……」

 

視界を塗り潰していた光が消え、俺の目の前に現れたのは、100メートルはあろうかという石造りの巨大な一本橋だった。だが、横幅こそ10メートル程はあるものの手すりや柵なんてものはなく、下手に足を滑らせたらその下の奈落に真っ逆さまだろう。俺が橋の向こう側のホールを警戒しているとメルド団長を筆頭に段々と全員が目を覚まし始めた。

 

だが、ただの転移が大迷宮の罠なわけはない。

直ぐに俺達の背後から魔法陣が出現。そこから大量の骸骨の魔物が武器を手に現れた始めた。さらに最悪なことに橋の向こう側にも一際大きい魔法陣が出現。そこから巨大な牛のような魔物が現れたのだ。

 

全員に背後の魔物を押し退けて撤退しろとの指示を出していたメルド団長がその姿を見て声を漏らした。

 

──まさか、ベヒモス、なのか……?──

 

 

 

───────────────

 

 

 

「天之河組!!団長!!アンタらはあのデカブツを抑えろ!俺と他の連中はあっちの骸骨共を退かして道を作るぞ!」

 

「だが!」

 

「全員生き残りたいなら俺の言うことを聞け!天之河のパーティと団長と騎士さん数名でデカいのを抑えている間に他で退路を作る!!逃げ道が確保でき次第俺もそっちへ向かう!!」

 

「ぐっ……むぅ!あぁ分かった!皆、天人の言うことに従え!」

 

そうして俺が指示を出したが、急に現れた100を超える魔物の集団に加え、背後からは明らかに今までの魔物とは一線を画すであろう巨体を誇る魔物。元々が平和な国で平和に過ごしていた生徒たちが混乱の真っ只中にあるのは仕方のないことだった。

 

だが魔物にはそんなことは関係ない。ただひたすらに目の前の人間を屠ることしか頭にない連中なのだ。訓練で散々やった陣形なぞ構築する間もなく魔物に取り囲まれる生徒たち。与えられた強力な力が即殺されることを防いではいるものの、それすら崩れ去るのは時間の問題。

 

そしてやはり、その時はやってきた。1人の女子生徒が遂に骸骨の魔物──トラウムソルジャー──によって地面に伏されたのだ。そしてその骸骨は手持ちの刀を振りかぶる。だがその凶刃が彼女の肌を傷付けることはない。トラウムソルジャーが刀を振り下ろすより一瞬早く、俺がその骸骨の胴体を腕ごとぶった切ったからだ。

 

「訓練を思い出せ。陣形を組め!慌てずに1匹ずつ捌いていけば良い!道は俺が作る!」

 

その言葉のままに俺は剣を薙ぎ払い、かち上げ、骸骨を蹴り飛ばしてでもその剥き出しの骨を断ち、砕き、錬成で奴らの足元を崩して奈落へ落としていった。

 

そうして俺が10程のトラウムソルジャーを砕いた頃にはこっち側にいた生徒たちもだいぶ陣形を整えることが出来ていた。こうなれば数だけ多くても1匹1匹は大したことのないトラウムソルジャーでは彼ら異世界組を押し切ることは難しい。

 

それに加え、俺が恵まれた身体能力とこれまでの戦いで培ってきた技で骨共を蹴散らしていく。そしてやはり、異世界組に与えられた能力はこの世界基準でも異常だった。整えた陣形の奥から魔法の弾丸が乱れ飛び、魔弾がトラウムソルジャーの身体を打ち砕く。その内に上の階層へ続く階段も見えてきた。

 

こうなればもう俺がいなくともこっちは平気だろう。だが向こうのベヒモスとかいう牛の化け物はどうだろうか。メルド団長の口ぶりからすると相当にヤバい魔物のようだったが……。

 

「お前ら!この調子で頼んだ!俺はあっちに行かなきゃならない!いいか!訓練を忘れるな!陣形を乱さずに少しずつで良いから進むんだ!」

 

そうして彼らに声をかけ、俺は最後っ屁とばかりに周りの骨共を薙ぎ払う。そして一息で生徒達と骸骨の集団を抜け、ベヒモスと天之河たちの方へ向かう。そこでは───

 

「ええい!もう持たん!天之河!お前達だけでも先に撤退しろ!」

 

「けど!!」

 

聖絶と言ったか、最高レベルの障壁魔法を展開していたメルド団長たちであったがその守りもベヒモスの巨体に押し破られそうだった。

 

駆け寄りながら聞こえてくる声は、撤退を促すメルド団長と八重樫、自分の力を過信しているのか前へ出ようとする天之河と坂上で別れていた。

 

「もういい下がれ天之河!道ならもうすぐできる!後はお前らが最後を開け!」

 

「神代!?向こうは!?」

 

「退路が出来たのか!?」

 

「メルド団長!向こうに天之河達を連れて行ってくれ!ここは俺が抑えるから!」

 

「だが1人では!」

 

「やりようはある!それより向こうで退路を確保してからコイツに魔法をぶつけるんだ。俺もそれに合わせて戻る!」

 

こういう時、あえて強い言葉で指示を出すことによって味方の迷いを消すのは強襲科のやり方だが、こっちでもこれはやはり効くらしい。メルド団長は一瞬にも満たない逡巡の後、天之河達を連れて撤退を開始した。そしてそれに合わせてベヒモスの突進を遮る障壁は消える。俺は迫り来る巨体に剣を正眼に構え───

 

「錬成」

 

俺がこの世界で唯一手に入れた力。ただ鉱物を加工できるだけのそれを、靴に仕込まれた魔法陣を起点に発動させた。

 

ズズズッと迫り上がる壁は橋を素材に生み出された物。それがベヒモスの突進を阻む。

とは言え、その程度の強度では完全に止めることなど出来はしない。ベヒモスがもう一度壁の向こうで頭を振る気配。そしてその頭に生えた大きな角が石の壁を打ち砕く。だが───

 

「錬成」

 

もう一度、壁を生み出す。そしてさらに1歩踏み込む。それはまた角によって打ち払われたが、俺が狙うのはそこだ!

 

握りしめた剣をベヒモスの頭に叩き付ける。石造りの橋に顔面から叩き付けられたベヒモスは頭を振り上げようとするが俺の錬成がそれを許さない。

 

「錬成」

 

橋を素材にベヒモスの頭を押さえつける。そしてさらに上から剣で頭を床に押し付ける。支給された魔力回復薬を飲みながらさらに自分の足元も錬成でつっかえを作りだし、身体を支える。

 

ベヒモスがそのパワーで錬成の檻を砕く度に錬成を連発して決定的な拘束からの解放を許さない。その内剣が折れたが今度は足で頭を押さえつける。しかし、いくら俺の筋力値が異常でもベヒモスのそれには恐らく敵わないのだろう。何度も何度も拘束を抜け出すベヒモス。俺はその度に拳とかかと落としと錬成を駆使してベヒモスの頭を橋から離さない。だがそれも限界だ。錬成の拘束具の素材は橋の石なのだ。それを何度も何度も使っていればいつかは決定的に強度を失う。しかもその上では俺とベヒモスが人間では有り得ないパワーで暴れ回っているのだ。当然、その崩壊へのカウントダウンは時間と共に加速していく。

 

「天人!!戻れ!!」

 

だがそこへ届いたのがメルド団長の声。ベヒモスを押さえつけながら首だけで振り返ればそこでは遠距離魔法の準備を整えた生徒たち。俺の作戦の最後には魔法で足止めしつつ俺が走って戻るという単純なものなのだ。

 

「はい!!」

 

そして飛び出す色とりどりの魔法達。俺はそれを確認して最後の一撃をベヒモスの頭に叩き込み、急ぎ皆の元へ走り出す。

だが俺はここで感じ取れなければならなかったのだ。この大迷宮を攻略中、時折背中に感じた粘りつくような視線に。

あの夜自分の不安が生み出した幻想だと断じた殺気に。

 

そしてその殺気が今、俺に牙を向く───

 

「なっ───」

 

俺が走り出した直後、俺の頭を飛び越えていこうとする魔法の弾丸のうち1つが、俺の手前に急カーブを描いて落ちてきたのだ。もちろん俺はそれを手前で急停止して回避。だがその一瞬の時間で背後のベヒモスが俺に追い縋る。

 

──グガアァァァァ!!──

 

と、殺気を迸らせて叫ぶベヒモス。

その角は赫灼と燃え上がり、俺を殺そうとする。

 

あぁもう!邪魔なんだよっ!!

 

だが俺もその角の間に身体をねじ込み、その眉間に拳を叩き込む。

だがそれが不味かった。俺とベヒモスの踏み込む力に、さっきまで散々アーチを支えていた石を砕かれたこの橋が、ついに限界を迎えたのだ。一瞬の気持ちの悪い浮遊感が俺を襲う。そうして次の瞬間には、嫌という程押さえつけたベヒモスと共に、大迷宮の奈落の底へ堕ちていくのであった。

 

──神代くん!!──

 

俺の名前を呼ぶ女の声。白崎の声だ。

 

「俺は生きる!!絶対に!!」

 

ただあの夜の約束を繰り返す。たとえこの声が届かなくとも、俺はあの約束を違えることは絶対にないのだと己に誓うように───

 

 

 

───────────────

 

 

 

「っと……」

 

鉄砲水のように吹き出していた水にぶち当たって横方向へ流されたりまた奈落の底へ落ちたりとを繰り返し、着地したのはやはり洞窟のようだった。ただし、上の方の階層と比べて人の手が全く入っていないように見えるのだけれど。

 

あの時アラガミ──ハンニバル──の力を使えば皆の元へ戻れたのだが、橋の崩落と軌道を変えた魔法。ベヒモスとの激突を見られていると思うとアラガミの力で戻るのは俺の力を世に晒すリスクが高すぎる。挙句の果てに、ここから戻るにはちょっと脇道を通りまくったおかげで帰り道も真っ直ぐ上でないことしか分からないのだ。それ故に俺はここを進む他にないというのが現状だろう。

 

「石しかねぇな……」

 

現代の拳銃は水没した程度で壊れはしない。銃身の中に入った水を吐息で吹き飛ばし、濡れた服をハンニバルの炎の熱で乾かしてから、緑光石だらけの代わり映えのしない景色にうんざりしながら歩いていく。すると、目の前に四辻が現れた。さて、どの道を行くか……。

 

と、その時、視界の端で何かが動いた。そちらに目をやると中型犬くらいはあろうかという二足歩行のウサギがいた。しかもその身体には赤黒い血管のようなものが走っていて、時折脈打っているのだ。見たことも聞いたことも無い魔物だ。だがここなら恐らく人目には付かない。最悪アラガミの力を存分に振るわせてもらおう。

 

とは言え、態々見えている危険に突っ込む必要もない。あのグロテスクなウサギの死角になりそうな方へ進ませてもらおうかと思ったその時だ。

ウサギが急に耳を立て周囲を警戒し始めたのだ。気付かれたかとも思ったがどうやら違う理由らしい。

 

それはすぐに現れた。

 

こちらは犬で言えば大型犬くらいはありそうな大きさをした、体毛の白いオオカミが数匹飛び出してきたのだ。しかしコイツも身体には赤黒い血管のようなものが脈打っている。複数匹の狩人にウサギがあわや捕食されるのかと思ったその瞬間───

 

──ウサギの蹴りがオオカミの身体を吹き飛ばした──

 

おいおい、嘘だろ。あのウサギの脚力、尋常じゃない。さらに首を蹴られたオオカミはその脛骨をあらぬ方向に曲げられ、蹴り飛ばされ壁に叩きつけられたオオカミは頭や身体が潰れ、即死していた。それだけじゃあない。その魔物の固有魔法らしい赤い雷のようなものを纏わせたオオカミの突進を躱すと、空中を踏みしめ、そのオオカミに致死の蹴りを叩き込んだのだ。

 

ま、マジか……。あのウサギ、尋常じゃなく強いぞ。多分アラガミの力を使わなきゃ今の俺じゃ勝てない程だ。

 

だが赤い雷を纏うオオカミを瞬殺した蹴りウサギに戦慄している場合ではない。あのウサギの魔物があいつ1匹だとは限らないのだ。いつでもアラガミの力を解放できるように俺は羽織っていた上着を腰に巻き付け、背中のシャツは諦めることにした。刃翼を展開したら肩甲骨周りの衣類は破けちゃうからな。

 

だが、俺の衣擦れの音すら聞き取ったのか、蹴りウサギはこちらを視界に捉えたようだ。そして、ダンッ!と踏み込み、天之河の縮地もかくやという速度で迫ってくる。

 

「くっ……」

 

俺もバックステップで距離を調整しつつ左の背中から刃翼を展開。それを振るう。

しかしそれをウサギはバック宙を切って躱す。どうやら反応速度も尋常ではないようだ。

 

俺はそのまま1歩踏み込み振り抜いた刃をさっきとは逆の外側へ振り抜く。しかし蹴りウサギはそれも空へ躱すとそのまま宙を踏みしめ、俺に飛び蹴りを放ってくる。

 

俺はそれを両腕をクロスさせて直撃を防ぐ。オラクル細胞の結合力が腕を粉砕から救う。だが思いっきり後ろへと押し下げられる。

 

「こっんのぉ!」

 

俺は無理矢理腕を振り払い、ウサギを弾き飛ばすがまたも空中で身を切り宙を踏み締め俺へと蹴りを浴びせようとする。

俺はその瞬間を狙って刃翼を叩きつけようとしたが、ウサギはそれを読んでいたかのように寸前でもう一度宙を踏みしめ、真上に飛び上がる。一瞬にしてウサギが視界から消えたことに危機感を感じて両腕で頭を守る体勢になった瞬間───

 

「ぐっ!」

 

その腕へとウサギの蹴りが降り注いだ。

 

俺は頭上のそいつ目掛けて刃翼を振るうがそれも飛び上がって避けられる。だが距離が空いたことでディアウス・ピターの本領が発揮出来る。

 

「赤雷よ!」

 

俺の周りに発生させた赤い雷の球4つがウサギへと殺到する。

 

「嘘だろ……」

 

だがそのウサギは空中でもジグザグにバックステップを踏むことで赤雷を躱していく。

 

「なら!」

 

俺はさらに赤雷を飛ばす。今度は球体じゃなくて直線的かつ放射状に広がる雷槍だ。だがそれも奴は地を這い事も無げに躱すだけだった。

 

俺は、次に来るであろう一撃を奴が放ったその脚をオラクル細胞の結合力にものを言わせて捕まえてやろうと意識を切り替えるが、そのウサギは急に耳を震わせ、周囲を警戒するように視線を動かす。……何なんだ?

 

すると、俺が行こうとしていた道から現れたのは巨大なクマのような魔物だった。こいつも例に漏れず身体には赤黒い血管のようなものが脈打っている。そして両手にはふつうのクマでは考えられないくらい長い爪。恐らく30センチ程はあろう。

 

すると、蹴りウサギの方はまるで怯えるように身体を震わせ、文字通り脱兎のごとくその場から逃げ出そうとした、が───

 

───ザンッ!

 

とその巨体に似合わず俊敏な動きでウサギを殺傷圏内に捉えたクマはその長く鋭い爪を一閃。俺があれだけ苦労させられた蹴りウサギを瞬殺してのけたのだ。

しかし奇妙なことが1つ。殺傷圏内に捉えられたウサギはあの空中を踏みしめる固有魔法か何かを使って瞬時に爪の範囲外に離脱したように見えたのだ。だが実際には振るわれた爪の軌道と重なるように真っ二つにされていた。それの理由はおそらくリーチを瞬時に伸ばす類の固有魔法なのだろう。

そしてウサギの首を事も無げに刎ねたクマは頭と泣き別れたウサギの胴体を掴み上げ、そのまま貪り食う。

 

洞窟内に肉が引き裂かれ骨が噛み砕かれる音だけが響く。

 

俺はその場を動けなかった。本能が告げるのだ。ここで奴に背を向けては次に首を刎ねられるのは俺だと。

しかし死神のカウントダウンは待ってはくれない。

クマは食事を終えるとまだ食い足りないのか、次は俺を見据える。

俺もクマが相対するのに合わせて右腕から焔龍の右腕を顕現させる。するとその瞬間───

 

「ッ!」

 

ダンッ!という踏み込み音と共に爪のクマが目の前に迫って来た。そうして振るわれる爪をしゃがんで躱し、炎の剣を吹き出した右腕を跳ね上げる。

だがクマの方はそれを上体を後ろに反らすことで躱し、そのまま返す力で爪を上から振り抜く。

俺はそれを後ろに飛び退きつつ刃翼で頭部をガードしながら躱す。だがオラクル細胞の塊であるはずのそれが触れられてもいないのに切り裂かれた。いや、触れてはいたのだろう。恐らく魔力で爪の攻撃範囲を伸ばすのがあのクマの固有魔法なのだ。赤雷で牽制しつつ切り落とされた刃翼を左腕の神機の捕食機能で回収する。しかしその瞬間、クマが赤雷を掻い潜り俺の元へ殺到。その致死の爪を振るってくる。

 

「チッ!」

 

俺はそれを神機のブレード形態で受け止め鍔迫り合う。だがクマの膂力もまた尋常のそれではないようだ。俺の筋力値を持ってしても敵わないそれを誇っているらしいクマはブレードごと俺の左腕を弾く。そして思わずたたらを踏んだ俺目掛けて奴の左の爪が襲いかかってくる───

 

「ぐう───っ」

 

必死に飛び退いて躱そうとするものの右肩から血が噴き出す。爪そのものは避けた筈だがあのリーチを伸ばす固有魔法の殺傷圏内からは逃れられなかったようだ。だが俺もカウンターで赤雷を放つ。

 

しかしそれをクマは上に飛び上がって躱すと、そのまま天井を蹴り両手に携えた死神の鎌を振り下ろす───

 

「グルゥワァァァッッ!!」

 

鮮血が飛び散る。

 

俺の胸が真一文字に切り裂かれたからだ。

だが飛び散る赤い滴は俺のものだけではない。

剛爪を誇るあのクマの右腕が宙を舞う。

突き出されたのは神機形態のままの左腕。

それがクマの右腕を奪ったのだ。

 

「れ、錬成……」

 

俺はそのまま左手を壁に付き、この世界に渡ってきて与えられた力を発動する。すると迷宮の壁に奥行2メートル、四方1メートル程の穴が現れる。俺はそこへ身体を滑り込ませ、さらに穴の出口を錬成で塞ぐ。そして再び錬成で穴を掘り進めていく。

すると高さ1メートル半、広さで言えば2畳程の空間に辿り着いた。しかしそこで終わり。俺のなけなしの魔力はそこで尽きてしまった。

 

「ぐっ……てぇ……」

 

しかし傷が深い。ギリギリ内臓までは届かなかったものの出血が酷く、視界が揺れる。

だが遠のく意識の中で俺はあることに気付いた。輝いているのだ、この空間が。緑光石の光ではない。もっと神秘的とでも言うのだろうか、どこか暖かい光だった。

そして見つけた。空洞にあった窪みに水が溜まっているのだ。そしてそこには今も上から水滴が滴り落ちている。俺が目線を上にやるとそこには───

 

 

───神結晶───

 

 

そう、座学ついでに図書館などでこの世界のことについて色々読み漁っていた時にとある文献に記されていたもの。魔力が一定の場所に長いこと溜まり続けると神結晶になる。さらにそれが飽和状態になるまで魔力を溜め続けるとそこから神水と呼ばれる水が滴り始めるのだとか。だがそんなものは失われた過去の遺物だとされていたのだが……。

まぁいい。これには大概の傷を癒す力があると言われていた。ダメで元々。俺のアラガミの身体であれば毒もそこまで通るわけではないしその伝説の力、試させてもらおう。

 

「……これは」

 

窪みに溜まった神水を舌で掬い取り喉へ流し込む。するとそれだけで胸の傷が癒え、魔力が回復していく感覚を覚えた。凄まじいなこれは……。

その回復力は、リムルの腹に溜められていたポーションを思い起こさせるものだった。

 

それから俺はここを拠点にすることにした。神結晶の真下の窪みを錬成で掘り広げ、より神水を溜めやすくする。そして溜めた神水はそこらから鉱石を錬成で作り出した試験管程度の大きさの入れ物に入れて小分けにしていった。

 

「腹減ったな……」

 

この神水、傷を癒し魔力すら回復させる力を持ってはいても、空腹感を埋めてくれるわけではないようだ。だが薄暗いオルクス大迷宮には鉱石以外に何も無い。……いや、肉ならある。ウサギやクマやオオカミの肉ならあるのだ。だが魔物の肉は人間にとっては猛毒という言葉ですら生易しいと聞いた。魔物の体内に流れている魔力、これが人間にとって猛毒となり内側から肉体を崩壊させられるのだとか。だがここではたと気付く。俺の肉体と、目の前にあるあらゆる傷を癒す神水という遺物の存在に。

 

「オラクル細胞と神水なら……?」

 

やれるはずだ。肉体が内側から崩壊する傍から癒していく行為にどれだけの苦痛が伴うのか分からないが、それと飢餓感に耐えることとどちらが辛いのかなんて試してみないことには分からない。

 

そして、それをするならまずはオオカミからだろう。複数体でもあのウサギに瞬殺されたのだ。今まで見たこの階層の魔物の中では最弱に違いない。幸いにも火と刃物は出せるから毛皮ごと生肉で貪るなんてことにはならない。

 

「やるか……」

 

そう決意した俺は、回復した魔力で錬成を繰り返し、獲物を探しに大迷宮の壁の中を進むのだった。

 

 

───────────────

 

 

 

「ゴッ!?ガアァァァァァ!!」

 

オルクス大迷宮の底で絶叫が響き渡る。

俺は錬成で壁内を進み、そこに外を覗くための穴を錬成で開け、赤い雷を纏うオオカミを待った。しばらくすると数匹のオオカミの群れが現れ、開けた穴から漂うのだろう俺の匂いを嗅ぎ当て探し始めた。そして奴らが俺の直線上に並んだ瞬間に壁を錬成で解放、そこからディアウス・ピターの刃翼を振るい4匹いたオオカミの首を全て切り飛ばしたのだ。そしてある程度血を抜き神結晶のある俺の巣穴まで胴体を引き摺りそこでハンニバルの炎で肉を焼き、食らったのだが……。

 

「グッ───!ゴアァァァ……」

 

凄まじい痛みだった。ブチブチと肉の引き千切れる音、そして骨の砕ける音が体内から聞こえてくる。だがそれをただ受け入れるわけにはいかない。すぐに神水を喉に流し込み回復を図る。

破壊と再生。それが俺の体内で行われているのを感じる。永遠のように感じられたそれがやがて終わりを迎える。

 

「グッ……ふぅ、ふぅ……」

 

思わず身体を確認する。結果、顔までは確認出来なかったが身体の服で隠れる部分には数本の赤黒い血管のようなものが脈打っていた。まるであのウサギやクマのようだった。いや、まるでではないのだろう。この瞬間、俺の肉体は人間のそれではなく魔物のそれへと成ったのだ。

 

「ま、元々オラクル細胞なんて取り込んでアラガミになってたし、今更か……」

 

だがしばらくすると身体に走っていた薄気味悪い線は消えていた。恐らくオラクル細胞の働きなのだろう。「変質者」で俺の元々の細胞と統合され、異常な学習意欲やら食欲やらは鳴りを潜めていた奴らではあったが、まだこの程度の働きはするようだった。

 

ふと、ステータスプレートを確認する。すると、そこに表示された記述に俺は目を剥くことになる。

 

 

────────────

神代天人 17才 男 レベル8

天職:錬成師

筋力:500

体力:500

耐性:──

敏捷:550

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成・纏雷・魔力操作・胃酸強化・言語理解

────────────

 

 

魔力の上昇量が凄まじい。さっきまでは30程度だった筈だが今や多少他のステータスと比べると少ないとはいえ3桁の大台に余裕で乗せている。

しかも技能は先天性のもので増えることはないと思う聞かされていたがいきなり3つ程増えている。纏雷……、これはあのオオカミの赤い雷だろうか。次の魔力操作。文字通りでいけば魔力を操作できるのだろう。そしてさっきから身体の中に感じている違和感。これがこの世界の魔力なのだろうか。魔法とはイメージ。普通なら魔力のイメージなんて付かないだろうが俺は違う。リムルのいた世界で似たようなことはやっているし、体内を別の力が駆け巡る感覚は慣れ親しんだものだ。

 

俺は体内に感じる魔力を錬成の魔法陣の刻まれている手袋へ移動させる。体内を魔力が駆け巡る感覚を感じながら壁を10センチ程盛り上げるイメージ。すると、触れたところが10センチ程盛り上がった。

 

「なるほど……。詠唱が要らなくなるって訳か。というか魔物の固有魔法の正体はこれかもな」

 

そして同じ感覚で手の平に赤い雷を纏わせるイメージ。するとバチバチと音を響かせながら俺の手に赤い雷が纏わる。

 

「これが纏雷……。最後の胃酸強化って……これ何?」

 

いや、冷静に考えれば俺の胃酸が強化されたのだろう。もしかしたらあの激痛無しで魔物の肉を喰らえるかもしれない。

とりあえず試そうとまだ残っているオオカミの肉を、練習がてら纏雷で焼き、喰らってみる。

 

……

 

………

 

…………

 

体感で数分は待っただろうか、俺の身体には何も起こらない。同じ種類の魔物だったからか胃酸強化の産物か。だがとりあえずこのオオカミ共を喰らう分にはあの痛みを気にする必要はないようだった。それだけでもだいぶ有難い。

 

「けどなぁ……」

 

喰った魔物の能力は奪える。それが分かったのは大きい。その上他の魔物は試さなくてはならないが、胃酸強化の技能あれば苦痛無くそれが出来るかもしれない。

 

だが問題が1つ。オオカミはこれ以上食べたところで大きな変化は望めまいし、そうなるとウサギやクマなのだが、俺の得た技能で攻撃的なものは纏雷のみ。どうにも纏わせるだけでディアウス・ピターの赤雷のようには飛ばせないらしく、これではスタンガンと変わらないし纏雷を当てられるような距離なら他の手段の方が威力が高い。つまり、現状では魔力量が増えた程度で俺の戦力は大きくは上がっていないのだ。このままではまたウサギに苦戦し、クマに痛み分けで終わる可能性が高い。

 

……拳銃を使えばその限りでは無いのだろうが、弾薬の補充が無い以上、約60発の弾丸をそうそう使って良いものなのだろうかと躊躇ってしまう。神機の弾丸も、オラクル細胞の供給の無いこの世界じゃ直ぐに弾切れを起こしてしまうからあまり使いたくはないのだ。そうなると派生技能の方に力を入れるべきか。

 

──派生技能──

 

本来技能そのものは先天性で増えるものではないが派生技能というものは別だという。

 

派生技能とは、1つの技能を極め抜いた先にある発展系、所謂壁を越えたということだとか。

 

拳銃は弾丸の補充が無いために使いずらい、オオカミから得た技能ではウサギやクマには及ばない。そうなると残された俺の武器はオラクル細胞と錬成。特に錬成はまだ伸び代がある。今後はオオカミで腹を満たしつつこの錬成の修練に励むべきだろう。特に派生技能の獲得が目標だ。

 

「……錬成」

 

オルクス大迷宮の鉱石が加工されてゆく───

 

 

 

───────────────

 

 

 

錬成や纏雷の修練を初めてからしばらく経った。オルクス大迷宮の中では時間の感覚が無いからあれからどれくらい経ったのかは正確には分からない。けれどその中で俺の得た技能は中々の成長を遂げた。まず纏雷。これは遂に赤雷を飛ばせるようになった。あのオオカミ共が飛ばせていたので頑張ればいけると踏んだが正しかったらしい。とは言え、これはディアウス・ピターの赤雷の下位互換なのであまり使わないだろうが……。

そして錬成の方は大きな前進が見られた。遂に目標にしていた派生技能が付いたのだ。その名も「鉱物系鑑定」。あらゆる鉱物を解析できる能力のようだ。そして俺はオルクス大迷宮を構築している鉱石を片っ端から鑑定していった。そしてそこには驚くような発見があったのだ。

 

例えばこの大迷宮を淡く照らしている緑光石。これがどう光っていたのかと言うと、魔力を光量に変換していたのだ。そしてただ光るだけではなく、魔力を溜めた状態で割ると溜め込んだ魔力を瞬時に光として放出するというのだ。俺の脳裏に浮かんだのは閃光手榴弾。上手く使えばあのウサギやクマの視界を奪えるかもしれない。

 

また、もう1つ発見した鉱石、これは俺の中で大きな喜びをもたらした。

 

──燃焼石──

 

可燃性の鉱物で火を付けるとそこから燃えるのだ。さらに密閉空間でそれをすると爆発を起こし、その量は量や圧縮率に依存する上、場合によっては上位の火属性魔法にも匹敵する。

 

これを発見した時に俺は思わず自分の脇のホルスターに意識が向いた。懸念していた弾薬不足の解消に役立つかもしれないからだ。

更に都合の良いことに「タウル鉱石」なる鉱石も発見できた。これは高い強度と耐熱性を誇る鉱石だ。思わず頬が吊り上がる。

 

「オーバーホールは自分でやっていて正解だったかもな……」

 

そろそろアリの巣のようになってきたオルクス大迷宮の壁内。その中心地で俺は異世界製現代兵器の作成の期待に胸を膨らませていた。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「……やっぱり不味い」

 

巣穴へ引っ込んだ俺は今しがた狩った蹴りウサギの肉を頬張っている。

錬成を使いながら手持ちのP250を分解し、それを手本に作り上げたオートマチック拳銃。デザートイーグル並の口径を誇りダブルカラム式で装弾数は10発。さらにチェンバーに予め1発入れておけば最大で11発でそれを2挺。さらにロングマガジンも作成しこれは弾倉1本につき17発放てる。しかも、この拳銃のパワーは異世界であるトータスの火薬と鋼鉄より硬い鉱石で作られたボディによってデザートイーグルの.50AE弾を上回る火力を誇っている。

 

また、デザートイーグルよりも更に長めに作られたバレルでは俺の得た纏雷を応用して出来る限りの電磁加速を行っている。着想は篠ノ之束の所にいた時。あの時俺のISに乗せる武装の案としてレールガンが上がっていたのだが、手持ちではなく腰部に取り付けるとのことだったので動き辛さを懸念した俺が却下したのだった。

だがそれを思い出した俺が纏雷で試したところ、詳しい理論は知らないがともかく弾丸を加速させることに成功。それにより現代兵器でも中々見られない貫通力と破壊力を得たのだ。

 

そして、その化け物兵器から音速を遥かに超える速度で放たれるフルメタル・ジャケットの弾丸がウサギの脳天を貫き、そこに詰められていた脳漿を炸裂させたのだ。

 

また、胃酸強化の技能はこのウサギにも有効なようだ。肉は不味いがあの身体をバラバラに砕き引き裂くような痛みは感じない。

とりあえず腹の空腹感が満たされると俺はステータスプレートを開いてみた。

 

 

────────────

神代天人 17才 男 レベル15

天職:錬成師

筋力:500

体力:500

耐性:──

敏捷:550

魔力:350

魔耐:350

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・魔力操作・胃酸強化・言語理解

────────────

 

 

ようやく少しだけ魔力以外の数値が上がった。と言っても魔耐しか上がっていないが。拳銃、と言うより弾丸を作っている間に花開いた派生技能精密錬成、さらに色々な鉱石を探している間に増えた鉱物系探査以外に、ウサギを食ったことで増えた技能が天歩か……。しかも最初から派生技能2つ付きだ。

 

「縮地……。天之河が使ってたやつか。空力ってのは何だ……?あの空中を踏みしめるやつか……?」

 

俺は巣穴を這い出でると天歩の修練を始める。

まずは空力、これがあの空中に足場があるような動きを可能にした技能であるなら、俺の封印されたスキル群の中の、氷の元素魔法をイメージすれば良さそうだ。向こうにいる時はあの魔法で足場を作り出して機動力を確保していたことがあるからな。

 

「ん……」

 

やはり俺の想像は当たりだったようだ。階段を登るような体勢で上げた足元に壁があるのを感じる。俺はそのままグッと伸び上がるとその足場に両足を着いた。

 

「ふむ……」

 

俺はそのまま斜め上に跳躍。さらに足場を作って空中を踏みしめる。そしてまた跳躍。それを何度も繰り返して感覚を掴んでいく。

 

「やっぱあれと同じ感じだな……。次は……縮地か……」

 

まるで瞬間移動のような移動速度を出せる技能、縮地。まずは魔力を足元に集めてみる。

そしてそれを爆発させるように前へ踏み込む。

 

──ダンッ──

 

と、凄まじい音と共に視界が流れていく。

着地に苦労したがこれも中々に使えそうな技能だ。

あのウサギの機動力に加えて電磁加速拳銃の破壊力があればあのクマにも勝てるだろう。

 

「そろそろ行かせてもらうか……」

 

もはや一種の迷路のようになった巣穴に戻り、新たに増えた荷物を取りに向かう。さて、ここから先は進むだけだ。

 

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