セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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副業探し、お家探し

 

あの後、リサには俺の着ていた服を着せてやり、俺はそこら辺に転がっている男共の服を剥ぎ取ってそれを身に纏うことで露出魔の謗りを免れた。

 

ただ、そのままではだいぶサイズが合わなかったから適当に布地を裂いて、どうにか動きに支障のないような処理だけはしたけど。

 

そしてそんなボロボロの格好ではあったが、俺とリサはどうにか夾竹桃の手引きもあってイ・ウーへと戻れた。

 

そして、どこからか帰ってきていたシャーロックに開口一番───

 

「俺達はもうここにはいられない」

 

と、イ・ウーとの決別を宣言したのだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「こうなることは推理していたよ」

 

俺の話を聞いたシャーロックはそう言って、いくつかの書類を持ってきた。それは、埼玉にある武偵中学への転入書類だった。それが2式───つまり俺とリサの分。これに必要事項を記入して、中学2年生として9月から、オランダの武偵中からの転校生の扱いでここへ通えというのがシャーロックの言い分だった。咲那の両親が武偵だったから、俺も武偵というものには多少の知識はある。武偵なんて言っても戦うだけではなく、後方支援専門の武偵もいるのだ。

 

つまり、リサはもう戦わなくて済む。俺はシャーロックの提案に直ぐ頷いた。それを合図にそのままあれよあれよという間に話は進み、書類は埋まり、俺とリサはまるで追い立てられるようにイ・ウーを出ていった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「……ご主人様」

 

「んー?」

 

日本へ着いたら峰理子が案内をすると聞いていた俺達は今、イ・ウーから発射された小型の潜水艦で太平洋を横断していた。

 

「ご主人様は、ジェヴォーダンの獣を見た時、どう思いました?」

 

「……別に。ただ、綺麗だなとは思ったよ」

 

あの金色の毛並みはこれまで見たどんな動物のそれよりも美しかった。まるでリサの流れるような金髪がそのまま現れたかのようだったのだ。

 

「そう、ですか……」

 

照れるように耳を赤くし、顔を伏せるリサ。俺はそれを横目で見ながら言葉を続けた。

 

「もしあの姿を、リサが憎むというのなら俺も憎もう。あの姿も愛してほしいなら俺も愛するし、なりたくないというのならもう絶対にならせない。ただ俺は、どんなリサでも愛している。それだけは確かだよ」

 

俺から言えるのはそれだけ。そして、それが全てだった。

 

「ご主人様……ありがとうございます……。リサはあの姿にはなりたくない。この力を与えた神も呪います。けれどご主人様があの姿も愛していると言ってくれるなら……少しは好きになれるかもしれません」

 

そう言ってリサが俺に向けてくれた笑顔を、俺は一生忘れないだろう。ありきたりな言葉で言えば、花が咲くような笑顔、と表現されるのだろうか。ともかく、そんな眩い笑顔を向けられた俺はそれを直視できなかった。だが、顔が赤く染まるのを防ぐこともできず、横で楽しそうにリサが笑っているのをただ聞いていたのだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「さてまぁ、色々とやらなくちゃいけないことはあるんだが……」

 

昼過ぎ、皆でリサの作った昼飯に舌づつみを打ったあと、理子とジャンヌ、透華達も学校へと戻った。今この部屋にいるのは俺とリサ、トータス組だけだ。

 

「大前提として、この部屋には布団が4組しかない」

 

この部屋は元々4人部屋。布団を洗った時用に2組余分に持ってはいるが、それでも5人分は無い。1日2日程度なら別にソファーで寝てもいいが、これからずっとはさすがに辛い。何よりティオは武偵高には通わないのでそれも問題だ。

 

「……んっ、私が天人と同じ布団に入る」

 

「いえいえ、それなら私が天人さんと入りますぅ」

 

「ここは妾がある……天人と入るべきではないかの」

 

「えっと……」

 

「リサはこれに染まらなくていいからな……。そしてそこの異世界3人組、俺ん話はまだ終わってないぞ」

 

むしろ本題はここからなのだ。いきなり話の腰をへし折らないでほしいものだ。

 

「そもそもこの寮は4人部屋だったからな。5人が生活するには狭いんだよ。だからお引越しを検討してる」

 

「引越し、ですか?」

 

「あぁ。5人が暮らせてかつレミアさんとミュウも傍に住める、そんな所を探さなくちゃいけない」

 

……言ってて気付いたが俺、もしかしてジャンヌ達にレミアさん一家の話してないかも。まぁ、どうにかなるさ、きっとな。

 

「というわけでリサ。明日からは物件探しだ」

 

あとはコイツらに携帯も与えなくちゃいけない。名義は……俺でいいか。携帯ショップの人に変な顔されないかな……。一月に2度も買い換えたと思ったら何か後から女3人も連れてきてそいつらの分まで契約してくってどうなんだろ……。

 

「……ミュウ達とは一緒に住まないの?」

 

と、ユエが寂しそうに聞いてくる。……ユエにそんな顔をされると、何だか俺が悪いことしたみたいに思えてくるから不思議だ。

 

「……まだレミアさんとミュウがこっちに住みたいと思うか分からないし」

 

「……2人はこっちに住みたいって言うと思う」

 

「私もそう思いますぅ」

 

「妾も、レミアとミュウが一緒に住む未来が今から目に浮かぶのじゃ」

 

「あの、ミュウ様とレミア様というのは……?」

 

……あぁそうだ。あの2人のことはリサにも説明してなかったな。

 

「えっと……シア、頼んだ」

 

もう俺には考えることが多すぎて無理だ。コイツらのこと、ミュウ達のこと、ジャンヌのこと、透華達のこと、これからのこと。1つ1つ、絡まった靴紐を解くように解決していかなきゃいけないのだろう。だけど俺の脳みそはそれらを纏めて解いて解決出来るくらい上等にはできていないのだ。精々1つずつ、ゆっくりと解決していくのが関の山だろう。だから俺は今の問題はリサやユエ達に任せて、これからのことに意識を飛ばしていくことにしたのだった。

 

 

 

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その日の携帯ショップはたまたま空いていた。そこで俺達は一気に4台の携帯を購入するのだった。取り敢えずの24回払い。ユエ達の携帯は、本人達も機種にそんなに拘りがないらしいから、3人とも同じ機種の色違いで揃えた。契約関係はリサの出番だ。俺達の考えうる使い方で最も値段の安くなる契約形態を選んできた。

 

そうして手に入れた文明の利器の使い方を指導し、次の日には俺の防弾制服を買いに行き、ついでに理子とジャンヌにあと2人分の追加を頼んでおいた。

 

後は今後俺達が住む場所なのだが……、7人が住めてかつミュウが大きくなることも見越したら全員の個室があるようなマンションなんて普通に存在しなかった。いや、探しゃあるのだろうが、多分というか確実に予算オーバーだ。しかも俺の職業は武偵。割と賃貸も入居を渋られがちなのだった。

 

もちろんローンなんて以ての外。利子とか取り立てがヤバめのところなら貸してくれるんだろうが、さすがにそういうところには手を出したくはない。そうなるとゼロがいっぱいの通帳を見せて現金一括払いしかないのだが、台場に通学するのに便利な都心部に7人で住めるような家を買うほどの貯金は無い。リサに値引きさせて不動産屋の営業を泣かせるにしたって限度ってものがあるしな。

 

そうなるとちょっと武偵校 高は遠くなるが埼玉とかも選択肢に入るか……?でもなぁ、遠いよなぁ……。

 

これは、本格的に副業を考えなくちゃ駄目だろうな。

 

「どう思う?リサ」

 

当面の間は俺と誰かがローテーションで一緒の布団で寝ることで解決した寝床問題。だがミュウとレミアさんが来るなら話は変わる。まぁまだ空き部屋があるからそっちにベッド置いてもいいんだけど。けどそれも俺が武偵高にいる間しか使えないのだから、早急に住居の問題は解決しなくちゃいけないのだ。

 

「はい、当面の間はこの寮と同じくらいのマンションでやり過ごして、通学の楔から逃れた際に引っ越す、というのはどうでしょう」

 

「あぁ、そりゃあアリかもなぁ……。ええと、卒業までがあと1年と少しだろ?ミュウが幼稚園に通えそうな歳になるのもそれくらいか……」

 

まぁ最悪1年待つか、もしくは年中組から入ったって問題はあるまい。多分誤差はその程度のはずだ。ファミリー向けのマンションであれば、今の貯金と想定される今後の収入を考えたら2部屋程度なら借りられる。名義やら何やらの細かいことはリサ達に投げよう。俺に頭脳労働はまったく向いていないのだから。

 

 

 

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副業:ギャンブラー

 

 

 

俺がトータスでユエと作り上げたアーティファクト、越境鍵。これは物理的な距離だけでなく別の世界へと繋がる扉をも開くことができる。これにより俺は今後不意に異世界に飛ばされても直ぐに帰還することができるようになったのだ。

 

そして、このアーティファクトの真価はこれに留まらない。再生(時間に干渉する)魔法を組み込むことによって、過去や未来にまで行き来することができるようになっているのだ。

 

それなりの魔力を注げば未来にも行けることは、トータスで香織がオルクス大迷宮やライセン大迷宮に挑んでいる間、変成魔法で俺の身体から取り出したディアウス・ピターとハンニバルをアラガミの世界に帰した際に試している。

 

だが、魔力量次第でどこまででも遡れそうな過去への移動と違って未来には若干の制限が掛けられていた。

 

その制限とは、飛べる未来は()()()()()()()()()飛べるということ。だが、未来なんてものはハッキリと確定したものではない。シアの未来視の固有魔法だって見てから行動を変えれば未来そのものを変えてしまえるのだから。

 

だから確定した未来とはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という矛盾したものしか有り得ないということだ。

 

そんなもんあるかい!と、俺は匙を投げそうになったのだが、俺はふと思い出したのだ。あるじゃん、確定したこれから先の時間軸が。

 

俺は最初の異世界転移から始まり、リムルの世界から出てこの世界に帰ってくるまでには数年を要している。その上で最初の異世界転移から1ヶ月かそこら後の時間に戻ってきたのだ。トータスに行った後も、コチラに戻ってきたのは召喚から2週間後。

 

まぁ何が言いたいかと言うと───

 

───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だということだ。

 

っていう話を競馬や宝くじとはなんぞやというところから含めてユエ達に話したら「頼むからそんな駄目人間にはならないでくれ」とせがまれた。

 

一挙に大金を稼ぐのは簡単ではない。大きなリターンには大きなリスクがある。それは1つ世界の常識と言ってもいいかもしれない。けれど俺はもうそんな理には縛られないのだ!

 

と、大仰に語ったら凄く凄く冷たい、駄目な奴を見る目で見られた。ちなみにトータスではトータスの未来には行けなかった。何故かと考えてみたが、どうにも原因は俺の存在そのものかもしれないと思い至った。

 

世界には運命というものがある。しかし別の世界の人間はこれを変えられる。つまり俺がその時点で存在している世界の未来は確定していないのだ。

 

あの時は特に何も考えずにアラガミを野生に帰したが、あれができたのはつまりこういう仕組みの元の結果だったらしい。

 

そして、いくら冷たい目で見られても1度気になったら試したくなるのが人間の性。ほんのちょっと先の未来を覗くつもりで、俺は何も無い空間に鍵を差し込んだのだが、その結果は芳しくなかった。

 

と言うより、一切鍵が反応しなかったのだ。これはトータスでも見られた現象。つまり、この世界の未来は再び未確定になったということだ。

 

またもや何故と思ったが、多分これの原因はユエ達だろう。後はまぁ、さっきまでいなかったはずの俺という存在が現れたことで大きな部分では変わらなくとも、宝くじや競馬の結果なんかは変わる可能性が出てきた、ということか。

 

ユエ達もこっちから見たら異世界から来た人間であり、この世界の運命には縛られない。だが、それはとりもなおさず彼女達があまりにこの世界の運命に干渉しすぎると3人ともどこか別の世界へと飛ばされてしまうということだ。

 

まぁ、この世界生まれの人間である俺には何をどうすればいいのかは分からない。多分、普通に生きていく分には大丈夫だろうけど。

 

兎にも角にも、そんな様々な発見を得られたのは良かったが、結局副業にギャンブラーを選んでも根本的な問題を解決することはできなさそうだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

副業:ジュエリー職人

 

 

 

改めて俺は、自分に何ができるのかを見つめ直すことにした。俺はこれまでの異世界転移の中で幾つかの魔法と呼べる力を手にしている。ほとんどは戦闘向けの力だが、その中にはもしかしたらこの世界でも武偵活動以外に応用できる力があるかもしれない。まずはリムルのいた世界で得た力から考えてみよう。

 

俺が持ってる能力(スキル)は捕食者、変質者、思念伝達、魔力感知、重力操作、魔力妨害、魔法闘気、100万倍の思考加速、魔王覇気、氷焔之皇、それに加えて耐性として熱変動無効と、氷を生み出し射出する元素魔法、それの応用で物質の働きをゼロにする絶対零度があるわけだが……駄目だ、マトモなのが無い。戦闘や自分らの生活を便利にする程度には使えてもそれ以外にゃろくな使い道が無いぞこれ……。

 

ゴッドイーターとして戦い、その果てに手に入れたオラクル細胞と左腕と混ざり合った神機も戦闘にしか使いようがないしな……。後はトータスで手に入れた魔法か……。

 

大迷宮を攻略していく旅の中で手に入れた神代魔法の中で、俺に適性があって扱えるのは生成魔法と昇華魔法、それから変成魔法だけだ。

 

昇華魔法は日常生活じゃどうにも使い道が無いし、生成魔法もアーティファクトを作り出すしかない。変成魔法も、それでこの世界で飯を食っていけそうなやつはない。まさかこっちで異世界製のアーティファクトを売り捌くわけにもいくまいし。

 

それに、オルクス大迷宮で手に入れた固有魔法は案外耐性の類が多い。風爪や纏雷は攻撃的だがじゃあ戦闘以外で何か使い道あるのかと問われると正直そんなに思い付かない。言語理解があれば通訳や翻訳家にはなれそうだが、通訳は副業には向かないし、翻訳家は残念なことに俺の語彙力というか、表現力がないから多分売れない。何を言っているか分かっても、それを上手に詩的に表現できなきゃだからな。俺の頭の悪さがここで響いてくる。

 

後は天職である錬成師として手に入れた錬成か。鉱石を加工するだけの魔法だったが、結局これには命を救われたし、これがあったからこそユエも救い出せた。多分トータス世界において俺が1番お世話になった魔法だろう。

 

さて、派生技能も色々あるこの魔法、基本的には鉱物や鉱石の加工に特化した魔法なわけだが……もしやこれ、結構使えるのでは?鑑定もあるし分離もさせられる。その上で形は俺のイメージ通りに加工できる。宝石の加工なんて本来はどうやるのかよく知らないが、機械でやるにしろ、何か匠の技的なそれでやるにしろ、費用や労力は莫大なはずだ。それを俺は指先1つ、イメージ1つで終わらせられる。その上素材さえあれば複製錬成で大量生産も可能なわけだ……。

 

「どう思う?リサ」

 

「モーイ!ジュエリー職人までこなせるとは。ご主人様は多芸でいらっしゃるんですね」

 

未来視ギャンブラーの時と比べたら雲泥の差の反応だ。まぁ、リサの場合は悪い反応する時の方が珍しいからこういう時はあんまりアテになんないけど。

 

「ただ、こっちの宝石とか貴金属に俺の錬成が通るのかどうかってところは残るな……」

 

さてと、物は試しだ。安くてもいいし何か色々混ざっててもいい。むしろ、色んなのが混ざってた方が分離できるのかを試せるからいいかもな。

 

「というわけでリサ、安くていいし質も悪くていい。取り敢えず色んな種類の鉱石とか鉱物とか集められるか?」

 

リサなら値切って安く仕入れてくれるだろうという期待も込めて頼めば、二つ返事で立ち上がってくれた。

 

「はい!早速集めてきます」

 

「あぁユエ。リサが騙されることはねぇだろうけど、一応付いて行ってくれ。その制服着てりゃあ変に絡まれることもないだろうけど、何かあったらまぁ……大怪我しない程度にならぶっ飛ばして平気だ」

 

「……んっ」

 

取り敢えず俺、ユエ、シアの防弾制服は届いていたのだ。俺の見立て通り赤いセーラー服が死ぬ程似合っているユエと、改造したクラシカルメイド防弾制服のリサであればそうそう変なのを掴まされることもないだろうし、武偵高の制服が弾除けになってトータス程は阿呆に絡まれることもないはずだ。そもそもこっちは向こうより治安良いし……良い、ハズだ……。

 

俺は一抹の不安を抱えつつも、案外仲良さげに出かけていった2人を見送る。どっちも金髪で驚くほど可愛い顔してるから、姉妹みたいに見えるんだよな。優しそうで人の良さげなお姉ちゃんと、クールで歳の割にはしっかりしてそうな妹、みたいな。本当の年齢で言えばリサが妹でユエが姉なのだけれど。

 

そんな仲良し姉妹に見える2人が部屋を出ると、この一室には俺とティオだけが残る。シアは今はジャンヌとどっかに遊びに行っている。スタイルが良くて背の丈も同じくらいのシアとジャンヌは服を見に行ったらしい。

 

ジャンヌの趣味っていうと、ゴスロリ系のヒラヒラしたやつだったはずだが、露出第一みたいなシアと意見は合うのだろうか……。むしろ、ジャンヌはユエとこそ服の趣味は合いそうな気もするんだよな。ま、皆と仲良くやれるならそれに越したこともないか。

 

「ふむ、これは2人きり、というやつじゃの」

 

ソロりと、ティオが背中にしなだれかかってくる。女子連中の中では1番背の高いティオはリサの服もサイズが合わず、リサのお下がりで急場を凌いでいるシアと違ってこちらの世界で新たに購入した洋服を着ている。向こうの服は素材やデザインの基本がこっちと結構違うからか、こっちで着ると浮いてしまうのだ。まぁ、逆に小さすぎて着れる服の無かったユエもだから、むしろ自分だけお下がりのシアが膨れウサギになってしまったのだが。

 

なのでまぁ、ここいらでジャンヌと一緒に服を見に行けたのは良かったのだろう。多少はお金も渡してあるし、こっちの雰囲気にも慣れてもらいたいからな。ジャンヌも日本の暮らしには慣れてきているからそう変なことにはなるまいて。

 

「悪いけど、そんな色っぽいことばっかしてられねぇのよ」

 

背中に当たる柔らかさは名残惜しいが、俺はそれを振り払ってソファーから立つ。俺もリサ達にばっかり働かせてられないのだ。

 

「むぅ……そっけないのじゃ」

 

「そら、ティオも出る準備してくれ」

 

「お?どこか行くのかの?」

 

「おう。楽しく街歩きってわけにゃあいかないけど、一緒に見てもらいたいんだよ」

 

「待っておれ、直ぐに支度するのじゃ!」

 

と、ティオは随分と勢いよく自室へと駆け込んだ。4人分の個室を俺、ユエ、ティオ、リサとシアの組み合わせで分けたのだ。リサとシアは服が共有できるという理由で一部屋にしてしまって正直申し訳ないと思う。なのでこれから探すのはそう、次の住処だ。つまり俺の行き先は、不動産屋なのだった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「取り敢えずこんなところか」

 

その日の夕方、俺はティオと寮への道を歩いていた。季節はもう冬に近い。日が沈むのが早く、既に周りは暗くなっている。

 

「そうじゃなぁ。……のう天人よ、武偵は……」

 

「言うな……」

 

武偵はよく死ぬ。基本的に命張って戦うからな。だからこういう場面での信用はあまり無い。そんなのは分かっていたはずだが、こうまざまざと見せつけられると思ったよりショックだったな。

 

「まさか職業を答えただけであそこまで露骨な顔をされるとはの」

 

「貯金あってよかったぜ」

 

ティオは元々大人っぽいから未成年には見られない。俺も、日付だけ指折り数えればもう20歳はとうに超えている。武偵高の制服を着て初っ端から警戒されたくなかったから私服で不動産屋へ行ったのだが、探している物件の条件を聞かれ、職業を聞かれ、そこで誤魔化すわけにもいかずに普通に武偵と答えたのが不味かった。しかもよくよく聞けば俺はまだ高校生だし連れのティオは名前が日本人じゃない上に無職。俺が自分の通帳とそこに記されてる預金額を見せてようやく物件の案内が始まったのだ。

 

「ホント、錬成が使えるといいなぁ……」

 

確か日本は資本金1円から会社が設立できたはずだ。ともかくそれで宝石加工会社を興して、武偵以上の社会的信用を得なければならない。

 

思ったより未来へ飛ぶ条件が厳しかったから賭け事でズルをして大儲けとならなかったのだ。ならば堅実にいくしかあるまい。

 

「ふむ、天人よ」

 

「んー?」

 

「そんなに大きな家でなくとも、空間魔法を用いたアーティファクトでこっそり広い家とかは作れんのかの?例えば宝物庫みたいな」

 

「……あぁ。まぁ、そりゃ俺の拘りというか……。結局、魔法はこの世界じゃ本来無いものなわけじゃん?特に神代魔法なんてのはこの世界の原理じゃない。明らかに住んでる人数と部屋の大きさが釣り合わなかったら疑問に思う奴も出るだろ」

 

アーティファクトで部屋を拡張したとして、3,4人程度が住む前提の部屋に7人も8人も住んでたら不審に思う奴も出るだろう。それに気付かれる度に魂魄魔法で暗示を掛けるとかしてたらキリがないと思うのだ。

 

部屋そのものに魂魄魔法を付与して意識を逸らす、なんて方法もないではないが、命がかかっているわけでもないのにそこまでするのか?という疑問が俺の中にはある。

 

もっとも、必要ならそういう措置を講じることに躊躇いはない。実際、シアもティオも、人間とは違うその耳を、他人の意識から外すアーティファクトを渡してあるのだ。

 

イ・ウーやなんかじゃウサミミだろうが何だろうが気味悪がられることもないだろうが、表の世界は別だ。まぁよく見なきゃコスプレ程度にしか思われないだろうが、それでも目立つことこの上ないからな。そこら辺は考えねばならない。

 

「なるほどのぉ」

 

「そういうことよ」

 

手を繋ぎながら俺に肩を寄せてくるティオの腰に腕を回す。武偵的には動き辛いのであまり褒められたものじゃあないのだが、俺もティオも、魂魄魔法と再生魔法を付与したアーティファクトによって即死からも復活できるからか……いや、多分完全に雰囲気に流されているだけだけど、とにかくそんなことを気にすることはなかった。

 

そして、俺達は寄り添ったまま玄関の扉を開けた。すると、どうやら皆帰ってきているようで部屋の奥からワタワタと気配がする。

 

靴を脱ぎ、廊下を歩いてリビングへと繋がる扉を開けるとそこには───

 

「どうです天人さん、似合ってますか?」

 

「超クソ可愛い」

 

甘々のヒラヒラなお洋服に身を包んだシアがロングスカートの端をちょんと持ち上げて俺達を出迎えてくれていた。

 

 

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