セカイの扉を開く者   作:愛宕夏音

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Nの影

 

 

キンジは結局かなめ以外には正体を露見させることなく2度目の僅かな2年生を過ごした。その後は千葉にある語学学校に通うとのことでもう一度俺達の元を訪れ、再びの変成魔法で男の身体に戻った。

 

俺も学校に顔出したり任務を請け負ったり錬成で宝石を加工したり……そんな風にして過ごしていたのだが……

 

「……やっぱり、納得できません。私は嫌です、天人さんがあんな風に扱われるのは」

 

レミアやミュウ、ジャンヌも集めた家族会議の時間、最初に口を開いたのはシアだった。

 

シアはトータスで自分の固有魔法と魔力を持っている体質によって同部族のハウリア以外の亜人族──今は獣人族だ──から差別され、排斥されるからと匿われてきた。そして見つかった際には処刑だの追放だのと住んでいた所を追われた経験があり、実際死ぬ1歩手前で俺とユエに出逢ったのだ。そんな彼女からすれば、大きな力を持つからと飼い犬か死かの2択を迫られている俺の現状は到底看過できるものではないのだろう。

 

「ま、俺だって大人しく首輪を掛けられてやる気は無いよ。ただ、抗い方は考える必要がある」

 

俺にとっちゃトータスなんてのは俺を閉じ込める牢獄でありいつか出ていく世界だった。だからそんな世界の誰を敵に回そうが俺は俺の大切な奴らだけがいればそれで良かった。

 

そりゃあ、大きな面倒を避けるために小さな手間をかけるのは仕方のないことだし嫌われるよりは好かれる方が良い。けれどその程度。

 

だがこの世界はそうもいかない。ここは俺のいるべき世界なのだ。俺はこの世界で生まれ育ち、結局どこを回っても自分の居場所だと思えた世界は無かった。俺は確かに生まれ自体は日本ではない。両親は日本人で、時折日本にも遊びに行ったことはあったが、出生国はオランダで、その後何年も国籍不詳──船の国籍は日本籍だったらしいが──の伊・Uに乗っていたから、日本という国への帰属感は薄いと思う。あそこを出てから世話になった国ではあるんだけどな……。

 

だからってここで旧公安0課と派手に事を構えてこの国に居られなったとして、他に行く宛てがあるのかと言われると、聖痕の力を惜しげも無く使う俺は多分世界中からの鼻つまみものだろう。アメリカでだって暴れたしイギリスじゃあ第8王子だかっていうハワードからは嫌われたまんまだ。

 

メヌエットはイギリスじゃ王族の言うことには逆らえないっぽいし、当然他の国でメヌエットの顔がそれほど効くとは思えない。となるとメヌエットを頼ることもできない。

 

オランダじゃあの件がどう扱われてるのかはよく知らんし、ユエ達に俺の生まれ故郷を見せてやる約束はしたけれど、正直どこまで長居できるのかは不明。

 

て言うか、国外に逃げたとしても公安や武装検事が来ないという確証も無いわけで。なのでジャンヌを頼ってのフランスも微妙。

 

そうなるとどこへ行ってもさして変わりないのだから、前提である追われる立場という部分を変えねばなるまい。

 

「俺が半殺しにされたのはほぼ個人的な理由だ。本来アイツらからすれば俺の力は怖いが利用価値としては高い。だから首輪を掛けておきたい、もし無理なら消して不安の芽を摘んでしまおうっていう訳だ」

 

もちろん奴らが奏永人を使ったのは俺の不意を突き易く、かつ確実に戦闘不能に追い込めると判断したからだ。実際その読みは当たったわけだしな。

 

だがあれから今まで手出しをしてこないところを見るに向こうとしても俺の力はなるべく確保しておきたいのだろう。殺して消してしまう線がそれなりに濃いのであればもう動いていてもおかしくはないからな。特に、俺が看護されたいからって部屋で寝ていた時は狙い目だったはずだ。

 

「そんなの……考えようによっては私の時より酷いですぅ」

 

と、シアは俯きながらそう呟いた。まぁそれはそうだろうな。だがこっちの世界じゃこれが普通なのだ。透華達だってあの山奥の村じゃ似たような扱いだった。俺達は首輪を掛けられるか排斥されるかの2択を常に強いられているんだ。

 

「俺ぁトータスじゃ敢えて力を見せつけて、教会やなんかが手出しする気も起きないようにしたかったんだ。ま、結局エヒトの野郎のおかげで失敗だったけどな。んで、こっちでも似たようなことをやろうとして、また駄目だった。多分それじゃいけないんだよ。そんなやり方じゃ居場所なんて手に入らない。俺ぁようやく辿り着いたんだ」

 

「……じゃあ、弱い奴に迎合するの?」

 

と、今まで黙っていたユエも口を開く。

 

「いいや、力は見せつける。けど俺達はそれで無闇に人を傷つけるこたぁしないと思わせる」

 

リムルは人間と鏡のように向き合うと言っていた。拳を振る奴には拳を、握手を求める者には握手を。敵対しようとする奴にまで甘い対応をすることはないが、だからって態々必要以上に暴れ回る必要も無い。

 

「つまり、どうするつもりだ?」

 

と、ジャンヌ。レミアはただ黙って話を聞いていて、ミュウは周りの顔を伺っている。

 

「つまりはまぁ……基本いつも通りだ。ただ、再生の聖痕持ちにはあんまり近付くな。ありゃあ喧嘩して勝つ負けるとかの次元じゃねぇからな」

 

死んでも再生するとかどうにもならん。しかもあれはトータスにいた魔物共と違って明確な弱点が無い。精々が俺の白焔で殺すくらいだがそれは武偵法9条に抵触するから駄目。あぁいうのは相手にしない方が得というものだ。

 

「後は旧公安0課とか……武装検事達だけどな。ま、アイツらから仕事の依頼があれば請けてやるってスタンスでいいんじゃねぇかな。公務員がそんなことするかは知らねぇけど。……アイツらの組織としての目的はこの国を守ることだ。当然敵もろくな奴らじゃないし」

 

確かに彼らは殺人をも認められた戦闘集団ではあるが、無軌道でイカれた連中ってわけじゃない。キチンと理念があり思想があり守るべきものも明確だ。だから正直な話、俺を殺そうとしたり首輪を掛けようとしない限りは特別敵対する理由は無いのだ。

 

けれど、シアはまだ不満そうだし、これまであまり表には出さなかったけれどユエもアイツらには文句があるようで、あまり良い顔はしていない。

 

「アイツらが許せねぇならそれでもいいよ。俺としちゃあお前らにそこまで愛されてるってのは悪い気分じゃないし。けど喧嘩売りには行かないでくれ。戦うのは向こうから手ぇ出してきた時だけだ」

 

だが、それでも俺はコイツらと公安にはあまり喧嘩をしてほしくはない。

 

「……天人がそう言うなら」

 

「仕方ないですぅ」

 

と、2人は渋々といった体だったが取り敢えずは引き下がってくれた。ティオはこういう時大人なんだよな。特に何を言うでもなくただ俺達を見守ってくれている。

 

「ありがとな。……俺ぁお前達にこっちの世界のこと嫌いになってほしくないんだ。どうせなら、好きになってもらいたい。……そのためには───」

 

俺は、1つ考えていることがある。本当はシアやティオとミュウとレミアに渡してあるアーティファクト……耳を誤魔化すやつ。本当はそんなもんを付けなくて済む世界にしたいんだ。

 

けれど、今の世界はそんなことは受け入れないだろう。きっと彼女達がありのままでいれば世界は放ってはおかない。絶対に差別されろくでもない奴らに狙われる。それが分かっているから俺は最初から認識を阻害するアーティファクトを作って渡してあるのだから。

 

「───いや、これは今は置いておこう。もっと、余裕ができてからだ」

 

と、俺は言葉を濁す。そもそも俺自身が狙われてるってのにこんな夢物語を話す時ではないだろうから。

 

「ぱぱ……」

 

「天人さん……」

 

「天人よ……」

 

レミアはミュウを無言で抱きしめている。けれどその瞳は俺を見つめたままだ。その瞳が、俺の顔を無理矢理にでも前に向かせるのだ。

 

「ま、まずは目先の問題からだな。取り敢えず旧公安0課や武装検事達とはあんまり喧嘩しないってことで」

 

無駄にしんみりした雰囲気になったこの場を俺は声のトーンでどうにか盛り上げようとした。それがどこまで効果があったかどうかは知らないが、リサから「デザートがある」と聞かされたミュウが「食べたいのー!」と元気になったので何となく弛緩した空気になる。多分、2人とも狙ってくれてるんだよな、ありがとう。

 

 

 

───────────────

 

 

 

そんな家族会議をやった後のあくる日、俺は1人人工浮島の片割れ、無人島の真ん中で突っ立っていた。別に暇なわけではない。とある人物に呼び出されたのだ。そして今日は、ちょうどユエとシアが任務でいないタイミングだった。

 

で、俺を呼び出した当の本人はと言えば───

 

「……呼び出しといて遅刻かよ」

 

「アホ言え、俺は5分前だ。お前が早すぎる」

 

とは言っても俺も着いたのはつい5分前だから大した差は無いんだけどな。それは目の前にいるこの図体のデカい男には言わないでおく。

 

「で、何の用だよ」

 

「大したことじゃない。この前の話の続きだよ」

 

この前の話……俺とキンジを旧公安0課、今は武装検事にさせようって話か。

 

「その話なら断ったはずだぜ、獅堂」

 

俺は感知系統の固有魔法も全開で周りを見渡す。そこには獅堂──キンジからコイツの名前だけは聞けた──より更に背が高く、2メートルくらいはありそうな坊さんや、ストライプ柄のスーツを着た男、白い学ランを着た美少年、それに妖刕までいやがる。……だが奏永人はいない。隠れているのかとも思ったが気配感知には引っ掛からなかった。こっち側でも聖痕は閉じたままだが、彼がいないのなら問題は無いだろう。

 

「悪いが、お前だけは是が非でも確保しろってことなんだよ。これでお前も月給者になれるんだ、悪い話じゃないだろ?」

 

確かに完全歩合制の個人武偵と違ってコイツらの仲間になれば月給っていう名目で月毎に安定した収入は得られる。だが、コイツらは所詮公務員。その金額はたかが知れている。

 

「悪いけど俺ぁ公務員の安月給でコキ使われる気も、首輪掛けられて生殺与奪を握られる気も更々ねぇんだよ。仕事なら内容次第で請けてやるからそれで諦めろよ」

 

「……分かってねぇな。今はこの学園島とこっちの無人島だけだが、そのうち日本中で聖痕は使えなくなるぜ。なら今のうちに長いもんには巻かれとけ」

 

獅堂が1歩前に出る。武偵法9条の縛りがある俺ではコイツを殺すことはできない。その上聖痕も塞いでいるから負けはない。しかもユエがこの場にいない以上は強制的に言うことを聞かせられる心配もない、そうやって手順を組んできたのだろう。と言うか、ユエもシアもちょうどこのタイミングでご指名の依頼ときた。確実にコイツらが絡んでいるのだろう。

 

武偵高のランク考査試験を終えて2人はSSRと強襲科でSランクと判定された。実力的にはそれこそRランクでもおかしくはないが、Rランクになるにはそれ相応の試験をクリアせねばならないから現状こんなもんだ。

 

だが、いくらSランクとは言えランクを与えられたばかりの2人に指名が入るとは考えにくい。2人も今の状況でどっちもが1度に俺から離れるのは渋ったのだが、報酬はそれなりだった上、もう不意打ちは効かないし逃げるだけなら問題ないからと俺が2人を送り出したのだ。

 

「そーゆーの、嫌いなんだよね」

 

俺の言葉を契機に獅堂を中心に奴らの陣形が広がる。どうやら力ずくでもってやり方に移るようだ。コイツらが俺の力をどれほど把握しているのか……。まずエリア51で見せた電磁加速式対物ライフルは把握していると思っていいだろう。だがあんなもん使ったら確実に人死が出るので使えない。それは向こうも分かっている。

 

後は妖刕に見せた分。フランスの街中じゃ俺は戦闘には加わっていない。戦闘をしたのは眷属の奴らが根城にしていた船の上でだが、そこで使ったのは電磁加速式の拳銃。あとは颱風のセーラが放った矢を額に受けた時と妖刕の二刀を受けた時に何やら結界が張られていることに気付けるかどうか。魔力放射も少しだけ使ったがあれはどう捉えられているかな。

 

「いつか楽に思える時が来るぜ」

 

「約束なんでな。自由な意思の元にってよ」

 

俺は解放者(ミレディ)達から言われた言葉を思い出す。俺は俺の意志で戦う。誰の下に着くか、誰の下にも着かないのか、それは俺が俺の意思でもって決めることだ。

 

「そうかい」

 

獅堂は遂に俺をその太い腕の殺傷圏内へと捉えた。そして俺の胸ぐらを掴み───

 

「っらぁ!」

 

───思いっ切りぶん投げた。

 

変成魔法の報酬代わりにキンジからコイツの怪力とその理由は聞いていたから敢えて受けてみたが、マジで身体が水平に飛ぶとは思わなかった。俺の身体はオルクス大迷宮で魔物を喰らった影響か、身長も多少伸び──体重は身長の増加分以上に伸びているので多分密度が凄い──体重は装備を含めると90キロ程度の重さになる。それをこの角度で飛ばすのか……。トータス基準だとこの筋肉は幾つくらいになるんだろうな。機会があれば天之河と比べてみるか。

 

なんてことを俺はコンクリートの地面と水平に飛びながら考えていた。しかしこのままだと地面どころか海に落ちそうだ。ずぶ濡れは嫌だし……。

 

「……っと」

 

俺は魔力の衝撃変換で水平に飛んでいた身体を地面へと落とす。変換したのは大した魔力量じゃないが取り敢えず飛ぶ角度を下に向けたので直ぐに地面に着地できたのだ。

 

「人をポンポコ投げるもんじゃねぇよ」

 

と、俺は嫌味を言ってやりながらさっき投げられた所まで歩いて戻る。俺が途中で吹っ飛ぶ角度を無理矢理に変えたことで奴らの目つきも変わる。随分と警戒しているようだ。

 

……さて、コイツらのボスはこの獅堂だ。コイツを倒せば他の奴らもそう簡単には掛かって来ないだろう。実際、妖刕は俺に手も足も出なかったのだ。この中じゃ下っ端っぽいけど……。

 

どうせ向こうには再生の聖痕があるからここでいく負傷しようが……最悪死のうが問題は無いのだろうが、それでも今この場にいない以上は全員を戦闘不能にすれば奏永人がここに来るまでコイツらは傷の痛みを抱えることになる。獅堂をぶっ倒したらそれをネタに脅してお帰り願おうかな。

 

「お返しだよ」

 

と、無防備に立つ獅堂に向けて俺は拳を構え───

 

「っ!?」

 

だがその拳が振られることはなかった。獅堂が俺の肩をちょいと押したからだ。それにより俺はバランスを崩して打撃を放てない。多重結界は張られているが、こんな打撃にもならないようなものでは逆に結界で滑らせることもできないのだ。そしてそれが何度も繰り返される。

 

尽く打撃を潰された俺は堪らずに魔力の衝撃変換を放つ。これだけ筋肉質な身体であればぶっ飛ばしても死にはしないだろうと、そこら辺のチンピラなら数メートルは飛んでいく勢いで放ったのだが───

 

「…………」

 

───ゴッ!

 

と、鈍い音を立てて獅堂の肉体を打ち据えた衝撃波だったが奴の身体をぶっ飛ばすことは叶わなかった。……どういう身体してんだよコイツ。それでも1歩下げさせて距離は取れたけどさ。

 

それに周りの奴らが少しどよめく。俺が何のモーションも、触れることすら無くコイツに何か攻撃を加えたことに驚いたのか、獅堂が1歩下げさせられたことに驚いたのか、それは知らねぇけどな。

 

しかし常人の256倍の筋肉を持つ乗能力者(マルチレイズ)か。膂力だけ見たらもしかしたら神の使徒よりあんじゃねぇのか?

 

「おもしれぇ手品だな」

 

魔力の衝撃変換を手品呼ばわりか。まぁ俺もまだ全力を出しちゃいねぇけどさ。それでも嫌んなるね、こうも普通に突っ立っていられると。

 

まぁもういいか。どうせどんな怪我しても元に戻るんだ。殺傷能力高めの固有魔法で刻んでやる。

 

どうせあの服には防刃性能があるだろうから風爪は効かない可能性が高い。だったらこっちだと俺は自分の両拳に紅の電撃を纏わせる。

 

──纏雷──

 

オルクス大迷宮の深層、その第1階層に潜むオオカミが持つ固有魔法。それは俺の電磁加速式のアーティファクトの火力を支えるもので、錬成と並んで俺が最もよく使った魔法になる。俺の打撃を獅堂は初動から潰してきたがこれならもうアイツは俺の身体には触れられない。手前の筋肉まみれの固そうな身体ぁ焼き切ってやるぜ。

 

俺は全身にも纏雷を行き渡らせながら1歩踏み込む。さっきまではここら辺で俺の動きはキャンセルさせられていたのだが流石に赫い電がバチバチと威嚇するような音を鳴らしている俺の身体に触れる愚行は犯さないようで、獅堂は俺の動きに合わせて後ろへ下がっていく。

 

だが奴が下がる際に体重が後ろに乗ったその瞬間、俺は縮地を発動させた。

 

足元で魔力が爆発する。それを推進力に、ノーモーションで俺の身体は獅堂へと肉薄し───

 

───バリバリバリ!!

 

と、稲妻の様な音を立てて俺の拳が獅堂の身体にめり込み、獅堂の拳が俺の頬を捉えた。

 

獅堂が自滅覚悟なのか反射なのか、咄嗟に放ったクロスカウンターは俺の多重結界がその人とは思えない膂力を滑らせ受け流す。逆に俺の拳は獅堂の臍より少し上辺りを捉えていた。赤雷が獅堂の身体を駆け巡る。奴の動きが止まるのが分かった俺は左手では纏雷を使わずにただの拳で獅堂の顎を打ち抜く。

 

もうことここに来て優しく手加減なんてしていられない。俺が人外の膂力を持つように獅堂だって人間とはかけ離れた肉体を持つのだ。この程度で死ぬことはない。

 

俺は更に獅堂の鳩尾に右肘を叩き込み、奴の頭に握り合わせた両拳を打ち下ろすと共に鼻っ面に膝蹴りを入れる。そして両頬に両手で1発ずつ拳を入れると前蹴りを入れて獅堂の巨体を数メートル先に転がした。

 

地面に転がり伏せた獅堂は動かない。纏雷のダメージもあるし脳震盪まで起こさせたハズだからな。暫くは動けないだろう。だがまさか魔力の衝撃変換と纏雷、縮地まで見せる羽目になるとはな……。

 

「……俺ぁアンタらが手出ししてこないなら喧嘩する気はねぇんだ。別にこの国を転覆させようって思想も無いしな。だからもう放っておいてくれ。キチンと手順踏んでくれりゃ仕事は請けるからよ」

 

俺は威圧の固有魔法を使って他の奴らにも分かりやすく圧力を与えながら語り掛ける。とは言え流石は旧公安0課の人間達。この程度では動けなくなるなんてことはなく、獅堂よりも更にガタイの良い坊さんが獅堂を肩に担ぎ、ジリジリと後ろへ下がる。

 

「……よく覚えておけよ、神代天人」

 

……気配感知で気絶していないのは分かっていたが獅堂は俺の予想よりもダメージが少なかったのか、思いの外ハッキリとした口調で話し始めた。

 

「お前らの力はその存在そのものがこの国に不安を与えるんだ。そういうのはな、国がちゃんと管理してやんなきゃいけねぇんだぜ」

 

「知るかよ。俺ぁお前らの防弾チョッキなんて真っ平だぜ」

 

リーダー格らしい獅堂がやられたことで他の奴らも俺を警戒はしつつも手を出そうという雰囲気ではない。俺はそれでも背中を向けることはせずに向かい合いながら距離を置いていく。

 

「じゃあな。もう会わないことを願うぜ」

 

祈りはしない。神様なんて奴らは誰の祈りも聞き届けてはくれないからだ。だから俺はコイツらがもう俺にちょっかいをかける気がしなくなるように本人達にお願いするだけに留める。もし次に俺を引き込もうと相見えたら今度は氷の元素魔法で串刺しにしてやるぜ。

 

 

 

───────────────

 

 

 

それからしばらく経ったある日の夜だった。不知火から突然電話が掛かってきたのだ。

 

「……どうした?」

 

コイツはあの時公安の奴らと一緒にいたからな。俺の声にも思わず警戒の色が含まれてしまう。

 

「神代くんに仕事を頼みたいんだ」

 

「仕事?」

 

「うん。今とあるテロリストが首相を暗殺しようとしている。そのテロを未然に防いでほしい」

 

「その依頼、請けてもいいが聞かせろ。……それは、公安としての依頼か?」

 

という俺の問いに不知火は……

 

「場所は東京湾、海上自衛隊が訓練で使っていた護衛艦はるぎりがジャックされた」

 

答えなかった。ただ事件の詳細のみを伝えてくる。そして、俺がこれを聞いたら動かざるを得ないことも分かっているのだろう。ここまで話を聞かされて知りませんでした、とはいかない。武偵法9条では武偵はいかなる場合においても人殺しをしてはならないのだ。ここで首相暗殺が成功してしまえばこれを知っていた俺はワザと見逃したと取られても仕方ない。

 

と言うか、見逃せばそれで俺をとっ捕まえてアノニマス・デスの再来としたいのだろうよ。なら俺はこの国にとって有益であるためにも動かなければならない。……何だかこれはこれで上手く使われている気がするんだけどな。

 

そして更に不知火から聞かされた情報によれば現場にいる敵は恐らく1人。そいつは女で、今はキンジと妖刕、それから公安の可夢偉とかいう奴が事件に当たっているとのこと。誰だよと思ったがあの場にいたやたら面の良い若い男が可夢偉らしい。

 

「……今から行く。()()()()待ってろ。……いや、戻らなくていい。そこに行く」

 

と、俺は不知火の上空10メートルの座標を羅針盤で指定。そこに越境鍵で扉を開く。

 

羅針盤で不知火を探した時から分かっていたが、不知火達も港の方へ向けて移動しているようだ。なので俺が扉を開けた時にはもう不知火達の乗っている船は俺の視線の先にいた。まぁ、これくらいの距離なら大丈夫だ。

 

家にいた俺はリサに急な任務で出ることだけ伝える。

 

「行ってらっしゃいませ、ご主人様」

 

「あぁ。行ってくる」

 

「気をつけるのじゃぞ」

 

「……私も行く?」

 

見送るティオと、着いてこようとするユエ。

 

「いや、大丈夫だ。……最悪ヤバそうなら呼ぶよ」

 

だが俺はそう断っておいた。相手が1人なら態々ユエ達の手を借りるまでもないだろう。あまりユエ達の魔法も晒したくはないし。

 

「ご主人様……」

 

「あぁ。……んっ」

 

リサとお見送りのキスを交わし、それを見たユエ達が自分もとせがむのでそれぞれにしてやり、俺は改めて東京湾上空へと飛び出した。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「よう不知火」

 

「神代くんは瞬間移動もできるんだね」

 

出会い頭に嫌味を言われる覚えはないのだが、俺が本当に直ぐ様現れたことに不知火は驚きを隠せない様子だった。

 

「まぁいい。んで、敵の武装や能力は分かってんのか?」

 

念の為俺は不知火に敵の能力の確認をとる。もっとも、超能力であれば俺には一切通らないから大した意味はないのだけど。

 

「不明だよ。ただ聖痕でないことは確かかな。はるぎりの中じゃ聖痕は使えないから」

 

この野郎、よくもぬけぬけと言いやがるな。それじゃあ俺も全開を出せねぇじゃねぇかよ。

 

「お前マジでぶっ飛ばしたくなるぜ。……まぁいいや。敵はどうやって暗殺をするつもりだ?まさか狙撃銃で撃つとかじゃねぇだろうな」

 

「……核だよ。はるぎりにはNDD(核魚雷)が積まれているんだ」

 

クソッタレ……という俺の呟きは喉から先に出ることはなかった。ていうか日本の船だよな、はるぎりって。それが核武装とは非核三原則どこ行ったんだよ。俺は不知火からNDDに積まれている核の性質と起爆の方式をざっと教わりながら、高そうなクルーザーの甲板に立つ。視線の先には護衛艦はるぎりが白波を立てて夜の海を泳いでいる。

 

俺は空力で1歩宙へ踏み出すと、そのまま縮地ではるぎり目指して水上を駆けていく。

 

紅い魔力光が東京湾の暗い海を点々と照らしていく。俺はクルーザーから跳び立ってから数秒ではるぎりの甲板へと降り立った。

 

「よぉ」

 

「天人!?」

 

そこにいたのは雰囲気からするとHSSになっているキンジ、可夢偉とかいう美少年、それと……妖刕はどこいった?……あぁ、こっそり裏手に回ってるのか。その気配が俺の固有魔法に捉えられている。そしてもう1人、この場で最も存在感のある奴がいる。

 

長い髪とロングコートを風に靡かせているこの世のものとは思えない美しさを持つ女。艦首にあるこのはるぎりの主砲である76mm単装速射砲の砲身先端に立っている顔から完全に表情の抜け落ちて無表情のそいつは、俺という異物が急に現れたのにも関わらず何の驚きもないように思える。

 

「NDDだってな。……どこだ?」

 

俺はキンジにそう問いかけた。まぁ場所は羅針盤で探せばいいのだがあれだって使うのはタダじゃない。少なくない魔力を持っていかれるので聖痕の閉じられている今であれば知ってる奴に聞いた方が良い。この船……どころかさっきの不知火の乗っていたクルーザーに乗り込んだ時点で聖痕が閉じられているのは感じている。だが俺にはまだリムルの世界やトータスで手に入れた力がある。それが俺をこの場に立たせているのだ。

 

「もうすぐ発射される。まずはアイツを逮捕しなくちゃ───」

 

「───聞いていますよ。神代天人」

 

目の前の女が喋った。第一印象では無口な奴だと思っていたが、喋るんだな。

 

「……何を?」

 

「貴方の力はここでは使えない。しかしこの場に現れたということは何か別の力があるのでしょう?……ですが何であれ私の邪魔をするのなら消します」

 

そしてその言葉を言い終わった瞬間に───パァン!!───と俺の頭が弾かれた。何やら銃撃を受けたような衝撃だった。だがそれは俺の多重結界にぶつかり、俺の頭蓋を砕くことはなかった。

 

「…………」

 

目の前のテロリスト女が俺を見る。睨む、と言えるほど奴には感情の表出が見られなかった。俺の氷焔之皇に吸収されなかったということは今のあれは物理現象のようだ。どういう原理で何をしたのかはよく分からん。不可視の銃弾であれば銃声とマズルフラッシュが発生するがそれも無かった。そもそも奴は微動だにしていなかったように思える。だが威力は拳銃弾と同じかやや強い程度。俺の多重結界を貫く程じゃない。その程度なら俺にとっちゃさしたる驚異ではない。

 

「で、キンジよ。NDDはどこに───」

 

その時、はるぎりに微振が走る。……核兵器、それも派手に爆発するようなやつじゃない。NDDは中性子爆弾だ。強襲科の座学で少し齧った程度でさっき不知火にも補足説明を受けたがこれは強力な放射線で設備や死体を破壊することなく大量殺戮を行うタイプの核兵器。しかも小型化ができるっていう面倒なやつだ。それが遂に牙を剥くぞ。羅針盤は場所は分かっても発射コードや停止コードなんて言う具体的な数字は出せない。だからそれを知ってる奴に吐かせるか、()()()()()()()()()()()しかない。

 

だが羅針盤でNDDの場所が分かったからって数分では難しい。まず船の中は入り組んでいるから縮地で爆走、とはいかない。その上どうせ魚雷なんだから船の下の方にあるだろうから乗り込んだ時点で遠いし。やるとしたらこの場の全員に越境鍵を晒すしかない。

 

繰り返しになるが、羅針盤は場所しか示してくれないので、この日本が隠し持っていた核兵器での首相暗殺なんてテロを防ぐには停止コードを持ってる奴をとっ捕まえてコードを吐かせるか、()()()()()()()()()()()()()()()破壊もしくは回収の必要がある。そして、俺ならその術がある。

 

「……キンジ、この女は俺が抑えとく。お前あの魚雷追えるか?」

 

「やってやるよクソッタレ!」

 

と、キンジ達はどうやら発射の阻止を目論んでいたようで俺に悪態を付きながら船内へと駆け込んだ。そして1分と経たないうちにはるぎりの左舷からボートのエンジン音が聞こえる。目の前のテロ女は微動だにしない。俺が動かないから動けないのか、NDDは止められないと確信しているからキンジ達を追って下手なチキンレースに巻き込まれたくないのか。

 

俺はキンジ達が船内に駆け出した瞬間にテロ女へと迫る。甲板を蹴り主砲の上に立っていたそいつに肉薄した俺は右肘に叩き込む。しかしテロ女はそれに手の平を合わせて俺の腕力を受け流しつつも利用して甲板の上に離脱する。そしてどこからともなくあの見えない弾丸が飛んでくる。それはやはり俺の多重結界を貫くことなく弾かれて終わる。……空の薬莢が転がる音もしない。こりゃあ何か礫を飛ばすような類の攻撃じゃない。その上超能力の技でもない。すると飛ばしているのは空気か?

 

俺は瞬光を発動させつつトンファーを呼び出した。俺のトンファーは日々改良が加えられていて、今は後ろの先端と中に仕込まれたチェーンには重力魔法が追加で付与されている。これにより俺は伸ばしたチェーンを意のままに操れるようになったのだ。

 

俺ははるぎりの主砲を蹴りながら甲板へと降りる。その際にトンファーを振り回しテロ女の顎を狙うがそれは上体を反らすことで躱される。そして飛ばされる正体不明の弾丸。

 

だが瞬光を使った今だから見えたぞ。アイツの弾丸の正体は指で空気を弾いた指弾だ。一体どういう指の力してんだか知らねぇが、空気の弾丸って言うことなら潰し方も簡単だぜ。俺は魔力の衝撃変換をトンファーから放ち、真横にいた女を空中に叩き飛ばす。そして重力魔法を付与されたトンファーの鎖を伸ばして奴の左手を弾く。

 

───バキィッ!と、骨の折れる音が響き、何かが鈍い輝きを放ちながら宙を舞った。俺はそれをトンファーの鎖で絡め取り手中に収めた。それは何やら指輪のようだった。

 

「それを───」

 

返しなさい、とでも言いたかったのだろう。だが俺はそれを言い切られる前に指輪を宝物庫に仕舞った。そしてそこで時間は訪れた。キンジ達がNDDに向けて出発したのだ。

 

俺はボートがはるぎりの前方に飛び出た瞬間、はるぎりの甲板を蹴って空中に飛び出した。そこにあの空気を弾かれて生み出された知覚できない弾丸は、飛んで来なかった。

 

 

 

───────────────

 

 

 

俺は重力操作の魔法でボートに追いつき、そこに着地した。そこにはキンジと(いつの間にか戻っていたらしい)妖刕、何故か表情が消えている可夢偉、他には不知火と操縦手の武藤、それと俺の知らない短髪で背の高い女が1人。……コイツ、誰だよ。

 

という顔を俺がすればキンジは

 

「彼女は山根ひばり。俺専属の記者さ」

 

なんて答えやがった。まぁどうでもいいか

 

「そうけ。……キンジ専属ってこたぁここで見た俺のことは黙ってるってことか?」

 

NDDを無力化しつ捕まえる方法はある。だがそれには魔法とかアーティファクトを晒す必要がある。キンジや武藤、公安組に晒すのは仕方ないが一般人に見せるのは如何なものかと俺は山根ひばりと言うらしい美人記者を睨む。

 

「もし犯罪が行われるのなら見過ごせないわ」

 

「安心しろ、それは無い。今からやるのはテロを未然防ぐっていう武偵として……って言うか人として正しいと思う行動だ。ま、こちとら武偵なんで、慈善活動とは……いきませんがね」

 

後半は不知火に向けて。俺の言葉を受けて不知火は苦笑い。一体いくら請求されるんだろうって顔をしているよ。

 

「……あの女、何だかんだで追ってきたな」

 

はるぎりから離れたことで俺の聖痕は再び俺とセカイを繋いだ。それが分かっているからアイツもこっちを放置はできなかったのだろう。

 

「武藤、魚雷を追えるか?」

 

「あぁ。あの影だろ。問題ねぇ」

 

武藤がそう答えた瞬間、バシバシとこっちのボートの後ろや側面で海面が爆ぜた。どうやらあの空気の弾丸を撃ってきたらしい。片手でよくやるもんだ。俺は宝物庫から十字のビット兵器を2機呼び出す。そしてそれに装填された魔力の衝撃変換付きの炸裂弾をテロ女のボートの目の前と側面に叩き付け、ボートをひっくり返しつつ女を海に叩き落した。

 

「なっ……」

 

キンジ達があんぐりと口を空けている間に俺達のボートが魚雷に追いついた。

 

首相が乗っているというクルーザーまでの距離は1.2キロメートルだと妖刕が伝えてくる。問題無い。もうすぐ終わらせる。

 

俺は宝物庫から2枚の円月輪を取り出す。これはハルツィナの大迷宮でも使った、2枚で番になっていて空間魔法で真ん中の空洞が繋がっているやつだ。しかも今は円月輪の刃がそれぞれワイヤーで繋がれていて孔の大きさも広げられる。

 

更にそれを空中に浮遊させ待機させたまま俺は目の前で並走している魚雷に氷の元素魔法を掛ける。弾頭と推進部を凍結させ、即座に核兵器としての機能を奪う。そして全身を丸々凍結させた俺は円月輪の空間跳躍で海水ごと手元にNDDを呼び寄せた。

 

「っと……。ほい、NDD無力化アンド回収完了」

 

キンジ達は一斉にNDDから距離を取るようにボートの端に逃げたけどそれ意味ある?

 

「取り敢えずテロを防ぐって不知火からの依頼はこれで完了でいいかな?」

 

「う、うん……」

 

犯人は海の中だし多分生きてるけど。片手はしばらく使えないし手がかりになりそうな指輪は手に入れた。1番大事な核兵器による首相暗殺のテロを防いだのだから結果としては上々だろう。向こうも俺達には気付いていないっぽいし。

 

「さて不知火。そういや俺はお前とこの依頼に関する金額の相談がまだ出来てないよな?」

 

と、俺が不知火の肩に手を置きながらそう尋ねる。

 

「そう言えばそうだね。……強襲科のSランク武偵の強襲任務の相場は───」

 

そう続けようとした不知火を俺は手で制した。

 

「何かな?」

 

「1個聞きたいんだが、こういう核兵器って、処理するのに幾らくらい掛かるもんなの?」

 

という俺の質問に不知火は顔を真っ青にする。俺の言いたいことが分かったからだろう。

 

「先にそれを聞かせてくれよ」

 

「そう、だね……」

 

不知火はガックリと肩を下ろした。そんな不知火は初めて見たと俺とキンジ、武藤は思わず声を揃えて笑いあった。不知火だけは口から溜息を漏らしていたけれども。

 

 

 

───────────────

 

 

 

「なぁ天人……お前の道具と力なら伊藤マキリを捕まえられるんじゃないのか?」

 

と、ボートではるぎりに向かいながらキンジが問う。

 

「出来なくはない……けどな、あれだって無制限に使えるわけじゃないんだ」

 

伊藤マキリってのは多分あのテロ女のことだろう。確かにキンジの言うことも分かる。だが羅針盤も越境鍵も魔力の消費量は尋常じゃないのだ。特にもう俺達ははるぎりに近付いていて俺の聖痕は閉じられてしまっている。流石にまだ近くにいるだろうから聖痕のアシストが無くとも使えるだろうが……。

 

「こんなテロ、あいつ1人で起こせるとは流石に思えねぇ。仲間がいるはずだ。それに……」

 

と、俺は宝物庫から伊藤マキリから奪った指輪を取り出した。

 

「あんな飾りっけの無い奴がお洒落で指輪なんぞ付けるとは思えん。これを上手く使えば伊藤マキリとその裏の奴らまで引き出せるんじゃねぇのか?」

 

アイツ、これに執着する様子も見せていたしな。

 

「それは……」

 

不知火や可夢偉が俺の話を否定しないということはきっと俺の推理は当たっているのだろう。いくら伊藤マキリが圧倒的な戦闘力ではるぎりを1人で制圧できたとして、そこに乗り込むことや演習の正確な日時やスケジュールを把握するには誰かしらの手引きが必要になる。ここで伊藤マキリ1人を捕まえてもアイツが喋らなければそこで終わりだ。だがもしこの指輪がアイツらにとってそれなりに価値のある物なら、これを取り返しに奴らがまた出てくるかもしれない。そこを一網打尽にすればより大きな戦果となるのだ。

 

「ま、これはキンジにやるよ。俺ぁそーゆー取引とか駆け引きは苦手だからな」

 

と、俺は伊藤マキリが着けていた指輪をキンジに放る。その頃になってボートははるぎりの傍に寄せてあった不知火のクルーザーへと辿り着いた。念の為羅針盤を使うが伊藤マキリはどうやら徒歩とは思えないスピードでどこかへ行っているようだ。やはり仲間がいるのだろう。まぁ、壊したのは左手だけだからそこら辺の奴の車を奪って逃走という線も考えられるが……ここまで用意周到に計画を立てる奴がそんな証拠を残すような逃走の仕方をするとは思えない。

 

気配感知にもクルーザーの中には見知らぬ気配は感じられない。取り敢えず核攻撃による首相暗殺テロは一件落着……ってことかな。

 

 


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