うちの精霊が病み属性だった件について   作:ダメダメのライトニング

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この作品のプロローグがまるで終わらないので初投稿です。


レベル3

 彼と彼女が出会ったのは偶然という必然だった。

 

 彼は他人とは生まれが違いすぎた。一度死んで記憶を保ったまま生まれ変わるなど少なくとも科学の発展した近未来的世界に於いてはおかしな話だ。

 だからこそ、おかしな者が常人と違った能力を持っていることになんらおかしな事は無い。そして、おかしな人物がおかしな者を呼び寄せて、取り憑かれるのもまた当然と言えるのだ。

 

 

 

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 彼女は彼女自身を見ることが出来る人の存在をずっと待っていた。カードショップの隅のほうで、こじんまりと三角座りで待機している自身を拾ってくれる人を何年も待っていたのだ。寂しかったし、それなりに辛かった。他のカードが買われていく中で彼女一人だけが取り残されていく感覚。そんなどうしようも無い孤独感にたかが一精霊がどうして抗えようか。

 

 しかし、待ち人来らず。元より精霊を見る能力など稀有な物だ。ましてそれが科学が発展する反面、オカルトといったものを排斥する世の中であれば尚更だ。

 

 自分はこうして一人寂しく一生をカードショップの隅で終えるのだ……、と自嘲していた時に彼は現れた。彼は数あるカードの中でも的確に彼女の憑いているカードを選び購入した。そのスナイパー力はゴルゴ13にも劣らない。

 

 彼女は歓喜した。まさか、一生埃を被って生きていくだけだと思っていた自身を拾い上げてくれる人がいるとは思わなかったのだ。

 的確にスナイプした辺り精霊の見える人かもしれない。そう思って何度も彼にちょっかいを掛けてみたが一向に気付く気配も無し。

 

 それでも構わなかった。埃を被って死を待つだけだった運命を変えてくれた人、そんな人を精霊が見えないからといって失望したりするだろうか。いいや、しない(反語)

 欲を言えば彼女は彼とお喋りしたかったし、自分の姿も見て欲しかった。だが、長年の隅っこ暮らしで鍛えた力は伊達ではない。高望みなど最初からしていなかったし、今の状態でも満足していた。

 

 そんな彼と彼女の関係に転機が訪れる。彼が誘拐されたのだ。

 

 ひどい待遇を受ける彼を見て哀れに思った。何か自分が彼にしてやれることはないだろうか。そう考えた彼女は自身を見ることが出来る、精霊を扱う力がそれなりにある人を探すという僅かな可能性にかけて外に飛び立ったりもした。

 

 そんな努力も実らずただただ時間のみが過ぎてゆく。自身の無力さに何度歯痒い思いをしたか。少しでも彼の助けになりたいと思い、聞こえていないと知りつつも励ましの言葉を彼に何度もかけてみたりもした。

 

 

「貴様、見ているな!」

 

『それ、私のセリフなんだけど!』

 

 

 

 突然だった。突然、彼は精霊の存在を知覚する様になった。元々あった素質が過酷な状況で発現したのか、それとも何か別の要因か、真実は藪の中。そして知る必要もない。そんな事はどうでも良い事だから。

 大切なのは彼が精霊を認識したという事実だけ。彼女の願いが叶った瞬間であった。

 

 彼女は嬉しかった。今まで生きてきた中で一番かと思うほどに喜んだ。

 

 長らく感情を向けてきた相手にようやく存在を認識して貰えたのだ。嬉しくないはずがない。

 

 伝えたい思いは山ほどある。話したいことなど多すぎて数えきれない。

 

 逸る気持ちを抑えて彼に声をかける。今は自分の欲望を押し付けている場合では無い。この過酷な環境に放り込まれた彼を安心させてあげること、それこそが今此処にいる自身の役目なのだ。

 

『大丈夫、必ず助かるから。いいえ、それは違うの。私が必ず貴方を救ってみせるよ!』

 

 それから彼女は何度も外へと赴いた。自身の姿を見つけてくれる人を見つけるなど本当にごく僅かな可能性の話だろう。見つかる可能性など皆無と言っても良い。だが、それでもやめるという選択は有り得なかった。

 

 昼間は精霊を見ることのできる人を探して、夜は帰還して彼を安心させる。そんな生活を毎日行っていた。

 

 夜には彼と色々な話をした。

 

 彼のデッキ構築について話した。ガスタデッキを名乗るソレは闇鍋すぎてもはや何なのか分からないデッキだった。取り敢えず、彼女が彼に助言したことは創星神は抜いた方が良いと思うということだ。あと、自称ガスタデッキに極神を入れるという蛮行は全力で止めた。幻獣機も早急に外して欲しい。ギミック多すぎて何がなんだか分からないものになってるし。わかりやすく例えるなら、デュエルキング武藤遊戯デッキ並に色々なカードが入り混じっている。話を聞く限りなぁにこれ、としか言いようのない悍しいデッキだった。

 

 彼女の家族についても話した。彼がガスタや精霊について興味を持ってくれて嬉しかった。もし、可能ならば一緒に連れて行ってあげたいくらいだ。

 

 彼の家族の話も聞いた。彼の父親は酒とパチンコで残された財産を食い潰し、彼に対して酷い扱いをしているのだという。母親はそんな父親に愛想を尽かして出て行ったという。家に帰りたくない、そう呟く彼の姿は見るに耐えなかった。

 

 これからの話もした。ここを出たらどうするか。何がしたいか。毎日毎日そんな話に花を咲かせていた。あらゆることがモニターされていても構わない。どうせ、殆どの人は精霊の存在を知覚できないのだから。全部彼の独り言に見えるだろう。

 

 第三者視点からでは明らかに精神崩壊してるように見えるのは……、まぁ、うん。是非もないよね(目逸らし)。ほら、近くに廃人一歩手前の子もいるし……。全部リボさんの父上が悪いんだ! (当然の意見)

 

 絶賛監禁中の彼には申し訳ないと思いつつも、監視の目があるとはいえ、彼女は彼と毎日お話しできる日々を楽しく思っていた。

 

 ……いっそ、このままずっとこの生活が続けば良いと思うほどに。

 

 いつしか彼女は外に救援を出すことを止めていた。もし、本当に助けを呼べてしまえばこの生活は終わりを迎えてしまうからだ。救援を呼ばなくなったことで空いた時間は姿と気配を消して彼に寄り添う時間に充てることにした。

 

 監禁された部屋は彼と彼女だけで作られた世界。常に監視されているとはいえ、この空間には誰も入ってくることができない。もし、彼が解放されてしまえば、彼と彼女が2人きりで居られる時間は圧倒的に少なくなってしまう。

 そんなことは認められない。許したくない。

 

 ──彼は私を見つけてくれた唯一の人。

 

 ──私だけのものなんだ。他の誰にだって渡してなるものか。

 

 そんな思いに支配されるまでそう長くはかからなかった。

 

 しかし、そんな思いも虚しく彼らは救出されてしまった。彼女は彼に合わせて解放されたことを喜んでいる仕草をしながらも、内心では彼が救助されたことを全く喜べなかった。

 

 何とか上手く彼と自身を2人きりにできないだろうか。そんなふうに悩んでいると、ある日天啓を得たかの如く素晴らしい考えに辿り着いた。

 

 なんてことない。簡単なことだったのだ。これから先、彼に関わる人をひたすら遠ざけ続ければ容易く彼を手に入れられる。勿論、人だけに限定しない。今、まともに行動している彼の精霊は彼女だけだが、これから彼のもとに寄り付こうとする他のカードの精霊を遠ざけることも忘れてはならない。

 

 なので、手始めにまずは彼の家族から始末することにした。彼と家族の中ははっきりいって不仲だ。だが、家族という関係は想像以上に人を縛る楔となる。万が一にでも、そんなものに囚われるようなことがあってはならないのだ。

 そして何より、私の大事な人に散々虐待紛いのことをしてきた奴らを生かしておく必要性を何一つ感じなかった。大切な彼に絶望を植え付けたゴミを消し去って何が悪いというのだろうか。勢い余ってやり過ぎたかもしれないが、そんなものは誤差の範囲だ。大した問題じゃない。

 

 ……彼は優しい人だった。あんな家族ともいえない存在がいなくなったのだから喜んでも良いはずなのに、その死を悼む必要なんて。あいつらにそんな価値などありはしないのに。

 

 でも、それは彼女にとってそこまで悪い事じゃない。彼が弱っているならば寄り添ってあげるのが彼女の役割でもある。マッチポンプも良いところであるが、彼がそのことに気が付かなければ自作自演など無かった事と変わらない。

 

 彼女の励ましもあってか、彼は早くに悲しみから復帰することが出来た。彼から彼女へ向けての依存心も高まってきている。このままいけば共依存的に底無し沼へまっしぐら。

 

 ──彼も早く私の元へと堕ちてきて欲しいなぁ。

 

 ──私と彼の間に他者を割り込ませるつもりなど一切ないし、彼を私以外の誰にも触れさせるつもりはない。私は、私と彼と二人きりの世界を必ず構築するの。

 

 だからこそ、彼女はここで手を緩めずに次なる一手を打ち込む。

 

 施設に預けられた彼を孤独に追い込むなどカードの精霊である彼女にとっては容易いこと。

 人は周囲と違うものを排斥したがる傾向にある。それを利用してあげれば良いのだ。まぁ、排斥が起こるのはどこでも同じなんだけど。

 

 新参者の彼が施設に来て、その彼の周りで怪奇現象が起こるようになれば皆はどう思うだろうか。それは考えるまでもないことだ。少なくとも、ここで交友関係を築き上げるのは難しいだろう。そして、彼は彼女の望み通りにここでも一人になった。

 

 そうやって、孤立無援になった愛しい人に毎日毎日耳元で囁いてあげたのだ。

 

『誰にも理解されなくても大丈夫だよ。私は何があっても貴方のことを信じてあげる。私だけが貴方の味方なの』

 

 彼は拍子抜けするほど容易く堕ちた。それはある意味当然とも言える。幼い頃から真っ当な親の愛を受けられず、人付き合いも無い。そんな彼にはもう、誘拐された時からずっと支えてきた存在に縋り付く以外には選択肢は無いのだ。

 

 そこから先は、まさに天国とでもいうような生活が待っていた。

 

 彼は彼女だけを見て、彼女も彼だけを見続ける生活。どれほどの時間を費やそうが互いに飽きる事などあり得ない。それは彼女の理想の世界で、ようやく実現した本当に幸せな生活だった。

 

 だが、幸せな日々というのは往々にして長続きしないもの。少しの失敗で簡単に瓦解してしまう砂上の楼閣だ。失敗の理由は彼女の怠慢にあった。男友達くらいなら……、と許容してしまったことが問題だったのだ。

 

 学校での人付き合いを理由に、彼と彼女が2人きりでいる時間は大きく減ってしまった。

 

 常に隣にいるとはいえ、いや、違う。常に隣にいるからこそ彼が自身以外の人物に視線を向けて楽しそうにしているだけで孤独感と嫉妬心で狂いそうになる。

 

 彼女には彼が自身以外の何者かを目の中に入れていることが耐えられなかった。追い払っても、追い払っても彼の周りに人は集まってくる。キリがない。

 多分、これから彼女がどう行動しようとも、もう二度と彼の瞳は彼女だけを写すようにはなってくれないのだろう。そう結論づけるのに時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 ……一つだけ、彼女には彼を彼女しか見れないように目を奪う策の心当たりがあった。できればこの方法は使いたくなかったが、もう、他に方法が思いつかない。彼女は彼と離れてしまうことが、彼が彼女以外のものを見ていることが、どうしても耐えられない。

 

 彼は誘拐されていた時のように自身だけを見てくれない。彼女だけのものになってくれない。ならば、と彼女は覚悟を決める。今の彼女に躊躇いなど何一つない。

 

 彼女はその策が成功する様に入念な準備を重ねた。巫女としての力もフル活用して計画を補強していく。この作戦は一度きりしか使えない必殺の一撃。失敗することは許されない。そして何より、巫女巫女パワーで未来予知したところ、近い将来、天が味方してくれているとしか思えない出来事にも出会うことが出来ることがわかったのだ。

 

 だから、彼女は未来予知した日に彼をデートに誘った。彼とのデートは楽しかった。久しぶりに彼は彼女だけを見てくれた。少なくとも、このデートの間だけはかつてのように二人きりに戻れたかのように感じられた。

 

 ……彼が偶然出会った学校の友人と仲良さげに喋っているのを見るまでは。

 

 ──何故? なんで? どうして? なんで私だけを見てくれないの? どうして私とデートしてるのに違う奴と話をするの? 

 

 彼女は終始湧き上がる激情を抑え込むのに必死になっていた。だが、同時にその想いは今一歩踏み切れなかった背中を押すのには充分過ぎるものだった。

 

 学校の友人と別れた彼を未来予知した場所へと誘導する。こうすることで、都合良く、一人きりになった彼を発見した何者かが彼を殺そうとトラックを暴走させてくれる。彼女にはそれが何者かはわからない。彼女が世界で最も愛している彼を殺そうとするなんて本来なら万死に値する。けど、今回だけは許してあげるつもりでいた。何故なら、

 

 

 ──その殺意は私が利用してあげるから。

 

 

 

 ここから先は一瞬の勝負。トラックに今にも押し潰され様としている彼を突き飛ばし、同時に彼の持ち歩いていたデッキから《ガスタの巫女ウィンダ》のカードを奪い取る。一緒に何枚か抜き取れてしまったが、それは今回気にしない。それらの犠牲など彼を永遠に手に入れることに比べれば軽いものだ。コラテラルダメージというやつだ。そう、他のカードは犠牲になったのだ。犠牲の犠牲にな……。

 

 そして、すかさず抜き取ったカードをトラックが巻き起こした火災の中に放り込んだ。

 

 カードが燃えている。彼女を現世に繋ぎ止める楔が今にも消えようとしている。もし、完全に燃え尽きてしまえばカードの精霊である彼女という存在は消えて無くなってしまうだろう。

 けど、それで構わない。それこそが今回の事件の目的なのだから。

 

 

 

 

 

 ────彼の目を奪うこと。それが私のやりたいこと。どんなに仲が良くてもいずれは別れてしまう。それは定められた変えようのない運命。

 

 でも私はそんな運命が嫌だった。彼と離れるなんて認めたくなかった。いつか、彼が私以外の誰かに愛情を向けるなんて耐えられなかった。

 

 

 だから私は彼の目を『奪う』の。二度と、私以外の何者も彼の目に入らぬように。

 

 

 誰になんと言われても構わない。だって私には彼しかいないから。一生見つかるはずのなかった私を見つけてくれたのはあの人だけだから。

 

 

 だから私は、私自身を殺して彼にとっての永遠となる。

 

 

 燃えている私を発見した彼が、自分の火傷も省みずに必死の形相で炎の中に手を伸ばす。

 優しい彼はきっとそうするだろうと予想していたが、手遅れと理解しながら命をかけてでも助けようとしてくれる姿を目の前で見せられるとなんともいじらしく、カッコよく、可愛らしくて惚れ直してしまう。

 

 だが、彼をここで死なせてはならない。彼には生きていて貰わなければならないのだ。彼は生きて、苦しんで、既に居なくなっている私に囚われ続けなければならない。

 

 

 私は自身を省みずに伸ばされた彼の手を優しく振り払う。そしてしっかりと彼と目を合わせて、じっくりとその瞳に刻み込むように強く見つめる。

 

『ありがとう。でもわたしは良いから早くここから逃げて。……ずっと言えなかったけどここで言うね。あなたのこと、初めて見た時からずっと大好きだったの。だから…………』

 

 

 これは祈りだ。

 

 これは願いだ。

 

 これは呪いだ。

 

 

『わたしの事、絶対に忘れないでね……!』

 

 

 今、この瞬間は貴方の瞳と心に深く刻まれた。

 

 

 もう、貴方は、二度と私以外の誰もその瞳に写せない。

 

 

 貴方は、私しか見ちゃいけない。

 

 

 絶対に。

 

 

 約束だよ? 

 

 

 

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! 少し意識が飛んでた!」

 

 どうやら予想外の出来事に混乱して数秒間気絶していたらしい。

 

『どうしたの? 大丈夫?』

 

 俺を心配そうに見てくるロゼちゃん。……膝の上で。なんで座る場所数あれどもその場所を選んでしまったのか、小一時間ほど問い質したいところだ。

 

「あー、うん。そこ、座りにくいしお茶し辛いでしょ。別の場所に座った方が良いと思うんだけど」

 

『いや、ここで良い……、違うね。ここが良いんだよ』

 

 そう言うと、しだれ掛かるように俺の身体にもたれかかってきた。酔ってるのか。もしかして何処からか酒でも拾い飲みしたんじゃないだろうか、という疑念が俺の中で湧き上がる。

 

「そこら辺に落ちてる飲み物勝手に飲んじゃだめだよ」

 

『普通飲まないよ。私をなんだと思ってるの?』

 

 ネコ科の一種(即答)

 

 まぁ、冗談はさておき。このような状態は俺の精神衛生上に非常によろしくない。さっさと退いてもらおう。

 

「あー、うん。悪いけどちょっと退いてくれないかな? やり辛いし」

 

『……嫌だ。離れない』

 

 彼女はそう言うと、俺の身体にさらに力を込めてしがみ付く。コアラかな? 

 まさか断られるとは思ってもいなかった。今まで素直な良い子だっただけに唐突な反抗期に困惑を隠せない。何が彼女にここまでさせるのか。

 

 無理矢理退かしても良いが、そんなことをして今後の関係にひびが入っては堪らない。致し方ないが、暫くこれで我慢するとしよう。

 

 茶を飲み、菓子を頬張り一息をつく。……膝の上に銀髪軍服美少女精霊を乗せながら。……なんだこれ。なんの状況だこれ。先程まではリラックスのリの字も出来ないような精神状態に陥りかけていたが、一周回ってなんか大丈夫な気がしてきた。

 

 なんの気なしに彼女の髪を撫でてみる。予想通りサラサラした質感だ。

 

「……」

 

『え? 何? どうしたの?』

 

 訝しげに質問する彼女を無視して今度は彼女の髪を手で軽く梳いてみる。特にこの行為に意味はない。なんとなく暇だからやった。割と後悔している。

 

『ねぇ、ちょっと、何とか言って欲しいんだけど⁉︎急に怖いよ⁉︎』

 

 混乱する彼女を放置して今度はその頬を軽く突っついてみる。プニプニしていて気持ち良い。驚くべきもち肌……! その柔らかさは餅カエルを連想させる。触ったことないけど。

 

『ええ? ホントに何してるの?』

 

 引っ張ればかなり伸びるんじゃないだろうか。そのことを検証すべく俺は彼女の頬を横に出来る限り伸ばしてみる。すると、予想通りに物凄く伸びた。めっちゃ伸びた。おかげで普段のクール可愛い系ロゼちゃんの顔は面白いことになっている。

 

「あっはっはっ!」

 

『しょんにゃにたにょしいにょ?』

 

 何かモゴモゴ言ってる。面白くて可愛い。あんまり引っ張りすぎて、頬が取れたら(⁉︎)かわいそうだし今日はこの辺にしておいてやる(捨て台詞)

 俺は彼女の頬から手を離し、残された紅茶を飲み干して席を立つ。先程までのやり取りのおかげで座る場所の問題はうやむやに出来たようだ。

 

「俺はこの辺にして映画でも見ようかなと思ってるけど、ロゼちゃんはどうする?」

 

 引っ張られた影響で赤くなった頬をさすりながら、彼女は上目遣いで此方を見上げる。

 

『じゃあ、そうだね。お言葉に甘えて私も一緒に見ようかな』

 

「何かリクエストはある?」

 

 今、家にはそれなりの数の映画が置かれていたはず。適度に更新していたので大体のジャンルのリクエストなら応えられると思うが……。

 

『うーん、そうだね。《俺とお前で超融合! 異世界の中心で痛み、苦しみ、愛を叫ぶ〜お前にモアイを与えてやろう〜》が観たい気分かな』

 

「酷すぎるタイトルェ……。分かった。じゃあ、それにしようか」

 

 俺の勘違いでなければその映画は恋愛物だった筈だ。確か、少し前に話題になっていたような気がする。

 ストーリーは、確か、理不尽な運命で生き別れた幼馴染みの男女が異世界で再開し、主人公を狙う脇役達に妨害されながらも互いに愛を確かめ合い最終的に結ばれる話だったと記憶している。詳しくは知らないけど。何かどっかで聞いたような話だな。

 あと、本当にタイトルが酷い。方々に喧嘩売ってるだろこれ。監督誰だよ? ヘルヨハン・ヤンデルセン? 納得だわ。

 

 彼女達の普段の態度から察するに、映画を見て良い雰囲気にするという作戦であることは杞憂ではないはず。けど、この映画で良い雰囲気には出来んだろ……(慢心)まぁ、別にどうでも良いし普通に映画を楽しもう。

 

「んじゃ、ちょっと探してくるね」

 

 それだけ言い残して、俺はリビングへと足を進めた。

 

 

 ★★★★★★★★★★★★★★

 

 リビングへと映画を探しに行った彼を見送ると、ロゼは深く溜息をついた。

 

『また私を見てくれなかったな……』

 

 髪や、頬を弄っている時もマスターの目はロゼを一切写していなかった。視界にはしっかりと入っていたし、注意も間違いなく彼女に向いていた。彼女自身がそうなるように積極的なスキンシップを取ったのだ。まぁ、マスターと触れ合えるという実益も兼ねていたことは否定できないが。

 

 にも関わらず、此処までしても彼は彼女を見てくれることはなかった。確かに視界には入っているし、焦点もロゼに合っているのだ。けど、彼の瞳は何があろうとも過去のあの一点しか見つめていない。どれほど彼に近づいても、そのような遠くへ向けられる瞳をしていた。

 

 分かりやすく言うなら、彼女はただ彼の視界に写っているだけの存在に過ぎなくて、その意識の大半は常にあの事件の情景で固定されているという事だ。

 

 

(私はこんなにもマスターのことを思っているのに……)

 

 

 けど、それは別に良いのだ。彼女にとってそんなことはさほど重要では無い。もちろん、ロゼは自身に愛を向けてくれるならそれ以上に喜ばしいことはない。

 

 だが、彼女は誓ったのだ。何があろうとも、どんな事があろうとも、必ず愛するマスターを守ってみせると。

 

 彼が自身を愛してくれなくても構わない。その眼に私以外の誰かがいても構わない。だけど、決して見捨てないで欲しい。

 

 最後までマスターの側に居させて欲しい。その願いは間違いなく彼女の本心。けど、それではダメなのだ。それじゃまだ愛しい人の隣に立ち続けるには足りてない。

 

 今、マスターは手の上にいる。であるならば正しい答えは……、

 

 

 もう絶対に離さない、だ。

 

 

 

 

 マスターの休日はまだ続く。

 




主人公くん
お前の周りの精霊や人間って醜くないか(哀れみ)?

ウィンダ(享年?歳)
誰だ聖人枠って言った奴!根は優しい子だから……(震え声)

ロゼちゃん
積極的にアプローチするけれども目潰しされてるから意味がない!だから絶対、勝つ為に最後の秘策は必ず取っておく。

デュエルで使用したカード説明について

  • 作中で全部書け
  • カード名、攻撃力、守備力、のみで良い
  • あえて何も書かなくて良い
  • 原作リスペクト(勝手に生える効果説明)
  • 我が書き換えたのだ
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