暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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今回は、次回への繋ぎ見たいなものです。


第8話

 

 

 

日本へ帰国した時の流れを少しだけ。

まず輸送船団を豊後水道、瀬戸内海へ。先導には第3護衛艦隊が務めて無事送り届けた。

 

それから我々護衛艦隊が続いた。

艦は呉鎮守府正面海域や柱島泊地の各艦に割り当てられた投錨地にそれぞれ停泊。母艦航空隊は岩国飛行場へ。

 

そして休暇……とはならない。

すぐさま機関や各銃座の点検や必要であれば部品交換を行った。

 

夜戦において被弾した鈴谷は念の為にドックへ入れ精密検査を実施。

結果、どこにも異常は見られなかった。念の為に損傷した機銃座を取り換えたぐらいで5日ほどで鈴谷を含む全艦は一連の作業を終えた。

 

 

輸送した各種資源は以下の通り。

石油18隻分540000トン

ボーキサイト輸送船9隻分計16000トン

クロム、ニッケル等7隻分計14000トン

 

これだけの量の資源を運んできたとしても燃料は陸海の航空隊、艦艇分を考えれば備蓄に回せる量はそこまでではない。

 

更にボーキサイトなどの航空機生産必需資源は全国中に存在する航空隊へ行き渡らせ、損失した機体の補充を考えると足りず。

そもそも機体を作るための工場が限られているのだから一気に作れるわけじゃない。

 

それらの資源は瀬戸内海各地の精製所に送られた。

石油であれば天然ガス、ナフサ(ガソリン)灯油、軽油、重油、潤滑油、アスファルトなどに分けることが出来る。

 

ただしこれらは民間の需要を満たすには程遠く、精々が天然ガスと灯油が発電用や暖房用に向けられるぐらいか。

 

軽油は航空機の燃料に使われ、重油は艦艇の燃料、アスファルトは飛行場の滑走路修理に。上げればキリが無い。

 

しょうがないと言えばしょうがないが、民間への恩恵は今の所少ない。殆どないと言っていいだろう。だがそうでもしないと本当にどうしようもないほど追い込まれているのだ。

 

 

 

 

艦の各種点検や修理等が行われているその間、俺は報告書類の作成に追われようやく終わったと思いきや栃木山中の軍令部に呼び出された。

そこで待っていたのは勲章が2つ。

 

まぁ市木大将達から裏でこっそり教えて貰ったのだが、どうにも深海棲艦と戦争をして行く上で、所謂プロパガンダというやつだ。

 

ここで絡んでくるのが軍以外の人間達なのだが、先ず言っておくと今現在この国に内閣総理大臣と言う役職や、各省庁の大臣や長官、政治家と言うものは存在しない。何故かというと深海棲艦はこちらの指揮系統を完全にズタズタにするために彼らを真っ先に消しに掛かった。

更に言えばその後に後釜として据えられた人間が、次々に空爆などで死んでいった為に、5人目の奴がまさかの国外逃亡をするという暴挙に出たのだ。

 

まぁ結果としては失敗して深海棲艦の戦闘機に撃墜されたのだが。

 

そして俺をプロパガンダとして持ち上げる事を一番最初に提案したのがまさかの天皇陛下。困窮し、希望を見いだせない国民の為に、と言われてしまい流石の市木大将も断れず。

そして天皇陛下の提案に乗っかったのが周りの人間だ。

 

軍としてはその存在を秘匿し安全を確保しておきたかったのだが天皇陛下を始めとして多くの人間にに頭を下げられてまで断ることは出来なかった。

 

まぁしかし、流石に今すぐに、と言う訳ではない。

こちらの戦力が整い、万が一深海棲艦が俺を消すために戦力を向けてきたとしても対応出来るようになるまではどうか待って欲しいと、なんとかしてその条件を飲んでもらった。

 

軍全体には噂として出回ってしまっているがそれに関しては市木大将からの直接的な命令と言う形で箝口令が敷かれているために絶対ではないが暫くの間は安心できるだろう。

 

勲章の授与式、といっても市木大将以下、西村中将、黒川中将、中代中将、広野中将の5人だけの小さなものだったが。それでも5人は形式的な物が終わった後にそれとは別に、何と言えばいいのだろうか、こう、別で祝ってくれた。

 

5人から、

 

「本当は5人別々で祝いの品を送りたかったんだが、物が無くてな……5人纏めて送ってしまう事になって申し訳ないが、良かったら受け取ってくれ」

 

そう言って万年筆とそれに使うためのインク、書類等に押す為の印鑑を頂いた。

今までは印鑑が無かったから書類に直接サインしていた。しかも筆で書いていたからこれは有難い。

慣れればどうってことは無いが、やはりグシャっとしてしまう。

 

まぁ市木大将達はそれのおかげで直ぐに俺から送られてきた書類だと判別がついていたと笑っていた。少しばかり恥ずかしかった。

 

 

授与式が終わり、時間も無いからと言う事ですぐに、これからの方針をどうするかの会議が行われたが、現時点での積極的攻勢は不可能であると判断しこのまま資源備蓄に努める事とした。

 

結果、2週間後にもう一度大規模輸送作戦を実施することが決定。

同じくパレンバンへ輸送船団を率いて出撃することとなった。

 

 

 

作戦参加戦力は輸送船団に限りタンカー18隻(その内2隻はドラム缶輸送)輸送船16隻が指定された。

 

それ以外の護衛艦隊に関して。

 

第1護衛艦隊 

 

航空母艦1隻 飛龍(旗艦) 搭載機 烈風37機、流星20機、彩雲9機。計66機。

重巡洋艦1隻 摩耶

軽巡洋艦1隻 能代

駆逐艦5隻 秋月、照月、宵月、満月、花月

 

 

 

 

第2護衛艦隊 

 

航空母艦1隻 蒼龍(旗艦) 搭載機 烈風36機、流星20機、彩雲9機。計65機。

重巡洋艦1隻 那智

軽巡洋艦1隻 矢矧

駆逐艦5隻 涼月、初月、若月、霜月、春月

 

 

 

 

第1、第2護衛艦隊の編成はそのままに。

第3護衛艦隊には瑞鶴を新たに編成。そして増派輸送船団護衛艦隊を第4護衛艦隊として編成。

 

 

 

 

第3護衛艦隊

 

航空母艦1隻 瑞鶴 搭載機 烈風 24機 流星38機 彩雲12機 計74機

重巡洋艦1隻 鈴谷

軽巡洋艦1隻 神通

駆逐艦5隻 陽炎、雪風、浦風、萩風、村雨

 

 

 

 

第4護衛艦隊

 

重巡洋艦1隻 愛宕

軽巡洋艦1隻 龍田

駆逐艦5隻 村雨、時雨、響、朧、初雪、浦波

 

 

 

タンカー 18隻(その内2隻はドラム缶輸送)

輸送船 16隻

 

輸送船団計34隻

 

4個護衛艦隊 計31隻

 

総勢 65隻

 

以上のようになった。

 

今までにない大艦隊となったが実際の戦闘能力は輸送船団の護衛という足枷を嵌められているので大きく減衰している。

 

 

 

飛龍、蒼龍の先の敵艦隊攻撃の際に失った2機の流星と、更に追加で4機ずつ配属され、搭乗員は補充された。

瑞鶴に関してだが、艦載機と搭乗員は、実は搭乗員のみならば確保されていた。

ただ艦載機である烈風の製造が間に合わなかったこと、燃料が無く空母を動かせなかったことで一度目の大規模輸送作戦には参加が見送られた。

その間、出来る訓練と言えば飛行場から離陸しての戦闘訓練だけだ。勿論空母を動かせないのでその間に発着艦訓練は行えない。

一応、飛行場に飛行甲板を模した設備を設けて訓練をしていたが、動くことのない陸の飛行場の模擬設備と実際に洋上を進む、波の影響を多少なりとも受ける本物の飛行甲板ではまるっきり、完全に別物だ。

 

搭乗員の練度はそれなりだが空母への発着艦と言う観点から見ると不安が残る。一度、瑞鶴に乗艦し訓練を見てみたが確かに艦の運用と言う面から見れば熟練達が揃っていて飛龍や蒼龍に負けない程に安心が出来る。

だがやはり艦載機の発着艦訓練ともなるとかなりヒヤッとした。

 

着艦する際に侵入角度を失敗して飛行甲板で一度跳ねてしまったり。

アレスティング・フックを着艦制動装置、簡単に言えばアレスティング・フックを引っ掛ける為のワイヤーである。それを引っ掛けられずに、咄嗟に飛び立たなければ危うく艦首飛行甲板から海へ落っこちる所だった。

 

それだけではなく着艦した際に艦橋に危うく接触事故を起こしかけたりとまぁなんとも新兵の様な有様だった。

 

まぁ仕方が無いと言えばそうなのだ。

今回瑞鶴の艦載機を操る搭乗員達は皆、腕は立つが空母に乗ったことが無いというのだから。まぁ今時343空の様にエース・パイロットで固められた母艦航空隊が希少なのだ。

 

取り敢えず瑞鶴艦載機隊には出撃までひたすら発着艦訓練を反復訓練をさせる事にし、そう命令も出した。いくら腕が立つとはいっても空母で運用出来ないのであれば意味が無い。

 

 

 

 

そして迎えた第2次大規模輸送作戦は、輸送任務を中止し新たに偵察任務を与えられた潜水艦隊の情報の下、損害どころか敵艦隊を発見することも、敵艦隊との戦闘すら発生せず終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして第2次輸送作戦から2週間後。

軍令部から第3次大規模輸送作戦を発令、出撃準備に移っていた。

 

 

 

しかしそこで大きな問題が発生した。

 

『我伊403。敵ノ有力ナル艦隊、マラッカ海峡ヲ通過ス。夜間ノ為詳細ハ確認出来ズ。コレヨリ追跡ニ移ル。1959』

 

『我伊19。敵艦隊スマトラ島ジャワ島間ヲ通過ス。詳細不明。コレヨリ追跡ニ移ル。2042』

 

敵の艦隊がパレンバン周辺に存在するとの情報が入った。

更に翌日、続けて入ってきたのはその詳細な戦力を知らせる電文だった。

 

『我伊403。敵艦隊ハ空母ヲ級2、軽空母ヌ級1、随伴艦24ヲ伴ウ。0936』

 

『我伊19。敵艦隊ハ戦艦ル級2、重巡リ級3、随伴艦12ヲ伴ウ。1252』

 

この報告に、俺達は恐らく欧州に向かったのであろう大艦隊から戦力を抽出し我々の輸送船団撃滅を狙ったものだと思われる。

 

 

まず伊403が発見した、マラッカ海峡を通過した敵艦隊は、空母機動部隊として航空戦力からの輸送船団撃滅を。

 

伊19が発見したスマトラ島ジャワ島間を通過した艦隊は戦艦打撃艦隊だ。

 

まぁ何故二手に分けたのかと言う疑問は恐らくマラッカ海峡を通過する時間を短縮する為だと思われる。

あの海峡は以前話した通り水深が浅く座礁の危険性が高い。だから航行速度も遅くなる。だからだろう。

 

 

 

 

まぁそんなことはどうでもいい。

大規模輸送作戦を実行するかどうか、と言う事の方が重要だ。

 

俺は市木大将達と話し合った。

そして結論から言えば、実行することになった。

 

 

理由としては、先ず敵戦力の少なさが挙げられる。

というのも欧州方面へ行った艦隊を主力と仮定すると、その主力が居ない今こそが好機なのだ。

向こうには空母だけでも40はくだらない。

 

それらを相手にするよりかは、現状空母3隻、戦艦2隻の方が絶対的に相手取るのは楽なのだ。

だからこそ、まだ可能性がありその敵艦隊を撃滅し輸送船団を送り届けるのだ。

 

だが俺を含めて市木大将達6人は満場一致で大規模輸送作戦は今回、もしくは次回で最後となると結論付けた。

それを超えると欧州方面から戻った敵主力が戻り、再び大規模輸送を実施するには沖縄などの南西諸島から南方方面にかけて奪還作戦を実施し奪還した上でその2つの海域を維持しなければならない。

 

となると現有戦力では奪還は可能であっても維持は困難、と言うのが現実だ。

南西諸島ならば奪還は出来るだろうが、「維持は可能か?」と聞かれると首を縦に振る事は出来ない。

 

まぁその辺の話は追々解決していくので置いておいて。

 

 

第3次大規模輸送作戦の参加戦力は以下の通り。

 

 

 

第1機動艦隊

 

航空母艦3隻 

 

第1航空戦隊

飛龍(旗艦) 搭載機 烈風37機、流星20機、彩雲9機。計66機。 

蒼龍 搭載機 烈風36機、流星20機、彩雲9機。計65機。

瑞鶴 搭載機 烈風 24機 流星38機 彩雲12機 計74機。 

 

艦載機数 計205機   

 

重巡洋艦2隻 

摩耶

那智

 

軽巡洋艦2隻 

能代     

矢矧

 

駆逐艦10隻 

秋月、照月、宵月、満月、花月、涼月、初月、若月、霜月、春月

 

 

 

 

第1戦隊

 

戦艦2隻 

金剛     

霧島

 

重巡洋艦2隻 

鈴谷 古鷹

 

軽巡洋艦1隻 

神通

 

駆逐艦5隻 

陽炎、雪風、浦風、萩風、村雨

 

 

 

 

先ずは、飛龍、蒼龍、瑞鶴を基幹とする空母打撃艦隊である第1機動艦隊を編成。

この艦隊は敵空母艦隊を相手取るための編成だ。といっても航行中は輸送船団の護衛も同時に務める。

ただ敵艦隊を発見した場合は輸送船団防衛の観点から先行して敵空母に対し攻撃を行う。

 

 

そして第1戦隊は敵戦艦部隊と夜戦などになった場合、その実力を発揮してもらう事になっている。

本来ならば霧島の代わりに長門が編成されていたはずなのだが長門は今現在、なんとも間が悪い事に機関部の故障により修理中なのだ。

 

というのも1週間前に久々に出撃すると言う事で各部の点検を行うために瀬戸内海を航行していたのだが、その最中に全速力を出した。すると機関4基4軸の内の1つから、低圧反動型タービンと減速ギアボックスに異常が見つかったのだ。

 

当初、停泊時の点検中には見つからなかったのだが、全速力を出したところタービン翼と減速ギアに亀裂が入った。

 

原因は材料不足故に品質の低下したものを使用したことによるものと、整備はしていたが部品交換が出来ずにいたことによる経年劣化だった。

 

調査の結果、艦後部の第3、第4砲塔を撤去し、後部甲板を全て引き剥がして機関そのものを取り換えなければならなくなった。

しかもその亀裂が入った機関以外の3つの内1つからも同様の故障の可能性があるとしてそれも取り換える事に。最短でも1か月は掛かるであろう大修理だ。

 

金剛、霧島に関しては、全速力を行っても問題無かった。

そう言う訳で急遽、霧島を編入した。

 

長門と、艦長以下乗組員達は余りにも悔しくてしょうがなかったのか大泣きし、長門に至っては機関を2つ使えない状態でも出撃させろとプレハブ執務室に殴りこんできた。

 

挙句の果てには艦長が腹を切ろうとするわ、部品を製造していた妖精達も同じように、自身の仕事にプライドを持ってやっていたからかその衝撃は大きく、

 

「こんな大作戦を前に我々が作った物が原因で戦艦長門が出撃出来ないとは!死んで詫びるしかない!」

 

と集団自殺を図ったりと、もう大騒ぎとなった。

更に事を収めるのに丸々2日掛かった。

俺が直接彼らを説得して周り、最後の最後は市木大将達にもお願いをしてどうにか説得してもらった。

 

事実、彼らの部品を作る腕は確かで一級品だ。

今回の事故は材料、材質不足から起きた不慮の事故、として片付けられた。

その後は高品質部品を作るために、しっかりとした質、量の材料を確保することでしか解決は出来ない。

 

そこで浮き彫りになったこの艦艇用部品の品質低下問題を解決するために今回は輸送船にそれらの材料となる資源を輸送することも求められた。

 

なので今回は航空機生産に必要なボーキサイトの量を抑える事になった。2回の大規模輸送作戦によってボーキサイトに関しては短期的に見れば余裕があるからだ。

 

 

かなり話がずれてしまった。艦隊の編成の話に戻ろう。

 

 

 

 

第1護衛艦隊

 

航空母艦

隼鷹(旗艦) 搭載機 烈風 28機 流星24機 彩雲8機 計60機

 

重巡洋艦1隻 

愛宕

 

軽巡洋艦1隻 

龍田

 

駆逐艦5隻 

時雨、響、朧、初雪、浦波

 

 

 

輸送船団には隼鷹を旗艦とした8隻の護衛艦隊を付ける。

まぁ第1機動艦隊と第1戦隊も敵艦隊を発見するまでは護衛に就くのでそれまでは問題無いだろう。

 

タンカー 25隻(その内9隻はドラム缶輸送、その内6隻は補給用)

輸送船 16隻

 

輸送船団 計41隻

 

第1機動艦隊、第1戦隊、第1護衛艦隊 計32隻

 

総勢73隻を数える大艦隊だ。

 

 

 

消費燃料は補給用燃料も含めると軽く10万トンを超える。

だが2回の大規模輸送作戦で108万トンを入手。10分の1を消費するがまぁ致し方無い。

まぁこの作戦を成功させれば75万トンの石油を確保出来る。

 

 

見返りを考えれば、実施するに値する。

そして多くの期待と共に発動された第3次大規模輸送作戦。

 

 

 

 

 

 

 

それは、今までで1番に苛烈で過酷な物となる事を俺はまだ知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 







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