暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第10話

 

 

 

敵攻撃隊が艦隊の上空を飛び去ってから、迎撃隊と空中退避させていた流星を瑞鶴、蒼龍に収容をした。

 

飛龍の損傷個所の修理はそれぞれの妖精達のおかげで30分に短縮するようにと言ったところ、見事に30分に短縮して見せた。

そして艦載機を収容後、損傷機の修理などを進める。

 

「提督、出撃に耐えうる機体は烈風80機、流星61機です。空中退避させた流星は全機無事でした。ですが迎撃に加えた流星30機の内、撃墜されたのが7機。損傷が酷く出撃出来ない機体が5機です」

 

「そうか。直ぐに攻撃準備を始めろ。修理出来る機体はしっかりと修理して送り出すように」

 

「既に修理は終わっており、魚雷などを装着するとなるとあと30分程で完了する見込みです」

 

「そうか……それで、撃墜された機体の搭乗員達はどうなっている?」

 

「既に彩雲を発艦させ空中で誘導、救助を近海を航行していた潜水艦伊405に担当させています」

 

「それならいいが……」

 

搭乗員の救助は、問題無く行われているようだ。

その後、攻撃隊の戦力をどうするか話し合った。

 

結果、攻撃参加兵力は以下の通り。

 

飛龍 烈風24機 流星17機(爆装7機 雷装10機)

 

蒼龍 烈風24機 流星16機(爆装6機 雷装10機)

 

瑞鶴 烈風12機 流星27機(爆装13機 雷装14機)

 

 

烈風60機 

爆装流星22機 

雷装流星38機

 

合計120機の攻撃兵力だ。

艦隊の防空には飛龍7機、蒼龍7機、瑞鶴6機の計20機の烈風を残しておく。

正直、敵の急降下爆撃機や雷撃機は殆ど落としたし、何より電探に敵の第2波攻撃隊を捉えていない事と、敵艦隊監視任務に就いている伊403からの通報も無い。恐らくまた攻撃を受ける心配は無いと思われる。

 

本来なら敵艦隊を攻撃するのに、攻撃隊を二つに分けても良かったのだがこれ以上後に放つとなると帰投時間が夜間になってしまう。

だから一回限りの全力攻撃と言う訳だ。正直、空母3隻だけを狙うならば61機の流星でも事足りるが、戦艦2隻も含まれているとなると不安が残る。

 

今回は22機の急降下爆撃を担当する流星に、38機の雷撃を担当する流星だ。

 

この数なら空母を撃沈出来る可能性は十分にあるがそこに戦艦も加えるとなると厳しい。

というのもこの航空戦の後に予想されるのが夜間の戦艦同士の殴り合いだからだ。

 

金剛と霧島に不満がある訳じゃないが、敵のル級は40cmの主砲だ。

大してこっちは35.6cm砲と戦艦同士で殴り合いをするには威力が十分ではない。だからこそ仕留められなくとも少しばかりは敵戦艦に損傷を与えておかなければならないのだが……

 

「提督、これだけの流星の数となると空母を仕留めるのに精一杯です。戦艦までどうにかするとなると攻撃兵力が圧倒的に足りません。せめてあと20機いれば何とか打撃を与えられるとは思うのですが……」

 

「ここに来て迎撃に上げたときの代償が来たか……」

 

「ですがあれが無ければ実際に我が飛龍の損害だけでなく蒼龍や瑞鶴までもが被弾を免れない状況になっていたと思われます。鈴谷だけでなく金剛も被雷していたかと。今は限られたこの兵力で敵に最大限出血を強要させる手段を考えなければ……」

 

迎撃に参加させた流星の力が無ければ実際に参謀長が言った通り今以上の被害が出ていただろう。

金剛の被雷も確かに有り得た事だ。

被雷をすれば当然、浸水によって速力は落ちるし戦闘行動に支障が出る。それがまだ浸水によって物だけならばいい。最悪、機関部に浸水を起こして使えなくなる。

もっと酷いと、機関部の高熱によって流入した海水が水蒸気爆発を起こす事も有り得る。如何な戦艦と言えどもそうなってはどうしようもない。曳航して本土に連れ帰る事も出来ず、貴重な戦艦と言う戦力を無駄に消耗するだけだ。

 

そうなれば敵戦艦を夜戦にて撃滅すると言う事も出来なくなる。

 

だが、差し迫った問題としてそれ以上に深刻な問題があるのだ。

まず説明すると、深海棲艦の対空砲火は我々の比ではない程に濃密で苛烈だ。

我が艦隊をネズミだとするならば奴らはハリネズミだ。しかも発射速度が速く弾幕の形成も容易。単艦だけでも我々の数隻分に匹敵するのではないかと感じるぐらいだ。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、とはよく言ったものだ。

 

その撃ち出される砲弾や機銃弾の数は命中率を補って余りあるものだ。

しかもそれは戦艦にもなると筆舌に尽くしがたい程までになるからどうしようも無い。空母ですらそうなのだから戦艦は針山地獄の様な有様だろう。

 

それを何とかしないと空母に雷撃をすることは難しい。

同じことを艦長が口に出す。

 

「ル級の対空砲火は激しいからな。せめてそれらを沈黙させないと空母へ雷撃をするのも難しいだろう」

 

「それならばル級には4機ずつ急降下爆撃を仕掛ければ良い。50番(500kg爆弾)は以前までの25番(250kg爆弾)より破壊力も大きい。艦上の対空機銃を薙ぎ払う事ぐらいならば問題無く行える」

 

艦長の言葉に対して、参謀長がそう答えた。

確かにその通りだ。だが、4機で何とかなる物だろうか。

夜戦が発生する事を仮定するとすれば、出来るだけ金剛と霧島の負担を減らしておいてやりたい。

 

「こうなっては、潜水艦隊に雷撃を命じるか?空襲直後や最中ならば魚雷を命中させることも難しくは無いだろう。第1潜水艦隊に集合を命じて一気に叩けばそれなりに被害を出させる事も出来るだろう」

 

「確かにそれは有効な手ではあるでしょう。ですが先の事を考えると、以降の活動に支障が出てしまうかと……」

 

「む……そう言えばそうだったか。やはり急降下爆撃隊から何機か選抜して叩くしかないか……」

 

「現状、それが唯一の手立てかと」

 

結局、急降下爆撃隊から数機ずつ戦艦に対して攻撃に向かわせると言う事で決定した。

まぁ仕方が無いと言えば仕方が無いのだろう。

 

夜戦に置いては金剛達に負担を強いる事になってしまうが何とかして貰うしかない。

 

「提督、発艦準備完了しました」

 

「良し、分かった。艦首風上に立て」

 

俺の声によって艦隊が艦首を風上に向けてを航行し始める。

今日は以前よりも風が多少強いからゴウゴウと音を立てて風が吹いている。

 

「艦首、風上に立てました」

 

「攻撃隊発艦始め」

 

「了解。攻撃隊発艦始め!」

 

その号令が掛かったと同時に旗が振られ、戦闘の原田大佐機が飛行甲板を駆け出す。

 

「総員帽振れー!」

 

飛行甲板の待避所にいる整備員や機銃、対空砲の要員達が帽子を振り回す。

興奮したのか大声で叫んで帽子だけじゃなくもう片方の手も何も持っていないのにブンブンと振り回している。

 

俺も制帽を振り、それが終わってからは敬礼をする。俺の敬礼に対して搭乗員達は敬礼を返してくる。

 

心の中で、皆の武運長久と無事に帰ってこれるように、と祈った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 山田 ----

 

 

 

 

 

攻撃隊の総隊長として飛行甲板を飛び立ってから暫く。

指示された海域に進む。今日も相変わらず雲は無く、俺達は必死に命懸けで戦っていると言うのにそれを関係が無いと言わんばかりだ。腹が立つほどに何処までも青空が広がっている。

 

攻撃隊は4500m上空を編隊を組んで飛び進んでいく。

全機に警戒を厳となせ、と送っているからしきりにきょろきょろと周りを見ている。

 

そろそろ敵戦闘機の迎撃を受けても良いのではないかという頃合いだ。

そう思って周囲を警戒していると、進行方向から左上方にこちらに向かってくる黒い点々。

 

すぐさま悟った。

あれは迎撃に出てきた敵の戦闘機だ、と。

だが思ったよりも数が少ない。双眼鏡を覗いてみたが30機居るか?と言うぐらいだ。

 

そこで俺は攻撃隊に随伴している烈風戦闘機隊の内、蒼龍戦闘機隊を向かわせた。

数では多少劣るかもしれないがそれを覆すだけの練度がある。正直先程の迎撃戦で分かったが数は多いが練度はそこまでではない。

 

そう思って蒼龍戦闘機隊を向かわせたがその予想は的中。

瞬く間に落ちていく機体が出る。今の所落ちていく機体の全てが敵の戦闘機であるF4UやF6Fの様だ。

 

暫くすると敵の迎撃戦闘機は半分近くを落とされてから遁走。

煙を吐いていたりふらふらと覚束ない足取りで飛んでいる機体もいるから撃墜数は更に伸びるかもしれない。

 

そして、正面に再び黒い点々が見えてきた。

今回は先程よりも機数が多く、40機は居るだろうか?

 

俺は飛龍戦闘機隊と瑞鶴戦闘機隊を向かわせた。

すると瞬く間に敵戦闘機のその殆どが空戦に巻き込まれ俺達流星に手出しが出来なくなった。

 

だが敵も意地があるのか烈風を振り切って3機がこちらに突っ込んでくる。

即座に蒼龍隊に命じて4機を向かわせて迎え撃つがそれを完全に素通りし尚もこちらに向かってくる。

 

すると遂に一番前を飛んでいた流星に敵戦闘機の火箭が伸びていく。

敵戦闘機に流星を落とさせまい、と編隊を直掩していた残りの烈風が銃弾を撃つが中々当たらない。

 

そして遂に敵戦闘機の銃弾が2機の流星を捉えた。

こちらの20mm機銃よりも細いが一機毎に撃ち出されるその数はこちらよりもずっと多い。

 

狙われた流星3機の内、被弾して瞬く間に2機が火を噴いて落ちていった。出来れば脱出する事を願うがあの様子じゃ無理そうだ。

 

あれは……蒼龍隊の奴らか。

 

落ちていった流星の所属を確認すると蒼龍隊の奴らだ。

すまない、ここで振り返る暇は無いんだ。あとで手を合わせるから許してくれ。

 

そう心の中で謝り俺は前を見る。

 

 

 

 

敵戦闘機の攻撃はまだ続く。

2機を撃墜した敵戦闘機3機は一度俺達の編隊の下に潜り込み、更に一撃を咥えようとする。そこに漸く先程素通りされた蒼龍隊が戻って後ろから追撃を仕掛けて見事に1機、撃墜する。

だが残りの2機は下から一撃加えると編隊の上に出た。その瞬間に後部に取り付けられている13mm旋回機銃が、各機から一斉に放たれる。

 

先程の下方からの一撃は烈風に邪魔をされてこちらの流星を捉えられなかったようだ。

 

逆に13mm旋回機銃の弾幕射撃を一斉に食らって1機が火を噴いてクルクルと落ちていく。残った1機も編隊上空から離脱しようとしたところを烈風に撃墜された。

 

一応、敵戦闘機の脅威は去ったと見ていいだろう。

 

前方の敵戦闘機もあらかた落として飛龍隊と蒼龍隊が合流してくる。

あとは、敵艦隊を仕留めるだけだ。

 

 

 

 

 

更に進むと右前方に航跡が見えた。その奥の方には艦影が見える。双眼鏡で覗くとそこには空母3隻に戦艦が2隻、輪形陣の中心に陣取っていた。

 

「石田、艦隊へ敵艦隊発見の報告」

 

「了解」

 

随伴艦は20~30程。これほどになると対空砲火はかなり強烈なものになる。提督には事前に敵戦艦の対空砲火を弱める為に急降下爆撃隊の内の何機かを向かわせるように、と言われている。

 

確かにその通りだろう。

 

直ぐに敵空母への攻撃戦力の振り分けを行う。

 

先ず、瑞鶴隊には先頭を進む敵空母ヲ級の1番艦を。

次に飛龍隊がヲ級2番艦。

最も攻撃戦力の少ない蒼龍隊には軽空母ヌ級を狙わせる。

 

敵戦艦には4機ずつ急降下爆撃隊を向かわせろと言われたが……

 

よし、蒼龍隊と飛龍隊から2機ずつ、奥を航行している敵戦艦を。

瑞鶴隊から4機、手前を航行している敵戦艦をやらせよう。

 

空母への急降下爆撃が少なくなるが空母へは1発でも命中させることが出来ればあとは我々雷撃隊が何とかする。

 

 

 

そして、その振り分けを伝えた後にトツレ連送を全機に送る。

雷撃隊は海面すれすれの低空へ。急降下爆撃隊は高度を5000まで上昇。

 

「石田、ト連送!」

 

「了解!」

 

ト連送を送った次の瞬間、敵艦から対空砲火が一斉に火を吹いた。

周囲に黒い煙が爆音と閃光と共に広がっていく。

 

艦爆隊の方を見るとそちらにも対空砲弾が飛んで行って周囲を黒い煙に囲まれている。

雷撃隊は海面を飛んで進んでいくと、その内の3機が落とされた。

 

更に進むと対空機銃の射程に入ったのか一斉に、とんでもない数の機銃弾が音を立てて飛んでくる。瞬く間に雷撃隊の5機が落とされる。

それだけではない、煙や燃料を噴き出している機体も居る。

 

そろそろ魚雷投下距離だが、先んじて急降下爆撃隊が敵戦艦に爆弾を落とし始めたようだ。敵戦艦2隻には4機づつが投下した50番が手前のに3発、奥のには2発見事に命中した。

その瞬間、敵戦艦の撃ち上げる対空機銃は大きく減衰して穴が出来る。

 

「全機!急降下爆撃隊の作った隙を無駄にするな!」

 

スロットルを最大まで押し込んで速力を上げる。

ぐんぐんと近づいてくる敵戦艦を尻目に敵空母目掛けて一斉に突っ込む。

 

「距離3000!」

 

「まだだ!まだ突っ込む!」

 

「あぁクソ!後続の2機が落とされました!」

 

「振り向くな!目の前の敵空母に集中しろ!」

 

大声で叫ぶ俺と石田。

敵空母目掛けて先に急降下爆撃隊が一斉に逆落としになって突っ込んでいく。

 

「急降下爆撃隊、一番機投下しました!」

 

「頼む!一発で良いから命中させろ!」

 

俺が大声でそう叫ぶと、その願いが通じたのか、はたまた急降下爆撃隊の技量が高かったのか、我が飛龍隊の狙う敵空母の飛行甲板に3回、爆発が起きた。

 

「急降下爆撃隊、3発命中!」

 

「良くやった!あとは俺達がばっちり決めるだけだ!」

 

「距離1200!」

 

「あと少し!あと少しだけ進む!」

 

「900を切りました!」

 

「魚雷投下ァァ!!」

 

大声で叫びながら魚雷を投下する。

軽くなった反動でふわりと機体が浮くが直ぐに持ち直す。

だが中には持ち直せずに浮き上がった瞬間を狙い撃ちにされて火を噴いて海面に突っ込んでいく機もいた。

 

「何機投下出来た!?」

 

「我が飛龍隊は7機です!」

 

「それだけ投下出来れば2発は当たる!」

 

そう喜んだ瞬間だった。

 

「クソ!4番機被弾炎上!そのまま敵空母に突っ込んでいきます!」

 

「馬鹿野郎!」

 

4番機が機銃弾を受けて炎上、そのまま海面に突っ込むぐらいならば、と敵空母に機体と共に突っ込んだ。

 

「石田!戦果確認!あいつらの犠牲を無駄にするな!」

 

「了解!」

 

空母の上を通り過ぎてそのまま敵艦隊の輪形陣を抜ける為に飛んで行く。

すると、石田が大声で叫んだ。

 

「1本命中!続けて2本!」

 

「クソ、3本か!?これじゃぁ仕留めきれないぞ!」

 

「……いや、更にもう1本命中!方舷4本です!撃沈確実です!」

 

7機が魚雷を投下して、4本命中。

戦果としては上々、空母なら爆弾3発と合わさって撃沈確実だろう。だが飛龍隊10機の内、今のところ飛んでいるのは5機だがその内の1機は燃料とエンジンから黒煙を吐いている。そう長くは飛べないだろう。そうすると無事なのは4機だけか。

 

その後、蒼龍隊、瑞鶴隊と集合してそれぞれ戦果を確認した。どうやら軽空母を狙った蒼龍隊は魚雷3本に爆弾3発と撃沈確実。

 

だが瑞鶴隊の方は敵の護衛駆逐艦や巡洋艦の対空砲火が激しくそもそも魚雷を投下出来たのが4機、爆弾を投下出来たのは7機と多かったが、魚雷の命中は2本と爆弾は4発。だがこれじゃ戦闘能力を奪う事は出来ただろうが撃沈には至らないだろう。

運良く敵の機関部などの重要区画に損害を与えることが出来ている事を願うばかりだ。

 

 

そしてその後、戦闘機隊と共に空母に向けて針路を取った。

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

攻撃隊から戦果報告が入った。

 

『我攻撃隊総隊長機。敵艦隊ヲ攻撃。戦果ハ以下ノ通リ。ヲ級1撃沈確実、ヌ級1撃沈確実。ヲ級1撃破。ル級2ニ爆弾ヲソレゾレ3発、2発ノ命中ヲ確認。以上』

 

空母はヲ級とヌ級を1隻ずつ撃沈確実か。

もう1隻を仕留められなかったのは残念だが対空砲火の事を考えれば上々。

 

「本当ならもう一度攻撃隊を出したい所なんだけど……時間的にも兵力的にも多分無理かな」

 

「それは同意見だ。提督、その後の報告では帰投出来るのは21機のみ。これでは再攻撃は無理でしょう。それに攻撃隊が帰投するのは辺りが薄暗くなる頃でしょう。艦隊が敵艦隊方向に向けて進んでいますから多少は早くなるでしょう。ですが攻撃隊を再び放つとなると完全に夜間になってしまいます」

 

「そもそも帰投出来るのが21機とは……あまりにも少なすぎる」

 

向かった攻撃隊の2/3が撃墜されるとは思っていなかった。

戦闘機からの迎撃はそれほどでは無く落とされたのも2、3機との事だがそうすると対空砲火でその殆どが撃墜されたことになる。これは数を揃えて飽和攻撃をするのが効果的なんだろうがそんな余裕は無いからな……あまりにも強烈すぎる。

 

「参謀長、敵戦艦は無事と言う事だな?」

 

「その通りです。恐らく我が艦隊とパレンバンの間に滑り込んで夜戦を仕掛けてくるでしょう」

 

「そうすると、金剛達の出番か」

 

「はい。ですが、もうここまで来ては形振り構っていられません。潜水艦隊に直接雷撃を命じましょう。空母は確実に仕留めておかなければ」

 

「確かにその通りだが。別に今更空母はどうでもいい。狙うべきは戦艦だ。航空機を飛ばせない空母なぞ態々狙う必要も無い。ならば今現在最も脅威がある戦艦2隻を確実に仕留めねばならん。輸送船団を狙われたら一溜まりも無い」

 

「ですが空母を放置しておけば修理されて再び脅威になります」

 

ここで艦橋内の意見が分かれた。

空母に止めを刺すと言う意見と、損害の少ない敵戦艦を仕留めるべきだと言う意見。

 

俺と艦長は戦艦を仕留めるべきだ、と主張していて、参謀長と飛龍は空母に止めを刺してから戦艦を狙うべきだと主張。

 

「敵空母が現海域を最短で離脱するにはマラッカ海峡を通過しなければならない。修理をするにはトラックかニューカレドニアに向かわなければならない。コロンボでも出来なくはないが本格的な修理ともなるとニューカレドニアだ。そうすると損傷していること、途中で補給を受けなければならない事を考えればニューカレドニアに到着するまで丸々1か月は掛かるだろう。そんな空母に二の矢は必要無い。それに、速度も遅いから戦艦を仕留めた後でも十分機会はある」

 

「分かりました。提督がそう仰るのならば潜水艦隊には敵戦艦2隻を雷撃するように命じましょう。幸いにも既に夜間ですから昼間よりはずっとやりやすい筈です」

 

「そうだな。通信長、潜水艦隊各艦に連絡を頼む。それと敵艦隊の詳細な位置を知らせるように言っておいてくれ」

 

「は、了解しました」

 

俺の指示によって通信長は艦橋から通信室に向かう。

さて、少なくとも敵艦隊を追跡している伊403の報告を待たなければならない。

 

 

 

 

 

 

2時間後、伊403から報告が入った。

 

『我伊403。敵艦隊ノ詳細ナ位置ヲ報告ス。敵戦艦2、重巡3ヲ基幹トスル敵艦隊ハバンカ島スンガイリアトから西北西50海里ノ位置ヲ遊弋中。1930』

 

その15分後に続けて報告の電文を送ったのはジャワ海を偵察中の伊8からだった。

 

『我伊8。ブリトゥン島ヨリ南東37海里ヲ随伴艦24隻ヲ伴イ敵空母航行中。1945』

 

「敵空母は連れていた随伴艦を丸々連れて逃げていた所と言う事か」

 

「恐らくはその通りかと。ですがこれは嬉しい誤算ですね。まさか随伴艦をそれだけの数を引き抜いてくれるとは」

 

「戦艦ル級の艦隊は随伴艦が12隻だけと少ないですから第1戦隊の駆逐艦5隻でも十分に対処可能です」

 

「よし、第1潜水艦隊全艦に敵戦艦へ雷撃を命じろ。機会があればで構わん」

 

「了解しました」

 

「それと金剛に移乗する。内火挺を用意してくれ」

 

「了解です。ですが砲雷撃戦の指揮を直接お取りになるとなると相応に危険です。どうか十分にお気を付け下さい」

 

「あぁ、分かっているさ。第1機動艦隊は第1戦隊と分離後、第1護衛艦隊と合流するように。あとは何とかして敵との戦力差を埋めなければならんが……第1戦隊の鈴谷と第1機動艦隊の摩耶、那智と交代させろ。これで重巡洋艦は同数だ」

 

「参謀長、駆逐艦は何隻引き抜かれても問題無い?」

 

「は、3隻程度ならば問題ありません。それと駆逐艦だけと言わずに軽巡も1隻お連れ下さい」

 

「分かった。それならば軽巡矢矧と駆逐艦涼月、初月、若月も第1戦隊に組み込む」

 

潜水艦隊へ雷撃の指示と、第1戦隊へ戦力を割いて敵艦隊との戦力差を埋める為に指示を飛ばす。

 

 

 

第1戦隊

 

戦艦2隻 

金剛     

霧島

 

重巡洋艦3隻 

古鷹 摩耶 那智

 

軽巡洋艦2隻 

神通 矢矧

 

駆逐艦8隻 

陽炎、雪風、浦風、萩風、村雨、涼月、初月、若月

 

 

 

俺の指示により第1戦隊は以上のようになった。

新たに編入した軽巡矢矧と駆逐艦涼月、初月、若月の4隻は纏めて1つの水雷戦隊として動いてもらう。

 

矢矧以下を第1水雷戦隊とし、神通以下を第2水雷戦隊とする。まぁどっちがどっちでも良かったんだが神通とその艦長達からどうしても第2水雷戦隊が良いと言うので今回ばかりは特別だ。

 

恐らく2水戦が切り込みを担当するんだろうが、まぁなんというか、神通達の喜び方が異常だったからな。大丈夫だろうか?

少しばかり心配だが大丈夫だろう。

 

 

そして飛龍から内火挺に乗り、金剛へ移乗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイテイトクー!お久しぶりデスネー!金剛へようこそ!歓迎シマース!」

 

金剛は俺が内火挺をクレーンで引き揚げ、それから降りると場所と状況からか流石に何時もの様に飛び付いてきたりはしないが挨拶の意味を込めてハグをしてくる。

慣れた事とは言え、好意を無碍にする訳にもいかないから軽く抱き締め返し離れる。

 

「ありがとう、金剛。皆も出迎えご苦労。持ち場に戻り即座に合戦準備」

 

「了解!聞いたな!戦艦の本来の仕事の時間だ!」

 

艦長がそう叫ぶと駆け足で持ち場に戻っていく。

その様はとても良く訓練され、洗練されていると言っていいだろう。

 

「テイトク、艦橋に案内しマス。付いて来てクダサイ」

 

「あぁ、案内を頼む」

 

艦橋に上った頃には既に戦闘準備が整い後は戦うだけとなった。

 

「全艦に速力を25ノットへ上げるように打電」

 

俺がそう指示を出すと第1戦隊全艦にその命令が打電される。

すると金剛を含めて艦首が切る波の飛沫の大きさが増した。

続いて針路を命令する。

 

「艦長、針路をバンカ島近海の敵艦隊へ」

 

「了解、針路バンカ島近海の敵艦隊へ向けます」

 

第1戦隊の隊列順は以下の通り。

 

 

 

 

 涼月

 

 初月 

 

 若月

 

 矢矧

 

 金剛

 

 霧島

 

 古鷹 

 

 摩耶 

 

 那智

 

 神通

 

 陽炎 

 

 雪風

 

 浦風

 

 萩風 

 

 村雨

 

 

 

 

念の為に前路警戒に1水戦を置き、それに金剛と霧島が続きその後ろに重巡洋艦3隻が並ぶ。更に後ろには2水戦が続いている。

 

 

 

 

 

 

 

「提督、対水上電探に感あり。左舷に大型艦5、及び他多数。敵艦隊です」

 

「主砲左舷方向に向け」

 

「了解。主砲左舷方向に向けます」

 

そう命じると、大きな駆動音を立てて主砲塔が旋回する。

 

 

 

 

 

敵艦隊とは同航戦。

既に敵艦隊は射撃を開始していてあちらこちらに水柱が乱立している。

我々は射程、威力ともに負けているのだから出来るだけ近づかなければならない。

 

幾ら砲弾が降り注ごうとも今は我慢するのだ。

 

 

 

 

 

 

暫くすると電探員が声を上げた。

 

「敵艦隊との距離20km」

 

予め、この距離になったら報告するように、と電探員に伝えておいた距離だ。

よし、この距離ならば十分に命中弾を期待出来る。

 

そう思った俺は命令を出した。

 

「各艦、主砲射撃開始」

 

「了解、各艦主砲射撃を開始します」

 

すると艦長は伝声管に向かって言った。

 

「主砲、撃ちー方ー始め」

 

 

 

 

 

 

 

その号令により、後に第2次バンカ島沖海戦と呼ばれることになる海戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 







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