暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第11話

 

         

        

 

 涼月     イ級

 

 

 初月     イ級

 

 

 若月     へ級

 

 

 矢矧     へ級

 

 

 金剛     ル級  イ級

 

 

 霧島     ル級  イ級

 

 

 古鷹     リ級

 

 

 摩耶     リ級

 

 

 那智     リ級

 

 

 神通     へ級

 

 

 陽炎     へ級

 

 

 雪風     ニ級

 

 

 浦風     二級

 

 

 萩風     ハ級 

 

 

 村雨     ハ級

 

 

        

 

敵艦隊はどうやらル級を雷撃から守るために俺達より2隻多い駆逐艦を我が艦隊とは反対側の200~250mほど離れた側面に配置しているようだ。

 

確かにその効果は大きく、第1潜水艦隊や第2潜水艦隊の各潜水艦はル級を狙っているようだが駆逐艦が邪魔で上手く狙う事が出来ていないようだ。

まぁ魚雷を撃つことが出来たとしても既に彼我の艦隊の速力は27ノットに到達していて命中させることは困難だろう。

 

金剛と霧島はそれぞれ1隻ずつ敵戦艦を相手取り、重巡も同様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛と霧島が主砲を撃ち始めて20分が経った。

だが未だに命中弾を与えられず試射の段階だ。だが敵戦艦の射撃精度は高く始まった時はかなり的外れな所に着弾し爆弾や魚雷とは比較にならない巨大な水柱を立てていただけだったが……

 

「敵弾、来ます!」

 

見張り員の報告によって敵戦艦の砲弾が降り注いでくる事を知る。

もう何度目になるか分からない報告だが、その度に艦の周囲には巨大な水柱を乱立させている。

 

ズドン!!

 

重い着弾と爆発音と共に艦首前方50m程に着弾、爆発する。

金剛はそのまま水柱の中に突っ込む。基本的に同じ場所への着弾は有り得ない。だからこそ水柱に突っ込んだ方が安全なのだ。

 

「徐々に精度が上がって来ているな……不味いぞ、このままだと撃ち負ける」

 

「テイトク、心配ご無用デース。私達はこれぐらいじゃ終わりまセン!」

 

と、金剛は言っているが実際はかなり厳しいだろう。

恐らく向こうは射撃専用のレーダーを装備していると思われる。イージス艦などに搭載されている物とは精度は比べ物にならないとは言っても射撃レーダーは射撃レーダーだからな。事実、何度も言っているが射撃精度はどんどん高くなって行っている。

 

未だに敵弾の命中は無いが直撃するのは時間の問題だろう。

 

しかし金剛と霧島もとんでもない連中の集まりだ。

レーダー射撃をしていないのにも関わらず狭叉とは行かないまでもかなり近い位置に砲弾を落としている。これを人力の計算などで行っていると言うのだから恐ろしい物だ。

 

対水上電探を射撃レーダー替わりに使えない事も無いがそうすると全艦の情報を集めて統合し、そこから導き出さなければならない。

だがお世辞にも我々が使用している電探は対空、対水上に限らず深海棲艦の使用している物よりも精度は数段低い。それを元々の用途とは違う方法で使用すると言うのだから更に精度は落ちるだろう。期待は出来ない。

 

「砲術長!!命中はまだ得られんのか!?」

 

「申し訳ありません!ですが未だ命中弾は得られません!」

 

痺れを切らした艦長が砲術長に向かって怒鳴るが意味は無い。

すると漸く朗報が飛び込んできた。

 

「!!霧島が敵戦艦に命中弾を叩き出しました!!」

 

「よーし!良くやったぞ霧島!」

 

霧島の放った砲弾が敵戦艦の艦首付近を捉えたようだ。

すると霧島は試射から斉射へ切り替える。35.6cmの砲弾が装填されると同時に発砲炎と共に敵戦艦に降り注ぐ。だが敵戦艦も黙ってはいない。

 

「霧島被弾!後楼塔の根本付近に直撃したようです!」

 

「クソッ!損害は!?」

 

「主砲の射撃に支障は無し!ですが副砲4門が吹き飛ばされて使い物にならないと!死傷者も相当数出ています!」

 

霧島が5発目の命中弾を与えた次の瞬間、霧島の後楼塔に直撃弾を食らった。根本付近に食らったらしく、大きな爆発と共に吹き飛んだ後楼塔は爆発が収まると既にそこには無かった。

 

40cm砲弾の破壊力はこちらよりずっと大きい。

こちらが数発の命中で漸く、しかも命中箇所によっては装甲で弾き返されるのに向こうはどこに命中しても装甲を貫通して最悪たったの1発で致命傷になりえる。

 

「我々はどうなっている?」

 

「中々命中弾を得られまセン。一式徹甲弾だから水中に落ちても幾らかは進んで命中を期待できるケド……」

 

「駄目か」

 

「提督、敵戦艦の主砲が3基中2基しか稼働していません。どうやら昼間の急降下爆撃によって何らかの不具合が発生し使用が出来ない状態にあるものと思われます」

 

「ふむ。だがそれが現状を打開する程には至るまい。何とかして先に命中弾を与えなければ」

 

「重々承知しております」

 

そう、艦長や金剛と話すが状況は膠着したままだ。

そしてその数分後、漸く事態が進み始めた。だがこちらには宜しくない方向でだ。

 

 

ズガン!!

 

 

大きな音を立てて艦中央付近に大きな爆発が起こる。

 

「艦中央に被弾!損害不明!」

 

「ダメージコントロール急げ!副砲群や機関部への被害は!?」

 

「分かりません!」

 

「左舷第3副砲塔沈黙!連絡途絶!」

 

「副砲の弾薬に引火する前に注水しろ!急げ!誘爆したらシャレにならんぞ!」

 

被弾してすぐに艦長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

それに従い各所でダメージコントロールが行われる。結果的に副砲の弾薬庫に対する注水は正解だった。

実際にその時、副砲の弾薬庫付近で火災が発生していて弾薬庫まで寸での所まで迫っていた。もし注水が行われなかったならば砲弾に誘爆し取り返しのつかない事になっていただろうう

 

「テイトク!怪我は!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。これぐらいじゃ何とも無い」

 

金剛が心配して声を掛けてくるが俺はどこにも異常は無い。

それよりもだ。

 

「金剛、敵戦艦への命中弾は?」

 

「スミマセーン……まだ命中弾は……」

 

「そうか……」

 

命中弾は未だに得られず、敵は命中した砲弾を頼りに斉射を始めている。

金剛の周囲には巨大な水柱がこれでもかというぐらいに乱立しては海水を金剛に降らせてくる。

 

「砲術員!どうなっている!?何故命中弾が出ない!!」

 

艦長が大声で怒鳴るがそれに返答する者は誰もいない。

 

霧島の方は既に敵戦艦へ多数の命中弾を出しているが同時に敵弾も食らっている。

第2砲塔の砲身1本に上手く当たってしまったのかひしゃげて射撃なんて出来る状態じゃない。まぁもう1本の砲身は無事で弾薬庫への誘爆の危険も無いから射撃を続行中だ。

 

重巡の方も同様だ。報告によれば那智が第3砲塔に被弾し誘爆を防ぐ為に注水して使い物にならなくなった。

 

古鷹はカタパルトに直撃して炎上中。

その灯りを頼りに敵は砲撃を撃ち込んできているから古鷹が大きな被害を被るのも時間の問題となる。

 

摩耶はこれと言った被害は無く、砲撃を続行している。摩耶が狙っているリ級はかなりの痛手を被っているらしく、遠目からでも分かるぐらいに大きく燃え盛っている。

 

かなり厳しい状況であると言わざるを得ない。

すると漸く金剛の主砲弾が敵戦艦を捉えた。

 

「我が金剛の砲弾、敵戦艦に命中!これより斉射に移ります!」

 

砲術長が上ずった声で叫びながら報告してくる。

斉射に移った金剛は、今までの鬱憤を晴らすかの如く砲弾を叩き込む。

 

だが嬉しい報告ばかりではない。

 

「霧島の第4砲塔に敵弾が直撃したとの事!即座に注水し誘爆の恐れは無しとの事!」

 

霧島からの報告に続いて金剛にも大きな衝撃が連続して襲う。

 

「艦首付近に直撃弾1と至近弾1!」

 

「爆圧で浸水が起こっています!」

 

「応急修理員を向かわせろ!何が何でも浸水を食い止めるんだ!!」

 

続々と届けられる被害報告。

だがこっちも負けてはいない。なんだかんだで既に4回斉射を実施している。その内の9発が命中し炎上させている。

幸いな事に主砲は全て射撃可能だ、まだまだ負けては居ない。

 

だが霧島の損害が大きい。

報告によれば既に主砲の内、1基が使い物にならなくなっていて更に先程の主砲1本がひしゃげている被害もある。射撃可能なのは5門だけだ。

 

後楼塔は完全に吹き飛んで根元から無くなっているしそれ以外にも多数の被害が報告されている。浸水も各所で発生しているらしく中破の損害を被っている。金剛はまだ大丈夫だがこれ以上霧島に損害が出てしまうと不味い。

だが、ここで最大の朗報が飛び込んできた。

 

「摩耶が敵重巡2番艦を撃沈しました!」

 

その瞬間、艦橋内が大きく沸いた。

漸く艦隊にとって良い方向に進み始めた。

続いて更に報告が入る。

 

「古鷹が敵重巡1番艦の主砲を2基使用不能に追い込みました!」

 

「矢矧が敵軽巡1を仕留めました!」

 

漸く敵艦を2隻仕留めることが出来た。これで漸く艦数の差は0になった。

既に敵艦隊との距離は当初20kmだったのが15kmにまで接近していた。それに良い報告ばかりではない。

 

「那智の艦尾付近に直撃弾3!機関部に浸水を起こし速度低下!」

 

「初月、被弾により3番砲塔が吹き飛びました!」

 

金剛と霧島はもう何度目か分からない斉射を行い、命中弾を出すと同時に敵戦艦からの砲撃の直撃を食らっている。

 

霧島は機関部は無事だが攻撃面において主砲塔の根本付近に直撃弾を食らい注水、使用出来るのは前部第2砲塔と後部の第4砲塔だけとなった。

 

金剛も副砲は全て吹き飛ばされて使用不能、カタパルト付近にも直撃弾が数発、火災が発生して収まっていない。主砲が全て使えるだけまだマシな方なのだろうか。

 

「……艦長、2水戦に突撃命令。接近して敵戦艦に肉薄して雷撃を敢行させろ。駆逐艦や軽巡には構うな。敵戦艦さえ仕留められればこちらの勝利だ」

 

「了解しました」

 

流石にこれ以上同航戦でただ砲撃戦を、となると厳しい。

確実に今すぐ戦果が出せるのは水雷戦隊の近距離からの雷撃だ。

炸薬量もさることながら、どんな船も喫水線下は弱点だ。いくら装甲が厚いと言っても魚雷程の炸薬量で吹き飛ばされてしまうと容易にその自慢の装甲に穴を開けられてしまう。それは輸送船の様なものから戦艦大和だろうが何だろうが同じだ。

 

それだけに、我が海軍の駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦に搭載されている酸素魚雷は本当の意味での一撃必殺となりえる。当たり所によっては1本だけでも轟沈させられる。

 

その命令を受けて2水戦は速度を32ノットまで一気に増速すると敵艦隊に向けて突っ込んでいった。文字通り突撃と言い表せるだろう。

 

艦橋の中の人間だけでなく艦隊全員が、このまま敵戦艦のどてっ腹に酸素魚雷を叩き込んでくれる、そう思った。そう思い描いた。

 

だがそう上手くはいかなかった。

2水戦の突撃を察知した敵駆逐艦と軽巡が阻止する為に出てきたのだ。

そりゃ当然だろう、主力である戦艦に魚雷を叩き込まれたら堪らないからどうやってでも阻止するために動く。

 

その時までは2水戦だから、神通が率いているのだから問題無く突破出来るだろうと思っていた。だが敵も死に物狂いで阻止をしようと動いてくる。

お陰で敵の出てきた6隻と2水戦の交戦距離は5000mを切り超至近距離での砲撃戦となった。

 

「提督、2水戦は敵駆逐艦に阻まれて敵戦艦に魚雷を撃ち出せません」

 

「クソ……こうなったら戦艦は戦艦同士で決着を付けなければならないと言う事か」

 

「どうやらその様です。どういたしますか?」

 

「……敵戦艦で被害の大きい方はどっちだ?」

 

「は、霧島が担当している2番艦ですが、それがどうかしたのでしょうか?」

 

「敵戦艦1隻に攻撃を集中して叩く。射撃諸元は変わるが霧島から諸元を送って貰いそれを元に再計算をすれば時間は短縮出来るだろう」

 

「了解しました。霧島に射撃諸元を送る様に打電します」

 

「頼む。流石に霧島はあれ以上持ちそうに無い。戦力の喪失は出来るだけ避けなければならん」

 

それからすぐに霧島から射撃諸元が届いた。全部主砲は後ろを向いてしまうような状態だがなりふり構っていられない。

直ぐにその送られてきた射撃諸元を元に敵戦艦2番艦へ狙いを付ける。

 

「計算完了しました。射撃開始します」

 

砲術長がそう言った次の瞬間、金剛の主砲が全門一斉に火を噴いた。

その計算が正しかったのか初弾で命中弾3を数えた。

 

だが敵も黙っていない。

金剛と撃ち合っていた戦艦がここぞとばかりに撃ってくる。

飛んできた砲弾の1つが喫水線ギリギリの所を思いっ切り撃ち抜いて大きく浸水を始めた。

 

しっかりと水密扉を閉めていたと言ってもそれすらを吹き飛ばして広範囲に海水が流れ込む。無事だった水密扉も流れ込んだ海水の水圧によってひしゃげたりして浸水が広がる。

 

「ダメージコントロールはどうなっている!?このままだと艦が傾いて精密射撃が出来なくなるぞ!」

 

「それが、命中した敵弾のせいであちこちで火災や艦内で寸断が起きて最短距離で進めなくなりました!今現在向かっていますが時間が掛かります!」

 

攻撃力は保っているとは言っても、もう既に金剛はボロボロだ。

後楼塔のマストは中ほどから圧し折れてあちこちに張り巡らされたワイヤーに絡まりギリギリぶら下がっている状況だ。

 

艦首付近の甲板には敵弾の炸裂によって空いた大穴が出来ている。まぁそこに限らずあちらこちらに大穴は出来ているんだが。

 

応急修理要員があちこちを駆け周り、必死に被害を食い止めようとしているが手が回りきらない。

 

 

 

 

だがそんな状況でも戦闘は進む。

 

金剛が更に斉射を行う。

2回、3回と打ち込んでいきその度に命中弾を出す。霧島も撃てる砲は全て撃ち、生き残っている対空用の12.7cm砲まで撃っている。

 

するとすぐに集中して狙った効果が出たのか、元々かなりのダメージを負っていて追い打ちを掛けたからか、敵戦艦の速度が急速に落ち始めた。

 

恐らく機関部か煙突に直撃弾を得られたのだろう。

どんどん置いて行かれるその敵戦艦は捨て置き、未だに速力を保っている敵戦艦1番艦に狙いを変更。

 

 

 

「艦長!浸水が食い止められません!」

 

「手の空いている人員を全て回せ!何が何でも食い止めろ!」

 

「被弾!第3主砲大破!」

 

「注水を始めろ!誘爆させるな!!」

 

 

 

艦橋内も、それ以外も怒号が響き渡る。

金剛は遂に第3主砲に敵弾の直撃を食らって大爆発を起こした。幸いにも弾薬庫や揚弾筒まで火は回っていなかったのか第3主砲が天蓋(砲の上面を覆っている装甲の事)を吹き飛ばしただけに留まった。

 

砲身はだらんと海面に向かって垂れ下がる。

 

 

 

敵戦艦も唯では済んでいない。

撃てる主砲はもう1つだけになり速力も明らかに低下し始めている。火災も激しいのか真っ暗闇の中にくっきりとその陰を映し出している。まぁそれはこちらも同じだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、漸く敵戦艦を仕留める決定的な一撃を加えられた。

霧島の放った砲弾の1発が命中した瞬間に敵戦艦が大爆発を起こしたのだ。それは一度だけではなく複数回連続して起こる。

 

どんどんゆ行き足は止まり、遂には停止した。

遠目から見ても分かるぐらい艦体は大きく傾いている。

 

戦艦同士の決着は着いた。

 

 

 

 

だが未だに2水戦と重巡の戦いは続いている。

だが金剛と霧島が突っ込んでいくわけにはいかない。魚雷を撃たれるリスクがあるからだ。精々できる事と言えば重巡の支援をするぐらいだ。

 

「1水戦に2水戦の支援を命じろ。あのままでは戦艦の側面支援についていた駆逐艦が合流すれば拮抗状態が崩される」

 

「了解しました。我が艦と霧島は敵重巡洋艦に照準を向けて宜しいでしょうか?」

 

「あぁ、頼む。だが損害の大きい霧島には無理をさせないように。金剛も無理はするな」

 

そう命令したが、既に敵艦隊は戦艦2隻を沈められて戦意を喪失していたのか十数分程抵抗しただけで撤退をしようと針路を変えてジャワ海方面に向かって遁走を始めていた。

 

「敵艦隊、撤退を始めました」

 

「ならば追撃戦に移行する。打電しろ。全艦、最後まで気を抜くなと言う文もだ。ここで反撃を食らったらシャレにならん」

 

「了解しました」

 

そう命令をして艦隊は追撃戦に移行し、損傷している艦を庇いながら逃げる敵艦を後ろや2水戦がここぞとばかりに暴れまわっていた。

 

戦果としては戦艦2隻、重巡3、軽巡4、駆逐3を撃沈。

敵艦隊の生き残りは5隻で全て駆逐艦という事で再び敵艦隊が攻撃を仕掛けてくる事は無いだろうと判断されて追撃を打ち切り。敵残存艦隊はジャワ海方面に向けて撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝を迎えると、艦隊の被害の全容が判明した。

詳細は長くなってしまうので小、中、大破で表す。

 

 

 

大破  金剛 霧島 那智 

 

中破  古鷹 矢矧 神通 陽炎

 

小破  涼月 初月 若月 雪風 萩風 

 

 

 

12隻が大小関わらず被害を被っていた。

特に酷いのは大破した金剛、霧島、那智の3隻だった。

 

先ず金剛は主砲は3基が無事だが、1基が吹き飛んで跡形も無くあちこちから浸水を起こしていて浮いているのが不思議なくらいだ。機関4つの内2つに浸水を起こして出しえる速力はたったの19ノットにまで大きく減衰している。

 

霧島は主砲4基全てが使用不能、機関の損傷は比較的軽微で速力も23ノットを出せる。

だが艦上構造物の被害が酷く、後楼塔は完全に崩れ機銃や対空砲は軒並み吹き飛び、副砲も左舷側は全て破壊されている。

 

那智は喫水線上の艦首付近を吹き飛ばされてそこからの浸水により艦が前のめりに傾いている。主砲も使い物にならなく、煙突が吹き飛ばされて速力の低下。他にも金剛同様あちらこちらに浸水が確認されている。

更に浸水によって機関部に大規模な浸水を起こしていて速度がたったの7ノットにまで低下している。

 

 

 

金剛、霧島はどうにか自力航行が可能だったが那智が問題だった。

艦首付近からの浸水により艦尾がかなり浮いてしまっている為に操舵が困難になっていたのだ。

しかもそれだけではない。速力も大きく低下し、7ノットに低下していたところ、突然水密扉が破損し完全に機関全てが浸水、自力航行が出来なくなった。

 

なので必然的に曳航をするしかなくなったのだがそこで白羽の矢が立ったのが航空魚雷を1本食らっている鈴谷だった。

 

既に注水によって傾斜は復元されて速力も2ノットほど低下しただけで曳航するには特段問題は無かった。鈴谷には那智を曳航するように命令を出し、第1戦隊は第1機動艦隊に先んじて日本に向けて燃料補給後、針路を取った。

俺は飛龍に移乗し再び艦隊の指揮を取り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、お疲れさまでした」

 

「何、まだまだ気を休める訳にはいかない。日本に帰ってから漸くだ」

 

「それでも夜の間ずっと起きてたんだから少しは仮眠を取った方が良いよ」

 

飛龍にそう言われて、最初は断ったが押し切られ無理矢理飛龍艦内の自室に押し込まれ寝るまで飛龍の見張り付きという状況になり説得を試みたが、頑として譲らず結局俺が根負けするに至った。

 

 

 

 

 

 

 

そして仮眠から目覚めると、既に丸々1日が過ぎていて輸送艦隊は石油の積み込み状況はかなり進捗していた。

 

「すまない!寝すぎた!」

 

慌てて制服に着替え制帽を被って艦橋に上ると、そこには全員が勢揃いしていた。

 

「提督?もう起きていいの?」

 

「あぁ、だが寝すぎてしまった。適当なところで起こしてくれれば良かったのだがな」

 

「いや、初めて戦闘を経験して、航空戦から砲雷撃戦まで直接指揮を執ったんだから疲れてて当然。寧ろもっと寝てて良かったんだよ?」

 

「いや、そんなわけには行かないさ」

 

「提督、お食事はどうされますか?」

 

「頼む。流石に腹が減った」

 

もう既に昼頃になっていて色々と慌ただしく動いていたから2日間食事を摂っていなかった事になる。

寝起きとは言っても流石に腹が減る。

 

そして給糧員が持って来たのは何時もと変わらず、握り飯と沢庵に味噌汁だった。

握り飯は何時もは3つなのだが今回は6つも付いていた。空腹の俺には最高に旨かった。

 

 

 

 

 

 

 

「提督、タンカー及び輸送船への石油、ボーキサイトの積み込み完了しました」

 

「よし、別動隊はどうなっている?」

 

「第1護衛艦隊以下は順調に積み込みを終えて既に我が第1機動艦隊と合流する為に出航、我が艦隊に向けて針路を取っております」

 

「異常は無いか?」

 

「はい、今現在問題無く進捗しています」

 

「合流は何時頃になる?」

 

「明後日には合流出来るそうです」

 

「ならば今現在我が艦隊のいるバンカ島沖にて合流せよ、と電文を打て」

 

「はっ、了解しました」

 

今現在、第1機動艦隊はバンカ島から10海里の位置を遊弋し、積み込みの終わったタンカー25隻とボーキサイトを積み込む為に残った輸送船2隻の合流を待っている状況にある。

 

第1護衛艦隊は輸送船14隻を率いて鋼材の材料となる鉄鉱石を積み込むために分離していた。だが今は既に積み込みを終わらせて我が艦隊と合流する為に針路を取っている。

 

索敵機を飛ばしているが敵艦隊発見の報告は無く、潜水艦隊からの報告も無い。

 

そう言えば敵艦隊に対して潜水艦隊に雷撃を命じたが機会が無く、雷撃をする事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日後、第1護衛艦隊以下と合流し日本へ向けて針路を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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