ーーーー side 原田 ----
現在高度5000m。
飛龍を飛び立って2時間程進むと、敵迎撃戦闘機が姿を現した。
数は60機程とそれなりに多い。報告ではF6Fだと言う。正直言ってしまえばF4Uの方が相手取り易い相手ではあるが零戦よりも烈風は旋回性能以外ならば高性能なので特に問題は無い。
と言うか零戦の旋回性能が化け物染みていたのだ。寧ろ烈風も旋回性能ならば深海棲艦の戦闘機と格闘戦をしても余裕がある。
それに数で勝っているから特に問題は無い。同数の60機で十分だろう。
攻撃隊の総隊長は山田に任せている。その山田から敵戦闘機を抑えるようにと言う命令が来た。俺はその命令を受けて蒼龍隊、瑞鶴隊、隼鷹隊に敵戦闘機を抑えるように命令を出す。
まぁ本来は階級的には俺が上なのだが、将来的な事を考えて山田に任せているのだ。
敵戦闘機を抑えに行った蒼龍隊隊長から無線連絡が入る。
こいつもラバウル防衛線から共に長い事戦ってきているエース・パイロットだ。気心知れた仲だ。
腕も信頼しているし判断能力なんかも良い。
そんな奴が驚きの事を言い始めた。
『原田、こいつらF6Fじゃないぞ』
「何?どういうことだ、新型機か?」
『こいつら全部F4Fだ。久しぶりに見たが間違えるはずも無い』
「F4F?そんな骨董品何処から持ち出して来たんだ?深海棲艦がそこまで追い詰められているわけがないしな」
『分からん。彩雲の偵察員はF4Fを見たことが無いからな、F6Fと見間違えたんだろう。どちらにせよ2対1でも余裕がある。機体性能差もだがそこまで腕は良くない。まぁ一般的に言えばそれなりだろうが俺達からすればなんて事は無い』
「そうか……まぁ分かった。取り敢えずそのまま敵戦闘機を抑えてくれ。油断して落とされんようにな」
『分かっている。そっちも伏兵とかに気を付けろよ』
「勿論だ」
そう最後に言って通信を終える。
その方向を見てみると、幾つもの機体が黒煙を吐いてクルクルと落ちていく。
それを見守りながら敵艦隊目指して進んでいく。
10分程、進むと大きな雲が見える。それを迂回しながら進むと、一気に雲が晴れる。すると眼下に何本もの航跡があり、その先には敵艦隊が存在した。
報告通り軽空母が2隻居るがそれを戦艦が7隻ぐるっと取り囲んでいる。その中には重巡リ級が居るが脅威度で言えば戦艦7隻が一番だ。
すると、流星が突撃態勢を即座に作り雷撃隊は低空へ、急降下爆撃隊はそのまま敵艦隊直上へ進む。
我々戦闘機隊は対艦攻撃に関して言えばやることが無い。
まぁ機銃掃射ぐらいなら出来るが……
我々戦闘機隊は戦果確認をする仕事もあるから出来るだけ高い場所で見ていた方が良いのだ。必要ならば流星隊の支援に入るが、周りを見渡しても敵戦闘機は存在していないし問題無いだろう。
と、ト連送が発せられたな。
その瞬間、急降下爆撃隊が敵戦艦目掛けて機体を反転させて一気に急降下を始める。
飛龍、蒼龍、瑞鶴、隼鷹のそれぞれの急降下爆撃隊が1隻ずつ狙いを定めて爆弾を叩き込もうと突っ込む。
雷撃隊は8機ずつ戦艦2隻に狙いを絞って突っ込んでいく。
見ていると撃ち上げられる対空砲火はこの前のル級とは比べ物にならないぐらい貧弱だ。7隻集まって漸くあの時の戦艦2隻分と言ったところだろうか?猛烈な対空砲火を警戒していたが……
それに軽空母に合わせてなのか敵艦隊の速度は遅い。恐らくだが20ノットも出ていないんじゃないだろうか?
そんな敵艦隊に苦戦するような流星隊では無い。
急降下爆撃隊が雷撃隊に先んじて50番を次々と叩き込んでいく。
邪魔をする対空砲火もずっと貧弱だからなんて事は無いのだろう、次々と火柱が上がる。
その次の瞬間、一瞬回避行動が無くなる。それを雷撃隊が見逃すはずも無くここぞと言わんばかりに魚雷を投下していく。
すると輪形陣の真ん中辺りとその後ろを航行していた戦艦のどてっ腹に大きな水柱が2本、3本と立ち上る。
(爆弾は、それぞれの戦艦に最低6発は命中させた。魚雷も2隻に3本と4本。辺り所によっては撃沈もあり得る戦果だな)
頭の中で戦果を確認し、それを攻撃を終えた山田に送った。
我々戦闘機隊は念の為に敵艦隊上空に留まり続ける。
30分程すると更に第二波攻撃隊がやってきた。
第一波の攻撃で対空砲火は大きく減衰しており障害が無い様に突っ込んでいく。
手負いの戦艦には目も向けず、健在な3隻の戦艦に次々と攻撃を仕掛けていく。隼鷹隊の奴らは急降下爆撃隊だけだが軽空母2隻目掛けて突っ込んでいき、爆弾を次々に叩き込む。
最低5発ずつの爆弾の直撃を食らった軽空母は、たちまち大炎上し始めた。軽空母に対して5発の500kg爆弾の直撃は致命傷だ。
あの様子じゃぁ、どうやっても救いようは無いな。
戦艦3隻も5発以上の命中弾であちこちから黒煙を噴き出し、魚雷を食らった2隻は明らかに傾いている。
恐らくだが、7隻の敵戦艦は撃沈する事は出来ないだろうが戦闘能力を大きく削ったことに間違いは無い。
敵艦隊上空をグルッと旋回しそれらを確認した後、黒煙を吐きながら航行する敵艦隊を尻目に第二波攻撃隊と共に飛龍へ向けて針路を取った。
ーーーー side out ----
第一波、第二波攻撃隊から戦果報告の電文が届く。
『我第一波攻撃隊、敵艦隊ヘノ攻撃完了ス。敵戦艦4隻ニ急降下爆撃、内2隻ニ雷撃ヲ敢行。ソレゾレ最低6発ノ50番ノ命中ヲ確認ス。雷撃ハ3本ト4本ノ命中ヲ確認。撃沈ニハ至ラズ。第二次攻撃ノ要アリト認ム』
『我第二波攻撃隊、敵艦隊ヘノ攻撃完了ス。敵戦艦3隻、軽空母2隻ニ急降下爆撃、内戦艦2隻ニ雷撃ヲ敢行。軽空母2撃沈確実、戦艦3ハ撃沈ニ至ラズ。再攻撃ノ要アリト認ム』
雷撃機を少なくして艦上構造物を薙ぎ払う事を主目的としたからか戦艦の撃沈には至らない。攻撃隊が帰投したら再度、今度は雷撃担当の流星を多めに編成すれば恐らくは何隻かは撃沈できるはずだ。
我が艦隊も敵艦隊に向けてそのまま直進していたから、攻撃隊の収容時間は早くなるはずだ。
「攻撃隊を収容したのちに、何分後に再出撃が出来る?」
「攻撃隊全ての収容時間、再出撃に耐えうる機体の選定と、整備、弾薬や燃料の補給、魚雷や爆弾の装備に1時間半頂ければ可能です」
敵艦隊との距離などを考えると……
「すると、第一波攻撃隊は15時頃か」
「はい、そうなります」
「よし、ならば第二次攻撃隊第一波攻撃隊は16時丁度に発艦を開始させる。構わないか?」
「大丈夫です」
早速、攻撃隊が帰還した時に備えて、準備が進められた。
攻撃隊を収容後、再出撃が可能な機体の選定が行われる。
「提督、再出撃可能な機体の選定が終了しました」
「それで、何機出せる?」
「烈風140機、流星101機です」
「それ以外は?」
「撃墜などは免れましたが、燃料タンクやエンジンに被弾して発艦予定時刻までに修理が終わりません」
「分かった。ならばその機数で出撃させる」
「分かりました」
第ニ波攻撃隊
第一波
飛龍 烈風18機 流星13機(爆装4機 雷装9機)
蒼龍 烈風18機 流星12機(爆装4機 雷装8機)
瑞鶴 烈風17機 流星12機(爆装4機 雷装8機)
隼鷹 烈風17機 流星13機(爆装4機 雷装9機)
合計 烈風70機 流星50機(爆装16機 雷装34機
第二波
飛龍 烈風17機 流星12機(爆装4機 雷装8機)
蒼龍 烈風18機 流星13機(爆装4機 雷装9機)
瑞鶴 烈風18機 流星12機(爆装無し 雷装12機)
隼鷹 烈風17機 流星13機(爆装無し 雷装13機)
合計 烈風70機 流星50機(爆装8機 雷装42機)
第二次攻撃隊は、完全に敵戦艦を沈めるための編成にした。手負いの合同艦隊を引き連れている状態の時に敵艦隊に追いかけられるとかなり面倒だ。
今の内に出来るだけ戦力を削いでおきたい。
「提督、発艦準備完了しました」
「良し、艦首風上に立てろ」
艦隊は32ノットの高速で風上に向けて疾走する。
すると合成風力が作り出され、飛行甲板上には強風が吹く。
「攻撃隊発艦始め!」
大きく旗が振られると、再び原田大佐を一番に飛行甲板から次々と飛び立って行く。整備員は作業帽を、俺を始めとした艦長以下士官組は制帽を振る。
最後の魚雷を抱いた流星が飛び立つと、艦隊は敵艦隊から離れる針路を取る。と言ってもこの辺りの海域で遊弋するのだが、既に敵艦隊との距離は攻撃隊が1時間程で到達するまでに接近していた。
普通ならあり得ないのだが、まぁ敵攻撃隊が来襲する危険性は無いから問題は無いだろう。
そもそも、敵攻撃隊が接近しているのなら第一次攻撃隊が発艦した後に、とっくの昔に来襲して空襲を受けているはずなのだ。だがそれが無いと言う事は敵に戦艦以上の攻撃能力は無いと言う事だ。
一応、対空、対水上電探にソナーなどは全艦装備の上に稼働させているが今の所反応は無い。索敵距離はかなりあるから奇襲を受けるなんてことは全ての電探が故障なりしていない限りは有り得ないと言えるだろう。
そうして、暫くすると攻撃隊から電文が続けざまに届く。
最初に敵艦隊発見と言う報告から突撃隊形作れ、全機突撃開始、と続いた。
その20分後、更に戦果報告の電文が届く。
『我第一波攻撃隊、敵艦隊ヘノ攻撃完了。戦艦4隻ニ雷撃及ビ急降下爆撃ヲ敢行ス。撃沈確実3、撃破1。軽空母ハ既ニ艦隊カラ落伍。傾キ沈没ハ時間ノ問題ト判断、放置ス。再攻撃ノ要無シト認ム1723』
『我第二波攻撃隊、敵艦隊ヘノ攻撃完了。敵戦艦3撃沈確実、撃破1。航行可能ナ敵戦艦ハ2隻ノミ。ナレド速力大幅低下ニツキ脅威トハ成ラズ。再攻撃ノ要無シト認ム。1754』
その報告が読み上げられると艦橋内で大きく歓声が沸く。
まぁ、元々鈍足で航行していた所に急降下爆撃と雷撃を食らい、損傷して更に鈍足になったところにトドメの雷撃で魚雷を何本も食らったのだ、普通はこうなる。上空直掩の戦闘機の重要性がこれで露呈したな。
今の今までは全力出撃をして、艦隊上空に戦闘機を残しておかなくても問題無い状況が続いていたがこれからはそうはいかないだろう。
寧ろ今までの状況がかなり幸運だった、と言える。
「提督!これで敵艦隊の脅威は無くなりました!」
大戦果に参謀長が紅潮した顔で俺に顔を向ける。
まぁ確かに大戦果だろう。
「うむ、攻撃隊の皆には後でしっかりと労ってやらねばならないな」
俺もそう言ったが、何時までも喜んでは居られない。
攻撃隊を早く収容し合同艦隊の下へ向かわなければならない。再攻撃はしなくとも問題は無い。と言うよりしたくても出来ない。もう既に日没が近く、収容後にどれだけ急いでも攻撃隊発艦準備が整ったその時には既に夜だからだ。
そう言う訳で取り敢えず、攻撃隊の収容を急がなければならない。
「艦長、急ぎ攻撃隊の収容準備を進めるように。最後まで気を抜くな。まだまだ先は長いぞ」
「はっ、少々騒ぎすぎました。急ぎ収容準備を整えます」
「頼んだ」
その指示に従って収容準備が進められた。
その50分ほど後に攻撃隊の収容が開始された。
途中、エンジンに不調を来した流星が1機、飛行甲板にたどり着く直前に失速し海面に突っ込むと言う事件が起きたが幸いにも搭乗員に命に関わるような怪我などは無かった。肩の脱臼と、足首の捻挫程度で済んだのは幸いだ。と言っても暫くは療養が必要らしいが。
「提督、攻撃隊の収容が完了したよ。これからどうするの?」
飛龍はそう聞いてくるが、当初の目的は合同艦隊の救助だ。その過程で敵艦隊と言う障害があったからそれを取り除いた、と言うだけだ。
「どうするも何も、合同艦隊の救助が主目的だからな、合同艦隊方面に向かう。通信参謀、通信はまだ繋がらないか」
「はい、今現在も電文を送っていますが返信はありません。こちらの通信機器などに不調は無いので恐らく合同艦隊側の通信機器の故障などが原因でしょう」
飛龍の質問に答えがてら通信参謀に合同艦隊との通信が繋がらないのか改めて確認したがやはり駄目なようだ。
まぁ、偵察機の報告じゃ手酷くやられているようだし、輸送船も伴っているから仕方無い、と言えば仕方無い。だからこそ早く合流しなければならない。
救助が目的なのだからこれ以上損害が増えるのはこちらとしても都合が悪い。
自力航行が出来る艦が多ければこちらの負担は減る。曳航に割く艦が多いとそれだけ防備が手薄になる。
と、その前にやらなければならないことがあるな。
「艦長、能代と秋月、雪風、浦風の4隻を墜落した機の搭乗員救助に向かわせてくれ」
「了解しました」
墜落した機の搭乗員もしっかりと救助せねばならない。
搭乗員の育成はそう簡単に完了させる事は出来ないからな、しかも今の練度まで鍛え上げるのには本当に長期間必要だ。南西諸島攻略作戦までにはどうやっても間に合わないから1人でも多く助けなければならない。
これからの時間は暗くなるから上空直掩は必要無い。
潜水艦からの雷撃にさえ注意しておけば問題無かろう。
その指示に従い、4隻は搭乗員救助に向かって行った。
こういう時に潜水艦が居ると搭乗員の救助が楽なのだが今回ばかりは仕方無い。稼働出来る潜水艦の数を増やしたい所なのだがどうにもならない。
まぁ、この件は後々考える事にしよう。
俺達は合同艦隊と合流するべく針路を取った。
数時間後、合同艦隊と合流した。
もう辺りは真っ暗で艦種の特定は難しい。
すると見張員の1人が声を上げた。
「合同艦隊より発光信号」
「何と言っている?」
そう聞くが、返答が無い。
発光信号が終わり、少しすると彼は答えた。
「……はっ、申し訳ありません、どうやら我々の使用しているものと違うらしく、即座の解読は困難です」
「どうやっても無理か?」
「少々お時間を頂ければ、メモを取っておりますので解読出来ますが……」
「はっ、ありがとうございます。直ぐに取り掛かります」
この時、使用されていたのはどうやら日本で我々が使用しているモールス信号とは違う、欧州でよく使われている物だった。
そりゃ普段は日本で使うモールス信号しか使わない見張員も彼からすればも即座に解読するのは無理がある。
10分程すると、先ほど発光信号を見つけて解読に精を出していた見張り員の下士官が解読結果を持って来た。
「提督、解読完了しました」
「ありがとう。読み上げてくれ」
「はっ、読み上げます」
『我ビスマルク。貴艦隊ノ救援ヲ心ヨリ感謝ス。我ガ艦隊ノ現状ヲ伝エル。艦隊速力13ノット。輸送船11ヲ伴ウ。敵ノ攻撃ニヨリ戦艦7及ビ空母1、重巡3、軽巡2、駆逐4大破』
合同艦隊の損害や現状等を報告してきたらしく、満身創痍と言う言葉がそっくりそのまま当て嵌まるほどだ。
ビスマルクによると、大破した艦は全て合わせて17隻。
しかもその殆どが浸水や機関部への損傷等で最高速度は軒並み20ノット以下。艦上構造物も多くが破壊されて通信設備や電探と言ったものは軒並み破壊されている。
まともに速力を出せる艦も速度が低下した艦に合わせているから艦隊速力が13ノットと極端に遅い。
大破
戦艦
クイーン・エリザベス
ラミリーズ
ネルソン
デューク・オブ・ヨーク
ティルピッツ
リットリオ
リシュリュー
空母
グラーフ・ツェッペリン
重巡
ザラ
ポーラ
キャンベラ
軽巡
アブルッツィ
ガリバルディ
駆逐
Z3
グレカーレ
リベッチオ
ジャーヴィス
更に中破が6隻。
戦艦
ウォースパイト
ローマ
空母
アーク・ロイヤル
重巡
アドミラル・ヒッパー
ゴトランド
デ・ロイヤル
と、かなり手酷くやられたようだ。
しかも駆逐艦の数が6隻だけしか存在しておらず、しかもその内の4隻は大破、残りの2隻も燃料が底を着きかけているらしい。
まともに戦闘能力を保持しているのは
戦艦ヴァンガードとビスマルクの2隻に重巡洋艦のプリンツ・オイゲン。駆逐艦のZ1、マエストラーレの合計5隻だけ。
この5隻も通信設備が故障中、更に駆逐艦2隻は対潜兵装が機銃掃射により破壊され、魚雷発射管への被弾により魚雷は全て投棄、主兵装である主砲も度重なる射撃によって射撃不能、砲弾は撃ち尽くした。攻撃能力は皆無らしい。
潜水艦は速力の関係上、この合同艦隊には組み込まれず存在しない。何隻かが別航路で日本に向けて出発したらしいが連絡は取れず、恐らくは既に撃沈されているだろう、との事だった。
合同艦隊残存艦は今現在の残存艦艇は以下の通り。
戦艦
クイーン・エリザベス
ウォースパイト
ラミリーズ
ネルソン
デューク・オブ・ヨーク
ヴァンガード
ビスマルク
ティルピッツ
リットリオ、ローマ
リシュリュー
航空母艦
グラーフ・ツェッペリン
アーク・ロイヤル
重巡
ザラ
ポーラ
キャンベラ
アドミラル・ヒッパー
プリンツ・オイゲン
ゴトランド
デ・ロイヤル
駆逐艦
Z1
Z3
グレカーレ
リベッチオ
ジャーヴィス
マエストラーレ
戦闘艦艇は全て合わせて26隻。そこに輸送船11隻が合わさり37隻になる。
欧州を出発したときはこの倍は居たそうだが此処に到達するまでに轟沈、または損傷甚大により自沈処分、囮として残ったそうだ。
輸送船には、それぞれ艦の整備や砲弾、主砲身などを作るための技師、機材、各種兵器の設計図などと共に技術者、既存の兵器が目一杯積み込まれているそうだ。
随伴していたタンカーは燃料を補給して空になった時に艦隊と分離、囮として乗組員だけを移乗させて置いて来たと言っている。
「発光信号、準備」
「はっ、何と打ちますか?」
「俺の名前で、『貴艦隊ノ奮戦、及ビ犠牲ニ最大限ノ敬意ヲ表ス。我ガ艦隊ハコレヨリ貴艦隊ノ護衛ニ就ク。燃料ニ不安ガアル艦ニハ補給ノ用意アリ。曳航ガ必要ナ艦共々申シ出ヨ』。もし可能ならば欧州式で打ってやれ」
「了解しました。発光信号打ちます」
発光信号が打たれる。
それを受け取ってすぐさま返信が届く。
そしてメモを取り、すぐさま解読して報告してくる。
「報告します。『貴艦隊ノ心遣イ、感謝ス。駆逐艦ヲ優先シテ燃料補給ヲ要請ス。曳航ハ空母グラーフ・ツェッペリン、駆逐艦グレカーレヲ頼ム。交信終ワリ』との事です」
「よし、駆逐艦を最優先に給油を開始。救助に向かわせた能代以下はどうしている?」
「目下救助作業中であります。報告では5機の流星が海面に不時着したとの事で既に4機分の搭乗員の収容は完了しており、残る1機の搭乗員達を救助をするために報告のあった海域に航行中です」
「よし、暗号文でベーリング島南西30海里にて合流せよ 、と打ってくれ」
「了解しました。それでは」
「あぁ、頼む」
その後、すぐさま合同艦隊の駆逐艦6隻へ我が艦隊に随伴していたタンカーから燃料の補給が行われ、その後に軽巡、重巡、空母、戦艦と順次燃料を補給。
グラーフ・ツェッペリンは愛宕に、駆逐艦グレカーレは宵月に曳航させることにした。
愛宕、宵月の2隻は曳航用のワイヤーを渡して引っ張っていく。
お陰で艦隊の速度は16ノットまで増速し、多少移動速度が向上した。
「提督、作業完了したよ」
「分かった。それでは針路を合流予定地点に向けろ。4隻はどうしている?」
「収容は完了、の報告がついさっき上がって来たから、今頃は合流予定海域に向かってるんじゃないかな?」
「ならばいい。周囲への警戒を怠らせるな」
「勿論だよ」
飛龍とそう会話した後に俺は皆に言われ自室で仮眠をとることに。
今はもうとっくに夜で辺りは真っ暗だ。文明を感じられるのはそれぞれの艦が艦橋から漏れ出ている少しばかりのオレンジ色の灯りだけだ。現在の位置は敵の勢力圏内だから灯火管制を敷いておくに越したことは無い。
次の日、太陽が昇り始める前から直掩戦闘機隊を準備し、各空母から4機ずつ、計16機を上げている。
矢矧達とは既に合流して艦隊を組んでいる。今の所、対空対潜対水上警戒を厳としているが電探に反応は無く、ソナーにも敵潜水艦の反応は無い。
現在位置はペトロパブロフスク-カムチャツキーより北東に30kmほどの位置を日本に向けて航行している。このままの速度、調子ならば16ノットで航行すると10時間で165海里(300km)を進む。
丸々24時間航行するので単純計算だと400海里(730km)を進めることになるが、途中途中で給油等を行うため、呉までは1650海里(約3000km)あるから順調に行けば7日程で到着出来る筈だ。
だが16ノットと言うのはな……せめて18ノットで航行したいが損傷艦が居るから無理だ。
「しかし、艦隊の移動速度がこれだけ遅いと何とも歯痒いな」
「まぁしょうがないって。見捨てるわけにもいかないし」
思わずそう漏らすと俺が座っている席の隣に立っていた飛龍が答えた。
「もう1隻、重巡を連れてくるべきだったか……そうすれば空母を2隻で引っ張る事も出来たんだがな」
「でも整備中だったんだからしょうがないよ。今は我慢するしかないね」
「そうだな……」
そう飛龍と会話しながら時間が過ぎていく。
昼食を食べ終え、交代で仮眠を取りながら呉に向かった。
7日後、道中では何事も無く比較的平穏に進み、艦隊は日本本土近海へ到達。各地の陸海軍の航空隊の上空直掩を受けながら瀬戸内海へ入り呉軍港へ入港。損傷の軽いヴァンガードとビスマルク、プリンツ・オイゲン、Z1、マエストラーレの5隻は即座にドックへ入渠。各国の技師によって点検が行われた。
結果、戦艦2隻とプリンツ・オイゲンは問題無し、航行、戦闘どちらとも支障無しと言う判断が出た。
行った修理と言えば通信設備を取り換えたぐらいで済んだ。
だが駆逐艦2隻はまず対潜兵装と魚雷の修理、機銃弾痕を塞がなければ戦線への復帰は出来ないとの事だった。
損傷艦で応急修理が必要な艦はそれを施し、係留。
損傷艦の一覧に彼女達が加わったが優先順位度で言えば上位になる。
と言うのも損傷しているとはいえ合同艦隊の彼女達は浮いている。要は浮力があり自力航行が最低限出来ると言う事に他ならない。
しかし我が海軍の艦艇などは大破着底をしている艦などが多い。その艦艇を難しい作業の上、引き揚げてともなると以前に説明したとおりだが物凄く時間が掛かるのだ。
だが合同艦隊はそんなことは無い。修理に掛かる時間を考えると合同艦隊の面々を優先した方が良いと言う判断だ。
まぁ南西諸島奪還作戦には間に合わないだろうがその次の作戦ならば間に合うだろう。
「失礼します」
「入れ」
ノックの後にプレハブ執務室に入って来たのは照月だった。
彼女は本日の秘書艦だ。その手には幾つかの書類の束が握られている。恐らくは報告書などだろう。
「提督、報告書です」
「ん、ありがとう。それで、合同艦隊の艦娘や妖精達の様子はどうだ?」
報告書を受け取りながら合同艦隊の艦娘や妖精達の様子を聞いてみる。
「全員、日本へ到達する事が出来た、と安心して大喜びしています。同時に失った仲間達を思って泣いたりと様々です」
「まぁ、その辺は彼ら彼女ら自身に乗り越えて貰わなければならないな」
「はい。それと合同艦隊の艦娘ビスマルク、ヴァンガード両名が提督に面会したいと言っておりますがどうしますか?」
面会か……何を言われるのやら分からんがまぁ良いだろう。
「構わん。今すぐにとは行かないが明日、予定を空けておこう。2人にもそう伝えて置いてくれ」
「分かりました。他に何か御用はありますか?」
「……いや、今の所は無いな。あ、いやある。あの書類の山を分別しておいてくれ。南西諸島攻略作戦関連の書類とそうでないもの、ぐらいの大まかな分け方で構わんから。頼んでも良いか?」
「勿論です。それじゃぁ早速取り掛かりますね」
「すまんな」
「いえいえ、お気になさらず」
照月は新しく俺と手先の器用な妖精数人で手作りした秘書艦用の机に書類の山を持って行って分け始める。
それを見てから俺は報告書に目を通す。
ふむ、損傷艦は長くて4か月程で修理を終えるか。
金剛達に比べれば随分と早い。訓練を入れれば7か月程か。いや、日本の艦では無いから訓練はもっと掛かると見るべきか。
補充人員は我々日本海軍から抽出する事になるが、まぁしょうがない。
使える戦力は多い方が良いに決まっている。暫くの間は共同戦線となるだろうか?
現状、損傷艦を更に抱えると言う結果になったが得られたものも大きい。
まず、戦艦ヴァンガード、ビスマルクと重巡プリンツ・オイゲンの3隻が戦列に加わる事。これは大きい。
戦艦の数はこれで6隻にまで増えて大幅な戦力の向上となったし、プリンツ・オイゲンも数少ない重巡の一翼を担う事になる。特に戦艦の方は金剛、霧島が南西諸島攻略作戦に参加出来るかどうかと言う所で、長門、日向の2隻だけよりもずっと心強い。
ヴァンガードは主砲がMark1 38.1cm(42口径)連装砲4基と強力だ。ビスマルクも38cm(48.5口径)連装砲4基とこちらも強力だ。
長門の41cm砲よりも大きさは劣るがそれでも十分な破壊力を持っている。
貫通力では負けず劣らずだろう。まぁ砲弾や砲身の製造、補給と言う面から見れば兵站に大きな負荷を与えるだろうが……それを言えば切りが無い。
艦艇の戦力が増えるだけでなく輸送船の方も大きい。
積み込んでいたものには各艦艇の武装や砲弾の生産設備や各種機材が詰め込まれていた。
更には各種新兵器や、新技術、大馬力エンジンなどもあったし、他にも少数の部隊も乗っていた。
特にすぐに使える、と言う意味で大きいのは航空機や戦車だろう。
特筆すべきはドイツ陸軍の戦車と兵員輸送車、各国の航空機、そしてその技術などだろう。
彼らが我々に手土産、として持って来た目録だがまぁ高性能な兵器が所狭しと並んでいた。
4号中戦車
3号戦車
3号突撃砲
6号重戦車ティーガー1、
ハノマーク兵員輸送車
75mm対戦車砲
フンメル自走砲
ケッテンクラート
車両関連だけでこれほどまでにあり、更に個人用の装備や対戦車火器も数多い。
パンツァーファウストやパンツァーシュレックと言った日本陸軍や陸戦隊が装備する個人用対戦車火器とは比べ物にならないほどに高威力のものがあった。
我々が使うものは接近しなければ使えないだとかそういう物が多いからな、人的被害を考えるとかなり有効な兵器となりえるだろう。
更にはこれ以外の兵器も数多く、
ティーガー2
5号戦車パンサー
実車や実物は無いものの色々な兵器の設計図なども数多い。
航空機はイギリスが、
スピットファイア戦闘機
ハリケーン戦闘機
をそれぞれ4機ずつ。
ドイツ空軍
Bf109戦闘機
Fw190戦闘機
地上襲撃型のBf110
スツーカ、
爆撃機Do217
など5機種を4機ずつ。
まぁ正直言ってしまえばこの中で活躍出来るのは4号戦車や3号突撃砲ぐらいだろうか。
と言うのも欧州での戦場とは違い、太平洋の戦場は基本的に島嶼帯が多く、それらの島は小さいことが殆どだ。更に言えばこの島嶼群は雨などが降ると地面はかなりの泥濘と化す。そんなところに総重量55トンのティーガー1重戦車や、70トンを超えるティーガー2、中戦車なのに46トンもあるパンサーを投入すれば足回りや駆動系などの故障が頻発して全くの使い物にならない。
その様な戦場の特性上、活躍するのはどちらかと言えば重戦車などよりも比較的重量の軽い3号突撃砲や4号戦車、フンメルだろう。それでも3種とも20トン以上もあるのだから恐ろしい。
陸軍の機甲科や海軍特別陸戦隊の装備する89式戦車は精々が13トン程度だ。それの2倍近い重量の戦車が果たして太平洋の島嶼帯の戦場でどれほど使い物になるか……
待ち伏せなどが出来る防衛戦では無くこれからは奪還作戦が主となるだろうからな、運用方法などもしっかりと考えなければなるまい。
それでも4号戦車が12両、3号戦車、3突が合わせて12両、フンメルが12両とそれなりの戦力なので投入する機会はあるだろう。寧ろこれだけの戦力を飾り物にしておくのは勿体無さ過ぎる。
あぁ、そう言えば陸軍の連中が戦車を見て大喜びしていたな。
まぁ陸軍に回されたのは3号戦車と3号突撃砲で4号戦車とフンメルは海軍特別陸戦隊に回されることになった。
まぁ正直俺としては3号だろうが4号だろうがどちらでも良かったのだ。
だが陸戦隊の連中が我々は橋頭保の確保の為に陸軍よりも先に上陸することが多い。敵地に飛び込むのだから出来るだけ装甲の厚い戦車が欲しいとか何とか言っていた。
そして陸海合同の空技廠の面々が大きく興味を示したのは、Me264と言う4発重爆撃機とJu390呼ばれていた6発重爆撃機だ。
これは機体が大きく輸送船内に分解されていたのだが組み立てて飛ばしてみたところ、かなりの高性能を発揮したのだ。
それを見て驚いた空技廠は早速その技術を取り入れて開発を進めることにした。
以前にも説明したと思うが今現在空技廠はマリアナ諸島にある深海棲艦の飛行場を直接爆撃出来る4発爆撃機の開発を急いでいる。
だがその4発重爆撃機は最高速度、巡航速度が遅い、安定性が低い、爆弾搭載量が少ないなどの問題を抱えている。
それらの問題を解決するために技術を取り入れるともに欧州各国の設計技師や技術技師らの協力を得て日夜開発に明け暮れている。
後は、新型の液冷エンジンや、パルスジェットエンジン、ターボジェットエンジンなどの新技術が盛りだくさんだ。
対空、対水上電探やソナーなどの電子機器、光学機器なども数多く我々海軍が使用している電探などよりもずっと精度や信頼性が良い。
まぁ纏めると最新兵器や強力な兵器、最新技術が盛り沢山で陸海軍の最前線で戦う妖精だけでなく技術者妖精の連中も狂喜乱舞するぐらいの沢山の新兵器、新技術などが盛り沢山、と言う事だ。
まぁそれは置いておいて今進めるべきは南西諸島攻略作戦の準備だ。具体的な実施時期は決まっていないが早ければ1か月、もしくは1か月半ほどだろう。
あまり時間は無いが出来るだけ万全に近い状態で挑まなければならない。
この作戦の成功、失敗にこの国の、それだけではない。世界そのものの命運が掛かっているのだから。
今回登場した鈍足軽空母ヌ級の元ネタ
今回登場した足の遅い軽空母ヌ級の元ネタですが、こいつは護衛空母と言われる奴です。代表と言うか、日本海軍で皆さんが知っているのは大鷹、あきつ丸辺りですね。他にも居ますが、アメリカ海軍だとガンビア・ベイとかです。実装されていますね。皆可愛いですね。
これらの護衛空母の特徴として上げられるのは、
・大きさが正規空母の約半分程度である事。
・排水量は3/1程度であること
・低速で搭載武装(対空火器など)が少ない。
・搭載可能艦載機数も少ない。20機程度しか搭載出来ない艦もあるぐらい少ない。
・ブロック工法や電気溶接などの技術を使って建造されることが多く、安価で大量生産に向いている。(アメリカは化け物工業力を持つ国だから、ざっと数えただけでも余裕で100隻を超えてます。その内のかなりの数がイギリスへレンドリースされていたりします)
・低速なので艦隊、例えば機動部隊などの高速艦隊に随伴が出来ない。(基本的に20ノット以下の速力の艦が多い。15ノットとか普通)
・防御力がとても弱い。1発の被弾でも結構致命傷になりえる。
(どこかで聞いた話ですがレイテ沖海戦の時、戦艦大和が撃った砲弾が護衛空母の1隻に命中したが防御力が無さ過ぎて貫通した、と言う話があるぐらい。調べてみると本当は命中していないとかなんとか書いてあるので本当かどうかは分かりませんが)
と、まぁこれが元ネタです。
本来なら輸送船団を潜水艦から守るための護衛が主任務ですが今回はちょっとばかり主力艦隊にぶち込みました。
次の元ネタ、と言うか戦艦の弾幕が薄い、と言う件について。
これはただ単純に、ミズーリ級などのアメリカ戦艦と比べての話ですね。
アメリカの戦艦や空母って、本当にハリネズミと言われるぐらい1隻1隻の装備している対空兵装の数が桁違いです。
例に挙げるならばアイオワ級戦艦、艦これにも実装されている作者が大好きなアイオワ姉さんですが、
40mm機関砲(4連装) 76門(19基)
20mm機関砲 68門(単装52基、連装8基)
もうこれだけで漂ってくる鬼畜感。
対比として大和(最終時)の物を貼りますが、圧倒的だと思います。
40口径12.7cm連装高角砲:12基
25mm3連装機銃:52基
25mm単装機銃:6基
13mm連装機銃:2基
一応言っておくと大和には25mm3連装機銃がかなり搭載されていますが、命中精度はアイオワに比べると良くないです。アメリカさんはVT信管(こいつ単体での命中率の向上は有り得ない。レーダーなどと組み合わせなければならない)とか超優秀な対空、射撃レーダーも備えていますからね。そういう総合的な物で考えるとアイオワに圧倒的な軍配が上がります。
話を戻しますが、このアイオワ級などに比べると対空射撃による弾幕は薄い、と言うだけです。欧州各国の戦艦の対空兵装の搭載数は平均的だと思います。
こんなのが2隻も揃えば地獄絵図です。
とまぁ、今回は最後のあとがきにちょろっと元ネタを書かせていただきました。
そして最後に、執筆途中の物を誤投下してしまいました。本当に申し訳ありませんでした。