暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第17話

 

 

 

 

 

上陸部隊先発隊である海軍特別陸戦隊に前進命令を出してから、俺は船団護衛に就いていた長門と日向を沖縄本島近海に呼び寄せ、上陸予定地点への戦艦6隻による準備砲撃を開始した。更に隼鷹、飛鷹から流星が80番を括り付け敵飛行場を爆撃しに行く。今はもう夜が明けて明るくなり、敵艦隊との戦闘中は感じなかったが南洋の熱帯の暑さが俺達を襲う。

 

実際には未だに戦闘中ではあるが敵艦隊の脅威は今の所少ないと言える。

対潜警戒や対空警戒は怠っているわけでは無い。事実、深海棲艦は飛行場の一部を修復し双発爆撃機であるB‐25や戦闘機が数機、こちらに攻撃を仕掛けてきた。だが電探にはしっかりと捉えており、報告を受けた直掩に就いていた烈風が瞬く間に撃墜した。

 

「提督、朝飯だよ」

 

「ん、ありがとう隼鷹」

 

「なーに、気にしなさんな。お礼は提督秘蔵の日本酒で」

 

「何故知っているのかと言う事は置いておいて、まぁ良いだろう」

 

「お、マジで?やったぜ。いやー、言ってみるもんだね」

 

とまぁ、隼鷹艦橋内では俺と隼鷹が共に朝食を取っていた。

会話で分かる通り隼鷹は酒好きで、かなり上下関係を吹っ飛ばしたような感じで接してくるタイプの艦娘だ。

 

以前にも言った通り、こんなんだが実際はかなり頭が切れる。秘書艦についた時も書類仕事では良く世話になる。しかもこれで料理が出来ると言うのだから驚きだ。まぁ俺は仕事を優先させて食堂に行かず、缶詰やらで食事を済ませようとするタイプの人間だったらしく、俺が倒れたら本末転倒だと鳳翔によく怒られている。

その為に偶にだが彼女達が作ってくれることがある。

 

「それで、砲撃の方はどうなっている?順調か?」

 

「ま、今の所はね。金剛を先頭にして霧島、長門、日向、ビスマルク、ヴァンガードって並んで上陸予定地点に向けてバカスカ撃ち込んでる。昼頃には終了して上陸を開始するから、あと4時間ぐらいは砲撃が続くのか。砲撃音、ここからでも聞こえるっしょ?」

 

「まぁな。しかしあと4時間か……いよいよだな」

 

「これが反撃の一歩、ってところか。何が何でも成功させなきゃね」

 

「あぁ、失敗は許されないからな」

 

今、隼鷹と飛鷹は砲撃部隊の20海里後方で流星に爆装を施して飛び立たせている。

基本は飛行場の爆撃を行う為に陸用の80番や50番、25番、6番を装備しては爆弾の雨を降らせている。

鳳翔は上陸船団を守るために攻撃には参加させていない。それで輸送船がやられたら本末転倒だからな。

 

 

それから4時間後に砲撃終了の報告を受け、遂に先発隊に上陸開始の命令が下った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「上陸開始15分前!!」

 

神州丸から発進した大発動艇29隻の先発上陸隊第一波が安座間浜に向けて進む。

幸いにも波は穏やかで低く、問題無く進めている。

上空には支援の為に6番を4発を搭載した流星と、同じく6番を2発搭載した烈風が飛んでいる。

 

 

 

 

第一波で上陸するのは1450名で、大発動艇には50名ずつの小隊と彼ら用の弾薬が載せられてる。

第二波で残りの950名と砲兵隊が上陸する。

 

本来ならば大発動艇には完全装備の兵士を70名載せられるのだが今回は迅速性と機動性を優先させて上陸する陸戦隊はそれぞれの個人装備である鉄帽や三八式歩兵銃と弾薬嚢、水筒と携帯用円匙などのみに絞り、分隊事に九九式軽機関銃を装備していたり小隊事に八九式重擲弾筒を装備している。

そこに多少の継戦能力を持たせるために弾薬も載せている。

ただでさえそれらも重量物で揚陸に時間が掛かるのに、完全装備となると数十kgにも達し、しかも上陸直前は敵から狙い撃ちにされることが多く、素早く物陰に隠れることが出来なくなる。

そうならない為に完全武装ではなくなった。

 

 

 

 

「上陸用意!1分前!」

 

大発の操縦員が大声で怒鳴ると、確かに海岸との距離は目前に迫っていた。

 

「いいか!?上陸したらすぐ目の前にあるコンクリート製の階段まで走れ!間違えても砲弾孔に入るんじゃないぞ!」

 

「上陸したらすぐに散開しろ!纏まって動いているとただの的にしかならんからな!」

 

「姿勢は低く!だが銃は砂で汚すな!撃てなくなるぞ!」

 

「最初は反撃よりも物陰に隠れろ!呑気に撃っていたら直ぐに殺されるぞ!」

 

大発の上ではそれぞれの小隊長が大声を上げて改めて手筈を説明している。

全員の顔は緊張で強張っており、銃を握り締めたり水筒の水を飲んだりと様々だ。

 

上空を飛ぶ流星がトーチカに向けて爆弾を落とす。

爆発音とともにコンクリート片があちらこちらに撒き散らされる。

 

そして遂にその時が来た。

大発が浜に乗り上げた衝撃が伝わり、エンジン音が停止する。

操縦員が大声で叫ぶ。

 

 

 

「正面にトーチカ1!左側に砲弾孔があるぞ!気を付けろ!」

 

そして船首についている道坂が降りた。

 

「行け行け行け!!」

 

小隊長が怒鳴り、散開しながら一斉に走り出す。

猛訓練中に何度も怒鳴られながら体に叩き込んだやり方でコンクリート製の階段を目指す。

 

正面のトーチカやあちらこちらから射撃音、砲撃音が響く。

 

「ガッ!?」

 

「ブッ!」

 

それにより何人もが撃たれて倒れていく。

銃弾の飛翔音が耳元を掠める者、体や腕に当たってのたうち回る者、即死する者。

甲高い音を立てながら鉄帽を貫通され穴を開けて頭を撃ち抜かれる者も居れば砲撃によって四肢を千切られ、臓物をまき散らしながら吹き飛ばされる者。

 

「走れ走れ!止まるんじゃない!」

 

「クソ!戦艦は何をやってた!?まだトーチカも残っていやがる!」

 

「あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」

 

「衛生兵!!ちんたらしてねぇで早く治療してやれ!」

 

「馬鹿言うな!こんな何の障害物も無いところでやったら良い的にしかならんだろうが!」

 

「流星は!?爆弾を落とすんじゃないのか!?」

 

「何のために爆弾を積んでやがるんだ!?さっさと落として破壊しやがれ!」

 

あちらこちらで怒鳴り声が上がる。すると漸く流星がトーチカに向けて急降下を始めた。

そして60kg爆弾を2発落とすと機首を引き揚げて去っていく。

 

落とされた爆弾は正確にトーチカを貫き、吹き飛ぶ。

更に続いて流星が急降下し、深海棲艦側の塹壕内にいた敵兵を吹き飛ばす。

 

「よっしゃぁ!」

 

「進め!一気に塹壕を抑えろ!」

 

その瞬間、分隊事に配備されている九九式軽機関銃が連射音を立てて制圧射撃を行うと塹壕を抑える為に走り出す。

 

 

 

 

「良し!塹壕を抑えたぞ!」

 

「このまま砲兵隊の到着を待っていたら死ぬ!通信兵、戦艦に砲撃要請をしろ!」

 

「ですがこれほど近いと巻き込まれる可能性が!!」

 

「構わん!どちらにしろ敵弾で死ぬよりかは砲弾を叩き込んで貰った方が良い!」

 

「了解しました!」

 

「急げ!戦艦に砲撃を要請したからそのまま外にいたら破片を食らって死ぬぞ!」

 

前方にはまだいくつかトーチカと塹壕が残っているらしく射撃を続けている。

本来ならば砲兵隊の到着を待ち、それに支援を行わせる予定だったのだが彼らの独断により戦艦へ砲撃支援を要請した。

確かにこのまま砲兵隊の到着を待っていれば敵弾によって殺されるだけだろう。

 

通信兵の言う通り、洋上では長門を始めとした戦艦6隻が砲身を向け始めていた。

抑えた塹壕の中で銃を抱えながら鉄帽を抑え、ある者は携帯円匙で自身のいる場所を少しでも深くしておこうと穴を掘っている。

 

そして戦艦6隻から砲弾が放たれた。

歩兵銃や軽機関銃から放たれる銃弾とは遥かに重い飛翔音を響かせながら指示された場所に降り注いだ。

 

 

 

その後、陸戦隊は流星や烈風の上空支援や戦艦、巡洋艦の砲撃支援を受けながら予定されていた1km地点までを確保すると、大発に積んでいた弾薬等の荷下ろしを行った。

そしてすぐに大発は神州丸に引き返して残りの950名を載せて揚陸させた。

 

更に少しすると107号輸送艦と109号輸送艦が接岸。

九十一式10cm榴弾砲とホハが揚陸。

 

即座に200mほど内陸に陣地を構築、榴弾砲は前線支援の為に砲撃を開始。

ホハは揚陸艦から武器弾薬、燃料、水、食料等の荷下ろしに奔走した。

 

1.5km地点までを確保した時に陸軍3個師団の上陸開始が命令されると大挙して海岸に押し寄せ、付近一帯は陸軍妖精で溢れ返った。

 

 

 

翌日、深海棲艦側からの夜襲などがあったものの、橋頭保の確保に成功した彼らは陸軍師団を主力に志喜屋漁港と仲伊保漁港を結ぶラインまでを確保する為に進軍を開始。

敵の戦車やトーチカに対して苦戦させられたものの、5日後にはそのラインを確保した彼らは本格的に各種物資の揚陸を開始。

 

この時、第3段階に突入しようかとしていたが敵が陸上部隊の支援に注力していた隙をついて飛行場が修理されてそこから敵機が飛び立ち、陸上部隊を空から襲い始めると言う事態が発生。

 

本島南部の奪還前に飛行場と座礁した敵戦艦を再度破壊するために一時的に進軍を中断。こちらも体制を立て直す事になった。

 

鳳翔に搭載されていた流星もこれに参加。

丸々1週間の砲爆撃によって飛行場と敵戦艦は破壊された。

 

更に本島南部奪還を行う時、西原飛行場を最優先で奪還する事になった。と言うのもこの飛行場を奪還すれば、陸軍第32飛行戦隊が進出出来るからだ。

 

その命令を受けて各師団、部隊は西原飛行場目指し進軍するも敵も飛行場周辺にはかなりの防御施設などを構築し守りは固かった。

塹壕などが張り巡らされ鉄条網、トーチカの替わりに戦車を砲塔のみを出した状態、ダッグインさせたりと猛烈な抵抗に晒された。

 

戦車は榴弾砲の集中砲撃により破壊する事は出来たが敵は地下陣地なども構築しておりそれらを潰すのにも時間が掛かった。

事実、攻略に参加した第23歩兵師団は1個連隊を、第39歩兵師団は1個連隊の計2個連隊丸々を喪失する事態に陥った。

 

 

最終的に空爆、砲撃とあらゆる手段を尽くして敵の防御陣地を突破。

西原飛行場を奪取したのは飛行場攻略が始まってから1週間が経ってからだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

先日、漸く西原飛行場を奪取することが出来た。

母艦航空隊の数には不安が残るから早めに32飛行戦隊の進出を図りたかった為に上陸地点から最も近い西原飛行場の奪取を命令したのだが、陸上部隊の損失が思いの外多かった。

 

まさか丸々2個連隊を喪失することになるなんて誰が予想できようか?

事前の準備砲撃や爆撃で破壊されているかと思ったのだが地下陣地が頑強に抵抗してきたのだ。流石にそれを素通りする訳には行かないから1つ1つ潰して回るしか無かった。

砲爆撃ではトーチカなどは破壊する事は出来ても地下陣地は破壊しきる事は出来ず、結局前線の彼らが地下陣地を潰すのに使ったのは所謂火炎瓶と言う物や直接ガソリンを流し込んで火を付けたりともう本当に様々な手段を使った。

 

 

現在、我々が奪還したのは西原飛行場周囲500mと、そこから大体旧平和記念公園までを結ぶラインだ。

多少、前後したりして凸凹してはいるが概ねそのラインだ。

飛行場周辺には防御陣地を構築して、敵の反撃に備えている。

 

そして、思いの外損失が大きかったのでこれ以降の戦いも同じことが予想される。なので本土に予備師団の投入を要請した。

恐らく沖縄本島全土を奪還する前に今のままでは陸上戦力が枯渇する事になる。そうなっては敵に反撃されて今まで奪還した場所まで再び奪われることになる。そうならないために今ここで予備師団の投入を要請したのだ。

 

今現在、予備師団に指定した2個歩兵師団は、なんとか人員と武器の充足率を整えることが出来た。最悪、予備として揚陸した武器を渡して戦ってもらう事すら覚悟していたのだがそうならずに済んだ。

訓練の方は既に終了しているのであとは実戦投入を待つばかり。上陸作戦の先発隊などの様にそういった訓練をしていないので使えないが普通に戦うだけならば問題無い。

 

既に上陸した各師団を載せた輸送船団は既に本土へ向けて帰ったから早ければ予備師団の投入は2週間後には可能だろう。

 

 

 

 

そして、本島攻略がある程度進み飛行場も奪取したため海軍特別陸戦隊は慶良間諸島の奪還を行う為に本島攻略から事前の予定通り引き抜いた。

107号輸送艦と109号輸送艦を使用して慶良間諸島渡嘉敷島、阿波連浜に上陸。準備砲撃には重巡洋艦5隻と駆逐艦6隻を割いて丸々1日を費やした。

 

そして9日後、渡嘉敷島全域の奪還に成功。続いて座間味島、阿嘉島、慶留間島、最後に外地島を奪還。

2週間ほどで全島の奪還に成功した。

想定よりも敵戦力は少なく、想定の半分以下だった。どうやら本島防衛のためにかなり引き抜かれたらしい。

防御陣地も本島程では無く、かなり順調に奪還することが出来た。

 

外地島には元々慶良間空港があったが深海棲艦も使用していなかったらしく荒れ果てて雑草が生い茂っていたがそれらを取り除き、滑走路の修復さえ済んでしまえば問題無く使用出来る。それでも1週間程は時間が掛かるが。

800mもある滑走路なので本島の西原飛行場に比べると短いが陸攻などでは無く戦闘機の運用ならばかなり有効的に使える。

 

この時点で陸戦隊第3歩兵連隊は2000名程に減っていた。

砲兵隊の方は前線の歩兵支援についたホハの1両が破壊された。

これ以外に目立った被害は無く戦闘継続は可能。

彼らは続いて久米島へ上陸。5日間の激闘の末同島の奪還に成功した。

陸戦隊は久米島に守備隊200名を残し渡嘉敷島へ戻り部隊の再編を行った。

 

 

 

 

 

慶良間諸島、久米島などを陸戦隊が奪還しているその間、沖縄本島では毎日のように激戦が繰り広げられていた。

 

この時、西原飛行場には32飛行戦隊が進駐。母艦航空隊の烈風などに代わり制空支援や対地支援を行った。

 

32戦隊の装備機である疾風は25番を2発搭載可能だ。

まぁ爆弾を運んでくる輸送船に遅れが生じているから使用は出来ないが。代わりに一式陸攻が12機追加で派遣され支援にあたっている。

 

激戦と言うのは、本島南部、旧那覇市街地に突入すると暫くは何の反撃も無かったが突然後方などあちらこちらから敵兵が湧いて出て分断孤立させられる部隊が続出した。

 

結果、旧那覇市街地を完全制圧するのに3個歩兵連隊と1個戦車中隊を喪失。

歩兵連隊の残存兵は纏めて1つの部隊として再編、継続して攻略にあたった。

 

戦車中隊はかなり手酷くやられ、12両中10両が完全に破壊され残ったのは2両だけ。その内の1両も足回りをやられてしまい前線への復帰は不可能。最終的に残ったのは1両だけだった。

 

9日に渡る激闘の末、どうにかして旧市街地を奪還し那覇飛行場1km程まで前進。

だが旧赤嶺駅を超え、那覇飛行場に隣接していた旧自衛隊那覇駐屯地や自衛隊病院などの飛行場周囲の開けた辺り、国道331号線を超えて差し掛かると激烈な抵抗を受けた。

先頭を進んでいた2個連隊が瞬く間に壊滅。敵は331号線を射撃目安にしているらしく、そこに足を踏み入れるか超えると機関銃、迫撃砲などあらゆる武器の射撃を受けた。

 

敵はここにかなりの戦力、想定1個師団を配備しているらしく野戦重砲も多数配備されており、砲撃は苛烈、更には地上撃破されたりした戦闘機などの機銃なども地上配備して抵抗している。

爆弾を投下したりして破壊を試みるがどうにもあちらこちらに坑道を張り巡らしているらしく、潰しても潰してもあっちこっちから出てきては攻撃を加えられ、前線部隊はかなり疲弊している。

 

未だに331号線を超える事は叶わず、飛行場を使わせない為に爆撃をするに留まっている。

 

陸軍の要請を受けて戦艦の砲撃を叩き込んだ。

慶良間諸島の攻略に戦艦が居なかったのはそのためだ。だが慶良間諸島の防御陣地はそこまで強力では無く、更に言ってしまえば守備隊の数自体も多くなかった。地下陣地もごくごく少数しか確認されておらず対処も用意であった。なので戦艦の砲撃が無くとも重巡の砲撃で十分事足りたのだ。

 

 

 

 

さて、話を戻そう。

那覇飛行場の奪還だが、やはり遅々として進まない。

既に5日間、331号線付近で激戦が繰り広げられている。

この時、陸軍からの要請により海軍特別陸戦隊第3砲兵隊が砲撃支援部隊として本島に再上陸。

陸軍の今作戦に投入されている3個師団はそれなりに機械化が進んでおりホハなどの車両も多数装備しているが市街戦によって多数が撃破されたり擱座してしまったりとかなりの被害を被っている。

 

なので前線へ補給物資を運ぶ車両も少ない。

今現在、那覇飛行場を包囲している部隊は大まかに北部、中部、南部と分担して担当している。

まず補給線に関しては小禄補給陣地に一度集積を行いそこからそれぞれの包囲線に補給を行っている。

安座間浜から小禄陣地まではホハを始めとした車両からトラックなどの車両を用いて物資を運んでいる。

小禄陣地から包囲線の各部隊への補給は重量物や嵩張る物などを運ぶ車両以外で運ぶ物資は人力だ。

砲弾、弾薬、燃料は車両で運び、食料などの軽い物は人力だ。

 

その物資運搬の人力での運搬をどうにかして補うためと火力支援の為に榴弾砲を使わせてほしいとの事だった。

 

確かに毎日の様に砲弾や銃弾を消費しているのだからもっと前線に向けて大量の砲弾薬と食料などを運ばねばならない。でなければ包囲が崩される可能性が出てきてしまうからだ。

今は問題無く包囲は出来ているが我々が置かれている状況はその内小さな綻びが後々大きく成りかねない状況なのだ。全ての問題を解決する事は無理だろうが出来るだけ小さなものから大きなものまで問題は潰していかなければならない。

 

今の所、一番の脅威になるであろう敵の増援艦隊は我々の上陸の報告を受けてか撤退を開始。我々のいる南西諸島方面への進出は無くなった。第1潜水艦隊からの報告だ。彼女達には引き続き南方海域での偵察任務に従事してもらっている。

 

既に3か月以上も何処の港にも寄港せずにいるがそれはしょうがない。

寄港できる港がどこにも存在していないことも関係しているが、そもそも基本的に潜水艦は隠密行動を主任務にしている、と言うその特性上かなりの長期間の任務になる。しかも今回は南西諸島攻略作戦と言う大規模作戦が行われている為に南方方面からの敵の増援に警戒しなければならないから特に今回は長期間になる。

 

特に第1潜水艦隊は伊400型潜水艦で構成されている。

この型の潜水艦は無補給で地球一周を行えるほどに作戦行動に長けている。だからどちらかと言うと第2潜水艦隊よりも長期間の任務が行えるために必然的に増える。

呉に戻って来た時は第2潜水艦隊よりも長期間の休暇を与えられているからそれは仕方が無いとして割り切ってもらうしかない。

 

今回は最低でも南西諸島攻略作戦が完了するまでは第1潜水艦隊はそのまま任務に就き続けなければならない。

第2潜水艦隊は我々第一機動艦隊と行動を共にしている。作戦海域近海での哨戒任務だ。既に命令を出している通り、彼女達には機会があれば敵艦隊への攻撃の許可を出している。

 

 

また話がズレたが一番の問題だった敵艦隊は撤退、脅威は無い。

今の我々、この第1機動艦隊には敵艦隊と正面からのぶつかり合いは不可能だ。だからこの報告は艦橋の参謀達が歓声を上げるほどの嬉しい報告だった。

 

まぁそれは置いておこう。

今優先しなければならないのは那覇飛行場の奪還だ。ここをどうにかして奪還しない限りは戦線を中部、北部へと押し上げられない。

西原飛行場から毎日の様に一式陸攻と疾風による爆撃を行っているが未だに抵抗は強い。しかも那覇飛行場周辺は開けている為に何度かの攻勢に分けて奪還することが出来ない。開けている、と言っても多少の小高い丘だったりが存在するがそんなものは大した意味をなさない。と言う事は一度の攻勢で全てを奪還するしかないのだが、それがかなり難しい。

 

各部隊は損害の確認、再編等を行っている。

早ければ3日後に攻撃を再開させることが出来るが陸上部隊には入念な準備の下、再攻撃を開始するように言ってある。すると陸上部隊から、

 

「ならば10日間欲しい。それだけあれば準備は整う」

 

との報告が上がって来た。

まぁ構わない。被害を最小限に確実に奪還出来るのであればそれに越したことはない。

 

更には再編や準備が終わるまでの10日間、戦艦、巡洋艦、駆逐艦からの砲撃に加えて流星と進出した一式陸攻、更には輸送船によって届けられた爆弾を搭載して疾風も加わり烈風までもが6番を搭載し爆撃を行う事になった。

 

既に戦艦6隻と巡洋艦、駆逐艦は飛行場周辺に対して砲弾を叩き込み始めている。文字通り地形が変わる程だ。双眼鏡を覗くと、砲弾が大量の土を巻き上げながら炸裂する様子が簡単に見て取れる。

 

「凄いな……」

 

「だねぇ……これを10日間も続けるんだろ?……深海棲艦の陸上部隊じゃなくて良かったって心の底から思うよ」

 

「これで、那覇飛行場を奪還することが出来れば良いんだがな。そう上手くいくものかどうか」

 

「あとは陸軍を信じるしかないね。あいつらならやってくれるさ」

 

「そうだな……」

 

本当は予備師団の到着を待っていても良かったんだが、報告によるとあと2週間は掛かるらしい。と言うのも物資の積み込みが遅れ気味で人員だけならば送る事は可能だが他の物資、特に弾薬がまだ積み込み終えていないから継戦能力に欠けるとの事だった。

確かにそれでは前線へは師団を送る事は出来ない。今現在本島に備蓄されている砲弾薬は戦闘中の3個師団の分でこれを更に2個師団に分け与えるとなると戦闘に支障を来す。

 

本土から輸送船で大量に砲弾薬を送り込んでいるがそれでも消費の方が多く、陸上部隊もだが我々海軍の砲弾や爆弾の消費量が尋常ではないぐらいの量なのだ。

既に戦艦、巡洋艦は今日までの支援砲撃や準備砲撃によって何度も補給をしている。

 

那覇飛行場への準備砲撃前にも一度補給しているし、更にはその後も補給予定だ。

陸軍と海軍、どちらかと言えば海軍艦艇が使用する砲弾の方が明らかに多い。だから海軍艦艇用の砲弾の量を多めに沖縄近海まで輸送しているからだ。割合で言えば6:4と言ったところだろうか。勿論海軍が6だ。

陸軍や陸戦隊が使うのは小口径の小銃弾や迫撃砲弾が殆どで、それぞれの師団に配備されている一番火力を持つのは九十一式榴弾砲だ。

 

口径統一の観点からそれ以外は配備していない。

種類が増えれば増えるほど、補給線への負担は大きくなる。出来るだけ補給線と生産ラインへの負担を減らすために取った策だ。

砲兵師団ならば更に大口径の15cmクラスの大口径榴弾砲を多数装備しているが今回は砲兵師団の参加は無い。

 

 

小銃や機関銃に使われる小口径弾であれば1隻でもかなりの数を運び込めるのだが迫撃砲や九十一式はそれなりに砲弾が嵩張る。だからこそ多数の輸送船で何度も何度も輸送しなければならない。

 

輸送船は一度に20隻で輸送船団護衛艦隊と共に日本本土と沖縄を行き来している。

輸送船団護衛艦隊は、長門、日向、那智、羽黒、愛宕、摩耶を第1機動艦隊に引き抜かれているが、鳳翔はそのまま船団護衛に就いている。 

沖縄近海に来た時、物資の揚陸が終わるまでの間は地上支援任務に就いている。

 

 

しかし、ここ最近関東から東海にかけて空襲が激化し始めているらしく弾薬砲弾等の生産に影響が出始めている。

にも関わらず何故前線である沖縄に砲弾薬や燃料が大量に輸送出来ているのかと言うと元々、この作戦に備えて大規模輸送作戦終了時から凡そ1年半、備蓄を進めていたのだ。それを開放しているからだ。

それでも限界はあるからその限界が来るまでに決着を付けねばならない。

 

周到に準備をしてきたつもりだったが、ここまで手古摺るとは……

 

この間にも隼鷹と飛鷹の飛行甲板からは流星や烈風が爆装を施して飛び立って行き投下し終えると戻って来てはまた爆弾を抱えて飛んで行く。

それが毎日毎日続いている。

 

 

 

 

 

 

海軍陸戦隊は沖縄本島以外の小島の制圧に動いている。

慶良間諸島の奪還が終わり、再編が終了後彼らはまず、伊是名島と伊平屋島の奪還に動いた。

この両島には深海棲艦の守備隊は極少数しか配備されておらず3日ほどで奪還に成功。

続いて奪還目標となったのは与論島。ここは1週間ほど掛かった。

 

そして今現在、奪還の為に上陸、戦闘が繰り広げられているのは沖永良部島だ。

こちらは敵の数は少ないながら、かなりの抵抗を受けているらしく未だに制圧の目途は立っていない。

 

種子島以南の島々は深海棲艦の手に落ちている。

だから種子島以南の島を全て奪還せねばならない。

 

更にこの方面への戦力増強は続いている。

先ず、追加で配備されたのは慶良間諸島に2式大挺が20機。

これは南西諸島の奪還が成功したときにはこの部隊が哨戒任務を担当するからだ。

 

今現在はその爆弾搭載量を生かして前線への爆撃任務に当たっている。

80番を2発も搭載出来るのはかなり大きい。と言うのも2式大挺1機で流星2機分になるからだ。20機だけで流星40機分の爆装量になる。

他にも25番を8発、6番を16発と大量に搭載出来る。あとは対艦攻撃用に航空魚雷を2本搭載出来る。

これを活用しない訳には行かないだろう。

 

次に、西原飛行場に陸軍第42飛行戦隊だ。

この飛行戦隊は疾風36機を装備している。既に32戦隊と共に支援任務に就いている。

 

 

 

そして彼らの支援と前線で戦う陸軍将兵の働きもあって、10日の準備期間の後に各包囲線で全面攻勢を開始。3日間の激戦の末に漸く那覇飛行場を奪還。

 

同飛行場を奪還するのに、合計6個連隊が消滅、もしくは壊滅の大打撃を被った。

 

 

 

 

 

 

那覇飛行場の奪還後、それぞれの陸軍部隊は続いて嘉手納飛行場奪還の為に前進を開始。

まだまだ南西諸島奪還作戦は終わりそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はかなり会話が少ないですが、御容赦下さい。
この様な感じがあと1話か2話続くと思いますので……

陸戦の厳しさを書けていたら嬉しいです。



評価、下さい……(小声)
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