暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第18話

 

 

 

 

那覇飛行場を奪還し終え、首里城辺りまで前線を押し上げ奪還に成功。だが未だに南部全域の制圧とはならず、南部全域の制圧ともなると旧うるま市のある真栄田岬を超え、旧前兼久漁港と旧石川石炭火力発電所を結ぶラインまでを奪還しなければ南部全域の奪還とはならない。

 

更に中部はそのラインから名護市全域を含むから北部全域と同じくらいの広さと面積を持つ場所を奪還しなければならず、北部に至っては完全に熱帯雨林。

最低でもあと2か月は掛かる見通しだ。

 

まず我々は嘉手納飛行場と読谷飛行場を奪還しなければならない。

北部制圧を完遂するうえでこの2つの飛行場はある種の要塞の様相を呈しており、これを素通りすることが出来ない。

 

しかも深海棲艦は沖縄本島に西原、那覇、嘉手納、読谷飛行場の4つしか整備していなかったから残りの2つの飛行場を奪還してしまえば深海棲艦側の飛行場は無くなり航空戦力の脅威が無くなる。

 

そこで先ず我々は嘉手納飛行場の奪還を目指して入念に航空偵察を行ったのだがこれがまたとんでもないことになっていた。

塹壕と鉄条網は5重に張り巡らされトーチカなども無数に設置されており、しかもどうやら地下通路で各塹壕やトーチカと通じているらしく一筋縄では行かない様になっていた。

 

ここに無策で突っ込めば2個歩兵師団なんぞ瞬く間に壊滅どころか消滅しかねないし機甲師団も簡単にやられてしまうだろう。

 

しかも読谷飛行場との距離は5kmほどしか離れていなく、相互支援が可能なように重砲などを配置しているから陸軍師団は2つの要塞を同時に相手取らなければならないと言う、真面目に戦えば地獄絵図が簡単に形成されるであろう。

 

そこで俺は陸軍の各師団長や参謀達と話し合いを行った。

結果的に我々が下した判断は、多少時間が掛かろうとも安全策を取ろう、と言う事だった。

 

 

安全策と言うのは今現在、我々は予備の2個師団の到着を待っている状況にある。だからこの2個師団の到着を待ち、攻勢に出る、と言う事だ。計5個師団もあれば流石になんとかなるであろう、と言う予想からだ。総勢4個歩兵師団に1個機甲師団がこれで揃い踏みになる。

 

歩兵師団だけで7万人に近い大戦力となる。

機甲師団は上陸当初、150両以上保有していたが度重なる市街地戦で深海棲艦側はゲリラ戦を展開、その数を80両にまで減らしていた。

損失した戦車全てを補充すると言う事は出来ないが20両は確保して送り込む、と言う返答がもらえた。

 

更に追加で要請した1個砲兵師団と1個歩兵師団が1か月後に到着予定だ。

これらの前戦力が揃えば7個師団の大戦力となり沖縄本島の奪還も加速的に進むであろう、と予想されている。

 

 

この7個師団は今の日本が揃えられる全ての師団であり総力だ。

敵も死に物狂いで抵抗して来ているが、我々はそれ以上の意思と決意でこの作戦に臨んでいる。

何度も言っているが、負ければ日本はもう二度と深海棲艦に対しての反抗する戦力も何もかもを失ってしまう事になるのだ。

 

決して負けられない戦い、と言う事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

損傷の為に日本本土へ回航した飛龍と蒼龍の現状だが、2隻とも回航途中に水密扉が破損して浸水が広がったりと、かなり損傷甚大で機関の浸水も酷かったりと総取り換えをしなければならなかったりと、完全に修理を終えるのに4か月。

 

更にこの機会だからと言う事で飛龍と蒼龍の2隻は修理に合わせて対空兵装の充実を図る事になった。25mm機銃を合同艦隊の持って来ていた40mm対空機関砲へ換装する事になった。

 

確か、性能試験を行ったときに25mm機銃よりも近距離での威力が高いことが分かったかららしい。確かに空母は防御力が低くそう簡単に防御力を上げる事は出来ない。やれるとしたらバルジを増設するぐらいだがそうなると速度が下がる恐れがある。

ならば対空火器の数と威力を上げるしかないわけだが、40mm対空機関砲は4連装だから単純な砲門数でもかなり増加する。

 

今回の改装は40mm対空機関砲を国産化し、配電系統の不具合の確認等なども含まれているらしい。

正直、一級線の空母を兵器実験に使うとはどうなのか、と思ったがそもそもの話兵装実験の行える艦が居ないと言う問題があったのだ。まぁ最悪南方方面奪還作戦までに間に合ってくれれば特に問題は無いのだが。

 

まぁそうでもしないといけないぐらいに追い込まれていると言う事なんだが。

それ以外にも大なり小なり損傷を受けてる駆逐艦などもいるから、艦隊の再建には最低でも1年は掛かるだろう。

 

今現在、修理中の空母は大鳳、阿蘇、グラーフ・ツェッペリン、アークロイヤルの計4隻。これらは来年までには修理を完了する予定で、全ての空母が揃えば10隻に増える。鳳翔は基本、本土近海での搭乗員訓練か船団護衛任務が主任務となる為に一級線空母として数に加えていない。

 

戦艦は合同艦隊の戦艦が全て修理中だ。

元々日本海軍の戦艦は全て大破着底状態、空母を優先して引き揚げを行っていた為に一切引き揚げ作業が行われていない。

そもそもの話だが、戦艦一隻を引き揚げるのに空母の3倍近い労力を要するのだ。

試算であるが、大和と武蔵の1隻辺りの引き上げと修理に掛かる時間は、2年半。

この期間とその分の資材を他に回した方が少なくとも現状では建設的だ。2年半もドックを占領されていては敵わない。

 

戦艦は14隻が揃い踏みになる予定だ。

 

 

 

南方方面奪還作戦時までには最低でも空母10隻、戦艦14隻が揃う予定ではいる。だがそれでも深海棲艦の物量は遥か上を行く。

 

南方方面で相対する敵空母の数は2倍ならばまだ良い方、最悪3~4倍を覚悟しなければないのだから絶望的としか言い様が無い。

戦艦だって同じ状況なのだから、南方方面奪還作戦はどうやって成功させればいいのか皆目見当も付かない。

 

 

 

 

しかし、それ以前に目の前の南西諸島奪還作戦を成功させなくてはならない。

前述の通り、予備師団の到着を待ってからの攻勢になるが、予備師団の到着は2週間後の予定だ。

 

その間、前線将兵の皆には幾ばくかの休息を取ってもらっているが航空隊の面々は寧ろ全くの真逆と言っていい程に大忙しだ。

 

何故か、それは幾ら予備師団が到着するまで2週間あるとは言ってもその間、何もしない訳には行かない。

だから陸海軍問わずに航空隊からの爆撃を続けているのだ。更には戦艦や巡洋艦も時折、艦砲射撃を加えている。

流石に常に行うわけには行かないから日に4回、戦闘機は各飛行隊から20機ずつ、一式陸攻で爆撃を行っている。

 

西原飛行場には32飛行戦隊疾風72機と海軍第703航空隊の一式陸攻32機が進駐しているが、追加で陸軍第43飛行戦隊が追加で進駐。疾風を32機装備している。

合計で138機だ。

 

那覇飛行場には陸軍第52飛行戦隊と第49飛行戦隊の疾風計72機と更に海軍第701航空隊と第704航空隊の一式陸攻64機が進駐している。

合計136機

 

これで沖縄本島の全航空戦力は274機になっている。

 

更に慶良間諸島には二式大艇が32機、外地飛行場に海軍第313航空隊の紫電改32機が進駐済み。

 

合計で338機にまで増えているが深海棲艦の機動部隊を迎え撃つには到底足りていない。だからこそ空母4隻とその母艦航空隊が留まっているのだがそれを合わせても500機程度。

 

やはり戦いは質と量で決まる様だ、と認識させられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、予備師団が漸く沖縄本島に到着した。

これで戦力は十分に整った。だが、直ぐに攻略を始めるわけには行かない。

 

先ず、各師団に配備されている九十一式榴弾砲の陣地構築から始められた。

と言うよりも、各師団の九十一式榴弾砲を集めて臨時の砲兵師団を編成。既に沖縄本島攻略、奪還に当たっていた2個歩兵師団分は、臨時第1砲兵師団として、予備師団の2個歩兵師団分を臨時第2砲兵師団として編成。

 

第1砲兵師団を旧前田高地に、そして第2砲兵師団を旧伊祖公園に配置。

嘉手納飛行場までの距離はどちらとも2km程なので十分に射程範囲内だ。

敵の防御陣地は周囲1kmに渡って張り巡らされている。この距離は直接照準射撃となるので静止目標ならば狙った的にどうやっても外す事は無い。

 

各臨時砲兵師団は150以上の九十一式榴弾砲を装備している。

臨時第1砲兵師団は157門、臨時第2砲兵師団は162門となっている。

 

これでも凡そ30~40門ほど定数には足りないのだがそれは仕方が無い。そもそもの話だが砲兵師団は15糎榴弾砲が主装備なので攻撃力、破壊力ともにかなり劣っている。

まぁそれは幾ら何を言ってもしょうがない。

 

 

 

それでは嘉手納飛行場の奪還作戦の概要を説明しよう。

 

先ず、第23歩兵師団と第39歩兵師団、第17歩兵師団の計3個歩兵師団で飛行場を字新垣陣地と161.8高地陣地から旧嘉数高台公園を通って牧港漁港に至るまでの範囲で半包囲を実施。

飛行場周囲1km圏内には防御陣地が無数に構築されているので入れないから1.2kmほどのラインで半包囲線を構築する。左から第39歩兵師団、第23歩兵師団、第17歩兵師団の順番だ。

 

 

残った第59歩兵師団と第3機甲師団は防御陣地の突破の為に後方で待機。

半包囲線を構築している各歩兵師団は迫撃砲を装備しているので、砲兵師団と合わせて砲撃を実施する。

戦艦や重巡、空母艦載機も艦砲射撃、爆撃を実施。

 

今までにも実施してはいるが、更に徹底的に行う。

3日間の準備砲爆撃後に、第59歩兵師団を第3機甲師団が前進。

防御陣地を一点突破を目指す。最初に右翼側の包囲線を構築している第17歩兵師団と合同で敵防御陣地を突破師団が完全包囲、撃滅。

 

その後、第17師団は右翼側面から、突破師団は第39歩兵師団、第23歩兵師団と相対している敵防御陣地後方から攻撃。左翼側には海しかないのでこれで完全包囲が構築出来る。

 

これで嘉手納飛行場の奪還は成功するはずだ。

 

まぁ、正直な所どれほどの被害が出るか全く想像も見当も付かない。

一応出した試算では5~6個連隊分の死傷者が出る予想だがもっと増える可能性もあるし逆に少ないかもしれない。

 

既に半包囲線の構築は完了、あとは準備砲爆撃の指示を出せば奪還が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

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準備砲爆撃が丸々3日に渡って実施された。

4日目の明朝、攻撃命令が下令された。

 

第3機甲師団と第59歩兵師団が防御陣地の突破を開始した。

上空では疾風と流星が爆弾を抱えて飛び回り支援要請に応じて投下する予定だ。支援要請は今か今かと待っている。

 

「第3防御線にぶつかった!塹壕と機関銃がまだ生きていやがる!」

 

「隊長!第3小隊が第2防衛線の敵のトーチカにぶつかって足止めを食らっています!」

 

「爆撃を要請しろ!海軍や航空隊、砲兵師団の連中は何をやっていやがった!?何が準備砲撃だ!丸々3日もやってこれじゃ意味が無いじゃないか!」

 

「200m間隔で塹壕とトーチカ、機銃座が構築されてて支援砲撃で迫撃砲弾も降ってきやがる!読谷から重砲の砲撃も飛んで来るしなんなんだ!」

 

 

 

 

 

「偵察機から敵戦車が多数読谷飛行場から出発、こちらに向かって来ているとの報告が入りました!」

 

「ふざけるな!こんな状況で敵戦車まで相手にしていられるか!艦隊に爆撃機を要請しろ!このまま敵戦車とぶち当たったら壊滅するぞ!」

 

「7号車がやられました!」

 

 

 

 

 

「敵戦車8両!」

 

「えぇいクソ!対戦車戦闘!周りの敵は歩兵に任せて俺達は敵戦車を叩く!」

 

「主砲!目標敵1号車!」

 

「目標敵1号車!」

 

「撃て!」

 

ドン!

 

「駄目です!弾かれました!」

 

「構わん!撃ち続けろ!」

 

「第2中隊!敵の側面に回り込め!横からなら貫通出来る!」

 

「4号車被弾!」

 

「構っていられるか!このまま敵戦車を引き付けろ!

 

 

 

 

 

 

「正面敵歩兵40!迫撃砲もあります!」

 

「潰せ!こちらも迫撃砲で応戦しろ!」

 

「小隊長!敵2個小隊が応援に!」

 

「機関銃手!制圧射撃!敵に頭を上げさせるな!」

 

「ガッ!?」

 

「アア”ァ”ァ”!?足が、足が無い!」

 

「そいつを後ろに下げろ!」

 

 

 

 

「正面に敵対戦車砲!」

 

「1門だけか!?」

 

「はい!ですが敵も死守しています!」

 

「支援爆撃を要請!あれを潰さないと後ろの部隊が続けないぞ!」

 

「隊長、敵が後ろに回り込み包囲されました!」

 

「クソったれ!一度後退する!ここに留まっても前に進んでも意味は無い!」

 

「下がれ!全員一度後方の部隊と合流するぞ!」

 

 

 

 

あちらこちらで敵味方問わず銃声、砲声が鳴り響き断末魔が上がる。

負傷した兵士は担がれて後方に下げられていく。

 

深海棲艦も死に物狂いで抵抗し、決して防衛線を突破させてなるものかと言わんばかりだ。

実際、突破師団は防衛線を突破してはいるがその逆に押し返されるという事象が頻繁に起こっている。

それ故に突出してしまい分断包囲されてしまう部隊まで現れる始末。

 

空からは爆弾が要請によって落とされて、臨時編成の砲兵師団は防衛線突破を支援するために砲身が焼け付く事も厭わずに叩き込み続けているが、敵も重砲や対戦車砲、迫撃砲とありとあらゆる大砲を持ち出して激烈に抵抗している。

 

既に4個連隊が大打撃を負って後退し、別の部隊が穴埋めに入っていたりする。

敵は読谷飛行場に退避させていた戦車も持ち出して機甲師団にぶつけたり、こちら側の包囲線を突破しようと突っ込んでくる。

 

だがこちらも突破させまいと必死に戦い続けている。

恐らく、予備師団の到着を待たずに奪還に動いていたならば既にあちこちで戦線崩壊が起きて逆に包囲線を破られていたかもしれない。

 

だが予備師団が到着したお陰で包囲線を敷く3個師団はその分兵力に余裕が出来て交代をすることが出来ている。

 

 

 

 

そして4日間の激戦の末に遂に突破師団が飛行場に到達、右翼側へ方向転換し敵防衛線の完全包囲に成功した。

 

 

 

 

「完全包囲だ!今だ、行け!進め!好機を逃すな!」

 

「突っ込め!敵は包囲網が完成して戦意が衰えたぞ!」

 

「火炎放射器!?横に避けずに真っ直ぐ突っ込め!その方が狙って撃つよりも敵を殺せる!」

 

 

 

 

完全包囲が完了すると右翼側では一斉に全面攻勢が始まり、あちこちで白兵戦まで置き始めた。

 

 

 

「おぉぉぉ!」

 

「ガッ!」

 

「ゴフッ!」

 

 

 

一応人の形をしてはいる物の、明らかに全く別物の姿形の深海棲艦の兵と小銃で殴り合い、銃剣で突き刺し至近距離で発砲する。

 

戦場は混沌とかして既に敵味方入り乱れての殺し合いだ。

丸々2日の包囲戦によって右翼側は敵を殲滅。これまでに全体で予想の遥か上を行く6個連隊ほどの戦力を喪失していたが敵を突破した彼らの勢いは止まることは無い。

 

一気に身を翻し、休む暇も無く左翼側に突破師団と包囲線を構築していた部隊の一部が展開し包囲を始めた。

 

こちらは読谷飛行場に近いと言う事もあって突破師団が後方から攻撃されるなど、更に地獄の様相を呈した。

白兵戦では小銃を捨てて殴りかかり、そこらに落ちている石で殴り殴られ、両腕を失った兵士が敵の喉笛に噛み付き、引き千切る。

更には支援爆撃を超至近距離で要請し、敵諸共爆風で吹き飛ばされて悶絶するなど、もう本物の地獄だ。

 

 

 

 

「殺せ!敵はどうせ投降などしない!」

 

「死ねぇぇぇ!」

 

「支援爆撃を要請する!……何!?近いから出来ないだと!?そんなもん構わずに投下しやがれ!!」

 

 

 

 

そして遂に左翼側の敵を殲滅。

5日間に渡る地獄の戦いだった。

 

左翼側での戦いで5個連隊が壊滅的打撃を被った。

そしてそのまま各師団は前進し、左翼側の師団は嘉手納飛行場と読谷飛行場の丁度中間地点付近にある白比川付近まで前進。

右翼側師団は旧瑞慶覧小学校(zukeran ES)付近の白比川から若松公園、中代城跡付近、旧沖縄電力吉の浦火力発電所を結ぶラインまで前進。

 

丁度宜野湾市と中代村までの辺りまでを奪還した事になる。

まぁ正確には中代村は少し残っているのだがその辺は割愛する。

 

 

 

 

 

 

後年、右翼側での戦いを「普天間川の戦い」、左翼側での戦いを「牧野川の戦い」と呼称するようになる。

 

 

 

 

 

 

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嘉手納飛行場の奪還に成功した。

丁度宜野湾市と中代村までの辺りまでを奪還したのだ。

 

これで一旦一息つくことが出来る……と思いきやそうはいかない。

次に読谷飛行場の奪還を目指さなければならないからだ。

 

更には伸びてしまった補給線の負担を減らすために、最前線への補給を担当する港の確保もしなくてはならない。

今でも旧与那原アリーナに最前線への補給港を設置してはいるが来るべき読谷飛行場や北部奪還を行うには長い。そこで目を付けたのが東シナ海側が旧宜野湾漁港、太平洋側が旧熱田漁港だ。

 

宜野湾漁港は既に奪還し、宜野湾補給港として使用開始。こちらは問題無いが旧熱田漁港が問題だった。

現在の最前線である火力発電所跡からは2kmほど離れててそこまで前線を押し上げなければならない。

 

そこで旧熱田漁港奪還を目指して3個連隊が編成されて進軍。

半日で奪還が完了。

敵も我々がここを補給港として使うべく奪還に動くと読んでいたのか1個連隊が守備に就いていたが嘉手納飛行場の失陥がかなり響いていたのか幾らかの抵抗を受けたが砲撃と爆撃を行いながら各連隊が前進すると2時間程、抵抗しただけで即座に撤退を開始した。

 

もっと嘉手納飛行場と同じぐらいの抵抗を受けるかと思っていたから、ある意味拍子抜けだった。

そして、1週間程整備期間に充てて旧熱田漁港を使用可能にした。

名前はそのまま熱田補給港となった。

 

 

「提督、漸く嘉手納を奪還したね」

 

「あぁ……本当に長かったがまだまだ先は長い。もう2か月近く経っているのに北部全域の奪還すら成っていない」

 

「ま、寧ろそこは敵の抵抗褒めると陸軍の活躍を褒めるべきだね」

 

「そうだな……だが幾ら何でも損失が大きすぎるな。これじゃぁ本島全域を奪還するまでにどれだけの期間すが掛かってどれだけの部隊が損失する事か」

 

「今の段階でも1個師団以上損失しているからね、甘く見積もっても今の半分ぐらいは減っちゃうかもね」

 

「嬉しくない報告だな……」

 

「でも敵は補給を受けられないからもう暫くすれば抵抗は減ってくると思うけどね。そうなったら次はゲリラ戦か」

 

隼鷹と話ながら、沖縄本島奪還の真の意味での天王山は読谷飛行場の奪還になるであろうと俺は睨んだ。

事実、敵は北部や中部の兵力を読谷飛行場付近に集結させていることが偵察で判明している。

 

想定されていた師団は1個師団だったのだが、恐らく攻略開始時には2~3個師団規模にまで増えていると予想されている。

そうなると今現在の我々の戦力では奪還は難しいと言える。

 

となれば追加で要請した砲兵師団と歩兵師団の到着を待つしかない。

それまでは各部隊の再編や準備に費やすのだ。

その間、敵の陣地構築を妨害するためと出来る限り敵戦力を削る為に今まで通り、砲撃や爆撃を続ける。

 

 

 

そして、2週間後。

第4砲兵師団と第76歩兵師団が到着。

 

第39歩兵師団と第23歩兵師団は戦力がかなり減っていたがそのままそれぞれの師団として置いておき、予備師団として後方待機となった。

 

 

 

 

第4砲兵師団は嘉手納飛行場に展開。

この砲兵師団はライセンス生産であるラ式15糎榴弾砲を装備している。

1年程前までは取り敢えず数を揃える、と言う観点から野砲から歩兵砲、山砲、榴弾砲、対戦車砲、加農砲とありとあらゆる砲が装備されていた。

だが南西諸島奪還作戦を見据えて全てをラ式15糎榴弾砲に置き換えたのだ。

そのために大規模輸送作戦で運んできた鉄鋼や希少金属類を陸軍砲兵廠の妖精達に提供し生産を行ってもらった。

全力稼働で生産をした結果、この師団分だけはラ式15糎榴弾砲を揃えることが出来た。

 

4門で1個小隊、これを3個で1個中隊とし更に3個で1個大隊。

1個大隊は36門のラ式15糎榴弾砲を装備している。

 

大隊が4つで1個砲兵師団となり、榴弾砲を計144門装備している。

これでも少ないのだ。本当ならばこれの倍は欲しいが無い物強請りは出来ないからこれで我慢するしかない。

 

 

 

 

嘉手納飛行場は読谷飛行場と距離が近く、砲撃に晒されるので航空隊の進出は今の所予定は無い。

臨時で編成した2個砲兵師団も嘉手納飛行場周辺に配置転換。

これで臨時が混じっているとは言え3個砲兵師団が揃い踏みになった。かなりの火力を発揮する。

 

 

第76師団は前述の2個歩兵師団の代わりに前線に配置。

 

全戦力では3個歩兵師団と1個機甲師団、1個砲兵師団が存在するが機甲師団は嘉手納飛行場での戦いで機甲師団の戦車は19両にまで減っている

 

歩兵師団も2個歩兵師団を合わせて漸く1個歩兵師団分となる。

 

唯一無傷なのは第76歩兵師団と第4砲兵師団だけ。これだけの戦力で読谷飛行場を攻略出来るか?

 

明日、陸軍師団長達と作戦会議があるから正直に聞いてみよう。

 

 

 

 

 

「それでは、作戦会議を始めます」

 

「早速ですが、陸軍には今現在どれほどの余力が残っていますか?現有戦力だけで読谷飛行場の奪還は可能ですか?」

 

山田参謀長が陸軍の師団長達に聞くと、彼らは一様に厳しい顔をする。

それを意味するのは難しい、と言う事だろう。

 

「……正直に言いましょう。これだけの戦力で攻略は現実的では無い、と断言させて頂きます」

 

「やはり、今までで失った戦力が大きいと言う事ですか」

 

「その通りです」

 

「陸軍の皆さんは全力を尽くしてくれました。本当に感謝の念が堪えません。戦死した陸海軍将兵の犠牲が無ければここまで進む事は出来なかったでしょう」

 

そう俺が言うと、師団長達はありがとうございます、と言うとまた考え始めた。

 

「海軍は陸軍への支援を全力で行います。要請があれば艦砲射撃や爆撃も行います。現に陸軍の飛行戦隊と共に任務に就いています」

 

「それに関しては前線将兵の代わりに厚くお礼申し上げます」

 

「正直に言ってください。あとどれほどの戦力があれば読谷飛行場を奪還出来ますか?」

 

「海軍からの偵察結果などを考えても、機甲師団や砲兵師団も、とは言いません。あと最低3個歩兵師団は欲しいですな。でなければ読谷飛行場を奪還出来たとしてもその後の行動に支障が出ます」

 

「……だが本土にはすぐさまここに送り込める師団はもう……」

 

「はい。一応、2個師団が後1か月あれば武器の充足率は何とかなる様ですが……」

 

陸軍の師団長や参謀達はそういう。

確かにその通りだろう。

陸軍の銃や、銃弾、砲弾の生産工場は今もフル稼働しているがそれでも足りない。

これ以上望むのは酷だ。

 

それに2個歩兵師団が1か月後には戦線参加可能と言っていたが輸送を考えれば1か月と2週間は掛かる。

それだけの期間があれば敵はこちらの妨害の為に砲爆撃があるとは行っても防御陣地を完成させるどころか拡張するまでに至るだろう。

 

しかも海軍にも問題がある。

それは輸送能力、と言うものだ。

 

「海軍の輸送能力も、正直に言って限界寸前です。物資の輸送ですら限界ギリギリなのにこれを師団の輸送に転用するとなれば補給が滞ります。そうなれば前線へ銃砲弾や燃料を補給出来なくなり戦線崩壊を起こすのでは、と危惧しています」

 

「しかも現在の師団数での消費弾薬量を補給することですらかなり危ういのに更に師団数が増えてしまっては満足に補給が出来ません」

 

「輸送船にも限りはありますからな……それは致し方無い事でしょう。ですがこのままでは読谷飛行場を奪還することは出来ませんぞ」

 

 

 

陸海軍は、共に必死になってどうにかする為の策を考えたがやはり良い考えは浮かばない。

 

既に海軍の輸送能力はかなり限界がきており、動かせる輸送船を総動員して陸軍への燃料弾薬、食料医薬品等に加えて海軍の戦艦にも砲弾や爆弾を補給しているのだ。

 

これだけでもかなり限界に近いのにこれ以上消費量が増えてしまっては輸送が追い付かなくなる。

最前線ではあちらこちらで毎日の様に小規模な敵部隊が攻撃を仕掛けてきて弾薬を消費し、死傷者を出して負傷者の手当や治療の為に医薬品を消費している。

今はまだ白比川を挟んでの戦闘だったりとまだ負担は軽い方だが……

 

更に意外と、いや以外でもなんでも無く大きな負担になっているのがマラリアや赤痢などの伝染病の薬だ。

 

これはマラリアに関してはマラロンと呼ばれる薬やキニーネなどの薬剤を服用したりしていれば問題無いのだが、マラロンは毎日2回服用しなければならない。

全将兵に行き渡らせるだけで何隻分もの輸送船を専用にして運ばなければならずかなりの負担になっている。

 

しかしそれを輸送せずに非戦闘損耗が拡大するのも地獄だ。

だからこそ必死に輸送し、備蓄も少しずつだが進めている。だがそれでもギリギリ。

 

これ以上消費量が増えれば本土の生産も輸送も追いつかなくなる。

解決策としては輸送船の数を増やせばいいのだがそれも、大した数にはならないしそもそもの話、増やすとすると修理をしたりしなければならないので時間が掛かる。

 

ただでさえ大鳳などの戦闘艦艇の修理で地獄の忙しさとなっている工廠やドックは本当に妖精達が過労死してしまう。

 

確かに今の情勢はそんな事言っていられないのだが関係ないと言わんばかりに仕事量が増えてしまって、それで工員妖精達が過労で死んでしまっては本末転倒だ。

修理などを行えなくなり戦線への影響は遥かに大きく、損傷艦艇の修理が行えず修理待ちの艦艇が増えて影響が拡大する事になる。

そうなったらそれこそ日本は終わりだ。

 

 

 

確かに前線で戦う兵士達も重要だが、それ以上に前線を支える為に働いている物の方が遥かに重要なのだ。

屈強な兵士が居たとしても銃が無ければ戦えないし弾が無ければ撃てない。

水や食料が無ければ飢えと渇きに苦しんで死ぬことになる。

燃料が無ければ船も飛行機も車も戦車も動かせない。

 

そう考えると補給などは本当に重要なのだ。だからこそ輸送船団には鳳翔を筆頭に3個水雷戦隊を護衛に就けているのだ。

過去の日本海軍が犯した過ちを繰り返してなるものか。兵站や補給線を維持しなければ戦いなど出来ない。

まず初めにやるべきは兵站の確保と補給線の維持なのだ。それがあって次に戦いが来る。

 

正直、艦隊の護衛を増やしたい気持ちもあるし護衛艦隊の規模も増やしたいが現状、これが限界なのだ。

 

だが、どうすれば戦力を増やし、尚且つ攻勢に出られるほどの輸送量を確保出来るのだろうか。

 

 

会議は解決策を出せないまま1時間が経った。

 

 

 

 

 

 

 

「現状では、読谷飛行場を奪還することは出来てもそれ以降、戦線の維持や中部、北部への攻勢が出来なくなりますそれを含めて海軍の考えを改めてお聞かせ願いたい」

 

「……補給に関しては現状の消費量ならば責任を持って輸送すると確約しましょう。ですがこれ以上師団数が増えるとなると、輸送船の数を増やす事も出来ないので全部隊へ満足に補給させられる、と言えません。沖縄本島に備蓄に回していた物を開放したとしても6日持つかどうか……」

 

「即座にそれらを解決出来る方法は何か無いのですか?」

 

「解決策としては、輸送船を増やせば良いだけですがその輸送船がもう無いのです。今沖縄に向けて輸送任務に就いている船で全てです。あと1か月頂ければ輸送船をどうにかして修理を行うか終えるかで2、3隻増やす事は出来るでしょうが……」

 

「2、3隻だけでは焼け石に水、ですなぁ……」

 

「現状、ドックの殆どは戦闘艦艇の修理に手一杯です。これ以上工期を遅らせると、想定外の事が起きて沖縄本島奪還が長期化してただでさえ作戦予定などが全体的にずれ込んでいます。空母などの修理工期を遅れさせるとなるとそれ以降の作戦行動にもっと遅れが生じて……」

 

「海軍が輸送してきた物資が底を着く、ですか」

 

「はい……お恥ずかしながら戦略物資輸送に関しては南方方面が完全に深海棲艦の手中にあるため、輸送任務を行うとなると潜水艦を使うしか出来ませんが潜水艦隊はそれぞれ既に別任務に就いているので不可能です」

 

やはり、陸海軍の現状を考えるとこれ以上最前線への補給面、戦力面で考えても増やさなければならない。

 

戦力に関しては増やす事は出来るが補給を増やす事は出来ないと言う矛盾が生じてしまっておりこれを早急に解決する策は無い。

事実、最前線へ食料を回す事を最優先にして後方支援部隊や将校達の物資を切り詰め、更には海軍の一部艦艇からも食料を捻出して送り込んでいるのだ。

毎食握り飯が1つと水はその日その日で支給される水筒分だけだ。

事実俺も食事が握り飯3つだった所、1つになり味噌汁も沢庵も無くなった。

搔き集められるところから搔き集めてこれだ。

 

 

そして参謀達が話し合い、結果として

 

「陸軍は、先程読谷飛行場を現有戦力で奪還は可能、と申しましたか?」

 

「……まぁ、何とかなるでしょう。海軍の協力は必要不可欠ですが」

 

「そこで提案があります。一度攻勢を取りやめ、物資備蓄に全力を注ぎませんか」

 

「物資備蓄に全力を注ぐ、か」

 

「はい。海軍には追加の2個師団、いえ1個師団だけでも良いので1か月後に送り込んでもらいたい」

 

「まぁ、それに関しては責任を持って送り込むと確約しましょう。ですが補給に関しては一切の責任を持てませんぞ?」

 

「いえ、構いません。1か月で備蓄した物資の量にもよりますが読谷飛行場奪還までは戦線をどうにかして維持させます」

 

「恐らく各部隊の損耗も大きくなるでしょうからその時は消費量が減少している筈。あまり喜べない事ですが」

 

「……分かりました。1か月間全力で備蓄の為に物資輸送を行いましょう。その後の師団もしっかりと送り込みます。ですがそれ以上の期間は何度も言っていますが責任は持てませんぞ」

 

「はい。それで構いません。どうかよろしくお願いします」

 

結果、1か月間の各種物資の備蓄に時間を割いてその後、追加増強師団を送り込み読谷飛行場奪還に動く事になった。

 

それに合わせて次回以降の物資は備蓄に回した。

前線はなんとか各部隊の働きもあり戦線維持が出来た。

 

そして1か月後、かなりの量の物資の備蓄が出来た。

そして約束通り2個師団を送り込んだ。

 

 

1週間程の準備期間を経て漸く読谷飛行場奪還作戦が開始。

敵はやはり周囲700m程に何重もの防御陣地を構築していることが偵察で判明している。

 

まず準備段階として海軍陸戦隊を追加で投入した海軍特別陸戦隊第5歩兵連隊と第3連隊の計2個連隊動員して後方の仁禮浜(旧Nirai beach)に上陸、陸軍も大発や101号型輸送艦を使って同じ場所に上陸。戦線を押し上げて前後から読谷飛行場を包囲。字御殿敷などの側面は元々墓があったが既に爆撃や砲撃により跡形も無く消し飛び存在しておらず、海側を残して完全に包囲完了。

これは3日ほどで完了した。

どうやら敵は飛行場周辺に戦力を出来るだけ集めたらしく、それ以外の場所は抵抗らしい抵抗も受けることなく進むことが出来た。

敵も攻撃を受けると幾らか抵抗はするが直ぐに飛行場方面に向かって後退していった、と報告が上がって来ている。

 

 

 

丸々4日の準備砲爆撃期間を経て陸軍の包囲していた師団は一斉に攻撃を開始。深海棲艦の読谷飛行場守備隊は押され始めた。

 

8日間の激戦の末に陸軍はどうにかして飛行場手前400mまで前進。

 

 

更にここで陸戦隊2個歩兵連隊が読谷飛行場海側にある海岸に一斉上陸。流石に敵は此処への上陸を予想していなかったのか、それとも陸軍の攻勢を受け止めるだけで精一杯ったのか対応は遅れ気味となり、各連隊事に北進、南進を開始して陸軍と挟撃。

 

6日間の戦闘の末に飛行場の海側200mまでを奪取するに至った。

 

そして更に準備砲爆撃を2日間行い、砲兵師団の支援砲撃の下、各師団は一斉に攻撃を開始。

20日間に渡る一進一退の攻防の末に飛行場全域を奪還。

夜襲を仕掛けたり、白兵戦による殴り合いもあちこちで発生して嘉手納飛行場奪還作戦時よりもずっと地獄の有様だった。

事実、何度も攻撃をはじき返されて漸く前進したと思ったら再び敵の攻撃によって奪われたり奪ったりと、陣地によっては日に10回以上持ち主が変わる程の激戦が繰り広げられ、常に前線が前進と後退を繰り返して動き続けると言う状況だった。

 

だがそれでも最後の5日間は敵も補給も無く、弾薬などが底を着き始めたのか抵抗も散発的になっていたがそれでも夜間の襲撃などがあり、更には昼間でも砲弾薬が底を着きかけていると言うのに猛烈な抵抗をしてかなり手古摺った。

 

 

 

 

 

結果、44日間と言う1か月以上に渡る激戦の末に読谷飛行場とその周辺を奪還。

敵は読谷飛行場に2個師団と1個旅団を配備していたことが判明。そりゃあれだけの激戦が繰り広げられる訳だ。

 

敵はその戦力を丸々喪失。夜間に幾らかの敵部隊が包囲の隙をついて脱出したらしいがそれも高が知れている。

 

だが我々も第23歩兵師団と第59歩兵師団が全戦力の6割以上を喪失、大幅に戦闘能力を失った。

第3機甲師団も戦車を全て喪失し全滅。

それに伴いこの機甲師団は次の輸送船団で本土へ戻されて再編が行われる事になった。

 

 

今現在沖縄本島に駐留しているのは第17歩兵師団と第76歩兵師団、第4砲兵師団の計3個師団のみになった。

それと臨時で編成した2個砲兵師団も健在だが2個歩兵師団に編入されることになり解体が決定した。

 

砲兵師団は未だ健在だが、第17歩兵師団、第76歩兵師団はどちらとも約3割を失っており戦闘能力は大幅に低下している。

 

本土にはもうこちらに回せる師団が残っていないのでこの戦力で何とかするしかない。

全体では凡そ2個歩兵師団分の戦力と1個砲兵師団分しか残っていない。

 

陸戦隊も第3歩兵連隊が慶良間諸島守備隊を含めて600人、第5歩兵連隊も当初2500人いたが1400人ほどまでに減っている。

 

これだけの数で中部と北部を奪還出来るか不安だがやるしかない。

そもそも今すぐに攻勢に出られるわけでは無い。

 

全体的に再編を行って更に消費した弾薬等の補充を行わなければならず、次の輸送船団が到着するまではまともに行動を起こせないのだ。

 

 

 

 

「漸く、南部全域の奪還が完了したか……」

 

「ここまで2か月かぁ……かなり時間が掛かったねぇ」

 

「最初に上陸したのが南部と言う事も有るのだろうが、敵さんの抵抗が想定の遥か上を行く激しさだったからな。もう3個師団以上の兵力を失っているのがその証拠だろう」

 

「ま、こっちも十分とは言い難い戦力だったからね、寧ろ失敗してない事を喜ぶべきだと思うよ」

 

「そうだな……」

 

「……提督、疲れてるだろ」

 

「いや、そんな事は……」

 

「何言ってんだい、そんだけ疲れた顔してんだ、私ですら分かるぐらいだよ」

 

「む、そうなのか……」

 

「それに2か月前とは全然比べ物にならないぐらい覇気と言うか生気が感じられないからね。ずっと睡眠時間は3、4時間だったんだから当たり前っちゃ当たり前なんだけど」

 

「俺なんかよりも前線の陸軍や陸戦隊の将兵の方がずっと疲労が大きいだろう。今ここでおれが弱音を吐くわけには行かないのだ」

 

「ま、それもあるけどさ、提督が倒れちゃ本末転倒だよ。まだ昼間だけど今日はもうあたしらに任せて寝な」

 

「いや、だからそう言う訳には……」

 

「鳳翔さんに言いつけるよ」

 

「……分かった、分かったから鳳翔に言うのだけは止めてくれ。最悪輸送船団と一緒に本土に帰されるかもしれん」

 

「なら寝る事だね。ほら、行くよ」

 

「む、付いてこなくても大丈夫だぞ」

 

「そう言って仕事する気じゃないかい?」

 

「いや、そんなことは無い」

 

「だめだ、信用できない。寝るまでは傍で見張ってるからね」

 

隼鷹と話ていると、どうやら俺の疲れを見抜いて結局自室で寝る事になってしまった。しかも隼鷹の監視の目があるとなってはこっそり書類仕事を片付ける事も出来ない。

 

まぁ、確かに2か月前から睡眠時間を削って色々とあちらこちらに掛け合ったりとしていたから……平均的な睡眠時間は3時間半ほどだろうか?

 

思えばこの世界に来てから随分と俺も変わったものだ。あの時に撮った写真と今の俺の顔を見比べれば分かるものだが顔付きや雰囲気一つを取ってもまるっきり別人だ。

今、母さん父さん達にあっても俺だとは分からず疑うだろうな。

 

「ほら、提督行くよ」

 

「あぁ……おっと」

 

「フラフラじゃないか。ほら肩貸しな」

 

「いや、大丈夫だ、一人で歩ける」

 

「倒れられても困るから問答無用ッ」

 

そう言って隼鷹は俺を担ぎ上げるとそのまま俺の自室に向かった。

 

「何かあったらすぐに報告するからゆっくり寝な」

 

「あぁ、本当にすまんな」

 

到着すると、俺は制服を脱いでベットに潜り込むと急に睡魔が襲ってきた。

完全に意識が落ちる前に隼鷹が、何かを言ったような気がしたがまぁ気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 隼鷹 ----

 

 

 

沖縄本島の攻略が始まってから2カ月。

漸く南部一帯を奪還する事が出来た。

 

敵の抵抗が激しく、予備師団に加えて更に2個師団を投入して漸く。

その間、提督は陸軍との調整やら本土への増援要請、輸送船団やら色々と奔走して回っていた。そのお陰で私達は存分に戦うことが出来ている。

 

提督は、

 

「俺は前線に立って戦う事は出来ない。だからせめて彼らが補給などを気にせずに戦うようにしてやるのが精一杯だ。それでも補給はギリギリだがな」

 

と疲れた顔で少し笑いながらそう言っていた。

私は、最初提督と会ったときに一般人に毛が生えた程度まだまだ子供だな、と思った。

だって身体はデカいが顔付きは幼いし纏っている雰囲気も弱っちかったし。

 

だけど、根性だけは人一倍あったんだろう。

毎日毎日、仕事の合間を縫って私らに空母の事やら戦艦の事などそれぞれの艦種の事を学びに来て、更には航空戦や砲撃戦、雷撃戦なんかの戦い方もしっかりと学ぶ。

ノートに書き写した事を食事時なんかはずっと読んで頭に叩き込んでいるし。それで鳳翔さんに怒られてちゃ世話無いけどね。

 

しっかりと頭に叩き込んで色々と考えて、資源の輸送やらなんやらの書類仕事を必死にこなしている。

大規模輸送作戦の時は見事に護衛艦隊、輸送船団共に一切の被害を出さずに完遂する。

まぁ敵空母と戦った時は損傷こそしたものの沈んだ艦は無い。

 

ド素人がここまで成長したのだ、しかも4度も大規模輸送作戦を成功させると言う大金星を挙げたのだから十分だろう。

 

艦隊の指揮もしっかりしているし今の今まで轟沈艦を出さずに来ているのだから誉めるべきだろう。

 

 

 

それから色々あって、南西諸島奪還作戦が始まって敵艦隊との戦いで飛龍と蒼龍が損傷して本土に向けて退避したりと色々あったけどなんとかやっている。

 

 

今は私に乗り込んで指揮を執っているけれど、毎日毎日睡眠時間をギリギリまで削って仕事をこなして疲労が色濃く顔に出ている。

 

この作戦での最高指揮官は提督だから陸海軍合わせて様々な要請やらが全部提督に届いてそれを一切の休みも無く捌き続けているのだ。

食事の時も食べながらだし休みと言う休みは寝るときとトイレに行く時ぐらい。

 

そりゃ疲れもする。

 

今の所、一段落付いたから私が言って漸くまともな休憩を取る事にしたのか部屋に向かう時も立ち上がればフラフラだしこれ本当に倒れるんじゃないかい?

 

肩に抱え上げて部屋に連れて行き、着替えさせてベットに放り込むとすぐに寝息を立て始めた。

相当疲れていたんだろうね、死んだように眠ってる。

 

ただの元一般人がここまでよくやるもんだよ。

 

「ゆっくり休みな、お休み提督」

 

少し提督のそばにいてやるか。

狸寝入りって訳じゃないだろうけど起きて仕事をされちゃ堪らないからね。

 

頭を撫でてやるとゴワゴワした感触が伝わってくる。

10分程して私は提督の部屋を出た。

 

さぁーて、今まで提督が私達のために頑張ってくれたんだ、次は提督の為に暫くは私達が気張らないとね!

 

 

 

そう思いながら軽く伸びをして私は艦橋に戻った。

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 








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