暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第23話

 

 

現在、南方方面攻略作戦の2か月前。

攻略部隊の準備は着々と進み、これと言った問題は起きていない。

 

それとは別に、深海棲艦の日本本土に対する爆撃の方が問題だった。

 

震電配備の戦闘機隊は既に5個戦闘機隊までに増設されている。

関東、入間と筑波の飛行場に第323戦闘機隊と第324戦闘機隊は本来、どちらかを関西方面に転用予定だったがそれを変更し、引き続き配備されている。

 

理由は当初、想定されていたよりも敵高高度爆撃機の数が増えた事と、震電の生産が軌道に乗って3か所の工場で月産50機を数えるまでになったからだ。

 

九州海軍航空廠と海軍関西航空廠と海軍広島工場の3工場合わせて月産60機の予定であったが、九州海軍航空廠は震電のジェット機化にリソースを多く割く為に月産10機に減らし、その分をジェット機化計画へ振り向けた。

 

エンジン製造は九州海軍航空廠が担当しており、それも考えると生産機数を減らしてジェット機化計画にリソースを向けるのはある意味正解だとも言える。

 

 

残りの3個戦闘機隊は関西の姫路飛行場(旧関西国際空港)、鳴尾飛行場、第一鈴鹿飛行場の3か所に配備。

 

それぞれ既にばらつきはあるが30機前後を装備しており、震電の操縦訓練の為に海軍土浦航空隊から派生させた、熊谷航空隊、下館航空隊を編成、震電の専門教育に当たる事となった。

 

更には陸軍へも震電の配備を決定、陸軍明野飛行学校から派生させた震電専門の教育飛行隊が関西の佐野飛行場に新設。

 

 

これらの陸海軍の練習航空隊や教育飛行隊は初等教育期間中に震電配備の戦闘機隊へ配属されることが決定する。

初等教育が終わるとそれぞれの練習航空隊などに再配属され、最初に練習機である零戦を使って各種飛行訓練、戦闘訓練の教育を徹底して行い、その後に震電専門教育を開始する。

 

これらの期間は全て合わせて3年となっており、本来ならば戦時下と言う事でその半分の日数で他は行っているが、震電に関しては完全に別体系として扱う。

専門教育の中には通常の母艦戦闘機隊などでは使わないような酸素ボンベからの酸素供給量等などの訓練なども含まれており訓練期間が延びるのは必然である。

寧ろ3年でも短く、なんならもう1年は欲しい所だが戦況がそれを許さない。

 

第1期生の卒業までは各地の航空隊などから搭乗員を引き抜いて間に合わせる事になっている。

 

 

 

それとは別に震電のジェット機化計画について。

現段階で、ジェット機化計画はかなり進んでおり来年の春までに試作機を製造、試験飛行などを終わらせて再来年の3月、もしくは7月ごろには各種調整を終わらせて量産体制に入れれば、と開発陣は言っている。

 

エンジンはネ130が選定され、搭載が決定。

既に全力運転などの試験を終了、問題点の修正を行っている段階だ。

どちらかと言えば震電の機体のジェットエンジンを搭載するに当たって修正しなければならない点よりもネ130を搭載した時の問題の方が多かった。

 

エンジン自体には特段問題が起きたりはしなかったが振動によって機体側の部品に亀裂が入ってしまったりと問題が発生。

しかも後方にジェット気流を排出する部分が、想定以上の高温になったことによりその部分が融解してしまったりとかなりの大問題が発生した。

 

まぁこれらに関しては解決の目途が立っているので大丈夫だが、機体とネ130の製造をどうするかと言う方が問題だった。

 

と言うのも九州海軍航空廠は機体と通常機用のエンジンの製造を担当しており、ここに更にネ130の生産も入ってくるとなれば、効率の面で余り宜しくない。

そこで、J7W2の機体とそのエンジンの生産を九州海軍航空廠に担当させて、元々の震電の方を海軍関西航空廠と海軍広島工場の2か所に担当させることになった。

 

それに伴い九州海軍航空廠は後々、生産ラインをJ7W2用に完全移行。

海軍関西航空廠と海軍広島工場は生産ラインを増設する事になった。

これにより震電は月産60機を目指し、J7W2は月産25機を目指す事になっている。

 

一応、これで計画は進んでおり問題が無ければこのまま進める。

 

 

 

 

 

 

ここ何カ月か、それこそ高高度爆撃機(陸海軍はこれを「B‐29」と断定)の爆撃は激化の一途を辿っていた。

 

ここ最近は毎日毎日、300機近い数の編隊で毎日の様に来襲してくるものだから、震電による迎撃も一定以上の戦果を挙げてはいるがやはり数が多いと言う点で迎撃を突破されて爆撃を許してしまっている。

多い日には300機を超える事すらザラだ。

 

関東担当の2個航空隊で、毎回20~30機ずつ出撃して何十機と撃墜するがやはり30mm機関銃の装弾数が少ない事と急降下一撃離脱が主戦法なので2回、良くて3回攻撃を行えば弾薬切れ、もしくは上手く位置取りが出来なくなり攻撃は終了。

 

毎回の出撃で全機が1機は撃墜しているがそれでも数の差は覆すことが難しく、なんなら夜間空襲すら行われ始める始末。

 

機上電探を装備していないので夜間迎撃は困難を極める。

迎撃に出るが、暗闇の中で敵機に攻撃を命中させて撃墜させることはかなり難しい。

 

一応、一八試空2号無線電信機(機上電探。以降FD-2と記す)を銀河に搭載させているが、試作段階なので性能は安定しているとは言い難い。

 

なんなら飛ばしても使えなかったり故障したりで使用不可能な状況も多発している。

それを補うために増加試作を行い、銀河も何とかして20機を揃えて全てに装備させたがそれでもFD-2の稼働率は悪く、全体の2.5割ほど。毎日の出撃で2~3機分稼働していれば良い方、最悪1機も稼働しないなんて時もある。

 

現状、開発陣の妖精達が必死に性能を安定させて、実戦で十分に使用出来るよう努力しているし更には飛行場に技師妖精を派遣して直接整備に参加しているがそれでも現状が精一杯。

 

しかも深海棲艦は昼夜2回の爆撃を敢行してくる為に震電のエンジン部品や弾薬の消耗も激しい。搭乗員の疲労も大きいのも無視できない。

他にも何か攻撃方法は無いかと色々と模索しているがこれといった案は無く、どん詰まりの状況だ。

 

ドイツからもたらされた航空機搭載用のロケット弾を小型化して複数搭載出来ないか?ともなっているがそうなると重量が増加して迎撃が困難になる。

 

なので解決策は震電の配備数を増やして一度の迎撃で繰り出す震電の数を増やすしか他無い。

それにも限界はあるし、そのために震電配備戦闘機隊を増やしたいが搭乗員が足りないのでこれもそう簡単に出来ない。

 

今の所はどうにもならない、と言うのが現状だ。

そんな状況の中、彼らは良くやってくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 中西 ----

 

 

 

 

 

 

今日も深海棲艦の高高度爆撃機が飛来してくる。

その報告を受けた俺は、愛機となった震電に飛び乗って高度を上げていく。

防空総司令部の話によれば敵爆撃機の数は250機を超えるとの事だ。

 

 

 

 

 

11000mまで上昇して、敵編隊を待ち構える。

俺達の部隊名は323空だが323空が荒鷲、324空が護鷲とコールサインを決めてある。

迎撃戦闘機隊の総隊長を務めるので各機に指示を出す。

すると防空司令部から無線が入る。

 

『こちら防空総司令部。荒鷲、護鷲、聞こえるか?』

 

「あぁ、問題無く聞こえる」

 

『よし。そこから南200km、高度9500m辺りに敵編隊が飛んでいる筈だ』

 

「了解」

 

通信を切る。

今回は323空24機、324空28機ずつ、52機が迎撃に上がっている。

 

それぞれ、荒鷲1~24、護鷲1~28となっており、4機1編隊で攻撃を仕掛ける。

 

「いいか、今までと戦い方は同じ、敵編隊上方を取ってからの急降下一撃離脱だ。絶対に深追いをしようなんて思うなよ」

 

『『『『『『『了解』』』』』』』

 

通信機からはそれぞれの声が聞こえてくる。

烈風に搭載されている機上無線よりも信頼性が高く、雑音が入りにくい物だから意思疎通が図りやすい。

 

先ず護鷲隊が攻撃を開始し、その後に撃墜しきれなかった敵機を荒鷲隊が追い打ちを掛ける。

2機ずつ1機の敵機に向かう。

 

30mm機銃とはいえ、やはり翼かエンジンにでも命中させないと落ちてくれない。胴体でも十分なほどの威力を発揮するのだが一撃で落とすとなると翼かエンジンが確実だ。

 

「無理にとは言わん、出来るだけ翼とエンジンを狙え。そこが一番確実に敵機を撃墜出来る」

 

『『『『『『『了解』』』』』』』

 

指示を出し終えて、更に進むと敵爆撃機編隊が堂々と飛んできているのが良く分かる。

報告通り、250機以上はいる。

 

「まず右の敵梯団を始末するぞ。高度を500m程上昇させる」

 

その指示通り、機首を上げて敵編隊と2000mの高度差をつける。

 

「よし、攻撃開始!攻撃開始!」

 

事前の打ち合わせ通り、324空が先行する。

そして敵機が下を通り過ぎる少し前に、一気に機体を反転させて急降下。

 

それに続いて323空も一気に急降下を始める。

 

それぞれが撃ち漏らした敵機や新しい目標に30mm機銃をぶっ放す。

俺は新しい敵機に狙いを付けて射撃レバーを引く。

 

大きな反動が機体と俺の身体を襲う。

それと同時にピンボール大の大きな弾丸が敵爆撃機目掛けて飛んで行く。

射撃時の反動は20mmや13mmとは比べ物にならない大きさだが何ともない。

2連射分を敵機の翼に叩き込むとあっさりと翼が圧し折れて落ちていく。

 

敵機も機銃をばら撒くがこちらの速度が速いので全て追い撃ち、震電が通り過ぎた後に銃弾が飛んで行く。ただ1発も命中しないと言う訳では無く何発かが機体とコックピットに音を立てて命中するがなんてことは無い。

 

烈風や零戦であれば撃墜されかねないが震電は防弾装備が十分に確保されており、コックピット自体も防弾ガラスがしっかりと張られており、敵機の防御火器は12.7mmなのでこちらのコックピットを貫くことは出来ない。

燃料タンクや翼内にも防弾ゴムや消火装置を装備していて容易に出火することは無い。

 

後ろを振り向くと10機程の敵機が落ちていくのが分かる。

30mm弾は榴弾を使用しているので貫通力は劣るが破壊力は折り紙付きだ。

そんなものを10発、20発と食らえばいかな深海棲艦の重防御が施された爆撃機と言えども木端微塵だ。

 

 

 

一応、急降下での上昇離脱後に目視確認と計器での確認をするが問題は無い。

恐らく燃料タンクに命中した銃弾は貫くことが出来なかったか、穴を開けたとしても防弾ゴムで塞がれたのだろう。

 

これならば第2次攻撃は十分に可能だ。

 

「全機、まだ行けるか?異常は無いか?」

 

『『『『『『『異常無し』』』』』』』

 

「ならばもう一度行くぞ。先ほどとやり方は同じだ。かかれ」

 

『『『『『『『了解』』』』』』』

 

すぐさま護鷲隊が増速して敵編隊の前に出ると再び反転、急降下を開始。

再び30mm弾を叩き込んでいく。その内の1機が運悪く30mm弾が爆弾倉にでも命中したのか派手に爆散して周りの爆撃機を巻き込んで木端微塵に消し飛んだ。

 

勿論、攻撃を加えた震電も巻き込まれる。

 

とにかく今は一度攻撃を加えることが優先だ。

荒鷲隊も続けて反転、急降下。

 

 

敵の1機の翼に狙いを定めて射撃をする。

狙い通り、綺麗に翼を貫いて叩き折った。

 

そのまま敵編隊の下に抜けて行って再び上昇する。

そして一度全機を集めて異常の有無を確認する。

 

「全機、どこか異常はあるか?さっき爆発に巻き込まれた機は大丈夫か?」

 

『こちら護鷲8。エンジンに損傷を負っています。飛行には支障無しですが戦闘は困難です』

 

「分かった。1人で飛行場まで戻れるか?」

 

『可能です』

 

「ならば今すぐに飛行場に戻れ。良いか?」

 

『了解しました。御武運を』

 

そういうと、護鷲8は飛行場へ戻って行った。

だがまだ俺達は戦闘を止めるわけには行かない。

 

40機以上を撃墜しているがまだ200機は残っている。

あと一度は攻撃を加えられるだろう。

 

 

 

 

 

 

その後更にもう一度、攻撃を行い撃墜数は62機を数えたが190機以上が迎撃を突破。爆撃を許してしまう事になった。

 

やはり敵機の数に対して迎撃に向かう震電の数が少ない。これでまた夜間に深海棲艦の奴らは爆撃に来るのだ、冗談じゃない。

 

損失機を出していない事が幸いだが銃弾はたった240発しか携行出来ないので3回の攻撃で殆ど撃ち尽くした。

残弾は12発しか残っておらずもし攻撃をもう一度加えられたとしてもこれではよほど上手く弱点に命中させなければ撃墜出来なかっただろう。

 

 

 

機体を翻して、飛行場に戻るために本土上空に向かった。

これからまた夜間爆撃に備えなければならない。

 

 

 

本当に、頭が痛くなる状況だ……

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日の様に323空、324空から報告書が届く。

そこには敵機の数が多く、取り逃がすことが多いので早急に新しい攻撃手段、もしくは震電装備の戦闘機隊を増設しなければ本土防空の任を完遂する事は出来ない、との事だった。

 

毎日200機以上、多い日には300機と言う数の敵爆撃機が昼夜2回飛んで来るのだからその気持ちは分かる。

だが搭乗員の確保が困難な以上、増設は第1期生が卒業するまではほぼ不可能だろう。

 

南方方面奪還作戦が成功したならばそちらにも陸海軍の戦闘機隊を送らなければならないしそうなるとこれ以上引き抜くことは出来ない。

 

 

南方方面奪還作戦の準備に関しては以前と変わらず問題無く進んでいる。

まぁ戦力不足は常に問題だがそれは今に始まった事では無い。

 

とにかく、艦隊の戦力をどうやって増やすか、だがそもそもの話だ。

艦娘とその艦体ってどこから来たのだ?と、今更ながらふと疑問に思った。

 

最初期に艦娘とその艦体が現れたときの報告書によれば海上にて唐突に出現した、としか書かれていない。

その出現原因や要因は判明しておらず報告書には書かれていない。

 

 

妖精に関しては、本当に突発的にどこからか現れるらしく毎日現れているらしい。

そして妖精はそれぞれの適正、例えば戦闘機の搭乗員だったり爆撃機の搭乗員、水雷、砲術、炊事と適正を見てそれぞれ陸軍、海軍に配属されて訓練を受ける。

そして各地の部隊へ配属となるのだが。

 

艦娘と艦体は聞いたことが無かった。

そもそもの話だが、深海棲艦の事だけでなく妖精と艦娘、艦体の事も分かっていない事ばかりで寧ろ分かっていることが少ないのだ。

 

一応、妖精に関しては多少の研究、勿論非人道的な事はしないが身体検査やMRIなどを使ったりしてみたが、実際の身体構造は人間となんら変わりない。

排泄器官や各種臓器も人間の物と同じ。

ただ、血液やDNAなどがどういうわけか分析出来なかったらしい。

 

どうして妖精は妖精足り得るのか、とかそう言う事は結局一切分からない、と言うのが結果であった。精々、血液や遺伝子は恐らく違うんじゃないか程度の事しか予想出来なかった。

 

 

 

結論として、

 

「艦娘が操る艦体に乗ることが出来るが提督にはなれない。血液や遺伝の分析が出来なかったら妖精である」

 

と言う何ともまぁ、曖昧過ぎる結論が出された。

個人的には報告書を取り寄せて読んだ時に、これは本当に調査をしたのか……?と思ったぐらいだ。

 

そうすると妖精は何故提督になれないのか?と言う疑問が沸いてくるのだが沸いてくるそれに関しても一切分からず。

 

男女の区別は無く全員男性と来たもんだし、筋肉モリモリの男共が艦体に乗り込んで機関を動かし、機銃や砲を動かしたりと。

 

本人達にも聞いてみたらしいが全員声を揃えて分からないと言う回答しか得られなかった。

 

本人達も分かっていないのだからしょうがない。

まぁ、他人に自分の体の仕組みを聞かれても確かに分からない、としか答えられないな。俺だってそうだ。

寧ろ聞くのが馬鹿々々しい。

 

 

 

 

艦娘についても同じで、身体構造は普通に女性と変わらない。

見た目も一般の女性そのもの。まぁ見た目は比べ物にならない美人だから多分、街中で見れば分かる。

艦娘に関しても内臓などは人間と変わらず、その他器官も変わらない。

 

勿論女性特有の臓器である、子宮と言われる臓器も存在している。

ただ人間の女性にある月経はどうしてだか存在していない。本人達は多分、無いと思うという曖昧な答えを返している。

と言うのも、そもそも子供を産めないとかそういう事ならば子宮など存在しているか?と言う話だ。

 

 

だが身体構造やホルモンなどの分泌などの関係を見る限り恐らく妊娠することも出産することも出来るのではないか、と検査をした人間は言ったらしい。

 

だがそんなこと実践しよう!なんて馬鹿はどこにも居ないので本当なのかどうなのか確かめることが一切出来ない。

まぁ、男目線から言えば確かに美人揃いではあるが、手を出せるか?と聞かれるとしり込みする。

 

1人の女性として尊重しているし何よりも現有戦力、と言う事を考えるとそれは出来ない。

 

一応、艦娘が乗っていなくても艦体を動かす事は出来るがその性能は落ちる。

そのまた逆、妖精無しの艦娘のみで艦体を動かす事は出来るが性能は落ちる。

 

うーむ、本当に考えれば考えるほどおかしな話だな。

 

それが解明出来れば多少なりとも戦力増強の手立てが見つかりそうではあるんだがなぁ……

 

彼女達と、艦体は普通の軍艦と違って建造することが出来ない。

だから現状、一度沈んでしまえば終わり、普通の軍艦と同じと言う事だ。

 

いや、正確には普通の軍艦は量産が可能だが艦娘と艦体はかの大戦の時に戦った艦船だけと言う有様だ。

修理も妖精が行わなければならない。

 

輸送船は人間が建造出来るし妖精が操る事もあるが、艦娘が存在している神州丸などを除いて輸送船には艦娘が存在していないのだ。

だから人間も乗れる。これが大きな違いだろう。

 

一応、101号型輸送艦、と名前は付いているがただ単にそっくりそのまま設計図を流用して建造しているからに過ぎない。

多少、対空火器などの増設と言った変更点はあるが船体は人間が建造し、武装は妖精達が作ったものだから効果がある。

 

これも可笑しな話なのだが、かの大戦で戦い建造した艦船と同じ船体にしか妖精の武器は搭載出来ないと言う制約がある。

 

簡単に言えばイージス艦に25mm機銃を搭載する事は出来ないし原子力空母に烈風などを搭載することは出来ない。

 

そして、最後に人類が追い詰められた原因。

これが一番大きいのだが、深海棲艦、妖精、艦娘、艦体全てに対してミサイルなどは一切効果が無い。

妖精が製造し、操る武器でなければ効果は無く、そして更に艦娘が居る事で十全な性能を発揮することが出来る。

 

航空機相手であれば多少の効果は見込めるが撃墜には至らない。

だからこそ人類はここまで追い詰められているのだ。

 

寧ろ、最初の1年を良く深海棲艦の攻撃を凌いだものだ。

 

 

 

まぁそれは置いておこう。

丁度今は秘書艦である那智がいるから聞いてみるか……

 

「那智、聞きたいことがあるんだが良いか?」

 

「ん、どうした?」

 

「いやな、ふと君達はどうやって出現したりしているのだ?と思ってな。報告書を呼んだが全員が全員、海域に唐突に現れたとしか書いて無くてな。気になったんだが」

 

「ふむ、私達の出現原因はなんなのか、と言う事か」

 

「あぁ、話せないとか話したくないと言うのならば別に構わないんだがな。もしかすると戦力増強の手立てにならないか?と思ってな」

 

「そう言う事ならば構わない。茶を入れるから少し待ってくれ」

 

「ん、すまないな」

 

那智は空になった俺の湯呑を持ってお茶を入れてくれる。

これが金剛だと紅茶、摩耶だとコーヒーになる。

紅茶は緑茶と生産方法が違うだけで日本国内でも製造されている。

まぁ民間に流通しているものが殆どなので買えなくもない。ただ、平時よりもずっと高くなっている。

 

コーヒーも日本国内で生産されている代用コーヒーだ。

俺に支給されているコーヒーは頼み込んで仕事用にカフェインを多く含んだやつだ。

この代用コーヒーも民間に流通しているので買える。が、やはり値段は平時と比べるとずっと高い。

 

殆ど俺も要求しないが、本当に仕事が大忙しな時、それこそ倒れる前はよく飲んでいた。そうでもしないと意識を保っていられなかったからな。

 

そして、お茶を入れ終えて俺用に水を少しいれて温くしてくれたものを渡してくれる。

有難い。猫舌だから熱いままだと飲めないんでな。

……俺、彼女達艦娘に猫舌だって話した記憶無いんだがどうして知られているんだろうか?いや、それは別に構わないんだが。

 

那智は椅子を執務机の前に持ってくるとそこに腰を下ろして対面する形になった。

そして話し始めた。

 

「さて、私達の出現原因はなんなのか、と言うことだがはっきり言おう。私達にも分からないと断言出来る」

 

「その根拠は?」

 

「まず、私の記憶は海の上で艦体とだけ漂っていた所から始まっている。それ以前の記憶は一切無い。と言ってもその時の事は私しか知らないし、艦には妖精は1人も乗っていなかったから証明出来る存在は居ないが」

 

「いや、信じよう。それで?」

 

「報告書に書かれていないか?海域奪還、もしくは攻略成功後に艦娘とその艦体が出現したと。まぁ例外もあるが9割9分以上はそうだな」

 

那智はそう言うが報告書にはそんなこと書かれていなかったぞ?

どういうことだ?

幾ら記憶を掘り返してもそんな記述はされていなかった筈だ。

今日までの出来事が鮮烈過ぎて覚えていないだけかもしれないが、確かそんな記述は成されていなかった。

 

「……いや、そんな事は書かれていなかったと思う」

 

「ふむ、おかしいな……私は確かに書いた筈だが……まぁ、いい。それでだな、私達は何処かの海域や島を奪還した際に現れる事が殆どなんだ。実際私もそうだった。私は確か、最初期のフィリピン奪還が成功した後だな。ルソン湾の丁度私があの大戦の時に戦没した辺りで」

 

「ふむ……」

 

話を纏めると、だ。

 

・艦娘とその艦体は彼女達自身にもどうやって現れるのか分からない。

・現れた時以前の記憶は無く、現れた当初は妖精を1人も載せていない状態である。

・海域奪還、もしくは攻略成功した時に現れる事が殆どである。

 

これを考えると、どうやら運試し的な要素があるのか。

必ずしも現れると言う事では無い。それならば沖縄奪還が成功した時に艦娘と艦体が現れなかったと言う事にも頷ける。

 

「那智、同じ艦娘と艦体が現れたことはあるか?」

 

「いや、そんな話は一切聞いたことが無いな。少なくとも日本に関してはそのような報告は無い筈だ」

 

「ふむ、そうなると存在していない艦に限り現れると言う事だな……」

 

「そうなる。これ以降どうなるかは分からないがな」

 

那智はそう言うと足を組んでお茶を飲むとふぅ、と一息吐いた。

なんかやたらと色気があるが、気のせいか。

 

 

俺は腕を組みながら天井を仰いだ。

色々と考えてみるがやはり、これと言った結論は出る訳でも無く結局俺はこれについて俺が考えたところでどうにかなるものではないと諦めた。

 

それよりも、目の前の午後の分の仕事を片付けなくてはな。

でなければ今日は徹夜になってまた皆に怒られてしまう。目の前の那智も怒らせると怖いんでな。

 

「……ありがとう、那智。知らなかったことを知ることが出来た」

 

「ん、役に立てたなら何よりだ」

 

那智に礼を言った。

それに対して那智はふっと笑って椅子を戻して、秘書艦用の机に戻った。

うーむ、聞いたのは良いが殊更謎が深まっただけだったな。

 

いやはや、結局戦力増強に繋がる情報は何も得られず、か。

駄目なものはとっとと諦めると言う訳ではないが現状では考えるだけ無駄の様だな。

 

それよりも今ある艦隊の1隻1隻をどうやって強化するかと言う事を考えた方が建設的だな。

しかしながら今からでは流石に南方方面奪還作戦に間に合わないので終わってからになるが、出来る事と言えば対空火器の増設くらいだ。

 

駆逐艦などであれば同時に対潜装備を増設するぐらいか。

戦艦の主砲を全て41cm砲に換装することは出来ないしな。砲塔旋回リングの大きさがどうやったって合わないのだ。

そりゃ金剛に41cm砲を搭載出来れば大幅な戦力向上になるだろうがそれを実行に移すにはそもそも41cm砲の設計をそっくりそのまま変更しなければならない。

大幅に小型化しなければ搭載をするのは夢のまた夢だ。

 

それか金剛の方を大規模に改装する必要がある。

主砲を搭載している場所の穴を大きくする必要があるがかなり、ギリギリになる。なんなら搭載場所の装甲を全て取っ払う必要すらあるかもしれない。

 

そんなことをすれば金剛は1年は戦線離脱を余儀なくされる。

そんなこと出来るわけがない。

 

主砲などは据え置きで対空砲や対空機銃、対空機関砲を増やすぐらいしか戦艦には改装の余地は無さそうだ。

 

それかカタパルトを搭載している場所があるので、カタパルトと飛行甲板を全て外してそこに対空機銃か対空機関砲を搭載する事も出来るだろう。だがそうなると弾着観測が出来なくなり主砲での砲撃が困難になる。

恐らくこの改装はやらないだろうな。

 

そこまでの大改装を施せるだけの期間は無いので置いておこう。

今更、作戦が迫っているので出来ないから幾ら言ってもしょうがない。

 

 

 

 

 

作戦準備は、前述の通り問題無く進んでおり、2か月後の作戦実施にまで問題無く終わる。

瀬戸内海のあちこちで妖精達が忙しく動き回り準備に奔走している。

そして俺は彼らから上がってくる書類を読んで、良ければ判子とサインを書き込み認可をする。

他にも様々な指令書を書いてあちこちの工廠やドックに送ったりと、とてもではないが1人で捌き切れる量ではない。那智は書類を分別したり、俺が見る前に一度目を通したりと忙しくしている。

 

うーむ、これならば秘書艦をもう1人ぐらい追加しても良いかもしれないな。これほどまでに業務量が多すぎると俺と秘書艦1人だけではキツイ。

 

真面目に検討しなければな。

俺は構わないが、秘書艦に就いた彼女らに無理をさせたくない。

なんなら俺1人で全部やって、皆には訓練に集中してもらうと言う形を取っても良いのだがそうなると、また皆から休め休めと怒られる。

ならば我慢するしかない。

 

 

とにかく、各方面へ送るための書類を作成したりと大忙しだ。

人員、資材、機材の各種補充要請から何から何まで俺に送られてくる。

 

元々、艦の修理、改装は西村中将、航空隊などは黒川中将、補充などは広野中将が担当して分担されているのだが、面倒なことにそれらは一度俺に

 

「こうこうこういう事があって、艦を修理します。許可を下さい」

 

「あれこれそういう理由があって艦を改装します。許可を下さい」

 

「どうこうあれこれ理由があって物資が不足しています。補給を申請します」

 

と一度、妖精達は書類を作成し、それを俺に持って来て俺はそれには許可を出して更に西村中将、黒川中将達に送って許可を貰って、更に市木大将からの許可を貰ってから漸く補給や修理、改装に至る。

 

まぁ緊急性を要する場合は俺の判断などで指示を出し、西村中将達を通さなくても出来るがそうでない場合は上記の様に手順を踏まなければならない。

 

しかも前述の通り、前線指揮官が俺なので特に海軍は全ての書類を一度俺に送らなければならないと言う遠回りで面倒なやり方になっている。

しかもそこに陸軍の各師団や飛行戦隊などのものも入ってくる。

俺は海軍だけでなく陸軍にもそれぞれ書類を送って受け取ってとやり取りをしなければならない。

多分、仕事量で言えば俺が一番断凸で多いのだ。

 

だが文句は言っていられない。

俺が一日仕事を休めが書類は市木大将に渡されるまでに4日滞り、全体で遅れが生じるのだ。だから休暇は要らんと言っているのだ。

 

毎日ちゃんと寝ているんだから構わんだろうに。

と思うが声に出しては絶対にいけない。

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に作戦開始日までを忙しく働くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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