攻撃隊が発艦して、1時間ほど経った。
輸送船団は、一度沖縄の方へ退避させている。流石にそのまま第1機動艦隊に付いて来て敵戦艦の攻撃を食らったら堪らないから、せめて航空支援が受けられる沖縄本島近海に退避させたのだ。そこであれば鳳翔と大鷹の艦載機だけで敵艦隊の攻撃を凌ぐ必要が無くなる。
陸軍航空隊は洋上航法が余り得意ではないがこの際だから攻撃を仕掛けるとかになった場合は海軍の一式陸攻などに誘導して貰えば何とかなるだろう。
そんな中、対空電探に反応があった。
「対空電探に感あり!南西より敵機多数接近!数は凡そ180機!」
「提督、敵攻撃隊です。直掩戦闘機隊をすぐさま向かわせてそれ以外の烈風も向かわせましょう」
「勿論だ。戦闘機隊を迎撃に上げるぞ。準備急げ」
「はっ」
すると、格納庫内はにわかに慌ただしくなり始める。
既に銃弾、ガソリンを満載して即時発艦可能とはいえ、格納庫から飛行甲板に烈風を全機上げなければならないのだから13機とは言えど、忙しくなる。
次々に飛行甲板に上げられて並べられていく烈風は、13機が揃うと直ぐに飛行甲板から飛び立って行く。
13機だから飛行甲板へ並べるのもそれほど手間取らず、多少間隔を広めに並べても十分に発艦は可能だ。10分で飛行甲板に並べられると搭乗員達がばっ、と自身の愛機に飛び付くと、ものの5分と経たずして全機が飛び去って行った。
この光景は、日々の訓練で洗練された一連の動作で、惚れ惚れするほどの物だが現実はそうさせてはくれない。
「電探に感あり!南西より敵機多数接近!数は凡そ180~230!」
電探員が大きな声で報告するそれは、敵の第二波が接近していると言う事に他ならない。
だが、戦闘機隊は既に敵第一波攻撃隊に向かって行ってしまっているし、今ここで第2戦闘機群を敵第二波攻撃隊に振り分けてしまっては第一波への攻撃が不十分になる。
手頃な所で攻撃を切り上げさせて第二波に向かわせるしか無いが彼らもそれは十分に承知しているだろう。
だから敵第二波攻撃隊接近中、と同時にその旨を伝えてやれば彼らは十分以上に働いてくれる。
「艦長、3航戦を退避させて戦闘機隊の収容に充てろ。空襲直後の我々で戦闘機隊を受け入れるのはリスクが高い」
「了解しました。即座に退避させます」
「それと瑞鶴の流星8機も3航戦に預けておけ。出来るだけ飛行甲板上や格納庫内の可燃物を減らしておきたいからな」
「はっ、承知いたしました。直ぐに指示を出します」
その指示を出してすぐに瑞鶴からは流星8機が飛び立って、3航戦は後方へ退避していく。
沖縄でやったやり方と同じだが単純故に敵に破られやすいが、効果も大きい。
このやり方ならば確実に2隻の空母が生き残れる。そうすれば、迎撃戦闘機隊130機を即座に収容して、再び迎撃に送り出す事も可能だ。
今更だが艦隊の陣形を記そう。
輪形陣で、中央に空母8隻、その周りを戦艦と重巡洋艦がぐるっと取り囲む形だ。
能代
秋月 照月
ポー
Z3 金剛 初月
鈴谷 瑞鶴 葛城 ザラ
陽炎 雪風
霧島 飛龍 蒼龍 リシュ
浦風 萩風
ビス 大鳳 阿蘇 ティ
若月 霜月
熊野 グラ アー アド
春月 プリ 村雨
矢矧
時雨 響
朧
1航戦、2航戦の陣形は以上の様になっている。
基本は8隻の空母を中心に、回避運動が取れるように間隔を広めに取っている。空母同士とその周りはそれぞれ500mの距離を開けており、1.5kmにもなる。
それ以外の戦艦や重巡、軽巡、駆逐艦は出来るだけ間隔を狭く取り、弾幕を張りやすくしている。
回避運動を取るのは空母8隻に絞って、あとは狙われた艦に限る、と言う事にした。
そうすれば陣形が必要以上に乱れる事も無いだろう、との意図からだがこれが良い方に転ぶか悪い方に転んで行くかは分からない。
宵月 満月
多摩
リット ローマ
隼鷹
菊月 望月
飛鷹
青葉 古鷹
Z1
初雪 浦波
3航戦は以上の通りだ。
随分と守りが薄く感じるかもしれないが、随伴艦の数が少ないのだからしょうがない。
一応、敵攻撃隊は1航戦、2航戦で吸収するので3航戦には行かないと思われるが……
万が一もあるので戦艦はそのまま張り付けてある。
とにかく、これで敵攻撃隊を迎え撃つのだ。
戦闘機隊が敵攻撃隊と戦闘に入った。
敵戦闘機は凡そ60機程だから第1戦闘機群だけで十分に対処が可能だった。
そして肝心の攻撃機の数だが、雷撃機が70機前後、急降下爆撃機が50機程だそうで敵戦闘機の妨害も無く、機体後部から撃ち上げられる機銃にさえ気を付けて置けばなんて事は無いそうだ。
そして、敵攻撃隊を迎撃中の最中に偵察に放った彩雲から報告が入る。
『我彩雲5号機。ミンダナオ島、シアルガオ島沖135海里(250km)ニテ敵空母艦隊ヲ発見ス。空母ヲ級3、ヌ級3、重巡4、他随伴艦多数。敵艦隊ハ北西方向ニ向ケテ航行中。警戒サレタシ。0834』
どうやら敵の第2群はセレベス海を抜けて遠回りをしているらしい。
どういう意図があってなのかさっぱりだが、セレベス海を通って来たとなると昨日の索敵ではそりゃ発見出来ない筈だ。
「第2群は未だ距離があるのでこれと言って脅威には成り得ないと思われます。先ずは第1群を確実に叩きましょう」
「あぁ、勿論だ。だが警戒をしておく事に越した事は無いからな。電探手、しっかりと見張って置け」
「はっ、了解しました」
今の所、電探に他の反応は出ていない。
しかも距離がかなり離れているから、攻撃隊を飛ばしてくることも無いだろう。
第2群の速力の速さにもよるが、どれだけ早くとも昼過ぎ以降になってからの敵攻撃隊の発艦となるだろう。
こちらも同じで昼を過ぎてからにならなければ攻撃隊を送り出す事は出来ないし、なんなら第1群の攻撃で流星を消耗してしまえば攻撃隊を送り出す事も出来なくなる。
どうなるか分からないが兎に角、第2群に対して1度だけでも良いから攻撃隊を送り出さなければならない。
でなければ作戦を続行出来ない。
今は、攻撃隊が戦果を挙げて更に無事に戻って来てくれる事を祈るばかりだ。
ーーーー side 西北 ----
今回初めて攻撃隊総隊長を任された。
原田大佐には、今まで通りにやればいいと言われたが……
そうこう考えているうちに、敵の迎撃戦闘機が上がって来た。
数は……70~80機程だ。
こちらの高度は4500mだが向こうは5000m以上の高度だ。
高度有利は取られているが、すぐさま護衛に就いている烈風80機を差し向けて抑えに掛かる。
速度を上げた原田大佐以下が一斉に敵機に飛び付いていく。
瞬く間に敵戦闘機は格闘戦に引き摺り込まれて我々攻撃隊本体に手出しが出来ない。
この分なら、運が良ければ無傷で敵戦闘機の迎撃を切り抜けて敵艦隊を攻撃出来るだろう。
だがそうは行かなかった。
今日は、雲が幾らかあるのだが高度6000mに大きな雲の塊、入道雲があるのだが、敵戦闘機と護衛戦闘機隊が戦っている空域を避ける為に迂回してその下を通過しようとした時、雲の中に隠れていた敵戦闘機が20機ほど一気に急降下して来た。
慌てて回避するように指示を出そうとしたが間に合わず、一撃を受けて瞬く間に流星13機が撃墜されてしまった。
3機程が、煙を吐いて高度を落とし始めている。更には2機程が燃料タンクに被弾したのか燃料漏れを起こしている。
あの漏れ方ではそう長くは飛んでいられないだろう。良くて帰りの距離を4/1程度飛べるかどうか……
その敵機は我々の編隊の周りをグルグルと飛び回り、流星各機から機体後部に装備されている13mm機銃に当たらないように上手く飛んでいる。
その間に24機の流星が落とされてしまった。漸く烈風が敵戦闘機に食らい付いても敵戦闘機は烈風と戦うのではなく流星を執拗に狙ってくる。
敵戦闘機は全部で24機。烈風がそれを全て撃墜した時には流星は41機も撃墜された後だった。
敵戦闘機は我々の編隊の中に潜り込み、烈風が下手に攻撃出来ないように立ち回っていた。しかも敵戦闘機はどれを狙っても構わないのだから敵が有利だ。
152機いた流星は102機にまで減っている。
「クソ、かなり手酷くやられたな……」
思わずそう呟いてしまった。
更に20分程進むと漸く敵艦隊が見えてきた。
「全機突撃隊形を打電!」
「了解!」
突撃隊形を組む様に全機に送ってから攻撃隊の振り分けを行う。
先ず、ヲ級3隻に対しては、飛龍、蒼龍、瑞鶴、隼鷹、飛鷹、天城隊がそれぞれ2隊づつ攻撃に向かう。
残りの3隻のヌ級には阿蘇、大鳳、グラーフ・ツェッペリン、アークロイヤル隊が担当する。
それを打電する。
「ト連送を送れ!全機攻撃開始、攻撃開始!」
ト連送を受信すると一斉に全機が突っ込んでいく。
雷撃隊は高度を落として、急降下爆撃隊は高度を上げる。
敵艦の対空砲は既に火を噴いて我々の周りに爆炎と共に黒煙を立てる。
更に接近すると、対空機関砲や対空機銃が一斉に放たれる。
「3機落とされました!」
「怯むな!進め!」
木下がそう声を上げるが振り向いていられない。
そのまま雷撃隊は突き進む。
敵空母との距離は既に5000を切っている。
敵空母に突き進む間も、何機かの流星が落とされる。
今、更に3機落とされた。
「距離2500!」
「まだだ!まだ遠い!」
ヲ級は30ノット以上で疾走しており、そう簡単に当てられなさそうだ。
だがそんな泣き言は言っていられない。
「2000!」
「まだまだァ!」
機体に、立て続けに敵の対空機銃が当たる音がする。
生暖かい感触が腕を伝う。
チラリと見てみれば右腕が千切れかかってだらんと垂れ下がっている。
翼を見てみれば火を噴いている。
もう駄目だな。機体は持たないし帰れたとしても二度と航空機に乗る事は出来ないだろう。
腹を括って後ろに乗っている木下に大声で怒鳴る。
「木下ァ!このまま突っ込むぞ!」
だが返答は無かった。
後ろを振り向くと胸部と腹部に対空機銃弾の直撃を受けて木下は既に事切れていた。
畜生!ならこのまま突っ込んでやる!
男が命の捨て場所を見誤ってどうする!捨てるべき時に捨てないでどうする!
どんどん敵艦が近づいてくる。
1000。
800。
600。
500mを切ったところで投下ボタンを押す。機体がふわりと浮き上がる感覚がした。
すぐさま操縦桿を押し倒して低高度を維持したまま、ヲ級目指して突っ込む。
なんなら艦橋に突っ込んでやろう。
そうすれば暫くは反応が鈍くなる。
ーーーーーー 皆、あとは頼んだ…… ーー----
少し高度を上げて調整しながら艦橋に突っ込んだ。
ーーーー side out ----
敵攻撃隊が迎撃に出た烈風の攻撃をすり抜けて凡そ50機が突っ込んでくる。
迎撃に出た烈風全機はそのまま、敵第二波攻撃隊に向かって行った。
報告では烈風は17機が撃墜されたが被害はそれだけで留まっている。
「雷撃機21、急降下爆撃機32!雷撃機は降下!」
見張り員が次々と報告を上げてくる。
既に雷撃機は低高度へ降りてきて突っ込んできているし、急降下爆撃機も5000mの高度を進んできている。
敵攻撃隊に狙われたのは、大鳳と飛龍だった。
中央を航行していて、大鳳は他の艦よりも巨大で目立つからだろう。
大鳳は、全長260.60mと飛龍よりも33.27mも長い。瑞鶴よりも3.1m長いと言われればピンとこないだろうが、少なくとも現在の空母戦力の中では動かせない信濃を除いて最大級となる。
更に言えば飛行甲板の長さも40.6mも飛龍より長く、しかも飛龍や瑞鶴が木製の板を張ってある甲板であるのに対して 飛行甲板に700mの高度から500kg爆弾の急降下爆撃に耐えられるように装甲が施されており、2種類の装甲を合計95mm施されている。しかも木製甲板では無く、ラテックス(ゴム)を張っているので色が灰色のような感じになっているから洋上では物凄く目立つ。
装甲に関しては、主要各部でそれぞれ違ってくるが、16mm高張鋼と32mmのCNC鋼板による水平防御、更には160mm~55mmのCNC鋼板による垂直装甲が施されている。
しかもこれだけでは無く魚雷に対する防御も厚く、重油層、空気層及び装甲を組み合わせた5枚4層構造で守られておりTNT換算300kgの炸薬量を持つ魚雷を防御できる。
だが、深海棲艦の魚雷はこれよりも幾分か強力で、実際に鹵獲などをしたわけでは無いが最低でもTNT換算で400kgの炸薬を有しているから万全とは言えない。
だがそれでも装甲空母の名に恥じない防御力を誇っていると言える。
だからこそ巨艦で、目立って敵に狙われやすい。
飛龍が狙われた理由は艦隊旗艦で、更に俺が乗っているからだろう。
2隻に攻撃を集中して確実に叩こう、と言う魂胆なのだ。
「我が飛龍と大鳳に敵攻撃隊が向かってきます!」
見張り員が怒鳴り声で報告してくる。
「敵雷撃機、左舷真横と左舷後方より急速接近!距離6000!」
既に各艦の対空砲は射撃を開始し始めていて、駆逐艦は主砲を撃っている。
6000mを切った敵機に一斉に対空機銃と対空機関砲が火を噴く。
新しく空母と戦艦に装備された40mm対空機関砲は、途轍もない弾幕を張りながら敵機に火箭が伸びていく。
「2機撃墜!続いて1機!」
「敵急降下爆撃機、3機撃墜!」
飛龍と大鳳の横はがっちりと霧島とビスマルクが守りを固めている分、対空砲火は比ではない。
飛龍から見て左舷側、空母8隻の内の瑞鶴、飛龍、大鳳、グラーフ・ツェッペリンを並んでいる側だが4隻を含めてそちらを守っている艦は雷撃機を、右舷側の艦は急降下爆撃機を狙って対空射撃をしている。
お陰で対空機関砲や機銃の爆煙は二分されたかのようだ。
だが、それでも敵機の勢いは凄まじく、雷撃機13機、急降下爆撃機25機が突っ込んでくる。
「敵雷撃機、投弾位置に付かれました!」
「敵機急降下開始!大鳳に17機、我が飛龍に8機突っ込んできます!」
「面舵45!」
「面舵45!宜候!」
艦長が突っ込んでくる急降下爆撃機に対して回避行動を指示して怒鳴り声を上げ続ける。
飛龍は回頭し始めたが、大鳳は飛龍を軽く凌ぐ巨艦だ。舵の利きは遅くまだ回頭を始めていない。
そして漸く舵が利き始めた頃に、敵急降下爆撃機が続けて投弾を始める。
「敵機投弾!」
「舵戻せ!取舵30!」
「舵戻せ、取舵30宜候!」
既に最初に投弾した2機の爆弾は、既に外れるだろう。
だが問題は、その後に続いた6機だった。
「続けて2機が投弾!直撃針路です!」
「クソ!避け様が無い!総員衝撃に備えろ!」
艦の動きを読んでいたのかの様に、針路上に落とされる爆弾は1発、2発と立て続けに飛龍の飛行甲板を貫いた。
火柱を上げながら、飛行甲板先端部とその少し後ろに命中する。
そして更に後から投弾した4機の爆弾は、遅れて突っ込んできたからか、黒煙に邪魔をされて外れた。
だがこれで終わりではない。
次に飛龍を襲ったのは雷撃機の猛攻だった。
「敵雷撃機、大鳳に7、我が飛龍に6機突っ込んできます!」
「煙が視界を遮って良く見えません!」
「雷撃機、2機撃墜!」
「面舵一杯!」
「面舵一杯宜候!」
黒煙によって視界が遮られている中で、艦長が必死に指示を飛ばしながら飛龍は回避を続けるが、流石に全てを回避することは出来なかった。
「敵雷撃機4機投弾!」
「舵戻せ!取舵一杯!」
グググ、と飛龍は再び艦首の向きを変える。
だが、4発の魚雷はスルスルと伸びて、その中の3本が飛龍の右舷艦首から艦中央部にかけて巨大な水柱と共に、大量の浸水を起こした。
1本はギリギリ艦首すれすれで避けられたものの、3本の命中は飛龍にとって致命的だった。
大量の浸水を起こしたからか、それとも機関部への浸水を起こしたのか、分からないが速力がどんどん落ち始めた。幸いにも攻撃はこれで終わったのか敵機は見えない。
「全員、無事か……?」
「はい、一応艦橋要員全員の生存確認が取れました」
「被害状況はどうなっている?」
「爆弾2発と魚雷3本が命中しました。爆弾1発が飛行甲板の先端部分を丸々吹き飛ばして、前部昇降機に直撃、使用不可能。魚雷3本は、艦首から艦中央部にかけて命中して大量の浸水と同時に機関に浸水が発生、速力は11ノットにまで落ちました。一応、2時間もあれば速力だけは20ノットほどまで回復させられますが、艦が右舷に23度傾いており、復元は絶望的です。他にも爆弾の破片などで通信設備がやられてしまい、迅速な通信が出来ない状況です。端的に言えば我が飛龍は、完全に戦闘能力を喪失しました」
「報告ありがとう」
そうか、飛龍は戦えないか……
それならばここに留めておく理由も無い。ここで飛龍を失うわけにはいかないのだ、護衛を付けて本土でなくとも沖縄に向けて退避させるべきだろう。
ここからならば、少しばかり沖縄に向けて針路を取って進めば駐留している陸海軍の航空隊の上空援護も受けられるし、問題無い。
疾風の最大航続距離は2500kmだからこの位置でも往復出来る。
まぁ往復するのと直掩をするのとでは訳が違うからあれだが、それでも援護を受ける事は出来ると言う心理的に幾分か軽くなれる利点がある。
敵潜水艦対策には二式大挺を何機か寄こしてもらっても良い。
取り敢えず、飛龍から他の艦に移乗して退避させなければ。
「……さて、それならば今すぐにでも飛龍に護衛を付けて退避させ、司令部を移さねばなるまい」
「仰る通りです。どの艦に致しますか?」
「以前と同じで瑞鶴で良いだろう」
「了解しました。直ぐに準備に取り掛かります」
「頼んだ」
それからものの5分で移乗の準備を終わらせ俺は飛龍を後にした。
護衛には萩風、浦風、陽炎を引き抜いた。3隻いれば対潜戦闘ならば十分にこなせる筈だ。
敵機は確認されていないが、念の為に沖縄を経由して本土へ回航させる事にした。
対潜警戒には慶良間諸島から二式大挺を派遣してもらい、直掩には海軍の紫電改と陸軍の疾風に兼任してもらい、洋上航法の苦手な陸軍には取り敢えず二式大挺か紫電改に付いていけと言う事に。
戦闘の場合は、通常通り戦闘を行い、戦闘終了後に二式大挺が発する電波を頼りに集合する事になった。
だがまぁ、台湾に至るまでの付近ならば島伝いに沖縄に戻れるので方角さえ分かればそこまで問題は無かろう。
飛龍から瑞鶴に移乗した俺は、先ず大鳳の被害状況の報告を受けた。
「大鳳ですが、爆弾の命中は6発と多かったのですが飛行甲板に張られた装甲によって弾き、被害はありません。空中線が爆風や破片によって何本か切られましたが問題無し。左舷に魚雷が1本命中、浸水を起こしましたが被害は小さいとの事で航行、戦闘ともに問題無しとの事です。速力も未だ最大33ノットを発揮出来ます」
やはり、大鳳はその防御力を遺憾無く発揮してくれたようだ。
爆弾を全て弾いてしまうなど、飛龍や蒼龍、瑞鶴などの他の空母ではそうはいかなかっただろう。
6発も命中していれば今頃は良くて飛行甲板がそっくりそのまま吹き飛ばされるか、最悪沈んでいる事も有り得たかもしれない。
「分かった。艦隊は戦闘を続行、敵第1群を撃滅する」
「了解しました」
俺がそう言うと参謀長以下、慌ただしく動き始める。
迎撃に出た烈風全機は隼鷹と飛鷹で収容して既にその内の何十機かが上空の守りを固めている。
それから20分後、第一波攻撃隊から攻撃終了の電文が届いた。
「提督、第一波攻撃隊の攻撃が終了しました」
「戦果は?」
「ヲ級1隻撃沈確実、2隻撃破確実。ヌ級1撃沈。更に駆逐艦3を撃破。敵艦隊は壊滅しました」
「そうか、よくやってくれた」
だが参謀長の顔色は暗い。
何があった?
「どうかしたのか?」
「攻撃隊総隊長の西北中佐が、戦死しました……」
「……分かった。即座に第一波攻撃隊の収容準備を」
「了解しました」
「参謀長、西北中佐の最後は分かるか……」
「は、電文によれば『西北総隊長機、被弾炎上スルモ魚雷投下、敵空母艦橋ニ突撃サル。魚雷ハ見事敵空母ニ命中セリ』との事です」
「そうか……その電文、俺にくれないか」
「は、構いません。どうぞ」
そうか……西北中佐が、戦死したか……
母艦航空隊を再建させる為に、俺が呉に着任した時から世話になったがまさか彼が死んでしまうとはなぁ……
すまない、西北中佐。
お前の死は悔しいし悲しいがここで俺は振り向いていられないのだ。
戦争が終わったらとは言わないが、情勢が幾らか落ち着いたら手を合わせるからそれまでは待っていてくれ。
俺は目を瞑って少しばかりの黙祷を捧げてから再び俺は指示を飛ばす。
上空直掩に就いていた烈風は、損傷機を含めて104機に減っているが戦闘には問題は無く、そのまま空母上空を守っている。
攻撃隊から、攻撃終了の報告が上がってから1時間半後に攻撃隊が帰投、収容開始。
即座に損傷機各機の修理を開始している中、電探に反応があった。
「電探に感あり!数凡そ160~180機!距離300km!」
「敵の第二波だな。戦闘機隊に迎撃に向かうように言ってくれ」
「了解しました」
命令を受けて、艦隊上空を守っていた34機の烈風は即座に敵攻撃隊へ向かって行った。
その10分後に隼鷹と飛鷹から即座に発艦した70機が敵攻撃隊に向けて艦隊上空を飛び去って行った。
「攻撃隊に随伴していた烈風の内の飛龍、蒼龍、瑞鶴、隼鷹隊は3航戦へ着艦。出撃準備を整えて迎撃に参加させる」
「はっ、即座に送ります」
その指示に従って4隊は3航戦に向かって飛んで行き、それ以外の機は即座に1、2航戦の艦で収容、兎に角艦上で撃破されるのを防ぐ為に修理も損傷の軽い機体を優先させてそうではない機体はそのまま格納庫内、それ以外は空中退避させた。
その40分後に敵攻撃隊が艦隊上空に来襲。
烈風による迎撃と対空砲火によって170機以上いた敵攻撃隊はその数を60機程までに減らしていた。
だが、烈風も先の迎撃と攻撃隊に随伴していた事もあって疲労が溜り思うように戦果を挙げられなかったがこれでもかなり頑張ってくれた方だろう。
突破した60機は、大鳳に集中攻撃を加えた。
その内の16機ほどが瑞鶴へ向かってきたが、爆弾は全弾回避したものの魚雷を2本食らった。
だが機関部等への浸水は無く、浸水によって最大速力が30ノットに低下しただけに留まった。
だが大鳳はそうもいかなかった。
40機以上の敵機に集中攻撃を加えられた大鳳は爆弾9発が命中。飛行甲板に命中した8発の爆弾はその装甲で弾き返して無傷だったが、1発が煙突に飛び込んで炸裂。
出しえる速力は20ノットにまで大幅に低下。
更に右舷に魚雷が3本命中して右に18度傾いてしまった。
幸いにも、左舷に1発命中していたから沈むような事は無いし傾斜の復元も可能ではある。だが速力の方が問題だった。
しかしながら速力こそ大幅に低下しているものの、空母としての機能はまだ有しており戦闘は可能。
そこで大鳳を3航戦と合流させて退避させる事にした。
3航戦にはこれで3隻の空母が揃う事になる。
これで攻撃隊を一波分ならば収容可能だ。
1、2航戦はその分狙われる艦が増えるが、直掩戦闘機隊を隼鷹と飛鷹だけで行っていた収容、補給や整備、修理が3隻に分担されるのでそれらの作業を今までよりも早く終えることが出来、そして即座に発艦させやすくなる。
大きく見れば艦隊全体の負担が大きく減る。
3航戦は既に40海里後方に退避している。(約74km)
早々、敵の攻撃に晒される事は無いだろうと思われる。だが航空機からすれば74km、100kmだとしてもほんのひとっ飛びだ、全力でエンジンを回せばほんの30分かそれ以下の簡単に辿り着ける。
大鳳は命令を受けて駆逐艦朧の護衛を受けながら3航戦と合流すべく退避していった。
20ノットで航行して、早ければ2時間程で合流出来るだろう。
その間、我々は第二次攻撃隊の発艦準備を急いだ。
着艦、収容した流星は第一波が元々152機も存在していたのに、今ではたったの91機に過ぎず、更には損傷機も存在しており再出撃に耐えられるのは77機。
第二波攻撃隊の流星は損害が軽く、168機中26機が撃墜されるに留まった。
損傷機が17機で再出撃が出来ないので、再出撃に耐えられるのは残ったのは125機。
結果として、敵艦隊への第二次攻撃隊は、第一次攻撃隊第1波を丸々と、追加で第一次攻撃隊に参加しなかった8機の瑞鶴の流星隊、そして24機の流星を追加で送り出す事にあった。合計で流星109機。
そこに烈風80機を護衛に就ける。
この数になった理由としては敵空母6隻の内、2隻を撃沈し2隻を撃破しており健在な空母はヌ級が2隻となっているからだ。
損傷しているヲ級を確実に仕留める事を主目的として、ヌ級2隻は戦闘力を奪う程度で構わない。可能であればその2隻も仕留めて欲しいが、第1群の戦闘力を確実に全て奪い去る事を優先する事にした。
第一次攻撃隊を全て収容後、40分で全ての出撃準備を整え、きっかり1時間後には烈風と流星は銃弾と燃料、そして50番や魚雷を抱いて飛行甲板から飛び立って行った。
その1時間半後、攻撃隊は敵艦隊への攻撃開始。
『我第二次攻撃隊。戦果ヲ報告ス。ヲ級2、巡洋艦1、撃沈確実。ヌ級2、巡洋艦1、撃破。戦闘力完全喪失ト認ム。再攻撃ノ要無シト認ム』
戦果は見事ヲ級2隻にそれぞれ爆弾を5発づつ、魚雷を4本と3本叩き込み撃沈。
残りのヌ級2隻にも爆弾2発と3発、魚雷を2本づつ命中させた。
上手くいけば撃沈となるだろうが、魚雷2本ではどうか分からない。しかしながらその戦闘力を完全に奪ったと言える。
更には余った攻撃隊の流星26機で敵巡洋艦2隻に対して攻撃を実施、その内の1隻を撃沈確実、1隻を撃破。
こちらの損害は烈風13機、流星17機が撃墜されるに留まった。
この報告を受けて第一群に対する攻撃はこれで打ち切りとなった。少なくとも残存艦隊が戦闘力を保持するには第2群か第3群のどちらかと合流する必要があるが距離的に見ても不可能だろう。
もし合流しようと動けば我々が攻撃隊を差し向けて妨害する。
直掩戦闘機による守りが無い艦隊なんぞ攻撃隊からすれば良い的だろう。
そう言う訳で敵第1群との戦闘は終了。
だがこれで一息つけるわけでは無い。第二群との戦闘もまだ残っており、更には第3群も発見してこれに攻撃を加えて撃滅しなければならない。
幸いにも第2群の位置は掴んでいるから問題は無い。
既に第二次攻撃隊を収容して損傷機の修理を大急ぎで行っている。
第2群と戦闘になるのは翌日になる。
流星の現時点での出撃可能な残存機は全て合わせて162機。
しかしながら翌日の出撃までに修理を終える事の出来る流星は56機にも上り整備妖精達が格納庫内で、てんてこ舞いになりながら修理を行っている。
そこに彩雲の発艦作業も加わるのだから地獄の様な忙しさだろう。
だが今は頑張って貰うしかない。
彩雲の偵察によれば第2群は我が艦隊へ向けて航行しているらしく、その速力は15ノットと遅い。
第1群を完全に撃破するまでは25ノットの高速で航行していたが報告を受けたからか速力を落としたようだ。
我が艦隊は18ノットで向かっているので、攻撃可能範囲に入るのは夜中だが攻撃隊を放つのは翌日の日の出と共になる予定だ。
それに合わせて流星の修理を急ピッチで進めている。
翌日、まだ日が昇らない内から彩雲を発艦させ、日の出と共に攻撃隊を放った。
内訳は以下の通り。
第一次攻撃隊
第一波攻撃隊
蒼龍
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
瑞鶴
烈風16機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
隼鷹
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
飛鷹
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
天城
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
阿蘇
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
グラーフ・ツェッペリン
烈風12機 流星12機(爆装無し 雷装12機) 計24機
アークロイヤル
烈風12機 流星12機(爆装無し 雷装12機) 計24機
烈風100機
流星96機(爆装36機 雷装60機)
計196機
第一波攻撃隊は以上の様になった。
烈風、流星共に損害を負っているので昨日よりもずっと少ないが致し方ないと言う物だ。
第二波攻撃隊
蒼龍
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
瑞鶴
烈風12機 流星24機(爆装6機 雷装18機) 計36機
隼鷹
烈風12機 流星16機(爆装6機 雷装10機) 計28機
飛鷹
烈風12機 流星14機(爆装6機 雷装8機) 計26機
天城
烈風12機 流星16機(爆装6機 雷装10機) 計28機
阿蘇
烈風12機 流星16機(爆装6機 雷装10機) 計28機
グラーフ・ツェッペリン
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
アークロイヤル
烈風12機 流星12機(爆装6機 雷装6機) 計24機
機) 計機
烈風96機
流星122機(爆装48機 雷装74機)
計218機
第二波攻撃隊は以上の様になった。
それぞれ合わせて、
烈風196機
流星218機(爆装84機 雷装134機)
計414機
となった。
流星は出撃可能な全機を全て攻撃に参加させる。
烈風は、昨日の迎撃と攻撃隊の随伴で63機を喪失、27機が損傷により出撃が出来ない。
残存している280機の烈風の内、196機が攻撃隊に随伴するが艦隊の防空には84機を残している。
これを40機と44機に分けて迎撃を行ってもらう。
攻撃隊の総隊長機は蒼龍の流星隊隊長が務める。
昨日の敵艦隊の攻撃で西北中佐が戦死しているから彼の代わりとしてだ。
攻撃隊の数だけみればまだまだ多い様にも感じられるだろう。
だが出撃時には第1機動艦隊は合計790機の航空機を有していたのだ。
実に4割近い機体と、搭乗員を失っている。普通ならばまともに戦闘が出来る筈が無いのだが撤退は出来ない。
搭乗員に関しては脱出した者もいるので一概には言えないがそれでも2割以上は失っていると考えられる。
作戦終了時には、少なくとも流星のみに限れば機体は5~6割喪失で済めば良い方、搭乗員も4~5割喪失で済めば御の字。
そういう状況だ。
しかも空母は飛龍が撤退、大鳳も戦闘力はあるものの速力が大幅に低下して最前線では戦えない。
第2群との戦闘で、最低空母2~3隻がやられるだけで済めば良し、最悪、半分以上の5隻が戦闘力を喪失する事を覚悟しておかなければならない。
しかもこれは『第1機動艦隊が敵空母との戦闘をした場合』に限った話で、護衛艦隊が敵第3群と戦闘になった場合、戦闘艦への損害は戦艦全滅で防げればいい。
だが輸送船団に手出しを許してしまった場合、その被害は未知数だ。
だからこそ今の戦力全てで第2群を叩き、第3群を早急に見つけて攻撃を加えなければならないのだ。
だがその第3群は未だ発見出来ず、輸送船団は既に沖縄本島近海に避難、留まっている。
慶良間諸島の二式大挺をも使って索敵を行っているが全くと言っていい程に足取りはつかめていない。
兎にも角にも、第2群を叩くことが現在は最優先事項。
戦艦ならば、航空機や潜水艦、最悪戦艦同士の砲撃戦で何とかなるが敵の空母はそうもいかない。
流星を全力出撃させたはいいが、どれだけの数が無事に帰って来られるか……
敵は空母の数こそこちらが勝っているが今まで一切戦闘をしていない、無傷で万全な状態だ。
しかしながらこちらは第1群との戦闘で少なくない犠牲を出して半日ほどの休息があったとはいえ、それは搭乗員達に限った話だ。
整備員達は全くの休憩無しに今の今まで働き詰めで疲労はかなりの物だ。
彼らに休みは無く、攻撃隊の収容に備えて準備をしなければならず更には必要になった場合に攻撃隊の準備も行わなければならないのだ。
少なくともあと数日は戦闘が続くと予想されるから、その間は碌な休憩は無いと思った方がいい。
「提督、第二波攻撃隊の発艦完了しました」
「分かった。敵も攻撃隊を放っているだろうから対空警戒を怠るな。対潜警戒もしっかりな」
「勿論です」
「3航戦はどうなっている?」
「は、既に直掩の為に8機ずつの計24機を上げております。敵攻撃隊の接近報告があれば即座に発艦可能との事です」
「ならばいい。烈風の援護が間に合わなくてやられる事だけは避けなければならない」
参謀長達とそう話してから1時間後。
電探に敵攻撃隊を捉えた。
「電探に感あり!南西より敵機多数接近中!数凡そ150~200機!」
電探手がそう報告してくる。
その報告を受けて即座に防空に残しておいた残りの烈風を上げるよう、指示を出す。
「即座に残りの烈風を上げろ。何としてでも阻止するんだ」
「はっ、3航戦には既に報告してあるので問題は無いかと思われます。ただ、数が多いので防ぎきれるかどうか……」
「そこは、何としてでも頑張って貰うしかない。今我々が艦の上でどうこう話してもなんの力にもなれやしない」
「そうですな……」
その30分後、敵攻撃隊の第二波を電探で捉えた。その数、100~150機。
しかしながら烈風は既に敵第一波攻撃隊との戦闘で精一杯で一切手出しが出来ない状況だ。
第一波攻撃隊の敵戦闘機は60機にも上り、敵攻撃機へ手出し出来ている烈風はたったの20機程。
それでも奮闘しているが、やはり数の差はどうしようもない。
更に1時間後。
攻撃隊から敵艦隊への攻撃開始との電文が艦隊に届いた。
どうやら敵は防空を捨てて攻撃隊へ戦闘機を多く就けたらしく迎撃は散発的、確認出来ているのはたったの50機程度。
第一波攻撃隊の烈風だけでも圧倒出来る数だ。
クソ、そうなると知っていたら防空用にもう30機は烈風を残しておいたのだが……
まぁ、今更どうこう言えない。
「提督、対空射撃開始します」
「あぁ。戦闘機隊は退避させたか?」
「はい、既に敵第二波の迎撃に向かいました」
「ならばいい」
その直後、戦艦5隻から三式弾が撃ち出された。
元合同艦隊の戦艦分の三式弾は防空能力を向上させる為に生産ラインを圧迫すると分かっていたが無理を言って生産ラインを確保して製造して貰った。
お陰で防空能力は大幅に向上し、5隻から撃ち出される三式弾の破壊力は絶大だ。
「敵機、凡そ20機を撃墜しました」
「第二斉射、始めます」
2回の斉射で30機に上る敵機を撃墜。
やはり、集中運用をすればするほど効果は大きいらしい。
烈風の迎撃で160機程居た敵機は100機程までに減っていたがそれでも70機程の敵攻撃機が突っ込んでくる。
「敵機、二手に分かれました!右舷と左舷に分かれて攻撃してくる模様!」
対空砲の射程に入ると各艦から一斉に撃ち出されるが、それでも撃墜出来るのは10機以下。
更に突っ込んでくる。
「右舷、雷撃機20!急降下爆撃機15!急速接近中!」
「左舷、雷撃機20!急降下爆撃機20が急速接近中!」
どうやら敵機は挟み撃ちを狙っているようだ。
機銃や機関砲を一斉に撃ち始めると流石に右舷、左舷で10~15機程を撃墜することが出来たがそれでも勢いは止まらない。
「取舵一杯!」
「取舵一杯、宜候!」
瑞鶴は舵を握って艦長達からの報告で舵を切る。
「敵急降下爆撃機、12機が突っ込んできます!」
「敵機直上!急降下ァ!」
漸くその大きな艦体が動き始めたと思ったら、一斉に急降下爆撃機が突っ込んできた。
「敵1番機投弾!続けて2、3番機が投弾!」
「直撃針路!」
「総員衝撃に備えろ!」
その報告通り、3発の爆弾が立て続けに飛行甲板に命中し炸裂する。
その後から投弾した5機の爆弾は全て外れたものの、その後に4機が投弾し、その内の2機の爆弾が命中。
瑞鶴の飛行甲板は物凄い勢いの火災に包まれて視界が全く利かない。
そこに待ってましたと言わんばかりに雷撃機が一斉に突っ込んでくる。
「舵戻せ、面舵一杯!」
「舵戻せ、面舵一杯宜候!」
一度舵が利き始めると幾分かは回避しやすいがそれでも瑞鶴程の巨艦ともなればやはり鈍い。
そこへ4機の雷撃機が瑞鶴へ向かって突っ込んで、投弾する。
残りの雷撃機は対空射撃に妨害されて目標を変更、手前の鈴谷と瑞鶴と蒼龍の前を航行していたポーラへ狙いを定めた。
「敵雷撃機投弾!」
「面舵40!」
「2本直撃針路!避けられません!」
「総員衝撃にーーーーー
ズドン!ズドン!
艦長が大声で警告を発しようと言い切る前に魚雷が2本、艦中央部と艦後部へ命中する。大きな水柱を立てて、その海水が飛行甲板に降り注ぐ。
命中したのは左舷だ。
被害はそれだけに留まらなかった。
まず、狙いを変更して狙われた鈴谷とポーラは1本づつ魚雷が命中、右舷から突っ込んできた敵機によって阿蘇とアークロイヤルが被弾。
阿蘇は爆弾2発と魚雷が2本命中。
右舷に艦体が傾き、速力も低下している。
アークロイヤルは爆弾3発の命中に留まったが火災の勢いがかなり強く黒煙で覆われている。
だが敵の攻撃はこれで終わらない。
第二波が来襲、損傷していた瑞鶴、阿蘇、アークロイヤルの3隻に狙いを絞って集中攻撃を加えてきた。
迎撃に出た烈風の奮闘によってその機数は70機程に減っていたがその70機からの攻撃を避けられる力は3隻には無かった。
第二波攻撃によって瑞鶴には爆弾2発、右舷に3本の魚雷が命中。
飛行甲板は7発の命中によって格納庫までズタズタに破壊されてしまっている。
幸いにも方舷に集中せず両舷に分散して命中していたから戦闘力を完全に損失してはいるが何とか沈没は免れられそうだ、と報告が上がっている。
右舷に命中した魚雷の1本が推進軸付近に命中、それによりう右舷推進軸の1つが破壊されてしまった。
そこから機関部へも浸水してしまい、故障。
それにより最大速力はたったの6ノットという有様。
阿蘇は魚雷の命中こそ、阿蘇の右舷で展開していたティルピッツが身を挺して身代わりとなって魚雷と阿蘇の間に艦を滑り込ませて1本の魚雷を受けたから無かったものの、急降下爆撃機によって釣る瓶打ちにされて爆弾5発が命中。
飛行甲板は完全に破壊され、命中した爆弾の内の1発が格納庫などを貫通、機関部付近で炸裂。
速力が大幅に低下し出しえる最高速力は13ノットにまで減ってしまった。
アークロイヤルは比較的、被害は少なく爆弾2発と魚雷1本の命中に留まったが爆弾の辺り所が相当悪かったらしく、艦橋の直ぐとなりに命中し炸裂、艦橋要員である妖精達は爆風などによって海に投げ出されたり破片によって戦死、重症を負った。
艦娘であるアークロイヤル自身は、艦長達に庇われて左腕にかすり傷を負うに留まったが庇った艦長以下は戦死。
轟沈艦が出ていないのが不思議なぐらいの被害を負った。
これで4隻の空母が完全に戦闘力を喪失、俺は3隻に瑞鶴の曳航の為にアドミラル・ヒッパーと、阿蘇の曳航の為に矢矧、そしてその護衛に時雨と響を引き抜いて沖縄方面に撤退させることにした。
更に沖縄近海に退避している護衛艦隊に、何隻か駆逐艦を回してもらえないかと打診。結果、
海風 江風 峯雲 霞 藤波
の5隻を派遣して貰える事となった。
その5隻は既に瑞鶴以下7隻を迎えに出ており、それぞれのその上空直掩には対潜目的と誘導任務を兼ねた二式大挺2機と、陸軍から疾風が32機づつ就くと言う大盤振る舞い。
だがこれでも深海棲艦に襲われれば一溜りもない。
兎に角、彼女達が無事に呉へ辿り着いてくれる事を願うばかりだ。
俺は、瑞鶴から蒼龍に艦隊司令部を移乗。
同時に俺も蒼龍へ乗り移った。
我々が放った攻撃隊は、味方空母が大打撃を負ったと言う報告を受けて一矢報いろうぞ、とばかりに敵空母ヲ級3隻撃沈と言う大戦果を挙げた。
更には残りのヌ級3隻にも急降下爆撃を加えて2発づつと、魚雷を1本づつ叩き込んで空母としての能力を完全に奪った。
敵戦闘機の迎撃も烈風が全て食い止めて被害は無く、撃墜された流星は27機に留まった。烈風も11機が撃墜されたがその戦果と被害を見比べれば明らかに大勝利だと言える。
烈風185機
流星191機
計376機
空母に向けて戻ってくるのは以上だ。
だが、損傷機の数が多く途中で脱落するかもしれない機もいるので数はもう幾らかは減るだろう。
そこから再出撃に耐えられる機は、流星が140機ほどいれば良い方か。
2時間後、無事攻撃隊を収容した艦隊は敵艦隊への再攻撃を行わずに第3群の索敵、そして撃破を最優先事項にした。
この生き残った3隻のヌ級に対しては第2潜水艦隊に機会があれば雷撃し、撃沈せよと命令してあるので心配は無いだろう。
「提督、彩雲が索敵限界線に到達しましたが敵第3群は発見出来ませんでした」
「敵の第3群はどこにいるんだ?もう既に4回も彩雲を放ってその全てが空振りとはどう言う事だ……」
「少なくともフィリピン海方面とスールー海、南シナ方面には敵艦隊は存在していないようですが、第3群がどこへ消えたのか皆目見当も付きません……」
我々は、敵第3群を発見すべく、索敵の為に彩雲を既に4回も放っているのに未だ発見することが出来ないでいた。
と言うのも、我々が第2群と戦ったのはフィリピン海で、先ずその方面を索敵したのだが、見つからず。
念の為にもう一度放ったが見つからなかったので次はスールー海とスールー海以南を索敵。こちらも発見出来ず切り上げてバシー海峡からの南シナ海、南沙諸島、リアウ諸島までを索敵するも見つからず。
どういう訳か、敵艦隊はこれほどの広範囲を索敵しているのにも関わらず一切の痕跡すら無い始末。
各島の飛行場を輸送船団の為に流星で爆撃するぐらいしかこの数日行っていない。
参謀長達と話し合うが、何処に行ったのか全く分からず俺は参謀長達と頭を悩ませるばかり。
まさか空母がやられたから撤退したのか?とも考えたが少なくともそれは有り得ないと言える。なぜならば南方方面を我々に奪われてしまうと各種資源が日本本土へ輸送されてしまい、更には戦力を大幅に回復されてしまう。これは深海棲艦としては絶対に防ぎたい筈なのだ。
なのに防衛を諦めて撤退するか?
色々な事を加味して考えると撤退の二文字を深海棲艦は選択しない筈なのだ。
だが、現に敵の第3群はどこにも居ない。
本当いどういうことなのか全く分からない。
結局、結論が出ないまま我々はさらに3日と言う貴重な時間を消費してしまい、結局その3日間も索敵を行ったが発見出来なかった。
そこでこれ以上長引かせることも出来ないので輸送船団に前進を命令。
万が一敵艦隊がらわれた場合はその時に対処すると言う事になった。
我々第1機動艦隊は輸送船団とバシー海峡で合流。
一息付く間も無いままに最初に上陸、奪還を行うのはパラワン島だ。ここに前進基地と飛行場を建設して最低限の上空援護を受けられるようにする為だ。
まだまだ戦いは終わらない。
最後、終わり方が雑になってしまった気が……