輸送船団を伴って、先ずパラワン島を攻略すべく我々は進んでいた。
第1機動艦隊は護衛艦隊と共に輸送船団の守りに付いていた。
先ず一番に目標としているのはベロン飛行場とアプラワン飛行場、そしてイスゴッド飛行場だ。
この3つの飛行場は同島の凡そ中間地点にあり、そして海に面している。
海からの距離は300mかそこらで、最短ともなると精々250m程度しかない。
イスゴッド飛行場だけは海から1kmほど離れているが問題にはならない。
偵察で確認された敵戦力もそこまで強力な敵部隊は配備されておらず、それぞれ精々1個連隊かその程度しか確認されていない。敵は旧プエルト・プリンセッサ国際飛行場周辺に戦力を集中しているので奪還は容易だ。
しかもベロン飛行場から北西に約23km進むとアプラワン飛行場があり、距離も近い。
逆に南東に進めばイスゴッド飛行場が存在する。
元々イスゴッド飛行場は、固定翼機などの所謂、零戦や烈風、疾風の様な戦闘機や一式陸攻などが離着陸するための飛行場では無く回転翼機、ヘリコプターの離着陸が専門だったらしいのだが深海棲艦がそれを固定翼機の離着陸が出来る様に拡張したらしい。
飛行場の規模はかなり大きく、700mの滑走路が2本、X状に重なっており幅も40mはある。4発爆撃機ですらその気になれば離着陸が可能な飛行場へと大きくその姿を変えていた。
それぞれの飛行場は我々が運用する烈風や疾風、紫電改だけでなく一式陸攻の運用も十分に可能であり当然南方方面攻略に使わない手は無い。
だから一番最初に奪還してここに陸海軍の戦闘機と爆撃機を配備しようと目論んでいるのだ。
パラワン島の攻略には3個師団を投入する。
それぞれ1個師団づつが飛行場の目の前の海岸に上陸。
第16歩兵師団 アプラワン飛行場担当
第18歩兵師団 ベロン飛行場担当
第21歩兵師団 イスゴッド飛行場担当
それぞれが先ず攻略を担当する飛行場を奪還。
奪還が完了したならば部隊を再編等してから島の北部攻略を目指して進む第16、第18歩兵師団と南部攻略を目指して進む第21歩兵師団二手に分かれる。
南部はそこまで大規模な敵部隊は確認されていないので1個師団での攻略となる。
予想では南部の総戦力は最大でも1個師団かそれ以下。妥当な所では1~2個旅団規模と言ったところだろうか。
と言うのも戦力の大部分を北部そのものと北部にある旧プエルト・プリンセッサ国際飛行場周辺の旧市街地方面に引き抜いて守りを固めているのだ。
事実、数か月前の偵察では旧プエルト・プリンセッサ国際飛行場周辺の防御陣地は3重程度だったがつい先ほどの偵察では6重にまで増えている。
海側に面している方は防御陣地は2重程度しかないが市街地側では6重の防御陣地が築かれており攻略は容易ではない。
比較的な朗報は南西諸島攻略ほどは手間取らないであろうと言うことぐらいか。
というのもその地質や植生から、余程の大規模な工事を行って地下工事などを行わなければならない。
コンクリートを運び込んで、なんなら周辺の木々を全て根こそぎ引っこ抜くなり爆薬で吹き飛ばすなりしなければならないほどに面倒なのだ。
偵察ではそのような痕跡は確認されていないので問題無いと思われる。
北部、南部問わず密林が広がっているので敵のゲリラ戦には注意しなければならないが最悪、進軍路全てに戦艦や重巡の砲撃、航空機から爆弾を投下して木々を薙ぎ払う手も有る。
言っておくが、自然破壊がしたいわけでは無い。勿論自然保護も重要だとは思うが戦争中にそんなことを言っていては本当に勝てる戦も勝てなくなる。
そう言う事は勝ってからまたゆっくりと、着実にやればいいのだ。「急いては事を仕損じる」と言う諺がある様に、その方が結果は残る事も有るのだから。
さて、遂に上陸となった。
第4戦隊の戦艦が分かれて上陸地点へ一斉に艦砲射撃を実施している。
彩雲での観測では海岸線に防御陣地は敷かれていないが念の為だ。
2時間たっぷりと砲撃を行い、遂に陸軍の各師団が上陸を開始。
海岸線での敵の抵抗は無く無血上陸。
だが流石に飛行場周囲ではそれぞれ敵が守りを固めており多少の出血を強いられたが失った戦力は1個小隊と少し分だけであり、たったの2日の攻防で飛行場を奪取。
どこの飛行場も同じ様な状況であり敵は散り散りになって北部、南部へと逃げて行った。
その後、それぞれの師団に随伴している工兵隊が5日間掛けて飛行場を修復。
そしてすぐさま沖縄経由で陸軍の第71飛行戦隊の疾風36機がベロン飛行場に、海軍の紫電改36機がイスゴッド飛行場に送り込まれ、1週間後には一式陸攻36機がアプラワン飛行場に進出する予定だ。
これで母艦航空隊だけで制空権を維持する必要が無くなった。
この間にも旧プエルト・プリンセッサ国際飛行場(長いので以降パラワン飛行場と命名)から複数の敵機が飛び立って襲撃をしてきていた。
いままでは海軍が烈風で防いでいたが疾風と紫電改、そして一式陸攻が進出してくれば大規模な爆撃を加えてし破壊、使用不可能にすることが出来る。
流星は対潜警戒任務と対地支援に引き抜かれており、飛行場攻撃には参加していない。それでも幾らかは機数に余裕があるのだが、全機を動かしてしまうと搭乗員が休息をとることが出来なくなってしまうから諦めている。
1週間後、一式陸攻が進出。
3個師団を運んできていた輸送船を使って爆弾を運び込んできており、一式陸攻24機が陸用25番4発を搭載して疾風24機、紫電改24機に守られてパラワン飛行場を爆撃。
敵戦闘機20機ほどに迎撃を受けたが数で圧倒しているので瞬く間に敵戦闘機は壊滅、こちらの被害と言えば被弾によって疾風3機と紫電改が2機飛行場に引き返したぐらいだ。
爆撃の効果は大きく、100発近い爆弾の雨を降らされたパラワン飛行場は立ちどころに使用不可能となり駄目押しとばかりに更に12機の一式陸攻が80番を抱えて爆撃。
飛行場はこれで1週間はまともに使用出来なくなった。
その間に北部、南部共に前進を開始。
南部はやはり敵の戦力は少なく各地で散発的な抵抗を受けはしたものの1週間ほどで攻略が完了。
損害は1個大隊規模を失うに留まった。その後第21歩兵師団は北部攻略の2個師団と合流して共に前進。
パラワン飛行場に到達後、攻略を開始。
既に戦艦からの砲撃で防御陣地は壊滅しており奪還に要したのは4日間。
更に3個師団は北部へと前進。
勢いそのままに12日で全島を奪還するに至った。
全体での損害は1個旅団ほどを喪失したが正直、沖縄での戦いを経験しているからもっと手古摺るかと思っていたがここまでだと幾らか拍子抜け感は否めないが被害は少ないに越したことは無い。
更にはパラワン飛行場の奪還をした時点でカリマンタン島へも上陸を開始。
第26歩兵師団
第33歩兵師団
第44歩兵師団
以上、計4個師団が一斉に旧コタキナバル国際空港(以降コタキナバル飛行場)周辺に一斉に上陸。同飛行場をまず最初に奪還。
流石に敵戦力は多かったが戦艦と重巡洋艦からの艦砲射撃と更には進出した一式陸攻からの断続的な爆撃でこちらも1週間程で攻略完了。
このコタキナバル飛行場には陸軍の第72飛行戦隊と第73飛行戦隊の疾風が計72機進出。
既に支援に当たっている。
一式陸攻は2週間後に到着する予定だ。
カリマンタン島はその面積が本州以上に広大で、攻略には少なくとも2か月は掛かるであろう、との見通しだ。
以外にも順調に攻略が進んでいる、そんな時だった。
「提督!!敵第3群と思われる戦艦群がバンダ海より急速接近中との報告が!」
「なっ!?ここに来てか!?」
敵の、結局発見することの出来なかった第3群と思われる戦艦15隻と軽空母ヌ級3隻を含む大艦隊が急接近してきたのだ。
しかも数が増えている。
どういうことだか分からない。
「全く、どういう事だ!なんだって今頃になって戦艦を出してきた!?しかも数が増えているではないか!」
参謀長が艦橋の中で怒鳴る。
確かにその通りだ。
何故、今頃になって戦艦を、しかも増強して繰り出してきたのか。
皆目見当も付かない。なんなら、軽空母3隻で守られているとは言っても我々第1機動艦隊の艦載機数であれば問題無く叩ける。
いや、戦艦と言う大きな障害物さえなければの話だ。
「提督、今立てられる予想ですが……」
「構わん。言ってくれ」
「恐らく、敵は一度アラフラ海方面に後退したのだと思われます。この方面ならば完全に敵の勢力圏内であり我々の偵察は困難であると言う理由から偵察を行っていませんでした。その隙を突かれたのでしょう。敵の狙いは恐らく我々を直接叩くことではありません。輸送船団を叩くつもりなのでしょう」
「この際、敵がどこに隠れていただとかそういうのはいらん。問題は、敵戦艦の狙いが輸送船団である、と言う事だ」
「はい、敵艦隊の位置と速度からすると、輸送船団に到達するのは今日の夜、凡そ8時~10時頃であると思われます。夜闇に紛れて輸送船団と、更には上陸済みである各師団と航空隊を艦砲射撃によって撃滅する腹積もりなのでしょう」
「完全にしてやられたな……これでは我々が取れる選択肢は一つしかない」
「はい、ここから第1機動艦隊全空母を30ノットで向かわせたとしても艦載機による攻撃はギリギリ間に合いません。となれば我々も戦艦で応戦するしかありません」
「だが、戦艦の数では負けているし重巡洋艦の正確な数すら把握出来ていないであろう」
「はい。ですがせめてもの救いは随伴艦の数が軽巡が3隻程、駆逐艦が10隻程度である事ですが慰めにもなりません」
「幾ら随伴艦の数で勝っていても戦艦同士の戦いで負ければ意味は無い。だが、ここでむざむざやられるのを待つ訳には行かん」
「はい、となれば我々もすぐさま戦艦を、いえ重巡洋艦から軽巡洋艦、駆逐艦も出来るだけ差し向けなければなりません」
「勿論だ」
艦隊司令部は俺を含んで大騒ぎ、大混乱となったがここで引ける状況では無いと言う事は誰もが分かっていた。
方針は直ぐに決まり、俺は艦を移乗して率いている戦艦全てと重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦を幾らか引き抜いて前進。
編成は以下の通り。
第1戦隊
戦艦
金剛(旗艦) 霧島 リシュリュー
ビスマルク ティルピッツ
リットリオ ローマ
重巡洋艦
鈴谷 那智 羽黒 キャンベラ ザラ ポーラ
第1水雷戦隊
軽巡洋艦
能代
駆逐艦
秋月 照月 Z3 初月 雪風
第2戦隊
戦艦
長門(旗艦) 日向
クイーン・エリザベス
ウォースパイト ラミリーズ
ネルソン デューク・オブ・ヨーク
重巡洋艦
熊野 プリンツ・オイゲン
青葉 古鷹
第3水雷戦隊
軽巡洋艦
多摩
駆逐艦
宵月 満月 Z1 初雪 浦波 菊月 望月 若月 霜月 春月 村雨 朧
戦艦14隻は、7隻づつの2群に分けた。
第1戦隊は、高速艦で固めている。
この第1戦隊は速力こそ最大30ノットを発揮出来るが、打撃力である主砲の威力は全艦が
40cm以下のビスマルクやリットリオが搭載している最大38cm砲が最高火力だ。
2cmの砲口径の違いではあるが、艦砲の2cmと言うのはその威力の違いは大きい。金剛は35.6cm砲と38cm砲ではやはりその威力の違いは大きい。
だがその火力不足は速力で補う事にしている。
逆に第2戦隊は速力が遅いが打撃力のある艦で固めている。
長門が搭載する41cm砲が一番火力と打撃力があり、その破壊力は、命中さえすれば折り紙付きだ。
急所、例えば弾薬庫などに命中すれば如何な深海棲艦の戦艦であろうと一溜りも無い。深海棲艦の装甲を貫けるだけの火力を持っているのが第2戦隊の彼女達だ。
しかしながら速力は最大25~26ノットと遅い。
だが装甲は分厚く、そう易々とやられるような艦は居ない。かなり打たれ強い。
俺は、金剛に再び乗り込んでいる。
長門達には申し訳ないが今回は金剛達に旗艦を譲ってもらった。
「第2戦隊が敵戦艦を引き付けている間に、我々第1戦隊はその速力を生かして敵戦艦を殴る」
「分かりマシタ。でものんびりしては居られなさそうですネ」
「あぁ、幾ら長門達と言えど我々が手間取ってしまえばやられてしまうだろう。我々に求められるのは迅速に敵戦艦を叩くことだ」
そう、幾らビックセブンの1人である長門やネルソンとは言っても砲弾を何発も何発も食らっては一溜りも無い。
こんな事ならばヴァンガードが居てくれればまだ幾らかは楽な戦いが出来たのだが、彼女は残念ながら今回の作戦には参加していない。
と言うのも、未だ話していなかった事なのだが作戦開始直前である2週間前、主砲の射撃訓練中に主砲内で砲弾が暴発し第2主砲塔を丸々吹き飛ばしてしまったのだ。
それに伴い大規模な修理を行わざるを得なくなった。
しかも詳細な検査によると、暴発によって搭載していた砲弾の数が少なかったから良かったものの揚弾筒内で更に1発が爆発。
それによって艦体に亀裂が入るなど、戦闘後であれば大破判定間違い無しの損傷だった。
理由は未だに原因不明だが、ただの事故である線と人的ミスの両方で捜査を進めている
その原因が分かるのは少なくともまだまだ先であろうと思われる。
そう言う訳でヴァンガードは作戦に参加していない。
参加していれば15対15で同数の戦いが出来たのだがそれを言っている暇も、時間も余裕も何もない。結局はたらればの話になってしまうのだ。
「提督、長門以下第2戦隊は敵戦艦に向かって進んでいます。このままであれば日没1時間程前に戦闘に突入するものと思われます」
元々、我々はカリマンタン島、ザラワク沖を航行していた。
敵艦隊はジャワ海を通ってくるらしく、それならばこちらもジャワ海方面へ進出、急行して途中で二手に分かれると言う策を取った。
分離地点はブリトゥン島沖で、第2戦隊にはそのままジャワ海を進ませて我々第1戦隊はスンダ海峡(スマトラ島、ジャワ島間)を抜けて遠回りをして、ロンボク海峡(バリ島、ロンボク島間)を通過してバリ海に進出。
目の前にはカンゲアン諸島があるからそこで背後から第1戦隊が奇襲、これで敵艦隊を迎え撃とうと言う事だ。
速力に関しては第1戦隊は26ノットで、第2戦隊は20ノットで進む。
この速力差であれば第2戦隊が会敵、戦闘が始まってすぐに第1戦隊も戦闘海域に突入することが出来ると踏んでいる。
なので第1戦隊は26ノットの高速で海上を進んでいる。
「烈風と流星はどうなっている?」
「はっ、既に敵艦隊に対して全力出撃、攻撃を加えました。ですが戦果は芳しくないようで……」
「構わん、報告してくれ」
「はっ、流星全機136機は全機、提督の指示通り爆装で出撃しました。結果としては敵戦闘機の迎撃は烈風が抑えたので敵戦闘機による迎撃は大したことはありませんでした。ですがやはり15隻もの戦艦が集中している中に突っ込んだこともあってか49機が撃墜され、残りの流星は3隻の戦艦に対して集中攻撃を実施しましたが対空砲火が余りにも濃密だったようですが、それでも命中弾はそれぞれ6発以上を出した、との事です」
「そうか、分かった。それでは次は我らの番だな」
急げば何とか日没前までには収容が出来る、と言う事で攻撃隊を放ったのだ。
魚雷を装備した流星を1機も送り出さなかったのは、雷撃を行う方が被弾、撃墜率共に多いからだ。
単純な出撃機数の問題でもあるのだろうが、同数だとしてもやはり低空で侵入する方が危険が大きいらしい。
しかも今回は戦艦15隻もいるのだ、そんな中に突っ込めばどうなるかは歴然としている。
そこで今回は全機爆装で敵の艦上構造物を薙ぎ払う事、そして兎に角、足止めを目的としての出撃だった。だがやはりその対空砲火は凄まじかった様で49機が撃墜されると言う結果に至った。
だがそれでも6発以上づつの命中弾を出してくれた。
最低6発だとしても、艦上構造物への被害は大きいだろう。
特に25番では無く50番であるところが大きい。50番の急降下爆撃ともなれば戦艦であろうと無傷では済まされない。
願わくば、その内の1発だけでもいい、急所を捉えていてくれれば戦艦同士の戦いは幾らかは楽になるだろう。
「提督、第2戦隊が敵戦艦とカンゲアン諸島沖にて戦闘状態に入りました」
「よし!第1戦隊はこれより敵戦艦15隻に対して攻撃を仕掛ける。諸君、この戦い負けるわけにはいかない。ここで負ける事は祖国、人類そのものの破滅と心得よ」
俺はそう言って、艦隊全艦の速力を29ノットへ増速。
一気にロンボク海峡を通過。遠目には既に発砲炎と思われる光が何度も起きている。更には戦艦の発砲音と思われる低い雷の様な音も聞こえてくる。
どうやら双方の艦隊はカンゲアン諸島の北西で衝突した様だ。
お陰でカンゲアン島の島影が発砲炎によって少しだけ確認出来る。
既に太陽は水平線の向こうに沈み始めている。
いや、姿はもう見えず、遠くの空だけが茜色に染まっているばかりだ。
「艦隊、30ノットに増速。背後を突くぞ」
「はっ、艦隊、30ノットに増速。背後を突きます」
そう、命令を出すと艦隊の速力は30ノットにまで増速。
30ノットの高速で進んでいるから時速にすれば55.56km進むことが出来る。
1分間では926mも進むことになる。これだけの高速で進んでいれば射程に入れられるのも直ぐだ。
艦列を今更だが記そう。
第1戦隊
雪風
初月
鈴谷
金剛
霧島
リシュリュー
ビスマルク
ティルピッツ
リットリオ
ローマ
那智
羽黒
キャンベラ
ザラ
ポーラ
能代
秋月
照月
Z3
第1戦隊は雪風と初月を前路哨戒の為に配置、その後ろに重巡鈴谷を置いてその後ろに戦艦が続く。
第2戦隊
朧
村雨
古鷹
長門
日向
クイーン・エリザベス
ウォースパイト
ラミリーズ
ネルソン
デューク・オブ・ヨーク
熊野
プリンツ・オイゲン
青葉
多摩
宵月
満月
Z1
初雪
浦波
菊月
望月
若月
霜月
春月
こちらも先頭に駆逐艦2隻と重巡を出してその後ろに戦艦が続く。
駆逐艦の総数は敵の凡そ2倍、第2戦隊の方向によれば敵重巡洋艦の数は6~8隻程。
戦艦の数は言わずもがな、15隻。
1隻分負けているが、深海棲艦の戦艦は全て艦砲は40cm砲なのに対してこちらは先程も言った通り長門とネルソンしかいない。
火力に関しては最低でも2倍以上の開きがあるがそんな事は関係無い。
今は、持てる力を全て使って敵戦艦を叩くのだ。
こんな事になると知っていれば、大和か武蔵のどちらかを修理して実戦に出せるようになっていれば……
いや、これこそ「たられば」も過ぎる。
今は、目の前の事に集中しなければならない。
「提督、射程に入りました」
「まだだ、まだ撃つな。もっと引き付けてからだ」
射程に入ってもまだ撃たない。
30ノットの高速で進んでいるのだから3万メートルの距離では絶対に当たらない。
「全艦、最後尾の敵戦艦に1万で狙いを付けろ。1隻づつ集中砲火を浴びせてやれ」
「了解しました」
既に距離は1万7千をきっているが撃たない。
出来るだけ近づいて至近距離で叩き込んでやるのだ。
「提督、距離1万になりました」
「よし、全艦試射は無し、一斉射。砲撃開始」
「撃ェ!」
そう俺が言うと、戦艦7隻と重巡、軽巡、駆逐艦全艦が一斉に単縦陣で進む戦艦の最後尾に向けて砲撃を行った。
戦艦58発の主砲弾が一斉に敵戦艦へ落下。
更には重巡、軽巡の放った61発の砲弾も一斉に降り注ぐ。
駆逐艦に至っては速射を行って何発撃ち込んだのかすら分からない。
合計、119発の大中口径の砲弾の中で命中したのはそれでも試射をせずに行ったから命中率は良くないものの、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとはよく言ったもので少なくとも爆発が20回は起きた。
「命中弾多数!」
そう、見張り員が報告すると艦橋内で歓声が上がる。
それは当然だ、20発全てが戦艦の放った砲弾だとすれば轟沈すらあり得る。
幾ら深海棲艦の戦艦と言えども20発の命中の損害は大きい。
炎上を始めており、周りの艦の影すら見える。
「次、目標敵戦艦10番艦。測距急げ」
「次目標、敵戦艦10番艦。測距急ぎます」
次に目標としたのは敵の10番目に進んでいる戦艦だ。
敵艦隊は1隻事の距離が300mは空いているように見える。
そのすぐ12か13番艦でも十分に狙えたがそれではしっかりと狙いを定められない。だから10番艦を目標とした。
「全艦、砲撃準備完了」
「撃て」
「撃ェ!」
金剛の艦体が一斉射によって大きく揺れる。
他の艦も命令に従って砲撃を行う。
重巡と軽巡は既に各個射撃に移らせた。
距離は1万mなので先程の測距と大きく変わらない。
それぞれの巡洋艦は目標を付けては手あたり次第に砲弾を叩き込み命中弾を出している。
再びの全戦艦の一斉射によって同じく命中弾は10発を数えた。
今回、我々がやった砲撃方法は全艦の測距データを纏めて再計算、そして再び数値を出すと言う物だ。
一種の統制射撃、と言われるものでレーダー射撃とは違う。
レーダー射撃は、射撃用レーダーや対水上電探を用いての射撃だが統制射撃は全ての艦が同じ目標に向かって砲撃を行う。
計算時間を稼ぐ為に目標の艦を大きくずらしていると言うのもある
10発の命中ともなれば、一溜りも無い。
やはり、当たり所によっては轟沈すら有り得る。
だが見た感じ、速力の低下はあれど沈む様子は無さそうだ。
だがまぁ、いい。
次の目標に狙いを付けよう。
次は敵の5番艦だ。
あれから統制射撃を2回実施した。
お陰で敵戦艦4隻に大きな損傷を与える事に成功した。
その内の2隻は明らかに速度が落ち始めて艦隊から落伍し始めている。
だが第1戦隊の活躍はそれまでだった。
敵艦隊の1番艦を3回目で砲撃した後、速力を敵艦隊に合わせて20ノットに落としたのが失敗だった。
これによって敵艦隊と並んでしまい速力に物を言わせた殴り合いが出来なくなってしまった。その気になれば30ノットに戻せなくもなかったが各艦の損傷によってそれは出来なくなってしまい諦めて同速力による同航戦になってしまった。
幸いにも4回目の統制射撃は成功したものの、流石に敵艦隊も黙ってはいなかった。
15隻の戦艦の内、7隻をこちらの対応に向けてきたのだ。
お陰で20分間の砲撃戦によって双方共に多数の命中弾を叩き出し、
敵戦艦は既に7隻が炎上しているがそれはこちらも同じで霧島が多数の命中弾により速力低下、艦列から大きく落伍している。
更にはリットリオが被弾によって後艦橋が大炎上している。
だが戦意はまだ衰えていないのか砲撃は続行中だ。
それ以外にもリシュリューは前部第1主砲塔が敵弾の直撃によって使用不可能。
ティルピッツは後部第3主砲に命中弾が出て注水、使用不可能。
リシュリューはあちらこちらから火の手が上がってさながら松明の様に燃え盛っている。
金剛とローマは被弾数は2、3発と少なく十分に戦えるがそれも時間の問題。
第2戦隊は長門とネルソンが集中砲火を浴びてネルソンに至っては殆ど廃艦寸前で既に撤退。
長門も速力こそ未だ20ノット未だを発揮しているが副砲は全て破壊されて第1、第4主砲塔が緊急注水によって使用不可能。
長門とネルソンに狙いが集中したお陰かそれ以外の戦艦は未だ健在、戦闘を続行しているが戦闘それ以下の巡洋艦や駆逐艦の被害がかなり広がっている。
プリンツ・オイゲンは速力が大幅に低下、報告によれば4ノットしか出せないし、長門の前を進んでいる古鷹は艦橋に直撃弾を食らって艦橋下部が大きく抉れている。
他には駆逐艦初雪、望月、春月が落伍し戦闘不能。
それ以外にも大小様々な被害を被っている。
我々は第2戦隊と敵艦隊を左右から挟むような形で戦っている。
全体を見れば最初の第1戦隊の統制射撃の影響もあってか我々が優勢に事を運んでいるが何時、それが引っ繰り返されるか分からない。
それでも砲撃を続けている。
「ビスマルクの放った砲弾が敵4番艦に命中、大爆発!」
「うぅむ、どうにもビスマルクとティルピッツの命中率が高いな」
「恐らく、我々と使用している光学機器の性能差によるものでしょう。ですが嬉しい誤算です。このままいけば……」
「いや、油断は禁物だ」
俺がそう言った途端に金剛に直撃弾が発生、艦が大きく揺れる。
「クッ……敵も中々どうしてやってくれるではないか……」
「提督、敵弾は艦中央部に命中、副砲の幾つかが使用不可能になりました」
「なんとかしてもう2隻敵戦艦を削れれば勝機は十分になるのですが……」
「その2隻が難しい。兎に角、目の前の目標戦艦を叩かなければ話は始まらない」
とは言った物の、そう簡単には行かないか。
あれから20分後。
戦闘の様相は大きく変化していた。
と言うのも、重巡以下の水雷戦隊に突撃を命令したのだ。
それに伴い第2戦隊は大きく右へ舵を切り、艦首を敵艦隊に向けさせた。
そして重巡以下水雷戦隊は敵駆逐艦などを強行突破、距離2500まで接近して酸素魚雷を一斉に放った。
しかもそれを2回。
お陰で敵艦隊はその必殺の酸素魚雷をどてっ腹に4隻の敵戦艦へ命中。
それぞれ2~4本と少なかったがその2~4本が決定打となった。
速力を大きく落とした敵戦艦は艦隊から次々に落伍していき、気が付けば8隻が艦隊より落伍、7隻にまでその数を減らした。
そこに第1、第2戦隊の全艦が集中砲火を食らわせて4隻が大炎上中、残りの3隻も航行はしているが稼働出来る主砲は少なく、1つの砲塔が何とか射撃を行っているという状況だった。
「提督、敵戦艦5番艦の行き足が止まりました!」
「よくやった。だがまだまだ戦闘は続くぞ。気を引き締めろ」
「はっ、勿論です!」
そして今、敵の戦艦がもう1隻艦隊から落伍していった。
だがこちらも手酷くやられている。
霧島、リットリオ、リシュリュー、ティルピッツ、リシュリュー、長門、ネルソンは大破。
金剛とローマも大破寄りの中破。
ビスマルク、ティルピッツが中破。
残りの戦艦もその殆どが中破以上の損害を受けており、巡洋艦なども同じような状況だ。
だがそれは敵戦艦も同じで炎上、各砲塔使用不可能、速力低下など様々な損害を負っている。
そして、漸く決着の時がやってきた。
水雷戦隊が一度離脱し、魚雷を再装填して再び敵戦艦6隻に魚雷を叩き込んだ。
速度の大きく落ちた戦艦など彼らからすれば良い的でしか無く次々に水柱を上げる。
「提督、敵戦艦4隻に魚雷4本が命中。完全に行き足が止まりました。残りの2隻にも2本ほど命中していますが沈む気配は無く、針路反転、撤退していきます」
「そうか……良くやってくれた」
「追撃いたしますか?」
「いや、我々も手酷くやられたからな、深追いは禁物だ」
「では……」
「現時刻を持って戦闘は終結したものとする」
「はっ、全艦に通達します」
その俺の一言により、敵艦隊へも追撃を行うことは無く戦闘は終了。
それから1時間後、各艦から被害報告が上がり、それらの集計が終わった。
大破
金剛
霧島
長門
ローマ
ビスマルク
ティルピッツ
リットリオ
リシュリュー
ティルピッツ
リシュリュー
ネルソン
鈴谷
那智
ポーラ
能代
秋月
熊野
プリンツ・オイゲン
青葉
多摩
宵月
満月
中破
日向
クイーン・エリザベス
ウォースパイト
ラミリーズ
デューク・オブ・ヨーク
羽黒
古鷹
キャンベラ
ザラ
初雪
浦波
菊月
望月
若月
初月
照月
Z3
村雨
霜月
春月
以上となった。
無傷とは行かないが雪風、朧、Z1の3隻は比較的損害は少ない。
特に大破艦で酷いのは長門、ネルソンであり、この2隻に関してはどうして浮いていられるのか不思議でしょうがないぐらいになっており、はっきり言ってしまえば廃艦同然の有様だった。
それでもまだ自力航行が可能だ。
と言っても2隻とも3ノットを発揮するのがやっとの有様だ。
なんとか修理をして7ノットを発揮出来るまでにはなったがそれでも酷い有様だ。
それ以外にも速力を10ノット以下しか発揮出来ない艦は数多く、即座に日本本土へ向けて回航。
だが日本本土へ到着するのはこの速度だとはっきり言って1か月以上掛かる。
まぁ、急げ急げと言っても速度が出せないのだからしょうがない。
確実に、1隻も欠けることなく呉に到着するよう厳命。
道中では紫電改や疾風、一式陸攻などが直掩に就く。
そして俺は再び蒼龍に移乗、指揮を執り始めた。