暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第1話

 

 

 

立っていた。真っ白で何も無いただの空間に。

 

 

 

 

気が付くと俺は何処かにぼうっと立っていた。

 

そこには何も無く、ただ広がる空間。

踏んでいる感覚はあるのに何処か実体がない地面の様な感じだ。しっかり踏み締めて立っていると言うよりは若干ふわふわと浮いている、と言った方が正しいかもしれない。

 

 

夢でも見ているのか?いや、それにしても妙に現実味があるな……

 

 

キョロキョロと周りを見渡すが本当に何も無い。いや、存在しないと言った方が正しいか。

 

そんな、夢にしてはやけに現実味のある、これは現実に起きている事だ、と思ってしまう様な空間に立ってから数分。なんとなく気配を感じた。

 

……?いや、気のせいか?

 

しかし気のせいにしては気配の多さと、視線の数が多い気がするな。かなりの数に、一斉に見つめられている感覚だ。

それこそ学校のステージの上に立った時などとは比べ物にならないぐらいだ。俺は実際に立った事なぞ無いのだが、どう考えても数が多い。多すぎる。

 

段々と恐怖感が湧き、どうすれば良いのかと助けを求める様に周りを見るも何も無いのだからどうしようもない。

 

すると、あくまでも感覚でしか無いが、遠くの方に人影の様な、ぼんやりとしたものが目に映った。

あれは何だろうかと見つめてみると、驚いた事に段々と数を増やしていくではないか。

しかも10や20なんて小さな数では無く、何千、何万、何十万、何百万とどんどん膨れ上がっていく。

それらは一様に軍服の様な服装であったり私服を着ていたりとバラバラだったが明らかに軍人と思えるものが多かった。

 

ーー お前達はなんだ!?何故俺を取り囲みそんなにも見つめる!?ーー

 

恐怖心に、そう声を出そうとするが声は出ない。無意味に口を開閉させるだけで終わった。

すると、何処からとも無く声が聞こえてくる。

 

ーー 祖国に、戦友に、武運長久があらん事を ーー

 

ーー 家族に、子に、親に、孫に、愛する者達に平和な世界を ーー

 

ーー 再び自由な海を取り戻せ ーー

 

ーー 勝利を君の手に ーー

 

次々と聞こえてくるこえは、底冷えする様な、ぞっとするほどに 怖いものだった。

執念や、怨念とも取れる程に恐ろしかったが、最後の最後に、温かいと感じた。

なんと言ったかは分からないが、何処か温かいと感じた。

 

火などの暖かさと言うよりは人間の温もりと言った感じで、自身の家族や友人知人達、祖国を思いながらと言った感じだろうか?

 

俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

ふと、意識を取り戻し気が付くと何処か見覚えのある様で、見覚えの無い場所にポツンと立っていた。

ここは何処だろうか?

 

高層ビルは崩れて瓦礫になっていたり、半壊していたりとボロボロだ。

アスファルトで舗装されていたであろう道は、瓦礫に埋もれ、見えていても大きな穴が空いている。

 

建物全体も、もう既に何年も使われていない様相でメンテナンスもされていないのか崩れていないものも劣化が進んでいるのが分かる。

それどころか、人の気配が無い。薄いとか少ないではなく本当に無いのだ。

 

「何処だここ……」

 

そう漏らした声に答える声は無い。

ウロウロと歩き、瓦礫の中からここがどこなのかを知る為の手掛かりを探す。しかしここが俺が住んでいる日本だと言う事は辛うじて分かる程度。

 

幾らか歩いてみたが瓦礫の山と言う言葉がそっくりそのまま当て嵌まる。

しかし多少の収穫はあった。

看板なんかに書かれている文字は紛れも無く日本語だったからだ。

しかし詳細な位置を知る為の情報は得られず、どうすれば良いのか分からずじまい。

 

 

なんだかんだで3時間程歩き回ったのかかなり疲れその辺の適当な瓦礫に腰を下ろした。空を見上げると太陽は真上にある。

 

今は大体昼頃って事か。

 

そう考えても状況の改善には何の役にも立たない。

これからどうすればいいか分からず息を吐く。

 

そして唐突に先程漏らした俺の声に答える声の変わりに聞こえて来たのは何かのエンジン音の様なものだった。

車何かとは全く違う音で、同じ地面を移動している乗り物では無い。

 

「空か?」

 

そのエンジン音は、ビルが崩れ見やすくなった空から聞こえて来る。

しかも複数が同時に群れを成して飛んでいる様な感じだ。

首を動かして探すと、ずっと遠くに巨大な機影が何十機と固まって此方に飛んで来るのが分かる。色は紫の様な黒だ。

 

なんだあれ。

 

あんな趣味の悪い飛行機なんて見た事無い。

まぁ飛行機には余り詳しくは無いので不確かだが、態々あんな色合いの飛行機を集めて一斉に飛ばすなんて馬鹿な事はしないだろう。何かしらの宣伝が目的ならあんな色合いにするより宣伝を書き込む筈だが。

 

そこまで高い高度を飛んでいる訳では無さそうだ。

するとそれとは別の、真反対の、俺の後ろの方から別のエンジン音が聞こえてくる。

このエンジン音の主は巨大な機影よりも小さく、頼りないと感じる。しかしながら此方も複数機いるのか合わさって大きな音だ。

 

その小さなエンジン音は、俺の頭上を飛び去ると巨大な機影に向かって行く。その機影はプロペラで飛んでいて、ジェット機が殆どを占めるこの時代においてはどこか古めかしいと感じる。だが同時にとても頼もしく力強いと感じた。

その翼には赤い丸が書いてあり、恐らくは日本の飛行機なのだろう。

 

しかし何が起きているんだ?訳が分からないぞ。

 

巨大な機影を見ていると、それに向かって白い筋が何本も伸びて行く。見ただけで数十はあるだろうか。

頭上を飛んで行った機体では無いだろう。速度が違いすぎる。

白い筋は巨大な機影に伸びていき、爆ぜた。

 

「!?」

 

何十と言う赤い火が膨れ上がり消えて行くが、巨大な機影に何かしらの被害がある様には見えない。

悠々と跳び続ける。

 

 

暫くすると先程頭上を飛んで行った飛行機が巨大な機影と、明らかに戦い始めた。幾つもの赤い線が巨大な機影に伸びていき、巨大な機影からは黒煙が吹き出て落ちて行く機体すらある。

しかしながらその逆もあり、クルクルと回りながら落ちて行く。

 

すると、ふとかなり近い距離である事に気が付いた。

段々と戦っている集団は此方に近づいてくる。

 

遂に頭上に来て、更に進んで行く。

すると頭上を飛んで行った飛行機は急に離れて行った。

次に起きたのは巨大な機影の周りや中心に爆発が起き、黒い煙を残す。

 

更に暫くすると連続した爆発音が何度も聞こえてくる。

もう本当に何が起きているのか全く分からない。

 

 

頭上を飛んで行った飛行機がかなり低空を飛ぶと、俺に気が付いたのか翼を左右に何度か振ると何処かに飛び去って行った。

 

しかし、本当に何が起きていたんだ?

 

それからどうする事も出来ず。暫く瓦礫の山に座り込み考えていた。

すると、どこからか車のエンジン音が聞こえて来る。次は何だ?

 

車は明らかに軍用車で、そこから3人の迷彩服を着た男達が降りて来た。車には運転席に1人と、天井に取り付けられたでかい銃を構えているのがもう1人。合計で5人はいるのか。一体何の様だ?

 

「両手を上げて膝を地面に付け!!」

 

いきなりなんだ!?

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!今何が起きているのかさっぱり分からない!」

 

「いいから指示に従え!」

 

男達はそれぞれ銃を俺に向け構え、引き金に指を掛けている。

おいおい、本当に何が何だか分からないんだぞ。

 

俺はこのまま押し問答を続けても仕方が無いので指示に従う。

最悪撃たれかねない。死ぬよりは良いだろう。

 

男達の1人が俺の後ろに回り、手錠を掛ける。

そして車に乗せられ、何処かに向かって走り始めた。

 

これから俺はどうなるんだろうか。

 

そんな不安を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side ??? ーーーー

 

 

 

 

ウゥーーーー!!!!

 

 

空襲サイレンが鳴り響いた。

これも毎日毎日来る深海棲艦の定期便だ。

 

 

 

俺達妖精と、艦娘が現れてから既に3年が過ぎていた。

人類が深海棲艦との存亡を掛けたこの戦争が始まってから4年。

当初は負ける事もあったが全体的には勝ち進み、深海棲艦が一番最初に発見されたハワイ奪還作戦を実施するまでに盛り返した。

シーレーンも回復して船の行き来はアジアに限れば活発にもなった。

 

しかしながらハワイ奪還作戦の大敗によって、後退を余儀なくされた。

多くの犠牲を払って奪還したミッドウェーを放棄、南太平洋で守りを固め、ラバウルに戦力を集中させたがラバウルが陥落。ビスマルク諸島が深海棲艦に奪われた。俺はその時から妖精として戦い続けているが負け戦ばかり。

カロリン諸島で防衛を固めて敵艦隊を迎撃したがこれも失敗。

航空隊も、艦隊も海に消えて、守備隊も同じように1人残らず死んだ。

 

 

南西諸島からフィリピンのラインまでで陸海空の区別無く、残った戦力の殆どを本土防衛に最低限必要なほんの僅かの航空隊を残して、掻き集めて挑んだ反抗作戦も失敗。

作戦は悪くはなかった。ただ、敵の数が余りにも多過ぎたのだ。

もし戦力比が同等か、せめて2倍程度ならまだ勝ち目があったかもしれない。

だが深海棲艦は空母だけで20隻以上。それらの護衛の戦艦や巡洋艦、駆逐艦を含めれば純粋な戦闘艦艇だけで数百隻。

さらに上陸船団と思われる部隊も複数発見された。

敵主力艦隊との戦闘ですら覚束無い状況なのにそこに、更に上陸船団だなんて無理があった。

輸送ワ級だけではなくその護衛艦隊も相応の規模。

あの時点での撤退命令は、確かに理にかなっていた。

実際に艦娘とその艦体は損傷はすれど殆ど失われずにすんだのだから。

 

 

だが俺達航空隊は違った。

攻撃隊は敵艦隊に向かう道中で落とされていき、護衛の俺達戦闘機隊は何も出来なかった。

成す術なく燃えて落ちて行く艦攻や艦爆、狙われた艦攻の身代わりとして被弾し爆散した僚機。

燃料タンクに被弾し、自身も重症を負って帰還は困難と判断したのか敵艦に突っ込む総隊長機。

 

 

 

 

 

なけなしの戦力でなんとかして物資を持ち帰ろうと輸送船団護衛の為に正規空母瑞鶴、大鳳の2隻も引っ張り出して、俺も瑞鶴に愛機と共に乗り込んだが奴らは輸送船だけを狙って俺達には目もくれなかった。

余りの数の多さに自身が落とされない様にするので精一杯。

挙句、大鳳までもが大破。なんとか本土に帰る事は出来たが、今日まで物資不足で修理すら出来ていない。

 

空母航空隊は壊滅。

残ったのは一定以上の腕を持つ奴らだけだった。全体の2割程度にに過ぎなかった。これでも戦争初期から生き残っていた妖精、各地の戦いでエースクラスの戦果を残した連中を集めたのにこの結果。

俺は偶々運が良かった。愛機である零戦52型がエンジン不調を起こして飛べなかったから生き残れただけに過ぎない。

最後は攻撃を受けて次々と沈んで行く輸送船を見ているだけで、何も出来なかった。

 

 

 

 

そんな日々がもう丸々2年。

備蓄していた燃料も底を突き掛け、弾薬も生産はされているが供給量は明らかに少なく足りていない。

 

新型機の生産が開始された、と聞いたが現状では何の役にも立たないだろう。幾ら性能が良くても数が揃っていなければ袋叩きにされる。

 

潜水艦による輸送作戦が何度か成功して、燃料は極小ながらも補給の目処があるだけマシ。

船を動かすだけの燃料は無く、潜水艦娘以外の艦娘と艦体が最後に動いたのはいつの事だったか。

燃料タンクの燃料を全て底まで掻っ攫えば幾らかは集まるかもしれない。

 

 

 

そう思いながらも何も出来ず。

しかしながら定期便相手に迎撃に出ないと言う訳にもいかない。

 

「敵機の機種と数は?」

 

「B‐24です。機数は60機以上」

 

「高度は?」

 

「3500mです。低いですね」

 

「昨日の迎撃で散々邪魔をしてやったからな、爆弾の命中率も悪かった。今日は多少の犠牲を払ってでも命中率を上げたいんだろう。進路は?」

 

「このまま真っ直ぐに飛び続ければ、この飛行場か更に奥にある工場地帯です」

 

「飛行場だろうな。機数が多い爆撃を受ければこの飛行場は2、3日は使えなくなる。それからゆっくり工場を叩けばいい話だ」

 

対空電探手と会話して、滑走路に走って向かう。

すると既に皆集まって整列をして待機していた。

 

「すまない、待たせた」

 

「いいえ、問題ありません」

 

「それでは、今日も深海棲艦の奴らの定期便だ。機数は60以上、機種はB‐24だ。高度は3500mと低い。迎撃するには楽だが……昨日の迎撃で損傷した機体が多い。出撃出来るのは俺を含めて20機」

 

皆は黙って聞いている。

しかしながら俺が20機しか出撃出来ないと言うと、悔しそうに顔を歪め、拳を握る者がいた。

昨日の迎撃で機体が損傷し、修理が間に合わなかった連中だろう。

昨日は全員で53名と52機の紫電改二戦闘機が存在したが30機が迎撃に向かい、迎撃から帰った時は41機まで減っていた。その中の26機が被弾、比較的損傷が小さい機体から修理をしているため20機まで戦力は回復したが、今日は倍の数の敵機を相手取らなければならない。

 

しかもこの紫電改二は今現在本土防空しかしないため、いくつか機体内に内蔵されている燃料タンクの幾つかを下ろして代わりに防弾板を増やしたために機体の操縦性がかなり下がってしまった。速度も低下してしまった。

まぁこれは残存する航空隊の機体全てに言える事なのであまり大きな声で文句は言えない。

 

元々俺達は空母搭乗員だったし、しばらく前まで使っていたのも零戦52型だ。そのあとに紫電が来たが今は紫電改二。

この紫電改二は、陸上機として開発された紫電を艦載機用に改造を施したものなのだが今は動かせる空母が無く、一度も空母で運用されないまま陸揚げされて防空戦闘機隊として今は運用されている。

 

 

しかし正直な話、20機で全ての敵機落とすのは不可能だろう。B‐24の機銃は濃密だし恐らくは、今回は半分生き残れば良い方か。

しかしそれでも行かなければならない。

 

「それでは搭乗員割を発表する」

 

搭乗員割と言っても飛ばせる機体は出来るだけ飛ばして地上撃破されるのを防がねばならない。故に今日は飛べる20機全てで行く。

 

 

 

 

 

 

紫電改二に乗り込み飛び立つ。

やはり機体は防弾板を追加しているからか重いな。

僚機達は続いてどんどん飛び立ち、前機が飛び立つと空中集合の後、敵機編隊に向けて進んだ。

 

 

 

暫くすると遠目にB‐24の編隊が見えた。

今飛んでいるのは東京の上空だ。もう殆どの建物が瓦礫になってどのあたりなのか詳しい事はもう分からなくなってしまった。

 

すると唐突に、力が湧いて来たような感覚を覚えた。

それはほんの2分程度の間だったが……なんだったのだあれは……?

 

 

 

更に進むとB‐24の編隊がどんどん近づいてきた。

 

「各機へ連絡。一旦高度を4500まで取ってやり過ごす。真下を通過したら反転急降下。攻撃開始だ」

 

『『『『『『『『『『了ッ!!』』』』』』』』』』

 

部下達の声は勇ましく、頼もしいと感じるものだったが目の前のB‐24の編隊に突っ込むことを考えると、不安になる。

 

 

ーーーー 今日は何人死ぬんだろうか。もしかすると俺の番かもしれない。 ----

 

 

そんな縁起でもないことを考えてしまう。

軽く頭を振るってそんな余計な考えを消し飛ばすと戦闘に集中することにした。

俺達の部隊は精鋭が集められているんだ、奴らなら大丈夫。

 

下を覗くと敵編隊は真下を通り過ぎていた。

 

「攻撃開始!攻撃開始!」

 

その合図と共に機体を横転させて敵編隊に向けて突っ込む。

すると敵機のそれぞれの銃座から一斉に火箭が伸びてくる。機体の横やコックピットの横を飛んで行く銃弾の音がビュンビュンとするが未だに命中していない。

 

距離が100mでエンジンを狙い引き金を引く。

 

放たれた20mmの弾丸は、正確に1機のB‐24のエンジンを貫き、翼をへし折った。そのまま機体を敵編隊の下に潜り込ませる。

 

後ろを見ると全機攻撃に成功したようで、14機ほどがエンジンから黒い煙を吐いている。

 

撃墜出来たのは……4機か。出来ればもう何機かは落としたかった……仕方が無い。

 

敵編隊を離れ降下のエネルギーを使いながらそのまま機首を起こしてもう一度敵編隊の上を取り同じように攻撃をする。しかしこれ以上、上を取っての攻撃は難しそうだ。これっきりだな。

 

「各機、この攻撃が終わったらロッテを組め。次は横方向から攻撃を加える。万が一の場合の判断はそれぞれに任せる。行くぞ」

 

通信でそう伝える。

そのあと、攻撃を加えた。

後ろを振り向くと、B‐24ではなく2機の紫電改二が火を噴いて落ちて行った。

B‐24は5機落ちていくのが分かる。さっきの攻撃で黒煙を吐いていたやつを狙ったから楽に落とせた。

 

しかし今回は2機を引き換えに5機か……厳しいな。

 

攻撃を加えた後、早い段階で機首を引き起こして離れていきロッテを組み左横から攻撃を加える。

B‐24の銃座から飛んでくる弾を右へ左へ避けながら代わりにこっちの20mm弾を叩き込む。

 

 

 

 

 

そんな戦闘をしていると、気が付けば対空砲の射程圏内に入っていた。

本当ならばもっと戦闘を続けたいのだが同士討ちは絶対にあってはならない。それに我々も20機中、9機が落とされた。幸い脱出した者もいるがこれじゃ壊滅的な打撃を受けたといってもおかしくはない。

 

しかし、またしても途中不思議な感覚に襲われた。

ほんの少しだけだが確かに、機体のエンジンの調子なんかも良くなったし何よりも俺自身の視界が透き通った。

判断能力も上がっていたし敵編隊の一番弱そうな箇所も何となくだが分かった。

 

事実俺だけではなく部下達もそうだったようでその時だけは動きが普段よりもずっと機敏だったのを覚えている。そのお陰か、B‐24は当初60機もいたのに飛行場を爆撃出来たのはパッと見て30機程だったようだ。

 

それでも護衛戦闘機無しの敵爆撃機を相手に8機も落とされてしまった。

かなり機体同士が密集していて弾幕が濃密だったからかもしれない。

 

こちらへの損害は1度目の攻撃は損害無し。

2度目は2機失った。

3度目でもう2機。

4度目で更に3機。

5度目で2機。

 

2回目以降になると確実に2機は落とされている。

これがこのまま続けば、近いうちにこちらの継戦能力はなくなるだろう。

 

残っている者も被弾したものが大半でエンジンから煙を吐き出していたり、燃料タンクから燃料を漏らしている奴もいる。

幸い俺も被弾したが致命傷となる様な箇所には被弾していないらしくまだ飛べる。

燃料にも多少の余裕はあるし、みんなを先に予備滑走路に下ろした方が良いな。

 

「お前達、先に降りろ。俺は一番最後で構わん」

 

『『『『『『『『『『『了』』』』』』』』』』』

 

「4番機、13番機、17番機、お前たちが一番最初だ。エンジンがそろそろヤバイだろう」

 

『こちら4番機。煙は出ていますが多少は飛べます。ただ冷却装置をぶち抜かれたのか過熱が激しい』

 

『こちら13番機。先ほどから機体が揺れ始めました』

 

『こちら17番機。2人よりはまだマシです。お先にどうぞ』

 

「よし、一番最初は13、4、17番機の順番で降りろ。滑走路の穴に気をつけろ、ひっくり返ったら大事だ」

 

『『『了』』』

 

俺の指示でその3機が予備滑走路に向けて降下していく。

……13番機、もしかすると危ういかもしれん。機体の揺れが激しくなって来ているな。どうか気を付けてくれよ。

 

その間、残った俺達は空中で警戒を続ける。

今このタイミングで敵機が襲い掛かってこないとも言い切れない。

 

 

 

「よし、次は燃料に不安があるやつからだ。6、9、12、19番機、降りろ」

 

『『『『了』』』』

 

続いて燃料タンクに被弾してこれ以上の飛行に不安が残る奴だ。

指示に従って降りていく。

 

「副隊長、大丈夫か?」

 

『えぇ、問題ありません。計器は全て異常無し。燃料が続く限りはまだまだ飛べます』

 

「よし、警戒が終わったら少しだけ探しものだ」

 

『脱出した連中ですか』

 

「それもあるが、敵編隊に向かう途中と戦闘中、帰ってくる途中でなんだか不思議な感覚を覚えたんだ」

 

『あぁ、それですか。私は気のせいだと思うんですが……確かにエンジンの調子や私自身の動きが全然違いましたからね』

 

「あぁ、それに3回も同じ場所でその感覚があるなんておかしいだろう。探す理由としては俺的には十分だと思うんだが、どうだろうか」

 

『……そうですね、脱出した奴らの捜索と言っておけば上もあまり文句は言ってこないでしょう』

 

「ははは、そうだな。上にはそう報告しておこう。それじゃ、空中警戒が終わり次第探しに行くか」

 

『了』

 

それから全機が降り立ち機体から全員が降りたのを確認すると俺と副隊長は機体を翻し脱出した部下と、例の感覚を覚えたあたりに飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

探しに行って戻ってきた。

今頃は全員に迎えが言っていることだろう。

 

そして例の感覚だが、結果としては大当たりだった。探しに行ったとき再び同じ空域で同じ感覚を覚えた。その辺りを探した結果、人間を1人見つけた。

 

あの人間を見た瞬間に、こううまく言い表せないが強く感じるものがあった。

向こうは何が何だか分からないといった顔でこちらを見ていたが、俺はあいつに絶対何かある。あいつがこの感覚の原因だ、と確信した。

 

しかし、あの辺りは危険区域として一切の立ち入りが禁止されている筈なんだがどうやって入り込んだんだろうか。監視網に引っかからずに入り込むのは不可能なんだが。

まぁ取り敢えずは救助するしかない。連絡をして迎えを寄こすことにした。

 

本当は迎えが来るまで上を飛んで守るべきなんだろうが俺も副隊長も流石に燃料が無くなってきた。今戻らねば俺たちは燃料が空になって墜落だ。

仕方なく飛行場に向かった。

 

 

 

 

 

飛行場に戻ると、部下達が出迎えてくれた。

報告を受けると、どうやら明日までに修理できる機体は今現在修理を進めている機体を合わせてもたったの10機。

出撃出来るのは俺を含めてたったの12機だそうだ。

 

これは、流石にまずい。

もう一度同じ規模のB‐24が襲ってきたら殆どを取り逃がすことになる。

B‐24に限らずだが……これでこの航空隊も壊滅か。

 

整備班も同じ結論に至ったのか、今も死に物狂いで修理を進めている。

だが2、3機増えても成す術が無いのは同じだろう。

 

明日の定期便までに果たして何機が飛べるようになるだろうか。

そもそもこの日本に、希望はあるのだろうか。

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 






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