あれから更に2か月後。
漸く南方方面、カリマンタン島とスマトラ島の攻略を完了した。
攻略を担当した陸軍師団と海軍陸戦隊はそのまま守備隊として守りについている。
ジャングルと言う特性上、戦後処理が終了次第、即座に訓練に移る予定だ。
戦後処理と言うのは、各地での防衛体制の確立に加え島内に張り巡らせるように敷設している軽便鉄道敷設の支援、飛行場設営支援など多岐に渡る。
島内に張り巡らせている軽便鉄道はあちこちの陸軍駐屯施設と通じており、物資輸送や人員の輸送が迅速に、かつ安全に行えるようになっていた。
特に、重要施設であるパレンバンやバリクパパンなどにはそれぞれ4つづつの飛行場が稼働中だ。更には増援として2個師団を送り込み丸々2個師団が防衛に就いている。
飛行場には陸軍の疾風を主力として、海軍が一式陸攻や二式大挺などの攻撃兵力を送り込んでいる。
紫電改も送り込んでいるが、日本本土の陸軍飛行戦隊を引き抜いて疾風を送り込んでいるからその穴埋めとして日本本土各地に配備を進めている。
何故陸軍を主力としているのか、と言うと陸軍で固めた方が連携が取り易いであろう、との事からだった。
しかしながら哨戒任務に就くのは海軍の二式大挺、もしくは一式陸攻であり敵機迎撃や敵艦隊攻撃任務になれば陸軍の疾風は海軍の誘導に従って行動する予定だ。
現状、問題らしい問題と言えば敵艦隊が進出してきた場合、どのように防衛を行うかという事が残っている。
というのもリンガ泊地を奪還したは良いがマレー半島からの敵航空戦力の来襲があるので投錨が出来ない状況にある。
マレー半島上陸も考えたがこれ以上戦線を広げるのは現有戦力全てを投入しても困難であるとの結論に至った。
そも、奪還したパラワン島、カリマンタン島、スマトラ島、リンガ泊地の維持を行うので精一杯なのだ。
というのも輸送船の数自体は戦時緊急として建造された輸送船を多数保有しているがそれの護衛を行うための戦闘艦艇が圧倒的に不足しているのだ。
輸送船団だけで送り出せば間違いなく深海棲艦の餌食にしかならない。
沖縄からスマトラ島に至るまでの飛行場から疾風などが上空直掩に就いているが万全とは言い難い。
恐らく通商破壊艦隊が出張ってくれば殆ど抵抗らしい抵抗を行えずに殲滅されてしまうだろう。
戦線の拡大は好ましくない。
その気になれば奪還、占領は可能ではある。
だが維持が出来ないという問題があるからこれ以上の攻勢に出られないのだ。
更に問題とされていた衛生環境の整備だが、そちらに関しては沖縄と同じく医薬品を大量に送り込み、万が一発症した者が居れば新型輸送機を使用して沖縄に建設した陸軍病院に後送するようになっている。
そして俺はと言うと、先ず本土に帰国後に待っていたのは幾つかの勲章の授与と、大量の書類仕事だった。
というのも、南方方面での功績を称えるという事で勲章を幾つか授与された。
まぁ、この勲章はプレハブの自室の棚の中に突っ込んである。正直、式典の時以外は身に着ける気は更々無い。あれ、じゃらじゃらして気に入らない。と言うか、物凄く邪魔だ。
で、大量の書類と言うのは俺が南方方面に出張っていた時に溜まりに溜った物と今回の作戦における各種の報告書と損害を出した事に対する始末書の山。
正直言って報告書ならば分かるが始末書は戦闘を行えば必然的に被害は出るのだから書く必要はあるか?と甚だ疑問ではある。
だが書かなければならないと言うのが現実ならば仕方が無い。
文句を言って仕事を滞らせるくらいならばちゃっちゃと書いて別の仕事を進めた方が良い。
さて、攻略を行ったスマトラ島、カリマンタン島だが。
両島には資源が数多く眠っており、既にパレンバンやバリクパパン、それ以外の場所からも石油を始めとした各種資源が日本へ向けて送られている。
行きは補給物資を積んで、帰りは各種資源を持ち帰って来る。
その様な感じだ。
マラリアや赤痢などの患者は船だと時間が掛かるので航空機で運んでいる。
毎回の輸送船団は、タンカーが20隻に輸送船が30隻づつの計50隻だ。
勿論、護衛艦隊も付いている。ただ、輸送船団の規模としては明らかに少ない。
護衛艦隊の規模は、
第1護衛艦隊
航空母艦
大鷹 神鷹 海鷹
重巡洋艦
最上
軽巡洋艦
名取 鬼怒 天龍 龍田 神通
駆逐艦
東雲 白雲 浦波 狭霧 子日 有明 海風 江風 峯雲 霞 藤波 沖波 清霜 白雲 有明 長月 荒潮 親潮 黒潮 竹 桃 椿 楓 樺 楠 初梅
計34隻
空母神鷹と本土防衛艦隊丸々新しく組み込み、鳳翔を母艦航空隊錬成の為に引き抜いた。
神鷹の搭載機数は鳳翔、大鷹と同じく36機で零戦52型丙20機、零戦62型12機、彩雲4機となっており合計で108機になっている。
数で見れば多いと感じるだろう。
だが108機と言う数は決して多くは無い。寧ろ少ないとすら言える。
迎撃に専念すればまぁ、何とかなるかもしれない。
それが烈風であったのならば、だが。
彼女達が搭載しているのは全て旧式の零戦。旋回性能こそ深海棲艦機に勝てはするがそれ以外の最高速度、急降下耐性、防弾性能、武装、全てにおいて負けている。
まぁ、居ないのと居るのでは大きく違う。
事実、何度か深海棲艦機による攻撃を受けているがそのすべてを撃退、更には敵潜水艦を3隻撃沈するという成果も挙げている。
だが逆もまた然り。
輸送船団にも被害は出ており、今までに輸送船の被害は21隻に上っている。対潜警戒を疎かにしていると言う訳ではないがそれでも隙は出来てしまうし、バリクパパン方面への輸送船団が一番危険度が高い。
と言うのもスラウェシ島から敵機が襲い掛かって来ており、母艦航空隊の零戦や陸軍の疾風が迎撃に就いていても突破されることが多い。
二段構えの防空によって被害は抑えられているがそれでも毎回の輸送船団で2~4隻ほどの被害が出ている。
しかも戦時緊急造船型なので爆弾1発ですら致命傷、機銃掃射ですら沈められる可能性が極めて高い。
敵もそれを分かっているのか毎回毎回、多数の機体を送り込んで来て戦闘機にすら噴進弾を搭載して襲い掛かってくる始末。
噴進弾は戦闘艦艇、それこそ大型艦からすれば何ともない物だが小型艦である駆逐艦や防御力の極端に低い戦時緊急造船型の輸送船からすると十分以上の脅威になる。
だから護衛に就いている空母2隻の零戦や上空直掩任務を共に行っている疾風にバタバタと落とされるが深海棲艦の物量からすれば大した事の無い、痛くも痒くも無い。
しかもその内の何機かが突破して輸送船に被害を与えているのだから、失わう物資の量を考えれば我々の方が痛手だ。
現状の解決策としては出来るだけ沿岸部を航行して各地の航空隊の支援を受けやすい様にするぐらい。
防御力を向上させた輸送船も設計されてはいるが兎に角、輸送船の数を揃えなければならない我々は防御力を向上させるならば、単純計算で2倍3倍の防御力とするとその分1隻か2隻作れるので防御力向上型の建造は見送られている。
要は、
防御力は低くとも数を揃えるか。
防御力は高いが数を揃えられないか。
この2択となる訳だ。
だが戦時緊急造船型は防御力が低いとはいえ何の利点も無いわけでは無い。
その防御力と引き換えに量産性にがあり重量が軽いので物資満載時でも20ノットを発揮することが出来る。
という事は機動艦隊程ではないにせよそれなりに速力を出すことが出来るのだ。
だが防御力を向上させたら、先ず使用する鉄鋼の量が増えるので量産性が下がる。
そして速力も当然落ちるわけだ。
どうやっても速力は出せないし敵機に襲われたときに回避し辛くなるし逃げる事も出来ない。
それを考えれば、戦時緊急造船型でも十分にやれるという話だ。
21隻も失っているとはいえ、それでも航空隊や護衛艦隊の皆は頑張ってくれているからこそ各地の陸軍師団や陸戦隊に行き渡らせるだけの物資は何とか輸送出来ている事が幸いか。
しかもそれだけじゃない、軽便鉄道敷設用の資材も送り込まねばならないので分かっては居るが輸送船団と護衛艦隊の負担は大きい。
事実、軽便鉄道の敷設は諦めた方が良いのでは?と言う意見もあった。
だが軽便鉄道を張り巡らせて運用出来るようになればそれこそ利点が大きい。
何度も言っているが、敵の上陸があった場合に各地の部隊を迅速に移動、戦線投入が可能となるし、物資の運搬の手間や労力が格段に減る。
それ以外にも多数の利点があるのでそれを無視してすぐさま敷設を中止するほどか、と聞かれるとそれは違う。
だからこそ補給を圧迫していようと敷設を進めているのだ。
さて、補給面に関して言えばこのぐらいだろうか?
続いて損傷艦についての話に移ろう。
まず、今回の一連の海戦で損傷した艦は日本本土へ回航後に即座にドック入り。
修理を進めている。最優先で修理を行っているのはやはりと言うべきか、空母だ。
大鳳、飛龍、瑞鶴、阿蘇、アークロイヤル
以上の5隻は本土到着後、即座に修理を開始。
既に全艦が修理を完了し訓練中だ。
尤も早く修理を終えた飛龍と阿蘇はあと1か月で戦線復帰が可能。
瑞鶴と大鳳、アークロイヤルはまだまだ訓練途中であり、2か月以上は掛かる。
そして夜戦に置いて損傷した艦も入渠中。
大破
金剛
霧島
長門
ローマ
ビスマルク
ティルピッツ
リットリオ
リシュリュー
ティルピッツ
リシュリュー
ネルソン
鈴谷
那智
ポーラ
能代
秋月
熊野
プリンツ・オイゲン
青葉
多摩
宵月
満月
中破
日向
クイーン・エリザベス
ウォースパイト
ラミリーズ
デューク・オブ・ヨーク
羽黒
古鷹
キャンベラ
ザラ
初雪
浦波
菊月
望月
若月
初月
照月
Z3
村雨
霜月
春月
以上の内、中破艦及び手酷くやられていた長門とネルソンを優先しての修理となった。
全中破艦は既に小型艦に置いては修理完了。訓練も大詰めだ。
大型艦に関しても訓練は1か月ほどで終了。
大破艦は全て入渠中。
早いければ1か月から2か月で修理が完了、訓練に入れる。
次に母艦航空隊だ。
こちらの再建はかなり時間が掛かる。
というのも今回の戦闘で脱出し救助された者も多かったがそれでも少なくない熟練搭乗員を失った。
流星搭乗員の損耗率は高く、撃墜された流星の搭乗員はほぼ、脱出することは出来ずに機体と運命を共にし、南洋の空に散って行った。
特に一番痛手であったのは西北中佐の戦死だろう。
確かに熟練搭乗員を失ったのは大きな痛手だ。
だが、熟練搭乗員であることに加えて部隊指揮を任せられるほどの搭乗員の喪失は更に大きい。特に西北中佐は原田大佐からしても優秀な指揮官である、と言わせる程だ。
それを失うというのは海軍全体に大きな影響を与えている。
それでも各空母の流星隊は懸命に再建に向けて懸命に歩みを進めているが、俺が着任した当初程の力はやはり存在しない。
それこそ数多くの実戦を積み、尚且つ生き残らなければ精強な母艦航空隊の再建にはならないがこれ以降は今まで以上に辛い戦いを強いられる事になるだろうからそれはもう無理であろう。
せめてもの救いは戦闘機隊の損失が少ない事だろうか。
彼らは技量抜群で毎回毎回少ない被害で切り抜けている。新しく配属された新兵もその原田大佐以下、熟練搭乗員に毎日の様に揉まれながら大きく成長を遂げている。
撃墜された機の搭乗員も脱出し、潜水艦に救助された者が殆どだ。
生きて帰ってこそ、真に一人前。
それが我々の合言葉だ。
兎に角、死んでしまっては意味が無い。もし負けたとしてもまた、何とかして立ち上がれば良いだけの話だ。
確かに任務や作戦を成功させなければならないのも確かだし、そうでなければ日本は、いや人類は深海棲艦との戦争に負けてしまう。
だが搭乗員や艦の乗組員を失ってもまた、負けるのだ。
今現在、懸命に母艦航空隊の再建は進められており、烈風戦闘機隊に関してはあと1か月で戦線投入が可能になるとの事。
しかし流星隊は最低でもあと4か月は欲しい、との事だ。
理由としては流星は水平爆撃、急降下爆撃と雷撃のどれも行える。
だからこそ、それら全ての訓練を行わなければならない。
習熟するまでに3か月、更に練度向上に3か月。都合6カ月は必要であり我々第1機動艦隊はカリマンタン島やスマトラ島の攻略が完全に成功するまで海域に留まっていたからその分訓練は遅れ気味だ。
という事は、空母はあっても艦載機が使えないという事に他ならない。
だからなんらかの作戦を行えるのは最低でもあと4~6カ月先の事だ。
だが嬉しい報告もある。
浮揚作業中であった空母3隻の生駒、龍驤、千代田が修理を完了し訓練中である。
この3隻は早ければ3か月以内に母艦搭乗員の訓練も完了し、戦線投入が可能だ。
その内の生駒は第1機動艦隊に配属され、龍驤と千代田は輸送船団護衛艦隊に配属される。
生駒は烈風と流星を、龍驤と千代田は零戦52型丙と62型の搭載が決まっており毎日の様に空母艦上で訓練が行われている。
更に、浮揚作業中であった全艦が既に修理中であり半年以内に全艦が戦線復帰が可能だ。
戦艦5隻
大和
武蔵
比叡(浮揚作業準備中)
榛名(浮揚作業準備中)
山城
空母2隻
信濃(浮揚作業中)
加賀(浮揚作業中)
重巡洋艦2隻
足柄(浮揚作業中)
加古(浮揚作業中)
軽巡洋艦2隻
酒匂(浮揚作業中)
由良(浮揚作業中)
駆逐艦11隻
磯風(浮揚作業中)
山風(浮揚作業中)
初春(浮揚作業中)
若葉(浮揚作業中)
綾波(浮揚作業中)
夏雲(浮揚作業中)
夕雲(浮揚作業中)
大波(浮揚作業中)
涼波(浮揚作業中)
柿(浮揚作業中)
梨(浮揚作業中)
潜水艦5隻
伊154(浮揚作業中)
伊174(浮揚作業中)
伊175(浮揚作業中)
伊178(浮揚作業中)
伊185(浮揚作業中)
海防艦5隻
占守(浮揚作業中)
石垣(浮揚作業中)
松輪(浮揚作業中)
佐渡(浮揚作業中)
三宅(浮揚作業中)
給油艦3隻
神威(浮揚作業中)
速吸(浮揚作業中)
塩瀬(浮揚作業中)
給料艦1隻
間宮(浮揚作業中)
更に、南方資源地帯から各種資材を輸送し幾分か余裕が出ているので戦艦を除く全艦艇の浮揚作業を行っている。
ただし、信濃と加賀の2隻に優先して作業員を回しているので信濃と加賀は年内中に修理を開始、それ以外の艦艇は来年の春から夏にかけて入渠予定だ。
戦艦の浮揚作業はそれ以外の艦艇の浮揚作業が終了次第、順次取り掛かる予定だ。
早ければ来年の夏頃には浮揚作業を開始出来るだろう。
既に比叡と榛名は、必要となる物資の計算や人員、その他諸々の計算を行い準備を進めている。
残りの3隻はもう少し時間が掛かるがそれでも着実に準備は進められていると言っていい。
そして人員不足が理由で本土防衛艦隊に配属されていた艦だが漸く人員の確保が出来たので手薄になっていた輸送船団護衛艦隊に新しく組み込んだ。
これで、艦艇に関する話は粗方終わっただろうか。
続いて、かなり以前から開発されていた新型の4発重爆撃機について話そう。
当然、これも震電同様機密だ。
元々、この新型4発重爆撃機は深海棲艦の一大拠点であるマリアナ諸島、更に言えば毎日の様に来襲する敵爆撃機の拠点となっているサイパンに対する爆撃を行う為に開発が進められていた。
だが数多くの問題があり開発は難航。
そこに合同艦隊救出で得られた技術を取り入れたり、技師妖精に助言を貰うなどしてようやく開発の目途が立った。
そこで開発されたのが略符号G5N。機体名称「深山」であった。
この機体は全長、全幅だけであれば日々日本本土に爆弾の雨を降らせ続けているB‐29に匹敵した。だが、匹敵したのはそれだけだった。
全長 31.02m
全幅 42.14m
全高 6.13m
自重 20.100kg
全備重量 28.150kg
最大時速 392km/h
航続距離 3528km
武装
20mm機銃2門
7.7mm機銃4挺
爆装量最大3000kgまたは魚雷2本
はっきり言ってしまえばデカいだけで最大時速も航続距離も到底、要求性能には届かず、更には爆装量も多いとは言えない。
正直言ってこんなのが魚雷を抱いて雷撃を行うなんて只の自殺にしかならないので魚雷の搭載はほぼ有り得ないのであれだが……
しかも運動性能は4発重爆だとしても劣悪としか言えず、搭載予定であった護エンジンは出力不足に加えて振動が激しく信頼性に大きく欠ける。
機体重量も重く離陸にはかなりの距離を必要とする。
更に機体自体も電気系統を始めとした各部で問題が多発。
生産性も複雑な機構が多数あるので低かった。
複雑な機構故に整備性に大きく欠けており本土だけでなく前線の飛行場へも配備を考えている陸海軍としては大きな問題だった。
テストパイロットになった妖精に話を聞いたが、
『あれは本土上空ならばともかく前線で使用なんて到底出来ない。エンジンの振動が激しく操縦性も酷い。それならば少ないが一式陸攻に6番1発を括り付けて敵の飛行場に向かった方がマシだ』
『あれと一式陸攻どちらを選ぶかと聞かれたら迷わず一式陸攻のを選ぶ』
『これで爆撃任務なんて到底出来ない。確かに爆装量は一式陸攻よりも多いがそれを差し引いても問題が多すぎて空の上でそれが起きる事を考えたら飛びたくない』
と散々な酷評だった。
一部の搭乗員や整備兵では、「馬鹿烏」だとか飛び方を忘れたんじゃないかという事で「アホウドリ」だなんて呼ばれているらしい。
しっかりと飛ぶことの出来るアホウドリからすれば良い迷惑なのだがその話は置いておくとしよう。
更にはその防御力も防御機銃も凡そ強力とは言い難く、護衛戦闘機を付けられないマリアナ諸島への爆撃任務では相当数が失われると予想できる。
まぁ、総評からすれば陸海軍がとてもではないが正式採用をする事は出来ない機体だった。
護エンジンは、開発の遅れがあったので最初に試作された4機はそれまで一式陸攻などに搭載されていた火星エンジンの搭載をしていたのでエンジンだけに関して言えばマシだった。
整備員も一式陸攻で火星エンジンの整備には慣れていたので問題無い。
だが護エンジンを搭載した試作機4機は上記の振動問題が酷く、信頼性に欠けておりどうやってもその問題は解決出来ないので生産はたったの16基のエンジンだけになった。
そこで陸海軍は、これ以上改良を施しても成果の見込めそうにない深山の正式採用を断念。
試作された8機は輸送機に改造されることが決定。
護エンジンを搭載した機体は火星エンジンへと載せ替えた。
更に機体を大幅に改造。
胴体下部に貨物搬入用扉、胴体内部には貨物積み下ろし用の手動クレーンを取り付けた。
更に南方方面での重病を患った妖精や諸事情により内地へ向かう人員を載せる為に8名を載せられる客室の設置も行った。
先程、航空機で病人を運ぶと言ったがその担当が深山だ。
深山は、沖縄に建造した陸軍病院まで病人を運び、そこでの治療が困難である、不可能だと判断されれば本土へ更に後送される。
深山はその気になれば空挺作戦に落下傘部隊を搭載して参加することも可能だ。
貨物室に改造を施せば、の話だが。
この8機は既に輸送任務に従事しており、各地の飛行場はそれに伴い飛行場を拡充、滑走路をコンクリート製にするなどの大規模な工事を実施。
配備基地は第1大和飛行場だ。
本来ならば那覇飛行場にでも配備したかったのだが整備性に欠けるので本土配備となっている。
第1大和飛行場から飛び立った深山は、那覇飛行場で一度補給を受けてからまた南方方面に向けて飛び立つ。
主に運んでいるのはエンジンや落下式増槽などの重量物などではなく、軽量な医薬品や小口径弾などが殆どだ。
エンジンなどの重量物は輸送船団に任せて日々消費する医薬品や小口径弾を優先して運び込むという事だ。
搭載量は3000kgもあるので8機ともなれば24000kg(24t)にもなるので医薬品に限ればかなりの量を運び込むことが出来る。
ただ、医薬品と言っても運び込んでいるのはマラリア対策などの毎日飲まなければならない薬では無く、鎮痛剤などだ。流石に毎日消費する物資を運ぶのは備蓄用も考えれば8機だけでは無理があるからな。
その様なわけで深山は正式採用されなかった。
そして、深山の正式採用が見送られる前から、深山の見通しの暗さから海軍は既に別の機体を開発することを決定。
そうして開発が進められたのが略符号G8N正式名称「連山」であった。
この連山は正式名称を与えられる前までは十八試大攻と呼ばれていたのだがその辺は割愛しよう。
この連山は、深山の設計、製造などで得られた経験を元に開発が進められた。
深山で問題となった生産性、整備性、信頼性を向上させるべく、特殊加工を行わなければならない部品を極力抑えて、彩雲で採用されている厚板構造を採用。
この厚板構造の採用により縦通材やリベット数を削減。
また、深山での速力が遅いという経験から空力的に洗練、主翼を小さくしたりと詳しくは専門ではないので分からないがかなり徹底して設計した。
離着陸時に使用する高揚力装置も二重フラップの採用だったりと深山での経験を大きく生かしている。
更には1.5tや2tと言った爆弾を搭載し長距離に進出して攻撃を行う事を想定しているので高高度飛行性能や防御力も重視。排気タービン過給機を搭載して速度を向上させた。
しかも防御銃座は、動力銃座を搭載し、更には一式陸攻などではお世辞にも高いとは言えない防弾装備も施すなど高速かつ重武装を施した機体となった。
防御銃座の配置も日本本土に来襲するB-29や前線での防空戦で戦うB-17などを参考にして視界、射界は良好、空力的にも優れている。
降着装置、所謂ランディングギアも前輪式を採用している。
性能は以下の通り。
型式 4発中翼単葉陸上攻撃機
構造 前金属製 モノコック構造
引き込み足 前輪式
全長 22.93m
全幅 32.54m
全高 7.20m
自重 17.4t
正規全備重量 26.8t
攻撃荷重重量 32.14t
最大速度 593km/h
(1t爆弾を搭載した状態で高度8000mなので搭載しない場合はもう幾らか速度の向上があるだろう)
巡航速度 370km/h
実用上昇限度 10200m
航続距離 3700~7470km(装備の重量によって変化)
乗員 7名
武装
20mm機銃6門
(胴体前方上方旋回2門、胴体後下方旋回2門、尾部旋回2門)
13mm機銃4門
(機首旋回2挺、胴体両側旋回各1挺)
爆装
60番 18発
25番 8発
80番 3発
1500kg2発
2000kg2発
最大爆装量4000kg
と以上の様になった。
大きさは深山よりも一回りか二回り程度小さい。
重量は深山よりも軽量であり最大速度、巡航速度はどちらとも我々が運用する攻撃機の中ではトップクラスに速い。
しかもそれでいて最大爆装量は4000kgもあり、航続距離も爆装量によって変化するが最大7470kmと十分にマリアナ諸島を爆撃可能だ。
武装も深山の7.7mm機銃を廃止し20mm機銃を増設、それ以外は13mm機銃と強力。
操縦性はやはり4発機だから他と比べると悪いがそれでも深山よりは優秀、生産性や整備性、信頼性も高く整備時間は機体が大きいので時間が掛かるのは致し方ない。
この連山の性能は陸海軍の要求に見事応えて見せた。
そして当然、正式採用となった。正式採用となったのは僅か16カ月前の事。
だが、今の今まで残念ながら本格的な生産は行われず、月産1機と言う細々とした生産に留まっていた。
なぜ大規模な生産を行わなかったのか。
というのもここでも資源問題が出て来るのだ。
この連山、零戦10機分の資材を使用して漸く1機を製造できるのだ。
零戦10機分の資材を使うのだ、母艦航空隊や各地の航空隊へ機体を行き渡らせるだけで精一杯だったのだから大規模な製造をしている余裕など無い。
それでも月産1機を製造していたのだ。
まぁそれも資材不足に拍車を掛けていたので余り乗り気では無かったが、来るべき時に1機も無い、あってもたったの2、3機だけとなれば実戦投入が遅れる。
そこで、月産1機の生産は行うがそれ以上は行わなかった。
現在連山は試作で製造された3機と合わせて18機が配備されており搭乗員の訓練用に4機が引き抜かれている。
なので実戦部隊に配備されているのは14機でありその14機も十分な数が揃っていないという理由で爆撃任務では無く日々訓練に励んでいた。
だが、南方の資源地帯との輸送ルートを確保出来、生産に必要な各種資材に余裕が出て来たのだ。
そこで大規模生産を開始。
生産工場は3か所とし、それぞれの工場の月産は15機となっている。
既に45機が引き渡されて搭乗員は前々から訓練を行っていたので存在している。
1機辺り7人が必要となるが32機分の搭乗員は訓練を終了し確保済み。
連山が配備されている飛行場は第1大和飛行場へ全46機と搭乗員の居ない3機が予備機として配備されている。
ただし予備となっている3機も搭乗員が確保出来次第即座に配備となる。
残りの10機は訓練用として先の4機と合わせて14機体制での第2大和飛行場での搭乗員訓練に使われている。
第1、第2大和飛行場は連山配備という事だったが深山の運用も行っているのでその当初に飛行場の滑走路を大規模に拡充。それぞれの飛行場には全長1500m幅100mの滑走路が2本づつ整備されており問題無く運用が出来ている。
ただし、今だに配備数は十分ではない。
全機が1t分の爆弾を装備したとして凡そ50t程の搭載量しかないので敵飛行場爆撃ともなれば十分とは言い難いし、敵戦闘機も当然迎撃に上がってくると予想されるがこちらは護衛戦闘機を付けられないので丸裸。
防御機銃での応戦しか出来ない状態で少ない機数で送り込んでも被害と戦果は見合わない。最低でも40機で1つの梯団を3つ、計120機は揃えなければならない。
そうすれば各機の防御機銃で濃密とは行かないだろうがそれなりに効率的な弾幕を形成することが出来る。
さて連山に関してはこんなものか。
それ以外には、烈風と流星の改良が試みられていることだな。
これに関しては、艦上戦闘機である烈風も流星も零戦や天山同様、深海棲艦機にいずれ対抗出来なくなってくるだろう、との予想から考案されているものだ。
今現在、主力として配備されている烈風は試作型をそのまま主力機として使用している「A7M1」だ。まぁ、あえて呼称するならば試製烈風と言ったところだろうか。
改良に関しては幾つかの案がある。
先ず単純にエンジンを強化するもの。
これはエンジンをハ43-11型(以降11型と呼称)に換装したもの。
エンジン以外には改良したものは無く、量産機では翼内に装備されている13mm機銃2挺を20mm機銃に換装、20mm機銃4挺(装弾数各200発)とするというものだ。
ただし、エンジンに関してはハ43-12型(以降12型と呼称)に換装した方が良いのでは、という声もある。このエンジンは高高度性能に前述の11型よりも高い。
ただ、空母で運用するのだからそこまでの高高度性能は必要としないのだから要らないのでは、という意見もある。
略符号「A7M2」。
次に烈風の性能を大幅に向上させたものだ。
こちらも高高度型で、エンジンを一段三速過給機付きのハ43-51型に換装し、武装を20mm機銃6挺(各200発)にしようと言う物だ。
略符号「A7M3」。
次ので最後だが、こちらは完全に高高度戦闘機使用となっている。
エンジンを排気タービン過給機付きのハ43-11型ルに換装、武装を20mm機銃では無く震電にも搭載されている30mm機銃4挺(装弾数各60発)に換装して、胴体に斜銃30mm機銃2挺を装備させたものだ。
ただし、こちらはエンジン換装、排気タービン、武装強化の為に操縦席と尾翼を除く機体の大半を改設計しなければならず、しかも烈風は艦上戦闘機として運用するのでここまでくると支離滅裂な物となってしまっているからこの案は却下された。
そもそも本土防空の為の高高度迎撃戦闘機は震電が存在しておりネ130ターボジェットエンジン搭載型の震電の設計や試験も大詰めの段階であるから必要が無い。
流星に関しては、発動機を誉23型に変更したものだ。こちらは既に略符号「B7A2」、正式名称「流星改」を与えられ量産に向けて各種試験中だ。
更に流星のエンジンをハ43に変更し、性能向上が図られている計画もある。
こちらは試製流星改一と呼ばれている。
烈風の改良型や流星に乗せようとしているハ43型エンジンは既に震電で実戦配備をされている。
なので新しく開発すると言う訳では無いのでそこまで時間は掛からない。
ただ、各種試験を行わなければならないので来年にならないと量産は出来ないそうだ。
資材不足による強度不足などの問題は起きていないので順調に進んでいる。
震電のターボジェットエンジン搭載型の開発だが、先ほども言った通り既に大詰めの段階にまで来ており、略符号「J7W2」正式名称「震電改」が与えられている。
設計に関しては量産に関するものの修正だけで、あとは各種試験結果が良ければ量産が開始される。エンジンのネ130は、以前話した稼働時間の問題はあれどそれ以外の性能は好調で問題無く運用可能との事だ。
ただし、前線への配備は出来ないだろう、との事だ。
と言うのもネ130は稼働時間の問題があるので、かなりの頻度でエンジンを交換しなければならないのだが、前線へ配備するとなると今現在の輸送能力では間違いなく支えきれず、破綻してしまうからだ。
敵の通商破壊もあるしそれを考えれば前線配備は出来ない。
だからこそ安定してエンジンやそれ以外の部品の供給を受けられる日本本土への配備に留めておくのだ。
量産開始と、部隊への配備時期はあと2~3か月あれば可能との事なので、そうなれば既存の震電はターボジェットエンジンを搭載するべく改造を行うか、こちらを前線配備する計画だ。
航空機関連であともう1つ。
烈風に代わる新型艦上戦闘機の開発が始められた。
まだ開発がスタートしたばかりなので殆ど何も決まってはいないが海軍が出した要求性能は以下の通りとなる。
形式 低翼
乗員 1名
全長 10~11m
全幅 12~13m
全高 4~4.5m
脚間隔 凡そ4m
主翼面積 26~27㎡
全備重量 5t以下
エンジン 既存のエンジンを流用する事。
離昇出力 2100~2200馬力
プロペラ 定速4翅
最大速度 660km/h以上
実用上昇限度 10000m以上
上昇時間 13分30秒で10000m到達
航続距離 2000km以上
武装 20mm機銃4ないしは6挺(各200発)
折り畳み翼を採用する事
以上の様に要求した。
まぁ、正直言って俺がこれを決めたわけでは無いので何とも言えないが実用上昇限度が10000m以上で、しかも上昇時間が13分30秒で10000m到達とはかなりの高性能だぞ?
エンジンに関しては、まぁ確かに既存の物を流用すると書かれてはいるが最高速度が660km/h以上となっている時点で使えるエンジンは限られてくるが、その辺は技術妖精の腕の見せ所だろう。
結構ふわふわしている様に感じられるかもしれないが、最初期の段階では大体そんなものだ。
まだまだ設計すらされていない状態だ。
これと言って符号が決まっている訳でも無く、機密でもあるので今の所はこれを知っているのは設計、開発を担当している技術妖精達に海軍上層部の俺を含めた6人だけだ。
最低でも2~3年は開発に掛かる見通しなので、烈風の改良はその繋ぎと言う意味もある。
まぁ、大体こんなものだろう。
兎に角、技術面ではこのぐらいだ。
今の所、大規模作戦の予定は無く兎に角資源備蓄に努めつつ南西諸島から南方方面の維持を当面は行う事になっている。
というのも、マリアナ諸島方面や未だに攻略を行っていない南方方面への攻勢に出れないというのが現状だからだ。
現有戦力ではなんとか南方方面への維持が精一杯であり、これ以上の攻勢に出る事が出来ないのだ。
まぁ、攻勢に出るだけならば問題無いが占領、維持となると無理だ。断言出来る。
消極的云々では無く、以前にも話したが奪還しても意味が無いのだ。
本土爆撃を防げるという意味はあるが、正直言って震電の配備も進められているし震電改も実戦配備間近なのでそこまで躍起になる必要は今現在の所無いのだ。
無理に奪還を進めて、それこそ各地で戦線崩壊を招いたら目も当てられない。
言っておくが南方方面の攻略作戦を行え、成功させろ、と言われても俺は二度として成功させられないぞ。あれはある意味で運が良かったからであり、敵が戦力分散の愚を犯してくれたから勝てた訳であってそんな状況がもう一度起きるわけがない。
だからこそ今現在は攻勢に出ずに維持に留めておくのだ。
それに何のために連山を開発したのだ?マリアナにある敵の飛行場を爆撃する為であろう?
ならば長距離爆撃と言う局所的な攻勢に出れば良いだけなのだ。これならば搭乗員や機体の喪失はあっても各地の戦線への負担は少ない。
兎に角、我々の方針はこのように決まっている。
あとはそれを支える為に俺が必死に働くのみだ。
幾つかおかしな箇所があったので修正しました。