暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第30話

あれから更に3か月が経った。

今現在の所の問題と言えば、深海棲艦の通商破壊と敵機動部隊の動きが活発化している事だろう。

 

 

輸送船団に関して言えば、戦艦4隻づつを編入したのはかなり効果が大きかった。

というのもその対空火力の大幅な増加にある。

 

戦艦4隻の対空砲火はそれこそハリネズミが並んで歩いているのでないか?、と思える程だ。しかも敵機が来る方向はスラウェシ島方面からと限られているので、バリクパパンに向かうにしろパレンバンに向かうにしろ、どこかに向かう時は艦隊の左側に集中配備して、日本本土へ戻る時は艦隊の右側に集中して配備すれば良い。

 

更には思いがけない効果と言うか、完全に見落としていた効果が大きく発揮されている。

それは対空電探による敵機編隊の早期発見と、通信設備の向上によって陸軍への応援要請が迅速に行えるようになったことだ。

 

それまでは一番余裕のあった最上が通信を担当していたのだが、それだと護衛艦隊旗艦である龍驤から最上を一度経由しなければならないので時間が掛かったのだが、戦艦4隻はそんなまどろっこしい事をしなくて済むようになった。

何しろ、対空電探も艦隊で一番強力な物を搭載しているし通信設備も一番整っている。

 

それが4隻、艦隊の右舷か左舷に集中配備されているのだからその効果は推して測るべし、と言ったところだろう。

 

お陰で母艦航空隊の零戦と艦隊上空を直接守っていた疾風だけでなく、応援として疾風を数十機どころか100機程を呼び寄せての迎撃が可能になった。

合わせて300機を超える迎撃機なのだから、陸上に配備された雷撃機や急降下爆撃機、ロケット弾を満載した戦闘機などの単発機であれば全滅とは行かないものの、かなりの数を撃墜する事が増えた。

 

そこで敵は単発機だと迎撃機にやられるという事で、双発爆撃機であるB‐25や4発重爆であるB‐17、B‐24を集中して投入してきたのだ。

 

それも毎回200機を超える機数で、だ。

 

この数は爆撃機の数だけでありそこに護衛の戦闘機を加えるとなると400機は下らない。多い時であれば500機、600機なんて事も有り得る。

 

本当に、深海棲艦の奴らの物量はどうなっているのか不思議でしょうがない。

ただ、こちらもただやられるばかりではない。

 

震電が南方方面のバリクパパン周辺にある飛行場へ配備され始めたのだ。

既に2か月前からその任務に就いており、戦果も挙げている。

 

基本戦術としては零戦と疾風、紫電改が主に敵戦闘機を引き付けている間に震電が敵爆撃機編隊に突っ込むと言うものだ。

 

敵爆撃機編隊はどれだけ高度が高くとも、精々6000mか7000m程度の高度までしか上昇出来ない。

実用上昇限度は10000mを超えているのでやろうと思えば出来るのだろうが、これほどまでに高くなると色々と不都合が出て来る。

 

そもそも、B‐29の様に高高度爆撃用の重爆撃機では無いのでそこまで高度を上げられないというのが実情だ。

しかも爆撃目標が陸上にある飛行場などであればそれでもいい。

だが奴らが目標としているのは、洋上を最高速力20ノットで航行する艦隊だ。

6000mだろうと10000mだろうと高高度から行われる重爆撃機の水平爆撃は固定目標であればその効果は絶大だが移動目標に対しては効果は薄い。

 

というよりも殆ど無いと言っていい。

照準器の違いなど色々な理由もあるが、例として6000mからの爆弾投下だとしても、狙う場所と投下する位置は全く違う。

それを15~20ノットで航行する艦船に対して行っても、100発落としてその内の1発でも至近弾になれば御の字、最悪その5倍、10倍の量を投下しても命中弾はおろか至近弾の1発も出ない事が殆ど。

ここ最近の輸送船団への被害はもっぱら潜水艦が殆ど。

 

ただし、投下した爆弾が命中した時の破壊力、貫通力などは急降下爆撃なんぞ目では無いぐらいだ。

重力による自由落下の加速やら細かいことは分からないが、高度6000mから800kg爆弾を投下して命中したとしよう。

 

輸送船や駆逐艦ならば木端微塵、大型艦である空母ですら艦底部まで到達して炸裂、撃沈されるだろうし戦艦だってただでは済まない。

それほどまでの破壊力があるのだ。

 

だが、先程も言った通りだが命中率は低い。

高度を下げて狙えばいい、というかもしれないがそうなれば護衛艦隊の対空射撃の餌食になるだけだ。

単発機と比べると的はデカいし速度は遅い、挙句に疾風や零戦が上空から襲い掛かってくる可能性もある。

 

しかも震電までもがいるのだから、高度を下げるなんて事をすれば戦艦の主砲でだって3式弾の一斉射でかなりの数がの撃墜出来るだろう。

 

だが、敵爆撃機編隊は殆どが6000~7000m、高くても8000mで侵入してくるので震電ならば敵爆撃機の上を取る事も容易。

零戦と疾風が敵戦闘機を引き付けて、震電が爆撃機狩りを行う。

 

敵戦闘機の殆どは零戦と疾風が絡めとってしまっているので爆撃機は丸裸も同然。

もし震電を追いかけたとしても急降下一撃離脱を徹底して行っている震電は急降下の勢いを利用して一気に高度を上げているのだ、振り切られてしまう。

その間に零戦か疾風がその敵機を撃墜するか追い掛け回している。

 

当の震電は次の獲物を物色している頃だろう。

30mm機銃は対B‐29用とされていたのだからその破壊力は折り紙付き。

主翼に命中すれば一連射で撃墜確実、胴体であっても当たり所によっては致命打となりえる。

 

我が物顔で敵編隊上空をグルグル飛び回り、突っ込んでは獲物を仕留めるその様はカツオドリにも見えるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

次に敵機動部隊の動きが活発化していることだ。

これに関しては、諜報関連も兼ねている広野中将と南方方面と中部太平洋方面での偵察、哨戒任務に就いている3個潜水艦隊からの情報だ。(浮揚作業と修理によって戦線復帰を果たした潜水艦で持って編成された第3潜水艦隊を含む)

 

これには既に第3潜水艦隊も同様に任務に就いており、3個潜水艦隊を北方から、中部太平洋、南方方面の3方面をそれぞれ担当させている。

 

 

 

北方方面、正確には北知床岬から千島列島の中程、大体プロリフ・ナデシュディ辺りまでを結ぶラインとプロリフ・ナデシュディから円を描くように襟裳岬までを指している。

北方方面に関して言えば哨戒と言う意味合いが強い。

ただし今現在この方面での深海棲艦の動きに変化は見られず。通信量が若干ながら増加している程度だ。

恐らく通信量が増えたのは中部太平洋での活発化した動きが影響しているのだろう。

担当は第3潜水艦隊。

 

 

 

 

中部太平洋方面は小笠原諸島から大体、マリアナ、パラオ、そして深海棲艦の一大根拠地、棲巣が構築されているトラック諸島までを指す。

基本的には本土からの航空機哨戒が主な哨戒方法だがマリアナまで進出するとなると偵察を担当している二式大挺が危険にさらされ過ぎるのでマリアナからトラック、パラオは潜水艦隊が偵察、哨戒を行っている。

この方面へはマリアナの敵飛行場偵察によってB‐29が飛び立った時の情報やトラック、パラオの偵察任務が含まれている。

パラオを含む理由としては、あそこにはバベルダオブ島とペリリュー島の二か所に長さが1200m以上、幅は凡そ70~100mの滑走路がバベルダオブ島に1本と

ペリリュー島に十字に交差するように2本、更に補助滑走路が1本とかなり整備されているからだ。

情報によればこの二か所がマリアナ諸島や南方方面への航空機の中継地点となっているらしい。

担当は第1潜水艦隊。

 

 

 

南方方面はカリマンタン島とスラウェシ島間からジャワ海、セレベス海、そしてスラウェシ島までは航空機による哨戒に任せて潜水艦隊はバリクパパンを拠点としてバンダ海、アラフラ海を超えてビスマルク海やソロモン海方面へ進出、偵察を行っている。

担当は第2潜水艦隊。

 

 

 

 

 

 

と以上の様に偵察や哨戒を行っている。

その結果、中部太平洋方面の深海棲艦の動きが活発化していることを掴んだ。

 

南方方面とトラック、ウルシーなどの投錨地間での通信量が激増しており、偵察によればトラック、ウルシーなどの投錨地の艦船の動きがかなり活発化している事。

 

はっきり言えば、深海棲艦が何らかの作戦行動を行う前兆である事は確かだ。

ただ、暗号文であることが殆どであり、深海棲艦の暗号を解読出来ていない我々は正確な敵の目標が分からない。

というのも、中部太平洋方面は広大でありそのどこから日本本土近海へ深海棲艦が現れても何らおかしくも無いのだ。

 

しかも中部太平洋を北上、日本本土やB‐29迎撃において活躍している三宅島電探基地などを狙うと見せかけて沖縄方面へ転身、攻略を目論んでいる可能性もあるのだ。

 

今現在我々は北海道から南方方面にかけての凡そ北東から南西に縦に長い地域の防衛を行わなければならず、何処に敵艦隊が現れて上陸作戦が展開されていてもおかしくはないのだ。

 

戦略上で最優先となるであろう、と考えられているのは南方方面だ。

というのも通常、深海棲艦の作戦行動から考えれば恐らく南方方面を攻略した後に沖縄、日本本土と攻めてくるもの、と予想出来るのだがその予想の裏を掻く可能性もある。

 

というのも沖縄を叩いて、あわよくば占領することが出来れば南方方面と日本本土の資源輸送ルートを分断出来るからだ。

それを考えれば、沖縄と言う事も有り得るのだ。

 

はっきり言えばどこに敵艦隊が来襲するのか、そして来襲時期は何時なのか、というのがさっぱり分からないのだ。

念の為に全艦隊、及び全部隊に警戒態勢を敷いているが敵艦隊が来襲した場所への救援は間に合わないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!広野中将より緊急電です!」

 

執務室でいつも通り書類仕事に専念していると、ノックも無く呉鎮守府の通信士官の1人が勢い良く入って来た。

 

「おい、失礼だろう!ノックぐらいしたらどうだ」

 

「はっ!失礼しました!ですが火急の要件でしたので!」

 

「長門、構わんさ。で、緊急電と言うのはなんだ?」

 

ノック無しに入って来た士官を今週の秘書艦である長門が怒鳴りつける。

だが、緊急電という事だからそれも仕方が無い。

 

 

「敵艦隊が動きました!」

 

 

その報告は、事前から警戒していたとしても俺も長門も驚かざるを得ないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵艦隊、ウルシー環礁ヲ出航。戦力ハ空母10隻、戦艦7隻ヲ含ム有力ナル艦隊ナリ。連合艦隊ハ至急敵艦隊迎撃ヲ行ワレタシ』

 

広野中将から送られてきた緊急電は、そのままの通りの内容だった。

何故分かったのか、と言うと深海棲艦の暗号を全く解読出来ていなかった訳では無い。

 

局所的な物である、よく使われるものなどは分かっていたし、出撃時などの重要符号もある程度は分かっていた。

だが深海棲艦側に暗号を変えるような動きは無い。

 

だからこそ、深海棲艦の出撃が今回分かったのだ。

 

 

 

 

 

 

俺は、艦隊に出撃準備命令を下令。

すぐさま出撃準備に取り掛かった。

早ければ明日の日の出前には出撃出来るだろう。

 

そして今現在、我々は会議室で敵の目標はどこなのか、目的は何なのかという事を議論していた。

 

「中部太平洋での敵艦隊の動きで、以前からウルシー環礁に向けて艦隊が動いていることは掴んでおりました。実際、潜水艦隊からも報告は上がって来ていました」

 

「問題はそこでは無かろう。敵の目標は何なのか、と言う事だ」

 

参謀長と情報参謀がそう言い合う。

 

「兎に角、敵艦隊の動向は探っておかねばならない」

 

「そこは問題ありません、第1潜水艦隊が追跡を行っております」

 

「ならばいい。だが、連中は何を考えているのだ?今現在までの行動を見ても全く掴めんぞ」

 

「はい、小笠原諸島を北上したかと思えば西に舵を切って沖縄方面に針路を取りました。そして今現在は南方方面に向けて針路を取っております」

 

「全く、どうしてこんな針路を取っているのか……」

 

敵艦隊はウルシー環礁を出撃、小笠原諸島を北上して電探基地か日本本土を狙うかのような動きを見せたと思ったら、舵を沖縄方面に取った。

沖縄を攻略して、楔を打ち込むのか、とも思われたが上陸船団を伴っていないのでそれは有り得ないがどちらにしろ攻撃目標は沖縄か!?と思っていた矢先に再び舵を別針路に取った。

 

次は南方方面に向けて針路を取ったのだが、どうにも敵艦隊は南方方面への攻撃と言うものでも無いらしい。

仮に攻撃を行うとすればもっと早く艦隊を進めるだろうが敵艦隊の速力は15ノットと遅い。これではどう考えても南方方面への攻撃とは考えられない。

それにそんな無駄に針路を取るよりもウルシー環礁から直接出撃した方が各地の深海棲艦の飛行場の支援も受けられるのだから態々日本本土や沖縄に接近して各地の航空隊の攻撃を受けるかもしれない、なんて危険を冒す必要は無い。

 

だからこそ、敵の目的がはっきりとしなくこちらもどう対処すべきか決めかねていた。

 

 

「まず明確にすべきは敵艦隊の意図と、その最終的な目標が何なのかという事だ。これが不明瞭なまま出撃すれば良い様にやられてしまうだろうし、時間を無駄にするだけだ」

 

「それに出撃時刻も迫って来ております。それまでに何とかしなければなりません」

 

「提督、発言しても宜しいでしょうか?」

 

そう、俺達が頭を悩ませていた時に手を挙げて発言の許可を求めて来たのは次席作戦参謀の田原中佐であった。

 

「構わん、好きに発言してくれ」

 

「敵の、目標は我が艦隊を誘引する事にあるのではないでしょうか」

 

「誘引するだと?」

 

「はい」

 

「どうしてそのように考えたのだ?」

 

「まず、敵艦隊の行動にあります。あたかもこちらが出撃してくる事を誘っていると言えます。本来、欺瞞航路を取ると言っても限度がありますから、これほどまでに針路を大きく変えて各方面へ接近しては攻撃も仕掛けずにまた針路を変えるのは、我が艦隊を誘っている、と考えるのが妥当でしょう」

 

「では、本来の目的は何だ?」

 

「そこが問題です。幾つか考えられるのですが、我が艦隊をもう一つ別の艦隊を用意して挟撃、撃滅を狙っているとも言えますし、どこかを占領する為にそれを防がれないための陽動なのか。これがはっきりしません。どちらも有り得ると言えるでしょう」

 

彼は、そう説明する。

確かにその説は有り得る。深海棲艦からすれば我々はかなり大規模になった、下手をすると世界で唯一の対抗戦力だ。

それを殲滅することは出来なくとも大打撃を与えて行動を出来なくして、その間に南方や北方の各方面から大攻勢を仕掛ければ、我々は成す術無く良い様にやられてしまうだけだろう。

 

幾ら各地の航空隊があるとしても、空母を含む機動部隊と言うのはその名の通り機動力が高く、深海棲艦の空母ヲ級は100機に達する艦載機を搭載する事が出来る。

これを10隻でも揃えれば各方面の航空隊を全て合わせても敵わない数になる。

 

バリクパパンの様に飛行場同士が近く、相互連携が取り易いならばまだ良いが殆どの場合は距離が離れているから不可能だ。

そうなった場合、各個撃破されるのは目に見えている。

 

だからこそ第1機動艦隊と各地の航空隊が連携して、敵艦隊を迎撃するという方針を固めていたのだが、現状、敵艦隊の目標、もしくは攻略目標がはっきりとしない為に艦隊を出撃させようにも何処に出撃させるのか?と言うのが一番の問題なのだ。

 

以上の事を考えると田原中佐の言う事は、的を得ていた。

 

であるならば、敵の本当の目標はどこなのか。

それがはっきりすればこちらとしては敵機動部隊を放って置いても構わない。

深海棲艦の本当の攻略目標さえ我々は防衛に成功すれば敵は引かざるを得ない。

 

 

 

 

「田原中佐の言う事が、事実なのだとしたら敵はどこを本当の攻略目標としているのか、と言うのが問題だ」

 

「提督、それならば暗号解読によって不確実ではありますが恐らくここなのでは無いか?と言う場所を割り出しています」

 

「なに?それは何処だ」

 

「小笠原諸島のどこか、です」

 

「小笠原諸島だと?あそこに何がある?」

 

小笠原諸島には本当に何も無い。

撤退する時に、硫黄島の飛行場は徹底的に破壊しつくしたとの事だし今の今まで深海棲艦は見向きもしなかった。

 

現状、最前線となっているのは八丈島だが連隊規模の陸軍部隊が駐屯しているだけで八丈島の飛行場は使用が出来ない。

 

そんな所を攻略するのか?

 

「いくつかの島は飛行場を作るのに適しています。恐らくは本土爆撃を行う際に震電の迎撃を阻む為に戦闘機をその飛行場に進出させるつもりなのでしょう」

 

「となると、硫黄島や八丈島が挙げられるがどちらとも深海棲艦の勢力圏内だ。辛うじて八丈島は陸軍が駐屯しているが硫黄島は兵は1人もおらんのだぞ?態々機動部隊を出して来るものか?」

 

「震電の迎撃の成果はとんでもない数になっております。護衛戦闘機も無くただ300機のB‐29を送り出しては毎回毎回150機を超える損害を出しているのですから、幾ら深海棲艦の物量と言えども無視出来るものではなくなった、と言う事でしょう」

 

確かに、震電での迎撃は毎日行われていてB‐29との戦闘は苛烈だ。

大体、B‐29は300機単位で爆撃を仕掛けてくるがその半数を撃墜、若しくは撃破している。

今までの戦果を全て合わせればどれだけになるか分からない。

 

夜間爆撃にしても、技術妖精達の頑張りのお陰で機上電探の性能が向上しており少なくとも最初期と比べれば天と地ほどの差がある。

お陰で夜間の迎撃も一定の戦果を出せるようになってきた。

 

だが一連の戦果はあくまでも、護衛戦闘機が1機もいない爆撃機だけの敵編隊だったからであってもし護衛戦闘機が登場してしまえばそれこそ今までと同じように戦果を挙げ続ける事は出来ない。

 

本当に深海棲艦の物量はどうなっているのか、と怒鳴りたいような話だが確かに、昼間爆撃も夜間爆撃も効果が出ない、戦果よりも被害が大きいとなれば何らかの対策をするのは妥当だ。

 

まず考えられるのは、爆撃そのものを中止する事。

一番手っ取り早く被害を食い止められる方法だ。

だが中止をすれば我々は工場や市街地を爆撃されることは無くなり航空機生産など軍需物資の生産は今よりも大規模になるだろうし、国民の生活も爆撃に怯えて生活しなくて済むし様々な物が作られるようになるだろうからずっと楽になる。

 

そうなれば我々が前線に投入する兵力は今までの倍に膨れ上がるだろうし深海棲艦としてはそれは避けたい筈。

 

となればとってくるであろう対策は二つ目の今までいなかった護衛戦闘機を就けること。

これを実施出来れば爆撃機への迎撃による被害もずっと低く抑えられるだろうし何よりも日本本土へ対する爆撃効果が格段に上がるからだ。

 

 

 

もし二つを選択肢として並べても、深海棲艦がどちらを取るかは歴然だ。

後者を取るに決まってる。

 

 

 

 

「…………分かった。それでは深海棲艦の攻略目標が小笠原諸島八丈島、及び硫黄島への飛行場建設を前提として作戦を練って欲しい。時間は少ないがやれるか?」

 

「可能です。それではすぐさま取り掛かりますので失礼させていただきます」

 

そう言って作戦参謀と次席作戦参謀の二人は敬礼をすると会議室から出て行った。

 

「正確な出撃時刻は何時になる?」

 

「はっ、現時点ではどれだけ早くとも全艦艇が出撃可能となるのは明日の午後6時から8時の間になるもの、と思われます。訓練航行中であった信濃と加賀を呼び戻して燃料の搭載、航空機燃料、各種弾薬、食料の搭載にどうしても時間が掛かります」

 

「タイミングが悪いな……」

 

「はい、しかも両空母の流星隊は未だ訓練途上です。発着艦は行えますが戦闘に参加させるのは難しいかと」

 

この時、信濃と加賀は1か月の母艦航空隊錬成及び訓練航海を行っており2隻には食料はおろか訓練なので最低限の弾薬などしか積まれていなかった。

 

しかも両空母に搭載予定の流星隊はまだまだ訓練途中で、戦闘にはとてもではないが参加させられる練度では無かった。

恐らく搭載して出撃させたとしても敵戦闘機や対空砲火によっていとも簡単に落とされてしまうだろう。

 

幸いな事は戦闘機隊の方は万全の体勢となっている事ぐらいだろうか。

戦闘機隊は元々は信濃と加賀に配属される予定では無く、他の各空母へ損耗を負った時に補充するための補充要員だったのだが、その補充要員が資源などに余裕が出始めて訓練もより大規模に行えるようになったことで数が増えていた。

 

そこで、一部の補充要員を引き抜いて信濃と加賀に配属させてしまおうとなったのだ。

元々、両空母の戦闘機隊は未だ訓練途上であったのでそれよりも戦闘機だけでも搭載して前線に出せた方が良い、という事だったので結果的にそうなった。

 

前線に出せる空母は1隻でも多い方が良いのだから。

 

 

だが、お陰でそれによって第1機動艦隊の空母は12隻、護衛艦隊と鳳翔を含めると18隻になる。

 

着任当初とは比べ物にならない大戦力だが、深海棲艦はこの倍は余裕で揃えられる。

 

 

第1機動艦隊

 

第1航空戦隊

飛龍、蒼龍、瑞鶴 加賀 

 

第1戦隊

戦艦 

金剛 霧島 リシュリュー

重巡洋艦

鈴谷 ザラ ポーラ

 

第1水雷戦隊 

軽巡洋艦

能代

駆逐艦

秋月 照月 Z3 初月 陽炎 雪風 浦風 萩風 初梅 初雪 浦波 菊月 

 

 

 

 

 

第2航空戦隊

大鳳 信濃 阿蘇 葛城

 

第2戦隊

戦艦

ビスマルク ティルピッツ ヴァンガード

 

重巡洋艦

熊野 アドミラル・ヒッパー プリンツ・オイゲン 

 

第2水雷戦隊

軽巡洋艦

矢矧 

駆逐艦

若月 霜月 春月 村雨 時雨 響 朧 

 

 

 

 

第3航空戦隊

隼鷹 飛鷹 グラーフ・ツェッペリン アークロイヤル

 

第3戦隊

戦艦

リットリオ ローマ 

重巡洋艦

青葉 古鷹 

 

第3水雷戦隊

軽巡洋艦

多摩

駆逐艦

宵月 満月 Z1 初雪 浦波 菊月 望月 望月 Z3 村雨 霜月 春月

 

 

 

 

以上の3個航空戦隊で敵機動部隊迎撃を行う。

 

この3個航空戦隊は今回、行動を共にして全力を挙げての迎撃となる。

もし今回負ければ、かなり不味い事態なる。

 

 

 

 

敵輸送船団攻撃艦隊

 

第4航空戦隊

 

鳳翔 大鷹 神鷹 海鷹 龍驤 千代田 

 

第4戦隊

 

戦艦

長門 日向 クイーン・エリザベス ウォースパイト ラミリーズ ネルソン デューク・オブ・ヨーク

 

重巡洋艦

那智 羽黒 愛宕 摩耶 最上 キャンベラ ゴトランド デ・ロイヤル

 

軽巡洋艦

名取 鬼怒 天龍 龍田 神通

 

駆逐艦

花月 涼月 グレカーレ リベッチオ ジャーヴィス マエストラーレ 

東雲 白雲 浦波 狭霧 子日 有明 海風 江風 峯雲 霞 藤波 沖波 清霜 白雲 有明 長月 荒潮 親潮 黒潮 竹 桃 椿 楓 樺 楠 

 

 

 

そしてこの第4航空戦隊以下で、もし本当に飛行場設営を目的として硫黄島や八丈島に来襲するというのであればその攻略を担当する上陸部隊輸送船団撃滅の任を担う。

この艦隊は戦艦7隻を基幹として艦隊防空を6隻の軽空母が担う。

 

6隻の空母は敵艦隊攻撃は行わず対潜と防空に専念し、戦艦7隻と重巡8隻の大火力を以て輸送船団撃滅を行う。

 

そこで忘れてはならないのが軽巡5隻以下水雷戦隊である。

この水雷戦隊は魚雷を全て合わせると100では利かない本数、軽巡組は方舷連装2基ずつなので一斉射は出来ないが、もしそれらさえも一斉射することになれば240本に達する。

 

これを輸送船団に向けて発射、命中となれば、大打撃を与えられる事は間違いない。

全艦には酸素魚雷発射管を装備させているのでその破壊力は絶大だ。戦艦ですら1本の命中が命取りに成り得るのだから、輸送船に1本でも命中すればたちどころに轟沈は免れないだろう。

 

 

 

 

 

「取り敢えず、信濃と加賀は流星隊を載せずに烈風のみ艦載する事にしよう。最悪、両空母の流星隊には再建の先駆けになって貰わなければならなくなる可能性すらあるのだからな」

 

「分かりました。その様に手配させます。両空母に艦載するのはそれぞれの烈風隊のみで宜しいですか?」

 

「いや、防空能力を出来るだけ底上げしておきたいから載せられるだけ載せてくれ」

 

「了解しました。満載させます。彩雲は露天繋止で宜しいですか?」

 

「あぁ、それで構わない」

 

そう言う訳で次に各空母の艦載機の内訳を記そう。

 

飛龍

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

蒼龍 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

瑞鶴 

烈風37機 流星52機 彩雲9機 計89機

 

隼鷹 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

飛鷹 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

天城

烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機

(彩雲9機を露天繋止)

 

阿蘇

烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機

(彩雲9機を露天繋止)

 

大鳳

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

(彩雲9機を露天繋止)

 

グラーフ・ツェッペリン

烈風37機 流星20機 彩雲6機 計63機

(彩雲6機を露天繋止)

 

アークロイヤル 

烈風37機 流星24機 彩雲6機 計67機

(彩雲6機を露天繋止)

 

信濃

烈風70機 流星無し 彩雲6機 計76機

 

加賀

烈風98機 流星無し 彩雲6機 計104機

 

鳳翔

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

大鷹

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

神鷹 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

海鷹 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

龍驤 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

千代田  

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

 

 

烈風538機 流星328機 彩雲120機

零戦52型丙120機 零戦62型72機

 

航空戦力は以上となった。

合計で1178機を数える。

 

加賀の艦載機数は随一であり、その気になれば100機超える艦載機を搭載する事も出来るのだが流石にそこまで搭載してしまうと艦載機の運用に支障が出てしまうのでギリギリの艦載機数である98機となっている。

 

この機数にまで増えた理由は烈風が折り畳み翼を採用しているからだ。

烈風よりも機体の大きさが小さい零戦は折り畳み翼を採用していないので、烈風と比べると結果的に艦載機数が少なくなるのだ。

 

 

信濃の艦載機数が飛龍や蒼龍に比べて少ないのには訳がある。

と言うのも信濃は元々は大和型戦艦を空母として流用したもので飛行甲板の走行は大鳳に負けず劣らず、それ以外の防御も元大和型戦艦3番艦に恥じない重装甲重防御となっている。

 

そしてその重防御は信濃そのものの運用想定が従来の空母とは違ったものになったが故に艦載機数が少ないのだ。

 

本来ならば信濃は50機程度の艦載機数に留めて、本隊とは別行動を行い前進、味方攻撃隊の中継基地や補給基地、損傷機の収容、敵攻撃隊の吸収などだ。20機も増えたのはやはり折り畳み翼の影響と俺が満載する様にと指示を出した事が大きい。

 

だがそれでも70機に留まっているのは、中継基地、補給基地としての役割を発揮する為に爆弾や魚雷を他の空母よりも遥かに多く搭載しているからだ。

 

信濃は大和型戦艦譲りの重防御は急降下爆撃機の爆弾程度ならば容易に弾くし魚雷だって数本程度の命中ならば余裕で耐えられる。

 

だが艦載機数が多いと引火の恐れが高まるし味方攻撃隊の中継基地として機能出来ない。

だから艦載機数が少ないのだが、今回はその様に運用する事を考えず、第1機動艦隊に随伴させての行動だ。

 

 

 

 

1178機を数える、これだけの一大戦力だ。

失えば再建にどれだけ早くても2~3年以上は掛かる。

それこそ、深海棲艦への対抗手段を失う事を意味するのだから国家存亡、人類存亡が関わってくる。

 

しかしながら、こちらが揃えられる最大戦力を全て搔き集めてこれなのに、我々よりも少ない数の空母10隻で1000機もの航空機を保有し、輸送船団に張り付いている護衛空母をも合わせれば1500機は下らない。

 

しかも防空能力が高い戦艦7隻が護衛に張り付いているのだから、今回我々が負う事になるであろうこちらの被害は想像も付かない。

 

 

 

兎に角、本土防空など様々な面から見ても今回は負けるわけには行かない戦いとなるだろう。

 

 

 

「提督、出撃準備が全て整いました。ご命令さえあれば抜錨、出航が可能です」

 

「ありがとう。それでは、全艦錨を上げろ。艦隊抜錨」

 

「はっ!」

 

翌日、日が沈んでから1時間程経ってから艦隊の出撃準備が整った。

抜錨を下令して艦隊は一斉に瀬戸内海を出撃。それに続いて敵輸送船団攻撃艦隊が出撃した。

 

それと時を同じくして敵機動部隊は針路を我々に向けた。

恐らく、潜水艦が豊後水道付近かどこかで行動を監視していたのだろう。

 

当然だ、我々も敵艦隊の動向を監視しているのだから相手だって同じことをするに決まってる。

 

更にはウルシー環礁から輸送船だけでも50隻を超える大艦隊だ。護衛艦をも合わせたら100隻を超える。

全く、次席参謀の言う通りだったな。

 

あぁ、そう言えば今回の座乗艦も飛龍だ。

当然、将旗も飛龍に掲げている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、それでは作戦を説明させて頂きます。と言っても作戦と呼べるようなものかどうか分かりませんが……」

 

「構わんさ。今回ばかりは受け身だ、出来るだけ被害は少なく勝てれさえすればいい」

 

「勿論です、それを念頭に考えましたから」

 

そう言うと会議室の長机に地図を広げた。

 

「我が艦隊は敵艦隊の攻略目標が硫黄島か八丈島、と言う事を前提に艦隊を進めています。敵艦隊も我々から輸送船団を守る為に我が艦隊に一直線に向かって来ております」

 

「今回、我々は敵艦隊に向けて攻撃隊を放ちません」

 

「なに?どういうことだ」

 

「以前、提督が実施された迎撃に徹する、という事です」

 

「なるほど」

 

「今回、我々が勝利する条件は敵輸送船団攻撃艦隊が敵輸送船団を撃滅する事です。ですからこちらに注意を徹底して引き付けておくことが重要なのです。ですから最初の内は流星隊には出番はありません。兎に角、敵機動部隊を引き付けて引き付け続けることが重要なのです」

 

「敵攻撃隊を徹底して叩いた後、迎撃戦闘機をも上げられない位に疲弊したところに攻撃隊を放ち一気に突き崩します。敵戦艦の対空砲や対空機銃が懸念事項ですが急降下爆撃隊が先行して敵戦艦を爆撃、沈黙させる予定ですので多少はその火力を減らせるでしょう」

 

「わかった、それで行こう。敵艦隊と戦闘状態になるのは何時頃になる?」

 

「明日の0600から0700の間に掛けてと予想されます」

 

「分かった、その時間に合わせて戦闘準備を進めてくれ。対潜、対空、対水上警戒は決して怠るな」

 

「はっ、勿論です」

 

 

 

 

 

艦隊は針路を硫黄島に取って進んだ。

 

 

 

 

 

 

 




各方面区分はあくまでも独自設定によるものです。


信濃に関して加筆しました。




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