暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第33話

漸く、硫黄島奪還作戦の実施日がやってきた。

 

既に艦隊は抜錨を完了して第2航空戦隊、第1航空戦隊、第3航空戦隊、第4航空戦隊の順で柱島泊地を出発、前路哨戒に出た2航戦が豊後水道を抜けている。

 

 

 

それに続いて1航戦と3航戦が合流。

その後を追って4航戦が続く。

以前の陣形と同じで2航戦を11海里前方に突出させている。

そして、1航戦と3航戦の20海里(約40km)後方に4航戦を配置している。

 

 

     2航戦

 

 

 

   1航戦、3航戦

 

 

 

     4航戦

 

 

空から見ると大まかにこのような形で、前衛、本隊、後衛と言うように分かれているように見える。

実際、2航戦は敵攻撃隊を吸収する前衛部隊であるし、1、3航戦はその間に敵に二の矢、三の矢をつがえる役割がある。

 

そして4航戦はそれらの支援。

確かにそれぞれの役割は分担されていた。

 

 

 

 

 

 

 

         4航戦配置図

 

 

           

          荒潮

       花月    涼月

     レ          リべ

  ジャ   那智 長門 羽黒    マエ

    名取          鬼怒

 東雲  日向 鳳翔  海鷹 クイ  峯雲

親潮 愛宕            キャ  桃

 白雲  ウォ 大鷹  龍驤 ラミ  霞

黒潮 摩耶            ゴト  椿

 浦波  ネル 神鷹  千代 デュ   藤波

竹                    楓

 狭霧 天龍  最上  デ   龍田 沖波

 

 子日    樺  神通  楠    清霜

    有明          白雲

       海風    長月

          江風

 

  

 

 

 

陣形は4航戦以外は丸っきり以前と同じなので割愛しよう。

 

 

 

 

 

 

 

さて、次に深海棲艦の状況についてだ。

どうやら、こちらの潜水艦隊による通商破壊作戦によって物資の補給が全てでは無いにせよ相当量の物資を沈めてやったからか、行動にかなりの制限が掛かっているらしい。

 

燃料にせよ、弾薬にせよ、だ。

 

硫黄島に建設が進められていた飛行場2か所は連山による爆撃と、通商破壊による資材不足によって幾らかの再建は進んでいるようではあったが、どうやら連日の爆撃で全く使い物にならない状態らしい。

 

これで、我々は基地航空隊と敵母艦航空隊の両方を相手取らなくて済むという事だ。

 

まぁ、敵艦載機も動けるかどうかは怪しいものだが、動けるという前提で行動するべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、彩雲からの入電です」

 

「聞かせろ」

 

「はっ。『我彩雲4号機。敵艦隊ヲ発見ス。位置、硫黄島南5kmノ海上ニテ停泊中。低空デノ近距離偵察ヲ決行スルモ迎撃機無シ、対空砲火モ無シ。敵ハ行動不能ト思ワレル。1032』。以上です」

 

「敵さん、どうやら相当疲弊しているようですな」

 

「潜水艦隊からは?」

 

「硫黄島へ向かう輸送船団は無いらしく、報告はありません」

 

「……攻撃隊の発艦準備は?」

 

「あとは魚雷と爆弾を装着させるだけですので、ご命令さえ頂ければ」

 

「よし、直ぐに始めてくれ。どれほど時間が掛かる?」

 

「30分も頂ければ装着は完了しますので、飛行甲板に並べるのに更に20分程ですので50分も頂ければ十分です」

 

「いや、今の整備兵たちの練度だと50分では不安があるから1時間後に発艦開始だ。構わないか?」

 

「問題ありません。それでは1135発艦開始とします」

 

正直に言って、発艦時刻は出来るだけ早い方が良いのだが、度重なる海戦によって損傷を受けた各空母の整備兵や、信濃、加賀の整備兵ははっきり言って当初と比べるとやはり練度不足が目立つ。

 

訓練を積んでいるとはいえ、今回が初めての実戦と言う新兵も多い。

そんな彼らに45分や50分で出撃準備を整えさせるというのは彼らの心理的状況を考えれば厳しいと言わざるを得ないだろう。

 

だから1時間と言う多少多めに時間を取った。

 

「整備兵達には、興奮を抑えて確実に正確な仕事をするよう、言っておいてくれ」

 

「分かりました。怯えている者には何と?」

 

「怯えている分にはまだ良いさ。興奮して周りが良く見えなくなる事程恐ろしい物は無い。だがそうだな。怯えなくとも航空隊の皆がやってくれるからどっしり構えて置けば問題無い、とだけ言っておくように」

 

「はっ」

 

艦内放送で出撃準備始めとの命令が下令された。

 

その命令に従って格納庫内で慌ただしく流星に爆弾と魚雷が取り付けられて行き、きっかり1時間後に各空母の飛行甲板には第1次攻撃隊の第1波が並べられた。

50分では出撃準備完了の報告が上がってくるのが遅れていた事は確かな事であった。

 

 

 

「提督、発艦準備完了しました」

 

「良し、艦首風上に立て」

 

「はっ、艦首風上に立てます」

 

飛行甲板に合成風力がごうごうと吹き荒れる中、暖機運転も済ませた烈風と流星がエンジン音を響かせながら発艦開始命令はまだかまだか、と待っている。

 

「艦首回頭完了。いつでも行けます」

 

「攻撃隊発艦始め!」

 

「攻撃隊発艦始め!繰り返す、攻撃隊発艦始め!」

 

その号令がそれぞれの母艦に伝えられると同時に、発艦開始の合図である旗が振られる。

その瞬間に車輪止めが外されて、ブレーキも解除された先頭の烈風、原田機がスロットルを名一杯押し込んでぐんぐんと加速しながら走り出す。

 

「総員、帽振れー!」

 

その合図と共に、整備兵から艦橋要員の皆が帽子を頭上で振り回す。

俺や参謀長達は敬礼を行う。

 

そして最後の魚雷を抱いた流星が発艦し終えると、周りの空母から続々と全機発艦完了、第2波攻撃隊の発艦準備作業を開始するという旨の電文が入ってくる。

 

飛龍も既に昇降機で烈風と流星が飛行甲板に続々と上げられて行き、並べ始めている。

 

空を見て見ると、第1波攻撃隊は空中集合の途中であり、肉眼ではもう胡麻粒程度の大きさにしか見えなくなってきた頃に編隊を形成し終え、段々と見えなくなってきたものだから双眼鏡で覗いてみると高度を上げ始めていた。

 

 

各空母から送られてきた電文の通り、第2波攻撃隊を飛行甲板に並べ始めた各空母はその15分後に再び艦首を風上に立てると15分程で第2波攻撃隊全機の発艦を終えた。

 

 

 

今回、この作戦に参加している空母は第1、第2、第3航空戦隊を構成する12隻の正規空母に加えて、鳳翔以下6隻の軽空母で構成される第4航空戦隊の大小合わせて18隻の大艦隊と言っても差し支えない規模だ。

 

 

 

第1機動艦隊

 

第1航空戦隊

飛龍(旗艦) 蒼龍、瑞鶴 加賀 

 

第1戦隊

戦艦 

金剛 霧島 

重巡洋艦

鈴谷 ポーラ

 

第1水雷戦隊 

軽巡洋艦

能代

駆逐艦

秋月 照月 Z3 初月 陽炎 雪風 浦風 萩風 初梅 初雪 浦波 菊月 

 

 

 

 

 

第2航空戦隊

大鳳(旗艦) 信濃 阿蘇 葛城

 

第2戦隊

戦艦

ビスマルク ティルピッツ ヴァンガード リシュリュー

 

重巡洋艦

熊野 アドミラル・ヒッパー プリンツ・オイゲン ザラ

 

第2水雷戦隊

軽巡洋艦

矢矧 

駆逐艦

若月 霜月 春月 村雨 時雨 響 朧 

 

 

 

 

第3航空戦隊

隼鷹(旗艦) 飛鷹 グラーフ・ツェッペリン アークロイヤル

 

第3戦隊

戦艦

リットリオ ローマ 

重巡洋艦

青葉 古鷹 

 

第3水雷戦隊

軽巡洋艦

多摩

駆逐艦

宵月 満月 Z1 初雪 浦波 菊月 望月 望月 Z3 村雨 霜月 春月

 

 

 

 

編成は以上の通り。

幾らか変わったことはまず、リシュリューとザラを正式に2航戦に編入させたことだ。

それ以外は特にこれと言った変更点は無い。

 

 

次に4航戦の編成だ。

 

 

 

第4航空戦隊

 

鳳翔(旗艦) 大鷹 神鷹 海鷹 龍驤 千代田 

 

第4戦隊

 

戦艦

長門 日向 クイーン・エリザベス ウォースパイト ラミリーズ ネルソン デューク・オブ・ヨーク

 

重巡洋艦

那智 羽黒 愛宕 摩耶 最上 キャンベラ ゴトランド デ・ロイヤル

 

軽巡洋艦

名取 鬼怒 天龍 龍田 神通

 

駆逐艦

花月 涼月 グレカーレ リベッチオ ジャーヴィス マエストラーレ 

東雲 白雲 浦波 狭霧 子日 有明 海風 江風 峯雲 霞 藤波 沖波 清霜 白雲 有明 長月 荒潮 親潮 黒潮 竹 桃 椿 楓 樺 楠 

 

 

護衛に就いている駆逐艦や重巡の数が多い理由としては、先ず航空戦力が明らかに力不足である事、そしてこの4航戦は後方20海里に位置しておりその主任務は1、2、3航戦の支援だからだ。

 

それのどこが繋がってくるのか、と言うと4航戦に所属している零戦52型は、1航戦達が防空用に烈風を少数しか残さない穴埋めと、対潜哨戒の手間を流星に任せるのではなく零戦62型に任せるためだ。

 

1、2、3航戦の空母は敵艦隊に出来るだけ多くの攻撃兵力を送り込むために対潜哨戒と防空の任務の殆どを4航戦に任せる形になっていると言う訳だ。

 

それ故に自分達の空に対する守りが薄くなることは、どう考えても必定だ。

だからこそ空母を守る戦艦や重巡、軽巡、駆逐艦の数が1、2、3航戦と比べるとずっと多いのだ。

 

 

 

そしてそれぞれの艦載機は以下の通り。

 

 

飛龍

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

蒼龍 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

瑞鶴 

烈風37機 流星52機 彩雲9機 計89機

 

隼鷹 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

飛鷹 

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

 

天城

烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機

(彩雲9機を露天繋止)

 

阿蘇

烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機

(彩雲9機を露天繋止)

 

大鳳

烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機

(彩雲9機を露天繋止)

 

グラーフ・ツェッペリン

烈風37機 流星20機 彩雲6機 計63機

(彩雲6機を露天繋止)

 

アークロイヤル 

烈風37機 流星24機 彩雲6機 計67機

(彩雲6機を露天繋止)

 

信濃

烈風70機 流星無し 彩雲6機 計76機

 

加賀

烈風98機 流星無し 彩雲6機 計86機

 

鳳翔

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

大鷹

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

神鷹 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

海鷹 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

龍驤 

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

千代田  

零戦52型丙20機 零戦62型12機 彩雲4機 計36機

(彩雲4機を露天繋止)

 

 

 

烈風538機 流星328機 彩雲120機

零戦52型丙120機 零戦62型72機

 

 

 

これと言った変化は無く、信濃と加賀には引き続き烈風のみを搭載している。

彩雲は代わる代わる敵艦隊の動向を探る為に上空に張り付いているのだがどうやら敵空母はこちらに向けて攻撃隊を放った様子も無く、迎撃機を上げた様子も無い、との事だった。

 

 

 

 

 

第1次第1波攻撃隊

 

 

 

飛龍

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

蒼龍 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

瑞鶴 

烈風12機 流星26機(雷装8機 爆装18機) 計38機

 

隼鷹 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

飛鷹 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

天城

烈風12機 流星18機(雷装8機 爆装10機) 計30機

 

阿蘇

烈風12機 流星18機(雷装8機 爆装10機) 計30機

 

大鳳

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

グラーフ・ツェッペリン

烈風12機 流星8機(雷装無し 爆装8機) 計20機

 

アークロイヤル 

烈風12機 流星12機(雷装無し 爆装12機) 計24機

 

信濃

烈風24機 流星無し 計24機

 

加賀

烈風28機 流星無し 計28機

 

 

 

 

烈風 172機

流星 162機

 

 計 334機

 

 

爆装の流星が多いのは、敵戦艦の対空砲火が激しいと予想されるから、先ずは爆装の流星が突っ込みその対空砲を破壊する事が主目的だからだ。

 

第1波は敵戦艦を、敵空母を沈めるのは第2波攻撃隊に任せている。

 

 

 

 

第1次第2波攻撃隊

 

 

飛龍

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

蒼龍 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

瑞鶴 

烈風12機 流星26機(雷装18機 爆装8機) 計38機

 

隼鷹 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

飛鷹 

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

天城

烈風12機 流星18機(雷装10機 爆装8機) 計30機

 

阿蘇

烈風12機 流星18機(雷装10機 爆装8機) 計30機

 

大鳳

烈風12機 流星16機(雷装8機 爆装8機) 計28機

 

グラーフ・ツェッペリン

烈風12機 流星8機(雷装8機 爆装無し) 計20機

 

アークロイヤル 

烈風12機 流星12機(雷装12機 爆装無し) 計24機

 

信濃

烈風24機 流星無し 計24機

 

加賀

烈風28機 流星無し 計28機

 

 

 

 

烈風 172機

流星 162機

 

 計 334機

 

 

 

第2波攻撃隊は第1波と数は全くの同数である。

信濃は烈風22機、加賀は烈風42機をそれぞれ艦隊上空の守りの為に残してある。

 

なので艦隊の守りは、

 

烈風      64機

零戦52型丙 120機 

零戦62型   72機

 

以上の計256機に任せる事になる。

役割分担としては主に烈風と、場合によっては零戦52型丙が敵戦闘機の相手を行う。

その隙に零戦62型が敵雷撃機や急降下爆撃機を撃墜する予定となっている。

 

ただ問題なのは、零戦の20mm機銃の弾数だった。

烈風ならば20mm機銃の弾数も計400発に加えて攻撃力の高い13mm機銃を600発携行しているから継戦能力も高い。

 

だが零戦52型丙は20mm機銃が計250発、13mm機銃が機首に1挺と翼内に2挺の計3挺で670発のみだ。

 

深海棲艦機は総じて防御力が高く、F6FやF4Uと言った戦闘機だと20mm機銃でも火を噴かない、撃墜しきれないという事が多い。

母艦航空隊の戦闘機隊の面々は原田大佐以下のエース・パイロット達や熟練搭乗員が数多く存在するからこそ敵機の弱点箇所やコックピットをぶち抜いてああも簡単に撃墜しているのであって、それ以外の搭乗員からするとそんな芸当は早々出来るものではない。

 

4航戦の零戦隊は、原田大佐以下の1航戦、2航戦の戦闘機隊と比べると機体性能は勿論の事だが、搭乗員の技量はお世辞にも高いとは言い難い。

 

それでも輸送船団護衛任務で敵機との戦いで相当に腕を付けているからそこまで悲観的に見る必要は無いと思う。

ただやはり継戦能力の面で見ると、敵の攻撃隊を2波、3波と防ぎ続けるのは無理だろう。どこかのタイミングで補給をせねばならないが戦闘中にその様な余裕は、はっきり言ってないのだ。

 

2つに分ければ良い、と言うかもしれないがそうなると予想される敵機の数からして敵戦闘機の数も相当数になると予想される。

なので分けてしまうと、敵戦闘機との戦闘に忙殺されてしまい、攻撃隊本隊に手出しをすることが出来なくなってしまう。

何よりも兵力の逐次投入と言う愚かな事をする訳には行かない。

 

それを考えると全機を全て迎撃に上げるのが一番良いのだ。

 

 

 

 

 

そして最後に、硫黄島に上陸し奪還を担う陸軍師団だが、これは残念ながら用意が出来なかった。

 

と言うのも余りにも急すぎて、上陸作戦を行うための上陸作戦訓練を受けている師団が存在せず、訓練中の師団こそあれど未だに訓練途上でどうやっても実戦投入が出来るほどの練度は備えていなかった。

 

そこで硫黄島上陸及び奪還の任を与えられたのは、海軍特別陸戦隊だった。

 

投入されるのは4個陸戦隊歩兵約1万人と

 

海軍特別陸戦隊第11歩兵連隊

海軍特別陸戦隊第12歩兵連隊

海軍特別陸戦隊第17歩兵連隊

海軍特別陸戦隊第21歩兵連隊

 

海軍特別陸戦隊第4戦車大隊

海軍特別陸戦隊第7戦車大隊

 

海軍特別陸戦隊第7砲兵隊

 

海軍特別陸戦隊第2工兵隊

 

それぞれの陸戦隊は歩兵2500人から構成されており、工兵隊などは一切含まない。

それぞれの歩兵連隊には支援車両としてホハが15両ずつが含まれる。

 

そして第4戦車連隊は太平洋戦線で初めての実戦投入となる4号戦車を装備してる。

 

5両1小隊として、それを3個で1個中隊15両。3個中隊で1個大隊45両。

それぞれの戦車大隊は45両の4号戦車を装備している。

なので計90両となるが、この4号戦車の搭乗者の選抜がこれまた苦労の連続だった。

 

 

 

と言うのも、何と言うかこれはもう仕方が無いとしか言えない事なのだが日本陸軍戦車兵の身長が足りなかった。

 

何が言いたいのかと言うと、日本人の平均的な体格には4号戦車の大きさが合わないという事である。

 

八九式中戦車と比べても4号戦車は中戦車に分類されるが重量は20tを超えており相応に車体自体も大きい。

という事は登場する人間の身長なども相応に大きくなければならない。

 

 

余談ではあるのだが、軽戦車、中戦車、重戦車と言う括りはあくまでも1国間でのみ通用する概念であって国際的な基準などがある訳では無い。

例を挙げるならば、日本の八九式中戦車も重量は形式によって上下するが概ね11~12t程の重量ではあるが名前の通り中戦車である。

 

それに比べて同じ中戦車である4号戦車はどうだろうか。

重量25tと八九式の2倍以上である。

 

イタリアの重戦車であるP40の重量が26tなのでそれよりもたったの1tしか変わらない中戦車なのだ。

5号中戦車に至っては約45tもあるのだ。

 

重戦車であってもドイツは段違いである。

6号重戦車、所謂ティーガーに至っては57tと破格である。

 

以上の様に比べれば分かる事なのだが各国で戦車の区分と言うのはバラバラであり、日本で重戦車や中戦車として運用されていたとしても必ずしも別の国で重戦車や中戦車となるわけでは無い。

 

 

 

話を戻そう。

 

なるほど、確かにドイツ戦車兵の面々は皆170cmを超す身長の持ち主であった。

彼らからの話によると170cmほどの身長が無いと4号戦車の操縦や主砲弾装填などの各種動作に支障を来たす、との事だった。

合同艦隊と共にやって来たドイツ陸軍戦車兵の体格と日本陸軍、海軍陸戦隊戦車兵の体格差が30cmも離れて居たりすることがあったのだ。

 

実際に実験してみたところ、確かにあれでは無理がある。

戦えなくも無いのだがあれでは負担が大きすぎる。

実戦では休息を満足に取れるとは限らないので、無駄に体力を使うわけには行かないのだ。

 

平均身長が175cmのドイツ戦車兵と、平均身長165cmの日本戦車兵では10cmもの身長差がある。どうやってもその差は埋められない。

そこで海軍陸戦隊歩兵連隊や砲兵隊、工兵隊の中から身長170cmを基準として戦車兵を再募集したのだ。

 

これによってどうにかこうにか2個大隊分の戦車兵を集めることが出来た。

他にも幾つかの戦車大隊分は集まっているのだが、あちこちの部隊、それこそ輜重部隊(補給部隊の事)などからも搔き集めたから訓練が終了しているとは言えないので投入される事は今暫く無いだろう。

 

元々、陸軍の方で八九式中戦車の後継車両である三式中戦車や四式中戦車、五式中戦車などの開発が進められてはいたのだが、難航していた。

 

と言うのも三式中戦車は鋲接(リベット止め)だった。

そこで問題となったのが、鋲接だと対弾性能が良くないという事だ。

いや、はっきり言おう。対弾性能が鋲接だと低いのだ。

被弾時には敵弾の命中時の衝撃によって鋲が飛び散るという事だった。戦車内にそれらが飛散すると戦車兵を巻き込んでたったの一撃で戦闘不能、という事も有り得た。

 

確かに溶接よりも楽ではあるし量産性も高い。

だが、それだけでは駄目なのだ。何よりも搭乗員を守らねば装甲なんて意味は無い。

 

主砲は性能は良好で、数値上ならば深海棲艦が使うM4中戦車の正面装甲を800mの距離から貫徹、撃破する事が可能であった。

側面からであれば2000mからでも撃破可能、との事だった。

 

 

だが開発が完全に終了した、とは言えずそれは四式も五式も同じだった。

反抗作戦を控えているこちらとしては早急に強力な戦車、最低でもM4中戦車に対抗しえる戦車を必要としていたので、開発完了と量産体制を整えて数が揃うのを待っていられる時間は無かった。

 

そこで白羽の矢が立ったのが4号戦車、と言う訳である。

こちらならば既に実戦での活躍もあるし、何よりも沖縄や南方方面での実地試験も終えていたから実戦でも使える事が十分に判明していた。

 

なので開発が完了していない戦車よりも欧州だけとは言え既に実戦経験もあり実績もあり太平洋戦線での試験結果も良好な戦車を、と言う訳である。

 

そう言う訳で、沖縄や南方方面、そして海軍特別陸戦隊に配備が進められたと言う訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして砲兵隊だが、ラ式十五糎榴弾砲を5門1小隊として、それを3個小隊で1個中隊15門。それを更に4つで60門を装備している。

 

沖縄で活躍した九一式十糎榴弾砲よりも破壊力が段違いだ。

それを各中隊ごとに歩兵連隊の支援を行う。

 

 

元々、海軍特別陸戦隊は陸軍の各部隊よりも装備の質は上だった。

と言うのも、陸軍はその師団数が膨大であり全ての部隊に充足するのはかなりの時間が掛かる。

それに比べて海軍特別陸戦隊は、師団規模での編成は無く、最大で連隊規模であり尚且つ今でこそ部隊数は増えているが以前まではそこまで多い数では無かった。

だからこそ陸軍部隊よりも先に装備が回される事が多かった。

 

今でこそ工場が爆撃によって大打撃を被っているとはいえ、生産も軌道に乗っているから本土の陸軍師団を除いて前線配備されている師団にはラ式十五糎榴弾砲や4号戦車などが最優先に配備されつつある。

 

 

 

 

歩兵師団に関しても、三十八式歩兵銃ではジャングル内での取り回しにかなりの難があるとの事で、ドイツからの技術供与によって生産可能になったMP40だったりStg44を試験的に配備し始めている。

 

何故なのかと言うと、三十八式歩兵銃だと、銃剣を取り付けた時の全長がまさかの1.6mを超えるのだ。

これでは確かに平原などの開けた場所であればその長射程などを有効活用出来ただろうし、ボルトアクション方式だとしても何百mも離れた距離を詰めるのはどれだけ俊足の兵士だとしても数分は掛かる。しかも物陰に隠れながらだとすると余裕で十数分以上の時間が掛かるのだ。

 

だが今現在我々が主戦場としているのは、太平洋の小さな島々でありカリマンタン島などは面積が広いと言っても我々の駐屯する基地などを除けば開けた場所なんて存在しない。沖縄や南方方面のその殆どがジャングルに覆われているのだから、平原と同じような戦い方はどうやったって出来ない訳である。

三十八式歩兵銃を装備している各部隊の話なのだが、

 

「目の前の敵よりも周りの木々や蔦が一番の敵だ、何よりも用心しなけりゃならないのは深海棲艦の奴らじゃない、細い木の枝や木の幹、蔦、蔓だ」

 

とまで言われるほどにジャングルでの取り回しが劣悪だ。

木の幹にぶつけて音を出そうものなら、近くに敵がいた場合はすぐさま蜂の巣になるし、蔦や蔓に引っ掛かろうものなら反撃なんて出来る訳がない。

 

九九式軽機関銃などならばまだしも、三十八式歩兵銃ではどうやってもジャングルと言う、木々が鬱蒼と生い茂った土地では明らかに不利なのだ。

事実として深海棲艦の陸上部隊も全長が短い短機関銃などを多用していた。

 

そこで陸軍参謀本部と海軍軍令部は、検討の結果、南方方面でMP40やStg44を試験運用して結果が良好であるならば全面的に装備の更新を行う事となった。

 

結果的に南方方面での各部隊へ少数配備し、試験を行った結果、その土地柄故の湿気の多さなどで錆び付いたりする事、木製銃床が湿気にやられて腐り易いなど幾つかの問題が発覚したが概ね良好、何よりもジャングル内での取り回しの良さが評判だった。

 

 

 

錆などの問題であれば普通に防錆処理を行えば良いだけの話だ。

木製銃床ならば金属製に変える事も出来るし特に運用面での重大な欠陥、と言うほどの問題は無かった。

 

前線の幾つかの部隊からは、端的に言えばさっさと配備を始めろ、とまで催促し始める始末だった。

 

 

陸海軍でも確かに短機関銃の開発は進められていた。

一〇〇式短機関銃である。

 

ただ、問題なのが弾倉を挿入したときに通常ならば下方向に弾倉が突き出るのだが、この一〇〇式短機関銃は横に突き出る形になるのだ。

これでも確かに使えるのだが、横に飛び出ているから蔦などに引っ掛かっていざと言う時に反応できないことがあるのだ。

それを考えると、どちらが優秀か、と聞かれるとやはり前者であるMP40やStg44に軍配が上がった。

 

 

そこでMP40はそのままに、Stg44は使用弾薬を7.92mm弾では無く日本陸海軍で使用されている6.5mm弾を使用するために若干の設計変更を行った。

理由としては、7.92mm弾を使用するために設計されていたStg44の薬室であったりとたったの1.42mmの違いとは言え、それは兵器の設計上では大きな違いとなる。

なので新しく7.92mm弾を生産するならば、設計を変えて6.5mm弾を使用出来るようにした方が圧倒的に補給面や生産面の兵站面の事も考えると設計を幾らか変更した方が良いのだ。

 

拳銃弾を使用するMP40の採用も兵站面で見ると負担が増えるのだが、それでも3種類の弾薬を生産して輸送するよりも2種類の弾薬に限定した方が良いのだ。

 

何よりも、6.5mm弾と7.92mm弾は差が1.42mmしか変わらないので前線での使用に際して混乱を招きかねない。

最悪、大して大きさが変わらないのだからと言って混同しごちゃごちゃで使用してしまうとそれこそ事故が起こり兼ねない。

 

その様な面から見て改造したのだ。

 

 

他の改造としては三十八式歩兵銃などでも問題であった木製銃床が湿気によって腐る事がある、と言う問題を解決するために木製銃床を金属製の中が空洞である銃床や折り畳み式銃床などに設計を変更し完了、生産可能となるまでは木製銃床にコーティングを施して取り敢えず急場凌ぎを行う事となった。

 

折り畳み式銃床にした場合に反動制御などの問題が起こったが、そもそもの話、ジャングルでの戦いと言うのは100mなんて距離で戦う事すら稀であり、殆どの場合が50m以下の距離での戦いとなる。

酷い時ならばたったの10mやそれよりもずっと短い5mなんて超至近距離での銃撃戦すらあり得るのだ。

なんなら敵と擦れ違っても双方共に気が付くことなくそのままどちらもジャングル内を迷うなんて事もザラだ。

 

事実としてカリマンタン島などに配置されている陸軍の各部隊が対抗演習を行ったり、ゲリラ戦術の演習を行っているのだが、かなり狭い範囲、1km四方に2個大隊約900名を対抗演習させても敵の位置が分からず演習期間中に一度の戦闘状況も起きずにただ迷子になっただけ、なんて報告も上がって来ている始末だ。

 

そんな視界が全く利かない距離では命中精度よりも、圧倒的に連射速度及び個人でも面制圧が行える方が強く、圧倒的に優先される。

 

そして部隊全体の置き換えともなると相当に時間が掛かるから取り敢えず、一番に作戦投入されて実戦が近い海軍特別陸戦隊に、という事になった。

 

事実、今回投入されている海軍特別陸戦隊4個歩兵連隊はStg44とMP40を装備させている。

 

機関銃は九九式軽機関銃などが引き続き使用されている。

MG42を採用してはどうか?と言う話も上がったのだが、発射速度が余りにも速過ぎる上に弾薬の消費速度が異常なほど速い。

そんなものを配備してしまえば、前線への補給事情に支障を来たす。

なので見送られた。

 

三十八式歩兵銃は本土で1線級で配備されているし、狙撃銃として未だに現役だ。

狙撃が得意だという兵士はどういう訳かそのままStg44やMP40と共に携行している者も居るのだとか。

流石にそこまで俺が管理する事も出来ないし、戦果を挙げてくれるのならばそのぐらいならば問題無い。

 

 

 

今回、これらの部隊を輸送するのに、1個歩兵連隊に付き2隻の輸送船と2隻分の燃料弾薬、食料を輸送する輸送船と、ホハの輸送の為の100号型輸送艦1隻で1個連隊に付き5隻の輸送船を使用する。

なので4個歩兵連隊だと20隻の輸送船を使用する。

 

そこに砲兵隊が砲弾の輸送に輸送船5隻と牽引用のホハとラ式十五糎榴弾砲本体と人員の輸送に100号型輸送艦6隻と工兵隊が輸送船で各種必要な資材を3隻分に工兵隊本隊の輸送に2隻の100号型輸送艦を用いる。

 

 

全て合わせると計36隻になる。

全人員を合わせると約2万人ほどだ。

 

これらの輸送船団は今回、行動を共にしていない。

第1機動艦隊が完全に硫黄島近海の敵艦隊を撃滅したら出航となる。

 

理由としては、硫黄島上陸準備のために戦艦での砲撃を丸々3日行う事と、南方方面ほど距離が離れていないからだ。

 

1日もあれば硫黄島近海に到着できるので、態々行動を共にして沈められる危険性を高める必要は無い、という事だ。

 

往路の護衛には4航戦が就く。

場合によっては1、2、3航戦のいずれかも護衛に就く予定だ。

 

 

 

 

 

 

「提督、予定通りであれば間もなく攻撃隊が敵機の迎撃を受ける頃です」

 

「分かった」

 

参謀長がそう言うが、待てど暮らせど敵機の迎撃を受けた、と言う報告は上がってこない。

どういう訳だろうか?

流石に艦を動かすだけの燃料が無いとしても迎撃機の1機飛ばしてこないというのか?

 

「提督、攻撃隊より敵艦隊発見が打電されました」

 

「……敵機の迎撃を受けずに敵艦隊を攻撃となったわけか」

 

「敵さん、どうやら私達の通商破壊作戦がかなり利いてるみたいだね」

 

「艦艇はどうしてもその大きさ故に莫大な量の補給を必要とするからな。それが全てとは行かなくとも沈められたとなれば相当に疲弊はするだろう。俺が着任する前の飛龍達だってそうだったろう」

 

「そうだね。弾があっても燃料が無くて動けない。すっごく悔しくてもどかしかったなぁ……」

 

「ま、兎にも角にも出来るだけ被害が少ない方がこちらとしては望ましいのだがな……」

 

さて、敵はどう出て来るのだろうか?

 

その10分後にト連送が送られてきた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

第1波攻撃隊が第1機動艦隊の各空母を発艦してから1時間半。

空は晴れ渡っており、何処にも敵機の姿は見えなかった。

 

攻撃隊は4000mの高度を進んでいた。

 

「隊長、そろそろ敵戦闘機の迎撃を受ける頃合です」

 

「了解した。全機警戒を怠るな」

 

今回攻撃隊を率いるのは、南方方面での作戦で戦死した西北中将(戦死により2階級特進)に代わって本山大佐だった。

 

実戦経験とそれなりの部隊指揮の素質こそあるが未だ部隊の指揮を完全に任せられるほどの技量は持ち合わせていない。

そこで原田大佐がその補佐に就く。

 

今回が初めての実戦と言う新兵も数多い。

正直に言って技量面では猛訓練を積んではいるがやはり不安が残る。

訓練と実戦と言うのは大違いなのだ。

 

「どうだ、敵機は見えたか?」

 

「いえ、全く見えません。怖いぐらいに平和です」

 

「だな……奴ら何を考えている?」

 

本山大佐が偵察員として共に流星に乗っている福本飛曹長に聞いてみるが、敵機はどこにも居ない。

 

同じ感想を抱いていたのは彼らだけでは無かった。

 

「随分と静かだな……」

 

ぽつりとそう漏らしたのは原田大佐だった。

 

原田大佐は周囲を見回しながら警戒を続けるが、何時もならば襲い掛かってくる敵戦闘機の姿はどこにも無く、遠くの方に雲が幾らかあるだけの快晴で、眼下には戦場とは到底思えない、似つかわしくないぐらいの波が穏やかな海が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

「隊長、敵艦隊発見!2時方向!」

 

「よし!周辺に敵機は!?」

 

「いません!」

 

「西田!艦隊に敵艦隊発見を打電!」

 

本山大佐は頭の中でそれぞれの敵艦に対してどう攻撃を振り分けるかを大急ぎで考えていた。

 

「飛龍、蒼龍、瑞鶴、隼鷹、飛鷹、天城、阿蘇、大鳳、グラーフ・ツェッペリン、アークロイヤルのそれぞれの攻撃隊は奥の戦艦から順番に時計回りで攻撃を仕掛けろ!良いか!?姫級は魚雷の数本程度じゃ沈まん!攻撃力を削ぐことだけを考えれば良い!」

 

本山大佐はそう無線に向かって怒鳴ると、ト連送を放った。

 

「行くぞ、全機突撃!」

 

それに従って雷装の流星は低空に、爆装の流星は高度を上昇させた。

だが、何時まで経っても対空砲が火を噴いてくることは無い。

 

「艦爆隊、先に突っ込みます!」

 

「よぉし!そのまま対空砲を黙らせてやれ!」

 

そうこうしている間に爆装の流星が一気に反転、機首を下げた。

そして、対空砲も対空機銃の何の妨害も無く投弾を開始した。

 

停泊した敵艦への爆撃を外すような機体は1機も存在しなかった。

3度、4度と立て続けに爆炎が立ち上る中、魚雷を叩き込まん!と雷装の流星が一気に速度を上げて突っ込む。

 

姫級を含む、10隻の敵戦艦に次々と魚雷が命中する。

 

「戦果確認!」

 

「少なくとも魚雷5本命中です!」

 

「姫級ならば沈むか怪しいが、それ以外の戦艦なら撃沈か若しくは大損害だ、砲撃戦を挑もうにも碌な抵抗は出来やしない!」

 

そう口々に各機からの歓声が上がる。

そして、全機が攻撃を終えた後に母艦に向かって針路を取った。

 

第1波攻撃隊はたったの1機も失わず、損傷も受けずに攻撃を完了した。

 

 

 

 

その後の第2波攻撃隊も同じく1機の損害も損失も無く攻撃を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迎撃機も無く対空砲火も無し、か……」

 

「いささか拍子抜け、と言うような感じがしますな……」

 

「いや、寧ろこの無抵抗さには脅威すら感じられる程です」

 

作戦参謀が言ったように、拍子抜け等よりも敵が何かを企んでいるのではないか?と疑いたくなるほどだった。

 

「戦果としては空母6隻撃沈確実、戦艦6隻撃沈確実です」

 

「姫級はそこに含まれるか?」

 

「いいえ、含みません」

 

「流石は姫級と言ったところか……」

 

「第波2攻撃隊からは再攻撃の要有りと認むとの電文が送られてきております。どういたしますか?」 

 

「どういたしますも何も、第1波と第2波を収容しなければならん。今の我々には攻撃兵力は無いのだからな」

 

「そうしますと、攻撃隊収容時刻は凡そ1時間後になります」

 

「分かった。準備を整えておいてくれ。すぐさま二の矢を放てるようにな。それと搭乗員達の為の食事も準備しておいてやれ」

 

「了解しました」

 

その命令に従い、各空母内では次の攻撃隊出撃準備を進めるとともに食事(と言っても握り飯と味噌汁しかないのだが)の準備を進めさせた。

 

 

 

 

 

 

その後、攻撃隊を収容して原田大佐と本山大佐を呼び出した。敵艦隊の状況を聞くためだ。

 

「早速だが、敵艦隊はどうだった?」

 

「はっ、正直に申し上げますと全くの無抵抗でした。今までの戦いからして敵戦艦の対空砲火を相当に覚悟していたのですが……」

 

「上空から流星隊の攻撃を見ていましたが、あれでは釣る瓶撃ちも良い所です。いっそ哀れに感じました」

 

「はい、原田大佐の仰る通りです。爆炎や黒煙の方がよっぽど雷撃や爆撃を邪魔されました」

 

「そんなにか」

 

二人の話を聞くに、恐らく燃料も相当乏しいらしい。

だが完全に動けないと言う訳では無い筈なのだが……

 

敵艦隊は何が狙いなのだろうか?

兎にも角にも、第2次攻撃隊の出撃準備を整えさせて敵艦隊を確実に叩かなければならない。

 

 

その1時間後に第2次攻撃隊を2波に分けて出撃。

残った姫級3隻とル級1隻に集中攻撃を加えた。

 

 

 

それによって流石の姫級と言えども流星162機の集中攻撃は凌ぎ切れなかったらしい。

爆装よりも雷装が殆どを占めていた第2次攻撃隊の雷撃によって海に没した。

 

余った流星は周辺にいた随伴艦である重巡以下の艦艇にも攻撃を加えた。

どうやら敵は本当に燃料が無いらしい。

 

我々は結局一切の無抵抗の敵艦隊を文字通り殲滅する事となった。

 

 

 

 

 

その2日後、海軍特別陸戦隊を乗せた輸送船団が硫黄島近海に到着。

3日間の上陸準備砲撃を加えた後に上陸を開始。

 

誰もが、敵艦隊の様子からして陸上部隊の抵抗もそこまで激しくは無いだろうと予想していた。

 

だが、その予想は最悪の形で引っ繰り返る事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか、迎撃戦って言うよりも奪還戦ですね。
これ、章タイトル変更した方が良いかな……?




追記
Stg44を今回選択した根拠について説明させて頂きます。

まず、三十八式実包は6.5mm弾で7.92mm×33弾との直径の大きさは1.42mmとなります。


そして三十八式実包の簡単な諸元は

弾頭重量 9・0g
初速 762m/s 
射撃時のエネルギー量(ジュール表記) 2613J

以上の様になっております。



対して7.92mm×33弾はと言うと、

弾頭重量 8.1g
初速 685m/s
射撃時のエネルギー量 1909J

となっております。


銃火器には反動と言う切っても切り離せない、少なくとも火薬を使う銃砲に関しては必ずと行って良い程に付きまとってくるものがあります。

無反動砲なども反動自体は存在しますがその反動をバックブラスト、後退炎として放出して、前方に飛んで行く飛翔体の衝撃を抑え込んでいるので無反動の様に感じるというだけでその名前が付けられていますが、実際には射撃を行うと通常の小銃での射撃よりも衝撃は当然大きいです。

この反動(銃口の持ち上がり、そして人体に感じる衝撃)と言うのは銃弾が撃発(引き金を引いて雷管に着火した時)された時では無く、弾頭が銃口を出たときに放出されるガス圧によって生じるものです。

基本的にこのガス圧と言うものは現代の自動小銃、AK47もM16も89式小銃もこれを利用して自動装填を可能にしています。



この反動と言うのは、銃本体の重量があればあるほど抑え込めるものです。

かなり極端な話になってしまいますが5.56mm弾を発射する銃の重量が1tあったとしましょう。
これではどうやっても反動なんて起きる筈もありません。
多少、極々小さなものは感じるかもしれませんがそれでもM16を撃つ時よりも遥かに小さいものです。

ただし1tなんて重さの銃を生身の人間が持ち歩いて、戦闘時に走り回れるはずもありません。
人間でも扱える重さであり、そして尚且つ反動もある程度抑制できなければならないのです。


仮に同一条件、同じ銃で撃ったとしましょう。
そうすると反動がより大きくなるのは幾つかありますが、

・弾頭重量が同じであり、腔圧(火薬が発生させる圧力)に差がある場合は圧力が高い方が反動が高い。

・腔圧が同じであり、弾頭重量に差がある場合は弾頭重量が重い方が反動がある。

・初速が同じである場合は弾頭重量が重い方が反動がある


以上の様になります。

ここで、6.5mm弾を使用出来るように、との記述に繋がってくる訳ですが三十八式歩兵銃の重量は見た目に反して3730gとなります。

それに対してStg44は5220g。
1.5倍ほどの重量がある訳ですが先程この重量が適性なものであれば反動と言うのは寧ろ必要な物です。
極稀に反動が無い銃を作りたい、とかいう方がいらっしゃいますが、前述の通りよほど銃の重さを人間が扱えるか扱えないかを無視して設計しない限りは、火薬を使用している武器なのですからそれは不可能です。何かしらの方法、 慣性制御装置とかでもない限りは無理でしょう。

大型の宇宙ステーションなどの多少は余裕を作れそうなものならまだしも、たかだか1m程しかないものにそんなものを小型化して取り付けるのは余程困難な事かと思います。


話を戻して、Stg44の重量は金属製部品が殆どを占めているだけあって重いです。
比較するならば、89式小銃の重量が3.500g(弾倉を除く)なので比べると明らかです。
ライフル弾である三十八式実包を選んだのにはこれが理由です。


恐らくはライフル弾である三十八式実包には減装弾(火薬の量を減らした弾丸)が存在するのだし、Stg44の銃本体の重量が三八式歩兵銃よりも重いのだから十分に扱えるのではないか?


と考えました。
あくまでも素人考えで物理などはさっぱりなので計算等は省きますが一応の持論です。




弾薬の大きさが近いFG42を改造した方が良いのでは?と言う意見もありましたのでそちらに関しても説明を。

FG42を改造するという事に関してですが、寧ろ銃本体の重量がStg44よりも軽量であり恐らく反動は強く成る筈です。
更にはこの銃は構造上、仕方が無いとは言え複雑な形状の部品が多く、何よりもその要求性能を満たすために高価なスウェーデン鋼を多用しています。

小説の中の日本がこのスウェーデン鋼を作れるかどうかは別の話として、兵器を調達する側としては出来るだけ安価に手に入れたいと言う考えは古今東西変わらない考えだと思います。
何よりも部品が複雑、という事はそれだけ量産性が下がる事を意味します。

この小説内の世界の日本軍は深海棲艦によって追い詰められており、早急に戦力の立て直しが必要となっています。それは海軍に限った話だけでは無く陸軍も同じです。これらを考えるに量産性が低くなるのは宜しくない。


そして何よりもこの銃は左側面に装填するという特徴を持っており、射撃時のバランスが崩れます。

日本兵は潜伏などを得意として長距離射撃が得意である、と言う記述を目にしたことがあるのでそれは恐らく望ましくないのでは?

と考えました。
とするならば銃の下面に装填を行える方が少なくとも好ましい筈。


この様な理由でStg44を選びました。







如何だったでしょうか?
一応これにて説明は終了とさせて頂きますが、他に何かあれば追記をするなりして下されば可能な限りお答えします。


至らない点などもあるかとは思いますが今後とも本作を読んで頂けると有難いです。



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