硫黄島に上陸してから早2日。
当初、敵艦隊の抵抗が全く無かったことから硫黄島の深海棲艦守備隊の抵抗もそこまで強力ではないと、俺も含めて上陸した陸戦隊の将兵諸君すらも思っていた。
だがその予想は最悪の形で引っ繰り返ってしまった。
先ず橋頭保確保の為に第17陸戦隊と第2工兵隊が上陸する事になっていた。
その前に機雷などの障害物が無い事を確認するために第21号掃海艇と第24号掃海艇、第25号掃海艇、第34号掃海艇、第38号掃海艇の計5隻が前進し、艦砲射撃の支援の下で掃海任務に就いた。
機雷原と言うほどの数は無かったが、上陸用舟艇などが進んだ時にそれなりに被害が出ることが予想される数があった。
なのでそれらの機雷を掃海艇5隻が除去した。
そして、追加で2日間の艦砲射撃を上陸地点に実施。
満を持して上陸と言う訳だ。
先ず最初に第17陸戦隊が上陸用舟艇に分乗して2500名全員が無事に上陸を完了。
上陸が可能な地点は摺鉢山の麓辺りから伸びる、二か所の浜のみで我々はその西側の浜から上陸した。
東浜、西浜と呼称している。
どうしてここ以外に上陸地点が無いのかと言うと、地図を見て貰えば分かるのだがこの2か所の砂浜以外の場所は岩だらけの場所で波も荒く上陸できるような場所では無いからだ。こんな所に輸送艦や大発を近付けようものなら直ぐに座礁してしまう事だろう。
上陸から5時間後程は敵の抵抗も全く無く、工兵隊の上陸も問題無く、火山灰によって足元が覚束ない砂浜を穴の開いた鉄板を敷き詰めて足元を確保。それに続いて第7砲兵隊が上陸。
続いて第12陸戦隊が上陸。
即座に各員用、砲兵隊用の掩体を構築して橋頭保の確保が完了。
それに続いて残りの第11、第21陸戦隊が上陸を完了。
即座に内陸部に向けて各歩兵連隊は前進を開始した。
先ず我々が進んだのは摺鉢山とは反対方向である平野部だ。
平野部と言っても飛行場を除いては小高い丘が連なっていたりするので到底平野部とは言えないが、区別しやすい様にそう表記しているのだ。
硫黄島には2つの飛行場が存在する。
摺鉢山の近くにあるのが南飛行場、その反対側の北側にあるのが北飛行場だ。
まず最初に北飛行場の奪還を目指した。
こちらを先に奪還すれば飛行場が使用出来るようになるからだ。
そうなれば我々海軍だけで航空支援を行わなくて済むようになる。
そう考えての事だったのだが、これが最悪の選択だったと言える。
上陸して、島を分断した後にその分断するべく東浜に向かって前進を開始。
砲兵隊と艦砲射撃の支援を受けつつ散発的な抵抗こそあれど4個陸戦隊連隊は被害は少なく死傷者は27人に過ぎなかった。順調に進んでいたかに見えた。
「こちら第4中隊!敵の猛攻撃に晒されている!至急応援と爆撃支援を求む!繰り返す!敵の猛攻撃に晒されている!大至急応援と砲爆撃支援を求む!」
「こちら第1大隊!敵に包囲された!あちこちから銃弾が飛んできて何処にも逃げられない!どこの部隊でも良い、誰か助けてくれ!」
西浜と東浜のちょうど真ん中の辺りにまで進んできた頃、唐突に摺鉢山、周りを囲む小高い丘の裏側などあちらこちらからの砲撃に加えて何処からともなく敵兵が現れたのだ。
一番前を進んでいた第17陸戦隊は瞬く間に砲撃と銃撃によって大打撃を被った。
連隊の約5割が死傷する事となった。
それにより、前線を維持することが出来なくなった彼らは戦線を放棄して後退、後方に展開していた第21連隊と合流する事となるが、2000名程度まで戦力が減少してしまった第17陸戦隊は、弾薬も個人で携帯していた分を除いて撤退の際に放棄してその殆どを喪失、ホハも全車両が破壊されてしまった。
第17陸戦隊には既に継戦能力など残っておらず、海岸の橋頭保まで後退させた。
そして連隊長の話を聞くと、どうやら深海棲艦の奴らは艦の乗組員を陸揚げして守備隊として配備していたようであるらしい。
この連隊長は沖縄奪還作戦時に陸戦隊の隊長を務めていたのだが今回は上陸作戦の経験がある連隊長が居なかったために急遽、彼を第17陸戦隊の連隊長として着任させたのだ。
その彼曰く、
「どうにも、敵の射撃は命中精度はそれほど高くなかったように感じます。射撃練度不足を数で無理矢理補った、と言う感じでしょうか。実際に我々が居た場所とは懸け離れた場所に弾着する砲弾などもあるぐらいでした」
「そして最も気になったのが、敵の陸上部隊の中に明らかに陸上部隊所属ではない奴がいたことです。恐らくは艦の乗組員と思わしき連中です。こいつらは射撃は死ぬほど下手糞でしたが何よりも数が多すぎます。予測ですが我々第17陸戦隊を襲撃したのは1万前後の兵力かと」
との事だった。
彼の言葉が事実だとするすならば、敵は艦の乗組員全員を硫黄島に陸揚げして守備隊に組み込んだ、という事である。
そうするならば、戦艦10隻分の乗組員の数だけでも途轍もない事になる。
戦艦ル級1隻の乗組員は大体2500名ほどでそれは姫級も同じだ。
仮に2500名だとすると10隻分なので25000名となる。
1個師団以上の陸上戦力となる訳だ。
空母も2500名以上となるが2500名で考えるとしても6隻で15000名。
先の戦艦と合わせると丸々2個師団になる。
巡洋艦も1200~2000名の乗組員が居るからそれが20隻となると最大40000名。これまた2個師団規模だ。
そして駆逐艦の乗組員も加わるからこちらも最低でも1個師団規模。
全てを合わせると5個師団計10万と言う途方も無い数字だ。
恐らくこれらは全て歩兵として戦うであろうと推測される。
元々の陸上部隊の数が戦車、砲兵隊など全て合わせて1個師団と仮定すると6個師団12万人にもなる。
この規模は沖縄の守備に就いている全師団の合計数とほぼ同数だ。
これ程までの戦力をたったの12分の1にしかならない歩兵1万名、全部隊を合わせても2万名程度の戦力で戦おうとしていたのだから、どうやったって勝てるわけがない。
全陸戦隊は前後左右、あちこちから銃撃を受けて頭上からは迫撃砲や榴弾砲の猛砲撃を加えられて瞬く間に戦力を失い、上陸地点の横1km、奥行き500mほどの地域に押し込められてしまった。
この間、たったの2時間程度だ。
この2時間程度の戦闘によって4個陸戦隊は1万名中1461名が死傷。
各連隊は500名ほどづつを失ったことになる。
しかも損害はこれだけでは無く、砲兵隊も60門中7門を失う事となった。
特に被害が酷かったのは工兵隊で、全体の約4割にも達する死傷者を出した。
幸いな事は2個戦車大隊が未だ上陸しておらず無傷であった事だろう。
死傷者はすぐさま輸送艦に後送された。
艦隊司令部に各陸戦隊の隊長達を集めて作戦会議を開いた。
作戦会議と言っても、撤退するか否かを決める会議なのだ。
「増援さえ、頂ければ作戦遂行は可能です」
「そんなこと誰だって分かっている。だがその増援が直ぐに用意出来ない事が問題なのだ」
「予備の部隊を用意していなかった事が仇になりましたな……」
確かに増援部隊があれば作戦は幾らでも遂行できるだろう。
だが問題なのはその増援部隊がすぐさま用意出来ない事にあった。
しかも予備部隊すらない状況なのだ。
これではどうやったって奪還は不可能である。
用意するにしても奪還に向いている適切な師団の選定、輸送船の準備、各種物資の調達などを全てやらなければならないために最短でも1か月は掛かってしまう。
しかも12万と言う大軍を相手するには最低でも同数、もしくはそれよりも多くなければどうやったって奪還を完全に成功させるのは不可能だ。
確かに橋頭保こそ確保して、そこに防衛線を敷いているからそう易々とは海に追い落とされることは無いだろうが、12万の大軍の波状攻撃を受けてしまえば幾ら最新装備である精鋭が多い部隊だとしても負けてしまう事は必須だろう。
しかも最悪な事に、橋頭保としている砂浜は全くの遮蔽物が無いから銃撃からも砲撃からも逃れる術は無いのだ。
個人の掩体を掘ろうにも火山灰や軽石などで出来ている砂浜では穴なんて掘っても掘っても埋まってしまう。
それでも工兵隊が陸揚げした使用用途が無くなってしまった各種資材や土嚢袋を用いてどうにかこうにか掩体を構築、防衛線を維持している。
だがこれでは隠れる場所が無いに等しい。
しかも初期に陸揚げした弾薬の殆どを失ったことが大きく響いている。
輸送船にある砲弾薬を必死になって陸揚げしているがそれでも前線では弾薬不足が目立っている。
「撤退するというのならば早急な決断をお願いします。このままでは陸戦隊将兵が無駄死にしてしまいます!」
「分かっている。だが撤退するにしても相応の準備が必要なのだ。撤退するにしても順番を決めて、その間輸送艦に部隊が乗っている間に背後を守る部隊も決めなければならない。それを何処の部隊に担当させるのか?」
「それは……」
「それに、敵の砲撃は輸送艦や大発も狙っているからそう簡単に近づくことも出来ない」
確かにその通りだった。
敵の重砲は摺鉢山に存在しているらしいのだが、どうにも敵重砲は摺鉢山内に線路を引いて1発か2発、多くても3、4発撃つと直ぐに引っ込んで隠れてしまうのだ。
しかも扉も取り付けているらしく、そこまで分厚い訳では無いらしいが偽装がしてあり、これでは艦砲射撃を加えて黙らせる事は出来ないし、流星で爆撃を加える事も隠れてしまって位置が分からなければどうしようもない。
それらが数十門の重砲に留まらず様々な口径の砲弾が降り注いでくるのだ。
輸送艦や陸戦隊に向けて絶え間無く撃ちこまれる。
今も砂浜に落下した砲弾が炸裂して砂を巻き上げたり、輸送艦や大発を狙って海に落下した砲弾が水柱を上げている。
「ともかく、敵の重砲だけでも何とかして頂きたい」
「それに関しては艦砲射撃と撃ち込んで砲撃の暇を与えない様にする予定ですから問題ありません。ただ、各艦の配置を変えるのにもう少しだけ時間を頂きたい」
「あとどれほど掛かるのですか?」
「2時間から3時間程です。それだけ頂ければ十分です」
「分かりました。約束ですぞ、必ず砲撃を行ってください」
「それと航空機による支援も出来るだけ絶え間無く行って頂きたいのです」
各隊長達の必死の懇願も当然だ。
自分の部下達が今も戦い続けているのだから。
「それと戦車大隊を一刻も早く寄こして欲しい。敵弾を遮るものが何もない状況は全くと行って良い程好ましくありません。掩体だけでは不十分なのです」
「それも、艦砲射撃が始まってからとなります。今上陸をさせようものなら敵に狙い撃ちされてしまう。撤退するにしろ、艦砲射撃を叩き込んで摺鉢山の敵重砲を黙らせないと何も出来ません」
「分かりました、それではそのようにお願いします」
結局会議では、撤退するにしろ増援を待つにしろ艦砲射撃を始めてから、という事になった。
少なくとも摺鉢山からの砲撃だけは何とかしなければ何も出来ないのは事実であった。
「参謀長、流星に爆弾を装備させて擂鉢山を爆撃させろ。艦砲射撃を始めるまではそれでなんとかして凌ぐ。烈風には6番を装備させて陸戦隊の支援だ」
「はっ、了解しました」
その命令に従って、流星は爆装して飛行甲板から飛び立ち続け爆弾の雨を降らせた。
烈風は6番2発を装備して敵の部隊に投下し続けて投下が終わったら機銃掃射によって陸戦隊に対する敵兵力の圧力をどうにか減らす事が成功した。
その間に陸戦隊は部隊を再編し、前線をどうにかこうにか立て直した。
そして2時間半後に各艦の配置が完了。海側に面している摺鉢山を狙って展開していた艦を全て反対の陸地側に移動。
艦隊の戦艦から駆逐艦に至る主砲は全て摺鉢山斜面に向けられており、戦艦と重巡は3式弾を装填して対地攻撃能力を上げている。
「提督、砲撃準備完了しました。何時でも行けます」
「よし、艦砲射撃開始!」
その俺の号令によって一斉に射撃が開始された。
戦艦の装填時間の長さは重巡や軽巡、駆逐艦で補うので問題無い。
耳を塞ぎたくなるほどの轟音が一斉に鳴り響いたと思ったらその数秒後に摺鉢山が炸裂した砲弾の光に包まれた。
双眼鏡で覗いてみると、幾らか砲弾とは違う爆発をしているからもしかすると敵砲が隠れている場所を直撃した砲弾があったのかもしれない。
流石に最大41cmの戦艦の主砲は防げなかったようである。
「参謀長、戦車大隊を上陸させて歩兵の支援に当たらせろ」
「はっ」
散発的に敵砲が反撃しようと射撃したが着弾した場所は的外れも良い所だった。
それによって隔壁を開けていたから3式弾の灼熱を浴びて砲弾が誘爆を起こしている様子が見られた。
それによって敵の砲門は一切射撃を行わなくなった。
艦砲射撃によって敵の砲撃が止んだ頃合を見計らって2個戦車大隊を上陸させて歩兵の支援に当たらせる事とした。
戦車大隊を上陸させた理由としては、撤退するとなった場合に戦車を放棄、障害物としておくためと砲弾は即席爆弾として設置して出来るだけ敵の侵攻を遅らせる為である。
勿論乗員は撤退させる。
放棄するのは戦車と砲弾だけだ。
南方方面の資源地帯との輸送ルートが確保されている間は無尽蔵とは行かないが戦車も砲弾も作ることが可能だ。
それを考えれば放棄する事なんて厭わない。
上陸した戦車は歩兵と協力して掘った戦車用の掩体に車体下部のみを隠して敵兵に向かって榴弾を撃ち込んだ。
どうにかこうにか一連の行動によって敵の攻撃にも陰りが見え始めたようで、前線では敵からの攻撃が止んだ、もしくは弱体化したとの報告が出始めた。
結局、上陸してから1週間が過ぎた。
撤退するか否かの会議は紛糾したが敵の陸上部隊と言う問題こそあれど敵艦隊と言う何よりも脅威と成り得る存在が居ない事、橋頭保を確保している事などいくつかの理由によって作戦は続行する事となった。
当初、俺は撤退をするべきだと考えていたのでこの決定に異議を唱えるべきか、と考えもしたのだが本土にいる中代大将達が陸海軍のあちらこちらに手を回して海軍特別陸戦隊を新たに3個連隊を即時投入可能状態で本土で待機させており、そして陸軍4個師団8万人を1か月の準備期間さえあれば用意することが出来るとの事だった。
中代大将達も、B‐29に護衛戦闘機が就いて震電での迎撃が有効にならなくなる事態はどうしても避けたいらしく硫黄島の奪還は今回どうにかして成功させたいらしい。
確かに、敵艦隊の脅威も無い今こそが好機なのだ。
こちらは制空権と制海権を完全に握っている。
確かにマリアナ諸島から飛来するB‐29やトラック、ウルシー環礁からの敵艦隊の脅威こそあるかもしれないが今現在は硫黄島近海の制海権及び制空権を握っている。
しかも敵の陸上部隊はこちらの通商破壊によって疲弊していると思われるし今後、少なくともこちらが潜水艦隊や連山に至るまでの攻撃兵力全てをこの方面から撤退させる、もしくは攻撃を行わせないという命令を下さない限りは一切の補給を受ける事も出来ない状況で、しかも艦隊の乗組員を陸揚げして陸上戦力に加えているのだから銃弾、燃料から食料水に至る備蓄してあった物資も長期間持つとは思えない。
少なくとも、それら全部を加味して考えてもこちらの圧倒的兵力不足という事はあるが一番の好機であるのだ。
その圧倒的兵力不足も本土に部隊が用意されているのだからその差も縮まるだろうし、何よりも陸戦の訓練を受けた敵は少ない。
海戦ならば侮り難い、強力な敵だと言えるだろうが、陸戦においては侮れると言う訳では無いが陸戦専門の戦闘訓練を日々積んで来た陸軍兵士や陸戦隊兵士からすると敵の陸上部隊を相手するよりはずっと楽だろう。
その様な理由から作戦を続行する事となった。
投入されるのは、
海軍特別陸戦隊第23歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第24歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第27歩兵連隊
となっている。
以上の3個連隊計7500名は既に輸送船と輸送艦によって運ばれてきており上陸完了、正面と砂浜の両側面をそれぞれ1個連隊づつが応援として守備に就いている。
陸軍師団は、
第46歩兵師団
第51歩兵師団
第55歩兵師団
第62歩兵師団
と以上の様になっている。
絶え間無い爆撃と砲撃によって敵は顔を出すことが出来ないらしく、摺鉢山からの砲撃は既に無く、なんなら戦艦による砲撃のせいで地形がまるっきり変わってしまっている。
陸軍の4個師団は準備が整い次第、輸送船によって師団毎に輸送されてくる。
予定では2週間後にまず第46歩兵師団が出航、その1週間ごとに残りの3個師団が続く予定だ。
護衛には4航戦が就くが戦艦は艦砲射撃の為に引き抜いている。
硫黄島には連山による爆撃も行われており、はっきり言って地獄の様相だ。
昼夜問わずの砲爆撃なので空母は硫黄島近海を遊弋しており、飛龍の艦上にいる俺は常に砲撃音を聞いている。
「これだけ砲弾を撃ち込んでも爆弾を落としても敵戦力を殆ど削れていないのだろうな……」
「地下坑道を張り巡らしてるらしいからね、一つ一つの穴を全部潰して回らないと無理だと思うよ。それか余程運良く行動の入り口に命中でもしなきゃ潰せないし、空からじゃ偽装されてるから見つからないしされてなかったとしても人1人が出入りできるぐらいの穴なんてどれがどれだか区別なんて付かないよ」
「持久戦に持ち込まれるとやはり厄介だな……沖縄でもそうだったがあの時は島の大きさがあったからまだ一度に戦う事になる敵の数が限られていたからまだマシだったが今回はこの狭い島に12万と言う敵が潜んでいるのだから比じゃないな」
そう俺は飛龍と共に昼飯を食べながら話していた。
今回の戦いの辛い所は、沖縄本島での戦いの時と違い、硫黄島と言う太平洋に浮かぶ小さな島に敵が12万もの大軍で潜伏していることだ。
硫黄島は、どれだけ北から南方向で広い幅でも精々が4kmほどしか無く、西から東の距離は広い所でも3km程度。
面積にして23.73㎢。
それに比べて沖縄本島は幅こそ狭いが100km程の長さがある。
面積だって1207.00㎢もあるのだ。
硫黄島の凡そ50倍だ。その面積に12万人と言う数の兵士が居ても何らおかしくは無いのだろうが、硫黄島と言うたったの約24㎢しかない狭い島に12万人と言う数ははっきり言って異常だ。
このぐらいの島ならば精々2個か3個師団くらいを駐屯させておくのが普通だ。
兵站面から考えれば1個師団か2個師団が限界だろう。
にも関わらず、12万と言う兵力が潜んでいるのだから驚愕だ。
俺が指揮官だったら絶対にそんな場所で碌な戦闘を行えるとは思えない。
敵は今までの輸送船で運んだ物資を全て陸揚げしているのだろう。
そうでも無ければこれだけの数を食わせて、戦わせることは到底できない。
武器ならば予備を引っ張り出して来ればいいが水や食料、弾薬はそうもいかない。
飲んで食べる事が出来なければ餓死、弾薬が無ければ戦えない。
恐らく元々艦に積んであった対空砲などの砲弾は即席爆弾として使用する気だろう。
艦の燃料などは運ばず、水や食料、小銃などに使うための銃弾や榴弾砲の砲弾に限定して輸送していたと容易に予想出来る。
兎に角、兵力が揃うまでは戦う事は出来ない。
作戦としては陸軍の第46歩兵師団が到着し次第、前進を開始して島を分断する。
恐らく敵の兵力の殆どは摺鉢山と飛行場に集中していると思われるから、それを各個撃破するのだ。
北飛行場、南飛行場、摺鉢山の順番での攻勢だ。
均等に分けているのならば4万づつになるが今までの戦いで敵の夜襲などを撃破してその数は大体5000~6000程を撃破しているから精々38000づつほどになるだろう。
こちらは1個師団後方の防衛のために引き抜いて残りの75000を奪還に投入できる計算だ。
3倍とは行かないが2倍ほどの兵力を用意出来たのだから良しとしよう。
同数での戦いでは無いだけマシだ。
そして1週間後、漸く46師団が到着した。
これにより作戦を開始することが出来る。
だが我々の予想とは大きく違って沖縄以来の激戦が繰り広げられる事になる。
陸上投入兵力
海軍
海軍特別陸戦隊第11歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第12歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第17歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第21歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第23歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第24歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第27歩兵連隊
海軍特別陸戦隊第4戦車大隊
海軍特別陸戦隊第7戦車大隊
海軍特別陸戦隊第7砲兵隊
海軍特別陸戦隊第2工兵隊
陸軍
第46歩兵師団
第51歩兵師団
第55歩兵師団
第62歩兵師団