暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

37 / 85
第36話

46師団到着後、すぐさま上陸を開始し武器弾薬の揚陸、そしてホハなどの支援車両の揚陸が完了し攻勢準備が整うと陸戦隊と共に前進を開始した。

 

先ず、予定通り北飛行場の奪還を目指すべく、正面と左側面は陸戦隊に任せて右側面から

第11陸戦隊と第23陸戦隊と共に46師団は前進を開始。

 

だが第11陸戦隊と第23陸戦隊は今までの戦闘で手酷く、と言う訳では無いが損害が出ている。

 

硫黄島と言う狭い島内を1個師団と2個連隊が進むと言ってもその狭さゆえに全ての部隊を前面に押し出す事は出来ない。

なので46師団は2個連隊づつを前面に出して、その2個連隊づつが交代で前進を行う。

 

 

先ず、北飛行場の南端を目指して前進した。

そして南端に到達したら陸戦隊と共に左右に連隊を回り込ませて包囲、攻撃という流れだ。

 

だがこの南端に到達するまでが地獄の道のりだった。

先ず、この北飛行場に到達するまでに無数とは行かないがかなりの数の小高い丘とそれらよりも高い標高を持つ4か所の小高い丘がある。

 

この丘陵は精々が5mかそこらしかないし4つの丘も精々20~30mかそこらの高さしか無いのだが、この精々5mそこらの丘陵と、4つの丘が問題だった。

 

まず5mそこらの高さしかないと言っても人間の身長がそんなに巨大になる事はまずない。成長したとしても2mぐらいだしそのような者は全世界見渡しても極々少数だ。

 

兵士達の平均身長は165cmほどなのでどうやったって隠れてしまう訳だ。

確かにこちらとしては敵重砲などからも身を隠せるし願っても無い事だ。と言っても敵重砲の脅威は艦砲射撃によって殆ど無いのだが。

 

ただそれは、敵も同じことだった。

こちらの砲爆撃から身を隠すことが出来るし、何よりも丘に囲まれているものだからもの丘の斜面しか見えないのだ。

これでは敵が後ろから湧いて出てきても、横から襲い掛かって来ても咄嗟の対応が困難となる。

しかも丘によっては切り立った斜面によって完全に一本道になっている箇所すらあるのだから、正面に敵の銃座があった時には最悪と言って良い。

しかもその様な道は戦車が入り込めないことが多く、戦車を前面に出して敵のトーチカや銃座を潰して回ることが出来ないのだ。

 

そして何よりも酷いのは、先程も言ったが敵の姿が攻撃されるまで見えないという事だった。沖縄同様、地下陣地を張り巡らしているらしく、潰したはずの入り口から敵が湧いて出て、攻撃を食らうなんて当たり前の事だった。

 

しかも丘の間には砲爆撃を受けることが無かった、防御陣地が無数に存在していてそこには機関銃だけでなく迫撃砲などの火器も数多く存在し、しかもその命中率が高かった。

 

恐らくはどこからか監視していて位置情報を伝達しているのだろうと思われる。

 

お陰で防御陣地を突破する前から損害を被り、何よりもその防御陣地を突破するのにもかなりの時間と兵力を要した。

 

1個小隊の半分死傷して壊滅するなんて事もしょっちゅう。

酷い場合だと防御陣地を突破するのに丸々1個小隊が消えて、更にもう1個小隊が壊滅するなんてこともある。

 

流石に流星も戦艦もそんな小さな的を狙えるだけの精密性は無い。

しかも上空からは偽装されていて全く分からないらしく、爆撃支援を要請をしても流星は上空から見えないのだから投下しようにも何処に落とせばいいのか全く分からずお手上げ状態だった。

だからこそ歩兵で防御陣地を1つずつ潰して回る以外に方法は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ちきしょう、また敵の防御陣地に当たっちまった!」

 

「つい50m後ろで1つ潰したばかりだぞ!?それにもう小隊は半分以下の人数しかいないのにあれをどうやって叩けばいいんだ!?」

 

「伝令を出す!おいお前!後続の部隊に敵防御陣地発見、応援を寄こすように急いで伝えろ!それと銃弾の補給を要請してくれ!このままじゃ白兵戦を挑むことになる!お前も帰ってくるときに銃弾を持てるだけ持って帰って来い!」

 

「了解しました!」

 

「援護射撃!」

 

隊長が伝令に兵を送り出した。

その間も敵の機関銃や小銃からの射撃は止まらず、援護射撃を行うのに頭を出した兵士が1人、運悪く鉄帽に直撃を受けて甲高い音を上げながら貫通、即死した。

 

だがその甲斐あって伝令に出た兵士は無事に後ろに下がることが出来た。

 

「サンパチならこんなに早く弾切れの心配をする必要は無かったってのに!」

 

「小隊で持って来た予備の弾薬は!?」

 

「あと3箱分しかありません!」

 

「それを均等に分けろ!怪我人や死んだ奴のも搔き集めるんだ!通信兵!大隊本部に弾薬の補給と応援要請!それと迫撃砲でも爆撃でも何でもいいから火力支援も要請しておけ!復唱はしなくていい!」

 

「了解!こちら第2中隊ッ!敵の防御陣地にまたぶつかった!このままじゃ全滅します!弾薬も残り少なく死傷者も多い!至急応援を求む!繰り返す、至急応援を求む!」

 

『先程補給部隊を送ったが途中で連絡が途絶えた!今現在大急ぎで補給部隊を新たに編成しているから今しばらく耐えて欲しい!』

 

「ならば増援だけでも寄こしてください!我々の後続の第3小隊はどうなったんです!?」

 

『貴君らの突破した陣地の手前20mほどで敵の猛攻撃を受けている。なので大隊からか若しくは連隊、最悪師団本部の予備部隊の投入を待たなければならない!今現在我々大隊本部も敵の奇襲を食らって戦闘中なのだ、撤退して第3小隊と合流しても構わない!』

 

「撤退だと!?こっちは報告が正しいなら前も後ろも敵に挟まれていてしかも弾薬も人員も不足しているんだぞ!?怪我人も居るんだ、見捨てろとでもいうのか!?」

 

『こちらも前線への応援と補給をどうにかして成功させようとしているんだ、耐えーーーー』

 

唐突に大隊本部との通信が切れた。

通信兵は何度も呼びかけるが、出ることは無かった。

 

「聞こえますか!?クソ、切れやがった!隊長!」

 

「どうした!?大隊本部は何と言っていた!?」

 

「どうやら大隊本部も敵の奇襲攻撃を食らって戦闘中の模様!補給部隊を護衛と共に送り出したようですが途中で敵部隊と交戦の報告が入ったきりでそれ以降は通信が途絶えているとの事です!最悪の場合、撤退をしても構わないと!」

 

「我々の後を進んでいた第3小隊は!?」

 

「我々が突破した防御陣地の20mほど手前で敵と交戦中!」

 

「クソ!撤退するにしても前にも後ろにも敵がいて補給が受けられない、応援も来ないで怪我人を担いでどうやって撤退すりゃいいんだ!」

 

小隊長は、沖縄での戦闘も経験し生き残った精鋭だったがこの状況を切り抜ける考えは浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

前線に対して満足に補給が行えていない。

このままじゃ何処の部隊も全滅してしまう。

 

 

それぞれの兵士はMP40は32発入り弾倉を6本、Stg44は30発入り弾倉を6本づつ携行していた。

だがそれでもMP40は192発、Stg44は180発と言う数だった。

 

三十八式歩兵銃の時は各員が120発づつと今よりも少ない数を携行していたのだが、ボルトアクション式のライフルであったためにそこまでの連射は出来なかったし、何よりも1発撃ったならば即座に身を隠さなければ蜂の巣だった。

 

だからこそ、そこまで直ぐに弾薬切れの心配をする必要も無かったのだが、MP40やStg44は違った。たった1秒引き金を引いただけで型式にもよるが最低でも8発もの弾丸が飛んで行くのだ。

セミオート射撃、フルオート射撃の切り替えができるが、基本的にセミオート射撃で撃っているとしても三十八式歩兵銃よりもずっと射撃速度が速いのは明らかだ。

 

だがこれは問題としては余り大きなものではない。

恐らくこちらが直接的な一番の原因となっているのだが、小隊や中隊と言った規模の部隊と敵防御陣地や敵部隊間での戦闘回数が他の戦線、沖縄本島を含めた南西諸島や南方方面奪還作戦よりも遥かに多いのだ。

 

30mも前進しないうちにまた敵防御陣地などにぶつかる事なんてザラにある事だし、なんなら敵防御陣地を突破しても後方からいきなり現れる事もあるのでそちらとの戦闘も行わなければならない。

 

それを考えると弾薬の消費が激しい事も必然と言える。

どうにかこうにか補給をしようにも、敵部隊が後方の、海岸にある橋頭保付近にまで現れては水食料弾薬などの集積所を襲って爆破したり、火を放ったりしてくるし、前線部隊に届けようと出発した補給部隊が護衛に就いていた部隊共々、丸々連絡途絶、なんてことも多々起きている。

 

どうにかこうにか、小隊規模での各隊長は小隊単位で持ち込んでいた予備の弾薬をやり繰りしながら必死に戦っている。

 

だが実際、殆ど弾薬が尽きかけている部隊も数多く、時間の問題だ。

補給部隊を送ろうにも補給部隊が護衛部隊と共に攻撃を受けて戦闘中、連絡途絶、なんてことも報告で上がって来ている。

これでは前線にどうやったって補給が行かない訳だ。

 

しかも大隊本部や連隊本部が奇襲攻撃を受けている部隊も存在してそちらでの交戦に精一杯でとても増援部隊や補給部隊を送り出すことが出来ない状況さえ生まれつつある。

 

撤退しようにも、後方を敵部隊に遮断されてそもそも撤退がどうやっても不可能であったり、遮断したその敵部隊が後続の味方部隊と交戦中、挟み撃ちを狙おうものならこちらも正面の敵に挟み撃ちにされるという、過酷な状況に何処の部隊も陥っていた。

 

 

 

 

「提督、前線の各大隊中隊規模の部隊から矢継ぎ早に大至急応援と弾薬の補給の要請が届いております」

 

「分かっている。輸送艦にある弾薬はあとどれほどだ?」

 

「そちらはまだ十分な数があります。ですが問題なのは最前線に補給が届かない事です」

 

「送っても敵部隊からの奇襲攻撃を受けているらしいからな……」

 

「はい、数で押そうにもこちらは敵よりも数において負けておりますからそんな事を

すれば忽ち負ける事になります」

 

「……この際、空中投下による補給も検討せねばならないな」

 

南方方面などでもやったように弾薬や食料を空中投下で補給を行う方法だ。

だが問題なのは、未だに我々は飛行場の奪還に成功していない、という事である。

 

南方方面ならば奪還した飛行場に陸軍の飛行戦隊を進出させて、疾風に500kg分の物資を積み込んで空中投下出来たが、今回はそれを行うのが海軍の、しかも洋上に浮かぶ空母であるという事だ。

 

そうなると輸送船に乗っている弾薬や食料を一度空母に乗せるという作業を行わなければならない。

 

この手間ははっきり言って物凄く面倒なのだ。

と言うかそうなると空母を1隻丸々それ用に転用しなければならないという事だ。

そうなると万が一敵艦隊が現れたときにただでさえ少ない攻撃兵力が減るということを表す。

 

だがそんな事を言って前線の将兵達を飢えさせ武器弾薬が無く戦えずに死なせる訳には行かない。

 

「参謀長、空中投下による補給を行うに当たって適任となる空母は?」

 

「そうですね……信濃など如何でしょうか?」

 

「理由は?」

 

「まず、装甲空母であり、物資を満載した状態でも装甲甲板を突き破られるほどの攻撃ともなればそれこそ戦艦クラスの主砲弾か1tクラスの爆弾でもなければ早々やられることは無いでしょうから。それに艦載機の数も70機で全てが烈風と多少格納庫内に余裕がありますからその内の28機程を他の空母に移して代わりに流星を着艦させてしまえば十分に可能かと思われます。流星の数は16機ほどで構わないかと。最悪露天繋止しておいても問題ありませんから」

 

「ならばそうしよう。信濃にその旨を伝えてすぐさま任務に当たらせてくれ。前線将兵に一刻も早く食料弾薬を送り届けねばならん」

 

「了解しました、直ぐに作業に掛からせます」

 

「輸送船にもそれを連絡しろ。物資の積み込みにどれほど時間が掛かる?」

 

「そうですね……計3時間ほど頂ければ問題ありません。2時間で最低限の水食料弾薬を輸送船から受け取り積載完了、1時間で流星に搭載します。爆弾や魚雷では無いのでそこまで時間を頂く必要は無いかと」

 

「分かった、それで進めてくれ。もし早く終わったのならばこちらに簡易的な報告のみで順次流星を発艦させるように。ただし、事故だけはやってくれるなよ」

 

「勿論です。即座に作業に取り掛からせます」

 

「それと全部隊にこれより3時間後に空中投下による水食料弾薬、医薬品等の補給を行う事を無線にて通達、それまで耐えてくれと伝えるんだ」

 

「了解しました」

 

その命令に従って師団本部にまずその連絡が行くと連隊本部、大隊本部、中隊本部経由で各小隊に至るまで連絡が成された。

 

元々信濃所属の烈風で対地支援任務に就いていた機は飛龍他の空母に着艦、そして飛龍達は流星を4機ずつ信濃に派遣した。

 

それらが完了した後に輸送船から物資の受け取りを始めた信濃は2時間で銃弾154t、食料53t、水28t、医薬品35tを受け取った。

 

それらは各部隊、兎に角戦っている部隊に投下される事となった。

正直に言って、前進と後退が激しすぎて何処が正確な前線なのかが司令部も前線部隊も把握出来ていないからこのような曖昧な命令となってしまった。

 

それも仕方が無いと言えば仕方が無いのだ。

報告だけでも既に各部隊は合計して100回以上前進と後退を繰り返し、更にはあちこちで分断されたり包囲されている部隊もあちらこちらで生じているからこれで前線がどこかを判断するのは誰にだって無理な事だった。

 

しかも戦闘をしているものだから混乱も生じていて情報があっちへ来たりこっちへ行ったりの錯綜状態で正確な情報を掴むことは俺を含めた司令部の面々でも不可能な事だった。

 

 

 

 

 

そしてきっかり3時間後に1機目の流星が物資を投下するべく飛行甲板から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「隊長!補給物資が3時間後に空中投下で補給されるそうです!」

 

「本当か!?」

 

「はい!提督からの指示で空母から流星を使って行うそうです!」

 

「何時だ!?いつ来る!?」

 

「早ければ3時間後に発艦して始まるそうです!」

 

「良し!それならば補給が来るまで耐えるぞ!」

 

空中投下による補給が行われるとの報告が各部隊に伝えられるとあちこちから銃声や怒号に混じって歓声が響いた。

 

それもそうだ、酷い部隊だとかれこれ2時間以上にも渡る敵防御陣地との戦闘で各員の所持する弾薬数が弾倉1本分30発しかない部隊も存在していたし、何処の最前線で戦っている部隊はその殆どが弾薬の欠乏に悩まされ、ただ隠れて時折撃ち返す事ぐらいしか出来ないでいたのだ。

 

今の今まで、大隊本部などに必死に補給と応援を!と叫び続け、どちらかだけでも構わないから寄こしてくれと懇願していたのだ。

今の今まではそれすらも困難な状況だったのだ。

 

そんな状況の中で空中投下による補給と言う、制空権を握った者しか出来ない、確実に補給が受けられるやり方で補給を受けられるのだから誰だって歓声を上げたくもなる。

 

 

 

どうあれ前線の、戦っている兵士達全員の士気が上がった事に間違いは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流星による一度目の空中投下任務が開始された後。

各部隊は一度前線を立て直すために少なくとも後続の部隊と合流。

そして消耗している部隊はそのまま予備部隊と後退して再編、可能ならば再び前線に投入される事となった。

 

 

「提督、最前線で戦ったほぼ全ての部隊が損耗率5割を超えており戦闘継続は困難です。指揮官を死傷した部隊も少なからず存在しており、到底これらの部隊を投入する事は出来ません」

 

「ですが兵力不足は明らかで、それらの部隊を投入できないというのはさらなる兵力不足を招きます」

 

「……損耗率の高い部隊を統合、1つの部隊として再編しろ。指揮官が不在な部隊とそうでない部隊同士をなるべく組ませるんだ。もし指揮官が居る部隊が被ってしまった場合は先任を優先して上級指揮官とする様に。これで多少は軋轢を減らせる筈だ」

 

「了解しました。後続の陸軍師団は何時頃到着しますか?」

 

「予定通りだ。それまでは46歩兵師団に頑張って貰うしかない。到着したら46歩兵師団を一度後退させて再編を行う。本土に帰せる程の余裕は無いし兵力不足を何としても補うのに被害が大きいからと退かせるわけにもいかない」

 

「承知しております。それでは、これからの空中投下による補給任務計画を策定してまいりますので失礼します」

 

そう言うと作戦参謀や次席参謀は艦橋から降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

自室に飛龍と共に戻り椅子に座ると、俺の口からは大きなため息と共に自責の言葉が漏れた。

 

「はぁ……俺は、前線将兵からすると無能な指揮官なのだろうな」

 

「そんなこと無いよ。提督は自分が出来る事以上に頑張ってるでしょ?」

 

「だが、今やっている作戦は何だ?敵の想定戦力は12万、大して現在のこちらの戦力はたったの4万。敵の3分の1だぞ?それらも度重なる戦闘で大きな被害を受けて壊滅寸前。前線へは空中投下でなければ満足に補給を行えない。こんな作戦を中止する事も出来ずに続けている辺り、無能でないと言えるか?」

 

「でもそれは軍令部からの指示でしょ?提督はそれに従ってるだけだし、何よりも硫黄島を深海棲艦に奪われる訳には戦略上どうしても見逃せないんだから。それにこれ以上の好機は無いんだし」

 

「それも分かっているさ。だが、死んでいく兵士達を考えるとどうしてもやり切れない」

 

俺がそう言うと、飛龍は今度こそ何も言わなくなった。

代わりに座っている俺の頭を母親が子供にする様に頭を撫でた。

 

「提督はこの前も言ったけどちょっと気にしすぎだと思う。指揮官なんだからもっとどっしり構えてないと。参謀長達も心配してたよ?」

 

「そうか……迷惑掛けたな。いや、今更か」

 

「何言ってんの。提督の今までの苦労に比べたらなんてことは無いって。本心を少しは口に出した方が良いよ?その方がすっきりして以外と解決する事もあるかもしれないし」

 

「……そうだな。機会があったら頼むよ」

 

「ん、その時は抱き締めてあげる」

 

「いや、それは遠慮しておく」

 

「それじゃ、取り敢えず今は仮眠をちゃんと取る事。すっごく疲れてる顔してるから」

 

「あぁ、分かった。4時間後に起こしてくれ」

 

「りょーかい。それじゃぁね」

 

そう言うと飛龍は俺の部屋から出て行った。

 

全く、情けない事だ。

部下に色々と気を遣わせた挙句に心配まで掛けた。

 

指揮官としては、碌でも無い奴なんだろうがそれでも皆付いて来てくれている。

 

 

いや、やめだやめだ。

これ以上ネガティブ思考をするのは止そう。

 

兎に角、戦いはまだ続くのだから仮眠を取らなければな。

また怒られる。

 

 

 

そう思いながら、俺はベットに潜り込んで目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 










▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。