暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第45話

 

 

 

 

 

 

 

沖縄本島で、深海棲艦の攻撃に遭ってから3週間が過ぎた。

だが今のところ、どの方面からも敵の艦隊と輸送船団の発見どころか攻撃があった、という情報すら入っていない。

ただ、慢性的に各方面への深海棲艦の圧力が増えているのは確かだろう。

 

何せここに来て連中の通商破壊が激化、今までは護衛艦隊の働きもあって被害は相当抑えられていたのだが、南方方面だけで毎月20隻程の撃沈、撃破と言った損害を出し始めている。

 

しかも潜水艦隊だけでなく戦艦を主力としてそこに航空援護用の空母を4隻程度含めた洋上打撃艦隊も進出してきていると言う情報も入ってきており、段々と手に負えなくなってきている。

まだまだ深海棲艦の奴らは本気では無かった、という事だ。

 

これにより、石油はまだしもそれ以外の資源、特に航空機生産や艦艇の修理、主砲身の製造に必要不可欠なボーキサイト、クロム、ニッケルなどの希少鉱物の輸送に不安が出始めている。

備蓄分があるとは言っても、僅か3年分だし大規模作戦によって艦載機を消耗してしまうと3年分も無い、と言うのが現実だ。

考えてみてほしい。

 

現状、護衛艦隊を合わせて1000機を超える艦載機を保有し、尚且つ各方面や日本本土の陸海軍航空隊の総数を合わせると10000機に達する。

その艦載機1000機分を失ったと考えると、消費するボーキサイトや各種希少鉱物資源の量はとんでもない量になる。

 

現在艦載機の主力である烈風で考えると、自重だけで3000kg以上になるから、この重さ全てにジュラルミンを使用していると考えよう。

本当は各種装備でまったく違ったりするのだが今回は解りやすくするために、と言う事だ。

 

ボーキサイトには、おおよそ52ないし57%の酸化アルミニウムを含まれる。

正確にはボーキサイトは岩石であって鉱物ではないのだがその縁の説明は関係ないのですっ飛ばすことにしよう。

 

単純計算で1kgのボーキサイトに520gの酸化アルミニウムが含まれているとしよう。

本来ならば精錬などを行った上で酸化状態を還元させたりするのだが、そうすると話が小難しくなってくる為に、還元した時の酸素が無くなった時の重量と精錬を行った時になくなる不純物の重量も込みで計算をすることにする。

 

烈風の重量は3100kgなので、それを満たすには1kg辺り500gの含有量で考えたとしても6.2tのボーキサイトが必要になってくる。

とすると、1000機分の艦載機を揃えるのに、6200t。

 

これに加えて超々ジュラルミンに合成する為に銅、亜鉛、マグネシウムなどの金属、クロムニッケルコバルトといった希少金属も合わせると、どう考えたって3年分もあるわけがない。

 

しかも母艦航空隊だけでなく各地の陸海軍航空隊の分も含めるとその数字は到底、現実的なものでは無い。

 

 

石油に関しては、現状日本国内でも生産されているからまだ多少なりとも自活出来る。

意外と知られていないことだが、日本にも油田が存在する。

 

日本国内で石油を生産しているのは少ないので知らないのも無理はない。

なぜ知られていないのか、と言うと産出量そのものが到底ではないがこの戦争以前の日本国内での需要量を満たせるだけのものでは無いからだ。

ただ、それでも日本が資源地帯を失ったあとでも戦い続けられたのはこの2箇所の油田によるところが大きい。

だが、燃料があったとしても航空機を作るための資材が無かったのだが。

 

 

日本国内の油田全ての年間算出量54.6万キロリットル、表現を変えれば5億4600万リットル。

仮に自動車1台あたりの満タン量を50リットル、原油から精製されるガソリンの割合を3割とすると約328万台の自動車を満タンにさせるだけのガソリンが供給できることになる。

正確には原油からガソリン・重油などさまざまな石油派生物を精製する際において、原油の種類によって精製比率が異なるので一概には言えないが、大体こんなものだろうと思ってくれればよい。

 

これを見るに、日本国内の産出量だけでも賄えるのでは?と思うかもしれないがそんなことは全くない。

国内生産原油量と輸入原油量のグラフというものがある。

あくまでも、深海棲艦との戦争になる前のものだが、グラフを見ると国内生産量原油量と書いてあるのに何処にもそんなグラフが見当たらない。

 

これはどういうわけか。

記載のし忘れでもなんでもない。

というとグラフを大きく引き伸ばしてみるとその答えがわかる。

 

というのも、縦軸の区切り値がグラフと数ケタ違うこと。あまりにも国産と輸入量の差が大き過ぎ、通常、教科書などに載るサイズでは「国内生産」分がグラフ上に反映されなかった、見えないほど小さいと言うのが実情なのだ。

 

このグラフを縦に引き延ばしてようやく、ほんのわずかにグラフ上に「国内生産」が現れる。それでもまだまだ小さくて見辛いものだ。いかに日本が大量の原油を輸入していたか、そして国産原油量だけでは到底足りないかの実情が分かる。無論ガソリンだけが原油の使い道では無く、多様な方面に使われるので当然、必要な量も増える。

 

艦艇に必要な重油、航空機用燃料、車用燃料、飛行場修理用のアスファルトなどなど。

これら全てを合わせて必要量を算出すると1年間の国内生産分の数十倍、数百倍の値になるのが現実なのだ。

艦隊を作戦行動出来るだけの燃料を集めるのに20年30年掛かっていたらその間に人類は滅亡だ。

 

そうならない為に南方の資源地帯を解放したのだが、通商破壊作戦によって資源輸送に大きな影が見え始めている。

元々、被害はあったしそのために護衛艦隊を就けていたのだがそれでは輸送船団を守り切ることが難しくなっているのだ。

 

 

これに対する対抗策としては、まず徹底的に敵艦隊の駆逐を進める、というのが真っ先に思い浮かぶ。

だが、洋上を動き回って敵艦隊を探し、見つける度に攻撃に向かうと言うのはあまりにも効率が悪い。

 

無駄に燃料を消費し、兵達の士気を下げるだけで実際に得られる戦果は少ないだろう。

 

 

となれば他にどんな手段があるのか?

 

答えは敵艦隊の根拠地、もしくは通商破壊艦隊の前進基地を叩けばいい。

 

あまりにも被害が拡大していることから潜水艦隊とおよび連山による高高度偵察によって南方方面の敵艦隊前進基地を探していた。

それによるとどうやら敵通商破壊艦隊は、オーストラリアにあるバン・ディーメン湾に前進基地と根拠地を置いていることが分かった。

 

ここはティウィ諸島とコーバーグ半島に周囲を囲まれており、尚且つ付近にビーグル湾も存在する。

水深も適度に浅く、大型艦艇の停泊も可能だ。詳細な偵察結果は本日行われる連山による高高度航空偵察任務によって判明するだろうが、ここを叩けば少なくとも南部オーストラリアには艦隊が駐留することができる場所がカーペンタリア湾しか無くなる。

だがここは潜水艦隊の偵察によって、少なくとも大規模な艦隊が停泊、駐留出来るほどの大規模港湾施設が整備されておらず、精々が軽巡や駆逐艦からなる警備艦隊が駐留出来る程度。重巡ぐらいならば停泊、駐留出来るかもしれないが大型艦艇である戦艦や空母は無理だろう、との結論が出ている。

それに航空隊の数も十分ではないし、何せ東西の長さは湾口において590㎞、最大となる南緯15°付近では675㎞であって、湾口から湾奥までの長さはおよそ700㎞である。かなり面積が広いから攻め込まれた時に共同作戦を取るとなると、洋上航法に慣れていない陸軍の航空隊では如何な深海棲艦と言えども梃子摺るだろう。

ここを整備するならばニューギニアのラエやラバウルに根拠地を置いたほうがいい。

そちらならばすでに設備も整っているし強力な航空隊の援護もある。

 

 

それを考えると、最低でも1000km以上は敵艦隊の前進基地が後退することになる。

1000kmと言うと、18ノットで航行したとして1週間程度は掛かる距離だ。それだけの期間があれば、こちらだって十分に迎撃の準備を整えられるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、高高度偵察によってバン・ディーメン湾が敵通商破壊艦隊の泊地であることが確認された。

 

これによって、軍令部はバン・ディーメン湾と敵通商破壊艦隊撃滅を行うべく作戦計画を立案。

 

作戦実施期間は7月24日に攻撃開始とされた。

今回は当然であるが上陸作戦ではない。

 

作戦の段階としては艦隊による攻撃の前にカリマンタン島に前進している陸軍の連山装備の第5航空師団以下が爆撃を行うことになっている。

 

陸軍の連山はもっぱら前線に配備されており敵飛行場に対する爆撃などを行い、何かしらの上陸作戦がある場合は爆撃支援を行う。海軍の連山は日本本土に配備、本土防衛を担う。

 

と以上のように役割分担をしているのだ。

これには海軍としては母艦航空隊や震電および搭乗員の補充や訓練で精一杯であり、出来るだけ連山を失ってそちらにリソースを割きたくないと言う考えがある。

 

この点に関しては陸軍も空母を含む友軍艦隊の支援がなければ敵からの攻撃を跳ね返せず、攻撃における最尖兵がひつようであることもわかっていた。だから海軍はとにかく母艦航空隊をしっかり訓練して揃えて、その分各方面の防空に関しては陸軍が受け持ちましょう、と言うわけだ。

 

だが日本本土までは流石に手が回らないから日本本土防空に関しては海軍に任せる、となっている。

 

 

 

 

 

 

「金剛、艦隊出撃準備。敵泊地を叩く」

 

「ハイ、分かりマシタ」

 

秘書艦である金剛に艦隊の出撃準備を下令、母艦航空隊を飛行場から空母に呼び戻し、燃料の足りない艦には燃料を積み込んでいき、食糧、水、弾薬も次々と積み込まれ始める。

 

 

 

 

3日ほど出撃準備を行い、途中駆逐艦など燃料に心配が出てくるであろう艦の為に給油艦4隻に加えてタンカー4隻を伴う事になっている。

これで少なくとも1ヶ月程度の連続した航海が可能だ。

 

「テイトク、出撃準備全部整ったヨ」

 

「ん、ありがとう。それじゃぁ金剛も艦に戻って出撃命令を待つように」

 

「ハイ」

 

金剛と別れ、俺は飛龍に座上する為に港に出て内火艇に乗り込む。

 

 

 

飛龍に乗り込むと、飛龍と艦長、それに参謀長達が出迎えてくれる。

 

「なんだか提督が私に乗るのって久々かも」

 

「視察任務じゃ隼鷹に乗っていたからな」

 

会話をしながら全員で艦橋に上がる。

そしていつも通り、椅子に座る。

 

「提督、艦隊出撃準備整いました。いつでも出航可能です」

 

「分かった。艦隊抜錨、出撃する」

 

「はっ、艦隊抜錨します」

 

命令が伝えられ、飛龍を皮切りに次々と錨が揚げられていく。

 

「艦隊速力18ノット、三航戦は前路哨戒に就け」

 

ゆっくりと艦隊が動き出すと、まず三航戦が前路哨戒の為に前進していく。

それに二航戦、一航戦が続く。

 

 

「艦隊、豊後水道通過しました」

 

「二、三航戦に艦隊集合、輪形陣形成を送れ」

 

「はっ」

 

豊後水道を抜けて、直ぐに輪形陣を形成させる。

 

 

 

 

そのまま艦隊は一路、敵通商破壊艦隊と泊地を叩く為に進んだ。

 

 

 

 

 

 

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