暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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北海道防衛戦
第46話


艦隊がを呉を発ってから既に十日が経っていた。

カリマンタン島のバリクパパン湾に入港、一度休息を挟んでいる。

この間に給油艦やタンカーから燃料に不安がある艦は燃料補給を済ませ、次いで食糧などの積み込みも済ませておく。

これから戦闘を行うので各艦各部の点検もこの機会に入念に行っている。

今の所、これと言って問題は起きていない。

 

今回の作戦には第一護衛艦隊は参加しておらず、通常通りに輸送船団護衛任務に就いている。

バリクパパン湾停泊三日目の夜、艦隊は最後の出撃準備を整えている最中で、俺は飛龍艦内会議室で飛龍や各艦の艦娘、艦隊司令部要員の面々達と最後の作戦詳細を詰めている時だった。

 

突然、慌ただしい足音と共に、通信科の当直将校の少尉が顔を真っ青に青ざめて駆け込んできた。

この時、飛龍通信科の科長である石木少佐は艦橋で作戦詳細を共に詰めているところだった。午後一時頃から始められたこの会議は既に9時間以上にも及んおり、10時を過ぎていたが、未だに会議終わる気配は無い。

それでも足りない部分などを徹底的に洗い出し、各科の科長などから一つ一つのその時その時の状況に応じた対応の説明などを要求されその説明、作戦の微修正などを行っていたらこの時間だ。

 

各科の科長は、基本的には少佐、もしくは人員などの確保が難しい場合や科長の戦傷、戦死などの状況であれば大尉、中佐が務めるということになっている。

 

中佐という階級は、基本的には大型艦であれば副長を務めている階級で、科長にも中佐がいると、指揮系統に混乱が生じる恐れがある。

基本は先任の指揮権が優先されるのだが、それでも軍隊と言う組織において階級というものは絶対であるから、出来るだけ違う階級である方が良いのだ。

そんな事情で科長は少佐が基本は務めるという事になっている。

 

 

そして、その科長がなんらかの事情、例えば上陸中であったり休息中であったりした場合は当直将校である大尉や中尉と言った階級のものが務める。

誰だって、不眠不休で延々と働けるわけでは無いのだから当然だ。

 

俺や艦娘、艦の艦長、艦隊司令部要員などは基本的に全員で交代制の当直を行っている。

だから俺が当直に就く事も極々稀ではあるがある事だ。

本来であれば、俺は当直に就かなくていいと言われているのだが、それでも偶には良いだろう、と無理を言ってやらせてもらっている。まぁそういう時は大体仕事をなんとしてでも進めたい時なのだが。

 

 

それはともかく、通信科の当直将校であった少尉はかなり慌てた様子で敬礼をして連絡事項があるのだろう、報告を始めた。

 

「報告します!本日日本時間午後11時30分に知床岬より270海里(凡そ500km)の地点に深海棲艦艦隊を発見!規模、戦艦10、空母12、巡洋艦20、他随伴艦多数!大規模な輸送船団を後方に伴う、との事!」

 

その報告が上げられた瞬間、会議室内は大混乱となった。

それはそうだ、深海棲艦の侵攻は常に南方からだったのだから俺を含めて誰一人として予想していない事態だ。

 

確かに北方にも棲巣は確認されていたがこちらに対する活動もまるで無く、こちらからの侵攻なんて想定もしていなかった。

北方方面の活動と言えば精々アラスカやカナダに対する圧力や攻勢だったし南方方面の想定される敵総戦力と比べても1/5程度であると見積もられていた。

しかしながら実際はどうだ?

 

しかも北海道に配備されているのは僅か4個歩兵師団のみで、装備も未だ歩兵、機甲科、砲兵科に至るまで旧式装備である三十八式歩兵銃や八九式中戦車など。

 

南方、南西諸島方面の部隊や次の奪還作戦に投入する為の師団や陸戦隊、作戦に参加して統合された師団の再編などにその装備の殆どを回してしまい、残った数少ない新装備も九州や四国、中国、関西、東海地方を中心に装備を送ってしまったために北海道には全く送られていない。

唯一、陸海軍の航空隊は疾風や紫電改を装備しているが数は本州や南方方面などと比べると少なく、合計しても500機に足りるかどうか。到底敵陸上部隊どころか敵艦載機を相手取るので精一杯で敵の爆撃機などの足を止めることは出来ないだろう、

防御陣地も資材や工作機械を南方、南西諸島に送り込んでしまっているために数が全くと言っていいほど無いから遅々として進んでいない。

 

 

言い訳のように、いや、言い訳になってしまうが説明させてもらうと本来であれば、北海道に関してはそれでも問題はなかったのだ。

何せ深海棲艦の攻勢は南方方面からである、と想定していたし、こちらも資源問題をなんとしてでも解決するために、資源を確保しなければならなかったからそちらへ兵力の殆どを投入していた。

奪還にも成功し、その後の防衛優先順位も明らかに高い。

 

そもそもの話、北海道の要塞化は後回しの後回しで資材を優先すべき方面が他にあるしで計画そのものがかなり長期間に及ぶように計画されていた。

何せ、こちらは南方方面から南西諸島へと攻勢を仕掛けて来るものだと想定していたし、連日の敵機による攻撃などは明らかに激しい。

それに比べて北海道はどうだ?

軍需工場など全くと言っていいほど存在していないから空襲の被害も受けておらず、殆ど無傷。

工場があるとすれば、北海道で生産された食糧の加工工場程度で戦時だから平和とはいかないが殆ど唯一の疎開先でもある。

爆撃に晒されることも少ないし、今まで侵攻作戦の兆候すら無かった。

通信量の増加なども確認されておらず、部隊の大規模な移動も確認されていない。

 

冬は海が荒れるし流氷もある。

上陸作戦を実施して兵站を維持し続けるのは到底、現実的なものでは無い。

深海棲艦の連中だって、飯が無ければ餓死するし、燃料が無ければ車も戦車も飛行機も動かせない。

 

だからそんな補給面においてあまりにも負担が大きすぎる作戦なんて我々からしたら実施するだけ兵力の無駄。

あらゆる理由や事象に基づいて考えた結果、北方方面からの侵攻は無いと考えるのが普通なのだ。

寧ろこれで侵攻作戦があるだなんて言い始めたら、頭がおかしい奴、というレッテルを貼られる。

 

だからこそ北方方面からの侵攻作戦なんて全く想定していなかった。

だが、それが完全に裏目に出てしまっている。

 

そりゃ誰だって混乱するだろう。

 

「諸君!一旦落ち着け!」

 

俺が大声で落ち着きを促すと、どうにかこうにか全員が席に着くことができた。

それでもいまだ混乱は収まっていないのか誰も彼もが落ち着き無い。

 

「通信長、軍令部の中城大将達はなんと言ってきている?」

 

「はっ、第一機動艦隊ハ急ギ本土ヘ戻リ敵輸送船団ヲ撃滅セヨ、との事です」

 

「だろうな。北海道が陥されれば我々がここにいる意味が丸っ切り無くなってしまう」

 

「提督、ではどうするのですか?」

 

「艦隊、進路反転。日本本土へ戻るぞ。停泊期間を四日から八日に延長、各部の点検を入念にしておくように。各艦の整備点検が終了次第、急ぎ日本へ戻る」

 

「今すぐでは無いのですか!?」

 

「日本に戻ったら呉に停泊している余裕など無い。恐らくは、敵艦隊とすぐさま戦闘になるだろうからそれを考えると今ここで出来るだけ万全の状態にし、敵艦隊との決戦に挑むべきだ、と私は考えたのだが」

 

「……分かりました。すぐに各艦に伝えます」

 

「頼んだぞ」

 

とにかく、指示を飛ばす。

 

まず、先ほども言ったが今すぐに出航はしない。

敵艦隊は輸送船団を守るために必ず出て来るだろうから、戦闘はどうやっても避けられない。

敵艦隊と戦闘をせずに撃滅するなど、魔法でも使わなければ無理だ。

 

そうなると、呉に停泊しているところを狙われては堪ったものではない。

ならばここで体勢を整えて行くべきなのだ。

 

更に言ってしまえば、上陸を許した場合、北海道の4個師団では到底守りきれるとは思えない。

そうなると増援部隊をも送り込まねばならないために、その増援部隊を載せた輸送船団の護衛には第一護衛艦隊だけでは手が足りないだろう。

そう考えると、今ここで日本に戻ってもなんら良い事は無いのだ。

 

出来れば、敵の上陸をなんとかして防いでくれればまだ勝機はある。だがどうやってもそれは無理だろう。

北海道全域の航空隊だけでは早々に壊滅させられるのがオチだろうし、本州の航空隊を集められるだけ集めて送り込んでも、震電装備の部隊ならまだしも疾風や紫電改を装備した航空隊は母艦航空隊や南方方面ほどの練度も無い。

陸軍だって、圧倒的な数の差の前では碌な防御陣地も無いのだから成す術もない。しかも装備は未だ更新されていないときた。これでは、どうやっても防衛出来るわけがない。

 

それならば、早々に水際での防衛を諦めるほかない。

島嶼帯の防衛とは違って北海道は広大な土地を有しているから、水際での防衛が失敗してしまうと敵の大部隊が押し寄せて来ることになる。

そうなれば、たった8万の兵力では深海棲艦が送り込んでくる兵力には対抗出来ない。

 

「北海道の地図はあるか?」

 

「あります」

 

「今すぐに持ってきてくれ」

 

航海科の科長がすぐさま北海道全域の地図を持って駆けてくる。

 

「お待たせしました」

 

「ありがとう。諸君、地図が小さいから申し訳ないが出来るだけ寄って見て欲しい」

 

俺がそう言うと、参謀長や各艦の艦長達が俺の目の前に広げた1m四方の地図を一斉に覗き込む。

 

「言い辛いことだが、恐らく水際での防衛は間違い無く失敗するだろう。航空隊も倍の数で来られては太刀打ちできまい」

 

「ですが、そうなるとどうやって北海道を守ると言うのですか?」

 

「敵が上陸してきた北海道東部は、平原が広がっていて兵力差の観点から見て我々が圧倒的に不利だ。そこでこの北見山地と日高山脈で防衛線を構築しようと思う。ここならば高台から撃ち下ろせるし、兵力差も完全にとは行かないが多少なりとも埋められるだろう。ここで防衛線を形成し、増援部隊の到着と体制を整えたら攻勢に出る」

 

「ですが、民間人はどうなさるおつもりですか?」

 

「4個師団の内、東部の防衛を担当している師団に殿をさせる。この師団が耐えている間に無茶は承知の上でなんとしてでも民間人を北海道西部に逃す。幸いにも収穫した作物を輸送する為の鉄道が各地に敷設されているから撤退は速やかに行える。輸送船団は行きは物資や兵力を輸送船で送り込み、帰りは民間人を載せて函館や室蘭から本州に逃す」

 

「それではその師団は見捨てる、と言うことではありませんか!」

 

「その通りだ」

 

「そんな……!」

 

「言いたい事は分かる。諸君の気持ちもよく分かる。だが全ての師団を防衛線まで一斉に後退させてしまっては敵軍は撤退速度以上の速度で追い付き、民間人諸共皆殺しにされてしまうのだ。それだけは絶対に避けねばならん。民間人を死なせてはならないのもそうだが、何よりも北海道を守る為には、こうするしかないのだ」

 

「ならば今すぐにでも艦隊を出航させて敵艦隊を撃滅すれば!」

 

「敵が、それまで攻撃を待ってくれると思うか?寧ろ我々が居ない時に仕掛けて来たのだから航空隊を打ち負かして嬉々として上陸して来るに決まっている。もう既に、我々には時間が無いのだ。今ならばまだ夜間だから敵機の襲来も無く撤退の際の危険も少なくて済む。だが上陸されてからでは遅い。今すぐにでも手を打たなければならないのだ。どうか分かってくれ」

 

俺がそう説得すると、意見して来た大佐は悔しそうに拳を握りしめ歯を食いしばり、震える小さな声で「分かりました」と呟いた。

それは此処にいる全員の気持ちを代弁したかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、すぐさま民間人と殿の第96師団を除いた3個師団は防衛線を構築する北見山地、日高山脈まで撤退するように命令。即座に撤退を開始。

 

第一護衛艦隊には、敵艦隊への攻撃はせずに待機するように伝えた。

まず増援部隊として送られることが決定したのは、

 

 

沖縄本島駐留  

ティーガー1重戦車装備第35戦車隊15両(5両1小隊×3小隊)

 

富士演習場駐屯 

Ⅴ号パンター戦車装備の第2実験戦車大隊30両(15両1中隊×2中隊)

 

新田飛行場駐屯 

Bf-109G型装備陸軍第244飛行戦隊72機(12機1中隊×6中隊)

 

熊谷飛行場駐屯

Fw-190A-7型装備第245飛行戦隊72機(同上)

 

八日市飛行場駐屯

地上襲撃型のBf110装備第1航空襲撃戦闘団48機(12機1中隊×4中隊)

 

 

そして輸送船に乗り込んでいたドイツ軍歩兵を中心に構成された富士演習場駐屯第1歩兵教導旅団(旧名ドイツ国防軍第356歩兵連隊)だ。

 

 

第35特別戦車隊は以前説明したので投入理由と隊長名のみ記載で残りは割愛する。

投入理由としてはまず、北海道には深海棲艦の機甲部隊に対抗しうる対戦車装備は殆ど無く、辛うじて少数が配備されているパンツァーファウストやパンツァーシュレック程度であり、対戦車砲なども装備はしているものの、配備数は各師団に数門ずつと言うかなり絶望的な状況なのだ。

しかも戦車に限ってはまともに対抗出来るほどの戦力では無く、新砲塔チハもあるにはあるがやはり旧砲塔の方が多く、そもそも多いと言っても北海道全体でたったの27両だけと言う有様だ。対歩兵戦闘に関していえばまだ十分以上に活躍できるのだろうが、流石に対戦車戦に投入するのは無理がある。

 

そこで、機甲戦力をどうにかして補うべく戦力抽出を考えると、地形的に本来であれば不向きなティーガーの名前が上がる。

と言うのも、以前にも説明したが島嶼帯での戦闘と言うのは欧州などの戦闘と違って交戦距離が極端に短い。そもそも戦っている場所の面積が小さいのだからそうなるのは当然なわけなのだが、これが北海道になると丸っ切り違って来る。

北海道は面積自体が大きく、本州のように山脈などが連なっていて平地が少ないわけでも無い。

北海道は本州と違って山越えをしなければ別方面に展開できない、と言うことがないのだ。

殆どの場合、戦車でも容易とは行かないが無理だ、と言うほどの場所を通らずともどこかしらの平地などに展開することが出来る。

しかも、深海棲艦の戦車には少なくとも正面からであれば撃破される心配が無いレベルの強力な戦車であるし、それが増援として送られて来た、となったら戦意も大きく上がることになるだろう。

そのような理由で転用、投入が決まったのだ。

 

更に、随伴歩兵用として15両のホハ(5両1小隊×3小隊)と150名の歩兵が行動を共にする。

専属の整備補給大隊も後方で待機、修理などを行えるようになっている。

 

隊長はツェーザル・ベルガー大佐。

 

 

 

それぞれの部隊を説明する。

まず、第2実験戦車大隊は、簡単に言えば戦車の性能試験などを行う部隊だ。

 

まず、パンター戦車は設計図にのみ記されていただけで実物が直接送り届けられて来た訳では無い。

陸海軍の技術廠は取り敢えず、設計図のみの兵器を試作を行い、完成した物を問題点を洗い出し、改良を加え続けた。

そして合同艦隊救出から5年後にパンター戦車は少なくともその時点であげられる問題点を全て解決。

そしてその段階で既に合計で6両ほどを試作車両として生産していた。

そこでパンター戦車をそのままにしておくのも勿体無いから取り敢えず部隊として編成してしまおう、と言う事でこの部隊が編成された。

当初、6両だけで編成される筈だったのだが、それでは部隊として碌な機能は無く万が一戦線投入をするとなった場合に不都合である、となった。

 

結果としてティーガー同様、大規模な生産は行わずこの部隊に行き渡らせるだけの生産を行う、と決定された。

結果的にどれほどの部隊規模にするかはかなり紆余曲折があったが取り敢えず、1個中隊分を生産しておこう、となった。

 

そしてパンターを富士演習場や平地で運用試験した結果、走攻守全てがバランス良く纏まっており、しかも足回りの問題も度重なる改良によって何ら問題無く運用出来る様になっていた。

 

しかしながら、島嶼帯の戦闘では幾ら脚が速くともそれを活かせるだけの場が無く、ならば大規模生産を行い始めて生産が軌道に乗り始めていた4号中戦車でも十分、と判断され、大隊規模になると流石に部品などの生産量も増えてしまうし、追加で生産するとしても1個中隊が限度だろう、と言う事で設立された部隊だ。

 

元々、説明にある通り開発当初は足回りなどに問題はあったが長期間戦線に投入されることも無く只々問題のある箇所の改善や改良を行なって来た結果、足回りのトラブルは大きく改善。

特になんら問題も無く運用する事に出来る。

稼働率は整備兵の練度向上や部品の高品質化などもあって常時8割を超える。

いざとなれば全車両を問題無く動かせるというレベルだ。

ただ、第35戦車隊にも言えることだが絶対数が少なく稼働率で補わなければならないので車両そのものも各所の部品などの消耗も激しいという面もある。

 

投入される理由としては第35戦車隊と同じだ。

防御力に関して言えば寧ろこちらのパンターの方が傾斜装甲を有しているから高いかもしれない。

更に随伴歩兵部隊として各戦車に10名づつ、計300名がホハに分譲。

こちらも専属の整備補給大隊が就いており、後方での修理などが容易だ。

 

どちらの戦車部隊も、機甲師団を送り込める時間的余裕は無いのでとにかく少数でもいいから機甲戦力を補うべく送り込まれる。

隊長はマルクス・ランゲ大佐。

 

 

 

第244飛行戦隊はかなり前に説明した事があるだろう。

遊ばせておく兵力は無い、と言う事で戦線投入された部隊だ。

ドイツのBf-109戦闘機を元々装備していた部隊で、各種改良を重ねたりエンジンを馬力の強いものに換装したりとしてきた。

高高度性能が日本の戦闘機などと比べると高く震電が完成するまではB-29迎撃の任務を行なっていた部隊でもある。

投入理由は、この戦隊はB-29の爆撃によって出撃待機命令中に爆撃を受け、それによって戦隊の72機の内の13機を喪失。搭乗員も7人が戦死していた。

その為に新しく配属された搭乗員の錬成などを行っていてつい二週間ほど前に訓練終了、実戦投入可能、との報告を受け取ったのだ。

しかも、陸軍としては機体の生産数が少ないから余り消耗させたく無いと言う理由でB-29の迎撃すら震電が投入されてからはまるで実戦を経験させて貰えなかった。

それでも練度自体はしっかりと維持しており、少ないながらも実戦は経験している。度重なる戦闘や南方方面の部隊への補充で引き抜かれたりして人員に欠がある部隊よりも纏まった数を送ることが出来ると言うことで今回実戦投入が決まった。

現状補充人員待ちの日本本土各地の航空隊を引き抜くよりもこちらの方が部隊として連携も取れるだろうと言う事だ。

隊長はカール・ベッカー大佐。

 

 

 

第245飛行戦隊も244戦隊と同様の経緯で設立された。

投入理由も同じだ。

Bf-109と比べると確かに高高度性能は劣っているが、中低高度においては高性能だ。

反面、Bf-109は高高度性能は高いのに対し中抵高度での性能が低いという問題があった。

 

Fw-190は旋回性能も日本軍機と比べると劣りはするが高く、深海棲艦機相手ならば問題無い。

日本軍機の旋回性能が良すぎるだけでFw-190も高性能に分類される。

今回の北海道防衛においては敵艦載機と爆撃機の両方を相手取る事になると予想出来る。

そうなると244戦隊だけを送り込んでも中低高度における艦載機との戦闘は疾風や紫電改が居たとしても244戦隊単体で考えた時に不利になってしまう。

 

ならばそれを補えるこの部隊も送り込もう、と言う訳だ。

敵爆撃機よりも敵艦載機などを相手取る、言わば制空隊だ。

隊長はヴァルター・ヴァーグナー大佐。

 

 

 

第1航空襲撃戦闘団は、Bf-110を装備している、対地支援を主任務とした部隊だ。

元々、Bf-110は双発重戦闘機だ。主な任務は敵爆撃機の迎撃で欧州ではB-17などが主な迎撃目標であったのに対し、日本本土ではB-29という超高高度から飛来する超重爆撃機が相手だ。

流石にそこまでの高高度性能は無く、迎撃に上がったとしてもB-29の防御機銃座から滅多撃ちにされることは目に見えていた。しかも地上襲撃型ということもあって敵爆撃機迎撃には向かない。

 

地上襲撃型、と銘打っているだけあって対地攻撃能力は陸海軍が保有しているどんな爆撃機よりも戦闘機よりも高かった。

連山は爆弾搭載量こそ多いが、地上から近距離の場所で爆撃を行おうものなら的が大きいから簡単に対空砲火の餌食になってしまう。

だがBf-110は双発ではあるが機体は小さく、爆弾などの搭載量もそこそこ。

主翼下に爆弾を懸架する為のラックが50番用2つと60番4発の搭載が可能で、この爆弾は全てタ弾となる。胴体部にも25番4発もしくは50番を3発搭載出来る搭載能力を有しており、攻撃能力は相当高い。

隊長はディートリヒ・アルブレヒト大佐。

 

 

 

第1歩兵教導旅団は、Stg-44やMP-40などのドイツ軍由来の装備の扱い方を教える部隊だ。

歩兵旅団と銘打って入るが、砲兵なども含まれる為に混成旅団の方が表し方としては正しい。

規模は6500人で、その内2000人ほどが元ドイツ軍人で構成されており普段は各種銃火器の扱いなどを下士官、士官問わずに教えている。

構成としては、機械化歩兵部隊で部隊にはケッテンクラートや一式半装軌装甲兵車(通称ホハ)、ハノマーク兵員輸送車などがごちゃ混ぜ感はあるが多数装備されており、砲火力も88mm対戦車砲を4門1小隊×4で16門、それを連隊ごとに1小隊ずつ担当している。

対空機関砲にベルト給弾方式に改造した20mm4連装機関砲を各連隊に20門装備。

歩兵装備もStg-44やMP-40を主装備として個人対戦車火器もパンツァーファウスト、パンツァーシュレックをそれぞれどちらかを分隊ごとに2門装備している。

 

おそらく、兵器の質や兵員の練度を見ても間違いなく日本で最高レベルだろう。

元ドイツ軍人、と言う表記については今は日本陸軍に籍を置いているので、元、となっている。

隊長はクルト・ミュラー少将。

 

 

 

以上のようになっている。

本当ならばスツーカG型装備第2航空襲撃戦闘団も戦線投入してはどうか?という話が挙がっていたのだが、スツーカは防御力、航続力、空戦能力、速度など全てにおいてお世辞にも高いとは言えないレベルで、制空権を確保している状況でなければ敵戦闘機に容易に撃墜されてしまうことが知られていた。

北海道上空の制空権はどう考えても深海棲艦側の物となるのは明らかであり、そんなところに投入してしまっては無駄に消耗するだけだ。

最悪、1機残らず撃墜されてしまうかもしれない。

なので現時点での投入は見送られた。

 

 

第二陣にはイギリスのスピットファイア、ハリケーンやイタリアのG.55チェンタウロやMC.205を装備した戦闘機部隊を主戦力として送り込み、防御陣地構築の為の資材と燃料弾薬食料水を送り込む。次に送り込むための師団の為の弾薬なども纏めて送り込んでしまう手筈だ。間に合えば1個歩兵師団も送り込む予定なのでここまで持たせることが出来れば勝機は十分以上にあるだろう。

 

第三陣で反抗戦力の要となる5個歩兵師団と砲兵、機甲師団をそれぞれ1個づつ送り込む。

 

歩兵師団はStg44を主装備としており、個人対戦車火器なども充実させている。

砲兵師団にはラ式15cm榴弾砲を主力装備としていて、牽引用にホハを多数装備している。

機甲師団の主力戦車は4号中戦車H型で、そこに3号突撃砲などが組み込まれている。

 

 

 

これほど早く手筈を決められたのは艦隊司令部の参謀長達が居たからこそだ。

段階で分けて戦力を送り込む理由としては、まず輸送船の数が足りない。

資源輸送や、各方面に物資を送り込む必要もあるし、それらを全てカットして北海道に注力する事はできない。

 

でなければ兵士が飢えてしまうからだ。

そうなったら北海道を占領されるなんて事態よりもずっと不味いことになる。

今考えると、何故北海道に上陸して来たのか段々と分かって来る。

 

北海道は現状の日本の食糧生産の、米を除いたジャガイモなどの生産量がダントツで一位なのだ。

米はまだ日本各地で生産されているが、それ以外の農作物などはどうやったって大規模農業を行っている北海道の方が生産数は多い。

肉、魚に至っても生産数は圧倒的だ。

 

と言うことは、軍民問わずに日本は北海道という食糧生産地域に依存しているという事に他ならない。

その食料供給が途絶えてしまっては、2500万人の国民どころか軍に属する兵士達に満足に飯を食わせられなくなる。

そうなったら、幾ら戦略資源があろうと終わりだ。

以前にも話したが食事というものは、どんな戦果よりも戦意に直結するものだ。

例えば、我々は一日3食食べている。

これが一日2食や1食に減らされたと考えよう。

 

元々そういう生活をしていたという話は抜きにして、だ。

 

誰だってやる気は無くなるだろう。

しかも量だって満足では無いのだから、これが毎日命懸けの戦場である、ということを含めて考えても士気も戦意も軒並み急降下する。

 

 

 

 

北海道内での部隊や民間人の移動は、幸いにも鉄道が機能している為に迅速に行える。

これを活用しない理由は無い。

 

撤退命令から二日後、驚きの速さで軍民の撤退が完了。

殿として残った第96歩兵師団は防御陣地構築などの時間を出来うる限り稼ぐべく水際防衛を命令通り諦め、網走、斜里町を放棄。屈斜路湖南から雌阿寒岳、阿寒富士、旧阿寒摩周国立公園辺りで遅滞戦闘をするべく後退。

 

雌阿寒岳、阿寒富士、旧阿寒摩周国立公園の高地には数少ない重砲や迫撃砲などが運び込まれ、敵部隊を待ち構えた。

北海道東部の飛行場に展開する航空隊は南部の飛行場に後退。

96師団援護の為に戦闘準備を整えている。

 

沿岸部には敵の動向を探るべく少数精鋭の第544偵察中隊が身を潜めて随時報告を送る手筈だ。

敵の上陸が開始された場合、戦闘することなく96師団と合流、戦闘を行うように命令してある。

96師団が展開した場所に至るまでは出来る限り地雷や手榴弾を用いたブービートラップが少しでも敵の足を止めるために仕掛けられている。

 

 

 

 

 

 

敵艦隊発見から3日後の早朝、544偵察中隊から沿岸部に対する爆撃と敵艦による艦砲射撃が加えられた、という暗号文が各部隊に発せられた。

 

 

 

 

 

 

 

そして更に2日後。

 

「報告します!深海棲艦、北海道網走市、斜里町、摂津町、別海市に上陸を開始!規模は4個師団8万を超えると予想されます!」

 

艦隊が日本本土に向けて進路をとっている時、その報告が上がってきた。

遂に来たか!という思いで俺を含めて皆の顔に緊張が走る。

 

艦隊はこの4日後、沖縄本島に立ち寄り日本本土から派遣された101号型輸送艦10隻に載せられた第35戦車中隊と合流。

続いて2日後に四国沖で10隻の輸送船団と合流。その日の内に浜松沖で第2実験戦車大隊と第1歩兵教導旅団を載せた25隻の101号型輸送艦と合流、進路を北海道苫小牧港に向けた。

 

 

 

 

 

 

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