暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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今回は三人称視点です。






第48話

 

 

 

 

突如として始まった深海棲艦による北海道侵攻による戦闘は既に始まっていた。

 

空においての最初の戦闘が始まったのは、深海棲艦が発見されてから次の日の事である。

矛を交えたのは第244戦隊と第245戦隊だ。

増援部隊第一陣の飛行戦隊が先遣隊として送り込まれたのは、派遣が決定したその次の日の早朝のことで、まず戦闘を行なったのはこの増援飛行戦隊で、就いていた任務は撤退する民間人と3個師団の援護だった。

 

北海道そのものに駐屯していた陸海軍の航空隊は、未だ撤退が完了していない部隊も多く、この時は特に航空隊の戦闘機などでは無く各航空隊の整備部隊や補給部隊の撤退がまるで進んでいなかった。

何しろ移動手段が陸路か輸送機、輸送船に頼るしか無いのだ。

人だけならば徒歩でも問題無いのだが、撤退するにしても最低限、整備を行う上で必要な機材ぐらいは持って行かなければならない。

予備部品などは後々本土から運び込んで来れば良いが、整備機材までともなると幾らなんでも手間が掛かり過ぎる。

いや、迅速な撤退を、と命令されていたので整備機材の放棄もやむなしではあるだろう。

だが、これから予想される戦闘の事を考えると、整備機材どころか予備部品ですら放棄するのも惜しまれる事なのだ。

 

最低でもアリューシャン列島のどこかにあると想定した敵後方の物資集積所、後方拠点を艦隊が破壊しない限りは戦闘が続くと考えられるからだ。

合計期間を考えれば、最低でも3ヶ月以上。

霧の濃いアリューシャン列島を潜水艦で探さなければならないのに加えて、艦隊による爆撃、砲撃のどちらかを行うにしても濃霧との相談になるし天候によっては攻撃予定日を延期しなければならなくなる。

 

それらの事を考えると予備部品や予備のエンジンは放棄するとしても、整備機材だけは共に撤退しなければならない。

整備機材がなければ機体整備が出来ないし、そうなると撤退場所となる千歳飛行場などに元々駐屯している航空隊の整備部隊から機材を借り受けるしかない。

だがそうなると同時に整備を行える機体の数が必然的に大きく減少すると言う事になる。

それは稼働率の大幅な低下を招くと言うことになり、ただでさえ人類側は航空戦力も陸上戦力も少なく敵との戦力差が歴然なのに、下手に消耗してしまうとその差が更に広がることを意味する。

 

それを最低限に抑えるためにも、整備機材だけでも持って行かなければならない。

 

 

 

「急げぇ!撤退する鉄道は次と次で最後だぞ!」

 

「班長!こいつはどうしますか!?」

 

「予備部品は各中隊で2機分づつだけでいい!それ以外は全部放棄する爆弾で吹き飛ばす!飛行場の決められた場所に置いてこい!」

 

「班長!こいつも連れて行っていいすか!?」

 

「あぁ!?置いてくのが嫌ならお前ェが乗って連れていけ!お前に一番懐いてんだろ!」

 

「了解です!」

 

この中隊では、整備班長の下置いていくものと持っていくものを大急ぎで仕分けていた。

この時、北海道防衛司令部から

 

「予備部品などを2機分のみ持って撤退、それ以外は全て破壊せよ」

 

と命令が出ていた。

その命令に従い、各中隊は飛行場に隣接されている鉄道路線に到着した列車に積み込んでいた。

だが例外と言うのはどこにでもあるもので、女満別飛行場に駐屯していた航空隊は敵の上陸予想地点の海岸からたったの十数キロしか離れていないと、最も近い場所にあり取るもの取らず、兎に角載せられるものを列車に放り込み航空隊の全部隊と飛行場守備隊も弾薬なども個人で持てるだけ持って、食料も各人三日分のみを持っての後退となった。

 

この部隊も、近いと言うわけではなかったがそれでも一刻を争うと言うことで、今止まっている便と残り2本の便を残して最後だった。

 

まずこの便で整備機材と予備の部品やエンジン、物資、それとそれら機材や物資を管理する為の1個小隊分の整備部隊を出発させる。

そしてその次の便で全整備部隊と飛行場守備隊を乗せられるだけ乗せる。

最後の便で、放棄する機材や燃料弾薬を処理する為に残った飛行場守備隊を乗せていく。

 

機材の処理には、置いて行かざるを得ない爆弾や弾薬に燃料を掛けて火を放ち爆破、書類などは燃料を撒いて燃やすのだ。

その際に機材の破棄と同時に滑走路を使えなくするべくそこで爆破するのだ。

地下に設置してある燃料タンクなども同様だ。

 

爆弾は、戦闘機主体の部隊が多いからそこまでの数は無く、250kg爆弾が各飛行場に100発前後があるだけであった。

この数は空母一隻分の搭載量と同程度、と言えばそこまで多い数では無いと分かるだろう。

しかも一つの飛行場には幾つかの航空隊や飛行戦隊が一緒になって駐屯しているのだから、それぞれに振り分けられているのは精々が20発前後。紫電改は25番爆弾を2発づつ装備出来るので、10機分ほどの数しかそれぞれの航空隊には無いのだ。

 

それを、大量にある機材の爆破に使うのだから、余り多いとは言えない。

飛行場の規模にもよるが120機を超える航空機が駐屯している飛行場が殆どなのでそれらの予備部品だけでもとんでもない量だ。

 

 

 

「急げ!早く積み込みを終わらせろ!出発時刻まであと30分だぞ!」

 

「第313航空隊は1〜3号車まで!327航空隊は4〜6号車!330航空隊は7〜9号車!362航空隊は10〜13号車だ!ペイントしてあるとは言え、間違えるんじゃないぞ!」

 

「乗っていく奴は急げ!置いて行かれるな!」

 

「313航空隊準備完了!」

 

「313完了、了解!」

 

「327航空隊準備完了!」

 

「327完了、了解」

 

次々と部品などが積み込まれていき、完了次第同乗する整備小隊も乗っていく。

 

「全航空隊準備完了!よし、出発しろ!」

 

全航空隊の準備が完了し、そして鉄道が出発していく。

 

そのような光景が各飛行場で見られた。

 

 

 

 

 

 

話を戻して、一番最初の戦闘が起こったのは244飛行戦隊と245飛行戦隊が撤退する各歩兵師団や航空隊を載せた鉄道、それでも乗り切らなかった兵員は徒歩移動によって後退するので、それら部隊を掩護するべく上空を飛んでいた時の事だった。

 

会敵時244飛行戦隊は高高度を、245飛行戦隊は中低高度をカバーしていた。

 

『!!左前敵爆撃機!数70〜80!戦闘機もいます!30機前後!』

 

「了解、これより敵機と戦闘を開始!先ずは敵よりも高度を取る!シュヴァルムで一撃を加えた後に散開、ロッテで戦うぞ!』

 

『『『『『『了解!』』』』』

 

高度5000mにおいて飛行中であった244飛行戦隊は、敵編隊発見後すぐさまその敵編隊を押さえ込むべく高度を大きく上げ6000mまで上昇。

敵戦闘機も爆撃機を守るべく高度を上げて突っ込んでくる。

 

この深海棲艦爆撃機は4発重爆で樺太方面から来襲してきたものと思われる。

千島列島の北海道に近い島に4発重爆が離着陸出来る飛行場は存在しない。

 

カムチャツカ半島では距離が遠く、B-29ならば問題無いがB-17では航続距離が足りない。

しかも、あの機影は244戦隊の隊長であるベッカー大佐が欧州で何度も迎撃し撃墜してきたB-17だ、見間違える筈も無い。それにB-29ならばもっと高高度を飛んでくるに違いないからだ。

 

ただ護衛についているのは敵艦載機らしく、F6Fだけだ。

 

「245飛行戦隊は!?」

 

『別の敵編隊と交戦中との事!我々だけで戦うしかありません!』

 

「クッ、流石に数が多いな……!よし、コイツらをサッサと片付けて245戦隊と合流するぞ!」

 

この時、245飛行戦隊は中高度で飛行し各陸上部隊を直接掩護していた。

ただし、高度を落とし過ぎると敵機に対応出来なくなるために高度3000mで飛行中でありその際に敵艦載機の戦爆連合と既に戦闘状態となっていた。

 

こちらは120機を超える敵機を同時に相手しなければならず、しかも戦闘機の数が同数程度とあって244戦隊よりも苦戦を強いられていた。

 

『245戦隊から連絡!敵機多数により苦戦中、至急救援を求む、と!』

 

「他に出撃出来る海軍航空隊は居ないのか!?」

 

『居ません!未だ撤退中である事と弾薬などの殆どを破棄しての撤退の為に今出撃すると次回の出撃が出来なくなるので今はなんとか耐えてほしいと!』

 

「クソッタレめ!撤退するのは戦力差故に致し方無いが、それによって戦闘が出来なくなるとは!大将閣下には大急ぎで物資を送り込んでもらわねばならんな!」

 

ベッカー大佐は通常通り敵爆撃機迎撃を行うことにする。

 

「第1中隊、敵戦闘機を抑えるぞ!第2、第3中隊は敵爆撃機を落とせ!」

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

ベッカー大佐率いる第1中隊24機が一斉に敵戦闘機に襲い掛かる。

通常の日本陸海軍機であれば格闘戦に持ち込んでもこれといって問題は無いのだが、Bf-109は一撃離脱を念頭に置かなければならない。攻撃力や速度性能においては深海棲艦の艦載戦闘機よりも優っているのだが旋回性能という面においては負けていた。

欧州でも深海棲艦の主力であるスピットファイア相手では下手に格闘戦を挑むと負けるという事が数多く見られていた。

 

244飛行戦隊は、特に格闘性能が良い深海棲艦の艦載機を相手取るべく、深海棲艦機よりも格闘性能が良い日本陸海軍の戦闘機隊相手に模擬戦を続けてきたのだ、その戦術は確立されていた。

 

敵戦闘機相手には格闘戦は厳禁、高度有利を常に取りつつ一撃離脱に徹する事。

 

これが244、245飛行戦隊の戦術であった。

急降下時、速度は軽く850km/時を超えるのだ、高度有利を取られているならばまだしも、こちら側が高度有利を取っている状況で尚且つ数でも優っているとなれば早々負けるわけもなかった。

 

最初の一撃で敵戦闘機の内、10機をあっさりと撃墜。

Bf-109やFw-190の搭載するMG151/20mm機関砲には薄殻榴弾(一般的にミーネンゲショスと呼ばれる)が含まれており、弾薬ベルトの種類にもよるが基本は5発に1発の割合で含まれておりその破壊力は幾ら防御力が高い深海棲艦と言えども当たりどころが悪ければ一撃で爆砕される可能性すらあった。

 

ただ、生産設備が少数であり生産量が244戦隊と245戦隊の分を生産するだけで精一杯だった。

それに態々MG151/20mm機関砲を烈風などに搭載せずとも元々日本海軍や陸軍で使用されている九九式二号20粍機関銃や二式20粍固定機関砲(ホ5)は攻撃力という観点から言えば確かに薄殻榴弾に劣るがそれでも十分な威力を持っていたのでこれといって特に換装する必要性は無かった。

 

だが、逆に244飛行戦隊や245飛行戦隊の機体武装を換装するならば生産設備があるのだからそのまま使えば良い、という事だった。

 

因みにだが、弾薬ベルトの弾薬を全て薄殻榴弾にすることも可能だが生産数の都合上、それは出来ないでいる。

 

 

 

 

 

『敵機撃墜!』

 

「散開、ロッテを組んで一撃離脱に徹しろ!格闘戦だけは決して挑むのも厳禁、挑まれて乗るのも厳禁だぞ!』

 

そう言われた瞬間に2機編隊を組み高度を回復した第1中隊各機はそれぞれ手頃な獲物を見つけつつ敵戦闘機に襲い掛かって行った。

 

 

 

 

その頃第2、3中隊は護衛戦闘機も無く精々が防護機銃程度に守られたほぼ丸裸同然のB-17を一方的に撃墜していた。

一番端から削り落とす様に1機、また1機とB-17を叩き落としていく。

 

翼を根元から圧し折られてクルクルと切り揉みしながら落ちていく機体や爆弾槽の爆弾に20mm弾や13mm機銃弾が直撃し爆散する機体もあった。

 

「よし、また1機撃墜!」

 

「ははは、敵戦闘機さえいなけりゃこっちのもんだ!」

 

「しっかしMG151の火力はやっぱり凄まじいな!」

 

それぞれが感嘆の声を上げながら次々と爆撃機に襲い掛かってはその度に撃墜戦果を上げていく。

基本的に敵戦闘機相手の戦闘ならばロッテで対応し、敵爆撃機が相手ならばシュヴァルムと呼ばれる4機編隊で攻撃を仕掛けると言うことになっていた。

 

2機だと単発機や双発機であれば問題無いが流石に重爆撃機相手となると防御力は格段に上なので仕損じる事もある。なので4機による集中砲火で敵爆撃機を確実に一度の攻撃で撃墜するのだ。

 

 

 

 

 

 

その頃、245飛行戦隊は前述の通り苦戦を強いられ続けていた。

というのも、敵戦闘機の数が同数程度であることと高度有利を敵側に取られていた為に受け身に回らざるを得なかった。

 

「244戦隊はまだか!?」

 

『未だ戦闘中との事!』

 

「このままでは敵攻撃機に手出しが一切出来ないぞ!」

 

『隊長!我々2中隊と3中隊で敵戦闘機を抑えます!1中隊は攻撃機を!』

 

「だがそれではお前達が危険だぞ!?」

 

『大丈夫でさぁ!こちとら前線にいた時はこの数倍の数をもっと少ない数で相手した事だってあるんだ、このぐらいなんともありません!』

 

「……分かった!任せたぞ!」

 

『了解!』

 

ヴァーグナー大佐は部下の第2、第3中隊長からの進言を受けて決断。

敵戦闘機の相手を任せ自身と第1中隊は敵攻撃機の攻撃に向かった。

 

 

 

 

 

「そんじゃまぁ、大見え切った手前だからな、無様な姿は晒せんよな、お前ら!」

 

『中隊長、敵機来ます!』

 

「散開しろ!ロッテを忘れるな!特に坊主!」

 

『大丈夫です!』

 

第2中隊長は第3中隊長と共に戦力差がある中、善戦。

結果として第2第3中隊のみの戦果として撃墜24、被撃墜6機となりキルレシオ4倍という大戦果を上げる事となった。

 

245戦隊全体の戦果としては敵戦闘機31機撃墜。敵攻撃機67機撃墜となった。

被撃墜は13機。

 

自軍の被害の7.5倍の戦果を挙げるに至った。

だが結果としては、護衛任務を完遂することは出来なかった。

迎撃をすり抜けた攻撃機によって徒歩による撤退中の部隊が幾つか襲われたのだ。

 

その被害は、攻撃が分散した事もあって大きくは無かったのだがそれでも戦う前に陸上戦力を失う事となったのは大きい。

 

 

 

 

 

だがこれはまだまだ始まりに過ぎなかった。

 

敵の上陸があったその日の内に第96歩兵師団が守る防御陣地と衝突。

96師団は3週間に渡る絶望的とも言える戦闘の火蓋を切った。

 

 

 

 










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