暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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次回から海の方に戻ります。






第50話

 

 

 

 

 

 

 

96師団の壊滅後、次に戦闘が始まったのは十勝平野に進出してきた深海棲艦の機甲部隊と、先発していたティーガー戦車装備の第35戦車隊の15両とホハ15両に分譲している随伴歩兵150名及び第2実験戦車大隊とホハ30両に分譲した随伴歩兵300名だった。

 

この時、十勝平野に両部隊が展開していた理由は面積が広く、平坦で見通しが利きやすく戦車の展開が容易であったこと、隠れようと思えば隠れられる場所が複数箇所あったこと、そして何よりも敵機甲戦力の展開も同時に容易であることが予想された為に、両戦車部隊が展開し敵機甲戦力の撃破、及び日高山脈に築いた防衛線に対する砲撃を行うために前進して来るであろうと予想された敵砲兵隊の撃滅任務を帯びていた。

 

 

 

北見市と、南側の海沿いを同時に侵攻してきた深海棲艦の機甲部隊はそれぞれ別の機甲師団所属で、本隊では無く前衛として各30両のシャーマン戦車が10両ずつで少しばかり間隔を空けて前進して来ていた。

 

この時、第35戦車隊とその随伴歩兵の第35歩兵中隊、第2実験戦車大隊の面々は、展開し戦闘するのに不向きである日高山脈の斜面などでは無く、十勝平野の、それも日高山脈の麓辺り、南北36kmに渡る地域をたった45両で守らざるを得なかった。

 

それ以外の、北海道に元々配備されていた八九式などの戦車は各地の守りを固めていた師団にそれぞれ配備され、トーチカや砲台として使われていた。

と言うのも、北海道に配備されていた戦車は対歩兵戦闘という観点からすれば威力を発揮する。

そもそもの話としては戦車対歩兵という時点で戦車側は圧倒的に有利だ。個人携帯用対戦車火器を持たない歩兵からすれば撃破の手段と言うのは無いに等しい。あったとしても撃破できる可能性としては極低確立だろう。

 

それに比べ、対戦車戦闘という観点からこの戦車を見ると、圧倒的というほどでは無いが、どう考えても走攻守全てに置いて力不足であった。  

唯一拮抗出来るのは速力と、上回っている点は搭乗員の練度ぐらいであったが、いくら砲弾を命中させても貫通させる事は出来ないし、撃破というのは夢のまた夢、と言ったところか。

背後や側面に回り込めればまぁ、可能性はあるだろうがこちらが深海棲艦の戦車の装甲を貫通出来る距離に近づく前に相手の砲はこちらの装甲を簡単に貫通するのだからそれも難しいだろう。

山や林、森の中に隠れられれば、と言う人もいるだろうが、確かに相手からの視認性も下がるし機動力も下がるが、それは結局の所、それはこちらも同じなのだから、そう大して変わるかどうかと聞かれると首を傾げざるを得ない。

 

しかしながら、ティーガーやパンターに比べ遥かに軽く、この2車種が登れない様な坂であってもわりかし登れることが多かった。

そこで、北海道防衛司令部は不向きな対戦車戦闘に無理矢理参加させて消耗するよりも、足りていないトーチカなどの代わりに使用した方が良い、と判断。

それにより確かに、防衛線の防御力は少しばかり向上したものの、第35戦車隊と第2実験戦車大隊は総兵力戦車45両、ホハ45両、歩兵450名のみという状況だった。

 

それでも装備自体は、北海道に展開しているどの部隊よりもずっと良い。

戦車は言わずもがな、ティーガーとパンターという少なくとも日本陸軍が保有している戦車の中ではずば抜けた能力であることは間違い無い。

それに車載機関銃もMG34と、射撃速度において圧倒的な機関銃を装備している。

 

何故、車載機関銃はそのままなのか、という疑問も最もであるだろう。

と言うのも、九十二式重機関銃を搭載しようとすると、両戦車の銃眼部分を直径などを大幅に改造しなければならない事が分かったのだ。

それは、両戦車が届いた時点や製造段階で判明していたのだが、それよりも解決しなければならない問題、駆動系やエンジン出力不足などと言った問題が山積していた。

それらの問題を解決しなければ、太平洋線域で運用するにはただでさえ重過ぎると言う、ハンデがあるのだからそのままでは万が一本格的に運用を行うとなったら目も当てられない惨状になるのは明白であった。

 

 

それらの問題と比べれば、扱う銃が違うなど、些細な問題に過ぎなかった。

 

何よりも、合同艦隊と共に運ばれてきた生産設備だけでも当時も現在も変わらずに十分に供給が可能であったから、態々生産設備を新たに作る必要も無く、寧ろ生産設備を全て稼働させると逆に供給過多にすらなる。

と言うのも、弾薬や本来ならばMG34、MG42、Kar98kなどの各種装備用に、弾薬や部品を製造する為に多数の工作機械や生産設備を輸送船に乗せた。

しかしながら乗せたは良いものの、工作機械や生産設備を乗せた輸送船を残して兵器の多くが深海棲艦の攻撃によって沈められてしまったのだ。

そうなると必然的に、本来必要となるであろう数量を生産する以上の生産能力が生まれてしまった訳だ。

しかしながら、実戦に投入される訳でも無く、精々が訓練分が必要な程度であった。

 

それは、各種戦車の台数が増えても変わらない状況であり、生産設備は確かに若干の増設はしたものの、実戦自体が少なく多量の弾薬を消費したとしても、十分に供給は可能なレベルであったし、MG34の使用弾薬である7.92×57モーゼル弾を使用している他の兵器が存在しない。

Stg44も、元々弾薬は違うしなんなら今では改造を施されて6.5mm弾を使用しているから使う機会は無い。

 

それらの理由故に、戦車の車載機関銃としてしか7.92×57モーゼル弾を使用しておらず、しかも機銃弾の搭載量もパンター戦車ですら、機銃手用に3〜4つの弾薬箱と、砲塔同軸機銃用に更に4箱か5箱を乗せている程度で、それぞれの弾薬箱には250発入っており、どれだけ多くても2500発。

 

第2実験戦車大隊の30両だけでも、最大満数75000発あれば十分に事足りる。

75000発、と言う数は確かに数字上では多く感じるだろうし、740tを超す重さだ。

陸路で運ぶには、確かに手に余るだろう。

しかしながら、太平洋線域の物資の移動手段は基本は海路、船を利用するのだから、第101号型輸送艦4隻もいれば十分だ。

 

なんなら、戦時緊急増産型輸送船に弾薬を満載させれば1隻で4回分の補給量にも及ぶから2隻か3隻程度の輸送船だけで数回分の戦闘は十分にこなせる。

生産量も、昼夜問わずにフル稼働させれば1日に12万発の生産が可能であるから、4日もあれば十分以上の弾薬数を生産可能だ。

寧ろ、供給過多にすら陥りかねない。

現在は、北海道だけでなく、各方面に振り分けなければならないからフル稼働状態だ。

 

備蓄分の50万発と合わせて考えると少なくとも今年中に7.92×57モーゼル弾が枯渇する事は無い。

 

先んじて、両戦車部隊と共に多数の弾薬砲弾を送り込んだが、次の補給が行われるまでは持ち堪えられる量だ。

 

それらの点を考えるに、態々九十二式重機関銃を車載機関銃として扱う為の改造を施す理由が無かった。

なので、戦車の車載機関銃はMG34のままだ。

 

 

 

 

 

ホハには九十六式重機関銃や九九式軽機関銃などを装備しており、両部隊合わせてそれが45両、弾薬や手榴弾も満載とは行かずとも一回か2回分の戦闘はこなせる数を搭載しているから、無茶苦茶な戦い方さえしなければ早々に弾薬切れに陥る事は無い。

それに、以前は書かなかったが、偵察や伝令用に陸王と言うオートバイや、ケッテンクラートが配備されている。

 

陸王は完全に偵察専門であるが、ケッテンクラートは多少の弾薬や燃料の運搬ならば問題無く行える。

 

と言うのも、ケッテンクラートには日本に来てから新たに物資運搬用の、所謂トレーラーの様な牽引式の荷台を新たに開発し、路面状況などにもよるが最大1t程度の重量ならば問題無く行えるようにしてあるからだ。

まぁ、舗装されていない道や荒地などを走行するから流石に1tも積めないがそれでも500kg程度ならば問題無い。

 

それぞれの車両を第35戦車隊に20両、第2実験戦車大隊に25両づつ配備している。

 

2車種を同時に配備している理由は、陸王だと路面状況が雪や雨などで悪化すると、泥濘に嵌ったりして身動き取れなくなる事がある。

その点、ケッテンクラートは半装軌車両だから泥濘であろう雪であろうと、よほどの場合でなければ走行可能だ。

そのような場合に備えてのものだ。

 

基本は、陸王が偵察を担い、ケッテンクラートが前線への補給。

そして道路状況が悪化すればケッテンクラートが偵察に加わる、と言った形だ。

 

歩兵は、基本は個人用にStg44、分隊毎にパンツァーシュレックと九十九式軽機関銃を1門づつ。

パンツァーファウストは小隊ごとにそれぞれが装備している。

狙撃手は九十七式狙撃銃や三八式改狙撃銃を装備。

 

他にも、対空用にベルト給弾式の20mm4連装機関砲などもある。

 

攻勢を仕掛けるには、数は少ないが防衛に徹するのであれば十分とは言えないが、それなりの兵力であると言えよう。

 

 

 

 

話を戻そう。

戦闘開始前、第35戦車隊が北側、第2実験戦車大隊は南側を守っていた。

第2実験戦車大隊は、2個中隊で構成されており、第1中隊と第2中隊に分かれて中部と南部の防衛に就いていた。

 

 

両戦車部隊は、それぞれ第544偵察中隊と連携し、敵部隊の早期発見に努めており、まず敵部隊を発見したのは第544偵察中隊の第1中隊だった。

第544偵察中隊は第1小隊を白糠町に、第2小隊を陸別町と足寄町の境辺りに、第3小隊をそれぞれの間に存在する白糠丘陵に配置していた。

 

 

第2中隊長は、敵部隊発見を受けて戦闘準備を下令。

 

「敵機甲戦力30両が、白糠町を通過した!第2中隊戦闘準備始め!」

 

戦闘準備を進める傍ら、随伴歩兵隊長や偵察隊長、各戦車の車長を集めて作戦会議を開く。

第1中隊もこの時既に自身の先発偵察によって敵部隊の状況を把握しており、第2中隊と合流、援護すべく向かっている途中であった。

 

「敵戦車の数は30両、それを10両づつに大凡100m程度の間隔を空けて海沿いを進軍してきている。このままの進軍速度であれば、渡河を考慮してもあと1日程で先頭部隊と戦闘開始となるだろう。第2中隊はこれより現地点、十勝平野南部、日高山脈に近い高台に陣取って防備を固める。偵察隊、陸王を偵察に出して敵状を逐次報告せよ」

 

「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

「各自作業にかかれ。解散!」

 

第2中隊は即座に、高台に陣取って偽装を施す。

偽装を施す間も歩兵の手を借りて、ダグ・イン、所謂穴を掘って車体部分を隠し砲塔のみを出した状態にするべく穴を掘る。

 

歩兵は歩兵で、急造ではあるが戦車を起点とした各自の掩体や塹壕を掘り進め、陣地を構築していく。

 

「防衛司令部に航空支援を受けられるかどうか確認しておいてくれ。それと補給大隊の奴らに忙しくなるぞ、と言っておけ」

 

「了解」

 

中隊長は、無線手にそう伝えて地図を見る。

 

(このまま敵が進んでくると言うのであれば、取ってくるであろう進路は豊頃町かそのまま南下して大樹町に侵入してくるルートの2箇所。今現在の位置は、大樹町の境辺りだ。ここならば十分に守りを固めやすい)

 

 

中隊長が守りやすい、と判断したのには幾つか理由がある。

まず第一にこの辺り一帯、十勝平野全体が畑である事だ。

見通しが良く、他よりも少しばかり高い位置に陣取ってしまえば辺り一帯を簡単に見渡せるので、戦車砲の射界確保に苦労しなくて済むこと、そして敵戦車に対して有効射程ギリギリからの砲撃を仕掛けられること。

まぁ中隊長は、遠距離での撃ち合いは命中率が低く砲弾薬を無駄遣いする、と判断して出来うる限り引き付けてからの砲撃をする、と決めていたので遠距離での撃ち合いは早々起こらないだろう。

 

なんにせよ、敵の早期発見が可能であり、第一撃をこちらが得られるだろうと判断したからだ。

 

それと敵が侵入してくるルートは2箇所しか無く、その片一方は十勝平野の真ん中辺りに出る豊頃町という町を通るルートか、海沿いをそのまま南下してくるルートの2つしか存在しない。

トンネルなどもあるにはあるが、基本は鉄道用であり、しかも撤退が完了した時点で一斉にトンネルなどは全て爆破して通れなくなっているので問題は無い。

 

この2箇所のルートと、十勝平野の太平洋沿岸地域への敵部隊の強襲上陸さえ警戒しておけば、航空機という脅威を除いてほぼ間違いなく奇襲を受ける心配はない。

なんなら豊頃町のルートを通ると十勝平野の丁度真ん中あたりに出ることになるので、敵部隊は第2実験戦車大隊の第1、第2中隊から挟まれる可能性もあったし、最悪陸別町の敵部隊を殲滅した第35戦車隊も参加して、3方向から挟まれる可能性すらある。

それを考えると、敵が進軍してくるであろうルートは海沿いをそのまま南下してくるルートしか、恐らく存在しない。

 

 

さらにもう一つ。

敵は、十勝平野に至るには十勝川を渡河しなければならない。

この川には、いや、十勝川に限らず北海道東部全域の橋は部隊撤退の際に同時に全てが爆破、破壊されている。

十勝川河口橋が河口付近に通っていたのだが敵の進軍が予想されたためにトンネル同様、この橋も破壊されている。

 

という事は、敵は川幅が200mはあるこの十勝川を渡らなければならず、かと言って迂回するルートはずっと北に行った陸別町の方にしかない。

十勝平野に侵入するにはどちらにせよ南側を通る部隊は十勝川を越えなければならない。

橋を架けようにもそう簡単には行かないし、となれば戦車を乗せられる上陸用舟艇が来るのを待つしかない。

 

さらには歴舟川と言う、もう一つの川があってそこも越えなければ敵戦車は自身の有効射程範囲に第2中隊を収められない。

 

ただし、この時中隊長は、というよりも第2実験戦車大隊全体が大きく間違えていたことがあった。

それは、敵の進軍速度だ。

 

この時深海棲艦部隊は、既に十勝川の橋が使用できないということを知っており、戦車や部隊渡河の為に舟艇を派遣していた。

中隊長やマルクス大佐は、渡河の準備に後一日は掛かるだろう、と想定していたために比較的時間の猶予があると判断したのだがその予測は大きく外れていた。

 

なので、海沿いを侵攻していた深海棲艦の戦車は、早ければあと3〜4時間程度で第2中隊の目視距離に入る事になる。

 

しかも敵は歴舟川は水深が浅く、戦車ならば橋や船を使わずとも渡河可能、と判断しており実際にその判断は間違っておらず、歴舟川には舟艇を派遣していなかった。

歴舟川には偵察に行く部隊が渡るために小さな、幅2m程度の橋が幾つか架けられているが戦車は重量の関係で乗る事は出来ない。

 

それにより敵の十勝川での動きは未だに察知されておらず、第544偵察中隊もその後方に続くであろう敵の主力を捕捉するべく敵地深くに足を進めていた為に、この事が第2実験戦車大隊が知る事になるのは偵察に送り出した陸王を操る兵士が発見するまで、時間にしていえば戦闘準備命令が下ってからきっかり2時間後の事であった。

 

どちらにせよ、想定された時間的余裕は無く、陣地構築もあまり進められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「中隊長ッ!!敵部隊は十勝川に舟艇を派遣して既に渡河したとの事です!!」

 

「何ッ!?敵の進軍速度は!?」

 

「時速20kmほどとのこと!」

 

報告を受け取った中隊長は大急ぎで地図を確認する。

 

「不味い、このままではあと1時間ほどで歴舟川に到達するぞ……。敵部隊急速接近中、各員作業をもう30分ほど続けたら臨戦態勢!急げ!」

 

中隊長は声を張り上げてそう指示を出す。

その声を聞いた兵士達は、動かす手をより速くし、最低限自分が隠れられる掩体だけは掘り進める。

最悪塹壕で繋げられなくとも、それさえあれば、戦車の支援で後退出来るからだ。

 

 

 

 

忙しなく、全体が作業を完了した十数分後。

水やりをされなくなり、乾いた畑を進む敵車両が巻き上げる土煙を視界に捉えた。

 

「総員戦闘配置、総員戦闘配置!急げ!」

 

隊長が双眼鏡を覗くと、そこには報告通り敵機甲師団が隊列を組んで進んでいた。

 

「距離は……、おおよそ4500といったところか……」

 

「どうしますか?」

 

「当初の予定通り引き付けてから叩く。どうやら敵戦力は報告以上の数は存在しない様だ。至近距離での撃ち合いになっても正面から抜かれる事は先ず無い。引き続き合図待て」

 

「了解」

 

そして、敵戦車が距離1000mを切った瞬間。

 

「攻撃開始、繰り返す。攻撃開始!」

 

その命令と共に、一斉にパンター戦車の砲身から砲弾が撃ち出される。

1000mと言う人間で置き換えれば離れた距離だが、発射された砲弾からすればほんの1秒程度の事だ。

 

現代戦車と違って、自動照準装置や自動装填装置なんてものはパンターに限らずティーガーやⅣ号戦車、Ⅲ号戦車に至るまで装備されていない。

と言うことは、砲撃の精度は砲手に完全に委ねられている。

確かに製造過程での砲身の品質なども大きく関わってくるが、このパンター戦車やティーガー戦車は量産車両とはいえ、少数生産に留まっておりその製造は多数の熟練工によって丹精込めて作られたものだ。

砲身一つとっても、大量生産を行なっているⅢ号Ⅳ号戦車とはレベルが違う。

 

いや、その2車種も確かに命中精度は良いのだが、何しろ数を揃えることが最優先とされて製造されているからどうやったって熟練工のみで構成された製造チームの手によって製造されたパンターやティーガーとは比べる方が間違いである。

 

ともかく、それ以降の砲弾の命中率は、それぞれの車両に乗り込んでいる砲手達に完全に委ねられているということである。

その点、日本陸軍は全体的にかなりレベルが高かった。

 

先ず行進間射撃、移動しながらの射撃についてだがこれに関しても現代戦車、所謂MBTと呼ばれる戦車とは単純な命中精度なんて比べるまでもない。

砲身を自動で安定させる為の装置なんて当然、現在日本陸軍で運用している戦車には搭載されていない。

 

しかしながら、その自身が移動しながら砲撃した場合の命中率はおおよそ3割に達していた。

本来であれば、

 

走行>停車>砲撃>再走行>停車>砲撃>再走行……

 

を繰り返し行いながら砲撃をする為に、常に動きながら停車せずに砲撃と言うのは難易度が前述の装置が搭載されていないこれらの戦車からすればとてつもなく高い。

 

しかしながら、何故命中率が高いのか。

理由は単純、物量戦を常に仕掛けてくる深海棲艦相手に、一々停車してから砲撃していては集中砲火を喰らい立ち所に撃破されてしまうからであった。

 

これは、アジア太平洋戦線だけでなく欧州戦線でも同じこと。

だからこそ止まらずに撃ち合う、と言う手段が取られたのだ。

 

日本陸軍における戦車兵の訓練は、元々低速域に於いては行進間射撃、 機動・停止・機動の合間に行う躍進射を徹底して訓練していた。

 

それを全ての速度域において出来るようにした、と言う訳である。

ただし流石に低速、中速域ならばまだしも高速域では無理がある。何せパンター戦車は整地であれば最大で60km以上を優に発揮出来る。

ティーガー戦車ですらエンジン出力不足を改善され整地で50kmを出せるのだ。

 

なので、緊急時以外は最大でも30km程度まで、とされていた。

 

さて、この様に説明したが彼ら日本陸軍戦車兵達が最も得意としているのはこれでは無い。

実は、移動目標に対する砲撃が最も得意なのだ。

こちらに関しては、状況にもよるが好条件であれば8割、悪条件であっても5〜6割の命中率を叩き出している。

 

 

そして、今彼らが置かれている状況は、自分達はダグ・インし動いておらず、敵のみが動いている。

彼らからすればこの上無い状況だった。

 

元々、隊長はそれを狙って現地点に陣取ったのだ。

初戦だけでも、と言う訳である。

 

そんな状況に置かれてしかも碌に回避機動も取らず真っ直ぐ進んで来る敵に、彼らからすれば外せ、と言う方が難しかった。

 

一度の砲撃で瞬く間に半数を撃破された敵戦車は、訳も分からず停車。

この停車は、砲手達により狙いを付けやすくしただけだった。

 

僅か4度の砲撃で瞬く間に敵戦車を見事葬り去ったのだ。

 

隊長は、3度目な砲撃を行う前に第二小隊の5両と歩兵50名をホハに分譲させ迂回し敵後方に回るよう指示。

 

正面からの榴弾の雨により敵歩兵は回り込まれているなんて考える暇も無く、降らせ続ける。

撃破された戦車や、側溝、畑の畝などに隠れて小火器を撃つも戦車相手には通用しない。

 

それどころか信管を遅延にした榴弾が、地面で飛び跳ねて空中で炸裂するものだから碌に動き回っていないからただの的当てゲームに近しくなっていた。

 

しかも、この時既に第1、第3小隊は歩兵を伴ってゆっくりと、横隊に並び広く間隔を取って前進してきていた。

漸くその事に気が付いて撤退しようとした頃には、既に後方に回り込んでいた第2小隊が戦車だけでなく歩兵もホハも展開し、猛烈な射撃砲撃を浴びせて来ていた。

 

横に逃げようにも間隔を広くとって横隊に並んで来ていた第1第3小隊が陸側を押さえ込み、海の方へ退くしかなくなっていた。

包囲が完成した、と認識した隊長は、

 

「全隊、総攻撃開始」

 

そう無線機に向かって指示を出した。

 

 

 

 

 

 

海を背に包囲された深海棲艦歩兵は成す術もなく一方的に狩られていき3時間後には消滅。

第2実験戦車大隊の損害は怪我人が23名のみであり、完全勝利と形容してもなんら間違いの無い戦果となった。

 

その頃すでに他の戦車部隊も敵部隊を撃退し終えていた。

被害は比べると大きかったがそれでも大勝と言って差し支えないものであった。

 

 

 

 

 







史実でのドイツ軍7.92×57モーゼル弾生産数

         年間合計生産数    月間合計生産数

1939年  合計:11.1億発 平均:2.8億発
1940年  合計:26.1億発 平均:2.2億発
1941年  合計: 8.9億発 平均:0.7億発
1942年  合計: 7.9億発 平均:0.6億発
1943年  合計:24.2億発 平均:2.0億発
1944年  合計:40.8億発  平均:3.4億発
         
年間合計生産数:119億発


1938年4月の時点でドイツ軍が保有していた7.92×57モーゼル弾の在庫は約36億発。

1940年5月から6月までのフランス侵攻では約1.8億発を消費した。

1940年7月から12月末までの弾薬消費量は月平均で2500万発となっており、既存の弾薬在庫と月平均2.2億発の生産実績により弾薬供給は万全、在庫は過剰気味と判断される。

在庫過剰気味などの判断により41年以降は弾薬生産数を減らし、弾薬製造に掛かる膨大な支出を抑え、その分の労力を他の生産に振り替えた。

しかし41年6月に開始されたソビエト侵攻の為のバルバロッサ作戦を継起に対ソビエト戦が拡大すると弾薬の消費量が急増、備蓄量が低下。危機感を抱いた軍首脳部は42年4月に弾薬生産量を引き上げる計画を実施したため43年以降は回復傾向となり、44年には大幅な増産となっている。生産のピークは44年11月の3.7億発。



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