我が軍の北海道戦線における反攻作戦は、突如として一気に加速し始めそうな、様子を見せている。
3月になり、あと1ヶ月もすれば雪が完全に溶け消えるであろうと予想され、雪解けと共に予定されている攻勢作戦に備えて準備を進めていた時。
敵の攻勢に翳りが見え始めた。
と言うよりも、敵は戦線を大幅に縮小し屈斜路湖辺りまで全軍を後退させ始めたのだ。
偵察によると網走から釧路を結ぶライン上に防衛線を構築し始めているのが確認されており、我が軍と対峙していた前線から敵が新たに構築している防衛線までの間には数多くの遅滞防御陣地が新たに確認されている。
敵の備蓄量を算出した結果、あと二ヶ月は保つであろうとされていたのだが、どうやらこちらの防衛線を食い破ろうとした為にこちらが想定していたよりも物資の消費が激しかったらしい。
しかもそれに加えて物資集積所や輸送車両の車列を見つけ次第、航空機や敵地後方の偵察や破壊活動に従事していた513偵察中隊が破壊して回っていたのも敵の物資消費に拍車を掛けたようだ。
とは言え問題はそこではない。
「確かに物資の備蓄量は反攻時に算出し要求された最低限度である6割ではある。しかしそれを理由に機会を逃し、敵に防衛線や陣地構築の時間を与えるのは如何なものか」
「しかしその6割は過去の話だぞ」
「私とて補給を軽視している訳では無い。しかしそれで敵に時間を与えて余計な損害を食らうのはどうなのか。今ならばそれを押さえられるのだぞ」
「実施すれば、少なくとも敵の防衛線構築は阻害出来る」
「仮に出来たとしても補給に問題が出てからでは意味が無いないではないか」
「そこは……、今のように航空機を使えば良かろう」
「これ以上航空隊に負担を強いると?今でも限界に近いのにか?回らなくなるのは目に見えて明らかだ」
出向している陸軍参謀数名を加えて議論が繰り広げられている。
議論の主題は、今すぐに攻勢に打って出るべきか否か、である。
考えるべきは、我が軍の攻勢に必要な物資の備蓄量である。
今現在我々が備蓄出来ているのは算出された必要備蓄量の5割程度、作戦を行う為に必要最低限度である、とされている量だ。
しかしそれはこの戦いが激化の一途を辿る前に算出されたもので、部隊の増強などが行われた今では必要最低限量は6.5割。
可能ならば7割は備蓄するべし、とされている。
最低でも1.5割も足りない。
これは作戦を実施する上で重大な意味を持つ。
補給が厳しくなるのは勿論だが、何より前線部隊に戦闘に関わる関わらない問わずに何かしらの制限が掛けられる可能性が高い、と言う事だ。
例えば食事の配給量を減らしたり、1両当たりや一人当たりに配られる砲弾薬や燃料、手榴弾などが少なくなる、とか。
正直に言って短期間であればなんとかなるだろうが、戦いの長期化をも視野に入れた場合かなり厳しいものになる。
必要摂取カロリーを満たせなければ、腹が減っては戦はできぬ、となってしまうし何より弾薬が無ければ持っている小銃は穴が開いた鈍器ぐらいにしかならない。
極論になってしまうが、兵士1人当たりに10発しか弾薬を配らないとか、戦車1両に20発しか砲弾が配られないとか、そうなってはどうやってもまともに戦闘を行うのは無理である。
まだ冬だ、燃料が無ければ寒さは凌げないし、当然車両も動かせない。
今の備蓄量で攻勢を始めるとそうなる可能性が無いとは言い切れない。
だから陸海軍で、敵が防御を固める前である今すぐに攻勢を始めるべきか、それとも今暫く待ち備蓄量が最低限度に達するまで準備を念入りに整えるか、で意見が割れに割れているのだ。
実際問題、どちらにも理がある、と言わざるを得ない状態だ。
まずすぐにでも攻勢に打って出るべき、との意見の理由としては敵が構築する防衛線がどれだけ強固な物になるか分からない、と言う理由から来ている。
敵は確かに兵力が擦り減り、勢いに翳りが見え始めているとは言えそれでもまだまだ兵力的に言えば展開する我が軍と同等程度には残っている。
これが意味することは、敵は我が軍と直接対峙している前線よりも半分以上短い防衛線に全ての戦闘兵力を注ぎ込める、と言う事に他ならない。
流石に後方地域の防衛などが絡んでくるから全てを配置するのは無理だろうが、極論を言ってしまえばそう言う事だ。
城攻めには、籠る敵軍の3倍の兵力を用意せよ、と言うが、これを考えた場合どうやっても3倍なんて用意出来ようもない。
正直それは何時でもそうなので、仕方がないと言える。
今の陸海軍は自軍より敵軍のが圧倒的兵力差で優位に立たれているのは重々承知の上で戦略や戦術、作戦を練っている。
ただ、敵が全力で防御に徹した場所を現有戦力で突破出来るかと言われると、言葉を選ばずに言うならばかなり厳しい。
不可能に近いだろう。
そうなると損害は増えるばかりであるのは確実だ。
戦争だから損害は仕方が無い、ではないのだ。
我々は深海棲艦より人的資源で劣っている。
だから人命軽視をすると言うのは必然的に自分で自分の首を絞めるばかりか、破滅の道に突っ走っているようなものなのだ。
損害を出来うる限り押さえ、敵に出血を強要する。
作戦の大前提だ。
敵に時間を与えて大きな損害を食らう戦いの場を態々用意してやる必要はない、と言うことだ。
備蓄に努めるべき、と言う主張も良く分かる。
今の軍は余程の事が無い限り陸海軍は共通して兵站を重視している。
勿論、元から軽視されていた訳では無いが過去の大戦からの教訓として俺が更に加速させたのも要因だ。
なんせとある一説によると、かの大戦における死者数の内、戦死者の割合は3割と見積もられ、残りの7割は飢餓や病気で死んだと言われている。
理由は軍部の極端な兵站軽視によるもの。
確かに後半の戦いはどうにもならない状況もあっただろうが、それでも輸送船を出せずに補給が全く出来ない、と言う訳ではなかった。
と言うか出せる兵力できちんとした護衛を就けそれに見合った輸送に押さえていれば10割では無いにしろ補給自体は可能であったと考える。
今の我が軍にも共通して言える事として、数多くの病魔が蔓延る熱帯地域が主戦場であることだ。
マラリアに始まりコレラ、熱帯アメーバなど治療には注意を払わねばならない伝染病や感染症が山ほどある。
それに加えて食料生産に不向きな気候もあって、適切な補給がなければならない。
それは北海道にも言える事であり、それらの病魔では無く寒さと言う別の大敵がある。
それに全く病気がない訳でも無く、若干数、それこそ全域で10人程度の感染症などに罹患した兵士達もいる。
更には北海道にはエキノコックスと呼ばれる厄介極まりない寄生虫の存在もある。
今では前の世界とは違い、駆除が進んで本州ではここ5年間未確認、北海道でも一部地域を除いて暫くの間確認されていないが何時広がるか分からない。
これらの病気を駆除しているのは、単純に大規模な感染が起きた場合今の我が国にはそれらを対処出来る力が無いからだ。
だから病気をそもそも発症させぬ為に駆除などを、大規模感染になるより金の掛からないこちらを推し進めているのだ。
他の生物に影響を与えぬように駆虫薬を散布したり、撒き餌に駆虫薬を混ぜて媒介生物から対象を除いたりと様々な方法が採られている。
話を戻すが、北海道は今もまだ冬が続いている。
1ヶ月と言うのは短いようで長い期間だ。
寒さは暑さより命を奪う。
ましてや戦いもせねばならぬとなればより過酷であるのは間違いない。
補給が途切れた軍隊の末路を彼らは知っている。
この戦争序盤に友軍へ物資を送り届けられず、どれだけの苦しく悔しい思いであったかを知っている。
だから今度こそは補給を途切れさせるにはいかない、と思っている。
どちらの意見にも筋の通った理由があり、悩ましい。
「仮に、今から攻勢に打って出た場合、どれだけの間補給を保たせられる?」
「あくまでも、推算でしかありませんが全部隊が全力で戦わねばならなくなると、厳しく見積もっても1ヶ月しか保たないでしょう」
「少ないな」
「その間ならば確実な補給を保証しますがそれ以上は補給に関して一切の責任は持てません」
「出来れば、あと1ヶ月分は欲しいところだが、1ヶ月分を備蓄するのにどれだけ掛かる?」
「2週間で、と言いたいところですが厳しいでしょう。敵もこの撤退に際して我々に対する破壊活動を行っておりますので、概算程度ではありますがざっくり倍は掛かるかと」
「うーむ……」
長過ぎる。
それだけ時間があれば敵はとっくに防衛線を完成させ、それどころか拡張すら可能だろう。
時間的猶予も我々には無い、と言う事か。
「今、決断するべきだな……」
腕を組んで息を吐く。
苦しい決断だな、これは。
こういう役職をやっていると、度々苦しい決断を迫られる事があるが、慣れないものだ。
慣れたいとは思わないが。
「陸海軍双方の補給参謀に聞く。確実に、1ヶ月は補給を保たせられるのだな?」
「はっ、1ヶ月は確実に保たせて見せます」
「海軍も、それは確約出来ます」
陸海軍の補給参謀が頷く。
それを聞いて、一度目を瞑り覚悟を決める。
「……分かった。これより2日間の準備期間を設け、3日後に全面攻勢に出る」
「閣下!」
「言いたいことは分かる。補給に不安が残る今攻勢に出るべきでは無いのは分かる。そこで、補給参謀が補給を確約した1ヶ月以内に敵防衛線の突破が不可能と判断された場合は攻勢を中止、物資備蓄に努め再度攻勢時期を見極めることとする」
何かを言いかけた参謀を抑え、彼らも納得出来る妥協案を出す。
今の備蓄状況では1ヶ月以上の全面攻勢は困難だろう。
攻勢に出たのならば、それを機にキッパリと止めるべきだ。
そう伝えると、渋々引き下がる。
「まだ言いたいことは数多くあるだろうが、今は押さえてもらいたい。もし失敗したならば俺を罵れ。責任も取る」
「ビスマルク、この全面攻勢に置いて全責任は強行した俺にある、そう書いておいてくれ」
「……分かったわ」
書記を担当するビスマルクに言って、明記しておいてもらう。
これで皆が責任を追求されることは無いとは言えないが、罰が与えられたとしても軽いもので済む。
ビスマルクは何やら言いたそうな顔をしていたが、頷いてくれた。
いずれにしろ、現場には大きな負担になるだろう。
「全軍に通達。今より、は号作戦を発動する。作戦を修正する必要があれば明後日まで修正し再度全軍に通達。では始めよう」
「「「「「はっ」」」」」
元々敵前線の突破を企図する作戦は陸海軍で練られていた。
ただ、その作戦が敵防御陣地と防衛線の突破に置き換わっただけだ。
とは言え作戦を微修正する必要があれば修正しなければならない。
きっかり3日後に、全軍が攻勢を開始した。
敵は縦深防御によって時間稼ぎを目的としているらしく、あちらこちらにトーチカを主軸にした防御陣地を彼方此方に構築していた。
とは言え時間が無かったのか、そこまで防御が硬い訳でも無く航空支援や砲撃によってトーチカを破壊し戦車や装甲兵員輸送車に守られた歩兵が塹壕を制圧して行った。
幾らトーチカとは言え、真上から爆撃を食らったり周りごと一気に砲撃で吹き飛ばされては一溜りもない。
砲爆弾で破壊出来ないトーチカや陣地を作るのには時間が必要だ。
そんな時間の無い連中のトーチカは、簡単に破壊出来た。
敵が防衛線を構築していたラインに12日後に到達。
流石に頑強であったが、海岸に近い場所に対して戦艦に始まり巡洋艦までもが絨毯砲撃、連山や流星と言った機体による絨毯爆撃を実施。
幾ら頑強な防衛線とは言え、戦艦クラスの砲撃や1tクラスの爆弾を丸1週間に渡って受けたらどうしようもない。
2kmに渡って作られた防衛線を吹き飛ばした我々は、すぐに海軍陸戦隊をその更に後方にある海岸に上陸させ、陸軍挺進隊を上陸地点の近くに降下させた。
これによって穴が空いた防衛線を通過し迂回することも出来るようになった我々は防衛線を放置し他地域の奪還を進めることにした。
無抵抗とは行かなかったが、防衛線に全力の8割を配置していた敵を次々に撃破し、遂に防衛線を完全に包囲することに成功した。
全方位から砲撃や爆撃を食らい、それでも抵抗を続けたが補給が完全に途切れ長くは保たず、包囲が完了し2週間後に敵を殲滅。
残敵掃討に丸々2週間を費やしたが、辛うじて補給は保たれた。
残雪残る3月の終わりのことであった。
戦後処理は長期化すると予想された。
なんせ北海道は今の日本の食料生産の大部分を担う重要な地域だ。
不発弾は全て取り除き、再び田畑にするのだ。
民間人が不発弾を掘り当て爆死するなど、あってはならない。
不発弾の処理は北海道に駐屯する師団や不発弾処理の為に応援として派遣された工兵隊に委ねられ、避難をした民間人を順次帰還させ始めた。
特に被害の少ない西部は既に各種の生産が始められている。
北海道の防衛は、4個師団から7個師団に増やされた。
段階的に兵力を増強し、最終的には10個師団を防衛に充てる予定だ。
装備の更新も今回の戦いで完了しているから、防衛用の施設を作ることに注力させられる。
そして、最後ではあるが時間稼ぎのために壊滅した旧第96歩兵師団の慰霊碑が雌阿寒岳の国立公園に建立された。
次に大震災について。
死者数は39万人にも上り、被災者は700万人に上った。
戦時中で疎開が進んでいるとは言え、未だに日本の首都は東京であり各種産業などが未だ盛んに行われているなどがあり、人口は集中している。
復興には、戦時中と言うこともありかなりの年数が掛かるとされている。
中代大将達や関係各所がそちらを引き続き担当してくれることになっており、俺は軍務に集中せよ、と言われている。
聞いた話によると、どうやらこの際に煩雑で入り組んだ都内などを一気に区画整理することになっているとか。
確かに下町とかは訳が分からないぐらい道が細く入り組んでいたから焼け野原になりまっさらな今、やってしまおうと言う事らしい。
まだ爆撃は続いているが、やった方が良いのは確かだ。
他にも燃料不足による電力不足を補うために、水力、風力を中心に太陽光発電を大規模に進め始めた。
基本は農地開発やらで土地の少ない陸地ではなく、海上である。
発電を行う為に投入したエネルギーに対してどれだけの電力を回収し利用出来るか、と言うエネルギー効率と呼ばれるものがある。
普段我々が使っている火力発電は、エネルギー効率が石炭だと大体40%前後しかない。
簡単に言えば、6割ものエネルギーを利用出来ていない。
ところが、水力発電は80〜90%、風力発電は60%ほどとエネルギー効率が良い。
確かに火力発電も様々な方法で効率を上げてはいるが、そもそもの問題として燃料が無ければ意味が無い。
しかも燃料の輸送の関係から沿岸部に作らなければ輸送コストが掛かる。
それに比べて水力発電は取り敢えず設置が出来る場所があるし、風力に関しては洋上に設置すれば良い。
火力発電よりも爆撃を受けた時に安全であるし、修理に金が掛からない。
原子力発電は33%でしかないが、発電量が桁違いだから使われている。
今の日本は爆撃の危険があり全面禁止、燃料棒に使われる酸化ウラン、酸化プルトニウムが手に入らないから使われていない。
仮に運転したとして、爆撃を喰らったら広範囲に放射線物質が撒き散らされる。
どれだけの被害が出るか想像も付かないほどだ。
除染作業に掛けられる人手は無い。
予定されていたフィリピン奪還作戦は2年間の延期が決定され再来年の秋に実施を予定している。
長期間の任務でボロボロになった艦隊を全てドックに入れ、念入りにオーバーホールを行いつつ大規模な改装を行う予定だ。
改装の予定としては、速力向上を狙い全艦全てが機関部の大幅な改修、新型の機関に換装する。
更には対空兵装の増強、軽巡全てを防空用に改装する。
対潜装備の更新なども並行して行われる予定だ。
具体的には軽巡の主砲を全て長10cm砲に換装し、対空機銃を更に増設。
他艦の高射砲も全て長10cm砲に換装が予定されている。
これによって艦隊の防空能力の向上を狙う。
先んじて、損傷の修理と同時に機関の換装を終えた長門が公試で叩き出した速力は30.7ノットと言う改装に入る前の金剛達に並ぶほどの高速力を叩き出した。
長門が受けた改装は他にもあり、主砲を45口径から50口径の長砲身に換装。これにより貫通力と射程が伸びている。
電探なども増設されている。
主砲の長砲身化は他の戦艦も同様に行われており、全体的な攻撃力の向上に成功している。
敵のル級やタ級、戦艦棲姫などを3ノット程度上回り、最も強力である戦艦水鬼より3ノット程度劣る速力を41cm砲を搭載しながら獲得したことで、大和と武蔵が未だ戦列復帰が望めぬ今、走攻守全てが揃った名実ともに日本海軍最強と言える。
空母も機関の改装に加え飛行甲板の延長、格納庫の拡張を進めている。
他にも開発中であった艦載機用発射カタパルトが漸く完成し、実戦投入レベルになったのでそれの設置も行っている。
火薬式から油圧式に改められている。
火薬式は死人が出る事故を起こしてからも開発は続けていたが、どうやっても必要な加速を得るためにはどうしても機体と搭乗員に過大な負荷を掛けてしまうことから中止。
同時に開発されていた油圧式カタパルトは当時、圧力不足や油漏れと言った技術レベルの不足があってどうしてもそれらを解決せねばならなかったが、欧州の技術者の協力で解決。
実験や耐用試験も全て合格。
結果的に全空母が装備を予定しており、鳳翔以下軽空母にも搭載される。
これにより滑走距離の問題で搭載されていなかった烈風が零戦から機種更新されることが決定している。
ともかくカタパルトは技術協力が無ければまず完成しなかっただろう。
これにより運用上の制約、停止状態でも発艦が可能になったし艦首を風上に立てる必要も無くなった。
とは言え機体に負荷を掛けることになるので、今までより整備が必要になるがそこは整備兵を増やすことでどうにかする。
整備兵の教育もそれなりに進んでおり、若干名ならば増やすことが出来る。
軽空母の鳳翔以下は上記の改装に加えて、艦橋を島型艦橋に改められる事となった。
それにより艦載機の搭載数と飛行甲板が延長され、格納庫のスペースも広くなる。
とは言え折り畳み翼を装備しているが機体が大型化しているのと、十分なスペースを確保する為に搭載機は1個小隊分が増えた程度だ。
飛行甲板の幅の広さを確保するために隼鷹や飛鷹、大鳳、信濃と同じように海に迫り出した形の島型艦橋と煙突を一体化させている。
今は鳳翔と龍驤が軽空母の中では入渠中で、速力も大幅に向上が予定されている。
これで1線級の実力を有することになる。
船団護衛に限らず、いざとなれば艦隊戦に加わることも十分に可能だ。
まぁ、防御力は相当低いので爆弾1発で致命傷に成り得るが、狙われるのは兎に角目立つ大鳳か信濃、それか旗艦である飛龍ばかりだ。
一航艦の後方においておけば被害を被ることはまず無いと思う。
改装のお陰で鳳翔に限らず軽空母は艦型が丸っ切り変わっている。
艦型を見ただけで名前を答えろと言われても分かるまい。
全艦を1年半以内に大規模改装を完了させ、半年間の訓練期間を設ける。
工廠には毎度のことながら面倒を掛ける。
それに加えて、修理中であった艦や訓練中だった艦が次々と艦隊に編成されている。
1航艦と第1護衛艦隊のそれぞれに編成されたのは、
戦艦
比叡 榛名 山城
重巡洋艦
足柄 筑摩 加古
軽巡洋艦
大井 阿賀野 酒匂 由良
駆逐艦
磯風 時津風 山風 初春 若葉
綾波 夏雲 暁 雷 電 長波
大波 涼波 柿 梨 雄竹
潜水艦
伊154 伊158 伊174 伊175
伊176 伊178 伊179
給油艦
神威 速吸 鷹野
龍舞 塩瀬 高崎
給料艦
間宮
の以上が正式に編成された。
北海道戦線が始まり、編成出来ていなかったのだ。
まさか一緒に艦隊運動訓練をやっていないのに編成し、衝突事故なんて起こったら目も当てられない。
今までは1航艦の代わりに本土防衛に就いていた。
既に修理と改装を終えており、一航艦と第一護衛艦隊の穴埋めをしている。
それが済んだならば、それぞれの正式な配置に戻る。
潜水艦は第4潜水艦隊として新たに編成され既にフィリピンの通商破壊任務に就いている。
戦艦2隻
大和(浮揚作業中)
武蔵(浮揚作業中)
駆逐艦3隻
江風(訓練中)
初雪(訓練中)
夕雲(訓練中)
海防艦7隻
占守(訓練中)
国後(訓練中)
石垣(訓練中)
松輪(訓練中)
佐渡(訓練中)
対馬(訓練中)
三宅(訓練中)
それでもまだこれだけの艦が訓練中である。
理由は単純に、北海道戦線が始まったことで修理に充てられる筈だった資材が別に回されたからだ。
漸く修理が完了しても、乗組員不足で訓練もずれにずれ込み、まだまだ途上だ。
大和と武蔵に至ってはまだまだ浮揚作業が終わっていない。
来年の初めには作業が完了し、修理に入れるとのことだが修理には相当時間が掛かるらしく、大規模改装に掛かる人員以外を全て修理に充てる予定だが、それでも1年以上は必要だそうだ。
修理はまだしも、訓練はフィリピン奪還には間に合わないと思っていた方が良いと言われている。
最悪、修理だけ終えていれば艦隊戦に参加させるのは無理でも対地攻撃に参加させるぐらいは出来よう。
対地攻撃とは言え実戦は実戦だ、良い経験になる。
艦隊の編成は以下の通り。
第一機動艦隊
第一航空戦隊
飛龍 蒼龍 瑞鶴 加賀
第一戦隊
戦艦
金剛 霧島 長門 リシュリュー
重巡洋艦
鈴谷 ザラ ポーラ 筑摩
第一水雷戦隊
軽巡洋艦
能代 阿賀野
駆逐艦
秋月 照月 Z3 初月 陽炎
雪風 浦風 萩風 初梅 初雪
浦波 菊月
ーーーーーーーーーーーーーーー
第二航空戦隊
大鳳 信濃 阿蘇 葛城
第二戦隊
戦艦
ビスマルク ティルピッツ ヴァンガード
重巡洋艦
熊野 アドミラル・ヒッパー プリンツ・オイゲン
第二水雷戦隊
軽巡洋艦
矢矧 酒匂
駆逐艦
若月 霜月 春月 村雨 時雨
響 朧 綾波 夏雲 暁 雷
電 長波
ーーーーーーーーーーーーーーー
第三航空戦隊
隼鷹 飛鷹 グラーフ・ツェッペリン アークロイヤル
第三戦隊
戦艦
リットリオ ローマ 比叡 榛名
重巡洋艦
青葉 古鷹 足柄
第三水雷戦隊
軽巡洋艦
多摩 由良
駆逐艦
宵月 満月 Z1 初雪 浦波
菊月 望月 望月 Z3 村雨
霜月 春月
ーーーーーーーーーーーーーー
第一護衛艦隊
第四航空戦隊
鳳翔 大鷹 神鷹
第四戦隊
戦艦
日向 山城 クイーン・エリザベス
ウォースパイト
重巡洋艦
那智 羽黒 愛宕 摩耶
最上
第四水雷戦隊
軽巡洋艦
名取 天龍 龍田
駆逐艦
花月 涼月 グレカーレ
リベッチオ ジャーヴィス
マエストラーレ 東雲 白雲
浦波 狭霧 子日 有明 海風
江風 峯雲 霞 藤波
ーーーーーーーーーーーーーー
第二護衛艦隊
第五航空艦隊
軽空母
海鷹 龍驤
第五戦隊
戦艦
ラミリーズ ネルソン
デューク・オブ・ヨーク
重巡洋艦
キャンベラ ゴトランド
デ・ロイヤル 加古
第五水雷戦隊
軽巡洋艦
鬼怒 神通
駆逐艦
沖波 清霜 白雲 有明
長月 荒潮 親潮 黒潮 竹
桃 椿 楓 樺 楠
大波 涼波 柿 梨 雄竹
第一補給艦隊
軽空母
千代田
重巡洋艦
最上
軽巡洋艦
名取 鬼怒 大井
駆逐艦
白雲 有明 長月 荒潮、親潮、黒潮
磯風 時津風 山風 初春 若葉
給油艦
神威 速吸 鷹野
龍舞 塩瀬 高崎
給料艦
間宮
以上のように編成された。
新設されたのは第二護衛艦隊と第一補給艦隊だろう。
長い間本土防衛艦隊を務めていた、
重巡
最上
軽巡
名取 鬼怒
駆逐艦
白雲 有明 長月 荒潮 親潮、黒潮
以上の艦は新たに編成された第一補給艦隊の給油艦と給料艦の直接護衛を務める。
千代田を航空戦力の要として編成し、それによって第二護衛艦隊の戦力低下が懸念されたが基本的には、第一、第二護衛艦隊と共に各地へ赴く為に変わらない。
第一、第二護衛艦隊はバラバラに動く、ではなく単純にリスクマネジメントの観点から分けた。
空母機動部隊の護衛を務める為に高速戦艦は一航艦に加えられ、山城は長門の代わりに第一護衛艦隊に編成されている。
全体的に戦力が向上し、幾らか余裕が出来たがそれでも戦力不足は否めない。
以上が艦隊編成などに関わることだ。
そして最後に、初となる捕虜の戦艦棲姫のことだ。
これはかなり厄介な問題だ。
まず扱いをどうするか。
捕虜と言っても、特殊過ぎる為にどうすれば良いか全く見当が付かないと言うのが正直なところだ。
中代大将に一任されている以上、無碍な扱いは出来ない。
「提督、彼女をどうされるおつもりですか?」
「それを今悩んでいるんだ……」
1日の執務を終えて、一息吐くためのお茶を淹れて来てくれた鳳翔に問われて、頭を抱える。
どんな処遇が正解なのか、まるで分からん。
「提督、もし宜しければ直接彼女に直接お会いしてみては?」
「俺がか?」
「はい。まだ捕虜尋問も行われていませんし、丁度良いかと。勿論、護衛は付けて安全を確実にした上で、ですが」
「珍しいな、鳳翔がそんなことを言うなんて」
「先ほど彼女と面会をしてきましたが、どうも敵意をらしい敵意を感じられませんでした。勿論警戒心はありますが……、なんと言えば良いか分かりません。ですが、それから処遇を決めても良いのでは?」
そう言う鳳翔は、堂々としている。
普段は自分を前面に出すようなことがない鳳翔が、こうまで言うのだから余程なのだろう。
「鳳翔が言うなら、そうなんだろう。お前は人を見る目がある」
「いえ、そんなことはありません。提督に関してはまるで見誤っておりましたので」
「……何の事か分からんな」
「提督、昨日徹夜されましたね?」
「……」
「しかも、ゴミ箱の中からこんなものを見つけました」
「気のせいだ」
「あら、おかしいですね。では誰が食べたんでしょう?」
不味い、完全に誘い込まれた。
何故だ?昨日徹夜したのが何故バレている?しかも腹が減って隠し持っていたレトルト食品を食べたことまでバレている。
ここを守る衛兵達にバレないよう巡回のタイミングなどは完璧に頭に叩き込んで電気を消したりしていたのに。
昨日、ついつい書類を整理していたら手が止まらなくなってしまったのだ。
それで夜食にレトルト食品を食いながらやっていたのだ。
これは不味い、非常に不味い。
鳳翔の目が全く笑っていない。これは本当に不味い。
明日は休みだから説教コースだぞ。
「申し訳ない……」
「全く、何度言えば分かるんですか!」
「はいっ!」
鳳翔の雷が落とされた。
暫くの間、入渠で鳳翔が俺の秘書艦を務めている。
艦の改装が終わり次第習熟訓練を開始するので、それまでは俺の秘書艦を務める。
鳳翔を隣に控えさせ、その前後に武装した兵士四人が控える。
プレハブ執務室のすぐ隣にある、収容施設へ向かう。
鳳翔に言われ考えてみた結果、戦艦棲姫と直接話し、尋問することにしたのだ。
はてさて、鬼が出るか蛇が出るか。
予想は出来んが、やってみよう。