暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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フィリピン奪還
第62話


 

 

 

 

1年が過ぎた。

艦の大規模改装は順調に進んでおり、4分の3程度が終了して訓練に移っている。

時間が掛かる大型艦の改装は全て終えており、残りは一部の軽巡と駆逐艦、それに給油艦と間宮のみである。

この調子であれば全艦が4ヶ月ほどで改装を完了し、訓練に移ることが出来る。

フィリピン奪還までには、8ヶ月もある。

訓練をして練度を高めるには十分な時間だ。

 

各方面に対する輸送船団の護衛は第一護衛艦隊が順次改装に入り続けている為に、空いた穴を埋めるのと遠洋航海訓練の為に一航艦の各艦が変わる変わる入っている。

 

防空戦闘なども発生するから新兵達の訓練にはうってつけだ。

護衛艦艇には一切目もくれずに輸送船を執拗に狙う敵機は、確かに狙わないと言う油断は出来ないにせよ対処しやすい。

 

 

 

改装した結果、戦艦は軒並み速力を30ノット程度に向上。

 

金剛 32.3ノット

霧島 31.7ノット

長門 30.7ノット

 

リシュリュー 33.4ノット

ビスマルク  32.6ノット

ティルピッツ 33.1ノット

ヴァンガード 32.2ノット

リットリオ  32.9ノット

 

ローマ 33.0ノット

比叡  32.4ノット

榛名  31.8ノット

 

ラミリーズ 28.2ノット

ネルソン  28.5ノット

 

デューク・オブ・ヨーク 30.9ノット

 

日向 30.5ノット

山城 29.2ノット

 

クイーン・エリザベス 29ノットノット

ウォースパイト    30.3ノット

 

金剛など、元々速力が速い艦は、全てではないが最高で33ノットを超える速力を叩き出している。

 

空母も軽空母を含めて全て30ノットを超える速力を有する事になり、速力不足による回避などの困難を避けることが出来る。

瑞鶴に至っては全力運転で37ノットもの、小型艦艇で特別製とも言える機関を載せている島風を除けば、海軍最速の速力を発揮し俺達の度肝を抜いた。

 

軽空母は、鳳翔同様に島型艦橋と煙突を一体化させ甲板下に艦橋があった時よりも比べるまでもないほどに視界を確保出来る。

これにより艦橋にいる見張り員が直接操舵手に敵機の情報を伝えられ、回避などを容易にする。

 

空母は飛行甲板の長さ、幅を確保しつつ格納庫も大きくしている。

軽空母の搭載機数は4機増えた程度であるが、全体では24機、空母1隻分の戦闘機が増えたことになる。

34機程度の艦載機で、12機を流星、残りを全て烈風と言う艦載機であるが目的が対艦攻撃ではなく、船団護衛であるのでまったく問題ない。

 

対空機銃や対空砲も全て更新され、より強力な対空射撃をすることが出来るようになった。

 

油圧式カタパルトの装備により、発艦に掛かる時間が大幅に短縮された。

攻撃隊の規模にもよるが、空母1隻が一度に出せる最大規模の攻撃隊だと、全機の発艦と空中集合に30分以上掛かるがカタパルトを使えば加賀の100機を超える艦載機全てを発艦させても30分程度で済む。

半分程度の機数と、全機で同じ時間だ。

 

今までは飛行甲板に一々艦載機を並べてから風上に向かって航行しなければならずに、運用上の制約があった。

しかしその様なことがなくなる。

停泊状態でも発着艦訓練が行えるから、より訓練がやり易くなった。

態々艦を航行させる必要も無く、燃料消費が抑えられその分敵潜に狙われる危険性が低くなる。

 

 

 

軽空母の艦載戦闘機が全て烈風に置き換えられたことで、零戦で問題になっていた敵機に対しての速力不足や攻撃力不足は改善され、より輸送船をしっかりと守ることが出来るようになる。

既に効果は表れており、烈風は20mm機銃4艇を搭載しているから一斉射撃を喰らえば幾ら頑丈な深海棲艦機と言えどもタダでは済まない。

単発機ならば撃墜は免れないし、4発重爆でもしっかり狙えば撃墜出来る。

切り替えによって全門射撃と2艇づつの射撃も可能で、継戦能力も高い。

それだけで長い間敵機の邪魔をすることが出来るから爆弾の命中率にも影響してくる。

 

被弾損傷した時にはより速く、より遠くに逃げることも可能だ。

今までは追撃されればまず逃げられないと言う危険が伴っていたが、30ノットもあればまず逃げられる。

逃げられなくとも、距離を詰められれ難いしその間に応援が駆け付けることだって出来る。

 

ただ、消費燃料が多くなったりとメリットばかりではないのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリピン奪還の準備も着々と進んでいる。

フィリピン奪還には12個師団を擁する陸軍第23軍が編成され、参加部隊はカリマンタン島などで上陸戦、ジャングル戦を訓練している。

今回は海軍陸戦隊が先発隊として上陸を行うのではなく、最初から陸軍が上陸し確保、海岸堡を構築する。

海軍陸戦隊は6個連隊を投入予定だが、その目的は強襲上陸や河川遡上などによる作戦行動だ。

フィリピンには大小様々な川が流れている。

それを使わない手は無い。

 

そこで河川を大発などを使って遡上し、戦闘地域の敵地後方を脅かすなどと言った作戦を全体の作戦の中に組み込んでいる。

なんせ馬鹿正直に平押しなんてまず出来ないし、態々戦力で確実に優勢な敵と正面から戦う理由も無い。

対ゲリラ戦の教育も行なっている。

 

対ゲリラ戦は、兎に角地道だ。

敵の拠点などの情報を収集し、偵察、索敵を行いつつ敵の拠点、構成人数、地形に関する情報を更に集める。

哨戒などで敵のゲリラ行動や移動を発見追跡し、強襲と伏撃で敵の後方拠点などの戦略上、必須である場所を徹底的に破壊していく。

本来、これらを行うには現地住民の協力が必要不可欠であるのだが、それは無いのであらゆることを我々だけでやらねばならない。

 

攻撃には航空機と地上部隊を連携させ、拠点攻撃には爆撃を行った後に地上部隊が確実に敵兵力を撃滅、拠点を破壊する。

ジャングルを丸々焼き払うなど、現実的ではない。

 

 

補給の問題もある。

ジャングルでの補給は兎に角厄介で、道を作りながらだと進軍が遅くなって仕方がない。

そこで、前線部隊には進軍戦闘を行わせ補給は、最早我が軍のお家芸ともなっている航空機による空中投下で実施する。

 

その間に補給拠点や道路を工兵隊や輜重兵隊が構築し、点を繋ぐようにしていくのだ。

補給線が一つだけだと、がやられてしまうとすぐに補給が寸断されてしまうので、主要な補給線を5つ構築していく。

そこから毛細血管のように各部隊に補給を行うのだ。

 

ただ、これだけ複雑だから補給が出来なかったりと支障が出るのは簡単に予想出来る。

それに関しては各部隊に対して補給が行われない場合、やはり空中投下による補給を行う。

 

補給用に連山を30機、物資輸送投下用に専用化し専用の改造を施す。

 

輸送船は諸兵科連合科を進め、数多くの重機材を含むことから、戦時急造輸送船3隻+戦車揚陸艦20隻の計26隻で1個戦闘団を乗せる。

1個師団につき、4個戦闘団を擁するから師団一つを運ぶのに104隻もの船が必要になる計算だ。

 

流石に全師団をいっぺんに運ぶのは輸送能力の関係上無理である。

 

輸送船や輸送艦の数も限られているからな。

そこで、2個師団づつを輸送することになった。

それでも208隻にもなるのだからとんでもない。

 

戦時急造輸送船が歩兵や工兵、輜重兵など重機材を持ち運ばない部隊を運び、第101号型輸送艦を拡大発展させた第200号型輸送艦を使用し戦車大隊や砲兵大隊と言った重機材を伴う部隊を運ぶ。

 

第200号型輸送艦は搭載能力

 

戦車300t

戦車用燃料 10t

弾薬 10t

糧食 20t

真水 12t

その他軍需品 12t

 

と言う積載能力を持つ。

簡単に言えば戦車の輸送能力に極振りしたような艦艇だ。

他の物資の輸送能力が下がっているが、基本的にはこれだけの物資を運ぶことが出来れば10日間は戦う事が出来る。

その間にまた運べばいいと言う訳だ。

 

 

 

諸兵科連合連隊だと長ったらしく言い難い為に、戦闘団に改名された。

 

1個戦闘団は以下の戦力を有する。

 

1個パンター戦車大隊 第200号型輸送艦6隻

1中隊12両×3中隊 36両

Ⅴ号弾薬運搬車 6両

兵員 約210名

 

1個歩兵連隊 輸送船1輸送艦2隻

装甲兵員輸送車 25両

トラック 20両

オートバイ 12両

ケッテンクラート 12両

兵員 2000〜2500名

 

1個砲兵大隊 輸送艦3隻

フンメル自走榴弾砲1中隊12両×3中隊 36両

砲兵観測小隊 

オートバイ 12両

ケッテンクラート 12両

Ⅴ号弾薬運搬車 6両

人員 約300名

 

自走対戦車砲中隊 輸送艦3隻

ナースホルン  24両

Ⅴ号弾薬運搬車  4両

人員140名

 

1個対空戦車大隊 輸送艦4隻

ヴィルベルヴィント 12両 

オストヴィント   12両 

クーゲルブリッツ   4両 

Ⅴ号弾薬運搬車   10両 

人員 140名

 

1個整備大隊 輸送艦3隻

整備機材多数

100〜150名

 

1個工兵中隊 輸送艦2隻

Ⅴ号架橋戦車  4両 

ベルゲパンター 8両 

ブルドーザー  5両

トラック    20両

70〜150名

 

1個輜重小隊 

30〜50名

 

 

大体3700名前後が戦闘団に属する。

全師団合わせて19万人ほどの戦力だ。

陸戦隊も合わせれば陸上戦闘戦力だけで20万人を超える。

他の支援部隊を含めれば更に増える計算だ。

 

陸戦隊は機動力が重視され、戦車などは装備せず、精々偵察用のオートバイやケッテンクラート、トラックや装甲兵員輸送車を装備するぐらいだ。

 

 

 

 

大まかな作戦の流れは決まっている。

作戦開始時、勿論こちらの上陸を阻止する為に敵艦隊との戦闘になるだろうと想定される。

 

海戦に勝利したならば、上陸である。

まず最初にルソン島の奪還を目指す。

アパリと言う町があった場所と近辺の海岸線に対して艦砲射撃を実施した後に、カガヤン川を挟んで2個師団を上陸させる。

 

アパリを海岸堡にしつつ、速やかに内陸部へ向けて前進を開始。

勿論、陸戦隊がカガヤン川を10kmほど遡上した場所にある中洲を確保した後に、3個連隊が分かれて海岸から進軍する友軍と共に敵の後方を脅かして挟撃する。

敵を包囲殲滅したならば3個師団ほどの兵力だから前進はそこで一度停止し、後に続く師団を待つ。

とは言えここまでに数日は掛かるとされているから、第二波が上陸する頃には再び前進を開始する予定だ。

 

ジャングルで戦わねばならないから、機動戦は出来ない。

フィリピン奪還は迅速性よりも確実性を優先する。

 

 

部隊の規模が規模がだから一箇所に集めておくことは難しい。あきつ丸や神州丸を含む、輸送船団をパラワン島と沖縄からの分散出撃になる。

 

沖縄からの部隊は太平洋側に展開し、パラワン島の部隊は南シナ海側を展開、担当する。

沖縄からの船団は一航艦が、パラワンからの船団は第一護衛艦隊と第二護衛艦隊が担当する。

 

アパリ上陸からタイミングをずらしてビガン、と言う場所に上陸する。

手筈は同じだ。

ビガンに上陸する陸戦隊はラグベン川を遡上する。

 

そしたらば、タヤバス湾に出るまでの奪還制圧を進める。

そこまでが第一段階だ。

 

 

第二段階

残ったルソン島南部とポリロ諸島、ミンドロ島含むカラミアン諸島、ボアク島、ブリアス島を奪還する。

 

第三段階

タブラス島、シブヤン島、パナイ島、ギマラス島、マスバテ島、ティカオ島、サマール島までを奪還。

 

第四段階

ネグロス、セブ、ボホール、レイテなどの島々を奪還する。

 

第五段階

最後に、ミンダナオ島含めた奪還地域以南を奪還する。

 

 

 

フィリピン奪還は、五段階に分けられて進められる。

 

上陸地点が分かれており、各個撃破されることを防ぐ為に敵艦隊との戦闘までは行動は共に行う。

最初にアパリへ、次にビガンへと上陸する。

海戦の結果次第だな、これは。

 

 

フィリピン奪還が成功した後に、少しの準備期間を再度設けてからスラウェシ島と小スンダ列島を奪い返す。

敵艦隊が出て来れない内にやるのだ。

我々のシーレーンの安全を確実なものにする為に2ヶ所の奪還は必要不可欠。

スラウェシ島や小スンダ列島自体が資源地である事も重要だ。

それ以上は奪還を進めない。

急激に奪還地域が増加しても防衛に割ける戦力の問題などがあるからだ。

 

小スンダ列島までを奪い返せば、オーストラリア北東部のダーウィンやダービーに直接上陸することが可能だ。

オーストラリアを奪い返す事が出来れば、豪州そのものを一大拠点にする事も可能だし、豪州から直接航空攻撃で圧力を加えられる。

そうなると南太平洋での作戦がやり易くなる。

 

もしオーストラリアと言う国がまだ、生きているのなら我が軍に掛かる負担が随分と減るんだが……。

補給も豪州で食料生産が出来るようになれば楽になる。

サトウキビや小麦と言った主食類、他にも牛肉などのタンパク質の生産が軌道に乗れば食料不足を解決する事だって可能だ。

3000kmも輸送しなくて済む。

 

カリマンタン島は無理にせよ、ジャワ島などどこでも良い、1箇所でいいから補給を任せればこちらはその分負担が軽くなる。

 

しかし仮に生きていたとして内陸部、豪州政府と軍、民間人が撤退した中央部までの距離は1000kmにもなる。

今でさえ日本から4000kmもある補給線を維持するので大変なのに、更に1000kmも伸びるのは、かなり辛い。

それに初期投資にどれぐらい掛かるかと言うのも問題だ。

最初から頼れるような訳がない。

 

初期の段階は、間違い無く豪州政府から防衛の為の部隊派遣、武器弾薬の貸与や食料医薬品の供給を懇願されるだろう。

ただでさえ我々も兵力不足で頭を悩ませているのだ、どれだけの戦力などを抽出出来るか分からない。

予定では、ニューカレドニアの奪還も目指している。

やはり資源の問題で、ニッケル、コバルトの世界有数の産地だ。

他にもクロム、マンガン、ラテライト、銅、鉛、亜鉛、石膏、水銀、アンチモニー、金、石炭、褐炭など様々な資源を産出する。

豪州と、ニューカレドニアを奪還することが出来れば資源問題は解決する。

あとはそれらを利用する為の生産設備などを揃えればいい。

 

だが問題がある。

まず第一に挙げられるのが、距離だ。

 

豪州までの距離は東京から6800km

カリマンタン島4654km

ジャワ島5786km

スマトラ島5627km

 

これだけの距離がある。

しかし豪州はそれより直線距離で1000kmも長く、ニューカレドニアも6851km離れている。

これはあくまでも、直線距離でしか無く、太平洋のパラオやトラックと言った要衝を奪還していない我々には、豪州へ向かうにはカリマンタン島などを経由する必要がある。

 

カリマンタン島を経由した場合、大体4500km離れている。

併せて11300km。

フィリピン経由でもニューカレドニアまで7600km。

とんでもない距離だ。

 

しかし戦争に勝つ為にはやらねばならないと言うのだからなぁ……。

トラック泊地やウルシー環礁、エニウェトク環礁、ウェーク島などが泊地として使えるならば随分と楽になるが、それらの場所には深海棲艦の一大拠点である棲巣が構築されている。

奪還にはそれを叩かねばならない。

トラックにせよウルシー環礁にせよ、奪還しても使えない。

 

理由はマリアナだ。

あそこは誰もが知っている通り、B-29の拠点だ。

マリアナを叩くか奪還しなければ本土と同じ様に連日爆撃をされて、艦艇の停泊など出来ようもない。

今の我が軍ならばマリアナやトラック泊地の奪還ぐらいなら出来るのだが、問題は果たして奪還をしたとして維持し続けられるか?だ。

ただでさえ補給線は南方方面に対する補給で、てんてこ舞いの大忙しなのに、別方面に対する補給の必要性が出てきたら破綻するのは判り切っている。

それでは本末転倒だ。

 

維持までを考えるなら、どちらかが精一杯だろう。

となると、基地として機能させるにはトラックは無理、マリアナも投入兵力不足の問題で不可能。

 

とは言えそれでは豪州奪還は進まない。

海軍だってそれは痛い問題であることは重々承知の上で豪州奪還の足掛かりに出来る場所はないものか、と探し続けている。

実を言うと、全く無いわけではない。

 

奪還と維持が出来なくも無い、と言う場所はパラオである。

ウルシー環礁でない理由は、まずマリアナに近過ぎること。

それに比べパラオはマリアナよりも遠く、他の泊地に比べ防衛が楽なのだ。

ウルシーなどは大きな島が無く、陸軍部隊一つ置くのにも規模を考えねばならない。

最大でも全体で連隊を置ければいいか、と言うぐらいだ。

しかしパラオは師団単位での纏まった戦力を単一で防衛に就かせる事が出来る。

しかもウルシーのように真っ平で隠れる場所が全くないのと違い、山などがあり防衛がしやすい。

それでも1個師団に旅団を一つ置くのが精一杯だろうが、たった1個連隊だけよりは遥かにマシである。

 

しかも泊地として使用出来る環礁が2箇所もあり、その気になれば合わせて1000隻ぐらいは停泊出来ると過去の調査結果で出されている。

しかし現実的なところ、700隻ぐらいが良いところだろう。

ぎゅうぎゅう詰めにしても艦の移動など、空襲を受けたりした時の避難もやり辛くなる。

 

更には奪還に必要な戦力も少なくていい。

どうやら敵はパラオを最低限の守備隊と航空隊を若干置いているだけで重要視していないらしい。

パラオにあった棲巣も無くなっている。

 

と言うのも、我々にとっても敵にとっても主戦場は中部太平洋では無く南太平洋であるとの認識が強い。

だから失った戦力を補う為に主戦力の殆どを、中部太平洋や北部太平洋から引き抜いていると潜水艦隊による偵察で判明している。

元々パラオには空母6隻、戦艦5隻、巡洋艦16隻を擁する大規模な守備艦隊が駐留していたのだが、今は空母2隻に戦艦2隻、巡洋艦が3隻程度であとは若干の随伴駆逐艦がいる程度だ。

我々の脅威たり得ない。

航空戦隊と護衛艦隊を一つずつ出せば十分足りる。

どうやら航空機の中継拠点ではあるらしいのだが、南太平洋の島々を経由すればいいから大して使われていない様子だ。

もし大規模に使われているとしたら、それこそ潜水艦隊に把握されている筈だが、月に2、3回しかないらしい。

 

これら全てが我々を誘き出す罠だとしたら、大したものである。

 

 

しかしそれ以外の場所の戦力は引き抜かれたとは言えまだまだこちらも全力で当たらねばならないほどの戦力がある。

 

フィリピンとスラウェシの奪還が終わったら、軍部で一応の準備を進めているから作戦決行自体は可能だ。

やらなくても別の島を奪還する為のに回せばいい。

まぁ、フィリピン、スラウェシ、小スンダ列島の奪還が成功したらパラオ奪還は実行される手筈になっている。

 

小スンダ列島の奪還まで進めば豪州は目の前だからだ。

 

 

まぁ、いずれにせよ豪州の件は我々とて言い方は悪いが、生きていたら良いな、ぐらいだ。

最初から期待はしていない。

 

 

 

 

 

 

 

「次期艦載戦闘機は、まだまだか……」

 

報告書を読み、息を吐く。

以前航空技術廠に対して開発を命令した新型戦闘機のことだ。

 

中々開発が進まずにいる。

出来る限り早い段階で実戦投入を行いたい。

 

理由としては、今現在の主力艦載戦闘機である烈風は確かにエンジンの強化などで性能自体は向上しているが670km/hを発揮出来る様にはなっている。

しかし敵だって馬鹿じゃ無い。

速度性能では強化が続けられたF4Uには烈風は太刀打ち出来ない。

F4Uは今では約700km/hを発揮すると報告が出ている。

 

30km/hも速度差があるのだ。

航空戦にとって40km/hの差、と言うのは馬鹿に出来る話じゃ無い。

車で例えると分かり易いが、どちらが速く敵艦隊に到達出来るか、そう言う話だ。

攻撃機の速力もあるから一概には言えないが、それでもこちらの攻撃隊を守る烈風は流星と言う足枷がある。

大得意であり、やれば勝てる自信がある、と言える格闘戦に移りたくても攻撃隊を何よりも守らねばならないから深追いは出来ない。

しかも相手は迎撃だから足枷も何も無く、自由に飛び回るから追い掛けても振り切られてしまう。

 

それでも何故対抗出来ているか、と言うと単純な話で原田少将以下、母艦戦闘機隊の技量が並外れて優れているからだ。

簡単な話、搭乗員の技量に頼らざるを得ない状況になってしまっている。

 

これが意味することは、熟練搭乗員が軒並みやられてしまうと若年搭乗員ばかりになってしまい敵に歯が立たなくなってしまうと言うことだ。

今は戦いと戦いの間が長く訓練期間を十分に設けられているが、そうで無くなった場合、待っているのは地獄である。

 

確かに搭乗員の技量も重要だが、戦時にはそんな腕を磨いている悠長な時間は無い。

だから出来る限り早く、技量が無くても機体性能で対抗し得る新型戦闘機をロールアウトさせる必要がある。

 

震電を艦載機化出来れば良いのだが、そうなるとまず空母の飛行甲板をジェットエンジンの熱に耐えられる様に全て張り替えて重量に耐えられる様に強度を見直さなければならない。

 

カタパルトの射出性能は全備重量の流星を射出出来るよう、7tもあるから問題無い。

実際に射出出来るかどうかは分からんが。

滑走距離や加速が足りなくて海に落ちるとか、最悪だぞ。

カタパルトに射出された機体が海面に叩きつけられたら、搭乗員は間違いなく死ぬ。

 

 

しかし何よりも問題なのは、エンジンだ。

今の震電に載せられているエンジンの稼働限界時間は確かに伸びたとは言え稼働限界時間は600時間が精々である。

 

陸上では十分な整備とエンジンの交換が出来るが、限られた容量しかない空母の上では出来ない。

しかも基本的に作戦が長期に渡る我々は、どうしてもその補給を維持出来ないのが実情だ。

ジェット型の震電を艦載機とするならば最低でもエンジンの稼働限界時間を1500時間に伸ばさなければならない。

 

レシプロ型の震電ならば可能だが、空母の格納庫天井の高さを確認し、必要ならば増やしたり、着艦などに必要なアレスティング・フックの搭載などやらなければならない改装はかなり多い。

しかも、まず最初に震電が母艦戦闘機としての任務を全う出来るのか、と言う疑問がある。

確かにレシプロ型の震電でも760km/hの最高速度を発揮出来るが、だからと言って流星と一緒では全力は出せない。

 

そもそも震電は、「高高度迎撃用戦闘機」として開発されたのだから、最初から艦載機として開発された訳ではない。

下手に艦載機として運用しようとすると間違いなく、性能がガタ落ちするのは目に見えている。

 

 

 

「漸くモックアップが完成した段階ですから、これからですね」

 

「要求性能が、過大過ぎたか?」

 

「いえ、そんなことは無いかと思いますよ。寧ろ妥当かと」

 

「深海棲艦の戦闘機は、陸上機のP-51に至っては時速750kmを超えますし、艦載機も新型が出て来れば間違いなく時速700kmに迫る高速性能を備えているに違いありませんから」

 

「難しいところだな……」

 

本日の秘書艦である飛鷹が言う。

彼女も、隼鷹と言う破天荒な奴が隣にいて目立たないだけで優秀だ。

しっかり者だから、よく世話になる。

 

まぁその分不摂生をするとよく怒られるんだが。

自慢でもなんでも無いが大体の艦娘に怒られたことがあるぞ、俺は。

 

「まぁ、エンジンの性能もあって700km/hは発揮出来るそうだからあとは完成を待つしかないな」

 

ハ43が2100馬力を発揮出来て本当に良かった。

エンジン性能だけで見れば、DB601やマーリンエンジン、グリフォンエンジンがあるが、液冷式のエンジンを空母では使えない。

 

いや、使えるのだがなんせ空冷に比べて空母艦上での信頼性が劣る。

これは機械的なものが2割、人手的なものが8割だ。

 

液冷は生産するにも整備するにも、専門的であり熟達した技量が必要だ。

その点、我が軍は液冷エンジンには全くの不慣れと言っても過言ではない。

殆どの者が空冷エンジンしか扱ったことがないのだ。

と言う事は液冷エンジンの整備生産をやらせたら地獄の始まりである。

 

今液冷エンジンの整備や製造を行えるのは文字通り小数精鋭の、専門教育を徹底的に、年単位での時間を費やして履修した者ばかりだ。

それとは違い、前線部隊の空母にはそんな時間は無い。

 

採用されないのには他にも訳がある。

空冷エンジンと違い、液冷エンジンの生産設備が極小数であること。

晴嵐なども含め、予備を含めても1000機ほどの生産を行えば現状は十分に足りる。

 

しかし空冷は陸海軍含めても常に1万機分は生産し続けねばならない。

でないと撃墜されたりエンジン交換などの補充分や新たに編成される航空隊の分を賄えなくなるからだ。

 

もし母艦艦載機全てのエンジンを液冷に変えるならば約1300機、予備などを込みで考えると1500機分の、現状生産分の2.5倍にも生産を増やさねばならない。

 

と言うことは単純な考えだが、余裕を持って生産設備の数を3倍に増設してからでないと生産が出来ないと言うことになる。

生産を行う人手も3倍、整備を行う人手も3倍である。

整備兵にも生産を行う者達にも、十分な教育を施さねばならない。

 

資源不足もあってどう考えても、現実的ではないのは確かだ。

 

 

 

頭を悩ませながら執務を熟していく。

フィリピン奪還作戦、スラウェシ奪還作戦、小スンダ奪還作戦の準備にも追われながらである。

 

 

 

作戦決行まであと1年。

 

 

 

 






飛龍
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計82機
 
蒼龍 
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計82機
 
瑞鶴 
烈風41機 流星52機 彩雲9機 計95機
 
隼鷹 
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計78機
 
飛鷹 
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計78機
 
天城
烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
 
阿蘇
烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)

 
大鳳
烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)

 
グラーフ・ツェッペリン
烈風37機 流星20機 彩雲6機 計63機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)

 
アークロイヤル 
烈風37機 流星24機 彩雲6機 計67機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)

信濃
烈風70機 流星48機 彩雲6機 計124機
 
加賀
烈風70機 流星48機 彩雲6機 計124機

鳳翔
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
 
大鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)

神鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)

海鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
 
龍驤 
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)

千代田
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)

 


烈風650機
流星484機
彩雲116機
 
計1235機





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