暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第64話

 

 

 

沖縄沖で、輸送船団との合流も無事に終えた。

少し季節外れの嵐に見舞われたぐらいで、問題らしい問題は無い。

索敵に関しても、潜水艦隊が敵艦隊を尾行しつつ逐次暗号文を送ってくるので、把握出来ている。

 

 

 

順調にフィリピン沖に到達し、各方面に索敵機を放つ。

潜水艦隊が振り切られ、動向を追えなくなったからだ。

 

最後の報告によると、ポリロ島沖東300km地点で見失ったらしい。

敵艦隊は太平洋側から我々を迎え撃つ腹積りのようだ。

規模は大型空母9、小型空母2、戦艦9、巡洋艦18、駆逐艦多数。

 

引き抜かれたとは言え、かなりの規模だ。

艦載機は1000機に迫るだろう。

 

こちらの艦載機数のが200機ぐらいは多い計算になるが、陸上基地の敵機も問題だ。

 

ただ陸上基地の無力化に関しては策がある。

夜間爆撃である。

 

我々だってただ手をこまねいていた訳ではない。

以前から議論の的であった夜間の敵基地や敵艦隊に対する攻撃を以下に実現するかなど、様々な技術的な物事を色々と試行錯誤していた訳である。

 

それにより対地、対艦、対空、あらゆる場面での夜間攻撃の方法は長いこと模索していた。

そして前々から研究していた機上電探を迎撃以外にも活用出来ないか、と言うのは当然の帰結であった。

 

とは言え機上電探は、初期段階では兎に角まともに作動させるのが精一杯であり、とてもでは無いが機体に載せるどころではなかった。

地上での動作が漸く安定してきて、双発機以上の機体に載せてさぁ、と思ったら、これまた故障やら発火やらが起きるわで、これまた小型軽量化どころの話ではなかった。

 

それらの問題が解決し、双発機以上の機体に載せても安定して使える、代物が完成した。

そこからは量産に向けて機構の調整やらなんやら、様々な改良や改修を施し戦力化と量産体制が整った。

 

しかし戦力化が叶ったがだからと言って小型軽量化が出来るわけではない。

あくまでも双発機以上の機体に乗せるために開発したのだから、小型軽量化は並大抵の事では実現出来ない。

 

 

 

小型軽量化、これがまた難題で技術陣営は連日連夜頭を悩ませることに。

銀河や連山、二式大艇の様な中、大型機に搭載するならまだしも単発機で積載面積の限られている烈風や流星に載せるのは簡単の事ではなく、至難の業だ。

 

下手にでかく重いまま載せたら、機体重量が増えてバランスが悪くなり戦えなくなる。

飛ぶのがやっと、なんて辛うじて飛行機、と言うだけである。

戦闘機などでは決して言えない。

 

そこで、まずは取り敢えず載せられる程度まで小型軽量化と性能向上を分けて実行することになった。

同時にやるのは無理だと判断したからだ。

 

この時既に、カタパルトが形になり始めていたからカタパルトが射出出来る重量を超えない程度で取り敢えず小型軽量化を、一旦やってみる事になったのだ。

 

 

必死になって漸く小型軽量化が成功したのだが、更なる難題はこれからだった。

 

早い話が、性能不足に泣きに泣いたのだ。

当然ではあるが、小型軽量化をするとその分性能が落ちるのだ。

同じ性能を求めるのは技術的に困難であるから、性能自体が低下しても単発機への搭載が目的だからそこは織り込み済みだ。

しかしその低下した性能が、余りにも低過ぎたのだ。

幾ら分けてやるとは言え、話にならないレベルである。

 

最初は数kmどころか200m先までを探索するのも精一杯で、実際はただ無駄にレーダー波を垂れ流しているだけ、そんな状態からのスタートだった。

 

それも信頼性が低過ぎて、全く何も無い場所に大編隊が現れたり、そもそも機能しなかったりする始末。

挙句の果てには発火に出火、爆発までするのだからもう大変だった。

実際、試作19号機まで作られているが、その内の13機はなんらかのトラブルや事故が原因で失われている。

 

しかしそれで見切りを付けられるほど、機上電探の価値は低くない。

寧ろ物凄く高い。

 

 

機上電探の効果は震電による夜間本土防空戦においてその価値は分かっていた。

戦前のように、当たり前の様に飛行機に電探は載せられていないから、夜間の迎撃戦というのは、と言うより夜の空というのはおいそれと手を出してよい領域ではなかったのだ。

 

しかし機上電探が、震電と共に迎撃に上がり誘導を行う銀河に載せられるや否や、真っ暗な夜間でも当たり前の様に昼間と変わらない戦果を出し始めたのだ。

 

夜の空は、手を出さざる領域ではなくなったのだ。

流石に震電に載せることは叶っていないが、誘導を行う銀河に載せただけで効果抜群である。

それぞれの震電全機に載せることが出来たならば、とんでもないことになる。

先んじて搭載された震電改12機は、夜間での戦果が倍増。

可能な限り早急に実戦レベルにし、陸海軍機全機に搭載すべし、と報告してきている。

 

既に銀河と連山、二式大艇には1編隊に付き1機の割合で搭載が進んでいるほどだ。

全機に搭載したいが、生産数の関係上叶っていない。

 

 

 

それは母艦艦載機の烈風や流星、彩雲に限らず紫電改、陸軍の疾風や百式司偵、全機種に同じことが言える。

夜間に飛べると言うのは軍事上では途轍も無く大きな意味を持つ

夜間飛行に加えて作戦可能となれば、それだけに戦術、戦略的価値は高く作戦の幅が広がる。

改良を重ねれば陸軍部隊の夜襲を、対地支援すら出来るようになるかもしれない。

 

ただ、問題は載せる場所が難しい、と言うことだ。

電探は、レーダー波を照射してその跳ね返ってきたレーダー波を受け取ることで相手の位置を探る。

 

ここで問題になるのは、機上電探にするとなると基本的に指向性、ある一方向にしかレーダー波を照射することが出来ないと言う事だ。

双発機や4発機ならば、左右の翼にエンジンがあるから機体のどこに電探を載せても機体の先端に照射装置や受信装置を纏めた送受機アンテナ、と言うのを載せられる。

 

しかし単発機は、機体の先端にエンジンがあり、そこに送受機を置く事は出来ない。

そんなスペースは無いからだ。

紙程度の厚さなら別だが、そんな代物戦前にすら無い。

 

結果、電探本体は機体後部のスペースに載せられるが、肝心の送受機アンテナを載せる場所に困ったのだ。

胴体上部に載せたら後方視界が悪くなり邪魔で無理、下部にぶら下げたら震電の様に脚を長くして地面や甲板から高さを取らないと離着陸が出来なくなる。

格納庫の関係上、それは出来ない。

 

と言うか胴体上部も下部への取り付けも、運用以前にレーダー波を照射すると、レーダー波が自分の機体に反射してしまい、画面にデカデカと自機が映ってそれどころではなかった。

 

結果、翼内に載せるのが一番現実的である、となった。

翼下や翼上には空気抵抗で吹っ飛んだり折れたりする可能性があるから無しだ。

 

そうなるとやはり小型軽量化を図って、翼内部に載せ、尚且つ機銃や弾薬の量を減らさず邪魔せず、としなければならない。

 

最終的に小型軽量化自体は時間を掛けたのもあって達成、信頼度もそこそこ、7割程度と中々。

 

しかしそこからがまた苦労の連続だった。

銃身や銃機関部の近くにおいたら自身と銃の熱が放熱し切れなくなり翼が歪んだり装置がぶっ壊れたり、射撃時の衝撃でぶっ壊れたり。

 

胴体の近くに置いたらまた自機を映してしまう。

弾数を減らすのは継戦能力の観点から望ましくなく。

 

結果的に、機銃そのものを外側に大きくずらして、ずらした場所に装置を載せることになった。

機銃を下手に機体に近付けると、プロペラの回転と同調させなければならなくなる可能性がある。

だから外側へずらす事になったのだ。

 

これなら弾数を減らしたりしなくて良いし、距離があるから装置や機銃が干渉して熱を持ってぶっ壊れたり、弾詰まりを起こしてぶっ壊れたりしない。

なんなら外側にずらした事で送受機アンテナ一式と燃料タンク以外のスペースが出来たことにより、逆に装弾数が1挺当たり15発、全部合わせて60発増えることになった。

詰め込めば100発は増えるだろうが、流石に故障のリスクを負ってまで増やせない。

 

そうして必死に改良を続け、漸く完成したのが9ヶ月前のことで、量産型にする為の改良やらで量産が開始されたのが2ヶ月前。

 

機上電探の生産数は烈風71機、流星63機分だけであり、全く数が足りない。

とは言え載せられるだけ載せている。

 

 

で、この夜戦可能型の烈風と流星を使って敵基地に対する夜間爆撃を行おうと言う訳だ。

実験では島を捉えたり、山を捉えたり、大型艦程度なら探知出来るが流石に敵飛行場の正確な位置や滑走路、対空砲、格納庫の位置が分かるわけではないので、流星には特別に翼下に照明弾を左右4発づつ、計8発搭載出来るように改造を施した。

これで照らせば敵飛行場のどこに爆弾を落とせば良いか分かると言う寸法だ。

 

ただ機上電探も万能ではない。

いくつかの欠点がある。

 

第一に銀河などの機体に搭載されている機上電探とは違い、高度4000〜5000mになると空気が希薄になるために放電してしまい、それによりプレート電圧の低下やグリッド管と放電で繋がってしまう。

解決策は、単純にそれ以上の高度で運用しないことだ。

それ以上の根本的な解決策は、電圧自体を下げることだが改良はまだまだである。

 

第二に、飛行高度を高く取った時に1000〜1500m以内の近距離目標を映そうとすると、海面の反射波と目標の反射波がごっちゃになり、ブラウン管の画面上での区別が全くつかない。

これは高度を上げないことでしか今のところ解決策は無い。

 

 

第三に、第二の問題点から派生したようなもので下方向に機体を向けると地面や海面に反射してそれ以外が全く見えなくなること。

上方向には雲がない限りは問題無い。

 

そしてその問題点により、基本的に水平方向でしか機動を取れない、戦闘を行えないと言うこと。

簡単に言えば縦方向の機動が制限される。

電探画面に敵機を映そうとすると、真下を向く事が出来ないのだ。 

 

これも解決策は無く、改良が待たれるばかりである。

 

 

 

結果、運用をするにはまず高度は1000〜3000mに限定し、水平方向の機動を主とする。

かなり制約が多いが、夜間に航空機を運用出来る、と言う利点の方が遥かに大きいから今回初めて実戦投入に踏み切った訳である。

 

夜間に航空機を動かせると言うことは、それだけ選択肢の幅が広がるからだ。

 

 

 

中、大型機用の機上電探なら多少デカくても積載には困らないし出力不足に泣くこともない。

それらの問題など起こらず、信頼性もあり、偶に故障すると言った感じなのだがまさか空母に銀河や連山を載せる訳にも行かない。

 

と言うかそもそも連山は論外として、銀河は載せることは出来ても発艦出来ないのだ。

 

単純な話、カタパルトの能力が足りないのである。

カタパルトの射出能力は魚雷をぶら下げた流星の6tを射出出来なければならないから、余裕を持って7tの射出能力がある。

 

しかし銀河を射出するには、機体自重だけで約7.3tの銀河だ。

爆装しようものなら正規全備重量10.5t。

過荷重重量の場合13.5tにも達する。

仮に過荷重重量で射出するならば余裕を持たせるなら15tは欲しい。

と言うことは、倍以上の射出能力向上をせねばならないと言うことだ。

 

爆装せずに、偵察などを主目的にするにしても結局10tの射出能力はなければならない。

更には銀河の機体強度は射出に耐え得るほど足りるのか、と言う問題もある。

カタパルトでの射出は、空中で徐々に速度を上げたり、急降下で最高速度や限界速度を発揮するのとは訳が違う。

瞬間的に、0.1秒とかで100km/h以上に達する代物だ。

機体強度が足りなければ加速中に分解待った無しである。

 

烈風と流星は元々零戦とは違い、設計段階で機体を頑丈にしていたお陰で多少の補強をするだけで済んだ。

エンジンも2100馬力と余裕があったし、機体を補強する為に重量が増えても最高速度が5km/h程度低下するだけあり、運動性能の低下などは見られないと影響は少なかった。

 

銀河もエンジンが二つあり、最高速度も609km/hを出せるから速度を幾らか犠牲にすれば機体強度は確保出来るだろうが、結局はカタパルトの性能を上げなければ無理である。

少なくとも今の段階で銀河の艦載は無理である。

 

しかも、カタパルトの長さを延伸せねば加速が足りずに海に落ちる。

 

仮に銀河を搭載するとしても、結局烈風や流星にも電探は載せることになる。

戦術的には銀河の空母搭載は、哨戒や索敵と言う意味、対地攻撃の観点からは有効であるだろうが載せても飛ばせないなら意味が無いない。

 

単発機用機上電探とカタパルト、どちらも開発を進めていたが機上電探のが先に取り敢えずの実戦段階になり、カタパルトは開発中と言う訳である。

 

 

 

 

「提督、索敵機からは何の報告も無し」

 

「報告無し?どう言う事だ」

 

「敵艦隊は見つけられなかったみたい。索敵限界線に到達したから折り返して帰ってくるって」

 

「おかしいな……」

 

「え?」

 

「敵艦隊は、ポリロ島沖東300kmで最後に確認されている、で間違い無いな?」

 

「そうであります」

 

「なら、そのまま北上して我々を迎撃するならとっくに会敵していてもおかしくは無い。しかし索敵限界線までの間に敵艦隊は居ない」

 

「どこに行った、となりますな」

 

「幾つか予想は立てられる。1、我々と戦うことを嫌がり逃げた」

 

「有り得ませんな」

 

「無いんじゃない?」

 

「俺もそう思う。敵の性質上、戦わずに逃げると言うのはまず有り得ない。では2、敵には別働隊がいて、それと我々を挟撃するか、もしくは合流を企んでいるか」

 

「仮に居たとして、どこに?」

 

「可能性があるのは、南シナ海側、セレベス海、スールー海のいずれかに居ることだが、事前の偵察でこれらには居ない。となると艦隊が停泊出来る近場にある場所は、パラオかウルシーぐらいだ」

 

「ですが、パラオ、ウルシー環礁のどちらにも艦隊は見つかっておりません。仮に居たとして、合流が間に合うかどうか」

 

「ならば、どこか別の場所に隠れているか3つ目の選択肢だ」

 

「3つ目?」

 

「輸送船団だ」

 

「輸送船団、ですか」

 

「そうだ。敵は我々の上陸を阻止出来れば良い。しかし一航艦と直接戦うにはリスクが大きいし、勝ったとしても護衛艦隊ともやり合わねばならん。そうなれば消耗している状態になるから勝ち目は薄い。しかし輸送船団を最初から狙ったなら、話は別だ」

 

「……有り得る話ですな」

 

「一航艦と直接対決を避けつつ、上陸を阻止出来て尚且つ暫く我々が動けなくなる損害を与えられる目標となると、輸送船団しかない」

 

「本土への攻撃は?」

 

「先ず無い。あったとしても哨戒線に引っ掛かるし、どこを攻撃しても間違いなく基地航空隊から反撃を受ける。そも、メリットが無い」

 

「それはどう言う……」

 

「北海道と違って本州を守る部隊の規模は遥か上だ。陸上部隊、航空隊、いずれにせよ、だ。上陸するにしろ一過性の攻撃をするにしろ、用意しなければならない上陸戦力は数十万、艦隊の規模も足りない。上陸するとしてもそれだけの部隊を載せる様な大船団を見落とす訳がない」

 

「確かに……」

 

 

「多分、我々の索敵を避ける為に潜水艦隊の尾行を前提として一度北上したのだ。それで、適当な場所で振り切って、大きく迂回、側背を突こう、と言う事かもしれない」

 

「では、どうなされるのですか?」

 

「このまま予定通り、敵飛行場に対する夜間爆撃を行う。昼間になって、敵飛行場と挟撃されるのは避けたい。多分、敵の索敵機に接触されていないから敵攻撃隊の射程には収まっていない筈だ」

 

攻撃があるとしたら、迂回をしていたとして明日の日の出と共に発艦を行う筈。

航続距離の問題もあるから、日の出までに出来る限り近付いて来るだろう。

 

恐らくは200海里〜300海里程度にまで接近してから攻撃隊を出す筈。

300海里ならば最も足の遅いヘルダイバーに合わせると、ヘルダイバーの巡航速度2時間は掛かる。

 

仮に燃費を無視して突っ込んできても、1時間は掛かるだろう。

迎撃の準備を整えるには十分な時間だ。

 

「護衛艦隊には敵艦隊がそちらを狙う公算大、と警戒するように打電。暗号化を忘れるな」

 

「はっ」

 

上陸地点に近い敵飛行場はバスコ、バギオ、カガヤン、ラワグ、トゥゲガラオにある。

 

5ヶ所の飛行場を潰さねば、上陸は出来ない。

まずはバスコとカガヤン、次にラワグとトゥゲガラオ、最後にバギオを叩く。

 

戦力的に同時に叩くのは無理だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、攻撃隊の発艦準備は2030までに整えられます」

 

「よし、ならば発艦は2040とする」

 

「はっ」

 

戦力は全力出撃である。

夜戦可能型の烈風71機、流星63機を一航艦空母が烈風5機づつ、加賀は11機。

流星は6機、加賀は3機づつを載せている。

 

 

準備が終わり次第、即座に発艦を開始した。

最大でも16機の発艦だ、手間取りもしない。

胴体に25番タ弾を2発、6番タ弾を4発の機体と通常陸用爆弾2発、6番陸用爆弾4発の機がいる。

 

目標を航空機などと滑走路に分けているからだ。

烈風にも翼下に6番陸用爆弾を4発ぶら下げさせている、

 

流星には全機に翼下懸架で8発づつの照明弾を載せている。

2隊分の照明弾があれば、十分であろうが初めての夜間爆撃だから念の為である。

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 原田 ーーーー

 

 

 

 

 

真っ暗な空を飛ぶ。

長いこと搭乗員としてやってきたが、夜の空を飛ぶというのは初めてのことだ。

 

周りは何も見えず、明かりと言えばコックピットの中の計器類を照らす為の小さな照明だけ。

僚機や攻撃隊の編隊のエンジン音は聞こえるが、それだけだ。

 

電探には今の所味方機しか映っていない。

 

電探を載せる改造を施された機体を渡されたのは、誰も彼もが母艦航空隊の中でも特に指折りの実力者である。

戦闘機隊にしろ、流星にしろ提督が着任された頃から生き残っている、文字通りの歴戦の搭乗員ばかりでその実力は疑いようも無い。

 

 

 

 

カガヤン攻撃隊と分かれてバスコ飛行場を目指す。

 

「攻撃隊長、敵飛行場との距離は?」

 

『あと20分ほどです。もし迎撃を受けるならとっくに歓迎されてます』

 

「迎撃機の心配は、無いか」

 

対空砲火も無く、出迎えもない。

多分電探の電源を落としているな?

 

結局俺達は迎撃に出迎えられることも無く、無事に全機が到達した。

 

 

『加賀隊、瑞鶴隊は照明弾投下初め。照明弾が光り始めたらすぐに爆撃に移るぞ』

 

無線からそう聞こえた少し後、間隔を開けて落としていく。

すると眼下に照明弾の強い光に照らされた敵飛行場が眼下に見える。

 

そこそこ大きな飛行場であるから、この機数ではたして敵艦隊との戦闘が終わるまで使用不能になるかどうかは分からないが、少なくとも一日二日は使えなくなるはずだ。

それだけの日数があれば敵艦隊との戦闘は終わっているし、上陸が始まっているだろう。

 

タ弾の破壊力は普通の陸用爆弾とは違う。

通常の陸用爆弾はでかい穴を一つ開けるだけだがタ弾は小さな弾子をまき散らして広範囲に加害を加える。

滑走路などに与えるダメージは小さいが、航空機相手には抜群の威力を発揮する。

 

流星は飛龍と蒼龍隊合わせて12機。

タ弾を装備した7機が航空機などの軟目標を狙い、陸用爆弾を装備している14機が滑走路を狙う。

俺達戦闘機隊も翼下に6番陸用爆弾を4発装備しているから効果はより期待できるはずだ。

 

照明弾に照らされた滑走路目掛けて飛龍隊以外の流星と飛龍。蒼龍、瑞鶴戦闘機隊の10機が続く。

加賀と瑞鶴の25機は次に投下を行うので、今は流星が照明弾を落とし、烈風は周辺警戒を行っている。

 

流星のように爆撃照準器があるわけじゃないから、流星の後ろをついて行って同じコース上で爆弾を落とす。

 

タイミングを1秒ごとにずらして4発落としていく。

240kg分軽くなるから、少し機体が浮いたように感じる。

 

機体を傾けて下を見てみると投下された爆弾が次々と着弾して炸裂して火柱を上げていく。

 

「成功だな」

 

思わず言葉が漏れてしまう。

それだけ、夜間に攻撃できるというのは革新的なことだ。

これまでの作戦でもこれが出来たなら航空隊の被害は随分と減らせただろうに、と思ってしまう。

 

しかし、タ弾の直撃を受けた敵機の爆発の仕方が随分と派手だな。

もしかして、敵機は燃料と爆弾を満載していたのか?

 

次々と誘爆していって、物凄いことになっている。

 

『飛龍、蒼龍隊の投弾終了。瑞鶴、加賀隊は爆撃準備に入れ』

 

『了解』

 

すぐに周辺警戒を行いつつ、加賀隊と瑞鶴隊の爆撃を見届ける。

どうやらタ弾のいくつかが燃料タンクを直撃したらしい、更に派手に燃えている。

照明弾なんて必要無いんじゃないかというぐらいに燃え盛り、辺り一帯を真っ赤に照らしている。

 

するとようやく対空機銃と対空砲が応戦し始めた。

燃え盛る火に照らされて位置が分かるらしいのか、一応狙いは定まっているが命中はしない

 

「隊長機、照明弾はまだ残っているか?」

 

『ちょっと待って下さい……。あと全機がまだ1発づつ残ってます』

 

「そしたら、敵の機銃と対空砲を潰しておきたいのだが、許可を貰えるか」

 

『……分かりました、許可します。ただ、無茶はしないでください』

 

 

「分かっているとも。そしたら敵の頭上に落としてくれ」

 

『了解』

 

『飛龍戦闘機隊、話は聞いていたな?全機、敵対空砲と対空機銃に対して機銃掃射を行う。ただし一度だけだ」

 

『『『『了解っ』』』』

 

高度を落として、照明弾が落とされると同時に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

攻撃を全て終え、母艦へ無事帰投。

飛行甲板に並べられた誘導灯を目印にして着艦をする。

整備と兵装装備、少し休息と提督への報告を行う。

 

 

「原田、報告に参りました」

 

「ご苦労。で、早速だがどうだった、夜間爆撃は」

 

「取り合えずの問題はありませんでした。問題といえば初めてのことですので円滑に爆撃態勢を取るのに少し手間取ったことでしょう」

 

「所要時間内で終わらせているが?」

 

「それはあくまでも流星隊の技量の高さからくるものでしょう。並みの搭乗員ではこうはいきません」

 

「飛行場への損害は?」

 

「機数が少なかったので、大した損害は与えられておりませんが、誘爆でかなり戦果は広がっています。それでも二日程度でしょう」

 

「それだけで十分だ。改めて言うが、ご苦労。次の出撃に備えてくれ」

 

「はっ」

 

それらが終わったら再び別の飛行場を叩くべく飛び立つ。

 

 

 

全ての爆撃を終えて、朝を迎えた。

 

 

 

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜間爆撃が無事に終わり攻撃隊の収容も問題無く終えることが出来た。

やはり機数不足があって攻撃力不足であることは否めないが、それは追々解決されるだろう。

 

それでも敵飛行場5つは全て最低でも1日は使用不可能に陥れたので、これで敵艦隊との戦闘に注力出来る。

 

「輸送船団の方から何か報告は?」

 

「あと30分ぐらいで索敵限界線に流星が到達するそうだから、敵艦隊がいるとしたらそこまでの間だね」

 

まだ敵艦隊は見つかっていないらしい。

これで索敵が空振りに終わって、その間に接近されてしまうのはかなりまずい。

念の為に彩雲26機全てが索敵に出ているらしいが、それでも運というのもある。

特に護衛艦隊に載せられている流星は全て機上電探を装備していない。

もし運が悪ければ見逃してしまう可能性も大きいだろう。

 

仮に敵艦隊の攻撃範囲内に収められてしまったら逃げ切るのは難しい。

第一、第二護衛艦隊の艦隊速力は30ノットを出せるが、輸送船団はどれだけ頑張っても荷物や兵士を満載しているから20ノットを出すのが精一杯だろう。

満載でなければ25ノットは出せるが、そんな状態のところを襲われたら一溜りもない。

 

それでもヲ級も空母棲鬼や空母棲姫は軒並み30ノット以上を発揮可能だし、護衛艦隊のみでもじりじりと距離を詰められてしまうのは明らかだ。

 

「提督、これからどうされますか?」

 

「勿論敵艦隊を叩きに行く。だがその前に敵艦隊の詳細な位置を把握せねばならん。偵察機の準備は?」

 

「あとは燃料を補給して発艦するだけですので、20分も頂ければ第一段索敵が可能です」

 

「分かった。それならばそうしよう。発艦が終わったらすぐに二段目と三段目の索敵を放つ。それでいいな?」

 

「問題ありません」

 

「戦闘機隊は?」

 

「直掩隊が各艦から4機づつ、48機が艦隊より100kmの地点を哨戒中です。そして万が一に備えて残りの全機も何時でも発艦可能状態で待機しております」

 

「ならいい。第一護衛艦隊と第二護衛艦隊には輸送船団の護衛を第一とし、敵艦隊と戦闘になった場合は防御に徹せよと伝えておけ」

 

「はっ」

 

護衛艦隊は、とてもではないが攻撃に転じられるほどの兵力を有していない。

迎撃に徹すればまだ勝機はあるだろうが、敵戦艦や随伴艦が撃ち上げる弾幕の前ではあの数の攻撃隊など瞬く間に落とされて、下手をすれば全滅の可能性すらある。

 

敵艦隊を攻撃するならば、一航艦と共同でやる必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

少しして、新しい報告が入ってくる。

 

「提督、護衛艦隊の偵察機は全て空振りに終わりました」

 

「我々が放った偵察機が折り返してくるのはいつ頃になる?」

 

「巡航速度で、大体5時間といったところでしょうか。敵艦隊が何処にいるか分からないので索敵範囲をかなり広く取りましたので時間が掛かります」

 

「分かった。第一、第二護衛艦隊は輸送船団を伴って上陸地点近海まで前進。我々一航艦は予想される敵艦隊の位置と、輸送船団の間に入る」

 

「了解しました」

 

「第一、第二護衛艦隊には敵飛行場への攻撃を開始せよ、と送れ。復旧されないと言う保証は無い、確実に叩いておきたい」

 

「了解しました」

 

指示を飛ばして、艦隊は位置を変える。

 

カミギン島北西300kmの位置で艦隊は遊弋。

敵艦隊がいるであろうと想定されるのは輸送船団が出発した沖縄方面の方だと考えられる。

側背を突くにはそのあたりからが最も有効だからだ。

沖縄から挟撃を受ける可能性があるが、一番近い飛行場は石垣飛行場か与那国飛行場だ。

どちらも規模が小さく、紫電改の2個航空隊72機が駐留するのが精一杯で、それでも手狭だ。

他には哨戒用の二式大艇が12機居るだけである。

戦力的にも、距離的にも挟撃されることはまずない。

 

 

 

 

 

「提督、敵飛行場の無力化が完了したとの報告が」

 

「分かった」

 

敵艦隊発見の報告は未だされず、時間が過ぎていくばかりである。

 

「提督、偵察機から入電!」

 

「報告せよ」

 

「敵艦隊発見、位置宮古島南西沖約450海里、艦隊より600海里!空母11、戦艦10、巡洋艦17、他随伴艦多数!」

 

「報告ご苦労、下がって構わん」

 

「はっ、失礼します」

 

「提督、どうされますか?」

 

「どうするか……」

 

参謀達が困ったように俺に聞いてくる。

というのも、敵艦隊との距離が遠いのだ。

 

その地点からだと我が艦隊まで900km以上もある。

攻撃隊を放つには距離がありすぎるのだ。

 

攻撃隊を放つには最低でも300海里以内、欲を言うならば250海里にまで接近したい。

攻撃自体は可能だが、問題は敵艦隊近辺で迎撃を受けた場合敵艦隊上空で戦える時間が短いということだ。

それに被弾したり燃料漏れを起こした機が帰ってこれなくなる。

 

二式大艇に救助を行わせるのも、ほぼ間違いなく敵艦隊から妨害を受けるから搭乗員の生還はそれだけ難しくなる。

 

だから参謀長達もどうするべきか、困って判断を仰ごうとしたのだろう。

 

「しかし、何故そこまで離れている……?」

 

「分かりません……。これだけ離れていては敵も攻撃隊を放つことなど出来ないのに……」

 

皆で頭を悩ませる。

しかし悩んでいたところで、現状を打開出来はしない。

 

こちらから打って出ることも出来ない。

輸送船団を守るという何よりも優先しなければならない任務を果たせなくなるからだ。

 

別動隊がいないと言う確証も得られていない現状ならば、いるかもしれないと仮定して動いた方が賢明だ。

 

「もしかすると、敵艦隊は増援との合流をしようとしているのでは?」

 

「しかし最も近い場所の敵艦隊拠点でも一週間は合流に掛かるぞ」

 

色々と考えてみるが、イマイチしっくりと来る回答ではない。

 

「提督、このままでは輸送船団の方が燃料などに不安が出ますし、陸軍の兵士達も士気が低下するばかりです」

 

「……仕方がない、輸送船団に対して上陸を開始するよう命令を発する」

 

「ですが、危険では?」

 

「どちらにせよこのままでは何も進まん。責任は取る。進めてくれ」

 

「了解しました」

 

命令が伝達された後、すぐに陸軍第71師団の上陸が開始された。

沿岸部の防御陣地は第一、第二護衛艦隊の戦艦と重巡洋艦全てが艦砲射撃を行い破壊。

 

まず歩兵を満載した大発が海岸を確保するために接岸、上陸。

二時間ほどの小規模な戦闘が何度か繰り返され、海岸から5kmの地点までを確保すると待ってましたと言わんばかりに第200号型輸送艦が次々と海岸に接岸、上陸。

 

そのすぐあとに、独立工兵第14大隊が上陸を開始。

上陸が完了するとすぐさま道を切り開くべく前進。

 

予定通り第一、第二護衛艦艦隊はカリマンタン島へ輸送船団を迎えに行った。

陸軍の空の守りは陸軍飛行戦隊が到着するまでグラーフ・ツェッペリンとアークロイヤルの2隻に任されることになった。

ビガンへの上陸と、そこの飛行場を奪取するまでは、二隻は上陸支援に当たることになる。

 

それ以外の空母は全て敵艦隊に備える。

 

 

 

 

 

 

陸軍の方は至って順調。

旧アパリ市街の奪取に2日掛かったが、無事終了。

独立工兵大隊の手によってアパリに簡易的な港が作られ物資揚陸が簡単になった。

流石に重量物の揚陸は出来ないので引き続き海岸の砂浜を使わなければならないが大した問題ではない。

それにこれで海軍陸戦隊が河川機動を行える。

それが完了すると、独立工兵第14大隊は内陸部への進軍を開始、道の建設を進めた。

 

それに続いて戦闘団は進軍していく。

 

敵部隊との交戦はあるが戦力差もあって問題無く撃破して進んでいる。

 

2日のうちに最初期の目標を達成することが出来た。

 

 

 

するとそんな時のことであった。

 

「提督、敵艦隊が我々向かって来ています!」

 

「今このタイミングでか!?」

 

「はい、接触を続けた潜水艦隊から報告ですので間違いありません!」

 

「戦力に変化は?」

 

「ありません、当初の偵察の報告と同じです」

 

「……連中、これが狙いだったのか」

 

「どういうことでしょうか?」

 

「敵は、我々が上陸をするまで待っていたのだろう」

 

「我々一航艦や護衛艦隊を撃破してしまえば、あとは無防備な輸送船団と孤立無援になる陸軍だけ、撃破は容易ということですか」

 

「恐らくな。クソ、判断を誤った」

 

俺達はこれで、敵艦隊と戦わないという選択肢は無くなった。

しかも護衛艦隊と言うそこそこの戦力を欠いた状態で敵艦隊と戦わねばならない。

 

艦載機の数は995機。

敵との数的有利を失ったことになる。

 

 

 

「第一、第二護衛艦隊は?」

 

「輸送船団と合流していないので、呼び戻すことは可能です」

 

「今すぐ呼び戻してくれ。敵艦隊との戦闘に備えなければ」

 

幸いにも第一、第二護衛艦隊は呼び戻せる距離にいる。

 

「合流したら、第一、第二護衛艦隊の空母を2隻と随伴艦を上陸支援に残して敵艦隊に対して打って出る。それで準備を進めてくれ」

 

「はっ」

 

翌日の1800に第一、第二護衛艦隊と合流。

 

 

軽空母

海鷹 龍驤

 

 

重巡洋艦

キャンベラ ゴトランド

 

 

軽巡洋艦

鬼怒

 

 

駆逐艦

桃 椿 楓 樺 楠 

大波 涼波 柿 梨 雄竹

 

以上を上陸支援に残して残りの艦は敵艦隊との戦いに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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