暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第67話

 

 

 

 

 

 

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フィリピンに上陸から3ヶ月。

戦闘団毎に交代で前線に出ている。

 

今は俺達の戦闘団が最前線で、つい数日前にタグビラランと言う旧市街地を奪還したばかりだ。

2、3日休んだらボホール海を渡ってカミギン島に上陸、奪還して、交代だ。

準備を進めつつ、休息をしているがここまで来ると、いよいよフィリピンも本格的に雨季に突入し始めているから、準備が終わったらやる事なんて、工兵隊が建てた宿舎で惰眠を貪りつつも体力錬成やら、花札トランプなんかのカードゲーム。

他にはなんだかよく分からない本を読むぐらいか。

この前なんてどこから持って来たのか、戦前の模型雑誌やバイクなんかの専門誌を読んだからな。

煙草も酒も支給数が決まっているから無駄に吸うことは出来ないし、それらを賭けてカードゲームで賭けをするのは禁止だ。

 

以前それで問題になったことがあるからだとかで、閣下直々の命令。

それでもこそこそ裏でやってる奴もいるが、何処から嗅ぎ付けたのか野戦憲兵の連中にバレてしょっ引かれていく。

態々前科を作って軍隊手帳に書かれるぐらいならやらない、と言うのが殆どだ。

ヘビースモーカーや酒好きには死活問題だが。

 

あとは暇を持て余してやり始めた椰子の葉で編み物ぐらいだ。

これが思いの外楽しいもので、色々と雑貨を作りまくっている。

海に飛び込むのもアリだが敵機が来るかもしれないからあんまり出来ない。

 

 

 

 

 

 

雨季と言っても毎日朝から晩まで雨が降っている訳じゃない。

大体、明け方と夕方ぐらいにスコールが降るぐらいだが、それでも毎日続いたら嫌になる。

地面はそれなりに泥濘むし、行軍となれば泥濘の道を歩かなきゃならない。

道路を固めたりなんて言う整備はやっているが、舗装はしていないから毎日の雨が降って毎日誰かが通っているからすぐに荒れてしまう。

車両が通れないとかでは無いのだが、やはり行動に制限を掛けられてしまう。

戦闘団の工兵中隊が通る前と通った後を整備しているが、舗装だとか砂利を敷くだとかの根本的な解決をしない限りは無理と友人が言っていた。

 

 

 

それに湿気は武器や弾薬にも影響を及ぼすし、昼間の暑さでべたっと張り付くようなじめっとした湿気は、ジャングルの中では中々に不快なもんだ。

 

せめてもの救いは、雨が降るから身体や頭を洗うには全く困らない事ぐらいだ。

飲料水としては、下手に飲んだら腹を下したりして野戦病院に放り込まれる事になるのでいざ飲まねばならぬ、となったら濾過と煮沸消毒を行うように、と厳命されている。

誰だって、川や水溜りの生水を飲んでアメーバ赤痢などにはなりたく無い。

態々リスクを冒さずとも、普通に水も食料も補給されるのだからそれを飲み食いする。

 

他にも野生動物の捕獲、殺傷に加えてそれらを食べるのも禁止だ。

ここは熱帯地域である。

どんな病原菌が潜んでいるか分からない。

 

 

深海棲艦の連中も、かなりの抵抗をしているが制空権を奪って、陸海軍の飛行戦隊に守られている俺達からすれば、沖縄戦からずっと経験している市街地戦のが簡単で、ジャングルのがいつ襲われるか分からないから怖いもんだ。

ジャングル全部を焼き払うなんて出来やしない。

 

ゲリラを相手するのは中々に辛い。

特に、初めて実戦を経験した奴らはかなり疲弊している。

俺はカリマンタン島やジャワ島での経験があるから、ジャングル戦や対ゲリラ戦はこんなもんだと知っているし慣れているからどうって事は無いが、流石に8日間も連日攻撃を受けた時は寝れなくて参った。

 

 

損害こそ小さかったが、戦車大隊の連中が滅茶苦茶に狙われたらしく撃破された戦車や死んだ奴は3人と少なかったが、精神的にやられちまって20人以上が後送、療養病院送りになったとか。

 

まぁ、今でこそ部隊付きの精神科医が居るから幾分か楽になったもんだが、相談に行く奴は後を絶たない。

俺も気を付けないとならない。

 

 

 

 

 

翌日、海軍の駆逐艦何隻かと、戦艦ティルピッツ、それと戦闘機と攻撃機に守られながら第200号型輸送艦に分乗して向かう。

 

1時間ぐらいの船旅だ。

しかし、ティルピッツと駆逐艦が上陸前に上陸地点周辺を砲撃で吹き飛ばすから実際は船上で1時間の待機である。

 

護衛をする艦隊と合流して、カガヤン島の沖合10kmぐらいで戦艦が砲撃を始めた。

僅かな速度、多分1~3ノット程度の本当に僅かな速度で航行しながらの砲撃である。

 

戦艦の砲撃と言うのは、俺達が使うような自走榴弾砲の比じゃないぐらいの砲声と砲炎を発しながら、上陸地点の砂浜と、その周辺地域を丸ごと吹き飛ばして耕していく。

確か海軍の榴弾は三式弾とか言うので、あたり一帯を物凄い高温で焼き払いながら吹き飛ばすと聞いているが、あれは凄まじいなんてもんじゃない。

戦艦1隻だけであれだけなんだ、海軍の戦艦全部が一斉にやったらどうなるんだろうか。

 

炸裂した砲弾が、土塊や木、海岸線に置かれたトーチカや塹壕、対戦車障害物などを纏めて空高く粉々にしながら吹き飛ばしていく。

駆逐艦は俺達が乗る揚陸艦や輸送船計24隻の周りを、敵潜水艦を警戒しながらぐるぐる回っている。

 

対潜警戒と対地支援用の戦闘機や攻撃機もグルグル飛び回っていて、なんとも心強い。

 

 

 

 

 

 

戦艦から砲撃終了、の知らせが届いたらしい、上陸準備が下令された、

輸送船の船上で大発に乗り込んで、クレーンで海面に次々と俺達歩兵が降ろされていく。

すぐにエンジンが始動して、砂浜に向かって進む。

 

後ろには工兵隊を載せた輸送艦と戦車隊を載せた輸送艦が横に並んでおり、俺達が砂浜を確保したら一気に上陸してくる。

 

大発が耕された砂浜に突っ込んで道板を下ろす。

その瞬間、先頭から次々と俺達は走り出す。

 

ここ最近の深海棲艦は、水際での防衛は殆ど行わないで内陸で抵抗する。

だがそれも確実な物じゃないから教本通りにすぐに前進しつつ物陰に隠れる。

 

爆薬を持った奴が戦車隊や工兵隊の邪魔になりそうな障害物を爆破して吹き飛ばし、次に砂浜に接岸した揚陸艦から俺達が乗るトラックなんかが出てくる。

トラクターが砂浜出来た大穴を均して、そこに穴開き鋼板を広げていく。

 

砂浜はどうしても柔らかいからトラックなんかは沈んじまう。

 

それを確認したら、すぐに海岸保を得るために内陸部の方へ俺達は進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

上陸地点の砂浜から2kmほどを確保して、機動力の妨げになって移動速度が落ちて狙い撃ちされ易くなるのを防ぐために置いておいた背嚢などを受け取るために後退すると、すでに工兵隊の連中や戦車隊が上陸していた。

これから独立工兵大隊が来るまで一旦待機だ。

 

道が無けりゃ進めないからな。

 

少しすると独立工兵大隊が上陸して道を切り開き始めた。

そのあとに続いて俺達はカガヤン島を進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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3か月と13日。

残すはミンダナオ島の奪還のみとなった。

 

他にも小さな島が残っていたりするが、そもそも深海棲艦の守備隊は配置されていないので、態々上陸する必要も無い。

仮に上陸、奪還するとしても活用するなら、哨戒網を広げるために電探基地を置くぐらいだろう。

 

ミンダナオ島自体はルソン島に次いでフィリピン2番目の大きさを誇る。

仮に順調に、敵ゲリラの活動を考えて奪還が進んだと考えた場合、1か月ぐらいだろう。

 

カリマンタン島に比べれば、進軍速度はとんでもなく速い。

フィリピン奪還が4か月程度で終えられるのは、やはり独立工兵大隊の活躍が大きい。

 

なんせジャングルの中を道に迷いながら進んだりしなくていいし、補給も戦車が余裕で二両並んで通れる幅の道があるから陸路での補給量が圧倒的に増加している。

それどころかジャングルの中には鉄道連隊が新しく本土から抽出された工兵隊の協力でもって鉄道が敷かれているのだ。

 

トラックではどうしても泥濘で立ち往生しがちな土剥き出しの道路を走らなければならない。

とは言え、各地で取れる石を砕いて砂利として敷き始めてからは随分と変わったが。

 

側面をコンクリートで幾らか固めてから砂利を敷いて高さを確保すれば水捌けもよく、泥濘にもならない道の完成だ。

舗装なんかは奪還が終わってからやればいい。

 

それと同じ道に鉄道を連日昼夜問わずで軌条を敷いているので、ミンダナオ島奪還が完了する頃にはある程度の鉄道網を敷設し終わるだろう。

 

正直カリマンタン島と同じようにコンクリートで軌条を全て覆っていたら、何年掛かるか分からないので取り合えず豪州奪還、同地の整備が終わるまでは先延ばしにされている。

 

流石にミンダナオ島を守る敵は、撤退した敵部隊も合わさって数も多いが、輸送船団の殆どを最近は沈めているので補給切れが相次いで抵抗自体は激しいが燃料弾薬などの欠乏が相当らしい、大きな町など以外では敵は一切抵抗をしなくなった。

敵ゲリラ自体も殆どと言っていいほどに活動しなくなったし、馬鹿みたいに連日連夜のゲリラ攻撃に悩まされていた将兵達の心の安寧も取り戻されたも同然だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミンダナオ島の殆どを奪還し、艦隊は安堵の溜息があちこちで起こっている。

ここまでくれば、流石の敵でも艦隊を出してまで奪い返しには来ない。

艦隊が引き上げても全く問題無いが、念の為である。

 

「陸軍飛行戦隊の進出もすべて完了しました」

 

「これで、漸く進出予定の陸軍部隊全てが進出完了したか……」

 

「長かったねぇ……」

 

当初の予定では2か月ほどで全部隊の進出を完了する予定だったのだが、飛行場の整備や建設に当たる予定だった独立工兵大隊が、道路整備に引き抜かれてしまい遅々として進まなかったのだ。

 

そこで本土から無理矢理新しく一個独立工兵大隊を編成して送り込んで飛行場整備と建設を突貫で行わせたのだ。

2か月掛かって全ての飛行場の建設や整備を終えて、当初の予定から丸々2か月半も遅れて完了したわけである。

 

全員で一息吐いた。

これで艦隊に掛かる負担が大きく減らされたわけだ。

 

補給用の輸送船団の護衛は海軍の管轄なので、それだけはきっちりやらねばならないが、それさえやっておけば対地支援も空中投下による補給も陸軍にすべて任せられる。

艦隊は結構ボロボロだ。

 

全ての艦が錆だらけ、もし今攻撃を受けたら大損害待った無しである。

ここまでくると敵も大損害と敗走を繰り返し、今ではダバオとその周辺に殆どが集まっている。

どうやらここで敵は最後の抵抗を続けるらしい。

 

馬鹿正直に付き合ってやる義理も何も無いので海側からは艦隊が封鎖して艦砲射撃が艦載機による爆撃を繰り返している。

敵は全くの無補給だから、どれだけ粘って戦っても10日かそこらが限度だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13日後。

予想通り敵はダバオを墓場に殲滅された。

 

それ以降は敵の残敵掃討と各地の防衛体制確立が言い渡された。

即座に各地にそれぞれの師団は指示され担当となった地域の防衛体制を整え、哨戒体制の構築などを1週間で行った。

本土からは続々と資材、工兵が派遣されフィリピン全域に道路と鉄道を張り巡らせている。

 

時を同じくして、フィリピン奪還が完了したと宣言されてから3週間後。

フィリピン攻略に従事した8個師団がスラウェシ島に次々と上陸。

兵糧攻めで弱り切っていた敵を1か月で殲滅、奪還を完了した。

 

小スンダ列島にはスラウェシ島奪還に従事した8個師団から4個師団を転用して1か月後に上陸。

同じく兵糧攻めを受けていた敵は、僅か2週間で瓦解、組織的戦闘能力を喪失。

それ以降掃討戦に移行することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての奪還を完了し、艦隊は呉に戻る。

錆だらけでボロボロになった艦隊は、すぐに次々とドック入りとなった。

 

第一、第二護衛艦隊を最優先で整備、修理を三か月で済ませてすぐさま輸送船団護衛任務に戻った。

第一機動艦隊の全艦は、四か月掛けて全ての修理と整備を終え、来るべき豪州方面作戦に備えることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










療養病院
戦闘などで精神疾患、PTSDなどを患った将兵達が送られる言わば精神病院。
それぞれ疾患の度合いによって送られる病院が違う。







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