第68話
フィリピンからティモール島までを結ぶ防衛線が確立されてから数ヶ月。
輸送船団護衛任務も再開され、同地の防衛体制確立を急いでいる。
それぞれの地には以下の防衛部隊が就いている。
在フィリピン防衛部隊
第27師団(4個戦闘団)
第31師団(4個戦闘団)
第76師団(4個戦闘団)
第94師団(4個戦闘団)
陸軍第28飛行戦隊
保有機
疾風36機 補用12機
百式司令部偵察機8機補用2機
陸軍第37飛行戦隊
保有機:同上
陸軍第40飛行戦隊
保有機:同上
陸軍第52飛行戦隊
保有機:同上
陸軍第57飛行戦隊
保有機:同上
陸軍第103飛行戦隊
保有機
銀河20機(近接航空支援用)補用4機
百式司令部偵察機8機 補用2機
海軍第304航空隊
保有機
震電60機 補用12機
百式司令部偵察機12機 補用2機
海軍第305航空隊
保有機
同上
海軍第703航空隊
連山60機 補用6機
百式司令部偵察機8機 補用2機
海軍第709航空隊
保有機
同上
海軍第807航空隊
保有機
二式大艇20機 補用6機
海軍第808航空隊
保有機
同上
計4個師団及び12個飛行隊(700機)
ーーーーーーーー
在スラウェシ島防衛部隊
第17師団
第47師団
第61師団
第107師団
陸軍第14飛行戦隊
保有機
疾風36機補用12機
百式司令部偵察機8機補用2機
陸軍第53飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第59飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第81飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第91飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第92飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第117飛行戦隊
銀河20機(近接航空支援用)補用4機
百式司令部偵察機4機 補用2機
海軍第314航空隊
保有機
震電60機 補用12機
百式司令部偵察機12機 補用2機
海軍第317航空隊
保有機
同上
海軍第322航空隊
保有機
同上
海軍第712航空隊
保有機
連山60機 補用6機
百式司令部偵察機8機 補用2機
海軍第721航空隊
保有機
同上
海軍第809航空隊
保有機
二式大艇20機 補用6機
海軍第813航空隊
保有機
同上
計3個師団及び14個飛行隊(840機)
ーーーーーーーーーー
在小スンダ列島防衛部隊
第91師団(4個戦闘団)
第109師団(4個戦闘団)
第113師団(4個戦闘団)
陸軍第61飛行戦隊
保有機
疾風36機補用12機
百式司令部偵察機8機補用2機
陸軍第112飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第120飛行戦隊
保有機
同上
陸軍第117飛行戦隊
銀河20機(近接航空支援用)補用4機
百式司令部偵察機4機 補用2機
海軍第311航空隊
保有機
震電60機 補用12機
百式司令部偵察機12機 補用2機
海軍第315航空隊
保有機
同上
海軍第712航空隊
連山60機 補用6機
百式司令部偵察機8機 補用2機
海軍第814航空隊
二式大艇20機 補用6機
海軍第817航空隊
保有機
同上
計3個師団及び8個航空隊(504機)
以上のようになっている。
かなり航空隊の数が多いように感じるだろうが、実はカリマンタン島に展開していた陸海軍の航空隊の一部を移した結果である。
フィリピンから小スンダ列島までに防衛線が前進した事で、最前線がカリマンタン島から変わったのだ。
そうなれば今まで展開しているほどの戦力は必要無い。
内地から部隊を移すのにも時間や金が必要だが、防衛を担う航空隊の一部をカリマンタン島から引き抜けばその分負担などは楽になる。
ただ、海上輸送航路の関係上、引き続きカリマンタン島の航空隊は護衛艦隊と共に船団護衛任務に従事する予定だ。
今までに比べれば、敵航空機の脅威を防衛線である程度食い止められるのだから随分と楽になるだろう。
敵の水上打撃艦隊も潜水艦隊も態々此方の奪還地域には出てこないだろうし、来るとしたらサンギへ諸島かフローレス海を通らねばならない。
監視の目は厳しいし、仮に通ろうとすればあちこちから疾風に守られた連山が爆弾の雨を降らせ、航空隊と連携した潜水艦隊に魚雷を叩き込まれることになる。
物資の輸送に関しては、スールー海、セレベス海、マカッサル海峡、ジャワ海が防衛線の前進によって内海化された。
もっと簡単に言えば安全が一定値確保されたのだ。
その事により、随分と船団護衛任務が楽になった。
本土からカリマンタン島までの航路は護衛艦隊が付き、カリマンタン島を経由して各島々に物資を輸送船団のみが運ぶ形になった。
とは言え、カリマンタン島発の輸送船団には十分な航空支援も付くので全くの丸裸と言う訳では無い。
フィリピンではなくカリマンタン島経由である理由は、単純にこちらの方が安全だからだ。
フィリピンは確かに奪還したが、太平洋側からの脅威は未だ健在である。
それどころか、本土空襲に加えてフィリピンにまでB-29が飛来し始めたのだ。
フィリピンはマリアナ諸島からの距離も日本本土と変わり無く、B-29であれば攻撃可能だ。
それよりも奥、カリマンタン島やスラウェシ島には無理なのだが。
しかし一体全体、どこにそんな物量があるのか呆れ果てるしかない。
幸いなのは、対抗策である震電の配備が出来たことだろう。
これがなければ一方的にフィリピンは空襲され弱体化するだけであった。
それに何よりも大きいのが、バリクパパン港を大々的に要港として使えるようになったことだろう。
今まではスラウェシ島から来る爆撃機や敵潜の脅威が大きく、とてもでは無いが戦闘艦艇が投錨するのは出来なかった。
爆撃で港湾施設も大なり小なり、程度に差はあれど常に損害を受けていた。
港湾施設の修理はなんせ時間が掛かる。
損害がある分、修理用の資材を運ばねばならないしその分輸送船の数が増える。
それだけで無く荷下ろしにも時間が掛かる。
しかし、バリクパパン港が内海に面する事により安全性は桁違いに上がり、攻撃しようにもスラウェシ島やフィリピンが障害になり、長距離爆撃を行おうものなら行きだけで都合2回、場合によっては帰り道でスラウェシ島の航空隊からまた迎撃を受け、3回も迎撃されることになる。
流石の敵も、そんな危険を冒したりはしない。
内海化してから、今の今までマカッサル海峡に対する敵の攻撃は、潜水艦によるものだけだ。
散発的な航空攻撃はあるものの数機だけの、恐らくは威力偵察のついでに攻撃して来ているだけだ。
この数ヶ月でバリクパパン港は設備も十分に備え、艦隊を駐留出来る程度になっている。
戦隊と言えば、どの程度かにもよるが、少なくとも空母や戦艦を含んだ艦隊が駐留することが出来る。
とは言え基本は輸送船団が出入りするのが主目的であり、戦闘艦艇の優先度は二の次である。
基本、停泊するのは護衛艦隊のみであり、南方方面に対する作戦時にのみ第一機動艦隊などが停泊することになる。
既にバリクパパンには(と言うよりも各港湾施設には)燃料輸送や部品、資材輸送を行う為のタンカーや輸送船、輸送艦が数十隻づつが所属している。
それを考えるとどうしても戦闘艦艇が停泊する余裕が余りないのだ。
停泊するだけなら別に第一機動艦隊も第一、第二護衛艦隊を全て停泊させて尚且つ輸送船団を停泊させられる。
であるが、ただ停泊させるのと、港湾施設として運用するのとは全く別問題である。
円滑に運用するならば、どうしても戦闘艦艇に関しては精々戦隊一つが限界だ。
艦隊の編成については、第一機動艦隊から第二護衛艦隊、第一補給艦隊に至るまでは変わっていない。
しかし新しく編成された艦隊が一つだけ存在する。
それは、南方方面の、カリマンタン島各地やカリマンタン島から各島々への輸送船団護衛を行う為に新編された「南方航路護衛隊」である。
これは、第一、第二護衛艦隊が日本本土からカリマンタン島やジャワ、スマトラ、スラウェシ、フィリピン全てに対する輸送船団護衛任務を行うのは余りにも負担が重過ぎる、と言うことから前々から検討されていたことである。
今までは第一、第二護衛艦隊はカリマンタン島にまで輸送船団を護衛し、カリマンタン島を経由して各島々を巡るように護衛任務を行っていた。
しかしこれだと、護衛艦隊に対する負担は大きなもので、整備や休養と言う面から全くと言っていいほど余裕が無かった。
そこで、これまでも持ち上がっていた、区画分けを行ってその区画ごとに護衛艦隊を配置する、と言う分担方式を取ろうとしていた。
しかしこれは単純な戦力不足とカリマンタン島、スマトラ島などの奪還地域が思いっ切り最前線であったことなどで結局流れていた計画を、まぁ取り合えずマカッサル海峡などが内海化出来たから、じゃぁ配属が決まっていない修理、訓練を終えた駆逐艦と海防艦で新しく護衛艦隊を編成して内海の船団護衛任務をやらせよう、と言うことで結果的に新編されたのだ。
南方航路護衛隊
駆逐艦
江風
初雪
夕雲
海防艦
占守
国後
石垣
松輪
佐渡
対馬
三宅
所属する艦は以上であり、今のところ敵航空機の脅威はほぼ無いに等しいのに加えて陸海軍の基地航空隊による航空支援があるので気にしなくていい。
それでも対空兵装は運用上、問題無い程度で20mm、25mm、37mm、40mm機銃をハリネズミレベルで搭載している。
しかし主目的は対潜戦闘である。
内海化した各海峡や海に対する通商破壊は潜水艦がもっぱらである。
とは言え、昼間は二式大艇や連山が疾風に守られながら対潜爆弾を装備しているのだ。
となると夜に襲い掛かるしか無いのだが、その夜が問題だった。
今でも機上電探を装備している機体は陸海軍共に極少数だ。
しかも敵潜水艦を探知出来るような性能なんて備えている訳も無いのだ。
だから護衛艦艇頼りになってしまうわけだ。
今の潜水艦は、潜望鏡深度まで浮上しないと魚雷攻撃は出来ないわけである。
となると、艦艇搭載型の電探ならば潜水艦を探知出来るし、アクティブ・ソナーやパッシブ・ソナーを載せているから探知も攻撃も容易である。
結局のところ、戦前のように深海棲艦相手に有効打を与えうる対潜ミサイルか何かが開発されない限りは最も効果的ではあるがそこそこ古臭く地道な戦い方をせねばならないのだ。
昼間は航空支援で、夜は護衛艦隊で船団を守るという分担方式である。
故にこの艦隊の所属艦は対潜装備が実は他の艦よりも対潜装備と言う面でみれば充実しているのだ。
他に言うことがあるとするならば、戦艦大和と武蔵が漸く浮揚作業が終了して入渠、修理が開始されたことだろう。
ここまで至るのに本当に長かったが、ここからも長い。
2隻が完全に修理を終えて習熟訓練を全て終えるとなると最低1年半は掛かるのだ。
因みに時間の配分であるが、修理1年、訓練6か月である。
まぁ、豪州奪還作戦の準備が完了するのが2年は掛かるとのことなので、取り合えずのところ豪州奪還作戦には間に合う予定である。
予定としては、信濃、大鳳と共に艦隊を新たに編成して敵航空攻撃を吸収、その間に後方に位置する他空母が航空攻撃を行う、と言う運用を想定している。
豪州奪還作戦に関して。
これに関しては実施時期を2年~3年後と予定している。
と言うのも部隊編成や物資の備蓄に時間が掛かる。
豪州は広大だ、今までの南方方面での陸軍投入戦力では到底成功など夢のまた夢である。
訓練にも、これまた日本本土とも南方方面とも全く違う砂漠と言う地で戦わねばならないのだからその訓練が必要だ。
更には陸軍の基本編成単位である戦闘団の問題である、戦車数が少ないという問題がある。
豪州に展開する敵戦車の数は、数千両レベルだ。
となると、戦闘団に編成されている戦車数では、数の暴力と言うどうしても太刀打ち出来ないもので押し潰されてしまう。
航空支援も絶対では無い。
そこで、機甲師団を新たに4ないし5個師団を編成する必要があるのだ。
単純に戦闘団と言う括りで対抗出来る数の戦車を用意しようとしたら、正直投入兵力規模が大きくなり過ぎる。
だから機甲師団を編成するのだ。
機甲師団は、
4両1小隊
3個小隊=1個中隊=12両
3個中隊=1個大隊=36両
3個大隊=1個連隊=108両
4個連隊=1個師団=432両
以上のように編成される。
これを4個師団用意した場合、1296両になる。
主力となるのは3個師団はパンターとセンチュリオンであり、残りの2個師団はティーガー、ティーガーⅡである。
パンターとセンチュリオンは攻撃を担い、ティーガーとティーガーⅡは防衛用として運用する。
戦闘団編成の師団は20個師団を投入する予定だ。
人員数は陸軍だけで40万人越え、海軍も併せれば50万である。
正直、途方も無い、頭が痛くなるようなレベルの規模だ。
と言うかこれぐらいの戦力を投入しないと豪州全域の奪還なんて冗談抜きで出来ないのだ。
まぁ、相変わらず一度に輸送出来ないので2個師団ごとに輸送を行うわけだ。
最初はティーガーⅡを主装備とした機甲師団と通常の師団を1個師団づつ送り込む。
海岸保を確保してから後続の師団を次々に送り込んでいく予定だ。
防衛用の機甲師団は、ティーガーを機動防御用、ティーガーⅡを縦深防御を担当する。
ティーガーⅡが敵部隊を押し止めている間にティーガーが側面に回り込んだりと言う機動防御を担当する。
本来ならば機動防御の役割はパンターもしくはセンチュリオンを充てる予定だったのだが、パンターはまだしもセンチュリオンの生産数が伸び悩んでいる。
と言うのも、元々大規模に生産、戦闘団などに配備を進めていたパンターは生産ラインがあるし、生産数も全国の生産設備をひっくるめれば月産200両、修理の関係などで実際は150両程度であるが、それでも毎月戦闘団単位の師団を一つ編成出来る程度には生産数が確保されているのだが、日本全国に加えて南方方面に展開する部隊のⅣ号戦車やⅢ号戦車からパンターへの更新が兎に角数量が必要なのだ。
だから正直、防衛用機甲師団に配備出来るほどのパンターの生産数が無い。
他の部隊へ配備するパンターをこちらに配備すれば可能と言えば可能だが、そうなると仮に北海道のようにどこかに敵が上陸した場合、十分な抵抗が出来なくなる。
センチュリオンは豪州奪還に投入される師団にのみ配備される。
理由は重量の関係で、パンター以上の重量を持つセンチュリオンは南方方面での運用に向いていないからだ。
部隊の編制や、それに伴う訓練、作戦に必要な物資の備蓄など多くの事をやらねばならない。
物資備蓄はカリマンタン島に集積している。
訓練は中々大変だ。
なんせオーストラリアは今まで経験したことのない、広大な砂漠や大草原が国土の殆どを覆っている。
日本や南方方面の土地でそのような戦闘訓練を積める場所なんて言うのは殆ど無いと言って良く、軍が保有する猿ヶ森砂丘も鳥取砂丘も砂漠と同じ気候などかと言われると違う。
砂が沢山ある、と言う点で言えばまぁ同じかもしれないが。
それでもやらないよりはマシと言う事で訓練は実施しているし、アフリカでの戦闘経験がある英独軍から戦訓を取り入れて砂塵対策などを行っているが、果たしてどの程度有効になるか分からない。
ジャングルがそうであるように、砂漠も土地によって全く環境が変わるわけだからあくまでも参考にしか出来ないのだ。
最悪、もし問題があって改良などを施さねばならないとなったら大規模な整備部隊を編成して機材や部品などを送り込んで現地での改造を施す必要があるかもしれない。
それには備えているが果たして現地での改造、改修を施すとなったら全戦車の改修を終えるのに、どれだけの時間が掛かるか分かったものでは無い。
様々な仕事を片付けていく。
パソコンのキーボードを叩いて書類を作成し、プリンターで印刷し各所にる手続きを鈴谷に頼む。
新しく鈴谷が持ってきた書類を呼んで、認否のサインや判を押していく。
そろそろ終業時間、そろそろ皆は就業時間になるであろう頃合いになると、漸く書類の山々も片付いてくる。
今は各艦、各部隊の訓練報告書の提出を待っている状況だ。
週間ごとに訓練報告書をそれぞれの部隊長は提出するのだ。
思えば最初に比べて随分と仕事を熟すのが速くなったものだ。
それを続けていると、執務室、と言ってもプレハブのプラスチック蓋を叩く様な音であるが、ノックする音が聞こえる。
窓ガラスは保安上や機密保持の為に全て防弾仕様、飛散防止用に中に鋼線が入れられている擦りガラスだ。
だから内外共に誰が訪ねて来たのかとかは分からない。
「んぅ?誰だろ?」
カリカリと書類に書き込んでいた鈴谷が向立ち上がって、ドアの方に向かう。
背恰好的には、多分原田少将であろうか?
「原田少将、湯野提督に用件があり参りました」
ノックの後に、ドア越しにそう言う。
やはり原田少将であった。
しかし、こんな時間に何の用だろうか?
確か、今日は母艦航空隊の編隊飛行から空戦や対艦攻撃訓練などが一連であった筈。
朝からつい先ほどまで母艦航空隊の艦載機が、エンジンの轟音爆音を鳴り響かせて飛んでいた。
まぁ、演習空域は宿毛湾上空などだったので空母を発艦する時以外は工廠などの音以外は静かなものだったが。
「入れ」
「失礼します」
原田少将が入室する。
しかしどうも違和感を覚えた。
普通、俺のところに訪れる場合は誰であろうと基本的に戦闘服でも問題無い。
一々着替えるのも手間であるし、俺は別に気にしないからだ。
実際制服で勤務する面々以外は戦闘服であることが殆どで、原田少将も例に漏れない。
原田少将ここを訪ねる時は、今までならば飛行服なり戦闘服なりで訪ねてくるのが普通だったのだが、今回はどういうわけか制服に身を包んでいる。
随分と珍しい光景である。
「制服でこんな時間に来るなんて珍しいな。一体どうした?」
「はっ、本日の訓練報告書の作成を完了しましたので、提出に参りました」
「あい分かった、受け取ろう」
「お願いします」
報告書を受け取り、パラパラと読む。
報告書とは言ってもその日その日の訓練内容、事故や怪我人の有無と言った簡単なことが書かれているだけだが。
消費燃料等は既に書類として存在するので全く問題無い。
そもそも、輜重兵、海軍で言う主計科でも何でもない搭乗員にそんなことどうやって出来るというのか。
ここら辺はかなり特殊かつ専門的な知識が無ければ凡そ務まらないことなのだ。
問題がない事を確認して、判を押す。
そして、どことなく落ち着かない原田少将に向き直って切り出す。
「問題無し。それで、他に何か用件があるのだろう?」
「……提督には全てお見通し、と言うわけですか」
「いやなに、今日に限って制服で来たものだからな、何となく思っただけだ」
「そうでしたか」
どことなく緊張している。
戦闘前でもあまり緊張しない彼らしくない。
果たして一体どんな話がしたいのやら。
「それでは、単刀直入に。現在の職を辞させて頂きたいのです」
原田少将のその言葉は、俺だけでなくその場に居た鈴谷をも衝撃させた。
「すまん待ってくれ……」
言葉に詰まる程度には、原田少将の言葉は衝撃的だった。
なんせ俺が着任する前からの、エース中のエースどころか陸海軍航空隊内では伝説とまで言われるほどだ。
そんな彼が辞めたいと言うだなんて、衝撃的なんてものでは無い。
「取り合えず、理由を聞かせてくれるか」
「はっ。お恥ずかしい話ながら、今まで酷使して来た結果なのか、最近身体のあちらこちらにガタが来ておりまして。何より辛いのが、視力の衰えなのです。先日のフィリピン戦も、列機のカバーが無ければあわや撃墜される所だったのです」
「なるほど」
「その時に、あぁ自分は搭乗員としては限界なのだなと悟りました。今のまま搭乗員を続けていても百害あって一利無し。ならば潔く職を辞して後進に譲ろうと思ったのです」
「なるほど。それなら仕方が無いなァ……」
搭乗員と言うのは、身体を酷使して成り立つ。
操縦桿を操るのにも、ペダルやレバーを扱うのにも絶対的な筋力が必要だ。
でなければ何Gと言う高負荷状況下での格闘戦なんて出来ないからだ。
更に言えば、搭乗員にとって視力とは生命線だ。
機上電探があるとは言えど、前方向にしか索敵は出来ないし、そうなれば左右後方は直接自分で見て索敵をしなければならない。
何より、ミサイルも何も無い、機銃で戦わねばならないのだから、視力が弱ければ狙いも付けられない。
眼鏡やコンタクトと言ったもので視力の問題が解決出来たとしても、そのほかの衰えはどうにもならない。
これは、頷くしかないだろう。
「分かった。流石にすぐにとは行かないが、数日中に人発を出そう」
「はっ、ありがとうございます」
「艦隊の航空参謀職に専念するか、陸海軍航空隊の教官職、どちらがいい?」
「……決めさせて頂けるのですか?」
「まぁ、な。原田少将ほどなら後進育成でも航空参謀でも辣腕を振るえるだろう?」
航空参謀になれば、その実戦で磨かれた経験を行かんなく発揮してくれるだろうし、教官職に就いたとしても後進育成で活躍出来る。
彼に決定を委ねても、余りある才覚と技量があるのが原田と言う搭乗員だ。
「でしたら、教官職を拝命させて頂いても宜しいですか?」
「あい分かった」
「ありがとうございます」
「他に用事は?」
「いえ、以上です」
「そうか」
「それでは、失礼します」
そう言って退室していく。
「提督、良かったの?」
「何がだ?」
「航空参謀になって貰った方が良さそうだけど」
「鈴谷、俺は常々戦う上で最も重要だと言っているのはなんだ?」
「補給でしょ?」
「その通り。補給と言っても物資だけじゃない。戦う兵士もそうだ。特に搭乗員と言うのは育成するのに年単位の時間が掛かる。それだけ、補充するのが難しいと言うのは分かるな?」
「そりゃね」
「他の兵科であれば歩兵なら半年もあれば十分に戦えるように育てられるだろうが、搭乗員はそうもいかない。今だって搭乗員は不足しているし、前線こそ充足率を満たしているが本土の航空隊は陸海軍共に充足率を満たしていないのが現状だ。だから、彼には搭乗員の教育課程の見直しなどもやって貰おうと思っている。本当に必要な教育を施して出来うる限り短期間で搭乗員を育成出来るなら長い目で見た時、戦力と言う点で優位に働くんだ」
そう説明すると、なにやらニコニコとしながら、
「提督、育ったねぇ」
そう言った。
「着任したての頃はさー、右も左も分かんないような感じで、私達が色々教えてたのに」
「そのお陰で今の俺があるんだ。感謝しているよ」
「そう言ってくれると嬉しいねぇ」
そのあと、原田少将の人発を作成してから終業となった。
第一機動艦隊
第一航空戦隊
飛龍 蒼龍 瑞鶴 加賀
第一戦隊
戦艦
金剛 霧島 長門 リシュリュー
重巡洋艦
鈴谷 ザラ ポーラ 筑摩
第一水雷戦隊
軽巡洋艦
能代 阿賀野
駆逐艦
秋月 照月 Z3 初月 陽炎
雪風 浦風 萩風 初梅 初雪
浦波 菊月
ーーーーーーーーーーーーーーー
第二航空戦隊
大鳳 信濃 阿蘇 葛城
第二戦隊
戦艦
ビスマルク ティルピッツ ヴァンガード
重巡洋艦
熊野 アドミラル・ヒッパー プリンツ・オイゲン
第二水雷戦隊
軽巡洋艦
矢矧 酒匂
駆逐艦
若月 霜月 春月 村雨 時雨
響 朧 綾波 夏雲 暁 雷
電 長波
ーーーーーーーーーーーーーーー
第三航空戦隊
隼鷹 飛鷹 グラーフ・ツェッペリン アークロイヤル
第三戦隊
戦艦
リットリオ ローマ 比叡 榛名
重巡洋艦
青葉 古鷹 足柄
第三水雷戦隊
軽巡洋艦
多摩 由良
駆逐艦
宵月 満月 Z1 初雪 浦波
菊月 望月 望月 Z3 村雨
霜月 春月
ーーーーーーーーーーーーーー
第一護衛艦隊
第四航空戦隊
鳳翔 大鷹 神鷹
第四戦隊
戦艦
日向 山城 クイーン・エリザベス
ウォースパイト
重巡洋艦
那智 羽黒 愛宕 摩耶
最上
第四水雷戦隊
軽巡洋艦
名取 天龍 龍田
駆逐艦
花月 涼月 グレカーレ
リベッチオ ジャーヴィス
マエストラーレ 東雲 白雲
浦波 狭霧 子日 有明 海風
江風 峯雲 霞 藤波
ーーーーーーーーーーーーーー
第二護衛艦隊
第五航空艦隊
軽空母
海鷹 龍驤
第五戦隊
戦艦
ラミリーズ ネルソン
デューク・オブ・ヨーク
重巡洋艦
キャンベラ ゴトランド
デ・ロイヤル 加古
第五水雷戦隊
軽巡洋艦
鬼怒 神通
駆逐艦
沖波 清霜 白雲 有明
長月 荒潮 親潮 黒潮 竹
桃 椿 楓 樺 楠
大波 涼波 柿 梨 雄竹
第一補給艦隊
軽空母
千代田
重巡洋艦
最上
軽巡洋艦
名取 鬼怒 大井
駆逐艦
白雲 有明 長月 荒潮、親潮、黒潮
磯風 時津風 山風 初春 若葉
給油艦
神威 速吸 鷹野
龍舞 塩瀬 高崎
給料艦
間宮
南方航路護衛隊
駆逐艦
江風
初雪
夕雲
海防艦
占守
国後
石垣
松輪
佐渡
対馬
三宅
ー-------
修理中艦艇
戦艦
大和(修理中)
武蔵(修理中)
ー-------
1個戦闘団は以下の戦力を有し、輸送に必要な船舶は以下の通り。
1個パンター戦車大隊 第200号型輸送艦6隻
1中隊12両×3中隊 36両
Ⅴ号弾薬運搬車 6両
兵員 約210名
1個歩兵連隊 輸送船1輸送艦2隻
装甲兵員輸送車 25両
トラック 20両
オートバイ 12両
ケッテンクラート 12両
兵員 2000〜2500名
1個砲兵大隊 輸送艦3隻
フンメル自走榴弾砲1中隊12両×3中隊 36両
砲兵観測小隊
オートバイ 12両
ケッテンクラート 12両
Ⅴ号弾薬運搬車 6両
人員 約300名
自走対戦車砲中隊 輸送艦3隻
ナースホルン 24両
Ⅴ号弾薬運搬車 4両
人員140名
1個対空戦車大隊 輸送艦4隻
ヴィルベルヴィント 12両
オストヴィント 12両
クーゲルブリッツ 4両
Ⅴ号弾薬運搬車 10両
人員 140名
1個整備大隊 輸送艦3隻
整備機材多数
100〜150名
1個工兵中隊 輸送艦2隻
Ⅴ号架橋戦車 4両
ベルゲパンター 8両
ブルドーザー 5両
トラック 20両
人員 70〜150名
1個輜重小隊
30〜50名
総人員数
3700名~4000名。
ー-------
母艦航空兵力
飛龍
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計82機
蒼龍
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計82機
瑞鶴
烈風41機 流星52機 彩雲9機 計95機
隼鷹
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計78機
飛鷹
烈風41機 流星32機 彩雲9機 計78機
天城
烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
阿蘇
烈風37機 流星36機 彩雲9機 計82機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
大鳳
烈風37機 流星32機 彩雲9機 計78機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
グラーフ・ツェッペリン
烈風37機 流星20機 彩雲6機 計63機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
アークロイヤル
烈風37機 流星24機 彩雲6機 計67機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容。機数は変わらず)
信濃
烈風70機 流星48機 彩雲6機 計124機
加賀
烈風70機 流星48機 彩雲6機 計124機
鳳翔
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
大鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
神鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
海鷹
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
龍驤
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
千代田
烈風24機 流星12機 彩雲4機 計40機
(彩雲の露天繋止を止め、全機を格納庫内に収容)
烈風650機
流星484機
彩雲116機
計1235機
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人発
人事発令書の略。