暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第69話

 

 

 

 

 

 

豪州奪還に備えること半年。

残り1年と言う短い期間で全ての準備を終えなければならない。

 

確かに物資備蓄なども中々に大変であるが、将兵の努力のお陰もあって着々と進んでいる。

この調子であれば備蓄量は作戦決行3か月前には最大量に達するであろう、と予想されている。

南方航路護衛隊も十分以上に働いてくれていると言えよう。

 

一度の船団護衛任務で大体、10~30隻程度とかなり幅は大きいが、その船団を護衛する。

10隻であれば、輸送船やタンカー1隻辺り1隻の護衛が就くことが出来る程度の編制だ。

 

余程有力な敵艦隊、もしくは大規模な航空攻撃、あるいは数十隻単位の群狼作戦の真っ只中に突っ込みでもない限りは護衛任務を遂行することは可能だ。

なんなら航空支援がある時点で、どの手段も有効にはなり得ない。

たっぷりと補給を受け、実戦経験豊富、戦意も高い搭乗員が改良を重ねて性能が上がった疾風を操っているのだ。

普通に突っ込んできたならば逆に大損害を食らうこと間違い無しである。

因みに震電は低空での性能は高高度程高くない。

 

なので爆撃機迎撃は出来るが、船団護衛は以ての外。

参加していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言え何もかもが順調であるわけではない。

苦慮しているのが、投入予定である陸軍師団の編制だ。

 

戦車師団の編成自体は進んでいるのだが、問題は砲兵火力であった。

第一次世界大戦以降から、ともすればそれ以前からとも言える事であるが、戦場の主役は戦車でも歩兵でも無い。

 

最も威力を発揮し、そして戦場の主役足るのは砲兵であることは間違いなく、疑いようも無い事実だ。

確かに航空機の威力と言うのは絶大だろう。

 

しかし航空機だけで陸上部隊全てを、現状の装備だけで粉砕出来るかと言われると否である。

精密攻撃が可能なミサイルや誘導爆弾ですら百発百中ではないし、全てを破壊する事は不可能なのだ、無誘導の水平爆撃や急降下爆撃での攻撃でなんて動き回る敵車両や兵員に対してではどうやっても打撃を与えるのが精々、結局は陸上戦力同士の戦闘によって決めるしかない。

 

 

豪州と言う広大な地域をカバーするには、戦闘団単位で装備するフンメルだけでは全くと言っていいほどに不足しているのだ。

今までフンメル自走榴弾砲を装備し、それだけに限られていたのは、南方方面、いわばジャングルでの交戦距離が短く、敵航空兵力の脅威が拭い去れなかったからだ。

自走砲化をしているのにも、諸兵科の進軍速度、特に戦車の進軍速度に付いていくことが絶対条件であるからだ。

 

しかも抗戦する敵部隊の規模が、大規模な部隊を展開することが難しいジャングルと言う性質上、ぶつかる敵部隊も良くて連隊規模。

それだと別にそこまで大規模な砲兵火力を投入せずとも対応可能だったことも理由の一つだ。

戦闘団のすべてのフンメルが一堂に会して砲兵火力を叩き込むなんて、市街地への突入前の準備砲撃か開けた場所ぐらいなものだ。

殆どをジャングルで覆われている南方方面だとそんな機会、片手で数えるぐらいの機会しかない。

 

更に言ってしまえば正直、我が陸軍の砲兵観測技術はお世辞にも高いとは言い難い。

 

固有の砲兵観測部隊をそれぞれ有してはいる。

しかし観測の主な手段は、直接観測班が前進するか、もしくは音響観測、航空観測ぐらいである。

 

ただ、我が軍の音響観測技術はお世辞にも良好とは言い難く、しかもジャングルは音が拡散してしまうのと遮られてしまうから音の収集がやりずらい。

ある程度は改善はされたが、以前までの音響観測技術ではジャングルの中では音の収集が難しかったのだ。

 

ただ、豪州では主戦場が全く変わる。

開けた砂漠地帯などが主である。

 

大規模な部隊の投入が容易であり、それこそ戦車師団や戦闘団と言う戦力をどれだけ揃えたとしても砲兵火力で負けていては意味が無い。

正直、砲兵が並んで戦車部隊や戦闘団に対して一斉射を行ったら普通に粉砕される。

 

だから敵砲兵に対抗する為にも、こちらも砲兵師団を新しく編成しなければならないのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやっても数を揃えられないじゃないか……」

 

重榴弾砲の生産数が記された書類を見て執務室で頭を抱える。

生産数が足りない。

これが編成で難儀している原因だ。

 

正直なところ、豪州で必要とされる砲兵の数と、我々の生産数が全く嚙み合っていない。

生産数が全く足りていないのだ。

 

一年間の生産数は、重榴弾砲のみでみれば上下はあるが、各地の部隊の更新のものも含めて600門以上が生産されている。

しかしそれを自走砲化するための、Ⅳ号戦車の車台や牽引が可能な半装軌式トラックの生産が全く追い付かないのが現状だ。

 

基本的には奪還作戦を主眼とする我が軍は、機動力確保の為に重榴弾砲は全て自走砲化されている。

でなければ機甲師団や機械化された歩兵に追随することが難しいからだ。

 

必要な砲兵師団数は最低3個師団。

正直、各地の装備更新も考えなければならない現状であれば、編成出来るのは2個師団が精々だろう。

各地の砲兵火力更新を遅らせれば3個師団は取り合えず用意出来る。

 

牽引式にして、ハーフトラックやトラックに牽引させる手段もあるにはあるが、こちらもまた生産数が足りなく、各戦闘団や部隊、師団に回す分しかない。

 

今まで生産していたⅣ号戦車の車台を残しておけば、自走砲化なんぞ生産数と合わせて容易だったのだが、退役や博物館行き、解体による資材化が進んでいて今残っているⅣ号戦車は僅か150両程度。

 

現在の車台生産数と合わせて考えても、足りない。

1個砲兵師団は300門程度の砲を有するのだが、そうなるとどれだけ頑張っても2個師団ともう半分ぐらいしか満たせない。

流石に砲門数を減らして編成するのは有り得ない。ただの廉価師団にしかならないからな。

 

となると、2個砲兵師団を編成してそれを投入するしか無いだろう。

流石に各地の部隊から抽出するのは戦力低下が大規模に起こってしまうので不味い。

残りは後々編成して送り込むしかあるまい。

 

 

しかもそれとは別に輸送能力が足りないと来た。

現状の輸送能力では、護衛艦艇の数も考えるとかなりの回数に分けて輸送しないとならない。

 

どう考えても、一度に輸送出来る輸送能力を大幅に超えている。

キャパオーバーも良いところだ。

これを解決するには、船団護衛を行える戦闘艦艇の数を増やす以外に手段は無い。

 

今でさえ護衛艦隊は手一杯で、地獄の様な忙しさであると言うのにこれ以上守る対象が増えたら、安全が確保されていない海を渡らねばならない以上、損害は増えることになるだろう。

スンダ列島からの航空支援があるとはいえ、それも昼間だけだ。

仮に500隻を超える輸送船団を護衛するとしたら護衛に就く空母どころか艦載機、全ての艦種において不足してしまう。

 

今までの計画通り、戦闘団編成の師団と機甲師団を送り込んでからその次に砲兵師団を送るしかない。

 

 

 

 

機甲師団は大隊編成を基本に、それを3つ集めた連隊を4個連隊で編成される。

機甲師団の戦車総数は機甲師団で432両となる。

 

機甲連隊は単純な戦車戦力以外に、そこに随伴歩兵大隊や独自の砲兵大隊を有する。

 

 

機甲連隊編成

 

1個パンター、ないしセンチュリオン戦車連隊 第200号型輸送艦20隻

1大隊36両×3大隊 108両

Ⅴ号弾薬運搬車 18両

兵員 約650名

 

1個歩兵連隊 輸送船1輸送艦2隻

装甲兵員輸送車  25両

トラック     20両

オートバイ    12両

ケッテンクラート 12両

兵員 2000〜2500名

 

1個砲兵大隊 輸送艦6隻

フンメル自走榴弾砲1中隊12両×3中隊 38両

砲兵観測小隊 

オートバイ    12両

ケッテンクラート 12両

Ⅴ号弾薬運搬車   6両

人員 約300名

 

1個対空戦車大隊 輸送艦6隻

ヴィルベルヴィント 10両

オストヴィント   10両 

クーゲルブリッツ   8両 

Ⅴ号弾薬運搬車   10両 

人員 140名

 

1個整備大隊 輸送艦4隻

整備機材多数

100〜150名

 

1個輜重小隊 輸送艦4隻

30〜50名

 

総人員約3800名

計44隻

 

 

 

 

大体の指標となるのが上記の編制だが、特に歩兵連隊が大隊3つだとか2つになったりとかなり変わるのであくまでも基本編成がこれであると言う認識だ。

取り敢えずのところは歩兵連隊で揃えているが、この先どうなるかは分からない。

 

 

戦闘団と違うのは、単純に装甲戦力にその殆どのリソースを振り分けていること、工兵中隊と対戦車自走砲を有さないことだろう。

これを3つ集めた装甲師団であれば、総人員は上下するが総人員は大体15000名程度になる。

 

1個機甲師団を176隻の輸送船、輸送艦で運ぶことになる。

これに戦闘団編成の師団を含めたら300隻近い輸送船団を抱えることになる。

 

 

 

 

 

 

砲兵師団は3個砲兵連隊を基幹として編成される。

 

1個砲兵連隊 

 

輸送艦12隻輸送船6隻

フンメル自走榴弾砲1大隊36×3大隊 108両

砲兵観測大隊 

オートバイ    36両

ケッテンクラート 36両

Ⅴ号弾薬運搬車  20両

人員 約1200名

 

1個歩兵連隊 輸送船2輸送艦2隻

装甲兵員輸送車  25両

トラック     20両

オートバイ    12両

ケッテンクラート 12両

人員 2000〜2500名

 

1個対空戦車大隊 輸送艦4隻輸送船4隻

ヴィルベルヴィント 12両

オストヴィント   12両 

クーゲルブリッツ   4両 

Ⅴ号弾薬運搬車   10両 

人員 140名

 

1個整備大隊 輸送艦6隻

整備機材多数

100〜150名

 

1個輜重小隊 輸送船7隻タンカー4隻(各種補給資機材、食料燃料等運搬用)

約100名

 

総人員約4000名

 

船舶47隻

 

 

 

 

砲兵師団は主力となるフンメル自走砲を324門有する。

1個砲兵師団の輸送には141隻を必要とする。

 

これを投入出来る2個砲兵師団用意した場合、648門、必要船舶282隻と言う数になる。

正直、砲兵師団を一つ輸送するのでギリギリ、戦闘団師団を一つ入れたら精一杯なのだ。

 

 

 

これを解決するべく、輸送計画としてはまず第一陣で戦闘団編成師団を1個、機甲師団を1個輸送する。

これでも補給用の燃料弾薬、食料飲料水や雑務水を運ぶ輸送船を入れたら軽く300隻を超える輸送船団なのだ、第1機動艦隊も護衛に加わって辛うじて護衛任務を行えるだろうと言う規模だ。

 

まぁ、流石の敵も艦隊を出してくるだろうからその時は第1機動艦隊が打って出ねばならない。

 

 

これで海岸保を確保した上で、幾らか海岸保を広げつつ第二陣で砲兵師団を送り込む。

内陸部に幾らか押し込んだならば、同じように第3陣で戦闘団編成師団1つ、防衛用機甲師団1つを送る。

これで漸くより内陸部に押し進むことが出来る。

 

もう一度残りの1個砲兵師団を送り込んで、砲兵師団の輸送を完了したならば、あとは戦闘団師団と機甲師団を順次送り込んでいくだけだ。

 

正直、万端に戦うならば砲兵師団、機甲師団をそれぞれ予備も含めて2個師団づつは欲しいところであったが用意が間に合わないならばあるもので戦うしかない。

戦闘団師団は予備師団を3個確保しているからある程度は安心出来る。

それに人員と装備の充足率は予備を含めて完全充足状態に出来ている。

 

あとは航空支援で出来うる限り穴埋めをするしかない。

それでもやはり、航空機も万能では無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

大和、武蔵の修理も大詰めになった。

艦体そのものの修理は既に完了している。

今は艦上構造物や主砲から始まる火砲類、対空対水上対潜電探類と言った武装の艤装工事中であり、それが終われば公試を行う。

予定では速力31ノットを発揮する予定だが、多少の上下は所要範囲内であろう。

 

大鳳は35ノットを発揮し得るが、信濃は最大速力31ノットなのでその護衛に就く大和と武蔵は30ノットあれば良しとされた訳である。

計画値では31ノットとしているが、まぁ取り合えず30ノット出せれば、と言う感じだ。

空母は大小関わらず全艦にカタパルトが装備されているから、艦が停止状態でも発着艦は出来る。

発艦作業中でも回避行動が取れるので、基本的には20ノット前後で発艦、敵機攻撃下でのみ30ノット以上を出す。

敵潜探知などによっては発艦作業中でも速力を上げることはあるが、大抵の場合は発着艦作業中なら20ノット程度だろう。

 

 

 

大和、武蔵の修理は、浮揚作業と比べて概ね順調に進んでいると言えるだろう。

 

2隻の武装面での攻撃能力は、艦隊全てと比べてもずば抜けている。

主砲は口径などは据え置きの46cm砲だがその攻撃力は言うに及ばずであり、敵戦艦相手ならばほぼ確実に、金剛などでは対応が困難で、一方的に撃たれるだけの可能性すらある敵艦相手も難無く熟せるであろう。

艦体が大きい分、対空機銃や対空砲もその分大量に載せられる。

勿論、運用上支障が無い程度、ではあるが。

無茶苦茶に積んだは良いがまともに運用出来ませんでした、ではシャレにならない。

 

それでも搭載される対空火器は他艦よりも多い。

それこそ1隻で軽空母ならば2隻ぐらいは纏めて守れるぐらいだ。

 

大和、武蔵の2隻が揃い踏みになれば、正規空母に関しては空母1隻に付き戦艦1隻が護衛に就くと言う体制が可能になる。

今までは防御力が高い大鳳と信濃を有する二航戦の戦艦を1隻減らして他の戦隊に回さざるを得なかったが、大和と武蔵が戦力化されればその2空母と共に新しく艦隊を編成することになる。

だから空母一隻当たりに1隻どころかもう1隻が余る計算だ。

 

編成予定としては、艦隊名などは除いて属する艦自体は決まっている。

 

 

 

 

戦艦

大和 武蔵

 

空母

大鳳

烈風57機 流星12機 彩雲9機 計78機

 

信濃

烈風106機 流星12機 彩雲6機 計124機

 

重巡洋艦

筑摩 最上

 

軽巡

酒匂

 

駆逐艦

春月 初月 満月 長波 Z1 Z3 菊月 霜月 藤波 雄竹

 

 

 

艦載機数

烈風161機 流星24機 彩雲15機

 

計202機

 

 

以上だ。

本来なら護衛艦隊からの引き抜きはしたくなかったのだが、南方航路護衛隊が実戦配備状態であり、作戦時にはこちらも船団護衛に参加することから抽出が決定した。

 

既に大和、武蔵を除いて艦隊運動訓練など、諸訓練を開始しており新たに編成された艦隊ともあってこの一か月は丸々訓練の為に航海に出ている。

 

この艦隊の目的は敵艦隊の攻撃では無く、敵攻撃隊の吸収及び迎撃である。

今までは烈風と共に流星を載せていたがこの編成からは烈風を主力として対潜哨戒用の流星数機、それと偵察用の彩雲を載せるだけだ。

後方に位置する本隊への攻撃を許したとしても、この艦隊で敵攻撃隊の戦力を減らし、そしてさらに迎撃を行って痛撃を与える、となっている。

 

我が軍の基本戦術としては、迎撃を主眼に置き、敵の攻撃隊を撃滅した後に敵艦隊への攻撃を行うとしている。

あくまでも原田少将以下、搭乗員からの体感としての意見であるが、最初期に比べて敵の搭乗員の質が低下しているような感じがあるらしい。

 

確かに一定練度はあるらしいのだが、どうにもエース級の敵機を見ることが少なくなっている、との事だ。

南方方面に展開する陸軍航空隊などからも同様の報告が上がってきている。

 

確かに南方方面で疾風や震電と死闘を繰り広げている敵戦闘機はP‐51と言う恐ろしい敵機であるが、ここ暫くの敵機の練度が余り宜しく無いらしい、電探の哨戒網や戦闘空中哨戒網の充実によって侵攻してくる敵機編隊に対して機体性能では負けているが、十分以上に渡り合っている。

震電ならば機体性能、主に武装と速度性能で勝っているが、対爆撃機戦に特化している為に対戦闘機戦は殆どと言っていいほどに得意ではない。

旋回半径は大きいし、そもそも高速性能を重視したから低速域で戦おうものなら舵の利きも悪いし新兵が操っているのかと思うぐらいのザマになる。

敵機と格闘戦をしようものなら震電はたちまち撃墜されてしまうのだ。

 

そこは戦術でどうにかするしかない。

陸軍飛行戦隊だけでなく、海軍航空隊では各機の連携を重視している。

基本的には1機が敵機と戦っている時は僚機が最低1機支援に入るように、と教本に書かれているし実戦ではそうしないと機体性能差が大きい陸軍機同士の戦いでは命取りだ。

海軍ではまだ機体性能差がマシだが、それでも敵機の方が速度性能では優位である。

 

 

陸軍機が戦っている敵機は、P‐51やスピットファイアの強化型と言った機体性能が疾風より優位に立っている機体ばかりだ。

疾風も確かに欧州技術のテコ入れによって性能自体は向上させているから、その気になれば710km/hぐらいならば発揮可能だ。

とは言えP‐51に至っては[高度7600mで703km/h]と言う性能を安定して発揮出来る。

 

頑張って700km/hの疾風と、普通に700km/hを出せるP‐51では、どちらが優位かは明らかだろう。

それに格闘性能も高速域では良い。

低速域での格闘性能は確かに疾風が勝っているが、そもそも敵はそんな状態で戦ってはくれない。

速度性能を生かして一撃離脱、仮に格闘戦となればサッチウィーブと言った連携戦術で戦ってくるから疾風がその格闘性能を存分に生かせることはない。

そこで迎撃を行う疾風と震電で役割分担をしていると言うわけだ。

 

 

戦術としてはまず最初に各地に置かれている電探基地が敵編隊を発見し、その侵攻してくる方角や高度、機数を詳細に報告する。

流石に敵味方の識別や数センチ単位での高度、一機単位での詳細な機数っ言った測定は無理だが、それでも高度は誤差50m程度、機数は20機程度の誤差で判定出来る。

この報告を受け取った各地の航空隊が連絡を受け取り整備中などの機体を除いて全機が離陸する。

実際に迎撃に参加する機は各隊からそれぞれ出されるので、全機が参加するわけではない。

そりゃ武装を取り外して整備していたりするわけだから無理である。

所謂空中退避と言うわけだ。

 

そして電探に誘導されて敵機に対して攻撃をするのだ。

基本的に敵爆撃機や護衛戦闘機は機種にもよるが高度7~8000m程度が基本だ。

これぐらいの高度なら十分に戦えるのと、震電なら殆ど確実に高度優位を取れる。

疾風が同高度、震電が高度優位を取るのだ。

 

迎撃には主に三つの部隊に分けられる。

 

1.敵戦闘機を抑え込む制空隊(疾風中心)

2.敵爆撃機を叩く迎撃隊(震電中心)

3.上記2隊を支援する支援指揮隊(連山とその護衛)

 

性能の良い大型の機上電探を搭載した、所謂早期警戒管制機化した連山によって迎撃隊は指揮される。

敵機は二つに戦闘機を分けねばならず、しかも震電はそもそも急降下一撃離脱に徹しているから迎撃に向かっても相手にされない。

戦って勝てないなら戦わなければ良い、勝てる状況で戦えばよい、ただそれだけの事である。

 

疾風が基本的に敵戦闘機と組み合って戦いつつ、震電がその隙を穿って敵重爆や敵戦闘機に徹底的に一撃離脱を仕掛け続ける。

震電は高速性能が高く、特に機体が頑丈だから急降下時は900km/hを悠々と飛べる。

それを生かすのだ。

 

敵機は確かに多いが、それでも練度で圧倒的に勝る搭乗員が操る疾風相手に戦っているのだから余裕は少ない。

仮に突っ込んできた震電を追い掛けようものなら他の疾風や震電に撃墜される。

 

これらの戦術は、敵機の鹵獲とその性能試験によって確立したものだ。

 

 

 

敵機の鹵獲は、各戦線でよく発生する。

そりゃ自分達の領域に敵が来るのだからそこで敵を撃墜すれば嫌が応にも敵機の鹵獲と言うのはあるものだ。

敵機の種類はそれこそ豊富であり、確認されている敵機は大体鹵獲している。

 

状態も様々で、良好な状態であるもの、部品取りぐらいにしか使えないもの、一部しかないものなど様々だ。

この内状態が良好な機体を主にあちこちから鹵獲した部品を持ってきて組み上げるのだ。

 

そうして飛べる状態にして日本本土に船便もしくは自立飛行でもって空輸するのだ。

日本本土に送られた鹵獲機は陸海軍兵器審査局に送られる。

 

兵器審査局は、文字通りの役割を担っており個人用の火器や装具類、戦車、砲、航空機、船舶と軍で使われる物はここであらゆる検査審査をされる。

 

設立された経緯は極々単純、こっちの方がやり易いからだ。

元々陸海軍は別々で各種兵器の検査や審査、鹵獲した敵兵器の試験を行っていた。

陸軍で試験して、海軍に渡して試験する。

そんな面倒なことが行われていたのだが正直お役所と言うのもあって一々手続きやらが面倒だしそもそも試験するのは同じものだろうに何故態々別々でやるのか訳が分からない状態だったのは言うまでも無い。

そこでさっさと統合してしまったと言うだけの話だ。

 

これであらゆる想定状況を作って試験して、陸海軍で情報を統一出来るし予算削減も出来る。

なんと楽なことか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を戻して。

ダメージコントロールに関しても幾らか触れておこう。

 

 

艦の防御力、と言われると真っ先に誰もが思い浮かぶのが分厚い装甲があれば良い、だろう。

 

確かにその通りである。

敵の砲弾や爆弾、魚雷の性能を凌ぐ装甲があれば確かに防げる。

しかしそんな装甲を無尽蔵に増やせる訳も無い。

戦艦の装甲を単純に2倍3倍する、まともな頭を持っているならこれがどれほどに無茶苦茶なことか誰にでも分かる事だろう。

そもそも溶接出来ないどころか、リベット工法でも無理だ。

 

とまぁ、実は単純に装甲の厚さだけでは艦の防御力は測ることが出来ない。

艦防御力とは、浸水や火災が広がり難い構造であったり、損害を受けたときにどれだけの速さや精度でそれを復旧し、戦闘力を維持するのか、と言うのも含まれている。

 

 

元来は実際自前の装甲で敵弾を弾く、と言う考えがあった。

しかし単純に自身の分厚い装甲一枚だけで攻撃を防ぐ、と言うのは魚雷や爆弾の性能向上や戦術の変化により時代遅れになった。

 

それを象徴しているのは、空母であれば大鳳や信濃、戦艦だと大和や武蔵と言えるかもしれない。

 

4隻は従来艦と比べても遥かに分厚い装甲を装備しており、元来の艦艇と比べて遥かに撃たれ強い。

特に飛行甲板の脆弱性が何よりも戦術上の悩みの種であった装甲空母2隻はそれを補うべく、と言える。

この装甲甲板の性能は、500kg徹甲爆弾の急降下爆撃にも耐えられるように設計されている。

少なくとの敵艦載機の急降下爆撃は艦橋などに直撃しない限りは爆弾は殆ど意味を成さない。

精々与えるダメージと言えば、命中箇所によるだろうが機銃や対空砲の操作要員に対する爆風、破片等による殺傷、制動柵や空中線の断裂ぐらいなものだ。

場合によっては通信や電探に損害を食らうだろう。

しかしこれぐらいの損害なら修理に時間なんて殆ど必要としないし、即座に戦線復帰が可能だ。

 

ただし、これだけではどうしても魚雷と言う大型艦に対する絶対的な脅威である魚雷はどうにもならない。

単純な一枚の重装甲だけでは、性能向上もあって普通に破られてしまうのだ。

我が海軍随一の装甲を有する大和、武蔵、信濃の3隻も魚雷だけはどうしても敵わない。

 

そこで前々からの研究や試験、欧州軍からの技術提供の結果、軽巡、駆逐艦や海防艦と言った小型艦艇を除いて(艦の大きさ故に搭載が困難であると言う場合がある)重巡以上の大型艦艇には多層防御を施すことになった。

 

重防御と言って問題無く、重油タンクと装甲を何層にも重ねた多層防御だ。

この水雷防御方式を初期から採用、装備しているのは瑞鶴ぐらいなものだ。

 

空母は修理や改装の時に装甲、空気、重油タンクの三重装甲に加えて装甲、空気、コルク材を用いた、6層にもなる多層構造バルジの増設で水雷防御向上を図っている。

戦艦は砲戦を行った時に元来の装甲に加えて2層の重油タンクと装甲の二重装甲、空母と同様に装甲、空気、コルク材の増設バルジで水雷防御の向上を図っている。

重巡も同じであり、装甲、空気、重油タンクの三重装甲に加えて装甲と空気、コルク材のバルジを装備している。

 

コルク材は水に浸かると膨張する特性がある為に、魚雷による浸水を受けてもその穴を塞いでくれる、謂わば防水マットなどの役割を兼ねている。

正直バルジは損傷を受けたら引き剥がして新しいものに交換するので戦い事に使い捨て、ぐらいの感覚だ。

 

他にも電力は5チャンネル(電力を流す為に5つの回路があると考えてくれればよい)、それら全てが使用不可能になったとしても問題無いように3時間程度使用が出来るバッテリー、消火装置(散水装置、消火剤散布機)も給水、放水のいずれも一つが駄目になっても大丈夫なように区画分けされた区画に複数存在する。

消火剤は、汲み上げた海水に石鹸液を混ぜ、空気で攪拌して、凄く簡単に言えばとんでもない量の濃密な泡で作られる。

 

格納庫、弾火薬庫にはそれぞれ独立した消火装置があり、格納庫内はスプリンクラーが走っている。

航空燃料が通るパイプにはそれらが破断し、燃料漏れを艦内で最小限に止めるべく緊急投棄装置、水密扉にはダメコン要員が行き来するための専用ハッチがある。

航空機用燃料タンクには不燃性ガスと水、そして装甲を施した3重構造のタンクで囲われている。

仮にこれらを突き破って燃料タンクに到達しても、その場を取り仕切るダメコン班の判断で燃料の投棄を可能にしているし、そちらが出来ない場合は艦橋指揮所からでも連絡ないし火災検知のランプが光るので艦橋要員によって可能だ。

 

それ以外にも各種塗料の改善を図った。

元々艦外艦内問わず、塗装に使われていた塗料はなんせ燃え易かった。

これは塗料自体が燃えやすい油性であることが原因であったからだ。

火を付けようものならどんどん燃え広がり、手が付けられない状態になる。

しかも厄介なのが、火災が起きるとその熱が周囲に伝わって自然発火する恐れがあることだ。

これは可燃性のある塗料を使っていると、隔壁で閉じていても熱が伝わって塗料に火が付くと言う事だ。

艦そのものが塗料によってデカい可燃物になっているのだ、幾ら艦内にある可燃物を難燃性に変えたり除去したりしても全く意味がな無い。

 

これは艦内火災が広がる原因であるので、即座に難燃性塗料へ替えられた。

今の艦艇に使われる塗料は全てこれである。

 

実装されている諸装置の実用性は今までの海戦の結果が物語っているであろう。

これも欧州軍からの技術提供が無ければ、信頼性の低いままで搭載してたから、無いよりはマシ、ぐらいで大した効果は発揮出来なかっただろう。

 

 

そして何よりも重要なダメコン要員も欠かせないだろう。

これは他にも言えることであるが幾らハード面(技術)を強化したところでソフト面(人員)が全くの役立たずでは意味が無い。

 

結局のところ、どれだけ設備や装備を良くしようとも最終的に扱うのは兵士達だ。

兵達の訓練をしっかりとやらねばどれだけ最新設備にしても宝の持ち腐れ、意味は無い。

ダメコン要員はそれぞれ分隊で編成されており、4分隊に加えて予備が1分隊、消火専門分隊が1つ。

それ以外の乗組員も海軍兵学校や配属後の習熟訓練などでダメージコントロールを徹底的に叩き込まれる。

 

習熟訓練期間が6か月となって居るのは、普通の戦闘訓練だけならば3か月で済むが、そこにダメージコントロール訓練を含んでいるからだ。

ダメコンが適切に行われれば、その分艦の生存能力は大きく向上する。

 

指揮系統の単純化なども図っているし、以前に比べて随分とやり易くはなっているだろう。

今まではダメコンを行う工作班は、分隊長が戦死した場合その分隊において分隊長の次に最も階級の高い者が指揮を引き継ぐとしていた。

 

1分隊のA2等兵曹が指揮を執っていたが戦死したために1分隊A兵長が指揮を引き継ぐ。

 

そのような形となって居たわけだ。

だがこれは、実は普通のように見えて現場では混乱の種であった。

ダメコンにおける指揮と言うのは、分隊指揮官全員がダメコン専門教育を施している海軍工作兵学校に最低1年間在籍せねばならない、と規定されるほどにその指揮は難しい。

ただ穴を塞げばいいとかそう言うレベルでないのだ。

 

そりゃそんなダメコン指揮における専門教育を受けていない者が指揮を引き継いだらどうなるかは明らかであった。

であるのにそれに現場からの直接談判が無ければ気が付かなかった俺も無能である。

 

そこでこの指揮継承を改定し、同じ分隊では無く各工作班の中で最も階級の高い者がその指揮を引き継ぐと改定した。

 

ここに至るまでかなり苦労の連続であった。

人員養成はどうにかなったが、装備の方に欠陥やら問題やらがあって浸水時の艦平行を保つための試験において注排水装置がぶっ壊れて結局注水に13時間も要したりと、実戦であればとっくの昔に沈んでいる、そんな有様だった。

材質問題、設計問題、動力不足、過剰負荷etc……。

 

まぁ、実験やって探せば幾らでも欠陥が出てくる出てくる。

技術畑の妖精達はそれはもう頭を抱えて叫びたかったに違いない。

 

兎に角見つかった問題は虱潰しに試行錯誤、時にどうしようもない場合は負荷を小さくするために装置そのものの数を増やすなんかの妥協でもって改善されたので、今では起こっても別区画の装置で代用可能なようにしているから一斉に全部壊れたなんてことにでもならない限りは大丈夫である。

 

 

これら全てをひっくるめてが、艦の防御力である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦準備は着々と進んでいる。

 

陸軍師団の編成も半年で大急ぎで終わらせて、カリマンタン島に輸送中である。

これには人手が足りないので1航艦も護衛任務に就いている。

 

ついでに乗組員の外洋航海訓練も行えるからな。

流石に俺は書類仕事があるので現場に立つことは出来ないが、皆無事にやっている。

 

「原田少将、久しぶりだな」

 

「お久しぶりです、提督」

 

母艦航空隊搭乗員を養成する、大分飛行場の視察だ。

付いてきてくれているのは本日秘書艦を務める鈴谷だ。

 

本来は鈴谷は船団護衛任務を第一機動艦隊所属艦として参加する予定であったのだが、機関部から異音がある、とのことで点検整備の為に外されている。

第一護衛艦隊、第二護衛艦隊、第一補給艦隊が今は呉にあり、次の輸送船団護衛に備えて点検整備と休養中である。

 

「オッスオッス、元気?」

 

「お陰様で。鈴谷さんもお変わりないようで」

 

「そりゃ勿論」

 

「それで、今期の状況はどうだ?」

 

「一応及第点と言ったところでしょう。空戦技能は確かに一級線でしょうが、なんせ発着艦がまだまだですな」

 

発着艦はどうしても空母が無ければ出来ないし、技能向上も出来ない。

 

陸上でも飛行甲板を模した滑走路で出来るには出来るのだが、洋上を航行して揺れる狭い飛行甲板への着艦と、陸上の動かない広い滑走路への着陸ではまるで別物だ。

今は陸軍師団の輸送に1航艦までもが出張っているから空母への発着艦訓練回数が少ないのは仕方が無いだろう。

 

「このままの調子だと、戦力化にどれぐらい掛かる?」

 

「そう、ですね……。今年一杯は掛かるかと。次期作戦までには空母を必要とする諸訓練はギリギリ終えられるかどうか、と言ったところでしょうか」

 

「それなら良い。その手の訓練は空母が無ければどうしようも無いからな。色々手回ししてみるが、輸送の負担がデカいから向こう3か月はまともに空母を訓練には使えんだろうな」

 

「護衛が出来る艦が少ないのは、やはり苦しいですなァ」

 

原田少将はしみじみと言う。

彼もまた、船団護衛任務を何度も経験した身だ。

 

それこそ俺がこの世界に来る前の戦線後退の際の撤退する船団護衛にも就いていたのだ。

撤退中や死に物狂いの攻勢の時なんぞ船団が文字通り全滅、護衛艦隊も大損害だなんてザラだった。

だからこそ護衛戦力が少ない事の辛さは良く分かっている。

 

「皆頑張ってくれている。戦力を増やせないんだ、そこはもう仕方が無い」

 

「運用もギリギリでは?」

 

「そうなんだ、戦力が足りないから運用、戦術、戦略でどうにかしようにも結局のところ実働戦力が全く増えないで、変わらんからなぁ」

 

二人で溜息を吐く。

今週の秘書艦である鈴谷を始めとして、皆頑張ってくれているがそれでも、だ。

 

寧ろその皆にかかる負担を考えれば、出来ることならば戦力を増やして負担を欠片でも減らしてやりたいものである。

 

「提督、緊急電です!」

 

原田少将と歩いていると、伝令兵であろう兵卒が物凄い勢いで走ってくる。

 

「何事か!」

 

「はっ、突然失礼します!第一機動艦隊より入電です!」

 

彼が差し出した電文には、衝撃的なことが書かれていた。

 

『大規模ナ敵潜水艦隊出没。輸送船多数撃沈サル。陸軍兵多数救助ナレド機材多数喪失。ビスマルク、大鳳ノ盾ニナリテ被雷3ナレド航行ニ支障無シ。1127』

 

電文には、護衛に就いていたビスマルク諸共大損害を被ったと書かれていた。

撃沈された輸送船の隻数、それと陸軍の損害、ビスマルクそのものの損害が重要だ。

魚雷3本をも食らっているから、下手をするとビスマルクの豪州作戦参加が間に合わないかもしれない。

機関部や主砲弾火薬庫なんかがやられていたら、修理に半年は掛かりかねない。

 

それに、失った陸軍将兵や機材の補充なんかも大急ぎでやらねばならない。

電文によれば、将兵の大部分は生きて救助されたとのことだが機材を多数喪失していると言う。

 

もしこれが事実であるならば下手をすれば輸送していた師団は戦闘団師団であるから幾らか機材補充は楽であろうが、それでも補充状況によってはこちらもまた作戦参加を延期なり見合わせることになる。

機材補充が大変な機甲師団や砲兵師団でなくて良かったと思うべきであろうが、それでもだ。

 

 

「派手にやられたな……」

 

鈴谷も凡そ何があったのかは想像が付いたのだろう、俺の顔を見ている。

 

「鈴谷、至急護衛艦隊に詳細な損害、喪失人員、機材の報告をさせるように。ビスマルクは護衛の駆逐艦を残してバリクパパン港で修理ののち本土へ回航せよ。全て暗号文。厳重にな」

 

「りょ-かい」

 

「伝令、鈴谷を通信室まで案内してくれるか」

 

「はっ、承知しました」

 

伝令兵が鈴谷を連れて走っていく。

 

「提督、呉にお戻りになられますか?」

 

「あぁ、すまんな」

 

「いえ、お気になさらず。すぐに陸攻と護衛を手配しましょう」

 

「ありがとう」

 

原田少将がすぐに俺が乗って来た一式陸攻とその護衛である紫電改を飛べるように手配してくれた。

 

一式陸攻は、実は機体そのものはもう生産されていない。

その生産リソースを全て連山に振り分けているからだ。

 

部品生産が細々と続けられているだけだ。

今まで配備されていた一式陸攻も、徐々に配備縮小と退役を進めており、対潜任務から輸送任務など全ての点に置いて連山と二式大艇に置き換える予定である。

深山はとっくの昔に退役して博物館で展示されている。

動態保存なのでいざとなれば整備を行えば飛ばすことも可能だ。

 

まぁそんな状況になった時点で深山を有効に使える状況かと聞かれると疑問なわけであるが。

 

 

 

今実戦配備されている一式陸攻は、正式には一式陸上輸送機である。

防御火器を全て20mm機銃に変え、側面銃座の廃止、機体上下と機体先端、後尾部に1基ずつ動力銃座を装備している。

輸送に特化した型式で、完全武装の挺身兵20名と装備する小銃や軽機関銃や迫撃砲の砲弾薬1t分、もしくは3tの物資を運ぶ能力がある。

 

輸送機型とは言えども、その殆どが日本本土での細かな輸送や挺身隊の訓練、あとは連山に移る前段階の訓練用に練習機型があるのでそれに使われるぐらいだ。

活躍した事例としては先の大震災の時に連山では壊れた滑走路への着陸が出来ないので、代わりにこの一式陸上輸送機がピストン輸送を行っていた。

 

防御力も日本本土で運用されるなら別に精々3000kmもあれば良いから余剰となる3000km分の燃料タンクはいらないし、減らすとなれば重量も軽くなる。

軽くなって余裕があるから防弾装備を付けることが出来る。

従来の一式陸攻よりも遥かに打たれ強い。

 

それに乗って呉に急いで戻る。

護衛には紫電改20機と一式陸上輸送機3機が就いてくれている。

呉までは長くても15分ほどの空の旅である。

 

 

 

 

 

 

呉に戻り、即座に電文を受け取った。

どうやらビスマルクの被雷は右舷に集中しているらしく、速力こそ10ノットに低下しているが自力航行は可能、電力も保持しているとのことだ。

バリクパパン港に入港すること自体は可能で、ドックも空いている。

そこで被雷時の穴や機関の応急修理を行った後に本土へ回航する。

 

 

輸送船の損害は12隻。

兵士の殆どは海に飛び込んで無事であったが、小銃から戦車や自走砲を連隊分を丸々失っているとのことで、その補充には苦慮するだろう。

 

既に各部隊から機材の抽出を行っており、輸送船に積み込んでいる。

 

それとマカッサル海峡、セレベス海に侵入した敵潜水艦隊に対しては、大規模な掃海作戦が展開されることとなった。

潜水艦狩りが得意な第一、第二護衛艦隊と3航戦、1航戦と2航戦の軽巡、駆逐艦の殆ど、それに加えて各地の二式大艇、連山が対潜爆弾をたっぷり抱えて参加することになった。

 

第一機動艦隊の残りの空母、戦艦、重巡、第一補給艦隊は本土で待機することになる。

流石に対潜水艦戦闘となると空母はまだしも戦艦と重巡には全く出番が無い。

 

空母の盾、なんて運用も出来なくも無いが正直効果があるかと言われると疑わしい。

輸送船団に戦艦の護衛を就けているのは敵潜水艦に対してでは無く、敵航空機や敵水上艦に対してである。

 

航路の安全が確保されないと、今回と同じことが何度も繰り返されることになる。

だから最低限マカッサル海峡の掃海はやらねばならない。

 

 

 

 

 

それ以降、丸々2か月間掛けて徹底的に掃海作戦と、サンギヘ諸島、カラケロン島、スラヤール諸島に対潜監視所や電探基地の建設、整備を行うことになる。

 

 

 

 

 

 


















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