作戦準備も中々順調に進みほぼ全ての準備を終える事が出来た。
1航艦と第1、第2護衛艦隊、陸軍部隊の輸送を担う輸送船団はそれぞれバリクパパンとボンタン、マドゥラ島とスラバヤ島の間にある湾に停泊している。
あとは支作戦、本作戦の実施を待つだけである。
支作戦(陽動)は敵の目を逸らす為に我々の勢力圏内であるスラウェシ島以東にある敵地飛行場や港湾施設を各地の連山によって爆撃、破壊するものである。
作戦名はタ号作戦と命名され、投入される戦力は上記の連山に加え、偵察や搭乗員救助を担う二式大艇、それらの護衛を行う疾風である。
改修や機種転換が進み、全機が更に改良を施され夜間空中戦から対艦対地攻撃も可能になった機上電探と、より鮮明にやり取りが出来る機上無線機を装備する機種であるから昼間迎撃から夜間迎撃まででもござれだ。
流石に実戦配備から今までの期間があれば、機上電探の改良から量産体制の確立、既に配備済みの機体の改修や新規機体製造、それらの部隊への配備は進む。
全てを置き換えるには今少し、具体的には1〜2年の期間が必要になるが、それでも前線部隊にはそれなりに纏まった数を送り込んでいる。
改修は外地防衛を担当する陸軍航空隊や沖縄、硫黄島向けが今のところ殆どであり、新規製造機体は日本本土にある母艦航空隊や本土防空隊向けだ。
まぁ、新規機体製造も軌道に乗っているから徐々に新規製造機体に置き換えられていく予定だ。
配備の優先度的には全体の数が他と比べて少ない母艦航空隊と本土防空隊が最優先になる。
配備率は母艦航空隊100%、本土防空隊の震電が80%と言ったところだ。
次に優先されるのが、南方方面の外地防衛に就いている陸軍航空隊であり、その規模故に配備率は35%だが、改修用機材と人員を適宜送り込んでいるので余り時間は掛からずに50%を超える。
それと並行して夜間飛行訓練が本格化している。
陸海軍どちらともに、前線部隊から新兵訓練を行う訓練飛行隊全てにおいて夜間飛行に始まり夜間戦闘などの夜間操縦飛行訓練が新たに必修科目になった。
この点、夜間飛行などは陸軍航空隊の方が熟達している。
なんなら海軍の先の夜間攻撃に関する訓練は陸軍航空隊から教官を引っ張って来て、その協力の下で行われたぐらいだからな。
外地防衛の主戦力である疾風は、今までに度重なる改修や改造、改装を受け続けている。
基本的にはエンジン馬力の強化を第一にしておりその強化された馬力を使って防御力や各種装備の搭載、強化を行っている。
ハ43‐82と言う、排気タービン過給機や、強制冷却ファンの搭載など、大元の誉エンジンとは全く違うエンジンに変わっている。
と言うか技術者が大元の誉エンジンとハ43‐82を並べて見た時、ぱっと見同じエンジンだとは誰も思わない、と言うか思えないだろう。
ハ43‐82を搭載した疾風の性能は以下のものだ。
エンジン馬力2331馬力
最高速度710km/h
巡航速度
武装は陸海軍の弾薬に互換性がある2式3型20mm機関銃4艇
5式2型機上電探
6式4型機上無線機
爆装各種50kg〜250kg爆弾2発
これが今の疾風の前線で発揮可能な性能値である。
内地での武装無し、燃料は最小限、防弾板の撤去、エンジン負荷を一切無視したフルブースト等の状態であれば737km/hの発揮も可能だが、前線ではどうやっても無理である。
航続距離は増槽有りで約1600海里と燃費が少し上がったので200海里分ほど伸びている。
防御力に関しては全ての燃料タンクは15mm厚の装甲と20mmの積層防弾ゴムで覆われセルフ・シーリング式防弾燃料タンクとし、火災発生時に対応して機体各所に自動消火装置を装備している。
搭乗員の防護は、20mm機銃弾の直撃に耐えられるようにコックピット全周に15mm厚の装甲板、風防は全周25mm、前面部90mmの防弾ガラスで覆われている。
脱出も行い易いように、風防上面と後部に火薬を指向性に配置し、コックピット後部を吹き飛ばすための飛散装置を装備している。
かなりの防御力であり、深海棲艦機の主武装である12.7mm機銃はほぼ間違い無く、20mm機銃も防ぐぐらいの防御力はある。
これらの装甲などを全て取っ払えば航続距離は2000海里程度には伸びる。
エンジン馬力の余力は、その殆どを防御力と追加された機上電探や機上無線機などに割り振っている。
機上電探は言わずもがな、機上無線があれば連携も取り易く、装甲に守られていれば搭乗員が生き残れる可能性がより高くなるからだ。
機体なんぞ工場で月産300機と幾らでも作れるが、熟練搭乗員は育つのに実戦経験も加味すれば丸々数年は掛かる。
どちらを取るかなんて明らかだ。
疾風は被撃墜数は前線基地であれば、全体で200機以上とかなり多いが、搭乗員の生還率は9割を超える。
200名の搭乗員の内、140人は五体満足で帰って来て、残りの2割は戦闘中や脱出の際やパラシュート降下時の着水時などで怪我を負っている。
流石に腕や足、視力を失ったら搭乗員としてはやっていけないが、本土で経験を活かした教官や戦技研究などを務める事も可能だ。
手術すれば治る怪我であったり、骨折ぐらいの怪我なら現地で十分治療可能、完治したらそのまますぐに戦線復帰可能だ。
撃墜されても搭乗員さえ生きていてくれれば、何度でも戦えるし、その分経験を多く積んだ熟練搭乗員が生まれることになる。
人命重視こそ、長期戦を戦う我々の勝利に繋がるのだ。
その分二式大艇を装備する部隊は毎日毎日大忙しだ。
二式大艇の話を少しだけすると、怪我をした搭乗員や輸送船の乗組員を収容した時にその場で治療が出来るよう、ある程度の治療設備を備えている機体を装備している部隊がある。
対潜や船団護衛専門、搭乗員救助専門の二種類にそれぞれの部隊は分けられ運用されている。
それぞれの島に2個ずつ二式大艇装備の部隊があるのはその為だ。
母艦航空隊の主力戦闘機である烈風は疾風よりも最高速度が遅い。
搭載しているエンジンは疾風と同じであり、馬力は2331馬力を発揮出来るが正規全備重量状態であれば、664km/hが限界だ。
コックピットや燃料タンク、エンジン周り、電探、機上無線周りの防弾装備を全て外せば、まぁ670~680km/hは発揮出来るだろうが仮に進言されたとして許可するわけがない。
最高速度が疾風よりも大分遅い理由は、艦載機であると言うのが一番大きいだろう。
艦載機は陸上機に比べ、必要とされる固有装備が多い。
数tもある機体の着艦に耐えられる為の強度を持ったアレスティング・フック。
折り畳み翼を装備するから、それの折り畳み翼装置のそれを載せていても空戦をして空中分解しない為の強度確保。
目印の無い洋上でも母艦へ正確に辿り着く為の誘導無線。
カタパルトで射出されるからそれに耐える為の機体全体の強度向上に伴う重量増加。
それら全てを合わせると燃料や弾薬を満載にした時の全備重量は5136kgにもなり、疾風が4229kgであるからほぼ1tもの差がある。
最高速度が疾風よりも50km/h遅くとも仕方が無い。
寧ろこれだけの差で済んでいることを褒めるべきだ。
疾風同様、艦載機に必要な装備類や防御装備、武装を全て取り外し、燃料も最小限にしてエンジンに掛かる負荷を一切無視、フルブーストを行えば700km/h以上の発揮は可能だがそれでは意味は無い。
烈風の航続距離は1500海里(2778km)に制限し、その上で防御力を上げている。
1200海里ぐらいにまで減らしてもなんら問題無いのだが、それだと艦隊防空戦を連続して戦うことを想定した場合、航続距離不足に陥る可能性がある。
だから余裕をもって1500海里としている。
片道最大で500海里も飛べれば十分なのだ。
何故ならそこまで遠距離で戦うなんて事が無いからだ。
1600海里もあれば殆どの場合の戦闘は余裕をもって戦える。
敵との距離が遠ければ遠いほどに、搭乗員へ掛かる負荷は増大するしその分損耗率も上がる。
そもそもの戦う距離が短いのならば無理して航続距離を伸ばさなくても良い。
連山と二式大艇は武装を20mm動力機銃に全て換装した以外は特に変わりは無い。
あの2機種は元々の防御力が高く、元から装甲に覆われている操縦手以外の機銃員や電信員、電探員用に防弾ガラスや装甲板を追加したぐらいだ。
重量増加で多少航続距離が短くなったが、搭乗員の命には変えられないし、それでも二式大艇が7800km、連山も6900kmもあるのだから4発重爆や偵察、哨戒、救助用としては十分だろう。
この2機種は1機撃墜されれば10名もの、それぞれに特化し専門に訓練された貴重な搭乗員を失う事になる。
1機辺りの人的損耗は戦闘機よりも重い。
防御力は高いことに損は無い。
二式大艇の主任務は何度も言っている通り、哨戒任務と撃墜された搭乗員の救助、それと哨戒偵察も兼ねている。
連山だけでは対潜哨戒は出来ないし、海面に降りての搭乗員救助はどうやっても出来ない。
船団護衛の際の対潜任務も二式大艇の方が向いていると言うのもある。
それに万が一すべての陸上飛行場が離発着不可能状態に陥った場合、海面と言う広大な決して無くなることのない滑走路を使って離着陸が出来る二式大艇は重要だ。
航続距離が長いから、その分連山よりも哨戒任務で飛ぶことが出来る時間も長い。
それぞれに、適した任務があるからこそ連山と二式大艇と言う2機種が存在するのだ。
海軍の主力戦闘機である本土を守る紫電改は搭載エンジンは疾風、烈風同様であり最高速度は703km/hの発揮が可能だ。
日本本土の空を震電と共に守り続けている重要な機体である。
艦載機ではない為に、機体の高速化が容易だから烈風と比べて随分と速い。
紫電改を艦載機化しても、結局艦載機固有装備を載せたりすることになるので結局は烈風と同じぐらいになる。
武装は幾つかのパターンがある。
20mm機銃を4門搭載している紫電改1型、30mm機銃と20mm機銃を2門づつ搭載している紫電改2型。
そして様々な武装搭載試験用に色々と改造されている紫電改3型だ。
紫電改3型は、説明した読んで字の如く装備試験機である。
烈風や疾風に搭載されている機上無線や電探は紫電で一通りの試験などを行って、実戦に耐え得るものかどうかを図る為に作られたものだ。
燃料タンクは翼内武装を色々と載せる為に幾らか減らされ余裕を持たせている。
それ以外は色々と変わるが、今陸海軍で使われいているほぼ全ての装備がこの紫電改で試験されている。
無線機や機上電探、防弾燃料タンク、防弾板、20mm機銃、20mm機銃用の弾薬等々。
大きなものから小さなものまで上げればきりがないほどに様々な装備や武装の試験をしている。
とは言え3型の配備機数は10機ほどと少ないので殆ど知っている者は居ない。
そも、装備や技術の試験機であるから数を揃えなくて良い。
今の海軍が主力として配備している紫電改は1型であり2型は既に生産されていない。
2型の生産が撃ち切られた理由は必要無いからだ。
30mm機銃は装弾数が少なく、爆撃機迎撃任務には震電が居ることから100機ほどが生産されて以降生産はされていない。
単発機相手だと確かにとんでもない威力を発揮する30mm機銃だが、各門30発しか搭載出来ないから継戦能力が低く、結局装弾数の多い20mm機銃で戦う羽目になる。
だったら別に敵機に対して十分な効果がある20mm機銃で固めた方が補給もし易いし戦いやすいとのことから生産が撃ち切られている。
結果、1型を大量生産して本土防空に充てた方が良いし、B‐29の迎撃やその護衛に戦闘機が就いてきても高高度性能も十分にあるから戦えると判断したのだ。
そして現在開発真っ只中の新型艦上戦闘機、陣風について。
こちらは今のところ、試作機の製造に海軍呉航空廠が着手しており、6機の製造が予定されている。
これらは完成次第すぐさま各種試験を行われ、問題が見つかればそれらを解決し、母艦航空隊に順次配備、機種転換、実戦投入がされる予定だ。
とは言え問題がどの程度のものにもよるが、最低でも1年ほどは掛かる見通しだ。
少なくとも豪州作戦中は、敵がどれだけ強力な機を出してきても烈風で戦わねばならない。
今日は作戦前の陸海軍合同会議が開かれている。
「航空偵察写真によると、エイティ・マイルビーチには防御陣地は敷かれていますが、そこまで重防御ではない様です。トーチカも十数程度、塹壕が主です」
「内陸部へも塹壕やトーチカが確認されているので、恐らく縦深防御を想定しているのでは、と考えております」
「敵の防衛戦力としては2ないし3個師団と見積もっております」
「近辺に飛行場が2つありますが、どちらも1000m級滑走路が1本ですので規模としては多くても3ないし4個航空隊ほどかと」
「ただ、軌条が4本走っているので迅速に確保しないと縦深防御での時間稼ぎと相まって、戦力が集まってきたら相当厄介です」
「上陸地点の戦力はそこまで大きくは無いな。軌条の一部さえ破壊して一時的に使用不能にしてしまえば増援は防げるだろう」
恐らく、戦力の関係から上陸自体は成功する筈だ。
問題は敵艦隊だろう。
「敵艦隊との戦闘が長引けばその分陸海空全てにおいて増援が来てしまう。我々海軍がどれだけ迅速に敵艦隊を排除出来るかに掛かっていると言う訳だ」
「この方面に展開する敵艦隊は空母だけで15隻は下らない、航空戦力差は最低でも300機、最大で500機以上、護衛艦艇を含めて考えても丸々1個艦隊以上の戦力差になります」
参謀長が言った通り、なんせこれでは勝ち目が薄い。
それどころかこちらと拮抗するぐらいの戦力だけをぶつけて残りで輸送船団を叩くことだって出来る。
こちらの戦力が限られており二つに分けることが難しい以上、どうしても敵に別動隊を用意されて同時に輸送船団に攻撃をされたら対処は出来ない。
「船団護衛には陸軍からも飛行戦隊を出しますが、空母や戦艦を含む艦隊の相手は戦闘機が主力ですので正直厳しいですな」
「戦艦が突っ込んで来たら、戦闘機だけではどうにもならんのは当然だし、銀河を配備したところであの戦艦の対空砲火の中に双発機が突っ込んでいくのは自殺にしかならないからな……」
「陸軍は対艦攻撃兵力が無いのだから、そこは仕方無い。敵機と敵潜水艦の対処さえしてくれればそれで良いのだ」
寧ろ陸軍に敵艦、それも戦艦や空母を沈めてくれと言う方が間違いだ。
基本的に陸軍は戦闘機が主力だ。
そこに重爆と若干の対地支援機や戦術、戦略偵察機が含まれる。
敵地侵攻任務の際の攻撃兵力の殆どは海軍が担っているのだから仕方が無い。
指揮権に関しては一々面倒になるので、外地の連山装備部隊は現地陸軍の指揮下に置かれている。
本当は陸軍に連山部隊を創設した方が面倒が無くて良いのだが、これがまた面倒なところで爆撃機搭乗員になれる適性を持つ妖精はその殆どが海軍適性なのだ。
これは陸軍に属することが出来ないと言う事だ。
だから海軍で爆撃機隊を作って、それを陸軍の指揮下に入れると言う回り諄い
二式大艇に関しては任務の性質上、海軍の直接指揮下にあるが護衛を陸軍に頼まねばならない。
とは言え、仮に連山を対艦攻撃に転用した場合の結果は火を見るよりも明らかだ。
あんなデカい機体が雷撃を仕掛けようものならただの的にしかならないし、対艦水平爆撃にしても同じだ。
連山に対艦攻撃をさせると言う考えそのものが間違っていると言っていい。
第一、対艦攻撃で安全を保つために高度6000m以上、しかも無誘導での爆撃なんて当たりやしない。
連山は陸地に対する爆撃こそが本来の運用であり、最も大きな効果を発揮することが出来るのだ。
色々と話し合った結果、敵の増援を防ぐためにも、上陸部隊が発見されるのは望ましくない。
そこで当初は1航艦のみが出撃し、敵艦隊を撃滅する為に行動することとなった。
1航艦だけであれば一過性の攻撃と言う可能性を敵は捨てきれないからだ。
そこで安全最優先としてスラバヤ港沖に輸送船団を待機させ、敵艦隊の殲滅を行った後に艦隊が迎えに行き、輸送船団を出港させることになった。
これなら最悪艦隊が勝てなくても、輸送船団は無傷のままで作戦を中止出来る。
この会議において陸海軍双方の最大の論点となったのは、上陸地点付近にある飛行場を先んじて爆撃し潰すかどうかだった。
反対派の意見としては流石に飛行場を重爆に爆撃されれば、敵も上陸することに感付くだろう、という最もな意見だった。
これは確かにその通りだ。
確かにポート・ダービーやポート・ダーウィンへの爆撃は行われているが、それでもいきなり別の場所に爆撃が行われたらそっちで何かあると考えるのは普通だろう。
各地に対して爆撃を仕掛け、上陸地点を絞らせないようにするのも一つの手だが、そもそも投入する戦力が上陸が出来そうな場所と言えば上陸地点のエイティ・マイル・ビーチやブルームと言う市街地があった場所の近くにある砂浜、ポート・ダービーの3か所ぐらいしかない。
もう1か所か2か所あれば攪乱も大きく意味を持つだろうが、3か所では流石に効果は小さいと予想される。
逆に賛成派の意見は、やった方が艦隊は敵基地航空戦力と敵艦隊の2正面作戦にならず安全性が格段に上がると言う主張だ。
これもその通りであり、敵飛行場を野放しにしていたら確実に敵艦隊と敵飛行場を最悪同時に相手取ることになる。
ただでさえ航空戦力、戦艦戦力どちらも劣っているのにここに敵飛行場まで加わればその航空戦力差は1000機を超える可能性だってあるのだ。
これを事前に叩くことが出来れば、後顧の憂いは絶ったと言えるだろう。
それに敵艦隊の撃滅に成功したとして、次に敵飛行場を叩くとなると、艦隊にそれだけの十分な戦力があるとは言い切れない。
それならば連山による爆撃で予め潰しておいた方が良いのでは、と言うものだ。
結果、爆撃を実行することになった。
とは言えエイティ・マイル・ビーチ近辺の飛行場だけでなく、ポート・ダービーの飛行場に対しても爆撃を行うことになった。
その方がどちらに来るか分からないし、どちらかの戦力をどちらかに集中するなんてことも出来なくなるからだ。
少なからず防衛用戦力を張り付けておかねばならなくなる。
手順としては、まず最初にポート・ダービーの飛行場に対して4個飛行隊240機の連山で大規模爆撃を行う。
距離もそこまで離れていないから、恐らくエイティ・マイル・ビーチの飛行場戦力も迎撃に出る筈だ。
こちらは陽動なので派手に行く。
護衛の疾風もたっぷりと就け、万全の態勢で挑む。
爆装は陸用25番と25番タ弾を4発づつの8発を装備する。
距離が遠いので、最大爆装量には出来ない。
ただ、全機が無事に投下を完了することが出来れば480tもの爆弾を落とすことになるから、十分だろう。
これで使用不能にすることが出来なくても、状況によっては反復攻撃をすることも視野に入れている。
そして陽動の爆撃隊が作った隙をついて、1個飛行隊60機の連山と護衛の疾風120機がエイティ・マイル・ビーチの飛行場を爆撃する。
30機ずつになるが、25番陸用爆弾と25番タ弾を4発づつ抱えて爆撃を行うので30機でも240発、1つの飛行場に60tの爆弾の雨が降ることになる。
流星であれば80番を全機にぶら下げたとしても75機もの機数が必要になる。
240発もの爆弾の雨を降らせれば予備滑走路が無事だったとしても運用出来る機数は限られて、主滑走路は最低1週間程度は使用出来なくなる。
この作戦を発動するに伴い、スンダ列島に連山を全てと疾風を集められるだけ搔き集めている。
連山だけで300機、疾風も300機以上が参加する作戦だ。
そのために夜間攻撃を成功させるべく機上電探を生産する工場を突貫工事で増設し、連日昼夜問わずの生産を行ってギリギリ間に合わせたのだ。
ここまでの航空兵力を陸軍が一度に動かすのは初めての事であり、整備が補給、参加する人員の興奮などで大騒ぎである。
今スンダ列島の各飛行場に降り立てば疾風や連山が所狭しと並んでいる勇壮な光景が見られることだろう。
作戦が開始される。
既に陸軍部隊の輸送船団への積み込みは完了している。
1航艦と両護衛艦隊が真っ先に出港。
敵艦隊との決戦に向けて進む。
次に連山と疾風が飛び立った。
本隊、陽動隊どちらも大編隊を組んで豪州へ飛んでいく。
艦隊の電探でもその大編隊はしっかりと捉えていた。
「提督、連山と疾風が頭上を飛び越えます」
「昼間なら姿が見えただろうが、夜では仕方が無いな」
艦隊が出港し、爆撃隊が敵地へ飛んで行ったのは2200の事である。
連山に合わせた巡航速度でも、片道1時間ほどの旅である。
中々に長い道のりである。
高度は9000m。
目標は大きな飛行場だから高高度でも外しはしない。
きっかり1時間後。
爆撃隊から電文が入る。
『陽動隊総隊長機より入電。『我敵機ノ迎撃ヲ受ク。護衛戦闘機隊戦闘開始』以上』
「敵機の迎撃だと?」
『はっ、その通りです』
「何かの間違いでは無いのか?」
『いいえ、電文にははっきりと書かれております』
参謀長が訝しむ様に電信室に無線で確認を取る。
しかしどうやらそれは事実らしい。
「可能性としては、敵が闇雲に迎撃機を上げ、地上電探による誘導で迎撃を行っているか、敵にも夜戦能力のある戦闘機が出て来たか。そのどちらかだろうな」
元々機上電探が使えなくとも地上や艦上の電探で迎撃機を誘導し、それによって迎撃任務を戦闘機に行わせると言う手法も研究されている。
こちらがそれらを研究、実戦配備している以上、敵もそうなるだろうと予想はしていた。
「そうすると、我々の作戦構想自体が揺るぎかねませんな」
「あぁ、艦載機にも搭載可能であるならば、厄介だぞ」
少しすると新しく電文が届く。
『陽動隊から続報。『新型双発戦闘機。機種ハ2種、夜戦能力アリ。片方ハ速度遅ク、片方ハ疾風ノ最高速度ニ匹敵スルト予想サレル』。以上』
「疾風の最高速度に匹敵!?」
「時速700km以上は出せる、そう言うことになるな」
「双発機である以上、艦載機では無さそうですが……」
「いや、敵は間違いなく艦隊上空にこれらの戦闘機を配置してくるだろうな」
「となれば、このまま作戦を実行するわけにも行きますまい。幾らか修正が必要でしょう」
作戦の修正が必要であろう、と皆で話す。
作戦自体の続行はするが敵に夜戦能力が追加されたとなればどうしても修正する必要がある。
すると次々と新しい電文が入ってくる。
『陽動機隊より新たな入電。『敵機武装ハ12.7ミリト20ミリノ混載。火力強力ナレド数ハ少数。爆撃隊本隊ノ損害無シ』以上』
『陽動戦闘機隊より新たな入電。『敵機ハ電探搭載ノ公算大。敵機頑丈、20ミリノ複数命中ニ耐エ容易ニハ撃墜出来ズ』以上』
「電信室、迎撃に上がって来た敵機の正確な機数が分かるか爆撃隊に聞いてくれ。凡そでも構わん」
『了解しました』
出来うる限り正確な敵夜戦戦闘機の機数情報が欲しい。
それがあれば、どの程度の夜戦戦闘機を有しているのか分かるし、敵艦隊上空にもどれだけの敵機が居るかある程度把握することが出来る。
B‐25を空母に載せて本土に突っ込んできたと言う前例がある以上、この報告にある敵機が艦載機でないと言う保証は欠片も無い。
警戒をしておくに越したことは無いだろうな。
暫くすると、新しい報告が上がってくる。
『陽動隊より入電。『高速機ヲ乙、低速機ヲ甲トス』』
『乙60機、甲150機ト見積モラレル。敵機ノ戦術未熟、練度不足。戦闘機隊損害軽微ナレド敵機ニ与エル損害モ軽微也。本隊敵機ニヨル損害無シ。又道中エンジン不調機11機引キ返ス』以上です』
「平文か?」
『いえ、暗号化されております』
「分かった。引き続き爆撃隊には出来うる限りの情報を送ってくるように言ってくれ」
『了解しました』
通信を切る。
どうやら陽動隊は詳細な情報を打電、しかも暗号化するほどの余裕があるらしい。
とは言え陸軍も夜間空戦は初めてであり、訓練は積んでいるとしても撃墜機は多くない。
どうやら敵機を撃墜して本隊を守ると言うよりは追い払うことで守っているらしい。
敵も夜間空戦は初めてとあって我々と同じような状況であるらしいが、なにせ爆撃機を撃墜しなければならないと言う任務があるものだからこちらよりは追い詰められているのだろう。
我々は別に敵機を撃墜しなくとも本隊さえ守り、飛行場に爆弾を落とせればいいのだからな。
『陽動隊より新たな入電。『我敵対空砲火ヲ受ク。投弾2分前』以上です』
「どうやら敵機の出迎えは上手い事搔い潜ったらしいな。あとは敵飛行場を叩けるかだな」
「本隊はどうなのでしょうか?幾ら陽動隊が戦果を挙げたとしても肝心の本隊が戦果を挙げられなければ本命の意味はありません」
「予定では30分ほど後に爆撃が始まる。それまでは待つしかない」
少しすると再び無線が鳴る。
飛龍が無線を取り、内容を聞く。
「提督、不審な電波を探知したって。多分、敵潜水艦だと思う」
「気付かれたか」
「これだけの大艦隊です、寧ろ気付かれない方が無理でしょう」
「艦隊は引き続き無電封止、出来うる限り我々の位置を敵に知らせるな。駆逐隊は敵潜を叩け。対潜戦闘の際は短距離無線を使用。それ以外は緊急事態以外での電波発信を禁ずる」
電探は最初から稼働状態だ、もし逆探を使われたら位置情報はバレバレである。
とは言え逆探を恐れて敵艦や敵機の接近を許すぐらいなら電探は稼働させておいた方が良い。
「第1護衛艦隊の2隻が敵潜狩りに出ました」
「了解した。十分注意せよ。他艦は引き続き対空対潜警戒厳。見付かって電波を発された以上他の敵潜も寄ってくるぞ」
大艦隊である以上、敵潜に発見されてしまうのは仕方が無い。
その後をどうするかだ。
尾行をされるのを防ぐ為にも確実に電波を発した敵潜は撃沈しておかなければならない。
とは言え戦闘艦艇のみであるから輸送船団発見の報告はされていない筈。
寧ろ見付かって輸送船団の存在が秘匿出来るのならば好都合かもしれない。
停泊中の艦はどれだけ武装を積んでいても動けないから、大きな的ぐらいにしかならない。
しかも輸送船団は停泊はしているが輸送船の中には数多くの陸軍将兵や武器弾薬燃料水食糧医薬品が大量に詰め込まれている。
一度襲われて火災が発生したら、燃料や弾薬に引火しようものなら消し止めるどころか逃げる事も儘ならない。
「提督、敵潜の撃沈を確認しました」
「ご苦労、急ぎ所定位置に戻るように」
とは言え、電文を発された以上これからは常に敵潜に狙われながらの航海と戦闘になる。
『第2護衛艦隊から入電。『敵潜らしき反応を捉える。方位274、距離30km』以上』
ほうら、言った先からだ。
「対潜戦闘を第1、第2護衛艦隊に下令。発見次第個々の判断での敵潜迎撃を許可する。一隻たりとも見逃すな」
「了解しました」
すぐさま第1、第2護衛艦隊に下令する。
正直な話、彼らの方が対潜戦闘と言うものでは海軍でも圧倒的に能力が高い。
連日の輸送船団護衛任務では敵潜に狙われるのが当たり前であり、彼らはその敵潜相手に命懸けで戦い続けていたのだ。
その戦術や戦技、練度は紛れも無い。
南
装甲艦隊
第1機動艦隊
第二護衛艦隊 第1護衛艦隊
北
艦隊の配置は以上の様になっており、装甲艦隊は第1機動艦隊の35海里前方に位置する。
装甲艦隊とは大鳳、信濃を主力としその護衛に大和、武蔵を中心とした13隻を編成した艦隊である。
装甲艦隊と命名された理由は、文字通り艦隊の中でも突出した装甲防御力を有しているからに他ならない。
正直捻った名前よりも分かり易く覚え易い方がこちらとしても都合が良い。
艦載機数は烈風163機、流星24機、彩雲15機と戦闘機である烈風の数が圧倒的に多い。
それはこの艦隊の役割が他とは別だからだ。
装甲艦隊の役割は、意図的に突出し敵航空攻撃を吸収、有する戦闘機で敵航空戦力の漸減にある。
他空母が矢としての役割があるのに対し、装甲艦隊は完全に盾の役割に徹することになる。
163機と言う烈風は直掩にするには中々多く、他空母の直掩戦闘機を合わせれば4機づつ他の空母が直掩機を出したとしても227機、敵攻撃隊を撃退するには十分な戦力だ。
敵が一度限りの全力攻撃で直掩機も残さずに攻撃をしてきた場合は防ぎ切れないだろうが。
『本隊より入電。『我敵地上空ニ到達。迎撃機現レズ』』
本隊が無事に敵地に到着したらしい。
「敵は陽動隊の迎撃に全て出払ってるみたいだね」
「電探に最初に捉えたのが数百機の大編隊だからな、そりゃそっちの迎撃に全力を出すだろうさ」
「このまま何も無ければ目的は達成だね」
「あぁ、あとは敵艦隊を叩けば良いだけだ」
『本隊より入電。『我敵飛行場ヲ爆撃セリ。敵機多数破壊、滑走路爆弾痕多数確認、数日中ノ使用不可能ト認ム。再度攻撃ノ要無シト認ム』以上です』
どうやら本隊の攻撃は成功したらしい。
「潜水艦隊から、何か報告は上がっているか?」
『まだです』
「了解した、引き続き頼む」
通信を切って、艦橋の俺の椅子に腰を掛けて腕を組む。
「敵艦隊は出張ってこないのだろうか」
「いえ、恐らく出撃準備は整えている筈です。問題は、大型艦になればなるほど出港に要する時間が必要になること、それにあれだけの大艦隊ですから港から出るのに相応の時間が必要な事でしょう」
「……敵艦隊が態勢を整えるのにどれぐらいの時間が掛かると思うか?」
「そうだね、戦艦空母が出港するのに最短で8時間だと見積もって、艦隊の陣形を整えたりするのに2時間ぐらいだとして、10時間。余裕を持って考えるなら±2時間は前後するかも」
「どちらにしろ、夜戦は仕掛けられんな」
「距離が遠いからね、互いの相対速度を考えても攻撃隊を出せるのは最短でも日の出ってとこかな」
「出来れば、夜戦を仕掛けて出来うる限り戦力を削いでおきたいところだが、そこは仕方が無いか」
「攻撃隊の準備はどうしますか?」
「今回は慎重に行こう。夜間戦闘が可能な敵機が確認されているからな、攻撃を受けないとは限らない。長い間燃料弾薬を満載した機を格納庫内に置いておくのは居心地が悪い」
「分かりました。では日の出と同時に攻撃を行う為に日の出の2時間前からの出撃準備で宜しいですか?」
「それで頼む。偵察機だけは発艦させておこう。それ以外の各員は交代で休憩を取って決戦に備えよ」
「了解しました」
いつも通り指示を出し、椅子に深く腰掛けた。
艦隊同士の戦闘の火蓋が切られたのは唐突であった。
突如として電探が艦隊外苑約10km程の位置に急速接近する敵機を発見した。
『電探に感有り!高度30m以下、距離100!機数30機前後、双発機の模様!』
「直掩隊をすぐに向かわせろ!」
直掩任務に就いている烈風が闇夜の中、機体を翻して敵機に突っ込んでいく。
「どうしてこんなに接近されるまで気が付かなかった!?」
「恐らく、電探の弱点である俯角を取り辛いところを突かれたものと思われます。電探はある程度の高度以上を飛ぶ敵機でなければ探知出来ませんので」
参謀長が航空参謀に勢い強く聞くと、さも当然と言った感じで答える。
我々全員が、警戒はしているもののこの真っ暗闇の洋上を電探に探知されないほどの超低空で敵機が突っ込んでくるなんて思っても居なかったのだ。
昼間ですら海面に激突する危険性が大きい超低空飛行を、夜間で全く灯りの無い中でやるなど正気の沙汰では無いからだ。
『敵機、さらに接近する!』
「全艦対空射撃待て!撃てば位置を晒すぞ!」
その命令によって一隻たりとも対空機銃や対空砲を撃つことは無い。
恐らく敵機は隠密性を優先して照明弾を投下する機を用意していない。
飛ばしてきているのであれば、ある程度の高度を取らないと照明弾を投下しても照らせない。
そうなると、高度を取らねばならない訳だがそうなると確実にこちらの電探に写る。
それが見えていないと言う事は、敵機は電探だけが頼りだと予測出来る。
『敵機方位127!速度600km/h以上!』
烈風が敵機を落とす。
火の玉となった敵機が、海面を照らしながら水飛沫を上げながら海面に激突しバラバラになるのが鮮明に見える。
恐らくスポンソンでは、十数名ほどのカメラマンが戦後の記録の為にシャッターを切り、映像を残していることだろう。
『敵機20機、2航戦に突っ込む!』
「2航戦に回避行動を許可、各艦相互位置の把握、衝突は絶対に避けろ!」
双眼鏡を覗くと、真っ暗闇の中に艦橋から漏れ出る夜間照明の小さな灯りが見える。
2航戦は大鳳と信濃を引き抜かれたことで空母は葛城と阿蘇の2隻になっている。
2隻を守るのはビスマルク以下戦艦3隻、重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦13隻であり、恐らく空母1隻辺りの護衛戦力は1航艦の中でも一番だ。
しかし夜間対空戦闘技術がまだ確立されていない今は、空母を守る手段と言えば精々自らを盾にすることぐらいだ。
今出来るのは、爆弾にしろ魚雷にしろ当たらないように祈るだけである。
少しすると、魚雷が命中した時の特有の爆発音と衝撃音が響いてくる。
「どうやら、被雷した艦がいるようですな……」
『アドミラル・ヒッパーより入電。右舷艦中央前部に魚雷1本命中。命中箇所より後部で武装用電源喪失。右舷魚雷発射管に異常あり、魚雷は投棄。3時間もあれば電源復旧可能。艦傾斜発生なれど注水にて復元、航行に支障無し。艦運用上の電源は保持、現状戦闘は不可。速度30ノット発揮可能。以上』
「かなりの痛手を被ったな……」
とは言え、彼女の損傷は痛手だ。
彼女に加えてプリンツ・オイゲンは、大型艦艇と言う艦種と、現状の海軍の中では珍しく、そして貴重な機雷敷設能力を有している。
現状の海軍の機雷敷設を担当しているのは、連山や潜水艦隊が主である。
理由としてはこれ以外に機雷を装備することが出来る艦や航空機が無いからだ。
元々2隻には機雷敷設用の軌条が装備されていたが、装備として必要なのか、そして撤去するか否かの議論が行われた結果、残された経緯がある。
残された理由としては海軍には機雷敷設艦が無い。
と言うのも深海棲艦に効果のある武器を載せられるのは、艦娘のいる艦もしくは妖精達が建造した艦のみである。
しかも厄介なことに、艦娘が存在する艦ならば艦種に沿った武装はどんな種類のどんな兵装でも載せられるが、それ以外の兵装は載せられない。
そして搭載可能な武装の基本原則として、過去に自らが装備していた武装が主になると言う事になる。
機銃ぐらいならこれを超えて様々な艦種に搭載することが出来るが、それ以上は不可となる。
例えば空母に駆逐艦などが搭載する魚雷発射管は載せられないし、逆に艦載機を戦艦に乗せることは出来ない。
それに加えて妖精たちが建造した艦艇に武装が載せられると言うのもかなり制限があるものだ。
実はこの載せられる武装と言うのが精々単装の小口径砲までであり、魚雷だとか機雷なんかの兵装は全く載せられない。
運ぶことはできるが、装備は出来ないと言うわけだ。
航空機による機雷投下は、確かに広範囲を一気にカバー出来るし、短時間に大量に敷設が可能だ。
しかしある程度の高度から投下しなければならないこと、それによって着水時に誤爆したり故障したりすること、空中投下なのでパラシュートを備え付けなければならないことなど結構面倒臭い。
その点、重巡と言う戦力ながら安定して機雷を敷設することが出来る2隻はとても貴重だ。
なんせ連山では精々20発ぐらいしか載せられないが2隻は200発は載せられる。
しかもばら撒いておきたい場所に正確にばら撒けると言う点も大きい。
今までも多くの機雷敷設任務に従事してきたし、今後も同じように任務に従事するだろう。
そのうちの1隻が暫くの間戦線離脱を余儀なくされると言うのは、かなりの痛手だ。
ともあれ、今は彼女を艦隊に組み込んだまま戦闘を行わせるか否かを決定せねばならない。
電源は3時間もあれば回復出来ると言っているが、日の出まで時間は無い。
修理するとなると退避して、停止してとなるのだがそんな余裕は無いだろう。
しかも度重なる戦闘を耐え抜けるかどうかも疑わしい。
彼女を失うのは、それこそ取り返しが利かない。
そうなると、どのような決定を下すべきかは自ずと一つに絞られてくる。
「アドミラル・ヒッパーに駆逐艦3隻の護衛を就けてスラバヤ湾へ退避させよ。応急修理を行った後にバリクパパンへ向かってそこで本格的な修理を行わせる」
「了解しました」
アドミラル・ヒッパーの護衛には暁、雷、電の3隻が就き、スラバヤ島で待機していた陸軍の疾風24機と二式大艇2機が護衛に就くことになった。
これで主だった脅威である敵潜
道中、敵潜の脅威はあるが、通信や暗号傍受とその解析の結果、どうやら敵潜は我々1航艦目指して集結しつつあるらしい。
電探で敵潜を避けつつ航行すれば無事に辿り着けるだろうし、アドミラル・ヒッパーには必要ならば更なる航空支援を陸軍に要請することを許可している。
恐らく、敵飛行場を潰したから空襲を受けることは無いだろうが、敵潜だけが心配だ。
艦隊から4隻が分かれ、スラバヤ島に向かった2時間後。
日が昇り始める。
「偵察機からの情報は?」
「まだです」
「電探があるとは言え暗闇の中で、敵艦隊を見逃した可能性があります」
「まぁ、電探の性能からして、50km圏内に収めなければならないからな。正直、見つかれば奇跡ぐらいの感覚だ。第2波索敵を出そう」
今急ぐべきは、敵艦隊を発見することだ。
我々は今、敵艦隊に圧倒的なアドバンテージを奪われている。
敵艦隊は我々の位置を知っているが、我々は敵艦隊に位置を知らないのだ。
このままでは一方的にやられるだけだ。
「電探手、敵編隊を見逃すな。飛龍、彩雲を1機用意しておいてくれ」
「どうするの?」
「恐らく先に攻撃を受けるのは我々だ。そこで敵攻撃隊に対して彩雲を張り付かせて敵艦隊を見つける。第2波索敵が最大到達線に至るまで、あと数時間は掛かるし、確実に見つけられる保証は無い」
「なるほど、送り狼をやろうってこと?」
「その通りだ。それに、彩雲が上手いこと張り付いていてくれれば攻撃隊や潜水艦隊の誘導も出来る」
彩雲を1機準備させつつ、恐らく1000頃にならないとこちらは攻撃隊を出せないであろうと頭の中で考える。
敵艦隊を発見出来るとしたら、恐らく0900~0930ぐらいになると予想されるからだ。
「直掩隊と迎撃隊の準備を進めてくれ。先手は恐らく敵が取るだろうからな」
「了解しました」
皆が頷き、戦う為の準備を進め始めた。
そう予想した3時間後、艦隊は敵攻撃隊のかつてない程の猛攻を受けることになる。
装甲艦隊編成
空母
大鳳
烈風57機 流星12機 彩雲9機 計78機
信濃
烈風106機 流星12機 彩雲6機 計124機
戦艦
大和 武蔵
重巡洋艦
筑摩 最上
軽巡
酒匂
駆逐艦
春月 初月 満月 長波 Z1 Z3 菊月 霜月 藤波 雄竹