暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第72話

 

 

 

 

 

 

 

『大鳳より入電、電探に感あり。距離150km、方位223!機数200機前後の編隊が4個!総機数1000機を超える可能性あり。速度時速約300km』

 

「直掩隊は即座に敵攻撃隊迎撃に向かえ。各母艦は烈風を上げられるだけ上げろ!」

 

その情報を聞いた瞬間に、直掩隊は敵攻撃隊に向かっていく。

とは言え直掩隊の数は100機ほどであるから敵攻撃隊の1つを撃退するのが精一杯であろう。

 

敵機の速度からして30分ほどで装甲艦隊に到達、攻撃が開始されると思われる。

幾ら装甲艦隊とは言え1000機もの敵機による波状攻撃を受けてはただでは済まない。

 

空母からは命令が伝達された瞬間に烈風が次々と後部昇降機に翼を折り畳まれた状態で2機ずつ載せられ、飛行甲板に上げられていき、甲板に上がると同時に翼を広げてカタパルトに載せられて射出されていく。

 

2本のカタパルトから交互に射出されていく烈風の発艦速度は1機辺り30秒も掛からない。

次々と射出されていき、全ての烈風を射出し終えるのに掛かった時間は17分ほどであった。

 

装甲艦隊の電探による誘導で、既に装甲艦隊に近く直掩隊が迎撃をしている敵編隊を通り過ぎ、その幾らか後方にある敵編隊に烈風が襲い掛かる。

 

 

 

『装甲艦隊より入電、『我敵機ノ攻撃ヲ受ク』以上』

 

「恐らくこちらに敵機が来ることは無いだろう。とは言え、これは敵艦隊に対しての攻撃をするのは無理だな……」

 

「迎撃に徹する他無いでしょう」

 

参謀長や航空参謀と話す。

飛龍は艦の指揮を執り続けている。

 

空母艦上は大忙しだった。

なんせ敵機の数が多いから一度の迎撃戦だけでは終わらない。

最初に発見された敵4個梯団の迎撃をしている最中に、装甲艦隊から更に後方に2個梯団を発見したと言うのだ。

 

最初の4個梯団を全力で迎撃した烈風には、燃料はまだまだ残されていたものの残弾数が心許無い機が多かった。

そりゃ1000機を超える敵機を迎撃したのだから弾切れになって居てもおかしくは無い。

こちらの損害も、撃墜された機が100機ほどと軽いとは言い切れない損害を負っている。

 

迎撃戦が続く中、それを突破した敵機が次々と装甲艦隊に突っ込んでくる報告が上がってくる。

遠くでは、大和と武蔵のものであろう砲声が響いている。

対空射撃で3式弾を撃っているのだろう。

 

4個梯団が装甲艦隊への攻撃を終了した時の損害は、大鳳には爆弾の直撃弾が21発、信濃には18発と普通の空母ならとっくの昔に空母としての機能どころか艦としての機能を失って沈んでいてもおかしくは無い被弾数を数えている。

魚雷は信濃が回避しきれなかった1発を右舷に食らったのみであり、戦闘力は依然として保持している。

乗組員は全ての機銃を防盾で守っているからそこまでの被害は無いにせよ、それでも100名を超すほどに上る。

 

とは言え、こんなにも苛烈な攻撃をこれだけの被害で切り抜けられたのには迎撃に徹し、烈風を集中的に運用出来ていることが大きい。

敵機の数が多過ぎるが故の結果論ではあるが、それでもこれだけで切り抜けられたのは大きい。

 

撃墜された搭乗員は全員ではないが、脱出出来ているので付近に展開する潜水艦隊が救助に向かっている。

 

 

概算ではあるが、恐らく当初の見積もりである我が艦隊の2倍の戦力を有していると言うのは間違いないだろう。

艦載機数も倍が良いところ、もしかするとそれ以上の可能性が高い。

 

 

 

迎撃に出て弾薬切れになった烈風が度々小隊単位で帰投してくる。

その烈風をすぐさま収容して、整備員総出で弾薬補給と燃料補給を済ませて再び戦いの空へ送り出していく。

 

この間にも敵機は次々と来襲しており、2個梯団の発見の後に更に2個梯団が電探に映っている。

今は戦場に留まり続けている烈風は総勢で250機ほどであり、その中の150機ほどが最初の2個梯団を迎撃中であり、その中から100機が新たな2個梯団に迎撃に向かっている。

 

一旦帰投して補給した烈風は後方の2個梯団に差し向けることにしているが、その数は決して多くは無い。

と言うのも帰投して来た烈風の多くが修理が必要であったり、艦上では修理が出来ず投棄するしかない機体がかなり多かった。

 

撃墜された機体を含めて、投棄と即座の戦線復帰が不可能な烈風の機数は200機を越しており、烈風の総機数の約3割に達する。

現在進行形で撃墜される烈風や修理が必要な烈風、投棄される烈風が増え続けておいるから戦闘が終わる頃には4~5割の烈風を失うだろうと予想されている。

 

「戦闘機隊からの報告だと、最初に攻撃を仕掛けて来た4個梯団は全て戦闘機で編成されてたそうだよ。あとの4個梯団は戦闘機が5割に降爆と雷撃機が5割ってとこ」

 

「最初にこちらの航空兵力の漸減を狙ったな」

 

どうやら敵は、数の利を生かしてこちらの艦載機を減らした後に空母や戦艦叩こうと言う戦術を採っていたのだろう。

最初の4個梯団全てが戦闘機だったことが裏付けている。

 

1000機もの戦闘機を差し向けておいて、これで何の狙いもありませんでした、と言う方がおかしい。

こちらの戦闘機を予め叩いておいてから、障害の無い道を雷爆同時攻撃を仕掛けようとしていたのだろうがそう上手くは行かせんぞ。

 

「敵がこちらの戦闘機の消耗を狙っていると言うのならば、我々よりも敵機を消耗させてやればいい」

 

「我が方の空母がやられる前に、敵空母叩いた方が宜しいのでは?」

 

「いや、状況的には我々が不利であるとは思わん」

 

「何故でしょうか?」

 

「我々は守りに全ての戦力を割くことが出来るが、敵は艦隊防空と攻撃隊の二つに戦力を割かねばならない。幾ら戦力差があるとしてもこれで実際に戦う事の出来る戦力は同数程度になる。それに敵は頼みの綱であろう基地航空隊をこちらの爆撃で失っている。と言う事は一対一の正面対決と言うわけだ。それらを加味するに五分の戦いであろうと思うのだが」

 

戦力差は倍になるだろうが、こちらは保有している艦載機の全てを迎撃に投入出来る。

共同攻撃を担う敵基地航空隊は爆撃で叩いてあるので、まず出撃は出来ない。

戦闘機程度ならばノンストップで復旧作業を行えば離発着出来るであろうが、爆弾や魚雷を抱いた雷爆撃機や、それこそ数tの爆弾を抱えていて長い滑走距離が必要なB‐24やB‐17は一切出来ない。

 

それこそB‐24などの重爆を攻撃手段として運用しようとしたら、敵の機械化率を考えても、それでも1週間は使用不可となる。

 

「それならば、流星も迎撃に出しては?敵戦闘機は戦闘機隊が抑えていることですし流星でも十分に迎撃に参加出来るかと」

 

「それに、今の状況では攻撃隊を出すことは叶わないでしょう。例え編成して出撃させたとしても敵の迎撃機に大半が落とされてしまいます」

 

「……よし、流星の半数を敵機迎撃に充てよう。それ以外は敵艦隊攻撃に備える」

 

「分かりました、すぐに準備させます」

 

「頼んだ」

 

「飛龍、念の為に聞いておくが、魚雷や爆弾は全て弾火薬庫に仕舞ってあるな?」

 

「勿論。降りて来た烈風用の機銃弾だけは格納庫内にあるけど、全部被弾した時に備えて投棄口の近くにしっかり固定してあるから」

 

「そうか、ありがとう」

 

「んーん」

 

艦の状況も確認し、いざと言う時の戦闘行動にしっかりと備えていることを確認する。

飛龍はにっ、と笑いながら答え、その様子や雰囲気は流石歴戦と言うべきものがある。

 

「参謀長、主席参謀、皆に聞きたい。敵飛行場の継続した使用を妨害する為に連山にもう一度敵飛行場を爆撃させた方が良いだろうか?」

 

「出来るのならば、やった方が良いでしょう。上陸開始時に敵飛行場が稼働して戦闘機でも飛び立てばそれこそ脅威です」

 

「いえ、私は反対します」

 

「私も航空参謀の意見に同意します」

 

参謀長や主席参謀が賛成する中、航空参謀と主計参謀が異を唱える。

 

「何故だろうか」

 

「第一に、今回出撃した連山以外に待機している連山が無く、帰投中の連山をもう一度出撃させる他無いからです。連山は往復2000km以上の長い距離を飛行しています。それ相応に整備補給を必要としますが、全機による全力出撃を再び行うには最低でも三日程度は整備期間を設けなければなりません」

 

「補給の問題もあります。今回の作戦用に備蓄された爆弾の数量は、全力出撃1.5回分だけです。燃料も護衛の疾風分を考えれば、スラバヤの燃料タンクは殆どが空になってしまうでしょう。そうなれば今後の活動に大きな支障を来たす事になります」

 

「そうなれば、来襲する敵機に対して無防備になるか……」

 

「はい」

 

「それどころか、豪州進出予定である陸軍航空隊すらも暫くは活動出来なくなります。そうなれば、豪州上空の制空権は敵の手に完全に渡ってしまいます」

 

二人の意見に、皆が考え込む。

事実、その通りであるから反論の余地は無い。

 

今回備蓄された爆弾は主計参謀が言った通りに全力出撃1.5回分となる。

本来ならば全力出撃2回ないし3回分の備蓄は行う予定であったのだが、以前敵潜水艦が内海に侵入した際に撃沈した輸送船の中に連山用の爆弾を大量に積み込んだ輸送船が居たのだ。

その輸送船が撃沈されたことによって、本来備蓄される筈だった爆弾量を大きく下回っているのだ。

 

もう一度送ることも考えたが、それ以上に陸軍将兵の輸送や糧食、予備の武器弾薬の輸送も行わねばならず、結局そちらを優先したために航空爆弾の輸送は見送られた。

 

駐留する飛行場が元々備蓄している爆弾を使うことも考えられるが、基本的に疾風が爆装することは少なく、精々が対地支援任務の際に近距離での精密な爆撃支援が必要な時だけである。

そうなると備蓄している爆弾の数はそこまで多くない。

各飛行場に各飛行戦隊が30発程度づつを備蓄しているに過ぎない。

これは1個飛行戦隊36機が爆撃任務を数回熟せる程度の量でしか無い。

しかも全て通常陸用25番か、25番タ弾のどちらかでしかない。

 

連山の爆弾積載量は往復の燃料を考えても2tの爆装を施すが、300機を超える連山全機に爆装を施すとなると2tでも600tを超える爆弾量が必要になる。

疾風装備の飛行戦隊の総爆弾量はどれだけ多くても120tしか無く、僅か6分の1ほどの量を満たすに過ぎない。

 

 

このスラバヤ島などにある陸軍飛行戦隊は、航空参謀達が言った通り豪州への進出も予定されているから下手に資機材を使ってしまうと豪州進出の際に戦闘行動が取れなくなってしまう。

銀河を装備する飛行戦隊には各飛行戦隊に100発づつと多くの爆弾があるが、使用は避けたい。

と言うのも、これらの飛行戦隊も豪州への進出が予定されており、豪州と言う広大な戦場では対戦車攻撃の機会が多くなると予想される。

その時に爆弾が無ければ、航空攻撃によって予め敵装甲戦力を減じることが出来なくなる。

そうなれば装甲戦力で劣っている我々は純粋な装甲戦力同士の正面対決をしなければならない。

 

北海道での戦闘で見られた敵新型戦車は、豪州に大量に配備されていると予想されるので、そうなっては流石に勝ち目は薄い。

ましてや広大な大地を戦車だけで駆け回って制圧していくのは無理だし、特に大規模な戦車対戦車戦闘の経験が無い我が軍なのだから航空攻撃は豪州作戦の成否を分けると言っていいだろう。

 

 

更には爆弾だけでなく燃料の問題もある。

先程の輸送船が撃沈された時に燃料輸送を行っていたタンカーも多数撃沈されており、そのせいで作戦投入予定の燃料は当初予定していた備蓄量に達していない。

 

沖合に停泊している、豪州進出時に燃料補給を行うタンカーに積まれている燃料を使えば全力出撃は出来るだろうが、それ以降の航空機の活動や運用に制限が掛かりかねない。

そもそも結局爆弾が無いので意味は無いだろう。

 

それを考えれば、出撃は出来ないだろう。

 

「であるならば、敵飛行場の運用を阻害する程度の妨害を加える、と言うのは出来るか?」

 

「可能ではありますが、連山の出撃機数は精々4機2個編隊、8機が精々でしょう。敵航空戦力も殆ど封じていますし、護衛の疾風も20機、どれだけ多くても30機程度に絞ってならば、数回は可能です」

 

主席参謀が聞くと、可能だと言う答えが返ってくる。

 

「とのことですが、どうされますか?」

 

「……それならば、実行しよう」

 

「了解しました」

 

「すぐに出撃可能な連山と疾風、それと搭乗員を3個隊選抜してくれ。それと搭乗員にはしっかりと休息を取らせたい。翌日に実行可能か聞いてほしい」

 

「聞いてみます」

 

「頼む」

 

30分後、各飛行場から10時間後には機体の整備と補給が完了する旨が伝えられた。

最悪、既に敵機の活動が再開されており迎撃を突破しての爆撃が困難と判断された場合は爆弾は全て投棄し、帰投することを許可している。

こんな攻撃には態々命を掛けるほどの価値は無い。

 

「提督、可能とのことです」

 

「分かった。そうしたら……、現在時刻が1233だから、今よりきっかり16時間後に出撃。これで、敵地上空に0600か0700には到達出来るな?」

 

「了解しました。打電します」

 

「それと本土に大至急爆弾の補給を輸送船5隻分、それと航空燃料を5隻分を要請してくれ。今からであれば、積み込みも考えて8日後には爆弾が到着する筈だ。最悪、すぐに用意出来ないとなったら近場の航空隊が備蓄している爆弾を使え」

 

「それだと該当する航空隊の爆弾備蓄が無くなってしまいますが」

 

「構わん。これで豪州作戦の最初の段階で失敗しました、となるよりはマシだ」

 

「了解しました。すぐに指示を出して準備させます」

 

はぁ、準備不足が如実に出ているな……。

状況的に致し方ない部分があるとはいえ、数多くの将兵の命を預かる者として許されるものでは無いだろう。

 

せめて、これ以降の補給状況は安定させておきたい。

結果的に豪州作戦全体に関わってくることでもあるからな。

 

連山を装備する航空隊の内の幾つかは、豪州の飛行場が修理完了し、使用可能になった場合に豪州に進出し、内陸部への偵察や敵補給線等への爆撃任務が予定されている。

 

 

少しすると、出撃した連山や疾風の搭乗員救助を担っていた二式大艇から入電が入る。

 

「提督、搭乗員救助を行っていた二式大艇より入電です」

 

「どうした?」

 

「疾風搭乗員33名、連山搭乗員48名の救助完了、帰投中。他二式大艇は現在も捜索救助中。以上です」

 

「ご苦労、

引き続き頼むと送っておいてくれ」

 

「了解しました」

 

戦闘空域の周辺には二式大艇が撃墜されても脱出した搭乗員の救助をするために待機している。

潜水艦隊には敵艦隊を捜索し、可能であれば雷撃によって敵艦隊に多少でも良いので打撃を与える任務に就いている。

 

既にこちらも撃墜された搭乗員の救助を開始しているとの連絡が入っている。

 

『装甲艦隊より入電。『大鳳、信濃被弾多数、艦上構造物ニ多数ノ被害有リ。発艦装置故障、着艦装置修理不可、対空砲及ビ機銃多数沈黙、被雷2ヅツ、速力25ノット。両艦中破ト認ム』以上です』

 

「酷くやられたな。他の損害が報告されていないと言う事は、大鳳と信濃が徹底的に狙われたと言う事か」

 

「そのようです。被雷数は少ないので、爆弾の直撃は所要して沈められる可能性のある魚雷の回避に専念したのでしょう」

 

「あれだけの敵機の攻撃を受けてこれだけの被害で乗り切ったのですから損害軽微と言う他ありませんな」

 

「あの2隻だからこそこれだけの損害で済んだんだよ。私達じゃこうはいかないね。下手したら半分以上やられてたかも」

 

「提督、取り合えず2隻を退避させましょう。発着艦装置がどちらも故障していては飛行甲板が無事でも空母として全く機能しません」

 

「そうだな、大鳳と信濃にはバリクパパンまで退避するよう命令。応急修理をした後に本土へ回航して入渠させよう。大和と武蔵は1航艦に合流するように命令」

 

「了解しました」

 

バリクパパンにあるドックは全部で4つ。その内の2つは加賀などの大型艦の入渠も可能にするために全長300m、幅60mの大きさを誇る。

陸海軍の工兵隊や資機材を大掛かりに動員しての建設だった。

 

建設した目的は、単純に損傷艦艇を本土まで回航する必要を無くす為だ。

損傷艦艇を数千kmも離れた本土まで回航するのは、それだけで危険な任務だしその間に襲われでもしたら一溜りも無い。

 

確かに本土の方が設備は整っているが、それでも前線近くで修理して再び戦線復帰が可能になると言うのはかなり大きいことだ。

それだけで燃料節約や、戦線復帰に掛かる時間が大幅に短くなる。

 

なんせ大破して、10ノットしか発揮出来ない状態で本土まで回航しようとすると1か月以上掛かる。

それだけ入渠時期はずれるし、修理や訓練も長引くことになる。

損傷した艦艇を必死になって維持する艦娘や、乗組員達の負担ははっきり言って想像を絶するレベルのもので、過去には入港と同時に気を失うほどに体力を使い果たしていた艦娘や乗組員達も多い。

 

瀬戸内海のドックは殆どが輸送船やタンカー建造の任務があるし、そこに修理も加わるのだから修理する側の負担も大きい。

内海になった場所での被害が無くなったと言うだけであり、スラウェシ島向けの輸送は未だに内海側に港が出来ていないことから大きな被害を出すことも多い。

 

その負担軽減も考えれば、とても大きな意味を持つのがバリクパパンなのだ。

 

それに加えて今現在スラウェシ島に潜水艦用の、ドイツ軍で言うところのUボートブンカーの建設が進められている。

とは言え本家のものと比べると大仰なものではなく、2隻分のドックを有する小さなもので、精々が「潜水艦を隠すことのできる前線基地」と言う言葉が正しい。

防御力は普通に1tクラスの徹甲爆弾で簡単に破壊されてしまう程度でしかない。

その代わり、偽装は特に念入りに施される。

正直航空写真だけでは全く違いが分からない程だ。

 

この潜水艦基地は多少の整備と補給が目的であり、修理はそのものは本土でなければ出来ない。

理由は潜水艦の修理や建造に必要とされる技術は他の艦艇の修理建造と全く違うからだ。

 

水上艦艇は海の上を航行するだけでいいが、潜水艦は海の中に潜って数日耐えるなんて当たり前だ。

その分必要とされる技術水準は高いし、使われる装甲も他のものとは大きく違う。

その製造や、溶接等に必要とされる技術は高く、単純に分厚い装甲を持つ戦艦よりも建造や修理難易度は高い。

 

それに加えて、潜水艦はその特性上多くの任務が口外されない場合が多い。

例えば撃墜された搭乗員の救助から始まり、敵地偵察任務はまず口外されない。

潜水艦の出港自体もその殆どが悟られたりしないように夜間であったり、任務によっては潜水艦の乗組員の中で向かっている場所を知っているのは艦長だけ、なんてこともある。

 

故に機密保持の観点からも設備の整った本土でなければ修理は出来ないのだ。

 

 

 

 

 

「装甲艦隊の艦載機は全機1航艦の各母艦に着艦。どの空母でも構わん。収容しきれない場合は搭乗員のみを収容し、機体を投棄せよ」

 

「了解しました」

 

暫くして、敵攻撃隊が全て帰って行ったと言う報告が上がって来た。

恐らく敵も再出撃可能な機体の選出や、補給、再武装には2時間は掛かるだろう。

 

その間に、こちらも態勢を整えないとならない。

 

『彩雲から入電。『我敵艦隊ス発見ス。方位213、距離500km。敵艦隊ハ4群ニ分カレル。眼下ノ艦隊ハ空母6、戦艦4、巡洋艦以下多数。更ニ南、及ビ西側、南西方向ニ艦影アリ。空母20、戦艦15ハ確実也』』

 

『続けて報告、『我敵機ノ迎撃ヲ受ク。コレ以上ノ偵察ハ困難、退避ス』以上』

 

どうやら送り狼としての彩雲が敵艦隊を見つけたらしい。

それにしても空母20隻とはまた、こちらの予想や偵察結果と変わらないとは言えなんとも……。

 

「上空警戒に各母艦から4機づつを残し、他の烈風と流星は補給、修理を済ませて再出撃に備えよ。敵の攻撃はこれだけでは終わらんぞ」

 

「了解しました。流星には武装を施しますか?」

 

「……いや、止めておこう。恐らく敵の第二次攻撃隊はこちらに向かっている筈だ。今武装をさせたら、武装中に攻撃を受けることになる」

 

「それでは、本日中は迎撃に徹すると?」

 

「あぁ、それで行こう。最悪、敵空母をやれなくても艦載機さえ全て落としてしまえばこちらの勝ちだ。戦艦が居るとは言え、空中援護の無い中で砲雷撃戦を仕掛けてくるとは思えんしな」

 

「そうなれば、敵も撤退するでしょう」

 

その1時間後、敵の第二次攻撃隊を電探が捉えた。

 

総機数は未だに600機を数えている。

補給と修理を終えていた烈風200機がすぐさま飛び立った。

 

烈風は戦闘で200機を損失、損傷で60機を破棄している。

もう200機ほど烈風は健在であるが、まだ補給中だ。

 

「防ぎ切れないな……」

 

「もう50機いれば、大分違ったのでしょうが……」

 

「無い物ねだりは出来んさ。上げられる機体は全て上空退避。補給と修理が済んでいれば戦闘に参加しても良いが、無理はするな」

 

遥か150km先の上空で、烈風が敵機に襲い掛かる様子は電探でしっかりと捉えていた。

200機もの編隊が3つ。

 

敵攻撃隊には護衛戦闘機が60~70機ほどとの報告が上がっている。

烈風は二手に分かれてそれぞれが別の編隊を迎撃している。

 

前二つの敵攻撃隊は戦闘機の機数であれば十分対抗し、攻撃隊を迎撃することも出来るだろうが3つ目の敵編隊には一切手出し出来ない。

今から飛び立つ烈風を向かわせても、多勢に無勢、圧倒されてしまう。

 

元より全機を防げるとは思っていない。

2つの敵編隊を迎撃出来ただけでも上々だろう。

 

「対空戦闘用意!200機以上が襲ってくるぞ」

 

艦隊に下令すると艦上は慌ただしくなる。

機銃操縦要員や対空砲要員達は次々と自分達の担当する銃座や砲座に駆けて取り付いていく。

 

空撃ちをして撃発等問題が無いか、照準や旋回、仰俯角の操作をして異常が無いか確認する。

 

戦隊ごとに準備が完了した旨の報告が上がってくる。

準備は僅か1分半で終えられ、その練度の高さを物語っている。

 

「電探、敵機の動向を随時報告、共有せよ。戦艦は距離250で主砲撃ち方始め。対空砲は射程に入り次第撃ち方始め。機銃群は統制射撃用意」

 

『電探室より報告。最後尾の敵編隊が迎撃をすり抜けて向かってくる。敵機出現方向、221。到達まであと20分!』

 

「全母艦状況知らせ」

 

「うちはもう上げられる機体は搭乗員と一緒に上げたよ。あとは弾薬と燃料をしまうだけ」

 

「間に合うか?」

 

「多分間に合うよ」

 

「多分では駄目だ。確実に間に合わねば危険過ぎる。格納が間に合わないと判断した場合は弾薬燃料等、可燃物を投棄して構わん。命には変えられん」

 

「了解。それなら間に合わせる」

 

他の空母からも報告が入ってくるが、あまり色良いものでは無い。

今攻撃を受けたら、そして被弾すれば、それこそ全滅もあり得る。

 

装甲艦隊の着艦機が集中した瑞鶴と加賀の艦上は他の空母よりも混雑していて、艦載機もまだ半分ほどしか発艦させられていない。

 

残存機が集中した理由は単純に艦の大きさが十分にあり、他の母艦と言っても着艦が容易だからだ。

一応母艦航空隊の訓練の中には母艦がやられた場合、他の空母に着艦する場合が想定される為に他母艦での発着艦訓練は行っている。

とは言ってもやはり自分の母艦で一番慣れているからやり辛いのは確かだろう。

 

それでも事故無しで全機が着艦して見せたのは流石としか言いようが無い。

 

「これより各艦の判断で機体、弾薬、燃料の投棄を許可する。被弾した際の被害を最小限に抑えよ」

 

「はっ」

 

「電探手、敵編隊との距離、機数は?」

 

『距離90km!前2個編隊の数は減少しつつあり!後方1個編隊は勢力変わらず!』

 

「分かった、引き続き監視を行い距離50kmで報告せよ」

 

『了解しました!』

 

加賀と瑞鶴の作業がいち早く終わることを祈りつつ、報告を待つ。

 

『敵編隊艦隊より50km!尚も迎撃戦継続中!』

 

その報告がされた1分後に、瑞鶴と加賀から報告が入る。

 

『加賀より入電、『我作業終エル見込ミ無シト認ム。機体、燃料、弾薬ノ投棄ヲ開始ス。注意サレタシ』』

 

「了解した」

 

『瑞鶴より入電、『作業終了ナレド機体収容限界ニ付キ機体ノ投棄ヲ行ウ。後続艦ハ投棄サレタ機体ニ注意サレタシ』以上』

 

「間に合いませんでしたか」

 

「いいや、間に合ったさ。きちんと間に合わないと判断して、安全のために危険物を艦上から投棄したのだからな」

 

敵機が来る方向を双眼鏡で覗くと、遠くの方に黒点が沢山あるのが分かる。

そしてその黒点が、上下左右に動き回り、時折光って黒い煙を引き摺りながら落ちていく。

 

それが敵の攻撃隊と、それを阻止するべく戦っている迎撃隊であろうことは誰にでも分かった。

 

「艦隊、対空戦闘用意。戦艦は距離300にて主砲射撃。次射撃は200。重巡は距離250。続けて200、150、100にて射撃。軽巡、駆逐艦は射程に入り次第主砲射撃始め」

 

「戦艦、重巡は主砲対空射撃終了次第、3個目の敵編隊に対し次弾射撃準備。射撃開始距離は同じとする。後の射撃は各個に判断」

 

戦艦や巡洋艦、駆逐艦達の主砲が敵機が来るであろう方向に向けられ、仰角を取る。

それと同時に対空砲や機銃が次々と同じように空を睨む。

 

弾薬や砲弾は既に装填されており、あとは引き金を引くのを待つばかりであるのはどの艦も同じだ。

 

「提督、対空戦闘用意終わりました」

 

「了解した」

 

各艦から準備完了の報告が上げられてくる。

それに頷いて、敵機を待つ。

 

艦橋内をちら、と見るとこの作戦の前に着任したばかりの年若い石田参謀が、顔を緊張でがちがちに固めて立っていた。

その頭には本来被って居なければならない鉄帽は被られていない。

 

両手に持ったままだ。

 

「石田参謀、鉄帽は被っておけ」

 

「あっ、はっ、失礼しました」

 

慌てて鉄帽を被って紐を締める。

彼はこの作戦が初陣だから緊張していても仕方が無いだろう。

 

海軍大学では抜群の成績であったと聞くし、卒業してからまだ3年ほどと言う速さで参謀に抜擢されるほどの優秀な人物だが、流石に初陣は緊張するらしい。

 

「緊張するなとは言わん。だが、それで何も出来なくなることの無いようにな」

 

「はっ」

 

「飛龍は操艦の名人だ、被弾一発もせんだろうさ」

 

「ちょっと提督、変なプレッシャーは止めてよねー」

 

「すまん。だが自信はあるんだろう」

 

「もっちろん。私が操艦名人じゃなきゃ今頃提督は海に放り出されて海の上を漂う経験をしてた筈でしょ」

 

「違いない」

 

飛龍は笑って言う。

実際その通りなのだ。

 

飛龍の見事な操艦の腕が無ければ今頃俺はここに立っていることすら無かったかもしれないのだから。

 

少しすると電探手から砲撃予定距離に敵編隊が侵入した事が告げられた。

 

その報告から数秒遅れて空母の周りを囲む戦艦の主砲が一斉に火を噴いた。

 

とんでもない大きさの砲声が艦隊中を包み、その砲炎や砲煙で視界が遮られてしまうほど。

 

20隻もの戦艦による一斉射は、音速を軽く超える1tを超える砲弾を撃ち出した。

数十秒の後に、敵編隊の先頭集団の少し中ほどで三式弾が一斉に炸裂した。

 

「……全部で30機ほどの撃墜です」

 

「よくやった」

 

30機の撃墜だとしても、20隻で割ってしまえばそれぞれ精々2機を撃墜した程度の損害だ。

何よりも今の敵編隊は迎撃隊によって数を大きく減らした手負いだ。

その後ろには無傷の編隊が丸々一つ残っている。

 

予定していた距離に予め照準を合わせていた巡洋艦や駆逐艦達も次々と射撃を始める。

 

辺り一帯は砲声と砲炎、砲煙で覆われている。

火薬が燃焼した時の独特な匂いや味がする。

 

「す、凄い……」

 

「だろう?彼ら皆が、我々を守ってくれているのだ。何よりも心強い」

 

すると十数機の敵機が突っ込んでくる。

雷撃機が5、降爆が7と言ったところか。

 

『敵機目標我が飛龍!距離70!』

 

戦艦や巡洋艦の機銃が敵機に向かって伸びていくが、運悪く敵機を撃墜することは無かった。

 

『敵機突っ込んでくる!雷撃機距離30!降爆距離40!雷爆同時攻撃!』

 

「各艦に打電、我回避運動開始、衝突に注意されたし!」

 

飛龍が舵を切る。

面舵に大きく切ると、遅れて艦が曲がる。

 

飛龍は他の艦に比べると小さい方であり舵の利きも早いが、それでも改装を重ねて排水量25000tを超える巨艦だ。

それなりに舵の利きは遅い。

 

「見張り員、敵機の動向を逐一報告して!数は少ない、無傷で乗り切るよ!」

 

飛龍が大きく通る声で叫ぶ。

狙われた飛龍の操艦の腕は、やはり見事であった。

 

見張り員と良く連携し、右に左にと回避を続け、そして1発目、続けて2、3、4発目の降爆の爆弾を避けていく。

飛行甲板や作業員待避所、機銃座や対空砲座は爆弾の爆圧で噴き上げられた海水を思いっ切り被っている。

 

乗組員の靴底には凹凸状のゴムが貼られているが、滑らないと言う保証は無い。

 

海水に攫われた乗組員が居ないことを祈るばかりだ。

 

『敵降爆、投弾!距離5!』

 

『敵雷撃機、投雷!距離10!』

 

「良い腕をしている……」

 

投弾のタイミングが上手い。

恐らく、よく訓練された熟練搭乗員だろう。

 

回避しきれるかどうか、際どいところだな……。

 

投下された爆弾を次々避ける。

魚雷も見事に4本回避してみせたが、最後の1本はどう見ても避けられるものでは無かった。

 

「総員衝撃に備えッ!」

 

全員が掴まれるものに掴まった次の瞬間、艦全体に大きな衝撃が響いた。

それから数拍置いて、巨大な水柱が飛龍の左舷中央に立ち上った。

 

「損害確認、ダメコン急げ!」

 

数十秒後、伝令が走ってくる。

 

「報告!艦中央部に被雷1!傾斜2度!電力問題無し、重油、航空燃料の流出、引火確認されず!浸水軽微!」

 

「まだまだ戦えるね、次に備えるよ!」

 

飛龍のその言葉の通り、まだまだ戦える。

 

次に襲い掛かって来たのは、迎撃を掻い潜った20機程の雷爆撃機であった。

狙われたのは飛龍の後ろを航行していた加賀であり、飛行甲板に2発の被弾、2本の被雷を受けることになった。

 

最初の被弾の際に、燃料に引火して煙の勢いが強くなり視界が悪くなったことで立て続けに被弾、被雷してしまったようだ。

燃料自体は投棄したので大事には至っていないようだが、飛行甲板の修理にはそれなりに時間が掛かるとのことで、戦闘への復帰は絶望的の様だ。

速力は26ノットの発揮が可能である為、早い内に退避させてこれ以上被害が大きくならない様に努めた方が良い。

 

再び戦闘に参加しようとするのならば、大鳳と信濃同様にバリクパパンでの入渠を終えねばならないだろう。

損害状況から見て、空母3隻はそれぞれ3週間程度の入渠になるだろう。

 

それまで空母3隻が戦列から離れることになるが、中々に手痛い。

300機ほどの航空兵力を運用出来なくなってしまうと言う事だからだ。

 

まぁ、損害は織り込み済みで作戦計画は立ててあるから問題は無いが。

 

「加賀には駆逐艦3隻を伴わせてバリクパパンへ退避。同地で入渠するように」

 

すぐさま加賀に退避命令を出す。

 

『敵機第3群、急接近!距離40!』

 

「数は?」

 

『変わりありません』

 

烈風の多くは、最初の2個編隊との戦いで弾薬の多くを消費してしまっている、との報告が上がっている。

燃料はまだまだ余裕があるが、弾薬が無ければ戦えないのは当然だ。

 

烈風は20mm機銃を4門、弾薬は各門250発づつの計1000発搭載しているが、搭載している機銃の発射速度は毎分700発。

 

250発の弾丸を撃ち切るのに、20秒も掛からない。

内側と外側の機銃を別々に撃つことが出来るとは言え、撃ちっ放しにしたらそれでも40秒しか撃つことが出来ない。

撃ち切ってしまえば、母艦に戻って補給を受けるしかない。

 

「迎撃隊には無茶をせず、退避せよと打電」

 

「了解」

 

『敵機編隊距離300!』

 

その報告より少し遅れて、戦艦が一斉に主砲を撃った。

一際大きい砲声であるのは、大和と武蔵の2隻であるのは間違いない。

 

敵機の只中で三式弾が次々と炸裂していく。

それは戦艦だけでなく重巡から軽巡、駆逐艦のものもある。

 

黒煙を引き摺りながら落ちていく機体もあれば、ふらふらとよろめいたと思ったら真っ逆さまに落ちていく機体、粉々に吹き飛ぶ機体もある。

 

「……40機ほどを撃墜しました。他に引き返していく敵機が20機ほどです」

 

「襲い掛かってくるのは200機程か」

 

それなりに多い。

恐らく2~3隻程度に集中して狙ってくるだろう。

 

となれば、2隻は間違いなく戦線離脱を余儀なくされるのは間違いない。

 

敵機はどうやら飛龍と瑞鶴、蒼龍を狙う腹積もりらしい。

一気に突っ込んでくる。

 

対空砲や機銃をどれだけ撃ち上げても、怯む様子は無い。

 

それぞれに20機づつの雷撃機と降爆機が突っ込んでくる。

5機づつに分かれて、波状攻撃を仕掛けてくるその動きは、今まで戦った敵の中でも上位に位置するほどに練度が高い。

 

「連中、この戦いの為にあちこちから熟練を引き抜いているな」

 

「今までの南方方面での作戦で敵の母艦航空隊が弱体化していたのは、それが原因でしょうか?」

 

「分からん。いずれにせよ、何かしらの関係はありそうだが、敵はこの戦いを決戦と定めている腹積もりらしい」

 

そうなると、厄介だ。

敵はいつも以上に死に物狂いで攻撃を仕掛けてくることだろう。

 

そうなったら、厄介極まりない。

 

突っ込んでくる敵機に対空砲や機銃が火を噴き続けるが、数は思うように減らない。

時折落ちていく敵機はあるものの、攻撃を断念させるほどでは無い。

 

飛龍に限らず、3隻は次々と回避をする。

右へ左へ艦首を振って、爆圧で噴き上げられた海水を被る。

 

しかし全てを回避することは出来なかった。

 

最初の1発が飛龍の飛行甲板で炸裂した。

艦首付近への被弾らしく、黒煙の間から覗く損害状況を見ただけで航空機の発着艦は出来なくなったことは明白であった。

 

立て続けに3発被弾し、ダメコン班やそれに他の大勢の乗組員が消火作業を始めている。

 

『蒼龍被弾!』

 

飛龍艦上の大騒ぎの中、蒼龍までもが被弾したと見張り員が叫ぶ。

双眼鏡を覗くと、飛行甲板から黒煙を吹き上げている蒼龍の姿があった。

 

しかし被害はそれだけでは終わらない。

 

黒煙で視界が遮られる中でも回避を続ける飛龍と蒼龍に、被弾よりも大きな衝撃が走る。

 

『左舷艦首、及び艦尾に被雷!』

 

「ダメコン!損害抑えろ!」

 

艦橋や艦内で怒号が飛び交う。

 

「提督、急いで移乗準備して。これぐらいじゃ沈みはしないけど、もう戦えないから」

 

「分かった。一番近い艦は誰だ?」

 

「右舷の長門が一番近いかと!」

 

「攻撃が終わり次第すぐに移乗する!司令部移乗準備!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

皆が移乗の準備を大急ぎで進めていく。

 

『報告!艦内火災消火完了!飛行甲板、格納庫内の火災消火見込みあり!浸水により傾斜11度!発着艦不可!以上!』

 

『報告!機関室に浸水、3番、5番ボイラー緊急停止!速力20ノット!』

 

『報告!弾火薬庫、航空燃料緊急投棄!』

 

次々と上がってくる報告はどれもダメコンのものだ。

悲観的になる情報もあるが、誘爆や火災が激しくなる前に弾火薬や航空燃料を投棄出来たのは不幸中の幸いだ。

 

ボイラーの緊急停止も当然だ。

大量の海水が流入すれば、水蒸気爆発を起こして一瞬で沈んでしまう可能性もある。

 

どうやら丁度3番、5番ボイラーの間にある隔壁のところに魚雷が命中し、両方に浸水が発生したらしい。

とは言えこれでもまだまだ沈みはしない。

 

飛行甲板はズタズタにされたが、魚雷の命中は3本だけだ。

さっさと飛龍と蒼龍、被弾していたら瑞鶴も退避させてしまおう。

 

 

 

 

敵機が攻撃を終えて飛び去って行った。

 

総被害は、

 

飛龍 5発被弾、2発被雷。

蒼龍 4発被弾、3発被雷。

瑞鶴 4発被弾、4発被雷。

 

以上のようになった。

いずれにせよ戦闘能力は喪失したと言っていい。

 

それぞれに駆逐艦を3隻付けて退避、俺を始めとした司令部は丸ごと長門に移乗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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