暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第76話

 

 

 

 

パラオでの作戦が終了し、基地航空隊が進出するまでの間、近海での制空権維持を空母3隻で行っていた。

 

第1補給艦隊は本土とパラオ間の輸送任務に従事しており、パラオ完全制圧から2週間後、点圧の完了したアイライ第1飛行場に2個航空隊、紫電改72機が進出。

この内の1個航空隊はアンガウルへ進出予定の部隊だが、先んじてアイライに進出している。

これで母艦航空隊無しでも取り敢えずの制空権を握る事が可能になった。

 

飛行場は全部で3箇所建設予定で、アイライ第1飛行場と予備のアイライ第2、第3飛行場で纏めてアイライ飛行場。

これはアイライ第1飛行場は1200mのコンクリート舗装をされた滑走路を持つ飛行場になる予定であり、場合によっては連山や一式陸攻の受け入れも担う一番大きな飛行場だ。

燃料タンクの建設は始まったばかりで、建設が完了するまではドラム缶からになる。

屋根を設けただけの場所に燃料は置かれていて、偽装は施されているが殆ど野晒しに近く、もし爆撃を喰らおうものなら一瞬で火の海になる。

 

 

 

次にペリリュー飛行場。

こちらには1個航空隊紫電改36機が進出済みで各任務に就いている。

点圧しただけの、土や草剥き出しの舗装されていない800mの主滑走路と500mの予備滑走路が十字に交差している。

燃料タンクの建設はまだであり、ドラム缶からの給油になる。

 

 

最後にアンガウル飛行場。

こちらにも1個航空隊紫電改36機が進出予定となる。

建設はまだまだ序盤であるから、あと稼働させるにはあと10日は掛かる。

これも点圧しただけの700m滑走路になる予定だが、ペリリュー飛行場の建設が完了した独立工兵大隊が大発に機材を載せてつい数日前に到着したばかりであり、機材運搬の為に3日間の休暇を設け、漸く建設に着手したばかりだ。

 

 

 

パラオから船団護衛に戦闘機や二式大艇を飛ばすことも出来るし、敵潜水艦によってパラオを封鎖するにも相応以上の潜水艦を用意しなければ、対潜水艦能力が高いから良いように狩られる事になる。

 

コロール島には桟橋の建設が行われている最中で、水上機基地と駐留の二式大艇12機が稼働状態にある。

アイライには震電36機も進出予定だが滑走路の舗装が終わっていないから、それが終われば本土から進出となる。

アイライにはもう2つの600mほどの滑走路が建設される予定だが、こちらは予備飛行場となる。

 

流石に空母機動部隊が殴り込んできたら分が悪いが、重爆相手ならば十分に戦える。

これで一方的に叩かれることは無くなった訳である。

 

南側にある大きな環礁内には停泊の為の浮や停泊中の乗り降りや物資の運搬をやり易くするために浮桟橋が幾つか浮いている。

北側にあるジェレチャー島に面する環礁は予備環礁兼潜水艦用泊地としてある。

 

最低限の建設整備は終えており、今は伊400以下第1潜水艦隊が交代で停泊して補給を受けている。

使わないでいる方が金が掛かるから、少しだけ使っておくのである。

 

環礁内には洋上迷彩を施されたタンカーの大洋丸と、潜水艦隊に補給する為の魚雷や食糧水、医薬品などを載せた輸送船雄洋丸が停泊しており、潜水艦隊への補給を担っている。

この2隻は暫くの間はジェレチャー環礁に留まり、潜水艦隊への補給任務を行う。

 

潜水艦は魚雷以外は武装を持たない。

砲や機銃は水中速力の向上と海水の抵抗による騒音を防ぐ為に撤去されたからだ。

 

最終的にパラオには紫電改3個航空隊108機、震電1個航空隊36機の4個航空隊計144機が駐留する事になる。

 

これでパラオを太平洋側に対する前哨基地と対空対潜警戒基地にすることが出来る。

フィリピンに対する圧力が軽減されれば、輸送航路の安全がより確実に確保され、物資輸送がより安全に行えるだろう。

 

懸念があるとすれば、敵がパラオに対する海上封鎖をより強力にして来たならば、パラオそのものが孤立化しかねない事だろうか。

俺でも考え付くのだから、当然深海棲艦も考えるだろうしその物量があれば潜水艦だけでなく、水上艦艇をも使ってくるかもしれない。

 

 

パラオの弱点は、本土、フィリピンどちらとも距離が離れていることだ。救援を要請しても1番近いフィリピンが要請に応えたとしても、航空機でも出撃準備を整えるだけで1時間、離陸から空域に辿り着くまでに数時間は掛かる。

位置関係としてはラバウル〜ガダルカナル島に近いものがあり烈風、疾風はどちらも航続距離不足で往復は出来ない。

爆装を施しての往復が可能なのは、連山か二式大艇のどちらかしか無く、勿論救援要請が出された時点でパラオの飛行場は使用不可能であるから制空権の無い場所に、しかも戦闘機の護衛無しで突っ込む事になる。

結果は明らかだ。

 

となればそれを解決するには艦隊を、しかも総力を挙げた上での出撃が必要になるだろう。

そこまで戦況が押し込まれていたら、そもそもパラオの維持救援を考えるよりさっさとパラオを放棄して全部隊を撤退させる方が賢明だろう。

 

その方が守る為に戦って生じる損害を少なく出来るし、何より長期間に及ぶと予想される防衛戦、維持戦と言う泥沼の損耗戦をしなくて済む。

立地上、確かに有要な地である事には変わりないが、我々にはパラオに固執する理由は無いに等しい。

パラオを拠点に対潜哨戒網を広げても、カバーしなければならない範囲が広過ぎる為に索敵討ち漏らしは必ず発生するし、フィリピン方面へ侵入しようとする敵潜水艦が増えれば増えるほど、それは難しくなる。

それらを全て防ごうとすると、必然的にパラオに駐留させる二式大艇の数を増やさねばならず、そうなれば維持運用をする為の人員を一緒に派遣し、その分の食料水、部品や燃料、対潜爆弾などを更に送り込み続けなければならなくなる。

 

これではパラオに駐留する部隊を可能な限り小さくした意味が無い。

だからパラオには哨戒と、船団護衛任務しか与えていないのだ。

あとは潜水艦隊の泊地であるが、これは後々になって見つかった用途になる。

 

船団護衛ならば、輸送船団の周りを警戒するだけで良いし、哨戒も同じだ。

要は殆ど積極策を取らないでいるのがパラオな訳である。

潜水艦隊なら積極策を採っても水上艦艇と比べて補給量は殆ど小さくて済む。

 

武装は魚雷だけだから、他の武器弾薬の補給は考えなくて良い。

輸送船には100本の魚雷と専用の調整室が備えられている。

酸素魚雷はその内の20本だけだが、残りは電池魚雷だ。

酸素魚雷は確かに高威力長射程、隠密性にも優れているがなんせ高いし整備は面倒だしで、兎に角扱いが面倒臭かった。

 

鉄粉一つで故障や誤作動、誤爆が起こる代物で、下手をすれば母艦に搭載している時に爆発しかねない。

砲雷撃戦中に魚雷発射管や次発装填装置ふきんに被弾一発でもあれば純酸素を使っているから火の手に弱いと言うのもあり、即座に投棄しなければならないほどに繊細で、まともに運用するには毎日の整備に丸半日を費やす事も当たり前だったのだ。

 

その点、電池魚雷は高性能爆薬や電池の改良によって酸素魚雷には劣るが必要な性能は有している。

信頼性も高いし電池魚雷だから酸素魚雷と同じように航跡は残さない。

速度は遅いが狙う距離はそんな10km20kmと離れていない。

精々1kmか2kmと近いから、精々6km分もあれば良い。

魚雷には音響誘導装置も搭載されているから未熟とは言え命中率は従来のものより高い。

 

安価で信頼性も高く、使い勝手も良いし更には量産にも向いている、しかも必要な性能はちゃんと満たしている。

だったら態々扱いが面倒臭いものより選ばれて当然だった。

 

とは言え、酸素魚雷が完全に居場所を奪われたかと言うと、実はそうでは無い。

酸素魚雷の長射程高威力は、輸送船や小型艦艇に対しては費用対効果が余りにも悪過ぎるが、こと大型艦相手となれば話は違ってくる。

 

電池魚雷は確かに必要な性能はあるが、対大型艦となると実は威力不足感が否めない。

確実に撃沈するには戦艦相手なら5本、空母相手でも3〜4本が必要とされている。

酸素魚雷ならば、戦艦でも3本あれば確実、空母なら2本もあれば十分と、大体半分の命中で済むのだから威力の違いは相当なものだ。

 

電池魚雷だと、1本か2本なら艦尾の推進軸や艦首の一番先端に初弾命中しない限りは、中破程度の損害で済むし応急修理と傾斜復元が済めば戦線復帰は簡単だ。

余程の不幸、それこそ魚雷や砲弾が空いた破口に飛び込んだりしない限りは戦闘を続けられる。

 

その点、酸素魚雷の破壊力は単純なものさしで見た場合、魅力的なのだ。

勿論音響誘導装置も搭載されているし、命中率も向上している。

ちゃんと改良も続けて、電池魚雷には及ばないが信頼性や扱い易さなども向上させている。

 

言わば、必殺であるのが酸素魚雷だ。

輸送船相手に一々酸素魚雷を撃っていたら、こっちが先に魚雷不足で戦えなくなる。

だから安価で扱い易い電池魚雷を使うのだ。

 

輸送船1隻もあれば全ての潜水艦が全ての魚雷を撃ち尽くしたとしても1回ぐらいは満載はできなくても一戦交える程度の補給出来る。

潜水艦隊は偵察と哨戒、通商破壊が主任務だが、太平洋方面に関しては哨戒は昼夜問わずに二式大艇がやるし、通商破壊をする場所も無い。

だから全く偵察任務ばかりで魚雷を使用する機会そのものがないから輸送船が1隻もいれば十分な訳だ。

この輸送船には魚雷を搭載する為のクレーンや調整室などの整備が新しく改装によって設けられた。

 

言わば潜水母艦の代わりが雄洋丸なのだ。

今の海軍には潜水母艦が無い。

空母に改装されるか、あるいは俺がこの世界に来る前、それまでを第一次戦役と呼ぶが、その第一次戦役中に沈められている。

 

では何故第1潜水艦隊が太平洋側の偵察任務に就いているのかと言うと、実は今現在最も強力な敵戦力があるのは中部太平洋方面、言わばハワイ諸島方面だからだ。

通信傍受や偵察結果を考えるにハワイ諸島を根拠地とする空母機動部隊が3個、戦艦主力の水上打撃部隊が2個、潜水艦隊が2個、兵站を担う艦隊が1個か2個艦隊。

 

さらに基地航空隊は、総数2000機を超えると予想されている。

彼我の戦力比を換算するとどれだけ甘く見積もっても艦艇数は1:3は確実、厳しく見積もって1:4〜5。

航空機に関しては移動があるから正確な数を把握し切れないので断言は出来ないが、それでも母艦航空隊だけで1:3、基地航空隊も合わせたら1:6は確実だ。

 

南方方面の作戦が豪州奪還作戦を迎えた事でひと段落したから中部太平洋方面に潜水艦戦力を割く余裕が出来たのだ。

 

だから一番重視しなければならないのがこちらになる。

万が一これらの戦力が一斉に打って出てきたら、各地の基地航空隊を前線に送り続けるか、或いは内部に引き込んででも大損害、それこそ文字通り全滅覚悟で敵艦載機を削りつつ、全潜水艦隊による後方兵站線の破壊活動、最後に艦隊戦で決着を付ける以外に方法は無い。

 

そうならぬように、事前に情報を得るべく最精鋭の第1潜水艦隊をパラオに置いてある訳である。

 

最終的に駐留する部隊は、

 

3個海軍陸戦隊

パラオ港湾部

第200号型輸送艦2隻

4個航空隊

1個潜水艦隊

 

他にも軍病院など諸々の人員を含めれば2万人程度の総人員数になるが、他と比べれば非常にコンパクトな規模になる。

 

はっきり言ってしまうと我々にとって、あった方が良いが別に無くても困らないと言うのがパラオだ。

だからいざと言う時は放棄しても特段問題にはならない訳である。

 

その場合に備えての準備はしている。

陸戦隊と工兵大隊、航空隊の人員、港湾施設運用要員やらを全て引っくるめて丸1個師団規模、人員数にして1万8029名を収容する訳である。

戦闘機隊は自分の機体に載ってフィリピン、沖縄経由で本土へ向かい、二式大艇には可能な限りの人員を詰め込んでローテーションを組んで往復させれば良い。

 

資機材は燃料弾薬を除いて、動かせるものだけを大発や小発に載せ、あきつ丸や神州丸を筆頭にした第200号型輸送艦に載せられるだけ載せる。

本来なら小火器から重火器に至るまで、人員以外は全て爆破し廃棄した方が合理的で楽なのだが、そんな余裕が無いから回収出来るものは回収しなければならないのだ。

これでもパラオを防衛維持するよりは遥かに安上がりなのだからな。

 

燃料弾薬爆弾爆薬類の火気厳禁物に関しては、持ち帰れない機材や飛行場の爆破や焼却処分に使う為に全て置いてゆく。

と言うか陣地やトーチカ、飛行場、港湾施設破壊の為に全て使用する予定なので残らないだろう。

 

楽なのは駐留する部隊全てが海軍の部隊である事だ。

これなら陸軍と作戦の擦り合わせなどが少なく済む。

航空隊の一時受け入れ先であるフィリピンに対しては擦り合わせや物資の融通を話し合う必要はあるが、それぐらいだ。

他の作戦に比べれば、全く無いと言って良い。

 

手筈と、その為の準備だけはしてあるからいざとなれば艦隊を率いて囮とし、安全かつ迅速に遂行出来る。

 

パラオに関してはこんなものだ。

 

 

 

 

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臨時艦隊は一度本土へ戻り、戦闘を交えた長期任務後の点検整備を受けてからそれぞれの艦隊へ戻る事となった。

そのついでに愛宕、摩耶、矢矧の3隻が防空巡洋艦に改装される事になった。

愛宕と摩耶は主砲を全て撤去し、代わりに10cm連装高角砲を前部4基、中央片舷3基、後部4基の14基搭載する。

矢矧は愛宕、摩耶同様に主砲を全て撤去、10cm連装高角砲を前部4基、後部4基、中央片舷2基の装備となる。

先んじて3隻が改装され、鈴谷と熊野、阿賀野、能代、酒匂が交代しての改装が予定されている。

改装には点検整備と運用訓練を合わせて各艦6週間ほどを予定している。

 

高射装置や射撃電探、対空電探と言った各種電子装備なども最新のものに交換され、より迅速により正確に対空戦闘を行えるようにされる。

 

 

 

本土で臨時艦隊と共に休暇を数日挟んでから書類仕事をこなし、改装と整備、艦載機と怪我と戦死で穴の空いた搭乗員の補充も終えた臨時艦隊と共に、豪州向けと南方方面向けの輸送船団150隻を護衛しながら豪州沖へ。

その内40隻を南方航路護衛隊へと引き継ぎ、110隻を連れて豪州へ向かう。

60万を超す将兵達を飢えさせず乾かさせずに、しかも戦わせるには大変な量が必要だ。

大体20万人で300tぐらいが必要になって来るから、海軍も合わせて60万人を超える将兵が豪州作戦に従事している。

そうなると1日辺り食糧だけで最低900t以上が必要になる計算なのだ。

これで最低量なのだ。

戦闘や行軍と言ったことを考慮したら1日当たり、1200tは食糧が必要になる。

輸送船は1万tの積載が可能だが、それでも7日間しか保たない。

南方方面軍の総兵力30万人分、約450tを合わせれば1日当たり1600〜1700t。

 

豪州まで船団を組んでの航海だと14日掛かる。

嵐や台風、スコールなんかに遭遇したりすると伸びたりするが、基本的には14日の航海で計画している。

 

となれば南方方面軍と豪州方面軍を合わせて輸送船1隻辺り6日分しか保たない。

1週間も保たない訳である。

これに水が加わると、より大変だ。

1日辺り70kgの体重の兵士ならば最低2.4L、ただし豪州と言う気温の高い、乾燥した地域だから戦闘やら全てひっくるめて1日当たり、4Lは補給しなければならない。

輸送船1隻だと連隊を2500人を1日保たせることしか出来ない。

 

川から水を汲んで煮沸消毒や濾過をするにも燃料が必要になるし、簡易ではあるとは言え濾過用の器材も必要になる。

川や湖、池が無ければ水の補充は出来なくなるし、全くそれ頼りになるのは全軍将兵の命を預かる人間として受け入れられない。

 

煮沸消毒用の燃料も辺りに生えている草木を、とは行くまいし、そうなると燃料を運ばねばならない。

ただでさえ航空機用ガソリンに艦船用の重油、トラックや戦車などの車両用ガソリン、各種機械油を運ぶので精一杯なのに、将兵60万人分の水を確保する為の燃料など、到底計算に入れられないと言うのが実情なのだ。

それなら普通に本土から専用のドラム缶に詰められた水を運んだ方が煮沸消毒の手間や時間、それに金も掛からなくて済む。

 

それに運ぶのは飲料水だけでは無い。

雑用水と呼ばれる、飲料以外の目的で使われる水も必要なのだ。

これでよく少しとは言え備蓄分を捻出出来るものだから補給を司る将兵達には本当に頭が上がらない。

 

 

 

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臨時艦隊を解散し各艦をそれぞれの戦隊へ配属配置を戻し、1航艦旗艦である隼鷹艦上で艦隊指揮を執り始めたのだが、そこで予期せぬ事が起きた。

 

「提督、偵察機から緊急入電が」

 

「どうした?何があった?」

 

自室で書類仕事をしていると通信参謀が駆け込んでくる。

 

作戦や攻勢を行うために豪州各地の上空を飛び回っている百式司令部偵察機から緊急入電が入ったと言う。

 

百式司偵は武装を一切積んでおらず、代わりに速度性能を最優先にしている。

時速751kmの発揮が可能であり、震電を除けば陸海軍の航空機で比べるとダントツに早い。

 

急降下や緩降下を行えば音速に近い速度も出す事が可能だ。

高高度性能も抜群で、実用上昇限度は13000m、無理をすれば15000mまで上がる事も出来る。

航続距離は4000kmにも及び、双発機としては十分なものだ。

搭乗員が2名であるし、偵察以外の任務は一切行わないから機体内部には通信機器や電探、酸素ボンベを搭載しても尚、余裕がある。

 

その分は航続距離を稼ぐ為の燃料と防弾装備に割り振ってある。

防弾性能も防御火器が無い分、搭乗員2名の周りと燃料タンクは20mm弾の直撃に耐えられるものとなっている。

偵察用のカメラも少数生産の抜群に高性能なものを載せているので、正しく偵察の為だけの機体だ。

 

その偵察機が緊急電を発するなど、かなりの事だろう。

 

「イナミンカで包囲されている友軍部隊があるとの事らしく、至急援軍を差し向けられたし、と……」

 

「イナミンカ……?陸軍はまだそこまで到達していない筈だぞ」

 

頭の中に叩き込んだ地名と記憶にある現在の陸軍の最進出線を頭の中に思い浮かべて首を捻る。

何故なら今陸軍が進出している場所から1000kmは奥地の場所の地名であるからだ。

 

イナミンカに最も近い最前線はつい最近奪還したばかりのコレラ湖、シルベスター湖、デボロー湖の3つ。

この3湖近辺は奪還したばかりであり、今は部隊の再編や補充、休息を取っているところなのだ。

 

だから少なくとも、消費した物資の補給や、部隊再編が完了するまでの数日間は部隊は全く動かない筈。

進軍再開の報告も上がっていないことからそれは間違いない。

 

「ではどこの部隊が包囲されているのでしょうか……?」

 

「急ぎ豪州方面軍に確認しろ。それと偵察機に詳細を知らせるように」

 

各方面には16機づつの百式司偵が配備されており、敵地上空を常に8機体制で偵察監視を行っている。

部隊の移動は余程の小部隊でもない限り、鮮明に撮影するならば高度4000〜5000mでも分かる。

なんなら10000mからでも十分に任務は完遂出来る。

 

陸軍は西部戦線、東部戦線、南部戦線と3つの戦線に分けて奪還を進めており、今主要な作戦地域は西部戦線になっている。

 

と言うのも敵が使える港があるからそこを早い段階で奪還しておきたいからだ。

西部戦線の敵はそこを海上輸送の荷揚げ港としており、これを叩くことが出来れば西部戦線や南部戦線に大きな影響が出る。

 

 

奪還地域と、報告のある場所は一番近くても1000kmは離れているのは間違いない。

この数日だけでそれだけの距離を、師団規模の大部隊が車両移動をしたとしても困難。

ましてや今は物資輸送にトラックを割いてしまっているのだから移動するのは間違いなく不可能だ。

 

仮にどこかの部隊が報告無しに進軍した挙句に敵に包囲されているとしたら、軍法会議ものだ。

 

もしくは、もう一つの可能性もあるには有り得るのだが……。

 

 

 

十数分後、豪州方面軍から報告が入ってくる。

 

「豪州方面軍司令部より報告です。どうやら問い合わせた方面の陸軍に進軍再開をした部隊はありませんでした。各部隊に点呼も取って確認しましたが、隊旗の所在地は一切変わっておりません」

 

参謀長による報告だと、間違いなく陸軍部隊に所在地が変わっている事は無いらしい。

 

「なら誰がそんなところで包囲されているのだ?」

 

「海軍陸戦隊にも報告させましたが、所在地は変更無し、河川機動戦や沿岸部への後方上陸戦のみに従事しているようです」

 

艦隊司令部は方位されているのは誰なのか、と言う議論で持ち切りとなった。

 

「議論する余地も無いだろう」

 

「提督……?」

 

恐らくではあるが、我々が最も望んでいたことであり、そして現時点では最も起きて欲しくない事である。

 

「豪州政府か豪州軍、或いはそのどちらもだろうな」

 

「「「「「……」」」」」

 

それを聞いて誰もが黙った。

何せ、今の我々に彼らを救う手立ては殆どない。

 

最寄りの飛行場は、沿岸部に集中していて戦闘機である疾風は往復するだけで精一杯。

 

連山部隊は飛行場の関係で1000kmは離れている、爆弾を積載した状態では往復2000kmと言う距離は飛べるにしても、中々重労働だ。

そもそも疾風にしろ連山にしろ、敵機との制空戦と地上支援で手一杯な状態だ。

 

流石にこれ以上負担を増やすのは、難しい。

 

「で、ですが見捨てる訳にも……」

 

そうは言うが、どのような手立てがあると言うのか。

 

仮に陸軍がそこまで到達することを早めたとしても、間違いなく敵が勝つ方が早い。

かといって、疾風や連山に対してこれ以上の任務を課すのも厳しいだろう。

 

「提督、どうすんの?アタシとしちゃ、見捨てるってのも一つの手だと思うよ」

 

誰もが言えなかった事を隼鷹が言ってくれる。

実際、こちらにそれだけの兵力的な余裕は無い。

 

寧ろ豪州作戦の為に南方方面軍に、本土から相当数引き抜いている。

豪州作戦に従事している陸軍部隊は50万。

この数字は陸軍総兵力の4分の1に相当する。

 

海軍も含めれば、70万を超える。

単純な兵力であれば陸軍からまだ投入することは出来るが、補給能力と言う問題があるからこれ以上兵力を増やすことは出来ない。

南方方面に加えて、硫黄島、パラオ、それに加えて豪州方面軍への補給は、並大抵の量ではない。

ただ食わせるだけなら大した事は無いが、それに加えて戦う為の武器弾薬に燃料、戦闘や病気に罹った将兵の為の医薬品、それに部品なども輸送しなければならない。

 

そうなってくると全く話は違ってくる。

戦闘無しであれば、弾薬の消費は射撃訓練ぐらいでしか使わないが、豪州は全面的に戦闘中だ。

消費する弾薬や砲弾、燃料、そしてただあるだけで部品を消耗する戦車や自走砲などの車両類は戦闘で消耗し続ける。

それを十分に戦わせ、食わせてやらねばならない。

 

救援の為に数万の兵力を増やしただけでも、補給線が破綻しかねない。

やるならば、今の投入兵力から捻出するか、新規に投入するにしても可能な限り攻撃力は高く、しかしコンパクトな部隊だろう。

 

 

 

それを考えれば、見捨てると言う選択肢も一つであろう。

 

「戦闘準備が整っている部隊で、なるべく規模が小さくとも戦闘力の高い部隊はあるか?」

 

「……そうなると、陸海軍の特殊部隊程度になってしまいます」

 

「それでは駄目だな。包囲している戦力だって小さくはない筈だ。特殊部隊を全て投入しても数百人。この程度では意味は無い」

 

「百式司偵より入電!」

 

「読み上げろ」

 

「はっ、『包囲サル友軍戦力少数、数千程度。敵軍3方ヨリ包囲シ、総戦力3乃至4万ト見積モラレル。増援急ガレタシ』以上です」

 

「それだけの戦力に囲まれて、攻撃を受けていると言うのなら保って1週間程度だな」

 

少なくとも5倍以上の戦力差に加えて、物量でも負けているだろう。

持ち堪えている事自体が奇跡に近い。

 

「司偵より更に入電!『友軍ヨリ発光信号ヲ確認ナレド光量微弱、断裂、読ミ取レズ』以上」

 

十中八九、偵察機に気が付いたのだろう。

藁にも縋る思いで、必死になって発光信号を打ったに違いない。

 

「提督、見捨てることなど出来る筈もありません……!」

 

参謀の一人が立ち上がり拳を握り締め、言う。

彼らの思いを慮れば、到底見捨てる事は出来ない。

 

「止せ……!我々にはそれ以上に戦略上の決定を下さねばならんのだ……」

 

参謀長は苦しいであろうが、それでも厳しい決断を下すこともしなければならないと肩を怒らせ震わせる。

 

「提督、アタシらはどんな決定でも従うさね。アタシらの提督に対する信頼はそれぐらいで消えるような信頼じゃぁ、無いよ」

 

腕を組んで隼鷹は構えている。

 

「……参謀長、今彼らを見捨てるか、それとも救って今後味方となる存在が出来るか、どちらが戦略上の重要度、利点がある?」

 

「勿論、後者です」

 

「そうか……」

 

息を吸いながら天井を一度見て、決める。

 

「救おう。すぐに投入部隊の選定、現地への投入手段を策定せよ」

 

会議室は湧き立った。

各々が自分の仕事の為に駆けだしていく。

 

 

 

 

「提督、よろしいですか」

 

「決まったか」

 

「はっ。では」

 

参謀長が地図に指揮棒を指しながら説明を始める。

 

「今回の作戦に置いて最も課題となるのは、彼我の距離です」

 

「最も近い最前線のシルベスター湖でも1000kmは離れており、どれだけ急いでも敵軍との戦闘もある為、救援に到着するまでに3週間は掛かると見積もられており、これでは到底間に合いません。そこで、挺身隊の投入を具申します」

 

「それには同意する。だが、何処から運ぶ?歩兵は勿論だが、戦車は無理でも最低限榴弾砲程度の重火器の投入は必要不可欠だぞ」

 

「それに関しては、牽引式15cm榴弾砲を幾つかに分解して投下しようと考えております。連山は4tの積載が可能ですので、余裕を持って牽引車としてケッテンクラートを2両、砲弾運搬の為の機体を2機の計6機で1門の榴弾砲を運べば良いかと」

 

牽引車としてケッテンクラートを選んだのは重量の問題だろう。

他の牽引車は連山の搭載能力は4tだが、牽引車の殆どはこれを軽々超えている。

 

そこをケッテンクラート2両で引っ張ろうと言う事らしい。

 

「対戦車火器は?」

 

「南方方面軍が予備保管として保有している7.5cm対戦車砲と操作要員で1機、砲弾用1機、牽引車としてケッテンクラート2両1機の計4機を考えております。予備保管である機動90式野砲は本土にある為、運ぶ時間が無いので除外しました」

 

「それでいい。歩兵の投入兵力は?」

 

「敵軍への対抗を十分に、それも友軍が到着するまで耐えるには挺身隊を3個投入する必要があります。輸送機型の連山の機数から考えて、どうしても数波に分ける必要があります」

 

「まず最初に単純な正面戦力として挺身隊1個連隊2500名を、次に対戦車砲を20門。こちらは野戦重砲の到着まで、任務を兼任させられる事から先に対戦車砲の投入を行います。出来うる限り部隊規模は小さく火力は大きくしたつもりですが、これでも総投入機は200機を軽く超えます」

 

連山は完全装備の歩兵を機関銃、迫撃砲を含めて50名の搭載が可能だ。

4tの積載が出来るから、重砲やその牽引車も分解すれば運ぶことも出来る。

 

問題は、最大積載量の関係で野戦重砲を牽引する為の牽引車、我々で言うところのハノマークなどの半装軌車であるSd.Kfz.251などが運べない事だ。

これは重量が7.8tを超えていることから、どうやっても載せることが出来ない。

借りに分解して載せたとしても牽引車両一つでまさか連山を、確実に運べるようにするには3機必要だが、そんなに使うわけには行かないし、載せる重量が重ければ重いほど連山への負荷が大きくなって消耗も大きくなる。

 

それぐらいならケッテンクラートに牽引を任せた方が良い。

1両毎の牽引能力はどうやっても重砲を引っ張れるほどは無いが、そこは2両で引っ張ることで解決している。

ケッテンクラートは重量1.5tと2両載せてもまだ余裕がある。

操作要員を含めて考えても、ケッテンクラートと兵士2人、燃料幾らかと食料に医薬品を少しぐらいは纏めて輸送可能だ。

勿論弾薬と砲弾、燃料は別の機体で輸送することになるが、取り合えずの場繋ぎとしては有用だろう。

 

「兎に角、最初に送り込むのは場繋ぎとしてでいい。あとに続く部隊が到着するまで現地で持ち堪えられるだけの兵力と物資があれば十分だ」

 

「承知しました」

 

作戦の承認を行い、各地から輸送機型の連山が搔き集められる。

空挺作戦に投入出来る連山は機体後部に重機材や武器弾薬などを収めたパッケージを投下出来るようにハッチが設けられており、分解された重砲やケッテンクラートも楽に投下出来る。

 

搔き集められた連山は180機になり、第一陣に50機の連山に挺身隊が乗り込み、各種物資を投下する為に更に50機の連山が揃えられた。

それでも部隊や物資の積み込み、移動に3日は掛かる事からその間、どうにかして持ち堪えさせるために友軍支援の為に爆撃機型の連山と護衛の疾風が対地支援を行いつつ時間稼ぎを行う。

 

ついでに無線などに一切反応の無い友軍宛てに通信筒に救援部隊と物資の編制を行っている旨を伝え、到着するまでの間どうにか持ち堪えるよう書き連ねた手紙を投下させた。

勿論敵側にこちらの意図などバレバレであるが、制空権は拮抗状態にある。

 

そこで挺身隊の投下を行う前々日に敵に対して航空撃滅戦を挑んだ。

流石に腹の中に重いものを抱えさせた連山を襲わせるわけには行かないから、予め場所が分かっている敵飛行場に対して爆撃を行ったのだ。

 

勿論疾風だけでは攻撃力不足であるから、爆撃機型の連山を20機、各部隊が保有する銀河も混ぜて攻撃力の水増しを図る。

可能な限り敵からの抵抗を減らす為、夜間爆撃に攻撃は絞ったが、存在する敵飛行場6か所の内、最重要とされた大規模飛行場3つは確実に破壊、残り3つも大小の損害は与えている。

夜間であるから戦果確認は出来ていないが火の手の規模からして地上破壊戦果も相当数になると見積もられる。

飛行場を修復しても、敵機を叩けなくても、燃料タンクを破壊することが出来ていれば敵は作戦行動を大きく制限されることになるから、どちらでも構わない。

 

とは言え損害は小さくはなかった。

敵夜間戦闘機の迎撃があり、連山が合計で3機、疾風が7機撃墜され、 たのだ。

銀河は損害無しで乗り切ったが、撃墜された機の28名の搭乗員の内、7名が戦死となった。

 

 

 

 

 

 

6日後、ポート・ダービーにある広く設備が十分な飛行場から挺身隊と各種物資を載せた連山100機と、途中までの護衛を行う為の疾風50機が次々と飛び立った。

道中で護衛が交代し、6時間後に敵戦闘機の迎撃を受けつつも戦闘機隊の獅子奮迅もあって更に1時間後になってイナミンカ上空に到達。

事前に豪州軍に降下可能地点を囲う様に目印を書かせておいた場所に挺身隊と物資の投下が開始された。

 

 

 

翌日、降下した挺身隊長が豪州政府との接触に成功したと言う電文が発せられた。

イナミンカは豪州南オーストラリア州とクイーンズランドの境に近い場所にある小さな町であり、砂漠のど真ん中にある。

すぐ近くにクーパー川があるが、それでも今まで持ち堪えるのには相当に過酷であった筈だ。

 

豪州軍の総戦力は歩兵約4000名と野戦重自走砲が2門。

戦車は無く、武器弾薬の充足率は僅か3割であり、弾薬は1日に銃1丁につき30発、大隊2つともう幾らかに対して辛うじて武器と弾薬を持たせることしか出来ない状態であった。

自走砲2門には1日辺り3発の砲弾を供給するのがやっとで、見つけ次第大量の火力投射が行われることから地下陣地に隠れている事しか殆ど出来ていない。

 

食事量は民間人には1日辺り握り拳の半分ほどのパン、煮沸消毒などが出来ない為に太陽光による蒸留で得た水を1日に100mlを配給するのがやっとな状態であった。

 

現在の総人口は僅か3万人ほど。

勿論食糧事情もあって軍から民間、政府首脳部を含め極度の栄養失調と脱水症状を患っており、何時人死が起きても全くおかしくは無い、挺身隊の軍医からは武器弾薬よりも医薬品、食料の供給を最優先にしてほしいと懇願されたほどだ。

戦っていることから優先して配給される兵士達も戦えている事自体が不思議であるほどの状態であると言う。

 

物資を送り込む手筈は勿論整えるがともかく今は、現地で耐えてもらう他あるまい。

 

 

 

 

 

ー--------

 

 

 

 

政府中枢と、生き残った国民、軍全てが内陸部にその生活圏を移してからどれぐらいの年月が経っただろうか。

頼みの綱であったアメリカ軍は日本軍を巻き込んでハワイ沖で奪還作戦の失敗と戦力の殆どを失う大敗をしてから後退続き、ついには俺達を見捨てやがった。

 

最初はビスマルク諸島やソロモン諸島の防衛を行っていた日本軍も圧倒的戦力差から徐々に押し込まれ、陸の戦いでは部隊が丸ごと消えたし海と空の戦いも数の差に圧殺されていった。

海上輸送路もとっくの昔に途切れたままだし、勿論どこの国とも連絡なんて取れようもない。

 

それでもまだつい2か月ほど前までは良かった。

まだ最低限の訓練を施す余裕も幾らかはあったし、十分ではなかったとは言え軍民共にある程度は食べていくことも出来た。

敵も抵抗する俺達を態々被害を被ってまで潰そうなんて考えていなかったのだろう。

 

実際俺達には備蓄物資や生産出来る物資にも限りがあって、どうやってもタイムリミットがあった。

3か月耐えれれば御の字と言ったところだったのだから。

それが過ぎれば飢餓地獄と、内紛で滅びるしかなかったんだから。

 

だがつい2か月ほど前になると、どういう訳か今まで包囲して爆撃と砲撃を時折してきただけだったのに、大規模な、それこそこちらの数倍にもなる規模の兵力で一斉に攻撃を仕掛けて来たのだ。

当然大混乱になった。

 

とは言え俺達だって何もしなかったわけじゃない。

残存兵力はその時、10000程度は存在していたから必死に戦ったさ。

けど、単純な兵力だけじゃない、火力が違い過ぎた。

 

こっちは砲兵30門程度が精々、それも各門に30発づつ程度を備蓄していたに過ぎないし、

 

最盛期は各地に部隊を派遣してた我が陸軍も、今じゃ各部隊の解体と統合を繰り返してなんとか兵員数を満たす部隊を作ってはいるが、武器の充足率なんて全体の3割程度も戦闘力を有しているのは2個大隊と幾らかだけ、それも碌な訓練を行っていない士気も練度も最低以下の新兵ばかり。

食事は1日200mlの水に拳大のパンが1つ、後は極稀に肉が欠片程出されるだけ。

俺を含めてお偉いさん方も、骨と皮しか残っていないような身体で、地獄の亡者みたいだ。

今じゃ飢えと渇きと戦うことが一番の辛い事で、敵と戦って死ねる方がまだ名誉もあるから楽だ。

 

野戦病院や治療施設には軍民問わず怪我人がそこら中に転がっている。

碌な医療器具も医薬品も何時底を付いたのかすら覚えていない。

 

俺だって、この攻撃が始まる前までは40人程の部隊を率いる小隊指揮官だったのに、今じゃ上官達が軒並み最前線で戦死か、それとも敵の砲爆撃でバラバラに吹っ飛ぶかして、この2か月で連隊長にまでなっちまった。

しかも内実は中身が全く伴わない部隊の最高指揮官で、これじゃぁ懲罰人事のが良い。

こんな嬉しくもなんともない昇進はしたくなかった。

 

練度なんてものは存在しないし、ベテランの兵士はそれこそ両手で辛うじて数える程度。

武器も無けりゃ、弾も無い。

 

頭の上を守ってくれる戦闘機や敵に爆弾を落としてくれる爆撃機も居ない。

陸戦の要と言っていい砲兵だって敵機や敵砲兵から隠れているのがやっとな自走砲が2門あるだけで、それも敵機に執拗に狙われるしそもそも砲弾が無いから戦っていても支援砲撃だって望めない。

 

それでも可能な限り武器弾薬の生産ラインの尻を叩きまくって取り合えず小銃や機関銃の弾薬は撃ち合える程度の数を揃えたは良いが、そこで生産ラインは力尽きたと言ってよかった。

武器弾薬を作る為の資機材は爆撃で残骸の山になったし、そこで栄養失調で立っているのも覚束無い身体や霞む目に鞭を打って生産に従事していた妖精達も死んじまった。

指先程の補給が完全に無くなっちまったんだ。

 

「もう終わりだ……」

 

「頼む、このまま何も出来ないで死ぬのは嫌だ……、せめて戦って死なせてください……」

 

部下達も絶望ばかりで、希望など一つも無かった。

譫言のように戦って死なせてくれ、それが駄目なら頭を撃ってくれ、と。

 

これ以上の地獄なんて、他にあるものか。

いや、あって堪るか。

民間人達も、最早食料水を求めた暴動を起こす気力体力すら無く、ただただ死ぬのを待つばかり。

精々違うのは砲撃で死ぬのか、機銃掃射で死ぬのか、それとも飢えか渇き、怪我の治療が出来なくて死ぬか。

或いは敵に直接殺されるか、と言うどうやって死ぬか、ぐらいだろう。

 

助けなど到底期待は出来ない。

楽に死ねることだけが今は救いなんだからな。

 

 

すると、対空監視に当たっていた部下の一人が双眼鏡を覗いて、突然ぽろぽろと泣き始めた。

 

「おい、どうした……?」

 

ついに可笑しくなったのか。

これだけの状況だ、何時狂ってもおかしくは無い。

 

「た、たいちょう……、俺が、おかしくなったんですか……?」

 

「何、言ってんだ、早く報告するならしろ」

 

軌条に振る舞いながら部下に報告をするように促す。

すると余りにも信じられない報告をしてきた。

 

「こ、高度8000m付近に、the rising-sun flag……、日の丸が描かれた飛行機が……」

 

「馬鹿言うな、ここはオーストラリアで、日本は遥か彼方なんだぞ」

 

「でも……、でも、あれは、日の丸だ……」

 

対空監視に努める者達は、皆各国の航空機に描かれる国籍を頭の中に入れてある。

今はマニュアルにそれが書かれていて照らし合わせて確認する方法だが、もう十年ほど他国の航空機が見えただなんて報告は聞かなかったし、なによりも信じられない。

 

今報告をしているのはベテランの兵士で、日本軍の航空機を何度も見たことがある。

 

「貸せ、俺も見る……!」

 

それでも自分の目で見るまで信じたくなかった。

これで喜んで、それが幻覚だったらもう二度と俺は、立ち上がれない。

 

備え付けてある大きな双眼鏡を空に向けて、覗く。

少しだけ探すと、濃緑に濃紺が混じった見たことの無いがそれでも特徴的な迷彩と、識別をするための日の丸が書かれてた。

 

それを見た瞬間に、部下と同じように涙が溢れる。

余りにも大き過ぎる、十年以上も待ち望んだその希望は、死に掛けの身体に活力を与えるには十分過ぎた。

 

まだ俺達は、負けちゃいないんだ。

 

「発光信号!どれだけ弱くても良い、あの飛行機に俺達の存在を知らせろ!」

 

「は、はっ!」

 

地下から、どれだけ使っていないか分からないデカい探照灯を引っ張り出してなけなしの電力を回す。

幸いにも探照灯は使えるが、電力が全く足りなかった。

 

小さく明滅するだけで、とても文章を打てるようなもんじゃなかった。

 

「隊長、駄目です、電力が足りません!」

 

「ならありったけの電力を集めてこのおんぼろに回させろ!アレを逃したら、今度こそ俺達は終わりなんだぞ!」

 

あちこちから無理矢理電力を回させ、お偉いさんが居る辛うじて薄暗い電気が付いているだけの地下の電力も全て回す。

 

「文章じゃなくていいんだ、俺達が此処にいる事さえ伝わればいい!」

 

双眼鏡で覗くと、どうやら日本軍機はこちらに既に気付いているようだった。

俺達の頭上を旋回しているのを見るに、多分偵察機か何かが偶々俺達を見付けてくれたらしかった。

二度ほど、探照灯を明滅させるとどうやらこちらがまだ生きている事を悟ったらしい。

 

「ッ!日本軍機がバンクしています……!気づいてくれたんだ!」

 

「文章は打てるか!?」

 

「駄目です、探照灯がぶっ壊れました!」

 

「畜生、こんな時にぶっ壊れやがって!」

 

悪態を吐く部下だったが、探照灯には感謝しないといけない。

十年以上も放置されて埃を被って碌に手入れもされていなかったのに、ちゃんと光ってくれたんだから、こいつは俺達の命の恩人に違いない。

 

「日本軍機、続けてバンクしています」

 

「返信する手立ては無い……。あとは、救援が来てくれるのを祈るしかない……」

 

暫くすると日本軍機は頭上を飛び去って行った。

出来る事ならば、俺達の頭の上に何時までも飛んでいて欲しかった。

 

離れて行った時、恐らく俺だけでなく皆がとても心細く感じただろう。

俺だって視界が狭くなるように感じたのだから。

 

「地下に行くぞ。急いで上に報告するんだ。出来る限り、もし、もしも救援が送り込まれたときに備えて受け入れ態勢を整えておかなければ……」

 

「はっ!」

 

身体を引き摺るように地下に向かって、お偉方に諸々の報告を済ませ、信じない連中に見た全員を連れてきて証言させた。

 

これで一人が見た幻覚ではないことが証明されて、その場にいたお偉いさん達全員がぼろぼろと泣き崩れ、力を失ったように細くなった身体をへたり込ませた。

でもそうしている余裕は無い。

こうなったら何時来るかもわからないが、それでも救援の受け入れ態勢を整えなければならないのと、それまでの間持ち堪え続けなければならない。

 

次の日になると、日本軍機がまた頭の上に飛んで来た。

すると何かを落としていく。

 

「通信筒、のようなものを投下したらしいです」

 

「急いで回収させろ」

 

どうやら日本軍機は、かなりの腕の持ち主らしく俺達が維持している地域のど真ん中に綺麗に落としていった。

周囲をぐるりと何度か旋回する。

 

どうやら敵機の有無を確かめているらしい。

敵機が周囲にいないことが分かると敵地上部隊に何度も機銃掃射を掛けて、俺達の頭の上を、高度100mぐらいの高さで、今まで聞いたことが無いほどに頼もしく勇ましいエンジンの轟音を轟かせながらコックピットを開けながら敬礼し、そして機体をバンクさせて飛び去って行く。

 

その姿に、軍人も民間人も、政治家も関係無く大きく湧き立つ以外に無かった。

泣き崩れて倒れ支えられる者や張り詰めていたものが途切れたのか気を失ったりする奴も居るぐらい。

 

「通信筒、回収してきました」

 

通信筒を持って来た下士官は、号泣していた。

恐らく中身が無事かを確認する為に読んだか、或いは見たのだろう。

雰囲気としては悲観的なものでは無いから、恐らく希望的な事が書かれている。

 

「中身は、無事だな?」

 

「はい、問題ありません」

 

手紙を受け取って読むと、それこそ泣く以外にどうすれば良いのか分からない程に涙が溢れてくる。

 

しっかりとした英語で書かれている。

 

『我々は貴軍ら北東1000kmの位置にあり、今すぐの救援は困難ではある。しかし別手段を以て救援部隊の派遣を敢行する。救援部隊到着時には、可能であるならば最も安全かつ開けた土地に、一辺1km四方の目印を立てて貰いたい。勿論無理にとは言わない。救援部隊到着は通信筒投下より5日後。投入方法は空挺投下。第一陣2500名、続いて同規模の部隊を3つ投入予定』

『長い間、良く生き延び、戦い続けてくれた事に、全軍を代表して敬意を表する。救援部隊到着まで最大限の支援は行うからどうか持ち堪えて欲しい。武運を祈る』

『日本陸海軍大将 湯野勝則』

 

「おぉ、おぉっ…、おぉ”ぉ”……!」

 

手紙を握り締め、泣く。

それでも気持ちにすぐに整理を付けて、この手紙を政府の方へ持って行かせ、5日間と言う俺達にとっては余りにも長い時間稼ぎをするために部隊の指揮を始めた。

 

 

 

どうやら深海棲艦の連中は一連の事に察知したらしく、圧倒的な砲兵火力と航空兵力で徹底的に最前線を破壊した後に戦車に支援された歩兵が突っ込んできた。

それでも俺達に怖いものは無かった。

 

助けが必ず来ると分かっているのだから、退く理由なんて無い。

俺達が全滅してでも、あと4日耐えればいいのだから。

それでも戦うにあたって一番の課題は敵の戦車や砲兵をどう撃破するかだ。

 

俺達には対戦車火器と言えば搔き集めた油で作った火炎瓶ぐらいしかない。

対戦車砲や対戦車無反動砲なんて贅沢な物は最後に見たのはもう遥か昔だ。

それでも対戦車火器も重砲も無いのは、余りにも不利が過ぎる。

どうやって敵の戦車を食い止めればよいか、碌に栄養も無く渇きで回らない頭を必死に回す。

対戦車壕は掘ろうにも体力の問題で無理だし、精々使えるかどうか分からない対戦車地雷を通りそうなところにばら撒いておくことぐらいしか出来ない。

 

迫撃砲は砲弾も幾らかあるから戦車の周りに落として、歩兵と分断したところを側背から接近して火炎瓶や手榴弾を車内に放り込んでやろう。

正直、肉弾戦法以外に取れる戦術は無い。

それ以外に対戦車火器が無いからだ。

あとは榴弾砲を直撃させるか、至近弾で擱座か何かを狙うしか無いだろう。

 

それでも兵達の士気は今までに無いほどに最高潮だった。

なんせ来るはずがないと誰もが絶対に諦めていた助けが来ると言うのだから、士気が上がるのも当然だ。

でも身体は栄養失調と脱水症手前で言う事を聞いてくれない。

気合いと根性、助けが来ると言うか希望のみで戦っているようなものたま。

 

もどかしくて仕方が無い。

 

敵戦車をどうするか、前線を何度か食い破られながら考えていた頃、手紙に書いてあった支援が駆け付けた。

何よりも強力な航空支援だ。

 

250kgぐらいの爆弾を抱えた翼がW字の様に折れ曲がった攻撃機が急降下しながら爆弾を次々に落としていく。

直撃や至近弾を受けた戦車が跡形も無く吹き飛んだり、ひっくり返ったり横倒しになっていく光景には誰もが、掠れて力も無かったが声を上げてしまうほどに勇ましいものだ。

乾いて久しかった涙を流しながら、その様子を眺める。

 

戦車や装甲車に爆弾を落としていってはついでと言わんばかりに敵歩兵に対して機銃掃射を掛けていく。

多分、20mmクラスの機銃だろうから装甲車でも一溜りもない。

被弾した車両が煙を上げ、爆発炎上していく。

敵歩兵も逃げ惑いながら、遮蔽物に隠れる。

 

本来ならこれで俺達が突撃をして、敵歩兵を叩かねばならないのだろうがそんな体力なんて無い。

 

そして敵機が殆ど来襲しないのは本当に不思議だ。

これだけ好き勝手やられたら必ずどこかから敵機が守る為に現れる筈なのに、1機も出てこない。

考えられるのは通信妨害か、敵飛行場が使用不能になっているか。

何にせよ、助かると言うのならなんでもいい。

 

後ろにいる、民間人達が殺されずに済むと言うのなら、それでいいのだ。

 

 

 

 

 

5日後。

降下地点にある周りより10mほど高い高台に登って救援を待つ。

 

すると日の丸が描かれた単発機や双発機が現れて敵陣や敵対空陣地に爆弾を次々に投下していく。

爆発音が鳴り響き、弾薬か燃料に引火したのか派手な火柱が時折上がる。

 

それらが機銃掃射を仕掛けていると、紅い丸が翼に描かれた、濃緑と濃紺の4発機とそれを護衛する戦闘機が百数十機も飛んできた。

 

綺麗な、ガッチリとした編隊を組んでおり、その周りや中にいる護衛の戦闘機がしっかりと守っている。

あれでは迎撃をしたとしても中々手を出せないだろう。

あれだけ綺麗な編隊を組むと言うことは、それだけ練度が高いと言う事になる。

下手に手を出せば、返り討ちにあって痛い目を見るのは間違いない。

 

 

4発の重爆は、機体後部が開いているからどうやら爆撃機では無く輸送機らしい。

目印を付けた1km四方の場所に目掛けて編隊が飛び、輸送機の腹の中から次々と兵士が飛び降りてくる。

 

あれが、救援の部隊だろう。

空挺部隊はどこの国でも精鋭部隊だ。

あの空挺部隊も精鋭であるのは間違いない。

 

次々と着地し、落下傘を回収して集まる。

良く訓練されているのが分かる動きで、装備も良い。

ぼろぼろで痩せ細った俺達とは比べ物にならない。

 

次々と兵士が降下してきては部隊毎に集まり、統率の取れた動きで物資を回収し戦闘準備を整えていく。

隊長と思わしき人物が指示を飛ばしながら次の部隊が降りてくるのを降下地点の端で待つ。

次の部隊が降りてくると、同じようにして指示を出し、部隊を動かす。

 

最後に降りてきたのは、沢山の物資を入れた木箱に重砲や重火器、多分それの運用人員、それに腕に赤十字章を付けた軍医達だった。

 

重砲や車両に命令を出して行動させ始めると、軍医達や30人ほどの兵士を連れて俺のところにやってくる。

 

綺麗に並び、敬礼をする。

それに応えると隊長は言った。

 

「日本陸軍第1挺進連隊長、間島大佐であります。これより作戦行動に移ります」

 

「あ、ありがとう……。助けに来てくれて、本当にありがとう……!」

 

隊長は軍医に言って俺達を診させる。

その後、彼らは我々に食料水を配ってくれ、そして傷病者の治療を施してくれた。

 

 

 

 

 

我々が戦わねばならないのに、我々の為に彼らは戦い死んでいく。

決して忘れてはならない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

挺身隊は自分達の3日分の食料を除いてその殆どを配給してしまったと言う。

確かにこれは人道として立派な事であろう。

しかしそれは、本来彼らが次の部隊と補給物資を送り込むまでの間に戦う為のものだ。

部隊指揮を行い作戦指揮を執らねばならない事を考えれば、素直に頷くことは出来る判断ではない。

 

まぁ、現地での惨状を考えれば当然の判断であろう。

追認となるが指揮官に対し、食料と水に限っての物資配給命令を出しておけば後々何かあった場合に文句を言われるのは俺で済む。

 

今は会議室に一度集まり、各種報告を行っている。

 

「現在我々は連山4機と護衛の疾風12機を断続的に投入し、先発した2500名分に加えて現地住民、及び豪州軍用の物資を送り込んでいます。ですが、豪州軍が再戦力化されるには、治療を含めても4か月は掛かる見通しとなっており、その間我々だけで戦わねばなりません」

 

「補給状況に問題はあるか?」

 

「問題と言えば、単純に必要物資量が丸々2個師団分の物資が断続的に必要になっている事です。ですが輸送船団の数を増やし、1航艦も船団護衛に張り付くことで、ギリギリ保たせています」

 

「余裕は無いか」

 

「正直なところを申しますと、全くありません。今後の輸送船団は連山用の部品や燃料の輸送にリソースの大部分を取られることから備蓄に回せるほどの物資を運ぶこと自体も困難です。どうにかして輸送船団の内の輸送船1隻分ずつの物資は備蓄し続けておりますが、海上輸送航路が途切れれば備蓄のみだと6日間、切り詰めても10日と言ったところでしょう」

 

かなりギリギリだ。

やはり連山を連続して集中運用すると言うのは、負担が大きい。

 

「それと次の投入部隊の中に、軍医と看護師を数名、医薬品と栄養食を追加しても宜しいですか。現地の栄養状態や医療環境が余りにも酷いとのことで、先に現地入りしている軍医達に泣き付かれました」

 

「勿論だ。人命優先で構わん。必要なら本土か南方方面から引き抜いていい。軍医達を死なせるな」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

補給参謀の報告が終わると、次に作戦参謀が立ち上がって報告を始める。

 

「戦況報告を行います」

 

「頼む」

 

「現在我々は、イナミンカの市街地周囲10kmを保持しておりますが、戦力の関係上、一度戦線を全て4km後退させました。豪州軍も戦っておりますが、栄養状態と武器弾薬の関係から戦力としては期待しない方が良いでしょう」

「4方向に対しそれぞれ1500名を張り付け、500名を機動予備としております。対して敵軍の戦力は3個師団、歩兵だけで6万以上と見積もられ、歩兵師団ではありますが北海道で確認された新型戦車が幾らか存在するようで、火砲もかなりの数を揃えており早急に対抗火力の増強をしなければなりません」

 

「圧倒的戦力不足だな」

 

「はい。一辺6kmですが、敵戦力は歩兵師団を中心に、それを支援している砲兵と装甲部隊が確認されております。敵砲兵は155mm口径、敵戦車は新型M26で編成された部隊となっています。現場からは自走榴弾砲か、或いはパンター、ティーガーⅡの増援を要請されています」

 

「今はどちらも無理だ。パンターはまだしもティーガーⅡに1000kmも自走させるなぞ、結果は悲惨を通り越した有様になるぞ」

 

「承知しております。ですから我々は敵砲兵、敵戦車に対しては航空機による地上支援で対処します。陸用50番を流星か、或いは疾風に抱えさせれば、至近弾でも撃破は可能です」

 

「対する我が軍の戦力としては、現在最精鋭である第1挺身連隊と対戦車砲20門を空挺降下によって投入、戦闘状態にあります。豪軍も戦いに参加し一応戦力に数えておりますが、先程も仰られた通りに栄養失調と脱水症によって戦力にはなりません」

「戦況は圧倒的不利、航空支援によって辛うじて戦線維持をしておりますが、このままであれば戦線崩壊は時間の問題でしょう」

 

「敵の包囲戦力を考えれば一辺に付き1個連隊は欲しいところです。が、後陣の部隊はまだ投入されておりません。あと2日は現状のまま、航空支援の下で戦わねばなりません」

 

第1挺身連隊には、かなり無茶な戦いを強いている。

本来ならば師団や戦闘団規模で戦わねばならない相手であるのに、大した重火器を持たない歩兵主体の連隊で戦わせているのだ。

 

幾ら挺進隊が精鋭部隊とは言え、厳しいものがあるのは当たり前だ。

 

「航空支援はどれぐらいを維持している?」

 

「近接航空支援の為に連山と銀河を6機づつと護衛の疾風16機が常備待機し、支援しております。」

 

「可能な限り速やかに増援を送り込め。必要なら対地支援機を増やして構わん」

 

既に第1挺進連隊とは先ず一番に通信を確立しているから、連携もやり易い。

対地支援と増援があれば、勝てる戦いだ。

 

 

 

その後、次々と挺進連隊や軍医達、野戦重砲などが運び込まれた。

十分とは言い難いが、それでも持ち堪える事が出来る程度の戦力と物資は揃えられた。

 

補給物資の第一陣は不足する火力を補う為の野戦重砲が幾らかと、それらが十分な火力や能力を発揮出来るように砲弾薬、小火器や迫撃砲の弾薬、牽引車のケッテンクラート用の燃料、そして各挺進連隊が譲った分の食料水が送り込まれた。

 

豪州軍や政府、民間人向けの食料水、医薬品、発電の為の燃料が補給物資の第二陣となった。

 

これ以降は消耗品である各種砲弾薬や燃料、食糧水が送り込まれ続ける事になる。

 

 

 

3週間後、イナミンカに救援部隊本隊が到着、解囲作戦が開始された。

 

 

 

 

 






艦艇燃費表

大和型
搭載燃料6300t
16ノット 1万海里以上
1t当たり約1.6海里

19ノット 7000海里
1t当たり約1.1海里

27ノット 3000海里
1t当たり約0.48海里


金剛型 
搭載燃料6403t
18ノット1万1800海里
1t当たり約1.8海里

扶桑型
搭載燃料5465t
16ノット 1万1800海里
1t当たり約2.2海里

伊勢型
搭載燃料 5113t
16ノット 1万1000海里
1t当たり約2.15海里


長門型
搭載燃料5780t
16ノット 8650海里
1t当たり約1.5海里




重巡

古鷹型
搭載燃料1858t
14ノット 7900海里
1t当たり約4.25海里

青葉型
搭載燃料2024t
14ノット 8223海里
1t当たり約4.06海里

妙高型
搭載燃料2214t
14ノット 7463海里
1t当たり約3.37海里

高雄型
搭載燃料2318t
14ノット 約7512海里
1t当たり約3.24海里

最上型
搭載燃料2400t
14ノット 8000海里
1t当たり約3.33海里

利根型
搭載燃料2690t
18ノット 8000海里
1t当たり約2.97海里
利根型も18ノットのデーターしか見つからなかった
最上型と利根型は、概算値で実測地はまた変わってきます

軽巡

多摩型と長良型
概算値 搭載燃料1260t
14ノット 5000海里
1t当たり約3.97海里

川内型
概算値 搭載燃料1050t
14ノット 5000海里
1t当たり約4.76海里

夕張
概算値 搭載燃料918t
14ノット 5000海里
1t当たり約5.45海里

阿賀野型(概算値 搭載燃料1420t)
18ノット 6000海里
1t当たり約4.23海里

大淀
搭載燃料2445t
18ノット 8700海里
1t当たり約3.56海里


翔鶴型
搭載燃料約5000t
18ノット 9700海里
1t当たり1.94海里

陽炎型
搭載燃料622t
18ノット 5000海里
ただし実測地で6000海里近く出たと言う情報もある。
1t当たり8.03海里となり、実測地ならば約9.65海里

秋月型
概算値 搭載燃料1080t
18ノット 8000海里
1t当たり約7.4海里

海面の状態、個艦差、燃料の質、艦の状態で変化するものである。
データは統一された計測速度では無いことに留意すべし。






一応、時間のある中で調べられる限りの燃費を調べて記しておきます。
あくまでも参考程度であるので、これらが全く正しいと言う訳ではありません。

艦の排水量から考えると、多分大和の方が駆逐艦よりも燃費が良い?と言う結果になるような気がします。





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