暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

79 / 85
第78話

 

 

 

 

 

「艦隊、出撃準備完了しました」

 

「艦隊抜錨、これよりタ号作戦を開始する」

 

天龍率いる水雷戦隊が前路哨戒を行う為に環礁を最初に抜ける。

それに続いてバベルダオブ島、コロール島間にあるコロール水道とマカラカル島、ウルクターブル島間のマカラカル水道を抜けていく。

 

ネルソンを先頭に、大和、武蔵、金剛、比叡からなる戦隊が環礁から出て天龍達と合流。

その次に飛龍、蒼龍、瑞鶴、加賀が龍田達水雷戦隊と共に出る。

 

艦隊が全て合流したならば、陣形を整え進路をビスマルク海へと向けた。

 

 

 

 

 

ビスマルク海に入る前に水雷戦隊に対して一度給油を挟み突入する。

ビスマルク海に面するマヌス島沖100kmに達すると艦隊速力を25ノットに増速した。

先程給油中に敵潜が発したと思われる信号を確認したが、距離がかなり遠かった。

ただ発見された場合を想定し、速力を25ノットにしたのだ。

暫くすると、右前方にカルカル島が見え、その少し奥にバガバック島が見えた。

 

 

 

「もう少しで、ビシャズ海峡だ」

 

「敵に見つかっているなら、この辺りで迎撃されてもおかしくは無い、か」

 

「どうする?速力を上げるか?」

 

「……いや、このままで良い。フィンシュハーフェンを砲撃するから、速度を上げ過ぎると困る」

 

「了解した」

 

ロング島を過ぎると、艦隊はビシャズ海峡に差し掛かった。

左舷にウンボイ島を捉える。

 

「艦隊右舷砲戦用意。速力2ノットに落とせ。初弾から10発目までは三式弾、それ以降は一式徹甲弾。距離150、所定の諸元に各艦合わせ」

 

ネルソンの特徴的な艦前部に全て置かれた41cm3連装砲3基が右舷を向く。

16inc砲から砲弾供給の関係で41cm3連装に換装されている。

 

艦後方に主砲を指向出来ないなどの、主砲配置に難はあるがその火力と防御力はトップクラスと言える。

 

「空母群、水雷戦隊は周辺警戒を厳にせよ」

 

迎撃を受けていないから、多分敵に察知はされていない筈。

迎撃されるならば、フィンシュハーフェンの砲撃を開始したタイミングか、或いは終わったタイミングになる。

 

ラエに対する砲撃までは敵に攻撃されずに済む筈だが、その後はかなり厳しいかもしれない。

 

「時間です」

 

「艦隊、砲撃開始」

 

その一声で、戦艦5隻の主砲が一斉に火を噴いた。

目を逸らしていたのにも関わらず、艦橋の中は真昼間であるかのように明るく照らされる。

砲撃の衝撃もかなりのもので、椅子に座る身体が真横に揺らされた。

 

計43門もの主砲から放たれた三式弾は、飛行場だけでなく、その周辺にある飛行場に続く道や飛行場を守る陣地、燃料タンク、そしてジャングルを3000度と言う地獄に作り替えた。

 

たった5秒程度の時間だが、それでも3000度と言うものは辺り一帯を火の海に変え、あらゆるものを燃やすには十分な時間だった。

 

飛行場の周りを囲むジャングルは、瞬く間に火の手が上がり次第に火災の勢いが激しくなっていく。

ランゲマック湾にある港湾施設やフィンシュハーフェン旧市街地、湾に流れ込む川沿いの彼方此方に三式弾は次々と弾着し、被害を与えていく。

 

実を言うと、3回程の斉射で飛行場自体は全くの使い物にならない損害となっている事が知らされていた。

そこで目標を港湾施設などに変えたのである。

これらを叩けば、飛行場や港湾施設そのものを復旧する為の資機材を陸揚げする事が容易では無くなるから、結果的に復旧を遅らせる事が出来る。

 

三式弾の次は、一式徹甲弾が撃ち込まれる。

一式徹甲弾は着発信管だから、地面に突き刺されば周りを抉りながら炸裂し直径10m、深さ5mはある巨大な穴を穿つのだ。

 

フィンシュハーフェンや飛行場を含む辺り一帯は、火の海になりもはや復旧には少なくとも数ヶ月は必要であろうことは明らかだ。

ジャングルで起きた火災は周りに延焼しながら燃え広がっていき、火の手は大きくなるばかりだ。

 

あれでは雨が降るまで燃え広がり続けるに違いない。

 

 

 

 

 

各艦20発づつの射撃が終わり、速力を上げる。

ラエまではフィンシュハーフェンから120kmほどであるから、25ノットで2時間半程だ。

 

各部の点検に腹ごしらえの時間ぐらいはある。

給料員が作ってくれた握り飯に沢庵、パラオで補給を受けたばかりだから食糧庫に余裕がある為、牛肉と牛蒡、人参の炒め物が出される。

それぞれが一斗缶ほどの大きさの容器に入れられ、各班の代表が走って受け取りに行く。

 

艦橋にも給料長が態々持って来てくれた合戦飯が。

 

「うん、美味い」

 

「ありがとうございます」

 

各艦毎に出される食事のレパートリーは特色がある。

例えばネルソン達イギリス組の艦では牛肉があればローストビーフやフィッシュアンドチップスと言った英国由来の食べ物が週に1度程度出される。

ラム酒もイギリス組には提供されており、毎日朝に希望する乗組員には水で割られたものが1杯支給される。

伝統として誕生日の乗組員には、飲めなくなるまで全員からラム酒を分けてもらい、酔いつぶれた後は翌日までハンモックで寝続けても許されると言うものがある。

 

ドイツ組だと、ソーセージやザワークラウト、アイスバインなどが出されるし、黒パンなども定番だろう。

イタリア組はパスタやピザ、ワインが定期的に出され、フランス組だとガレットやオニオンスープ、鴨肉が出る。

 

元の国ごとに特色があり、そしてそれぞれの給料長は各国出身の妖精達だ。

ではどうして彼らの艦ではこれらが提供されるのかと言うと、単純に欧州組の妖精や艦娘達のストレス発散と言う目的があるからだ。

 

長い艦内生活と言うのは、驚くほどにストレスが溜まるしそうなれば戦闘どころか通常業務にすら支障が出る。

特に彼らは国を捨ててまで生きながらえ、そして戦っていると言う背景もある。

 

放っておけばどんな影響があるか分からないのだ。

だから海軍全体ではなく、そこまで多い量ではない事から供給されている。

 

因みに他の艦でも酒保に行けば酒類だけならば数量限定ではあるが、手に入れられる事がある。

酒保に関してだけはどの艦も階級関係無く早い者勝ちなので、飲みたいのならば全力で走らねばならない。

間宮お手製の羊羹を始めとした菓子類が入ったとなったらもう、そりゃもう何時もの統制された見事なまでの動きは何処に行ったのかと言わんばかりの状態で艦内酒保に全員が走っていく。

いや、あれはあれで寧ろ揃っているのか?

 

俺の場合は、間宮が気を使って本土に戻ってきている時に羊羹などを差し入れてくれる。

流石に只では貰えないのでお金は渡している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今のところ、各部隊から敵の迎撃があるような報告は無い。

艦隊は敵潜や敵機を探知していないし、敵艦隊の迎撃を受ける公算が高いダンカストルー諸島近辺に派遣した潜水艦隊からも報告はまだ無い。

 

ラエからダンカストルー諸島までは500kmだから、燃料を考えずに25ノットで航行したとしても11時間は掛かる。

途中燃料補給に2時間を掛けたとしても、13時間は確実に掛かる。

間違い無く艦隊を派遣するだけの時間はある。

母艦航空隊と、ポートモレスビーからの航空攻撃は5時間もあれば開始される。

 

今はまだ真夜中だが、航空攻撃が始まる頃には太陽が昇っている頃合いになる。

闇夜に紛れて敵機を振り切る事は出来ないだろう。

 

「対艦、対空電探に何か反応はあるか?」

 

「いえ、今のところは島影を映すだけです」

 

「島影を背にして電探に映りにくくしているかもしれん。警戒は怠るな」

 

「Yes.sir」

 

電探を担当する彼は、元は欧州脱出組で日本語など全く喋る事が出来なかったが、今ではこの通りである。

 

ハーキュリーズ湾で一度給油を行う。

ホルニコート湾、ダイク・アクランド湾、コーリングウッド湾と越えて行けばダンカストルー諸島はもう目の前だ。

 

迎撃を受けた場合、戦闘行動を取らねばならないがそうなると補給しなければ燃料不足で立ち往生しかねない。

対艦隊戦闘前、最後の補給になる。

 

やはり水雷戦隊の燃料消費はかなり多い。

既に水雷戦隊は各艦1回分の燃料を消費し補給しているが、給油艦に載せてきた燃料は、ルイジアード諸島を抜けて珊瑚海に出たら空っぽになるだろう。

戦艦や空母も、高速力を維持しているから燃料消費が激しい。

 

だが今のところは順調だ。

ビシャズ海峡とソロモン海にある潜水艦隊からも敵艦隊発見の報告は無い。

 

「対空電探に感あり、約200機が我が艦隊に向かって来ます。距離120〜160km、高度は……3000〜4500です。陸地が近い為か、レーダー波が反射して精度が出ません、申し訳ありません」

 

「いや、それは仕方がない。良く探知したな」

 

「ありがとうございます」

 

「これをどう見る?」

 

「まぁ、まず間違い無く敵機だろうな」

 

ポートモレスビーからのものだろう。

日の出から1時間ほどだから、多分日の出前に出撃して来たと思われるが、距離が近い。

オーエンスタンリー山脈に上手く隠れて来たのだろう。

山の向こう側では、幾ら優秀な電探があっても探知は出来ない。

 

早期警戒機は隠密性を優先して上げていないから、目視による監視も無理だからこれに関しては仕方が無い。

 

「直掩機は32機だな?」

 

「あぁ、各母艦から8機づつを出している」

 

「すぐに迎撃に向かわせろ。艦隊、対空戦闘用意。輪形陣に組み替え。迎撃機を各母艦から12機づつ出すように伝えろ。他戦闘機は第2波、第3波に備えるように」

 

「了解した」

 

ネルソンに伝え、艦隊に伝えられると動き出す。

艦隊運動は、即席艦隊とは言え中々の物で10分で空母を中心にした輪形陣が組み上がった。

陣形を組み替えるその間にも迎撃の陣風が空へカタパルトで射出されて行った。

 

豪州作戦の終わり頃になって漸く量産体制が整った陣風だ。

本来ならもう半年は配備が早く始まり母艦航空隊は今頃全て陣風に機種転換がされている予定だったが、量産機型にするに当たり、不具合が生じたのだ。

量産性向上の為に簡略化をした結果、機体の強度が足りずに模擬空戦をした際に量産機全20機全てに主翼や胴体に歪みが発生したのだ。

どうやってもこれは直すことが出来ず、簡略化をする前の設計に戻して量産と言う形に落ち着いたのだ。

 

結果、量産が始まったのが4ヶ月前で、それでも3つの工場が24時間体制で量産をしてくれたお陰で1ヶ月前までに空母4隻分の陣風をなんとか揃える事が出来た。

 

「管制機より入電、直掩機隊敵機群と交戦開始。艦隊上空まで約20分」

 

管制機の流星が報告を入れてくる。

この型式の流星は爆弾倉を持たない代わりに、早期警戒管制機としての役割を果たす為に必要な装備を持つ。

 

特殊な長距離暗号無線機やより長距離を索敵出来る大型電探だ。

配備機数は艦隊に40機とそこまで多くはないが、重要な役割を担い、戦術や戦略上の要と言える。

 

 

「三式弾の残弾数は?」

 

「弾火薬庫と揚弾筒内を合わせて40発の残りがあります」

 

「よし、それだけあるなら十分だな。主砲対空射撃、三式弾用意」

 

「対地射撃分が少なくなるかもしれんぞ?」

 

「撃ったとしてもこの距離なら1波に付き2斉射が精々だ、無くなりはしない。モレスビーには20発ぐらい残しておけばなんとかなる」

 

対艦戦闘では三式弾は使わない。

一式徹甲弾さえあれば良い。

 

各艦主砲塔1基につき、120発前後の砲弾があるが今回は一式徹甲弾、三式弾半々で搭載している。

三式弾も60発はあるから、ポートモレスビー用に20発残すとしても対空戦闘に各砲塔20発は使える。

戦艦5隻合わせて340発、足柄と古鷹も合わせれば500発の砲撃が可能となる。

これだけあれば、一式徹甲弾と合わせても後々に連山による爆撃も控えている事を考えれば十分だろう。

兎に角一時的にポートモレスビーが使えなくなれば良い。

 

あとは周辺の飛行場を叩きつつ爆撃で継続的に能力を奪えばいいのだ。

豪州には南方方面の連山を全て進出させている。

 

理由は距離が近いからだ。

豪州からならば、ニューギニア方面へは最大でも1000km程度だ。

この距離なら連山は最大爆装量でも余裕で往復が出来る。

沿岸部の飛行場から護衛の戦闘機も付けられる。

 

 

 

 

「電探に感有り。約200機が南西方向より進行中。距離は、100km〜150km、高度3500〜4500」

 

「各空母は上げられるだけ陣風を迎撃に上げろ。第1波を迎撃した直掩隊と迎撃機は艦隊防空圏に入ったら離脱、更なる敵機に備えろ」

 

敵第1波攻撃隊探知から程無くして第2波を電探が捉えた。

すぐさま格納庫に残る陣風全てが迎撃に向かう。

 

機数は約100機ほどだ、これで艦隊の陣風は全て迎撃に出払った事になる。

格納庫には流星があるだけだ。

 

 

 

「敵機更に接近。第1郡距離約50km約100機。第2郡距離約80km約100機」

 

「艦隊、対空戦闘用意。ここでやられたら逃げる事は出来んぞ、各艦被弾損傷は命取りと心得よ」

 

「了解」

 

今こそ防空専用に改造された3隻の真価が問われるだろう。

あの3隻は戦艦を凌ぐ対空火力を発揮出来る。

 

全艦を艦隊右舷側に配置し、その火力を発揮出来るようにしてある。

左舷に抜けた敵機は攻撃を終えているし、そもそもこの状況で敵編隊が迂回して両舷から挟んで同時攻撃と言うのは考え辛い。

 

仮に迂回したとしても戦艦がしっかり守っているし、防空巡洋艦ではないとは言え足柄と古鷹も居る。

水雷戦隊と合わされば迂回兵力ぐらいならばしっかりと防いでくれるだろう。

 

「敵機70機が艦隊防空圏に突入、迎撃隊は未だ戦闘継続中」

 

「敵第1郡迎撃隊に退避命令。同士討ちはしたくない」

 

命令を出すと迎撃隊の陣風が退避する様子が電探の画面上でよく分かる。

予め距離200に照準を合わせていた戦艦5隻の主砲が一斉に火を噴き、三式弾を敵編隊に対して叩き込む。

 

「三式弾による撃墜、約9機。炸裂が手前過ぎたようです」

 

「敵編隊崩れます!高度4000に降爆機、高度500に雷撃機!ほぼ同時に突っ込んでくる!」

 

「編隊を崩されても突入のタイミングは変わらずか。連中、中々練度が高いぞ」

 

ネルソンが腕を組んだまま言う。

確かに今までの搔き集めただけの兵力と言う感じではない。

 

大規模な編隊は崩れているが、それでも小隊単位での編隊はしっかり組んでこちらへ突っ込んでくる。

 

「三式弾撃ち方待て。今撃っても無駄弾だ。対空砲、機銃で応戦」

 

距離15000を切ったタイミングで、各艦の10cm連装高角砲が次々と火を噴き始めた。

敵編隊に飛翔する砲弾は一瞬で空を黒煙で埋め尽くした。

 

鈴谷、摩耶、能代の3隻を見てみると対空砲火は他と比べて凄まじい。

彼女達が撃ち上げる対空砲火だけで空一面が真っ黒に染まっている。

 

「炸裂煙で敵機の視認が……、あっ、敵機2機が火を噴いて墜ちていきます!」

 

見張り員が双眼鏡を覗いて敵機の報告をしようとしているがどうやら炸裂煙で敵機が隠れたりしてよく分からないらしい。

 

「しっかり目を開いて追え!1機でも見逃して突入されれば命取りになる!」

 

「敵機高度100m以下で急速接近!距離5000!目標本艦の模様!」

 

「機銃応戦!今すぐに叩き落せ!」

 

ネルソンが声を張り上げて対空戦闘の指揮を執る。

接近して来た雷撃機十数機は一斉に放たれた多数の機銃弾に絡めとられて海面に叩き付けられた。

 

「敵降爆接近!降下体勢に入った!目標は本艦!」

 

「敵降爆戦闘機急降下開始!距離3500!」

 

「機銃は降爆に対応!落とさなくても良い、進路と登弾を妨害しろ!」

 

「信管の調定を間違えるなよ!」

 

「敵機距離500!」

 

「敵機投弾!コース外れている!」

 

「進路そのまま!」

 

見張り員の報告通り、投下された爆弾はネルソンの周囲に大きな水柱を立てるだけで終わった。

 

「ッ!1発直撃進路!」

 

「衝撃に備え!」

 

ズドン!!と言う音と衝撃がネルソンを包む。

 

「被害確認とダメコン急げ!」

 

「命中は艦中央、救命ボート付近!火災発生、鎮火の見込み有り!」

 

すぐに報告が上がってくる。

損害は大したことは無い。

精々救命ボートや短艇が木っ端微塵になったぐらいだ。

 

「死傷者は?」

 

「破片や爆炎を受けて負傷者が十数名ほど発生しましたが、死者はありません。機銃3基が大破、使用不可能です」

 

「それならいい」

 

見張り員が被害を被ったようだが、幸いにも死者は無い。

 

これも防空巡洋艦に改装された3隻のお陰だろう。

あの3隻が殆どの敵機を撃墜するか、攻撃を断念させているからこれぐらいで済んでいる。

 

敵第2群も同じように攻撃らしい攻撃をすることは出来なかった。

投弾や投雷自体は出来たが対空砲火の影響で狙いがズレて回避せずとも良かったのだ。

 

「敵魚雷艦首前方抜けた!」

 

「周辺の艦に通報、流れ弾に当たるなよ!」

 

第1波を防ぐと第2波が続けて攻撃を仕掛けてくる。

 

それも損害無しで切り抜けると、敵機の攻撃は止む。

恐らく、再攻撃はあってももう一度ぐらいだろう。

 

「ポートモレスビーの規模からしても、攻撃の規模が小さ過ぎやしないか?」

 

「恐らく、重爆などは出してないんだろう。対艦攻撃に4発重爆を出しても効果は薄いが損害は大きいだけだ」

 

ネルソンが攻撃の規模が小さいと言うから予想を話すと頷く。

 

「問題はこの攻撃を見送った戦力がどうしているか、だな。そのまま飛行場に居てくれるのなら砲撃で纏めて粉砕出来るが、撤退されたら200機近い重爆が全く無傷のままと言う事になる」

 

「こちらの意図に気が付いていなければ、そのままポートモレスビーに居るだろうが……」

 

「フィンシュハーフェンとラエがあれだけの砲撃を受けたんだ、こちらの作戦行動の意図はとっくに察しているだろうさ」

 

「今からでも攻撃隊を出すか?」

 

「流星に武装を施して陣風に補給を行うとなったら我々はとっくにダンカストルー諸島だ。敵艦隊が居る可能性もあるから止めておこう」

 

「了解した」

 

「偵察機から報告は?」

 

「各機から特にこれと言った報告はありません。敵艦隊の発見報告も同様に無しです」

 

この時点で敵艦隊が無いと言う事なら、敵艦隊は待ち構えていないと言う事になる。

 

 

 

 

「敵艦隊は、温存策を取ったか?」

 

「どうだろうな……。豪州沖での海戦で大打撃を与えたが、連中の戦力だったらそれこそとっくに回復していてもおかしくは無さそうだが……」

 

「乗組員が足りていないとか、練度不足か?」

 

「有り得るな。それか、珊瑚海で迎撃の網を張っているかだがそうだったら索敵機が見付けているだろう」

 

「潜水艦で囲んでくるつもりなら、1隻も水上艦艇を見付けられていないのにも納得出来るな」

 

「まぁ、無いものに対策は出来ん。予定通りポートモレスビーを叩く。目的を果たしたらさっさと逃げてしまえばいい」

 

敵艦隊の有無をネルソンと議論するが、そもそも偵察機が見付けられていないのだからどうしようもない。

潜水艦隊からも報告は無いし、我々の艦隊の規模から考えても迎撃しようとするならば相応の戦力が必要だから見つけられないと言う事自体が不可能だ。

 

ならば敵艦隊は居ないと判断すべきだろう。 

 

あとは敵潜水艦だが、可能性としてはポートモレスビー周辺で網を張っている可能性が一番高い。

 

ポートモレスビーを砲撃する時刻は既に太陽が昇っている時間帯だから、潜水艦の行動も低調なはずだ。

と言うより太陽がある内に潜水艦で攻撃を仕掛けるなど、簡単に発見されて逆に攻撃を受けて撃沈されてしまう。

 

或いは、単純に対応出来ていない、だろうな。

潜水艦と言えども出港までに時間は掛かるし攻撃可能位置などに移動しなければならないからその分の時間も掛かる。

速力の遅い潜水艦では攻撃が出来なくても仕方は無い。

 

潜水艦に攻撃される可能性はポートモレスビー攻撃が一秒遅れるごとに高くなる。

であれば可能な限り早くやらねばならない。

 

「艦隊速力を上げた場合、離脱分の燃料を考えたら何ノットを発揮出来る?」

 

「各艦の燃料状況を問い合わせないと何とも言えませんね」

 

「すぐに問い合わせてくれるか」

 

「了解しました」

 

「どうした、提督」

 

「いや、敵潜の事を考えるなら可能な限り早く砲撃を終えてしまいたい。砲撃中はどうしても低速になるから攻撃され易い」

 

「なるほど。だが駆逐艦達の燃料も考えれば、このままの速度を維持するしかないだろうな」

 

ネルソンの言った通りであった。

やはり速度を上げてしまうと、軽巡、駆逐艦の残燃料に不安が出てきてしまうとのことだ。

 

砲撃中は対空、対潜警戒もしなければならないから速力を揚げる余裕は無いとのことだ。

そうならば仕方が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけを話すならば、ポートモレスビー砲撃は大成功となった。

どうやら敵はフィンシュハーフェン砲撃が行われたのと同時に水上艦艇だけでなく潜水艦なども軒並み退避させたらしい。

豪州に展開する索敵機が発見したらしいが通信機の故障で報告が出来なかったようだ。

珊瑚海を通ってニューカレドニア方面に抜けて行ったから、ダンカストルー諸島やルイジアード諸島に索敵を集中させていた我々は発見出来なかったようだ。

 

ともあれ作戦は大成功を収め、後々の事は連山による高高度爆撃に委ねられることとなった。

ポートモレスビー周辺の飛行場で主要なものは艦砲射撃で叩いたし、小さな飛行場も連山による爆撃で主要飛行場と共に継続的に叩かれ続けることになるのは間違いないだろう。

 

これで、ケアンズに対する海上輸送航路だけでなくパラオの安全もある程度の安全は確保されたことだし、ニューギニア奪還作戦に集中することが出来るのは幸いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。