暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

8 / 85
今回は少しばかり短いかも……



第6話

第1潜水艦隊の伊401から報告の暗号文が届いた。

 

『リンガ泊地ニ敵艦隊存在セズ。輸送船団ノ脅威ハ無シト思ワレル。0937』

 

それまで俺は艦橋要員である参謀長、艦長や副艦長、通信長達と飛龍とで交代で仮眠を取っていた。

その時は俺が艦橋に居て、飛龍、参謀長、副艦長と通信長が仮眠をとっていた。

椅子に腰掛けて遅めの朝食を艦長達と共に食べて一息ついていた時だった。

 

報告によると、リンガ泊地には敵艦隊が居ないらしい。

続けて伊400から届いた暗号文には敵艦隊はリンガ泊地に一時は300隻を超える大艦隊が集結していたそうだがどうやらマラッカ海峡を渡ってインド洋に向かったらしい。

 

続けて伊168から送られて来た暗号文にはこう書かれていた。

 

『我伊168。パレンバンノ偵察ヲ決行。周辺海域ニハヌ級2ヲ含ム小規模艦隊ノミ。ソレ以上ノ敵艦隊ハ発見出来ズ』

 

どうやら敵さんは本当に最低限、それも今の我々の艦隊でも十分対処出来る、小規模な艦隊だけを残してインド洋に向かったらしい。

 

「山田参謀長、これをどう見る?」

 

「そうですね、恐らくこの報告の通りでほぼ間違いないかと思われます。もしインド洋に出ていたのなら出航時刻にもよりますが一番最初に出向した敵艦は既にコロンボ軍港のあるスリランカ近海、もしくはスリランカ以西に到達していてもおかしくはありません」

 

「となると、今この時が最大の好機と言う訳だな」

 

「そうなります」

 

敵艦隊が最短距離で引き返してくるにはマラッカ海峡を通過しなければならない。だがマラッカ海峡と言うものは水深が浅く幅が狭い。記憶が正しければ20m前後しか水深は存在していない。場所によっては船舶が航行する海峡だとは思えないほどに浅い水深の場所もある。

 

必然的に通れる艦船の大きさは制限されていくわけだが……その辺の話はまた後日にしよう。

 

報告にあった通りの規模の艦隊ならば一番最後尾の艦がマラッカ海峡を通過し終わってからでないとこっちに戻ってくる事は不可能だと思われる。更に言ってしまえばあの海峡は海流のせいか海底の砂が浚われて流され、水深が常に変化し続けるという特性もありマラッカ海峡内の下手な場所で船を回頭させれば深海棲艦と言えども座礁は避けられまい。

 

さて、そうなると今ここで決断を下さなければ。

まぁもう答えは決まっている。ここで渋っていては好機を逃して大損になる。

 

「よし、報告を信じよう。念の為に偵察機を各方位に放って周辺警戒を怠らずに」

 

「パレンバン近海の敵艦隊はどうしますか?」

 

「出来れば戦闘は避けたいが……敵艦隊の位置によっては輸送船団の安全を考えて撃破せねばなるまい。伊168に敵艦隊を追尾するよう暗号文を打っておいてくれ」

 

「了解しました」

 

「……これはかなりの好機だと捉えるべきだ。通信長、本土に追加で輸送船団を準備させて大至急派遣は可能か打電してくれ。大至急返答が欲しい、と言う文も添えてな。可能ならば動かせる艦数隻と向かわせるように」

 

「了解しました。暗号文でよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、構わん」

 

「了解しました。それでは打電します」

 

「さて、それじゃ艦隊の針路をパレンバンに向けろ」

 

「了解」

 

俺の号令と共に全艦に向けて針路をパレンバンに向けるよう打電された。

すると南西諸島に向けて進んでいた艦隊は、先頭を進んでいた雪風が左に舵を切った。

それに続いて陣形を組んだ艦隊は舵を切る。

 

艦隊は暫くするとバシー海峡を通過。偵察機を飛ばしているがどこにも敵艦隊は発見されないし、潜水艦もいない。

 

 

 

 

更に艦隊はパレンバンに向けて進んでいく。

既にリアウ諸島を通過し、パレンバンは目と鼻の先だ。

 

すると偵察機から報告が入った。

 

『我敵艦隊発見ス。ヌ級2、随伴艦5。位置パレンバンヨリ北東に70海里。パレンバンカラ70海里ノ距離ヲ保チ遊弋中。1542』

 

恐らく伊168が発見した艦隊で間違い無い。

報告に遭った通りの距離を保って遊弋しているのならば撃破しなければ輸送船団をパレンバンへ送るのは難しい。

 

石油などの積み込み作業中に空襲でも受けたら大惨事になる。

 

「攻撃隊発艦準備を始めてくれ。敵艦隊を叩く」

 

「了解しました。兵力はどうしますか?」

 

「直掩戦闘機を飛龍と蒼龍で1個中隊ずつ残してそれ以外はすべて向かわせる」

 

「了解しました」

 

艦隊には24機の烈風を残してそれ以外の烈風は原田大佐の指揮の下、出撃の準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

攻撃隊発艦準備始め、の命令が下されると格納庫内は大騒ぎになり始めた。

 

「流星の兵装は8機が魚雷、8機が爆弾だ!急げ!」

 

「爆弾は50番(500キログラム爆弾)だ!間違っても25番(250キログラム爆弾)を持ってくるんじゃねぇぞ!」

 

「了解!

 

整備班長の怒号が響き、弾薬庫から8本の航空魚雷と8発の対艦用爆弾が運び出されて大急ぎで流星の機体下に懸架されていく。その隣では烈風に機銃弾と燃料を満載し、昇降機に載せられて飛行甲板に上がっていく。

 

それらが終わり、飛行甲板上には烈風25機、流星16機が所狭しと並んでいる。

蒼龍を見てみると24機の烈風、16機の流星が同じように並べられている。

 

2隻合わせて81機の全力攻撃である。

 

一斉にエンジンが始動し始め、艦橋の中に居ても聞こえてくるほどの大音量が響く。

その後、風上、つまりは風が吹いてくる方向に向かって艦首を一斉に艦隊は向ける。

 

すると合成風力が作り出され飛行甲板には強風が雪崩れ込み轟々と大きな音を立てる。

 

 

 

 

 

 

「提督、発艦準備完了しました」

 

「搭乗員達は?」

 

「既に作戦概要の説明も終わり愛機に乗り込んで発艦の合図を待っております」

 

「よし、それじゃぁ敵艦隊を叩こう。攻撃隊発艦始め」

 

「了解しました。攻撃隊発艦始め!繰り返す!攻撃隊発艦始め!」

 

艦長がそう大声で言うと、発艦誘導員が大きく旗を振った。

次の瞬間、一番先頭に駐機していた原田大佐の乗り込む烈風が動き出し、速度を上げて飛行甲板を駆ける。

 

「総員!帽振れ!!」

 

その号令が掛かると同時に機銃座や退避した整備員達が一斉に帽子を振るった。

本来ならば3回頭上で回すのだが興奮している彼らは大声を上げ待避所から身を乗り出してブンブンと何度も何度も振り回している。

まぁそれも仕方が無い。空母から艦載機が敵艦隊に向かって飛び立つのはもう何時以来だろうかと言うぐらい昔の事だ。

 

偵察機や直掩戦闘機が飛び立った時も帽振れは行われたがここまででは無かった。

俺や艦橋に居た妖精達も全員で帽振れを行い、飛龍は敬礼をしている。

 

恐らく帰ってくる時には全員が返ってくる事は無いだろう。敵戦闘機の迎撃を受けたり敵艦の対空砲火によって撃墜される事もある。

それを分かっていて、敵に向かっていく彼らに対して武運長久を祈るのだ。

 

 

烈風が飛行甲板から離れる時、一瞬海面に向かって機体が沈み込む。恐らく少しばかり滑走距離が足りなかったのだろう。零戦に比べて烈風は機体重量も大きさも段違いだ、仕方が無い。

しかし直ぐに持ち直し大きなエンジン音を響かせながら大空に向かっていった。

 

それに続いて2番機、3番機とどんどん飛行甲板から飛び立っていく。

 

 

戦闘機隊全機が発艦を終えると次は流星だ。

先ずは比較的軽い爆弾を装備している流星が飛び立っていく。

 

爆弾は500キログラムだが魚雷は1トン以上の重量がある。

飛び立つ飛行機が重くなるにつれて滑走距離は長くなるのだが、一番に飛び立つのは戦闘機だ。理由は爆弾も何も装備せず、燃料と機銃弾だけだからだ。

それに比べて爆弾や魚雷を抱いて飛ぶ攻撃機はその爆弾と魚雷分、重くなる。

 

だから、順番としては戦闘機である烈風が一番に飛び立ち、続いて爆弾装備の流星、その後に魚雷装備の流星となる。

 

 

 

流星は飛行甲板から飛び立つ時に、烈風とは比べ物にならないぐらい機体が大きく沈み込む。

 

しかし全機問題無く飛び立ち大空に舞い上がっていった。

 

「提督、全機発艦完了。蒼龍も全機発艦完了と発光信号で知らせてきました」

 

「よし、良くやってくれた。敵の攻撃隊に備えて直掩戦闘機隊も上げる」

 

「了解しました」

 

その後、直掩戦闘機隊が増槽を装備して発艦。

艦隊はパレンバン方向に向けて針路をとり進んだ。

 

 

今の俺達に出来ることは敵攻撃隊が来た時に備えているか、あとは精々、攻撃隊が敵艦隊を葬り、一機でも多く無事に帰還してくれる事を祈るぐらいだろう。

 

 

 

それから1時間程経った時に市木大将の名前で先程の暗号文の返答が返って来た。

 

『派遣可能。既ニ出航準備中ナリ。数ハ輸送船7、タンカー7、護衛艦隊愛宕以下、軽巡龍田、駆逐艦村雨、時雨、響、朧、初雪、浦波、。出航は翌日明朝0530予定。貴艦隊ノ状況ハ如何ナリヤ』

 

と。

輸送船団だけでも14隻、護衛艦隊は7隻と少ないが駆逐艦は今現在俺と共にいる15隻を含めると20隻。本土に残る健全な駆逐艦は2隻になった。

 

陣容はかなりギリギリの編成だろう。

空母や軽空母が存在していないのは母艦航空隊が存在していないからだ。

今現在の母艦航空隊は飛龍、蒼龍に搭載されている343空のみ。紫電改二がいるとしても発着艦訓練をやったことのない搭乗員では事故が何度も発生するに決まっている。

 

ならば空への警戒は多少犠牲になろうともしょうがないと判断したようだ。

 

重巡である愛宕を含めたのは対空戦闘能力を向上させるのが狙いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 西北 ----

 

 

 

 

俺は流星に乗って飛んでいる。

役職は343空流星隊隊長だ。今回は原田大佐が攻撃隊の総隊長だが実際は俺に一任されていた。

 

元は343空所属では無く鹿屋飛行場に天山搭乗員として所属していた。

 

配属が変わると言われてかなり急に343空の所属に。

そこで待っていたのは新型機である流星とその搭乗員達。更に毎日の訓練だ。

 

毎日訓練に明け暮れていた時、出撃命令が出て今の今まで飛龍艦上で偵察機や直掩戦闘機が飛び立つのを見ていた。

 

そして出撃を今か今かと待ちわびていた時に今回の出撃命令。

しかも目標は軽空母2隻。正直正規空母と比べれば見劣りするが相手としては不足は無い。それどころか初陣としては大物。

 

事実俺は南西諸島防衛戦からこの戦争へ参加した。

実戦経験もその時と近海の哨戒、偵察任務ぐらい。

 

実戦経験と言っても敵艦隊に魚雷を抱いて飛んで行ったはいいが金星を挙げる事は叶わず。

俺だけでは無く流星隊のほぼ全員が実戦経験の無い新米ばかり。中には俺と同じ程度の実戦経験がある者も居るが数人だけ。

 

話に聞く、かつての精鋭達は今や空に海に散っていった。

その栄光の影も形も無い。だが構わない。何故なら俺たちが精鋭になって再び栄光の輝きを光らせればいいのだ。

 

 

 

 

俺達の練度は高いと思う。実際に原田大佐もそう言ってくれたし訓練では駆逐艦が曳航する木製の目標に対して命中率は総合すれば20%になるし急降下爆撃にしても33%を叩き出した。しかしそれはあくまでも駆逐艦が曳航して速度が遅く、更には対空砲火を撃ち上げて反撃してくることも無い。

 

更に問題なのは実戦経験が無い事だ。正直に言って敵戦闘機が飛来し味方の攻撃機をバタバタと落としていく様子は、本当に恐怖だった。

訓練だけしかしていない新兵達は本当に敵戦闘機に襲われた時、まともに動けるかどうか……

 

それに比べて戦闘機隊の原田大佐達は全員が実戦経験豊富だ。

全員が全員と言う訳では無いが、搭乗員の殆どが数度の過酷な戦線へ参加し母艦航空隊として我々が追い詰められた時から戦い生き抜いている。

原田大佐はラバウル防衛戦から参加していると聞いた。それからは母艦航空隊の一員として戦い抜き、今まで生き残っている。

 

更には空母が動かせなくなった後も関東圏防空任務に就いていたから追い詰められた状況にも関わらず実戦経験は豊富だ。聞いた話では毎日定期便と呼ばれる爆撃機編隊を迎撃していた。

 

まぁ元々設立の際に各航空隊から熟練やエース・パイロットを集めて編成したらしいから当然と言えば当然だ。それでもやはり人員の入れ替わりはそれなりにある様でかなりの数の戦友が散って行ったと、着隊してすぐのささやかな歓迎会で聞いた。

 

ここ最近は岩国飛行場に転属になり、余り迎撃任務が無いからこれはこれで鈍りそうだと、とんでもない事を言っていた。

恐らくそんな事が言えるのは343空の戦闘機隊だけだろう。

 

そんな彼らに守られて今現在俺達攻撃隊は敵艦隊目指して進撃している。雲は無く空は澄み渡っている。とても心強いな。安心感が桁違いだ。

 

 

 

 

 

そろそろ敵戦闘機の迎撃を受けてもいい頃なのだが一向に見えない。

これだけ雲も無いのなら発見する事は大して苦労しない。なのに敵戦闘機は現れず平穏だ。本当に乗っているのが流星ではなく遊覧飛行用の小型機ならばただの団体観光客の様にしか見えない。

 

 

 

 

 

そのまま敵戦闘機の迎撃を受けないまま進むと、流星の1機が敵艦隊を発見した様だ。

右前方に航跡が薄らとあり、更にその先には黒い点が幾つか見える。

 

「木下!飛龍に敵艦隊発見と打電!」

 

「了解!」

 

同乗している木下に艦隊に向けて打電させる。この時発するのはテ連送と言って敵を発見したことを伝えるものだ。

飛行機、船舶に限らずこれを使う。

態々暗号にする時間も無い。今は敵戦闘機が迎撃に上がって来ていないがもしかするとどこかで待ち伏せているのかもしれない。

 

そう指示を出した後、俺は翼をバンクさせ敵艦隊へ針路をとる。

 

「打ち終わりました!」

 

「ようし、それじゃぁ待ちに待った戦闘だ!」

 

そう叫んでから攻撃目標の振り分けをする。

まず飛龍隊、蒼龍隊の流星は16機ずつ、急降下爆撃隊と雷撃隊がそれぞれ8機ずつの内訳になる。

 

本当は全艦に攻撃を仕掛けて叩いておきたいのだが今回ばかりは軽空母に集中しよう。

 

「蒼龍隊!手前の空母をやれ!俺達は奥の空母を仕留める!」

 

無線に向かってそう叫ぶ。

すると無線の向こうから了解!、と!勇ましい声が聞こえてきた。

 

「艦戦隊は上空警戒!」

 

同じように了解、と声が聞こえてきた。

それぞれ指示を出し終える。

 

「トツレ連送送れ!」

 

「トツレ送ります!」

 

突撃準備隊形作れの電文を全機に送った。

すぐさま隊形が作られていく。

 

準備は整った。

それじゃやるとしよう!

 

「全機攻撃開始!全機攻撃開始!」

 

その合図と共に雷撃隊は海面ギリギリの低空に、急降下爆撃隊は高度そのままに進んでいく。俺は雷撃隊だから低空だ。

 

「木下!ト連送!」

 

「了解!」

 

海面ギリギリで飛行する。

魚雷を投下するときは一定の高度を取らなければならない。

高すぎても低すぎても駄目なのだ。

 

にしても敵は俺達に気が付いていなかったのか対空機銃や対空砲の迎撃はかなり散発的だ。狙いは良いが数が少ないから当たりはしない。

敵艦の速度は目測で22ノット。艦首でしぶきを上げている海水で何となく分かる。増速したのが俺達がかなり接近してからなのか思ったよりも速度は速く無い。

 

「敵艦まで1500!」

 

「1400!」

 

「1300!」

 

「1200!」

 

「1100!」

 

「1000!」

 

 

 

 

「魚雷投下!」

 

1000mを切った時、敵の予想針路に向かって魚雷を投下した。

機体が一気に1トンほど軽くなったから一瞬機体が浮くが直ぐに元の高度にする。

 

「木下!命中したか!?」

 

「いいえ、まだ確認出来ません!あぁ!?第2小隊の3番機が被弾炎上!」

 

「クソッ!」

 

恐らく敵が撃ち上げていた機銃弾が運悪く燃料タンクかエンジンにでも被弾したんだろう。

 

「…………!水柱を1本確認!」

 

「よぉし!軽空母相手に沈められるか微妙だが当たらないよりは良い!」

 

「!続けて2本命中を確認!急降下爆撃隊も3発命中させたようです!」

 

「よぉし!良くやった!」

 

正規空母ですらこれほどの被弾は轟沈してもおかしくは無い致命傷だ。

軽空母ヌ級なら撃沈確実だろう。

 

「蒼龍隊はどうなった!?」

 

「分かりません!ですがヌ級が左に傾いて飛行甲板からも黒煙が吹きあがっています!撃破確実です!」

 

「よし!これで敵艦隊の航空戦力は潰したぞ!」

 

暫くして空中集合を終えた。

見渡すと、蒼龍隊が1機減っている。

 

蒼龍隊からの報告だと、魚雷命中4、爆弾は2だそうだ。

これなら撃沈は確実だろう。

 

「艦隊に戦果を打電!」

 

「了解!」

 

『我敵艦隊ヲ攻撃ス。戦果ハヌ級2撃沈確実。我流星2ヲ失ウ。再攻撃ノ要ハ無シト認ム』

 

「打電完了」

 

「よし、それじゃ帰るぞ。警戒を怠るな」

 

そう言って、俺達は飛龍を目指した。

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

 

 

攻撃隊を送り出してから2時間。

 

「提督、攻撃隊から敵艦隊発見の報告が入りました」

 

 

 

「提督、攻撃隊からトツレ連送を発しました」

 

通信長からそう報告が入ってくる。

そして遂にその時が来た。

 

「攻撃隊からト連送が」

 

「うむ……」

 

そうか、攻撃を始めたか。

頼むぞ、出来れば1機も失わずに攻撃を終えてくれ。

 

 

10分後、再び攻撃隊から電文が送られてきた。

 

『我敵艦隊ヲ攻撃ス。戦果ハヌ級2撃沈確実。我流星2ヲ失ウ。再攻撃ノ要ハ無シト認ム』

 

「提督!大戦果です!我々は2機失いましたがそれを補って余りある戦果です!」

 

「……だが、貴重な搭乗員4人と機体を2機も失ってしまった」

 

失った搭乗員の事を考え、項垂れていると飛龍にがっちりと両頬を掴まれ至近距離で目をじっと見てくる。

そして彼女は言った。

 

「提督、それは仕方が無いんだよ。非情だと思われるかもしれないけど攻撃隊を送り出すと必ず被害は出るの。ここで泣いていたら死んだ4人に申し訳が無いでしょ」

 

確かにその通りだ。

だが、どうしても心に引っ掛かるものがある。

 

「ほら、あとでギュって抱き締めてあげるからその時に思う存分泣いて良いから!今は敵の攻撃隊に備えて提督が指示を出さないと!」

 

「……そうだな。その通りだ。よし、電探、しっかり空を見張れ」

 

「了解!」

 

彼女の言う通りだ。

後でいくらでも泣けるのだから今は生きている皆と共に無事に帰ることを最優先にしなければならない。

 

敵機の襲来に備えて指示を出した。

しかし一向に敵攻撃隊は現れない。

そのままパレンバンへ針路を取り続けると反応があったのは対空電探ではなく対水上電探の方だった。

 

「対水上電探に感あり!数は5!距離は26km!大型艦の反応は無し!」

 

敵艦隊はどうやらのんびりと進んでいた我々艦隊とパレンバンの間に滑り込んだ様だ。

燃料を気にせず全速力で向かってきたのだろう。

 

「提督、恐らく空襲した敵艦隊の残存艦艇かと思われます。このままですと輸送船団や飛龍、蒼龍を危険に晒す事になりますが迎撃しますか?」

 

「勿論だ。第3護衛艦隊を向かわせろ」

 

「では我々は後退しますか?」

 

「……攻撃隊収容地点はどこだ?」

 

「丁度この辺りになります」

 

「よし、我々は現海域に留まり攻撃隊を収容する。もしかすると被弾して燃料がギリギリの機体もあるかもしれん。敵空母を沈めてくれた彼らを海で泳がせるという事はしたくはない」

 

「わかりました。ですがあまりにも近すぎます。せめて10海里だけでも後退しましょう」

 

「よし、そうしよう」

 

敵艦隊を対水上電探で捉えた。

迎撃に向かうのは鈴谷率いる第3護衛艦隊。

数でも攻撃力でも勝っているから早々、大事にはならないと思うが……

 

艦長の言葉により、念の為第3護衛艦隊から10海里後方に下がることにした。

 

 

 

 

 

 

それから十数分後、後にバンカ島沖砲戦と呼ばれる海戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後年、バンカ島沖砲戦を含む一連の戦いを第一次バンカ島沖海戦と呼んだ。
滅亡へ一歩、また一歩と進んでいた人類の反撃の第一歩である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。