暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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南洋諸島作戦⇨マリアナ諸島奪還作戦
第82話


 

 

ソロモン諸島での一件が落ち着いた後、戦後処理の会議をする為に、具体的には主に鹵獲艦等の扱いを始めとして防衛体制の早期再確立とそれの強化の為にマーシャル諸島やトラック諸島への攻勢を検討する為に再び東京に向かっていた。

予定では輸送機で人員輸送に相乗りする予定だったのだが1週間ほど天候が崩れると言う予報が出た為に急遽列車での移動となった。

 

東京方面行きの列車の1両を貸し切り、護衛の兵士達と共に乗り込む。

今回の艦娘の同行者は筑摩である。

 

それ以外の皆は即応待機を除いて全艦がドック入りと休暇となっている。

休暇とは言え保安上の理由もあるから市街地に出ることは出来ないが、その分鎮守府内には大抵の施設や設備が整っているから我慢してもらうしかない。

 

あれだけの戦いの後だ、特に輸送艦隊は主砲も派手に撃ちまくって損害も大きいから修理や整備をやらなければならない。

第1、第2護衛艦隊は作戦に参加してはいなかったが船団護衛と言う重要な任務があるからな。

 

普通の機関車だが40両編成となる。

本来ならば呉から東京まで15~17時間もあれば到着するのだが、今回相乗りするのは貨物列車でそれに俺達が乗る旅客車両をくっ付けた状態だ。

しかも途中で岡山、神戸、大阪、名古屋、浜松、静岡、小田原、横浜と停車して荷物の積み下ろしもあるとのことで、丸三日の旅路になる。

 

鉄道のダイヤは事細かく刻まれており、しかも今は航空機が使えない現状である為、市民一般の長距離移動の足として、重量のある貨物を運ぶ手段として乱すことが難しい。

人員輸送なら連山を使うことも出来るが、やはり数を移動させられる点においては鉄道には敵わない。

 

大量輸送ならば船舶輸送が間違いなく優れているが、あちらはどちらかと言うと加工前の原材料や軍関係の重量物を運ぶことが殆どだ。

と言うより海軍関連の重量物となると、船舶でなければ輸送が出来ない物ばかりだからだ。

 

駆逐艦や高角砲の砲身ぐらいならば列車でも運べなくはないが纏まった数となると運べない。

それこそ巡洋艦以上となったら列車では運べたとしても時間が掛かるしコストパフォーマンスも悪い。

内陸部に行くには鉄道を使わねばならないが、そうでないなら船舶輸送で纏めて運んだ方が良い。

 

だから貨物列車が運ぶのは食料や衣類などの軽い物が殆どだ。

この列車も加工食品や戦闘服、銃弾などを運んでいる。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……、流石に大阪まで座りっ放しとなると尻が痛いな……!」

 

立ち上がって身体をぐりぐりと動かす。

大阪に到着するまでずっと座りっ放しでいたからか、腰が悲鳴を上げている。

動かすとボキボキッ、と全身で音がする。

 

「出発まで四時間だそうです」

 

「また長いな、どうした?」

 

「この列車に載せ変える荷物を載せた列車が道中の事故で遅れるそうです」

 

「それは仕方が無いな。しかしどうするかな、仕事と言えばこれ幸いと取り上げられてやることが無いし、散々やったトランプも流石に飽きて来た」

 

「将棋や囲碁は時間が掛かり過ぎますからね」

 

「隊長、少し降りて駅構内だけでも散歩しに行かんか」

 

「はっ、散歩ですか」

 

「流石に歩かんと不味い気がしてきたし、それに腹が減った」

 

「我々の中から買いに行かせましょう。流石にこうも人が多いと安全を確保しきれると言えませんので、お許しください」

 

「それなら仕方が無いか。じゃぁ、皆の分も纏めて買って来てくれ。大阪だからたこ焼きとお好み焼きがあれば文句はあるまい。あとは適当に食い物と飲み物を任せる」

 

全員で15名の護衛に俺と筑摩、それに従卒の佐藤大佐、石崎中佐の二人を合わせて19人の一行となる。

まぁ使い道の無い給料もこういう時に使ってやろうと考えていたから財布の中にはかなりの金額が入っている。

 

道中は食べ物が美味い所ばかりだから、珍しく食道楽と行っても良いだろう。

大阪は港としてもかなり栄えているのもあって、他地域に比べると物資がある。

 

豪州で作られた小麦や南方で栽培されている果物などが運び込まれるから、かなりの賑わいだ。

大阪駅はその物資を各地に運ぶ物流と交通の重要拠点の一つだから、確かに値段は戦前や元居た世界に比べれば高いが良い物が食える。

 

「宜しいのですか?」

 

「俺の給料はな、殆ど貯まるだけなんだ。こういう時ぐらいしか使い道が無いから甘えておけ」

 

そう言うと、隊長は5名ほどを選んで買いに行かせる。

 

「さて、帰って来るまで少し身体を動かしておこう。凝って仕方が無い」

 

買い出しから帰って来るまでの30分ほどを俺と筑摩は軽い体操をしつつ待つ。

 

 

 

「お待たせしました!」

 

5人が両手に色々と抱えて帰って来る。

どうやら色々と買い込んできたらしく、食欲をそそる良い匂いがする。

 

食える時に食う、寝れる時に寝るが基本の軍隊生活に慣れると、こうして美味そうな匂いがするだけで腹が減っていなくても減るものだ。

 

たこ焼きやお好み焼きなど、食べるのは何年ぶりだろうか。

普段は皆が作ってくれるバランスの良い食事を食べているからこういう、ジャンクフード、というのだろうか?そういうものはまず食べない。

それよりも皆が作ってくれる飯の方が絶対に美味いからな。

 

まぁだが、偶に食べるぐらいならば良いだろう。

 

各地で名物を食いながら、東京に向かう。

途中で天気が崩れて雨と風がかなり強く吹いていた事以外は特に問題らしい問題は起きずに無事に到着することが出来た。

 

東京駅からは復興されて区画整理をしっかりとした道を車で統合参謀本部まで向かう。

勿論護衛の装甲車付きでだ。

 

東京は震災で被災し大きな被害を受けたが、それでも人口は数百万人と言う大都市だ、そんな中を装甲車に守られながらだと目立ち過ぎるから装甲車は要らないと言ったんだがなぁ。

 

 

 

 

会議が終わり東京に泊まる。

会議の結果は、トラック諸島、マーシャル諸島とギルバート諸島の3つの南洋諸島に対しての攻勢を行う事が決定された。

 

問題は実施時期だ。

海軍は先のソロモン諸島での海戦で損傷艦を多数抱えており修理と再訓練の為に半年は行動が出来ない。

陸軍もソロモン諸島に対する作戦で増援師団を多数送り込んでいるから新しく作戦をやろうとしても、投入出来る師団の数が十分ではない。

 

何よりも既に多方面に対する補給に加えて更に加わる長大な補給路の維持が問題だった。

正直奪還自体は戦力を整えれば十分に可能な程度ではあるのだが、南方方面、ニューギニア、オーストラリア、ソロモン、その先にあるフィジー・サモアやニューカレドニアなど既に複数の補給線を維持しなければならないのに、そこに更に敵潜水艦の脅威がこれらの方面よりも格段に高くなる南洋諸島への補給線の維持が果たして本当に出来るのかというものだ。

 

護衛艦隊は2つしか無く、南方航路護衛隊は駆逐艦を最高戦力にした、基地航空隊の直掩を常に受けられる南方方面の船団護衛しか出来ない編成だから引き抜くことは難しい。

第1機動艦隊は主戦力だから恒常的に船団護衛任務を任せる訳にもいかない。

遠洋練習航海のついでに、が精々か。

やらなければならない事だから全力を尽くすが、それでも限界はあるだろう。

 

 

 

 

 

トラック諸島に1個師団と1個連隊、ポーンペイ島に2個連隊、マーシャル諸島に1個師団と1個連隊、ギルバート諸島に1個師団と1個連隊、ウェーク島に1個連隊、合計で4個師団+1個旅団程度の戦力になる。

それぞれに海軍陸戦隊が上陸戦用に1個連隊づつが投入されるが海岸保が確保出来たら撤収する。

 

海軍陸戦隊は上陸戦専門部隊である、と言うのは伊達では無い。

 

マーシャル諸島とギルバート諸島には防衛戦力として1個師団+1個連隊程度が置かれる事になる。

これらはそれぞれの師団司令部と連隊司令部を持ち、更に上級編成単位と上級司令部として他の南洋諸島や島々の防衛を担う、南洋諸島方面軍司令部が置かれる。

 

 

これらの投入戦力は攻略中の予備部隊、防衛部隊もすべて含まれることになる。

トラック諸島はマリアナ諸島の目と鼻の先で最前線になるから陸軍航空隊を含めるとかなり規模が大きい。

数百機もの戦闘機が最終的に展開、防空にあたる予定だ。

 

半年もあれば敵も態勢を整えて迎え撃ってくるのは十分に予想が出来る。

とは言えこちらが全く事前に攻撃が出来ないと言う訳でもない。

 

実は3つの諸島は最も近い場所から連山を爆撃に出せば攻撃可能距離内にギリギリ収まっているのだ。

連山の航続距離は6000kmに延ばされているが、ニューギニア方面やフィジー・サモアなどから出撃すれば往復で5000km程度になる。

最大爆装とは行かないまでも、それなりの量の爆弾を積んでいくことが出来る。

50機ぐらいを同時に出撃させれば3tほどの爆装量で150tの爆弾を落とすことが出来る。

そうすれば敵艦隊と敵基地航空隊を同時に相手取らずとも良くなる。

 

 

問題はこれだけの長距離飛行を連日行えるかどうか、と言う事だ。

純粋に補給能力がこれらの出撃で消費される物量に追い付くことが可能かどうか、という点に尽きる。

消費する燃料も馬鹿にならないし、何より往復飛行は軽く12時間を超える。

 

搭乗員の疲労やそれだけの長時間酷使されるエンジンや機体各部の部品の損耗も大きいのは想像に難くない。

それらを常に万全の状態にした上で十分に打撃を与えられるだけの爆弾の量を常に補給し続けられるのかが問題なのだ。

流石に計画にある以上出来ませんとは行かないから、どうにかするしかないが最悪機数を絞ることになるだろう。

 

とは言え20機程度で爆撃をしたとしても大した効果は無い。

せめて40機ぐらいは纏めて飛ばさないと、距離の関係上護衛機を付けてやる事が出来ないから、高高度爆撃となる。

せめて纏まった機数を飛ばさないと防御火器の密度も下がるしそうなると撃墜機数も多くなり、戦果も大したものではなくなる。

 

一応の計画としては各地に120機ぐらいを配備して、3つの爆撃隊を整備兵などを含めて編成し、ローテーション形式で出撃、整備休息を取らせる事を考えている。

360機となるが、当然損失なども出る事を考えて後方に予備機や搭乗員を待機させておかなければならないのは勿論だ。

予備機などを含めたら400機は下らない。

 

補給を管轄する兵站部にはその辺りの詳細を考えて、連山と搭乗員、整備兵に対する補給計画を練ることを命令しているので早ければ1か月ほどで計画書が出来上がると言うから、攻略作戦開始の3か月前から爆撃を開始する予定なので、計画書作成に1か月、部隊の移動と物資の集積に2か月を予定している訳だ。

 

ともかくこちらも艦隊と陸軍部隊の準備を進めさせなければならない。

 

 

 

 

今日は特にやる事も無いので、統合参謀本部の宿舎で過ごす。

売店もあるからそこに何か食い物を買いに行こうか迷うところである。

 

食事に関してはここの食堂に行こうかと思っているが、夕食まで以外と時間がある。

会議が長引いたお陰で昼食を摂り損ねたのだが、今食べてしまうと夕食が食べられなくなる、そんな時間だ。

 

考えていると、空襲警報が鳴り響く。

その数秒後に大佐と中佐が部屋に殴り込んでくる。

 

「提督、敵の空襲です!」

 

「そんなことは警報で分かっている。防空壕に避難するぞ、備え付けられてある避難袋を持って急げ」

 

東京は連日敵の爆撃を受けているから、統合参謀本部の宿舎や隊舎などには避難する際に防空壕に持って行く為の避難袋と言うものが備え付けられている。

勿論全国各地の民間用防空壕や軍用防空壕に避難する際も同じようにするが、実は俺がこれを使うのは初めてである。

というのも瀬戸内海の方には滅多に爆撃が来ないからだ。

 

来たとしても重要な工場や港湾施設が集中している瀬戸内海周辺はその分防御が分厚い。

敵の標的も比較的防御の薄い艦載や九州、四国が殆どで山陽地方や山陰地方には殆ど来ない。

 

仮に来たとしてもそこら辺に展開する海軍航空隊の迎撃に、突破したとしても対空砲の迎撃があるから被害が無いのが実際のところだ。

 

 

避難袋の中には水や食料、缶詰形式ではあるが1週間分入っており、生き埋めになっても助けが来るまで凌げるようになっている。

防空壕は全て軍と政府が建設したもので、全て地図に場所や規模が事細かに記されているので必ず救助が向かう仕組みを採っているから、これさえあれば助かると言うわけである。

 

 

1分ほど遅れて護衛の皆がやって来る。

装備などはそのまま身に着けていたのか、どうやら情報収集に走っていてくれたらしい。

何人か居ないから筑摩を迎えに行っているのだろう。

 

「提督、すぐに避難しましょう。どうやら近くの工業地帯が標的の様で、流れ弾の可能性があります」

 

「分かった、行こう。大佐と中佐もしっかり連れて来るんだぞ」

 

「勿論であります」

 

護衛に連れられて防空壕に走って避難する。

途中で女性用宿舎に泊まっていた筑摩と合流し、防空壕に入る。

 

統合参謀本部には合計で5つの防空壕がある。

それぞれが地下30m以下に整備され、地下にある避難所はコンクリートと特殊鋼、水、衝撃吸収材の4種類の装甲材を重ねたものになる。

厚さは5mにもなる。

収容人数は最大で400人、食料と水を4日分備蓄してある。

 

それが5つで2000名の人員を収容出来る訳である。

この2000名と言う数字は統合参謀本部に勤める者達の凡そ1.5倍の人数に当たる数字だ。

 

その5つの内の宿舎区画にある防空壕に避難したわけである。

防空壕はそこでも指揮が執れるように設備は充実しており、各防空壕は有線電話で繋がっている。

 

中には地上の施設が吹き飛ばされても良いように食料や水も十分に備蓄されている。

防空壕の中には宿舎区画に居た下士官や兵卒、士官達も避難している。

どうやら連日の空襲で慣れているのだろう、だいぶん落ち着いているな。

 

「大丈夫か」

 

「提督こそ大丈夫ですか?」

 

「これでも運動はしているんだ、問題無い」

 

「敵機はB‐29か?」

 

「B‐29だそうです」

 

「全く敵の物量にはほとほと呆れるしかないな……。どこから出てくるんだか」

 

「小官には分かりかねます」

 

「震電もあるし、問題はないと言いたいが……」

 

「あとは対空砲や対空機銃に任せるしかありません」

 

全国の防空は海軍航空隊頼りと言う訳では無い。

勿論高射砲や低空で侵入してくる艦載機に対しては対空砲や対空機銃、対空機関砲もある。

 

高高度に対する対空戦闘を実施する為に15cm高射砲がその任に当たっている。

これは対B‐29用に開発された高高度用の高射砲で、10基の高射砲が1群と纏められ、各種電探と連動しているから命中精度も高い。

10門と言う纏まった数の高射砲を纏めて電探で照準して射撃するから弾幕の形成も容易だ。

 

実際の口径は149.1mmだが、呼び易さもあって15cm高射砲と呼んでいる。

60口径の長砲身、最大射高は対B-29用に開発されたとあって2万mを誇る。

射程は2万5000m、自動装填方式で毎分10発、全国各地の要地に配備されている。

自動装填式の理由は砲弾重量が45kg、装薬量が17.6kgの合計62kgを軽く超え、平射も可能としているから弾種によっては普通に70kgを超えるものもある。

これだけの重量を手動で装填するなど戦闘中と言う状況下ならば尚更に、訓練などでも無理である。

 

砲弾は対空弾、対地榴弾、徹甲榴弾の3種類があり、基本的な構造は3式弾と同じで、対空弾は半径150mに対して焼夷弾子を撒き散らすから敵編隊のど真ん中で炸裂すれば威力は抜群と言える。

とは言え高度10000m以上を高速で飛ぶ目標に対しての射撃だから、10発撃てば2発ぐらいは命中するだろうと言うものだ。

 

対地榴弾は専ら前線の敵侵攻が予期される地域に優先配備されており、徹甲榴弾も同様だ。

信管は砲弾によって別の信管がある。

対空弾用の対空信管、対地榴弾用の着発信管、遅延信管、曳火射撃を可能とする時限信管の3種。

徹甲榴弾は対地榴弾と同じ着発信管と遅延信管が使える。

この砲は正式名称13式15cm高射砲と言うが、実際は対空に特化した対空対地対艦全てを熟せる汎用砲に近い。

 

最近は南方方面やフィリピンを始めとしてニューギニア、ソロモン諸島、ニューカレドニアなどの前線に置ける要地に配備が進められている。

 

 

 

どうやらB-29が侵入したのか高射砲が射撃を開始したらしい、地面の下でも若干の振動と音が伝わってくる。

東郷参謀本部にも各種電探に加え高射砲が2個要地防空大隊、15cm高射砲10門と対空機銃や機関砲が備えられている。

そりゃ陸海軍の最重要拠点だから守りは固い。

 

とは言えここが目標では無いが、近くにある陸軍用の砲弾と戦車や榴弾砲の砲身を作る陸軍東京第3造兵廠と戦車の車体や砲塔、部品などを作る陸軍東京第5造兵廠、陸軍東京第9造兵廠が目標らしい。

 

暫くすると地鳴りのような着弾と炸裂音が聞こえてくる。

高度1万2000mで侵入して投弾したから、その分落下エネルギーは大きくなる。

着弾時の衝撃だけでも凄まじいものになる。

 

 

 

「今のはだいぶ近いな、流れ弾が敷地に落ちたか?」

 

衝撃がかなり近い場所で複数立て続けに起こる。

 

「そのようですね」

 

最近の爆撃は重要目標に絞って行われるのが殆どだ。

恐らくこちらの迎撃で半分ぐらいが撃墜か撃破で引き返していくから、最終的に爆撃を行えるB-29が平均100機程度にまで落ち込むからだと予想される。

 

何百機が当たり前のように、侵入して無差別絨毯爆撃をしていた時は目標の周辺ごと焼き払えば良かったが、今は侵入出来る機数が少なくやるから、周りごと絨毯爆撃をすると目標に対しての被害は小さくなる。

だから100機ぐらいが限られた目標に対して集中して爆撃をする事で補っているのだ。

その方が確実に目標を破壊出来ると踏んだのだろう。

 

B-を 29はだいたい4tほどの爆弾を搭載して飛んでくる。

100機で400tになるから、工場を幾つか纏めて更地にするには十分な量だ。

 

今回も100機ほどが迎撃と対空砲火を潜り抜けて爆撃を成功させたらしい。

しかも流れ弾とは言え統合参謀本部の敷地内にも命中弾が出たのだから敵の攻撃は成功と言えるだろう。

この様子だと、工場も瓦礫の山になっている可能性が高い。

 

空襲警報が発令されてから2時間もすると警報は解除された。

今頃は送り狼として出撃した震電が敵機に攻撃を仕掛けている頃だろう。

 

「提督、外を見てきます」

 

「あぁ、頼む」

 

護衛の一人が外を見に行く。

10分ほどで戻って来て、安全が確保されたのを聞いて外に出る。

 

ほんの2時間半程度の事だとは言えど、地上に出る事が随分と久しぶりのように感じる。

時刻は夕方、辺りは茜色に染まっており普段通りならば食堂に多くの者達が殺到している頃だろう。

 

「食堂の解放時間が6時半になるそうです」

 

「そうか、なら我慢しよう」

 

今は5時13分、丸一時間半ぐらいは待たなければならないらしい。

被害は爆撃を受けた工場は大破、再稼働に2ヶ月は掛かるとなったが、避難が早期に行われていたことから人的被害は最小に抑えられた。

確かに大規模な3つの造兵廠がやられたのは痛いし生産に影響は出るが、大局に影響があるほどでは無い。

こういうことに備えて各地に工場を分散させているのだ、他の造兵廠が無事であれば供給は保つことが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

漸く後始末が終わって食堂が再開すると、腹を空かせた兵達が食堂の方に駆けていくのが見える。

確かにもうこんな時間だから、対空戦闘に参加した兵達だけでなく、訓練で大きくカロリーを消費しているのだから腹が減って仕方が無いのだろう。

 

俺達も士官食堂に向かい、晩飯が盛り付けられた皿を盆に乗せていく。

士官食堂と言っても普通の下士官や兵卒達が使う食堂とメニューはほぼ変わらない。

そこに一品ほど追加されているぐらいである。

 

下士官や兵卒達の食事は基本的に、欧州系の部隊を除いて週に一度ほど、場合によっては二度ぐらい麺類が出る事以外は主食は米である。

各種ビタミン不足を補う為に主菜や蜜柑などの柑橘系の果物も定期的に出され、栄養素も考えられた質、量共に良いものである。

 

海外組が多く在隊する部隊においては週に三日間、麺やパンなどが出る。

理由は精神的なものがあるからだ。

彼らは祖国を捨ててでも戦う為に逃げて来たと言う過去があるが、必然的にメンタルケアも必要となる。

そのメンタルケアの一端が食事と言う訳である。

 

特にバリエーションが豊富なのは、イタリアやフランス組の食事で、食事に掛ける情熱と言うのが、知らない人間からすれば戦う事よりも一生懸命に見えるほどだ。

とは言え月に補給される小麦などの量は勿論決まっているので一定の水準を超える事は無い。

 

今日のメニューは豚肉のキムチ炒めに餃子5つ、それに味噌汁、米飯、蜜柑となっている。

今日は餃子が今日は士官に追加で出されている。

 

護衛の皆は指揮官である大尉を除いて階級が下士官や兵卒の者で構成されているが、俺の護衛中という場合は全員士官食堂での食事となる。

 

 

 

 

 

 

翌日、兵器開発や戦技研究などを担う技術研究開発本部に向かう。

こちらでも視察をするのだ。

 

この技術研究開発本部はその扱う物の性質上、実験等に広い場所が必要なのだが限られている。

そこで広めの土地が要求される。

置かれているのは富士山の麓にある旧東富士演習場と北富士演習場、旧富士学校の敷地を統合した富士駐屯地と富士演習場だ。

他にも猿ヶ森砂丘も演習の他に各種試験等に使われる。

 

富士駐屯地の総面積は13406haにもなり、他に駐屯するのは陸軍の教導団となる。

 

この教導団は全兵科における専門教育や対抗部隊の役割を担っている。

各種全兵科の教導連隊や学校が所属している。

例外として陸軍航空隊と軍楽隊のみが属していない。

 

で、この教導団と共に富士駐屯地に所在するのが技術研究開発本部ということである。

日夜様々な開発研究が行われており、陸海軍屈指の頭脳と変態性を持ち合わせたゲテモノ集団である。

かなり言い方が悪いと思うだろうが、実際その通りなのだ。

良い連中なのは間違いないのだが、なんせ無茶苦茶なのが多くて困る。

 

 

 

 

先日開発研究中の新兵器が取り合えずの実用化の目途が立ったと連絡が入って急遽視察が決定したのだ。

その結果を見る為に、というわけである。

 

「お待ちしておりました、閣下」

 

「ご苦労。それでは早速見せてもらおうか」

 

「はい、こちらです」

 

案内されて見せられたのは、Hs293と言う大まかに言えば対艦ミサイルを元に開発が進められていた試製誘導爆弾である。

欧州脱出の際、ドイツ軍やイギリス軍が共同研究を行っていたもので、有用であると研究開発が続けられていたものだ。

 

現状の対艦攻撃方法は、特に撃沈を意図して攻撃する場合敵艦に対して1000m以内に肉薄し魚雷を投下しなければならない。

これは勿論危険極まりなく、可能な限り搭乗員保護の観点なども考慮して遠距離からの攻撃手段が求められるのは必然であった。

魚雷そのものの改良も行われ、潜水艦用の魚雷だけでなく航空魚雷にも音響誘導装置を搭載することが予定されている。

 

とは言えそれでも限界があるのと、結局肉薄しなければならないことには変わりなかった。

それよりも3~4倍程度の射程を持ち、より遠距離からの敵撃破を狙う魚雷や爆弾が要求されることになる。

そこで目を付けたのがHs293であった。

 

当初はフリッツXと言う滑空爆弾も同時並行で開発研究が進められていたが、こちらは推進装置を持たない事から結果的に敵に近付かなければならないと言う事で研究中止となった。

 

フリッツX分の予算も回されたHs293の開発は本腰を入れて行われることになったのだが此処で問題が一つ。

推進装置を付けただけではただのデカいロケット弾ぐらいにしかならないということだ。

 

遠距離からの発射と命中を両立させるためにはどうしても爆弾そのものを敵艦に導くための誘導装置が必須であったのだ。

音響誘導装置の開発も進められたが、開発成功となっても更に問題が出て来た。

この音響誘導装置、魚雷に搭載するならまだ良いが、ロケット推進器を搭載する誘導爆弾では誘導爆弾そのものが発する音が大き過ぎて目標の音が探知出来ず全く誘導が出来ないと言う事が判明したのだ。

 

無線誘導も考えられたが、こちらは命中精度が低過ぎる事、発射母機が結局一定の進路を取り続けなければならない事で魚雷による攻撃と危険性は大して変わらないと言う結果が出た為敢え無く開発中止となる。

最終的に音響誘導装置による誘導を目指したのだが、誘導装置そのものだけでなく、爆弾が凍り付いたり遅々として進まず今漸く実用化の目途が立ったと言う事である。

 

「音響誘導方式の1型、誘導方式をテレビ誘導に変えた2型の2つがあります」

 

「音響誘導は駄目ではなかったか?」

 

「当初は集音器の性能不足で全く使い物になりませんでしたが、やはり発射母機の安全性を考えると音響誘導方式が最善であるとして開発を続けました」

 

「それで、どうなった?」

 

「実用には問題ありません。強いて言うならば操作員によるテレビ誘導方式の方が命中精度が高いぐらいでしょう」

 

元々音響誘導方式を採る予定だったのだが、どうしても誘導爆弾そのものが発する音が大き過ぎて目標の音が探知出来ず全く誘導が出来ないと言う誘導爆弾の根本問題が解決出来なかったのだ。

そこで一旦誘導方式を既に実用化の目途が立っていたテレビ照準に変えたのである。

 

どうやら音響誘導方式も十分な成果を得ているらしい。

 

「まぁなんにせよ、だ。どれぐらいの射程と命中精度がある?」

 

「最大射程5000m、目標を狙うならば4000mが限度です。テレビ誘導方式の命中率は20〜25%、熟練した者ならば30%と言ったところでしょうか」

 

「音響誘導方式の方は命中率はどれだけ高くても20%ですね」

 

「命中数を担保するなら数を撃たなければならないか……。飛行実験部からは何かあるか?」

 

「以前と比べて格段に照準が付け易くなりましたね。音響誘導方式は撃ちっ放しが可能ですから撃ったらさっさと退避してしまえば良い」

 

「とは言っても4000mから狙うので目標は豆粒にしか見えませんから命中精度を上げるには結局敵艦に接近しなければなりません。1発辺りの過度な期待、一撃必殺だとか言うのは禁物でしょう」

 

「取り合えず、実用には耐え得ると?」

 

「えぇ、命中精度の低さを補う為に数を用意しなければなりませんが、生産性は高いので数を揃えると言う点さえクリア出来れば後は訓練を施して実戦投入可能となります」

 

実戦で使えるのならば文句はない。

 

「バリエーションは?」

 

「対艦攻撃用と対地攻撃用、それとまだ開発中ではありますが対空用の3種類になります」

 

どうやら指示したあたりに問題は無いらしい。

対艦用は貫徹力を高め、装甲の薄い巡洋艦や空母ぐらいまでならば沈められるぐらいの性能だ。

 

対地用は戦車や家屋、滑走路などを破壊する為のもので単純な単弾頭のものから、タ弾を内蔵したものの2種類がある。

基本的には単弾頭を対戦車や建物などに使い、多弾頭を滑走路破壊などの広範囲にダメージを与えたい場合に使う。

 

対空用は敵重爆編隊の中に飛び込ませ、そこで爆発させる。

弾頭は三式弾と同じで、直撃しなくとも損害を与えられる。

 

「ただもう一つ問題があります」

 

「問題?……あぁ、発射母機か」

 

「はい。艦載機用の誘導爆弾の開発を行っておりますが、どうやっても弾頭重量を減らさなければならないのに加えて貫徹力もある程度は犠牲にしなければなりません。どうしても攻撃力の低下は現状避けられないかと。対艦攻撃力を期待するならば……」

 

どんな兵器も使用するにあたってどうしても制限が出てくるのは仕方が無い。

問題はそれをどうやって補い運用するかだ。

 

「双発機以上への搭載しか無い、と言う事だろう?それは承知の上だ。開発を頑張ってもらうしかない」

 

「はい、ご理解痛み入ります。銀河だと1発しか搭載出来ませんが、連山ならば3発は搭載出来ます」

 

「4発は無理か?」

 

「誘導装置の搭載もあるので、3発が現実的なところでしょう。4発も搭載出来なくは無いのですが、そうすると重量超過に」

 

「なら3発にしておこう。無理をして運用に支障がでたら本末転倒だ。3発も撃てれば十分、航空魚雷は1機に付き1本だ、命中精度が低くてもそれだけ搭載出来れば補えるだろう」

 

「あとどれぐらいで量産体制を整えられる?」

 

「3か月……、いえ、2か月頂ければ最終調整と工場の建設を終えて最初の量産が可能です。連山の改修も同時並行で行います。訓練も含めて5ヶ月ほど頂ければ実戦投入が出来ます」

 

その返答を聞いて俺は大きく頷いた。

5か月で完全な実戦投入が出来るのだから十分だ。訓練に3か月掛ける事を考えても、次作戦への投入は出来そうだ。

 

そうなると、作戦に投入予定の連山部隊は改修に訓練に前線配備の為の移動とかなりの大忙しになるな。

慌ただしくなるな。

 

最終的に連山の設計を再設計し、誘導装置を新たに搭載した連山二型の生産が二週間後に開始され、それだけでは間に合わない為作戦参加予定の連山部隊の機体は順次改修が施されることになった。

 

 

 

 

 







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